現物取引で72億ドルの介入をして外貨準備高を溶かす一方で為替相場は月間7.54%に達するレアル安を記録。
外国為替市場における極端なドル高レアル安を抑え込もうというブラジル中銀の取り組みにより、3月だけでこの市場に152億4,500万ドルもの新たな資金がつぎ込まれた。3月第2週に一時は1ドル=5レアルに達したドルは、資産を保護しようとする投資家が動いていることで、世界の通貨に対して値上がりしている。その背景には、新型コロナウイルスの世界的な大流行とこれが世界経済の成長に影響を与える期間と規模の予測がつかないという事情がある。
しかも悪いことに、3月初旬には産油国が対立する石油戦争がはじまり、原油の国際相場の大幅下落につながった。しかもブラジルでは、支出拡大が必至となった予算をめぐって紛糾する政治情勢が、ドル高レアル安を一層あおった。
2020年の年明け以降で見た場合ですらレアルは、対ドルで20%も下落している。しかも3月最初の2週間だけで、レアル安は7.54%に達している。このレアル安は、中銀が連日、市場で介入を行ったことでこれ以上の昂進が進むのが阻止された形だ。この介入の多くは、通貨のボラティリティーが高まった場合に想定された予告が行われないものだった。
今週だけで中銀は、現物市場で72億ドルを売却した。この種のオペレーションは将来的に通貨当局が同額のドル購入を想定していない契約のため、ドルを投入することは「静脈注射」といえるものである。実際問題としてこれは、ドル高抑制のために政府が外貨準備高を切り崩していることを意味する。なお、ブラジルの外貨準備高は3,610億ドル台である。
2019年12月にエスタード紙が指摘したように、中銀は2019年の下半期を通じて通貨変動に対処するために280億ドルを売却した。だが2020年3月第2週だけで中銀は、その6か月間に販売した金額の4分の1を売却する必要に迫られたのである。
為替スワップ取引
ドルの現物売りに織り交ぜて、中銀は今月、60億ドルの為替スワップ取引を実施した。この種の契約は、先物市場でドルを販売するのに相当する。国内でより流動性のあるのがまさにドルの先物市場であり、通常、現物を含め、相場を左右するのがこの市場である。
3月13日の場合、中銀は20億ドル以上を買い戻しと紐づけされた競売に提供した。この種のオペレーションは、当局が特定の将来の期日に同額を買い戻すことを保証したオペレーションである。
3月第2週の週明けに中銀のブルーノ・セーラ通貨政策理事は、外国為替市場において中銀があらゆる手段を講じて対応していくと表明済みだった。サンパウロ市内で行われたイベントで同理事は、「いかなる手段に対しても講じることに偏見はない」と言い切った。
一方でセーラ理事は、外国為替市場を統制しようと中銀が介入する規模について、事前にコメントすることは拒否した。同理事によると、「ロットの定義というものがない」という。このためこの介入に関する告知は、予定される競売の前夜あるいは追加の競売が行われる直前というタイミングで適時行われることになる。
しかし市場関係者の中には、介入スケジュールと介入可能な規模の全容を含めた「為替プログラム」を中銀が公表すべきだと主張する声もある。その主張は中銀元理事で現在UBS銀行のチーフエコノミストを務めるトニー・ヴォルポン氏も、金融機関に対してより高い安全性と予測可能性を提供する手段だとして支持している。一方、国庫管理局前局長で現在ASAバンク理事のカルロス・カワル氏は、現物市場でのドル売りあるいはスワップ取引の競売に対して500億ドルのパッケージまで提案している。(2020年3月14日付けエスタード紙)