外務省小林中南米局長との意見交換会 

2022年9月8日、外務省の小林麻紀中南米局長一行が会議所を訪問した。

会議所の役員、各業種別部会代表者らとともに日メルコスールEPAの早期交渉開始の可能性やビジネス環境の改善、ブラジル政治経済の見通し、地政学的リスクが各業界に与える影響などについて意見交換を行った。

小寺日伯経済促進委員長より日メルコスールEPAの早期締結については民間側は提言書を出しており、まずはワーキンググループの組成において官側に尽力いただきたい、また、去る7月に両国の環境省間で二国間環境協力を進めるための宣言書に署名がされ大きな進展となったが、二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism (JCM))の早期締結について協力を要請した。

その後、各部会代表者より課題などが挙げられ、化学品部会はパワーポイントを利用し説明を行った。
村田会頭は会議所活動の近況を紹介した後に、日メルコスールEPAをはじめ引続き官側の協力を求めた。

司会を務めた平田事務局長はブラジル側では日メルコスールEPAに関する働きかけは過去2003年から行ってきた。その絶頂期は018年にメルコスール4か国の商工会議所会員にアンケート、8割以上がEPA締結を懇請、同年10月に経団連と日商が当時の菅官房長官に要望書を手交、また今年4月にも経団連から萩生田経済大臣にEPA実現に向けた共同声明書を建議。現状ではむしろEPAのボールは日本にあるという理解をしている。人、モノ、金、サービスが自由に動くEPA、日本側も観光ビザを含めフリー化し、基本的な人の交流を活性化させるという観点からも早期締結を要請した。

それに対し小林局長はボールはずっと日本政府が握っているという厳しいご指摘はそのとおりだと思っており、引続き検討していくと述べた。

最後に桑名総領事がブラジル政府と直接交渉する立場にはないが、皆さんとは敷居をマイナスにして事務局長の思いを共有している。手掌にあるコロナ水際措置やビザの案件は鋭意取り組む所存。それ以外についても、出先として大使館なり本省にしっかり伝えて行くと言葉を締めくくった。

参加者
官側: 小林麻紀 外務省 中南米局長
桑名良輔 在サンパウロ日本国総領事
井手博之 在サンパウロ日本国総領事館領事
宍戸孝志 在サンパウロ日本国総領事館領事

会議所側(順不同):
村田俊典 会頭(双日)
小寺勇輝 副会頭、日伯経済交流促進委員長(三井物産)
長野昌幸 理事、金融部会長/渉外広報委員長(三井住友保険)
水守信介 理事、電機・情報通信部会長(NTT)
田辺 靖 理事、電機・情報通信部会副部会長/渉外広報副委員長(NEC)
天野義仁 理事、コンサルタント部会長(KPMG)
秋葉 浩 貿易部会長(伊藤忠商事)
川頭義人 生活産業部会長(クラシキ)
渡辺弘樹 化学品部会副部会長(三井化学)
尾崎英之 食品部会副部会長(キッコーマン)
野口和行 運輸サービス部会副部会長(H.I.S.)
平林 敦 自動車部会長代理(トヨタ)
平田藤義 事務局長

2021年のブラジルの人間開発指数は84位から87位に後退(2022年9月8日付けUOLサイトより抜粋)

平均余命・教育・所得の側面から人間開発の達成度を示す指数の2021年のブラジルの人間開発指数( Human Development Index, HDI)は、0.754ポイントを記録して前年の84位から87位に後退している。

国連の報告書では、一連の前例のない危機、特にcovid-19パンデミックを、人類の進歩と世界的な不確実性の可能性における5年間の後退の原因として挙げている. 人間開発指数は 2020 年と 2021 年の 2 年間連続で低下し、30 年前の人間開発指数の調査開始以来では初めて低下している。

人間開発指数のトップはスイス、続いてノルウエー、アイスランド、香港、オーストラリア、デンマーク、スエーデン、アイルランド、ドイツ、オランダと続いている。一方最下位は南スーダン、続いてチャド、ニジェールとなっている。

