米中貿易摩擦悪化でレアルに対するドルの為替はR$3.96に高騰

中国企業による米国産の農産物輸入の一時停止並びに昨日の中国元は2008年の世界金融危機以降初めて1ドル7元を割り、米国のドナルド・トランプ大統領は、中国の「為替操作国」と名指しで非難している。

米中の貿易摩擦激化に伴って世界中の証券取引所の株価は下落、昨日のサンパウロ平均株価(Ibovespa)は2.51%下落した一方で、レアル通貨に対するドルの為替は、1.66%高騰のR$3.96を記録して5月30日以降では最高のレアル安を記録している。

またナスダックは3.47%下落、ダウジョーンズはマイナス2.90%、香港のHang Sengマイナス2.85%、ロンドンのFTSE 100マイナス2.47%、パリのCAC40マイナス2.19%、フランクフルトのDAX 30マイナス1.80%、上海のSSECOはマイナス1.62%と軒並み下落している。

今月1日にトランプ米大統領は、現時点で制裁関税の対象となっていない中国からの輸入品3,000億ドル相当に10%の追加関税を課すと発表して9月1日から賦課を予定している。

米中首脳は6月末のG20大阪サミットでの会談で合意したにも拘らず、競争的な通貨切り下げに関する中国の公約に反するもので、米国の中国からの輸入品3,000億ドル相当に10%の追加関税並びに中国元の下落容認で、米中の貿易摩擦はさらに激化することが避けられなくなっている。

また米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表は、今月1日通商法301条に基づく追加措置として発表されている対中輸入額2,000億ドル相当への関税賦課について、追加関税率を10%から25%への引上げ検討も発表していた。

サンパウロの投資ファンド関係者は、米中貿易摩擦が更に激化すれば短期間にドルに対するレアル通貨は、R$4.10を突破するドル高の為替になる可能性を指摘している。

7月末の国際通貨基金(IMF)では、今年の世界の平均GDP伸び率を前回予想の3.3%から3.2%に下方修正、2018年の世界の平均GDP伸び率は3.6%であった。

ジェツリオ・ヴァルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)エコノミストのリヴィオ・リベイロ氏は、「我々は単なる貿易戦争を見ているのではなく、今後50年間の世界の覇権争いで、新たな冷戦に繋がる可能性がある」と指摘している。

また「今までの米中貿易摩擦では、中国政府の対抗措置は米国よりも穏やかな戦略であったが、今回は人民元の為替安で対抗」と強気に出て来ているとリヴィオ・リベイロ氏は指摘している。

米中貿易摩擦の激化は世界貿易にブレーキをかけるだけでなく、ブラジルなどの不安定な新興国から投資引上げで、資金がより安全な先進諸国に流れる可能性が拡大する。

米中貿易摩擦の激化は短期的にはブラジルの中国への農産品輸出は拡大する一方で、世界貿易の縮小に繋がるために中長期的には芳しい結果とならないとRIO BRANCO Investimentos社チーフエコノミストのエヴァンドロ・ブシ―ニ氏は指摘している。(2019年8月6日付けエスタード紙)

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=46193