工業部門でリセッション前の水準に回復した業種はわずか3業種

FGVが工業部門15業種を対象に実施した調査によると、12業種で工場の設備稼働率が平均的水準を下回った状態で、景気回復の足取りが緩やかなことが示された。Fiesp副会長は今回の結果について、今後数か月で状況が改善する兆候はないとコメントした。

ブラジルの製造業は、警戒を要する設備稼働率の低さで2019年の年明けを迎えた。製造業15業種の大半が、歴史的な平均水準を下回る設備稼働率にとどまったのだ。15業種中わずか2業種、製薬業界と紙パルプ業界だけが、高い設備稼働率、すなわち歴史的な平均水準を上回って生産設備を稼働できた。また外に衣料製造業が、平均的な水準を確保し工場を稼働させた。

これらの状況は、エスタード紙の依頼を受けてゼツリオ・バルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)が、業種別の景気動向を把握するために調査し、判明した。言い換えると、国内製造業は、機械及び設備、さらに保管庫など活用できずにいる資本財の調達に支出した資金を浪費していることになる。アロイージオ・カンペーロ調査担当主任は、「景気回復の足取りが緩やかなことを反映して製造業は引き続き、設備稼働率が低い状況にある。結果として、投資の必要もないことになる」と話す。

今回の分析結果によると、製造業の設備稼働率が第1四半期に74.6%だった。この水準は、歴史的な平均水準である81%を下回る。また業種別に設備稼働率を分析すると、いずれの業種でも、過去に記録したピークを下回る水準にとどまった。

現在の設備稼働率と歴史的な平均水準に関して、季節的要因を調整した上で比較した場合、最も大きな開きがあるのは資本財業界で、第1四半期の実績は歴史的な平均水準を10.1パーセントポイントも下回った。これに次いで大きな差を示した業種は、中間財業界の-6.1%、さらに耐久財業界が-4.7%で続いた。

2017年にリセッションから脱して経済成長率がプラスに転じたブラジルで、工業部門は、他の業種と比較して回復の足取りが迅速だった。回復の足取りを加速させた要因としては、アルゼンチンへの輸出の拡大と、勤続期間保障基金(FGTS)の資金の引き出しの承認(とこれに伴う耐久財の購入ブーム)、さらに、機械に対する需要を生み製造業界を後押しした出したアグリビジネスの成長がある。

だが、2018年第2四半期から風向きが変化した。トラック運転手によるストライキ、アルゼンチンのリセッション、2018年の大統領選に関連した政界の不透明感が、回復の芽を摘んだ。そして、内需の減速が追撃を加えたとカンペーロ主任は付け加えた。

 

 

失われた推進力

全国工業連合会(CNI)のフラーヴィオ・カステロ・ブランコ経済政策担当理事は、「経済生産は2019年7月から、工業分野を中心に横滑りしている。経済は活力を失っている」という。CNIはこのほど、ブラジル工業のGDPに関する見通しを、従来の+3.3%から+1.1%に下方修正した。2018年の場合、工業GDPは前年の-0.5%から+0.6%となり成長に転じていた。

カステロ・ブランコ理事によると、ブラジル経済はリセッションから脱したものの、高い失業率と国民の与信供与へのアクセスが限定的な状況から半ば停滞した状況にとどまっており、これが工業部門の売上や収益に打撃を与えているのだという。「これに伴い、現在の工業部門は、設備稼働率を引き上げる必要もない」と話す。

投資を不要にするこのような余剰の設備能力についてカステロ・ブランコ理事は、経済活動を制限する別の要因になっていると指摘する。というのも、新工場に対する投資は雇用と消費を生み出し経済活動を駆り立てるからだ。

同理事は、予定された改革により景気回復の足取りが加速する中で工業が年明けを迎えると期待されていたと話す。だがこの改革プロセスは混迷し、その足取りも緩やかなものになっている。「政界のペースは、財界のペースが抱える緊急性に対応できていない」。

 

ニッチ

FGVの調査によると、製造業で平均的な水準以上の設備稼働率を達成している業種は、紙パルプ業界と製薬業界に限られる。紙パルプ業界を牽引しているのは輸出向けで国際市場で競争力を備えたパルプ事業だ。サンパウロ州工業連盟(Fiesp)のジョゼー・リカルド・ロリス・コエーリョ副会長は、「業界の工場はフル稼働体制で、業績も上々だ」と話す。製薬業界の場合、医薬品は経済活動のペースに打撃を受けにくい必需品のひとつであるため、消費が不況に抵抗力を示している。

設備稼働率の低さは、まわりまわって企業の運転資金にのしかかってくるとロリス・コエーリョ副会長は指摘する。設備稼働率が低下すると、企業は固定資産(例:機械・設備など)への支払いを縮小させるため、利益率が圧縮される。「過小評価されているが、市場が回復した場合に工業部門は運転資金の問題を抱えることになるだろう」と同副会長はコメントした。

また工業部門の生産活動がいつ加速し始めるかは、業界の経営者たちにとって、大きな謎に包まれたままだ。Fiespのロリス・コエーリョ副会長は、「市場が今後6か月で改善するような兆候は全く見られないと話す。同副会長は、ブラジル製品は国外で競争力の問題に直面していると訴える。「国家輸出振興庁(Apex)は、解体された」と指摘。さらに国内市場の観点からは、失業率が低下するかどうかは改革の可決に左右されると同副会長は付け加えた。「失業率の低下なくして消費の拡大はおろか、工場の設備稼働率の上昇すらあり得ない。解きほぐすのが難しい、厄介なほつれだ」。(2019年4月22日付けエスタード紙)

 

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