パンデミック危機によるレアル安がFCAの製造再開後のコストに影響へ(2020年4月27日付けバロール紙)

最近の外国為替市場におけるドル高レアル安に関してフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のアントニオ・フィロサラテンアメリカ担当社長は、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックで停止した国内自動車業界が製造を再開する際のコストの上昇につながるという見方を示した。同社長によると今後数週間で操業を再開する自動車メーカーの需要に対応するため、国外で製造された様々な製品に依存する多くのサプライヤーが、今の時点で輸入を開始する必要に迫られるという。

セルジオ・モーロ法務治安大臣が辞任したこと受けて為替相場は4月24日、1ドル=5.66レアルで取引を終えた。FCAは国有化比率が高いとフィロサ社長は話すものの、同社のサプライヤーの多くが輸入品に依存している。「この問題に関して当社は、将来的なコスト構造を形成しかねないと強く懸念している」同社長はコメント。その上で同社長は、レアル安の改善が「一朝一夕では起こらない」と指摘した。「当社が操業を再開した時点で、1ドル=5.60レアルに基づいたコスト構造を抱えている多くのサプライヤーがいることだろう」と話す。

FCAは集団休暇を実施しており、5月には工場の製造ラインを再稼働する予定である。だがこの場合でも従業員は、週に数日の勤務にとどまる。同社は現在、労働時間を短縮する労使協定を締結しており、必要な就労時間を割り出す作業を進めている。「契約をより柔軟に対応できる対策で連邦政府が効果的に対応した。その結果当社は、雇用を継続できている」と同社長は強調した。

さらに同社長は、現在の同社の最大の課題は現金預金だと明らかにした。フィロサ社長によると4月と5月の売上はゼロ近辺になる見通し。「当社は、資金の流動性に極度の問題を抱えている」と同社長は付け加えた。なお、FCAはラテンアメリカ全体で2万6,000人の従業員を抱えている。

ブラジルの自動車市場に対してフィロサ社長は、落胆させられるようなシナリオの中で楽観的と呼べるものだとという見通しを維持している。同社長によると2020年の販売台数は、第2四半期(4―6月期)に前年同期比-70%、続く第3四半期は同-40%、第4四半期は同-20%を見込む。

2020年下半期に同社長が期待するような改善の兆候がなければ、別のシナリオに切り替わり、状況は劇的に悪化する。「パンデミックは過去のものとなり、経済活動が復活する。だがそのペースがどれほどの速度になるかは、まだ分からない」とフィロサ社長は強調した。

さらに過去数日の政治面での状況の急変も、ブラジルの政治・経済に対する不透明感を高めている。フィロサ社長がインタビューに応じた24日には、セルジオ・モーロ法務治安大臣が辞任し、その影響でサンパウロ平均株価指数(Ibovespa)は5.45%も値下がりした。

「株式市場に投資していたジープCompassの潜在的な顧客が、資金を失ったと私は想像している。その資金を取り戻すのはいつか、その時にパンデミック危機前に予定していた車を購入するのか、あるいは購入をしばらく見合わせるのか?と考えている」という。

モーロ法務大臣の辞任が金融市場に与えた影響の波及という面で自動車業界は、それが自動車を購入しようという人達の景況感を損ないかねないものだと懸念しているのであるが、それ以上に最悪の事態は、連邦政府の経済スタッフにも人事が及ぶことである。

工業部門の代表者らはパウロ・ゲデス経済大臣と同大臣のスタッフらと緊密な関係を維持している。官民が会合を持つペースは、COVID-19がパンデミック状態となってからむしろ上がっている。

業界の役員らは、融資枠の保証で公的機関が参画することを主な目的として、自動車業界の生産チェーンにパンデミック危機が与えている影響を計測したデータをゲデス経済大臣に対して手渡した。フィロサ社長は、自動車メーカーと自動車部品メーカー、ディーラー網を合わせると7,000社が存在し、雇用者数は120万人、業界の国内総生産(GDP)は2019年GDPで4%を占めたことを指摘。さらに、「我々の業界は巨大なコストを伴う構造を持つが、売上がゼロで推移している」と強調した。(2020年4月27日付けバロール紙)
 

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