写真は講演中のジェトロボゴタ事務所の豊田哲也所長
フォーラム委員会(森谷伸晃委員長)主催のオンラインセミナーは、2022年11月22日午後2時から3時まで約60人が参加して開催。進行役はジェトロサンパウロ事務所の古木勇生ディレクターが務めた。
講師はジェトロボゴタ事務所の豊田哲也所長、テーマ「初の左派政権を迎えたコロンビアの今」について講演。初めに豊田所長は、ペトロ新政権の動向として、2022年6月の決選投票で、グスタボ・ペトロ氏が50.44%の得票率で勝利。8月7日就任。長年、右派と中道右派が政権を担ってきたコロンビアで、初の左派政権が誕生。主要閣僚に実務経験者を配置する人事と評されるオカンポ大蔵・公債相指名について産業界からは歓迎の声。閣僚18名中、半数の9名が女性閣僚が占めている。
3月に実施された議会選挙では、自由党と保守党という伝統的な2大政党が支持を伸ばした一方、左派のパクト・イストリコが大幅に躍進。ペトロ氏の大統領選勝利以降、保守党、U党、自由党、緑の党が次期大統領を支持すると表明。上院、下院ともに与党が約9割を占める構成となっている。。
新政権の基本政策は、社会的正義、環境正義及び経済的正義で大統領選から公表している政策コンセプトは大統領就任後も一貫。公約キーワードは「和平」「対話」「地域」。ペトロ大統領は、2018年以降中断されていたELNとの停戦協議を、キューバ、ノルウェー、ベネズエラの仲介の元で再開すると発表。新政府は、武装組織・犯罪組織と「対話」をすることで、コロンビアの「完全な平和(Paz Total)」を実現する考えと説明した。。
税制改革では、オカンポ大蔵・公債相は、ペトロ大統領の就任翌日、「平等と社会正義のための税制改革」と名付けた法案を提出。法人税は据え置く一方、原油、石炭部門、水力発電部門への上乗せ課税を導入。外国企業の配当金に対する源泉徴収税率は、現行の10%から20%へ引き上げ。健康税の対象となる超加工品には、醤油などの調味料を含まれる。富裕層から実質的により多く徴税。エネルギー・環境関連政策では、石油探査を停止するとの大統領公約について閣僚間で見解に相違が生じている。フラッキングによる採掘については禁止の意向。今年11月のCOP27においてアマゾン環境保全に年間2億ドルを拠出すると宣言。欧州投資銀行(EIB)とグリーン水素等を含むエネルギー転換での協力を発表している。
ベネズエラとの関係改善では、ペトロ政権はマドゥロ政権をベネズエラの正当な政権と認定。ベネズエラとの関係は急速に改善。コロンビア国内には約180万人のベネズエラ移民が存在。コロンビア経済動向では実質GDP成長率推移。今年第3四半期は7.0%の成長。民間最終消費支出、投資、輸出が堅調。今年のGDP成長率予想は4~8%と幅広い。来年は2~3%の成長が見込まれている。物価、金利では今年1月以降、単月で1%超が常態化。今年は年間で10%を超える見込み。今年10月末に政策金利を11.0%まで引き上げ。為替は昨年平均は3,744ペソ。今年10月の月間平均は4,715ペソ。貿易では 今年上半期は輸出入ともに前年同期比2桁増。貿易収支では今年の輸出は石油、コーヒーなど一次産品価格の上昇により1~9月で前年通年を上回る。経常収支では、2020年に貿易収支が改善したこと等により一時的に経常収支赤字が減少。
対外債務残高は2020年以降、対GDP比50%超。今年の財政赤字を対GDP比6.2%と見込む。格付けでは Moody’sは格付けを変更せず、2021年10月6日、見通しを「Stable」。格付け機関S&P、Fitchtはそれぞれ2021年5月、7月に格付けを1段引き下げ。「投資適格」外となる。
日本企業関連の状況では、80社の日本企業が進出、そのうち約40社が駐在員を派遣。2021年の営業利益は前年と比べ「改善」が44%。半数は「横ばい」。最大の改善理由は「現地市場での売り上げ増加」。今後1~2年で事業展開を「拡大」するとの回答は55%と中南米有数。EPA実務者間での交渉が停滞。租税条約は2018年12月署名も漸く今年9月4日発効。最後に豊田所長は、外面イメージの良くないコロンビアですが、ビジネスチャンスの大きなコロンビアには実施に来て肌で感じてほしいと要請した。
質疑応答では、現在のコロンビアではコカインは合法化されたのか。脱炭素に対する現地企業の対応は。砂糖及び塩の入った食品に対する課税措置は既に開始されたか。ラーメンも多勢対象になるのかなどが挙げられた。
PDF コロンビアの政治経済動向(2022.11)ジェトロボゴタ事務所の豊田哲也所長