ブラジルを訪問したアメリカの代表団が攻勢を仕掛けており、国内で導入する携帯電話ネットワークの新システムにファーウェイ(華為)ではなく中国以外の企業を採用するよう求めている。その背景には、第5世代移動通信システム(5G)に対する主導権争いと、それによって生み出される可能性のある経済発展がある。
ブラジルで導入される第5世代移動通信システム(5G)から中国企業のファーウェイ(華為)を排除する攻勢としてアメリカは、国内電話通信業界に対する「あらゆる投資」に資金を提供する意向を表明した。ブラジリアを訪問したアメリカ当局の代表団が、10月20日に言及した。アメリカ側はこれ以外にも、最先端の通信技術である5Gのインフラ整備から中国資本を排除することも併せてブラジル政府に要求した。
反中国姿勢を打ち出したアメリカの直接的な働きかけについてブラジルの外交筋は、世界の経済的覇権を争って旧ソ連を相手に展開していた冷戦の改訂版と受け止めており、ワシントンがしばらく示してこなかった経済開発に対する同盟関係の提案を明確に示したものとなっている。
アメリカと中国の対立の背後には、5G技術に対する主導権争いがある。アメリカは、世界で初めて4Gの利用を可能にした国であるが、これは、FacebookとNetflix、Googleの親会社であるアルファベットなどのアプリケーションのエコシステムの導入と発展に不可欠なものだった。これらの企業は、アップルとマイクロソフト、アマゾンと並び、世界のでも有数の企業価値のある企業と位置付けられている。
他方、ファーウェイは現在、スウェーデンのエリクソンとフィンランドのノキアの先を行く、5G向け中核機器の主要サプライヤーである。アメリカにはもはや大規模メーカーが存在せず、主に、北欧のこの2社のサービスに依存している。アメリカ資本のシスコとクアルコムは引き続きこの業界で事業を展開してはいるものの、中核機器を製造していない。
「大体の選択肢が存在しないという誤解があるが、存在しないというのは誤りだ」と、国家安全保障会議(NSC)のジョシュア・ホッジズ西半球担当暫定シニア・ディレクターは今回、ブラジリアで報道関係者を招待して行われた会合で発言した。さらに、「そこには競争があり複数の選択肢を選ぶことができる。アメリカは、それに対して資金を提供する準備ができている」と強調した。「中国は(情報へのアクセス)を支持していない。香港で何が発生したか(1997年にイギリスから中国に返還された際の約束を反故にしてメディアの統制と自由を制限する国家安全法が6月に施行された)を見てほしい。アメリカは、中国がどのようにこのデータと技術を国政に利用するのかという点を懸念しているのであり、この技術を利用するユーザーに対して懸念しているわけではない」という。
5Gの技術
5Gは、第5世代移動通信システムである。これは、現在稼働している第4世代の4Gと比較して、最大20倍の通信速度を保証する。
ホッジズ・シニア・ディレクターは、アメリカがブラジルと互恵関係のパートナーでになり得ることをと示したいとコメント。その上で、ブラジルがより強くなるよう希望しているのであり、中国との関係において「ブラジルの主権侵害」を希望していないと付け加えた。「我が国はここへ来て中国のように恫喝するのではなく、選択肢を示しているのだ。我が国は、『中国と取引しないように』と言っているのであり、ブラジルが他のパートナーに出会うこと、ブラジルの皆さんと我が国の同盟がさらに強まることを希望しているのだ」という。
このブラジルのマスコミ関係者を対象にしたインタビューでは、米国輸出入銀行(Eximbank)のキンバリー・リード頭取と米国国際開発金融公社(DFC)のサブリーナ・タイシュマン理事が、ブラジルの電話通信会社による5Gネットワークの拡充及び機器の調達への融資として、それぞれ1,350億ドルと600億ドルの予算を確保することを強調。「業界のあらゆる投資に融資できる資金は十分に確保されている」と付け加えた。
情報分野で、中国企業の台頭は、既にファーウェイだけにとどまらない状況だ。中国製アプリは過去数年、Whatsappと同様のメッセージアプリWechat、10億人のユーザーがいるTiktokなど、若年層を中心に熱狂的な広がりを見せている。こうした状況への対応として、InstagramはReelsをリリースした。いずれの中国企業も、身売りするかさもなければアメリカ市場から締め出されるかを選ぶことになると、アメリカのドナルド・トランプ大統領の直接的な圧力を受けている。
5G問題に加えて、ファーウェイ・ド・ブラジルの排除は電話通信サービスのコストの上昇を招きかねない。同社は既に20年以上もブラジル国内で事業を展開しており、電話通信キャリアの主要サプライヤーの1社になっている。国家電気通信庁(Anatel)の資料によるとファーウェイは現在、2G及び3G、4Gの移動体通信ネットワークのインフラで、スウェーデンのエリクソンに次ぐ35%のシェアを持つ。言い換えると、国内の移動体通信ネットワークを利用した通話あるいはデータ通信は、現時点でほぼすべてファーウェイの機器を経由していることになる。ファーウェイは政府内でも同様に強い存在感を示している。同社の設備は、様々な官公庁のネットワークとデータセンターで使用されている。
なおアメリカは、今回のブラジルで行ったものと同様のスピーチを通じて、カナダやオーストラリア、ニュージーランド、インド、日本、さらにイギリスといった国でファーウェイを締め出す説得を成功させた。他方、ドイツとフランス、スペインは同社の参加を制限しないという判断を下した。
「そこには競争があり、利用可能であり、アメリカは、それに対して資金を提供する準備ができている」国家安全保障会議(NSC)のジョシュア・ホッジズ暫定西半球担当シニア・ディレクター談
トランプ米大統領の再選問題
外務省で行われた会合でジャイール・ボルソナロ大統領は、アメリカの代表団に対してドナルド・トランプ大統領再選の就任式典に列席を希望すると発言した。ボルソナロ大統領はさらに、彼のこうした励ましは「真心から」のもので、隠すものでもないという。その上で同大統領は、アメリカとの良好な関係を強調した。
「それが神の思し召しであるなら、アメリカ国内で間もなく再選される大統領の就任式典に出席する。私は、その気持ちを隠しはしない。真心からのものだ」とコメント。さらに発言の最後にボルソナロ大統領は、「神の思し召しがあるなら、12月に再びお会いしましょう」とアメリカの代表団に別れの挨拶をした。
(2020年10月21日付けエスタード紙)