コンサルティング会社テンデンシアスの試算に基づくと、2020年の州別GDPは、3月中旬から新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を阻止するために経済活動が停止した影響を受け、全ての州でマイナス成長となる。また下落幅は、とりわけブラジル南東部と北東部で大きなものになるとしている。一方、同じくコンサルティング会社の4Eコンスルトリアは、ブラジル中西部だけはアグリビジネスが経済を支えて2020年にマイナス成長に陥らないと予想している。
テンデンシアスが想定するシナリオでは、2020年のブラジルのGDP成長率は-4.1%。一方、4Eは-2.3%を想定している。
国内で最も経済的に豊かなブラジル南東部では、その経済の原動力として鉱工業に加えて自動車工業、金属工業といったポジティブなサイクルを生み出す経済活動にCOVID-19が与える影響が大きく、-4.3%を記録するとテンデンシアスは予想している。中でもサンパウロ州のGDPは-5.1%と、州別に見て国内で最悪の落ち込みを記録するグループに入ると受け止めている。
エコノミストのルーカス・アシス氏は、サービス業と商業だけでなく経済活力に強い影響を与える工業も、サンパウロ州ではマイナス成長に陥ると指摘する。テンデンシアスは、JCBとジョンディアといった機械・設備工業が工場の稼働を停止しただけでなく、フォードとゼネラルモーターズ(GM)、ホンダ、フォルクスワーゲン(VW)といった自動車メーカーも生産を停止したことを指摘した。
同様にブラジル南東部に属するミナス・ジェライス州とエスピリト・サント州も、州GDPの成長率をそれぞれ-4.8%と-4.3%と見込む。これらの州経済が低迷する原因の一部は、資源会社バーレの南部システムおよび南東部システムにおける鉄鉱石生産量の縮小、さらにゲルダウとウジミナス、アルセロール・ミタルなどの鉄鋼会社が生産規模を縮小しているためである。
リオデジャネイロ州の場合、州経済に占めるサービス業の比重が大きいが、州別に見たGDPの落ち込みとしては相対的に小さいとはいえ2020年に-2.3%を記録するとテンデンシアスは予想している。その背景には、原油及び天然ガスの生産拡大がある。
「原油相場の値下がりは国内供給に影響するが、それでも同州は、石油プラットホームのP-68を含めカンポス堆積盆地に設置された石油プラットホームによる「ランプアップ」を見込める上、年内に2基の石油プラットホームが稼働を開始する」とアシス氏はコメント。その上で同氏は、リオデジャネイロ州GDPには下げ圧力がかかってることも認めた。
一方、4Eのアナリスト、ルカ・クライン氏は、ブラジル南東部のGDPが2020年に-2.2%を記録すると予想する。「この地域は国内GDPの60%を担う。それだけに、国内平均に近似した変動を見せる」とクライン氏は言う。またサンパウロ州はCOVID-19の感染者が最も集中(国内全体の3分の1強の1万6,700人)しているものの、同時に、サンパウロ州経済で大きな比重を占める金融と通信、インフォメーションのようなサービス業は活動を継続しており、州GDPの下落を緩和する役割を担うと同氏は説明する。
ただし、パンデミックに対して各州政府が個別に異なる封じ込め対策を採用していることで、地域ごとの経済活動はばらつきが大きくなるとクライン氏は指摘した。(2020年4月24日付けバロール紙)