昨日20日ジャイール・ボルソナロ大統領は、年金改革案を改めて新社会保障原案を発表、ブラジル国民全てに痛み分けを伴う新社会保障案の理解を求めたが、特に年金受給金額が大きな公務員に対する痛みが大きな内容となっている。
ボルソナロ大統領並びにパウロ・ゲーデス財務相は、今後4年間で1,610億レアル、今後10年間で1兆700億レアル相当する歳出削減に繋がる社会保障の憲法補足法案(PEC)を国会に提出した。
この新社会保障テキストは、現在民間人の平均年金受給額を大幅に上回り、尚且つ受給年齢が早い公務員に厳しい内容となっているにも関わらず、今後30日以内に提出される軍人向け社会保障案を除いて、民間や公務員、農畜産関連従事者を問わず痛み分けを伴う改正となっている。
現行の民間人の年金受給資格の最低年齢は男性65歳、新社会保障案も継続して65歳、前記同様に女性は60歳から62歳に引き上げられる。また現行の年金受給積立期間による年金入りは男性35年、女性30年であるが、新社会保障案では、最低年金受給積立期間20年プラス男女別最低年齢に変更される。
現行の公務員の年金受給資格の最低年齢は男性60歳から新社会保障案では65歳、女性は55歳から62歳にそれぞれ引き上げられる。また現行の年金受給積立期間による年金入りは男性35年から25年、女性は30年から25年にそれぞれ引き下げられる。
年金受給年齢が近い人には3種類の年金受給資格を得る方法が予定されているが、年金積立期間を満たしていない今年56歳の女性は、2031年には最低年金受給資格の62歳、今年60歳の男性は、2029年に最低年金受給資格の65歳に達する選択がある。
また男性の社会保障院(INSS)の積立期間35年、女性の積立期間30年を満たすために過渡期間は50%の通行料支払いとなる。例えば1年間の積立期間不足では6カ月間継続して勤務しなければならない。
2016年に社会保障院(INSS)では、85/95法と呼ばれ女性は年金入りの最低年齢が55歳でINSS積立期間が30年間、男性は年金入りの最低年齢が60歳 でINSS積立期間が35年間で満額の年金支給制度を導入、今年は86/96で満額の年金支給の権利が得られるが、男性は2028年、女性は2033年まで適用される。
また現行の農村労働者に対する年金受給最低年齢は60歳、女性は55歳、新社会保障案では男女ともに60歳、最低年金積立期間は男女とも現行の15年から20年間に引上げられる。しかし天候不順や農作物発育不良による最低年間積立金額600レアルが支払えない場合は、分割支払いや免除などの特別措置を検討されている。
現行の私立学校の教員の年金積立期間は男性30年、女性は25年で最低受給年齢は設定されていないが、新社会保障案では男女とも年金積立期間は30年、最低受給年齢は男女ともに60歳となる。
また公立学校の教員の最低受給年齢は、男性55歳、女性50歳、新社会保障案では男女とも60歳、また年金積立期間は男性30歳、女性25歳、新社会保障案では男女とも30年間となる。
現行の警察官の年金積立期間は男性30年、女性は20歳で最低受給年齢は設定されていないが、新社会保障案では年金積立期間は男性30年、女性は25年、最低受給年齢は男女ともに55歳となる。
現行の民間人の社会保障院への年金積立金は、給与が1,751.81レアルまでは給与の8.0%、1,751.82レアル~2,919.72レアルは9.0%、2,919.72レアル~5,839.45レアルは11.0%となっている。
民間人の新社会保障案の社会保障院への年金積立金は、最低給与998.00レアルまでは給与の7.5%、998.01レアル~2,000レアルは7.5%~8.25%、2,000.01レアル~3,000レアルは8.25%、3,000.01レアル~5,839.45レアル(年金最高支給額)は11.0%となっている。
現行の公務員の社会保障院への年金積立金は給与の11.0%。公務員の新社会保障案では、社会保障院への年金積立金は年金最高支給額までは民間人と同じたが、5,839.46レアル~10,000 .00レアルは11.68%~12.86%、10,000.01レアル~20,000.00レアルは12.86%~14.68%、20,000.01レアル~39,000.00レアルは14.68%~16.79%、39,000.00以上は16.79%~22.00%となっている。
現行の勤労不可能な高齢者および障害者に対する最低賃金額を支給する継続扶助(Benefício de Prestação Continuada–BPC)は、65歳で最低サラリー998.00レアルが支給されるが、新社会保障案では、60歳で400.00レアル、70歳に達すれば最低サラリー998.00レアルが支給される。
企業は年金受給している従業員に対する勤続期間保障基金(FGTS)口座への給与の8.0%に相当する積立支払い義務がなくなると同時に、その従業員の解雇時のFGTS積立金総額の40%に相当する罰金支払いが免除される。
昨年の社会保障院(INSS)の赤字は2,660億レアル、今年は2,920億レアルの赤字が予想されており、前記同様に内訳では都市部の赤字は1,960億レアル、2,180億レアル、農村部の赤字は1,140億レアル、1,160億レアル、公務員の赤字は510億レアル、540億レアル、軍部・治安関連赤字は190億レアル、200億レアルが予想されている。
社会保障院の年金・恩給支給では最低サラリーまでが全体の66.5%、最低サラリーの2倍までの支給は19.6%、公務員の大半が対象の2最低サラリー以上の支給は13.9%となっている。
2019年のブラジルの65歳以上の人口は全体の10%に相当する2,080万人、1人当たりの年金は10人で分担するが、少子高齢化が加速的に進む2060年には15.2%に相当する5,820万人に増加、1人当たりの年金は4人で支えなければならなくなる。
また1980年の女性一人当たりの平均子供人数は4.1%、1990年2.8人、2000年2.3人、2010年及び2020年1.8人、2030年~2060年は1.7人になると予想されている。
2017年11月の労働法改正、連邦警察によるラヴァ・ジャット作戦による汚職関連政治家の一掃、今回のボルソナロ新政権による新社会保障案による財政赤字削減や投資活性化、世界的信用回復、今後の犯罪防止法案や税制改革の実施に繋がればブラジル維新の夜明けとなり、一世紀近くも云われ続けてきた未来の国ブラジル、1968~74年の高度経済成長時代のブラジルの奇跡の再来に期待したい。(2019年2月21日付けエスタード紙/ヴァロール紙などから抜粋)