国内要因として不透明な大統領選挙、海外要因として新興国の為替下落を誘発している連邦準備制度理事会による金利引き上げ予想、米中貿易戦争などの影響で、2018年8月の過去12カ月間の経常収支赤字はGDP比0.8%と今年1月のGDP比0.44%を大幅に上回っている。
しかしブラジルの8月の過去12カ月間の経常収支赤字は、海外投資家による大幅な対内直接投資の影響を受けてGDP比0.8%とGDP比1.0%を下回っており、為替危機に直面しているアルゼンチンのGDP比5.1%、トルコの5.4%を大幅に下回っている。
またブラジルの外貨準備高が長年に亘って3,800億ドル前後で安定しており、今月4月末以降の米ドル高局面では、経済のファンダメンタルズが脆弱なアルゼンチン通貨ペソが急落し、大幅利上げなど通貨防衛にも関わらず、IMFに支援を要請する事態に追い込まれたアルゼンチンの約500億ドルと比較にならない程金融ボラティリティに対応できるとRosenberg Associadosチーフエコノミストのタイス・マルゾラ・ザラ氏は指摘している。
8月の過去12カ月間のブラジルの経常収支赤字は、GDP比0.8%に相当する155億ドルに留まっており、経常収支赤字を記録した2015年4月のGDP比4.4%を大幅に下回って改善してきている。
経常収支赤字改善の一因として、レアル通貨に対するドル高の為替で輸入減少の一方で、輸出競争力増加に伴う輸出増加、ブラジル企業の時価総額減少に伴って対内直接投資が増加してきている。
2017年末の経常収支赤字はGDP比0.5%を下回っていたにも関わらず、2018年2月から上昇に転じているが、8月の過去12カ月間の対内直接投資は、GDP比3.61%に相当する700億ドルを記録している。
今年8月の過去12カ月間の南アフリカの経常収支赤字はGDP比2.9%、チリ1.8%、インド2.3%、メキシコ1.9%とそれぞれブラジルを上回ったが、中国の経常収支はGDP比1.2%、ロシアはGDP比4.5%それぞれ黒字を計上している。
3,800億ドルに達するブラジルの外貨準備高は、海外金融ボラティリティを緩和するのに充分である。海外要因が悪化すれば更なる新興国の為替下落に繋がる危険はあるものの、ルーラ大統領誕生の2002年にレアル通貨はR$4.0 を記録したが、現在の換算ではR$7.0 のドル高暴騰に相当していた。(2018年9月25日付けヴァロール紙)