日本企業の後押しで2022年にMUFGが8,070万レアルの過去最高益(2023年6月5日付けバロール紙)

ブラジルに対する日本企業の投資の再開を受け、三菱UFJ銀行(MUFG)が2022年にブラジルで過去最高益を計上した。ブラジルに進出して100年以上の歴史を持つMUFGの2022年の利益は、過去最高益となる8,076万2,000レアルだった。

 

競合する欧米の銀行と比較するとMUFGのシェアは小さいが、それでも、着実に成長を達成している。

 

ブラジル部門の営業は、その売上の70%から80%を占める日本企業に直接的に関係している。2022年5月に就任して以降初めてとなるインタビューで同行の木阪明彦頭取は、「2022年は困難な1年だったが、同時に、多くの日本企業がブラジルで投資を行った。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下でこれらの投資は凍結されていたが、ようやく、新たな勢いを取り戻し、投資は大きな可能性を取り戻した」と話す。

 

2022年のMUFGが2022年に確保した8,076万2,000レアルの利益は、前年比で+58.6%に達する。同銀行の国内における信用ポートフォリオは24億0,100万レアルであるが、この数字は国内のエクスポージャーをすべて示しているわけではないという。というのも同行の信用ポートフォリオの大部分は米国および日本で貸借対照表に表示されているからだという。なお、総資産は2022年12月末時点で308億6,700万レアルである。

 

木阪頭取によると、ブラジルでは法律で定められた最低限の配当を行い、利益の大部分を国内事業に再投資した。これは、ブラジルに対する同グループの信頼の証だという。

 

また日本企業に加えて同銀行はその他の国々の多国籍企業、さらに最近では、同行の顧客のサプライヤー向けにサプライチェーンへの融資にも進出している。セグメント別では、MUFGは、エネルギー業界と自動車業界、化学業界、コモディティー関連商社に軸足を置く。

 

「日本企業は多くの場合で信用をそれほど必要としていないが、サプライヤーは別だ。従って、日本企業の支払いを担保として融資している。これは日本には存在しない、ブラジル市場の興味深い構造です」と同頭取は言う。

 

また2023年の年明けに発生したアメリカーナス(Americanas)の経営危機は、取り付けリスクなど経営には影響していない。国内の銀行が大企業による債務の履行遅滞の増加に直面し始めているものの、MUFGでは同様の状況を確認していない。「日本企業の子会社に融資しており、本社との関係は極めて良好のため、問題は全く発生していない」と同頭取はコメントした。

 

アジア市場と米国市場で強みを持つMUFGだが、木阪頭取はブラジルを、成長の可能性が最も大きい市場のひとつだと位置づけている。「日本では市場が縮小して公民の高齢化も進んでいる。アジアのその他の国々では、台湾をめぐる緊張や北朝鮮のリスク、ロシアとウクライナの戦争など地政学的に大きな問題を抱えている。ブラジルは国土も広く、人口も大きく天然資源が豊富だ。そして日本企業のシェアは小さいものの、これから拡大していくだろう」という。

 

さらに同頭取は、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する基準達成に向けた取り組みは、同銀行にとって大きな関係のある問題だと指摘した。2023年5月には、ネオエネルジア(Neoenergia)と国際協力機構(JICA)、MUFGが、ネオエネルジアがコンセッションを受けている事業エリアで電力供給を拡大するため、およそ7億0,340万レアルの融資契約を締結した。「この種の取引を強化していきたい」と木阪頭取は話す。

 

MUFGは現在、ブラジル国内で220人の従業員を抱えるが、この内、日本人は頭取自信を含めてわずか9人である。同頭取によると日本企業は世界の他の国々の企業と比較すると経営判断に時間をかけ、長期投資に重点を置く社風があると話す。欠点とも言われることがあるが、この企業文化がポジティブな結果をもたらすこともあるという。

 

2008年に国際金融危機が発生した際、MUFGはサブプライム・ローン(米国の住宅ローンに関連した証券)とその関連市場などの、より複雑なデリバティブ市場で事業を展開していなかった。結果として、リーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)の破綻後、MUFGはチャンスを生かしてモルガン・スタンレー(Morgan Stanley)銀行の株式の20%を購入、現在もこの株式を保有している。その後の回復を受けて、その持分は現在、280億ドル以上の価値を有する。米国のパートナーらと仕事をした経験のある木阪頭取は、日本との違いを次のように指摘した。「日本企業は農家のようなもので、毎年少しずつ種を蒔く。米国企業はハンターだと言える。彼らは常にチャンスを伺い、素早くものにしようとする」。

 

なおブラジルでMUFGは、1973年に当時の三和銀行の戦略的パートナーシップの締結によって確保したブラデスコ(Bradesco)銀行の株式の1.25%を保有する。「投稿はブラデスコ銀行と非常に良好な関係を構築しており、彼らに顧客を紹介し、知識の交換も行っている。2022年末には、共同で20億レアルのスカラ・データ・センターズ(Scala Data Centers)のグリーンボンドを発行した」という。

 

MUFGはおよそ360年の歴史を持つ世界第4位の金融コングロマリットであり、幾度もの合併と買収を通じ3兆3,000億ドル以上の資産を持つ。1996年に東京銀行と三菱銀行が合併、その10年後にUFJ銀行と経営統合した。東京銀行の前身である横浜正金銀行は、日本人のブラジル移民を受けて1919年にブラジルに進出。現在の日本では、MUFGと三井住友銀行、みずほ銀行の3大金融コングロマリットが存在する。いずれもブラジルに進出しているが、その中でMUFGは最大手である。

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=53942