昨日社会保障年金改革特別委員会のサムエル・モレイラ報告官発表された新社会保障改革案テキストでは、改革案発効後10年間で前回の新社会保障改革案による9135億レアルの歳出削減を大幅に上回る1兆710億レアルが見込まれている。
この新社会保障改革案テキストによる1兆710億レアルに達する歳出削減は、農産物輸出に関する社会保障関連免税の終了並びに教育者に対する年金条件の緩和、銀行に対する収益率の非常に高い銀行業界に対して、純益に対する社会納付金(CSLL)の税率を15%から20%に引上げ等が含まれている。
しかし新社会保障改革案テキストによる農産物輸出に関する社会保障関連免税の終了に対して、農村族議員団は不満を抱いて抵抗すると予想されており、社会保障年金改革特別委員会の採決は来週になる可能性が出てきている。
マイア下院議長は、新社会保障改革の下院議会での投票を国会が休会する7月18日までにするために与野党と調整を行ってきたが、政治駆引きではなく野党議員もブラジルの経済回復の必要性に賛同して、先週まで賛成票が増える傾向となっていた。
また新社会保障改革案テキストでは、連邦公務員や教職員の年金条件緩和に結び付く一方で、連邦警察や交通警察、看守などの治安関係職員の年金入り条件は男女ともに55歳で30年間の年金積立期間、そのうち最低25年間は治安関係職員が不可欠となっている。
特に連邦治安関係職員の年金入り条件の緩和を要求しているのは、ジャイール・ボルソナロ大統領の御膝元の下院議会で54議席を占める社会自由党(PSL)議員であり、反旗を翻す可能性を示唆している。
連邦治安関係職員の年金入り条件として、軍関係者並みの年金入りの最低年齢制限の除去、最終サラリー並びに現役同等の年金調整率の維持を要求していたが、扶養家族の恩給条件だけが認められている。
連邦教職員並びに民間教職員の年金入り条件として、男性教職員の最低年齢は60歳、女性は57歳、最低年金積立期間は男女ともに25年、連邦教職員は、最低10年間は連邦職員で5年間は教職員関係に従事していることで、最終サラリー並びに現役同等の年金調整で年金受給が可能となる。
昨日、連邦政府と同一の新社会保障案に賛同する地方政府(州・市)の州知事一行はロドリゴ・マイア下院議長と会談を持ったにも拘らず、新社会保障改革案テキストに織り込むことはできなかった。
純益に対する社会納付金(CSLL)の税率を15%から20%に引上げによる臨時歳入は、535億レアルに繋がる一方でサンパウロ証券取引所(B3)に対して、CSLL税率を20%から17%に引き下げている。
昨日サムエル・モレイラ報告官発表された新社会保障改革案テキストの投票は、今日若しくは明日に予定されているが、49人で構成される社会保障年金改革特別委員会の投票では、最低25票の賛成票が必要となっている。
エスタード紙の調査では、特別委員会メンバーのうち新社会保障改革案テキストに賛成は22票、反対は12票、5人のメンバーは無回答、8人のメンバーは行方不明であった。
ボルソナロ大統領は、アマゾナス州選出議員8人の新社会保障改革の賛成票を確保するためのロビー活動として、今年第4四半期の期間にマナウスフリーゾーン域内のコカ・コーラ社などのソフトドリンクメーカーに対する工業製品税(IPI)の税制恩典を8.0%から10.0%に引き上げる。
ミッシェル・テーメル前大統領時に、昨年5月下旬から11日間継続したディーゼル燃料価格値下げ要請を発端とした、全国規模のトラック運転手の国道封鎖の抗議デモの緩和政策として減税政策導入による歳入削減を補うために、マナウスフリーゾーン域内のソフトドリンクメーカーの工業製品税(IPI)に税制恩典税率を20%から4.0%と大幅に引き下げていた経緯があった。(2019年7月3日付けエスタード紙)