マクリ大統領は政権誕生時よりも貧困層拡大で幕引きか

貧困層撲滅を訴えて当選したアルゼンチンのマウリシオ・マクリ政権誕生半年後の2015年第3四半期のアルゼンチン国民の貧困層は全体の29.2%であったが、2018年同期の貧困層は33.6%と大幅に上昇している。

昨年4月下旬、10年物米国債利回りが2014年以来初めて3%台に上昇すると、ドル買いペソ売りが一気に加速したために、アルゼンチンは短期間に3度の利上げを繰り返し、政策金利を40%にまで引き上げを余儀なくされ、またIMFにも支援を要請した経緯があった。

マクリ大統領は、前政権から引き継いだ経済的混乱は時間をかけて修正する道を選択、エネルギー価格への助成削減などの歳出削減策を進める一方で、成長を加速させるために農産物価格の安定を目的とした輸出税の軽減に踏み切ったが、財政赤字は減少傾向にあるものの、アルゼンチン政府は今も外国からの巨額の借り入れを強いられている。

アメリカの長期金利が上昇してドル高が一気に進むまでは、マクリ政権の緩やかな財政再建策は合理的な戦略に見えたが、ひとたび新興国市場への信用不安が再燃し始めると、その矛先は真っ先にアルゼンチンとトルコに向かって大きな影響を受けている。

首都ブエノスアイレスの貧困地域Los Piletonesの無料簡易食堂の需要は、過去1年間で20%増加した一方で、簡易食堂への原材料供給は30%減少していると活動家のMargarita Barrietos女史は貧困層増加を指摘している。

2018年6月までの1日平均の無料簡易食堂利用は2,100人であったが、昨年下半期には2,500人まで上昇、1983年~1989年のラウール・アルフォンシン政権並びに1999年~2001年のフェルナンド・デ・ラ・ルア政権よりも悪化しているとBarrietos女史は説明している。

しかしクリスティーナ・キルチネル政権時の2012年の1日平均の無料管理食堂利用は2,700人に達していたにも関わらず、メディアや統計操作で貧困層拡大は表面化していなかった。

2017年のアルゼンチンのGDP伸び率は2.9%増加に達して貧困率は4.1ポイント減少、しかし昨年のGDP伸び率は旱魃による穀物生産の大幅な減産などの要因で、マイナス2.6%予想されている。

今年のアルゼンチンのGDP伸び率はマイナス1.0%~1.5%、インフレ指数は昨年の47.6%を大幅に下回る25%にも拘らず、米国の金利上昇に伴って、一旦離れた投資家を呼び戻すのは容易でないとアルゼンチンのBTG パクツアル銀行エコノミストのアンドレ・ボレンスタイン氏は指摘している。(2019年1月21日付けエスタード紙)

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