過去6年に平均で1日に17か所の工場が閉鎖

過去6年に平均で1日に17か所の工場が閉鎖

 

フォードがブラジル国内生産から撤退すると判断したことは、脱産業化に向かうプロセスの明確な証拠であり、改革の必要性を浮き彫りにした。2015年から2020年にかけて国内では、3万6,600か所の工場が閉鎖した。

 

先週(1月第3週)、ブラジルで100年の歳月を重ねたフォードが国内工場を閉鎖する決定を下したと発表したことで、国内では脱工業化プロセスが進行中で、しかもその状況が悪化しているのだと証明した。ブラジルがリセッションに足を踏み入れた2014年以来、すなわち6年前から一貫してブラジルでは国内の工場数が減少している。2020年には、5,500か所の工場が、操業を停止した。全体で見れば、2015年から2020年にかけて、3万6,600か所の工場が姿を消した。これはすなわち、1日にほぼ17か所に相当する工場が息の根を止められているということだ。全国財・サービス・観光・商業連合(CNC)が独自に集計したデータを、エスタード紙に対して独占的に提供して明らかになった。

 

2002年に始まったCNCの集計によると、工業以外の産業が勢いを増したことから工業は、国内経済全体に占める比重を縮小しつつも2014年まで工場数を増加させてきた。その結果、6年前には国内の工場数が38万4,700か所を数えた。ところが2020年末になると、これが34万8,100か所に減少したという推計結果が出た。フォードが工場閉鎖を発表する少し前、別の多国籍企業も国内工場を閉鎖すると発表している。すなわち、ソニーと、同じく自動車メーカーのメルセデス・ベンツだ。

 

CNC経済部のエコノミスト、ファビオ・ベンテス氏は、「脱工業化プロセスは、(国産品を国外で値上げし国内では輸入品の値下げを後押しする方向に国内通貨の為替レートを誘導した)レアル計画の始まりと同時に発生した。ブラジル・コストに加えて、最近では生産性の低下と工業団地の一部で近代化が見送られて脱工業化プロセスに拍車をかけている」と説明する。その上で、「このところのレアル安は農業部門と資源業界を助け、貿易黒字の追い風になった。ただ、これらの業界と違って工業部門に対するプラス効果は即時的なものではないのだ」と指摘した。

 

ブラジルの国内総生産(GDP)に占める製造業のシェアについてベンテス氏は、2020年に11.2%まで低下すると推算する。これは、1946年に計測が始まって以降で最低となる。

 

CNCの調査は、2つのデータベースを基にしている。ひとつは、現在は経済省が管轄して実施する社会情報年次報告書(RAIS)である。もうひとつは、ブラジル地理統計院(IBGE)が計測する国民経済統計システムだ。この調査では、2020年に関係したデータのみ、製造業のGDP及び業界の生産性に対する予測値を基にした推計値である。それは、仮に生産が増加するなら、1パーセントポイント増加するごとに翌年には工場がおよそ1,200か所増加するという想定に基づく。落ち込みに対しても同じ比率の想定が当てはまる。「この変動の相関性を考慮すると、2020年には工場数がこれまで以上に大きく減少するという見通しを否定できない」とベンテス氏は説明した。

 

国内工業の現状は、ピークとなった2011年を14%下回る水準にある。工業開発分析研究所(Iedi)のチーフエコノミスト、ラファエル・カグニン氏は現在の状況について、敵対的なビジネス環境と業界の国際競争力にまで影響を及ぼす構造的要因の産物だと受け止める。その要因の核心部分は、ブラジルの複雑な税制だと同氏は指摘する。もうひとつ、基本的なポイントとして同氏は、イノベーション振興策という、政府の現在の取り組みから完全に抜け落ちている問題に取り組む必要性を挙げる。

 

COVID-19のパンデミックという状況下で国家間の物理的なやり取りに制限が設けられたことは、地理的に分散しながらも統合されたサプライ・モデルの息の根を止めかねない事態だったとカグニン氏は説明する。さらに、「技術が組み合わされ世界にバリューチェーンが張り巡らされた現在の国際環境では、競争力を抑えつける税制由来の負荷が拡大する傾向にある。この問題が解決されるのだという明確なシグナルが必要だ。それがなければ、投資を呼び込み、また惹きつけておくことは、非常に難しくなる」と付け加えた。

 

サンパウロ州工業連盟(Fiesp)の副会長でブラジル・プラスチック工業協会(Abiplast)の会長を務めるジョゼー・リカルド・ロリス・コエーリョ氏も、工場の閉鎖を企業が判断する重要な要因として、政府が改革を進めてビジネス環境の改善に向けた対策を着実に講じていくという展望を持てない側面があると指摘する。

 

フォードのような多国籍企業は、世界的な規模で生産を担う工場に投資するのだと、ロリス氏は話す。そして、ブラジルのように成長もせず国民の所得が10年前の水準で足踏みしているようでは製品が高嶺の花となり、会社も前に進めないのである。(2021年1月17日付けエスタード紙)

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=48059