20年間を要して漸くEUとメルコスールはFTA締結

1999年7月1日にメルコスール・EU協力枠組み協定の発効から漸く20年間を要して、ヨーロッパ連合国(EU)とメルコスールは自由貿易協定(FTA)の政治合意に達し、今後15年間で両者間の90%相当の貿易関税は撤廃され、ブラジルの輸出額は1000億ドルまで拡大する可能性がでてきている。

現在のメルコスールからEUへの輸出の僅か24%が免税の対象となっているが、今後15年間で90%が関税撤廃でブラジル並びにアルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイで構成されるメルコスールの輸出増加に繋がる。

昨年のブラジルの28カ国から構成されるEU連合国への輸出総額は421億ドルであったが、関税撤廃率が90%に達する15年後には1000億ドルに達すると予想されている。

ヨーロッパ連合国(EU)とメルコスールの自由貿易協定(FTA)では、今後15年間のブラジルのGDPは1,250億ドル増加、投資総額は1130億ドルの増加に繋がると経済省では経済効果を弾いている。

EUとメルコスールのFTA締結で、ブラジルの農畜産品のオレンジジュース並びに果物、コーヒー加工品、魚類、甲殻類、植物油などの輸入関税撤廃が予定されている。

一方メルコスールのFTA締結で、ヨーロッパ連合国は自動車並びに機械・装置、化学品、医薬品などの付加価値の高い完成品の輸入関税が徐々に引き下げられる。

EUとメルコスールを合わせた人口は7億8,000万人で世界のGDPの25%を占める巨大な自由貿易市場が誕生するが、米国のドナルド・トランプ大統領による米中貿易摩擦に対して、EUではカナダ、日本、メキシコとの貿易協定を迫られていたが、メルコスールとのFTA協定にようやくこぎつけた。

2018年のブラジルからヨーロッパ連合国への輸出総額は421億ドルそのうち大豆油派生品が81億ドル、石油・天然ガス開発向けプラットフォームは76億ドル、鉄鉱石派生品68億ドル、パルプ62億ドル、原油57億ドル、コーヒー豆55億ドル、大豆47億ドル、銅鉱石派生品36億ドル、シームレスパイプなどの鉄鋼製品25億ドル、オレンジジュース22億ドルであった。

一方ヨーロッパ連合国からブラジルの輸出総額は348億ドル、そのうち家畜向けを含む医薬品は110億ドル、完成品75億ドル、自動車・トラクター部品50億ドル、工業用原材料36億ドル、ナフサ29億ドル、精密機械23億ドル、乗用車19億ドル、殺虫剤・殺蟻剤・除草剤19億ドル、ガソリン17億ドル、ベアリング・歯車17億ドルとなっている。

自由貿易協定(FTA)の主な項目として、メルコスールからヨーロッパ連合国への輸出の僅か24%が免税となっているが、今後10年間で免税比率は90%に上昇、残りの10%は徐々に関税率が引下げられる。

ブラジル企業はFTA締結で、年間1兆6,000億ドルに相当する28カ国から構成されるEU連合国の公共入札のマーケットへの参入が可能となる。連邦政府は今後15年間でブラジルの輸出は1,000億ドル、ブラジルへの投資は1,130億ドルに増加すると算盤をはじいている。

しかしEU連合国への牛肉輸出の無関税枠は9万9,000トンに制限される。またメルコスールへの自動車輸出では15年かけて輸入関税の撤廃が見込まれているために、ブラジル国内の自動車メーカーは、ブラジルコスト削減で早急な競争力強化を図る必要がある。

メルコスールとヨーロッパ連合国のGDP総額は19兆ドルで7億5,000万人の大消費市場を形成、ブラジルの輸出拡大には一大チャンスとなる一方で、EU連合国の付加価値の高い輸入品に対抗するためには、早急な年金改革や税制改革など一連の構造改革の実施をして競争力強化をしないと対抗できない。

全国工業連合会(CNI)では、FTA締結でEU連合国へのブラジルの農畜産品の輸出は100億ドル増加すると予想、また農畜産輸出額の30%に相当する鉄鋼製品並びに化学品、機械・装置輸出も予想されている。

またブラジルのEU連合国へ輸出品目の56%は工業関連製品、衣料品や化学品、航空機に対して2.5%~17.0%の輸入関税が課されているが、FTA締結で免税になる。

ルーベンス・バルボーザ元駐米大使は、今回のメルコスールとヨーロッパ連合とのFTA締結は、南米経済ブロックの自由経済締結を促進する起爆剤になると説明、過去20年間でブラジルは僅かエジプト並びにパレスティナ、イスラエルとの自由貿易協定に留まっていた。(2019年6月29日付けエスタード紙)

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