下院CCJが、必要とされた34票を大幅に上回る賛成48票を確保し、反対18票という大差で年金制度改革案を承認した。
62日に及んだ審議の後、下院憲法・法務委員会(CCJ)が4月23日、連邦政府の提出した年金制度改革案を承認した。今後、この法案は下院特別委員会で審議される。法案が憲法の原則に従っているかを分析するCCJでの審議は、連邦政府が想定していた以上の時間を費やすものとなり、当初の条件の一部で政府経済スタッフが妥協することを余儀なくされた。このように交渉の材料にはなったものの、法案は依然として、2月20日に国会に提出された時点で1兆1,000億レアルとパウロ・ゲデス経済大臣が推算していた歳出削減効果を維持している。CCJの表決は、賛成48票、反対18票だった。このCCJを通過するには、34票の賛成票が必要だった。表決後、CCJのフェリッペ・フランシスキーニCCJ議長(PSL:社会自由党=パラナ州選出)は、「期待以上の結果で通過した」とコメントした。また同下院議員は、ミシェル・テーメル前大統領が提出した改革案の表決で賛成票が31表だったことに言及した。
また野党議員らは、この表決の無効を求めて提訴する意向を表明した。
下院のロドリゴ・マイア議長(DEM:民主党=リオデジャネイロ州選出)は今回の審議に立ち会い、DEM及びブラジル共和党(PRB)、進歩党(PP)に所属議員らと次のステップにおける対応を協議した。同下院議長は、4月25日に特別委員会を下院に設置するため、各党に党リーダー(調整役)の指名を求めるとコメントした。マイア下院議長はさらに、特別委員会における法案報告者について、ゲデス経済大臣とロジェリオ・マリーニョ社会保障・労働局長と「方針をすり合わせる」と断言した。加えて、同下院議長は連邦政府に対して、下院内に連立基盤を構築する取り組みを進めるよう求めた。「現在の連邦政府には、この法案全体どころか議論を呼ぶ個別の案件に関しても一切、可決できるような票田を確保していない。連邦政府はここで息継ぎをして、改革はブラジル国民にとって重要なのだと伝える必要がある。(ジャイール・ボルソナロ)大統領は、法案の可決がブラジルにとって良いことなのだと明確に示す必要がある」という。
テーメル大統領の場合、CCJの審議に10日を必要とした。ジャイール・ボルソナロ大統領の年金制度改革は、新たな修正を求めるセントロン(Centrao:中道多数派)のプレッシャーの下で、下院特別委員会に持ち込まれることになる。CCJで加えられた4か所の法案修正は、否決させるという圧量のもとにセントロンが交渉の中心的役割を担った。
野党
表決移行をめぐる攻防は、野党議員が審議の先送りを求める要求を次から次へ断続的に提出したことで、9時間に及ぶ審議となった。泡沫政党のまとめ役であるジャンジーラ・フェガリ下院議員(PC do B:ブラジル共産=リオデジャネイロ州選出)は、マイア下院議長に対して、法案により影響する数字を政府が提出する必要があると主張し表決を20日先送りするよう求める要望書を、自身の署名を添えて提出したほどだった。
野党の戦略は、別の審議で採用されたのと同様、大騒ぎし、騒ぎ立てるというものだった。ただし今回、フランシスキーニ議長はより厳しい対応で審議を進め、表決が見送られるのを阻止した。野党側の反対アピールにもかかわらず、フランシスキーニ議長は要求を受け入れず表決に移行した。
マリア・ド・ロザリオ下院議員(PT:労働者党=リオ・グランデ・ド・スル州選出)とグレイジ・ホフマン下院議員(PT=パラナ州選出)、エリカ・コカイ(PT=連邦区選出)、タリリア・ペトローネ(PSOL:社会主義及び自由党=リオデジャネイロ州)が議長の机を取り囲み騒然とした時、彼らに対してフランシスキーニ議長は、「私は子供ではないのだから、私を指さして話すのはやめたまえ!」と発言した。こうして新たな騒動が起こったものの、フランシスキーニ議長はあくまで闘争的な態度で圧力を保った。
本会議場では、政府擁護の下院議員らが、「脅迫を許すな議長殿。団結して対処せよ」と叫ぶ声が聞かれた。また下院の政府調整役、ジョイセ・ハッセルマン下院議員(PSL=サンパウロ州選出)は、野党議員の絶叫に、「警察を呼ぶべきだ」とCCJ議長に発言した。
戦略
改革案を確実に可決させるため、ボルソナロ政権の法案に反する委員の一部が、同じ党ながら法案に賛成する人物に置き換えられた。その1人が、ラインホルド・ステファネス下院議員(PSD:社会民主党=パラナ州選出)で、当初は代理委員だったが後に正委員に変更された。
CCJでの表決をめぐってボルソナロ大統領には、自身が権利を有する下院議員特別定年制度の権利行使の放棄が要求された。ボルソナロ大統領は28年にわたって下院議員を務め、この制度により年金の給付を受ける権利を持つが、まだこの権利を行使ししていない。この権利は、大統領の給与に加算して受給できる。この要求は、クラリサ・ガロッチーニョ下院議員(PROS:社会秩序共和党=リオデジャネイロ州選出)が提出した。
当初の法案から削除された項目
年金受給者に対するFGTS
この提案は、年金の受給を開始している労働者の勤続期間保障基金(FGTS)の納付に対する義務付けをなくし、また当該の労働者を解雇した場合にも雇用主に対し40%の罰金の課徴を免除するというものだった。
強制的定年退職
補完法によって公務員の強制的定年退職の年齢の上限を規定するための条項。最近、70歳から75歳に引き上げられた。この条項への違反を理由に、上級裁判所判事の構成において、政府が司法への影響力を行使できるよう指名可能な入れ替え人事が容易になると期待されていた。
改革に関連した訴訟を扱う裁判所
この提案は、年金制度改革に反対する訴訟に関して、原告の居住する、あるいは当該の請求の根拠となる「行為又は事実」が発生したとされる地域の裁判所でのみ訴状を受理するというもの。この条項が撤回されたことで、連邦政府に対する訴訟は引き続き、連邦裁判所で審議される。
行政府の独占性
社会保障にかかわる規定を変更するための補足法案を提出する権限を連邦行政府に限定するというもの。撤回に伴って立法府も法案を提出できることになった。(2019年4月24日付けエスタード紙)