ブラジル地理統計院(IBGE)の全国家庭サンプル調査(Pnad)の統計を基にしたコンサルタント会社LCA社の調査によると、2015年から2017年にかけてブラジルの貧困層人口は上昇していたにも拘らず、2018年は減少に転じている。
しかし世界銀行が定めている1日の一人当たりの所得が1.90ドル(月間145レアル相当)以下のブラジル国内の最貧困層人口は、2015年から連続して増加傾向を示しており、所得による社会格差が拡大傾向を示している。
また世界銀行が定めている1日の一人当たりの所得が5.5ドルの貧困層人口は、2014年から2017年まで4年連続で増加していたが、昨年は非正規雇用が牽引して前年比2.4%減少している。
調査開始の2012年のブラジルの貧困層人口は5,234万人、2013年は前年比4.9%減少の4,975万人、2014年は8.0%減少の4,575万人まで減少、しかし経済リセッション突入による失業率上昇に伴って2015年は5.4%増加の4,822万人と前年比約250万人増加、2016年は7.1%増加の5,166万人、2017年は4.7%増加の5,407万人とピークに達したが、2018年のブラジルの貧困層人口は前年比2.4%減少の5,278万人に減少している。
調査開始の2012年のブラジルの最貧困層人口は1,160万人、2013年は前年比13.3%と二桁減少の1,006万人、経済リセッション入り前の2014年は10.5%減少の900万人まで減少していた。
経済リセッション突入の2015年は前年比9.8%増加の989万人、2016年は20.7%と大幅増加の1,194万人、2017年は11.0%増加野の1,325万人、2018年は2.7%増加の1,362万人に達している。
貧困層が増加し始めた2015年は、ジウマ・ロウセフの第2次政権の初年度でインフレ指数の広範囲消費者物価指数(IPCA)は10.67%と二桁に達し、失業率が急上昇、GDP伸び率はマイナス3.6%を記録した影響で247万人が貧困層に落込んでいた。しかし2004年~2014年の10年間で4,000万人に達する貧困層が中間層に移動した持続的経済成長を達成していた時期もあった。
2018年の最貧困層は前年比2.7%増加の1,362万人に達したが、北東部地域の最貧困層は、前年比2.0%増加の772万人とブラジル全国の半分以上を占めており、北部地域は177万人から199万人と22万人増加した一方で、南部地域は、3.8%減少の62万4,000人と地域格差が拡大している。
2012年のブラジル全体の平均ジニ係数は0.540であったが、2015年には0.524まで減少して改善傾向にあったにも関わらず、経済リセッション開始で2015年以降は毎年上昇傾向を示しており、2018年の平均ジニ係数は0.545と2012年よりも悪化している。
地域別ジニ係数比較では、2017年の北部地域の平均ジニ係数は0.53であったが、2018年は0.55に上昇して悪化、北東部地域は0.55から同じ数値で推移、南東部地域は0.52から0.53%、南部地域は0.47から同じ数値で推移、中西部地域は0.52から0.51と唯一減少して改善している。
2018年のボルサファミリアなどの生活扶助受給世帯は、前年比2.5%増加して全世帯の13.7%と増加した一方で、2012年は15.9%、2013年は15.7%、2014年は14.9%、2015年は14.0%と4年間連続で減少傾向を示していた。(2019年10月17日付けヴァロール紙)