イギリスのEU脱退と欧州の選挙日程も交渉の足かせに
ブラジルに新政権が発足することで、メルコスールと欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)に向けた交渉が停滞すると見られる。決選投票に進んだ2人の候補のいずれもが、政見放送で国際市場にアクセスするための条件を改善する必要があると言及するものの、いずれの候補が当選しようとも、発足初年の2019年にこの問題が優先的課題として扱われることはない。イギリスのEU脱退(Brexit:ブレグジット)と、EU域内で行われる選挙日程も、FTAの合意に向けた2経済圏の努力に対して障害になるだろう。
2018年の大統領選に社会自由党(PSL)から立候補したジャイール・ボルソナロ候補のスタッフの中には、メルコスールそのものを終わらせ複数の二国間合意で代替すべきだと主張する人物もいる。ボルソナロ候補自身、政見放送においてこの経済圏を再考すべきだと発言している。仮にそうした考えを推し進めるならば、2経済圏の国々で積み重ねてきた了解という、過去20年にわたる努力を捨て去ることを意味する。
他方、労働者党(PT)から立候補したフェルナンド・アダジ候補のスタッフは、合意が「我々の生産分野の再編政策に沿うように戦略的な手法に沿って締結される」必要がある、という。
10月18日に放送された政見放送でアダジ候補は、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ元大統領がPTの候補だった時期に提出された文書の要約を公表した。この文書は現政権を「クーデター」政権と非難するだけでなく、発展に対する自律的政策をとる国家主義かつ進歩主義的な政府にとって障害となる貿易協定を締結しかねない「追従主義的」外交政策を採用していると批判した。
第1次ルーラ政権(2003-2006)の発足当初にEUとの交渉を担当した外交官らは、当時、大統領府から合意を締結しないようにという指示を受けたと証言する。同じ時期、アメリカ自由貿易圏(FTAA)の計画も放棄された。
アロイージオ・ヌーネス外務大臣はエスタード紙に対し、「交渉は継続している」と話す。外務大臣によると、最近もモンテビデオで、交渉で懸案として残されていた部分をメルコスールの観点から、リストに洗い出す技術者レベルのラウンドが行われたという。まとめられた文書は、同じく合意に至っていない問題をリストアップした欧州委員のセシリア・マルムストローム貿易担当に対する返答として送付される予定だ。
マルコス・ジョルジェ商工サービス大臣は、「双方がこの交渉の合意にこれほど近づいたことは、かつてなかった」と断言する。そして技術担当者は、依然として、取り残されている問題に取り組んでいる。
ゼツリオ・バルガス財団のオリバー・ストゥンケル教授は、協定の合意日に関して同僚と行った賭けに勝ったと話す。同教授は、2018年には合意に達しないと賭けた。だが同教授は、このような賭けが行われること自体、専門家の間でも交渉がまとまると確信する人がいたことを示すのだと指摘する。ただし同教授は、「ここへ至って、合意に対して前向きになれる様々な要因は消え去った」と付け加えた。(2018年10月20日付けエスタード紙)








