ルーラ新政権の来年は消費拡大によるGDP伸び率は低調か(2022年11月24日付けヴァロール紙)

2023年1月に大統領に就任するルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ新大統領は、最低賃金の実質引き上げや Auxílio Brasil/Bolsa Familia の拡大など、一般家庭の所得増加政策導入で消費力を高めることができる措置をすでに発表している。

消費への刺激による国内総生産 (GDP) の成長は、以前に政権を担っていたルーラ政権下では広く活用された戦略であったが、 来年からのルーラ政権下では同じ方法によるブラジルの経済活性化するには過去との条件が違っており、高いインフレ率と金利、多額の債務を抱えた一般家庭、中国を含む世界全体の景気が急激に減速している。

2003年から2010年のルーラ政権 では、所得移転、最低賃金の引き上げ、信用へのアクセスに基づく経済政策により、 GDP は平均年率4.0% に対して、一般家庭の消費は4.8%とGDP伸び率を上回っていた。

2019年~2022年のジャイール・ボルソナロ (PL) 政権の 4 年間 では、 2020 年2月末からのCOVID-19パンデミックショックに直面した一方で、いくつかの一時的なインセンティブ政策の採用で年平均のGDP伸び率は2.0%に対して、消費は3.0%が見込まれている。

ルーラ次期大統領は、最貧層がそのような財政支出上限法を保証するために苦しむことを強いられているのかとの演説の翌日には、レアル通貨に対するドル為替の高騰及び株価の下落でブラジル金融市場はボラティリティに見舞われた経緯があった。

ルーラ政権が採用する政策にはさらなる国内生産の成長と雇用であり、これを達成する方法の1つは、Selic 金利を引き下げることであり、中央銀行が金利を引き下げるためには、財政の枠組みと、次期政府による最小限の穏健な対応が必要と指摘している。

ルーラ政権が誕生した2003 年は、カルドーゾ前政権の経済的課題を継続し、前政権が実施した実施した各種改革の効果で潜在的なGDPにプラスに作用していた経緯があった。

2003年の国際コモディティ指数は、258.1ポイント から 2010 年には 451.5ポイントに上昇した。中央銀行によって測定されるブラジル商品指数 (IC-Br) は、2003 年初頭の70 ポイントのレベルから2011年には150ポイントまで上昇していた。

またその当時は中国の力強いGDP成長が国際コモディティ需要を後押しし、ブラジルの輸出に恩恵をもたらした。 世界銀行のデータによると、2003 年から 2010 年の間に、中国の GDP は 2 桁以上またはほぼ 2 桁に近い年率で成長し、2007 年には 14.2% に達していた経緯があった。

COVID-19パンデミックやロシアによるウクライナ侵攻の影響で、世界的な生産チェーンの工業製品のインフレ率は、2021 年に 11.9% に達し、最終フォーカスの予想では、今年は 9.2%、2023 年には 3.5%、2027年迄は 3.0% まで緩やかに減速することが予想されている。

コモディティのブームで当時のルーラ政権の政府歳入を大幅に増加して、早くも2005年には財政政策の緩和を開始する余地が出来て、税制上の優遇措置を付与し、政府の歳出を増やしていた経緯があった。

対照的に、ボルソナロ政権下の2021 年の財政プライマリー収支は、前年迄7年間連続の赤字からGDP比0.7%の黒字を記録、今年の財政プライマリー収支はGDP比0.5%の黒字が見込まれている。

今年8月末の一般家庭の負債残高と可処分所得の比率は、52.9%と7月の53.1%よりも若干減少したが、収入に対する月間負債返済額は29.4%と記録を更新しているが、ルーラ政権初年度の一般家庭の負債は、クレジットに対する与信が厳格であったために現在よりの遙かに低かった。

ルーラ政権と現在のボルソナロ政権では、連邦政府の財政支出の上限に対する厳しい統制や一般家庭の負債比率、高止まりしているインフレや金利など政権運営の大きな違いが発生しているために、慎重な政権運営が期待されている。

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