ラテンアメリカ地域の人間開発指数の比較では、チリ42位、アルゼンチン47位、コスタリカ及びウルグアイは58位、パナマ61位、ドミニカ共和国80位、キューバ83位、ペルー84位、メキシコ86位、ブラジルは87位となっている。

南米地域ではチリは0.855ポイントで42位、アルゼンチンは0.842ポイントで47位、ウルグアイは0.809ポイントで58位、ペルーは0.762ポイントで84位、ブラジルは87位、コロンビアは0.752ポイントで88位となっている。

ヴーレ社はニッケル及び銅鉱石の中長期生産を引上げ(2022年9月8日付けヴァロール紙)

ブラジル資源大手ヴァーレ社は、傘下のカナダ企業ヴァーレ・インコ社が所有するカナダのニッケル・銅・コバルト鉱山での中長期の増産計画を発表、ニッケルやコバルト生産は電気自動車のバッテリーに不可欠であり、コバルトの多くは、銅やニッケル採掘時に副産物として採掘されるために、電気自動車メーカーでは、バッテリー製造のために資源確保で熾烈な競争を余儀なくされている。

同社では2022年から2023年のニッケル構成生産を17万5,000トンから19万トン、2024年は20万トンへ引上げるが、中期計画では23万トンから24万5,000トン、長期計画では30万トン以上の生産を計画している。

ヴァーレ社では2022年の1トン当たりのニッケルの国際コモディティ価格を1万2,300ドルと予想しているが、中期のニッケルの国際コモディティ価格は1万ドルに下がると予想している。

一方2022年の銅鉱石生産は27万トンから28万5,000トンを見込んでいるが、2023年から2026年は39万トンから42万トン、2027年には45万トン以上の生産を見込んでいる。中期計画では39万トンから42万トン、長期計画では90万トン以上を見込んでいる。

2022年の1トン当たりの銅鉱石の国際コモディティ価格は4,000ドル、中期の銅鉱石の国際コモディティ価格は2,300ドルまで下がると予想している。

今年7月の段ボール箱の出荷量は前年同月比1.0%増加(2022年9月5日付けヴァロール紙)

ブラジル包装紙協会(Empapel)の発表によると、2022 7 月の経済動向のバロメーターの段ボール箱、シート並びに板紙付属品を含む段ボール箱派生品出荷量は、前年同月比1.0%増加の355686トン3ヶ月連続で増加、また7月としては過去最高を更新している。

今年7月の段ボール箱派生品生産指数(IBPO)は、ブラジル国内のサービス業部門や製造業部門の需要が牽引して前年同月比1.0%微増の158.4ポイントを記録している。

今年7月の1日当たりの段ボール箱派生品の平均出荷量は前年同月比4.9%増加の13,680トン、今年7の営業日数は昨年同月よりも短かった。  

今年7月の段ボール箱派生品の生産指数(IBPO)5か月連続で増加を記録、20213月以降では最高の156.4ポイントを記録している。

(ZOOM)2022年下期の第5回部会長フォーラム開催

生活産業部会並びに電機・情報通信部会共催の2022年下期の第5回部会長フォーラムは、2022年9月6日9時から10時まで約80人が参加して開催、司会は森谷伸晃フォーラム委員長が務めた。

初めに生活産業部会の川頭部会長は、テーマ2022年上期の振り返りと今後の展望について、建設部門、不動産部門、商業賃貸市場及びエネルギー関連部門の各社業績推移、受注競争激化、平方メートル当たりの単価上昇、駐在員赴任回帰、原材料費の高騰、大統領選挙やワールドカップの影響、半導体不足、価格転嫁の利益減少、ウクライナ危機の影響などについて説明。繊維関係の2022年上期の振り返り及び今後の展望では、会員企業の業績の推移、衣類消費減少傾向、原材料高騰及び為替の影響、地政学的なブラジルへの再注目などについて説明。また最後に各社のリモートワーク状況質疑応答ではサッカーワールドカップのマイナス要因が挙げられた。

続いて電機・情報通信部会の水守部会長は、テーマ2022年上期の回顧と今後の展望について、アンケート結果では、業界の販売伸長及び縮小の要因、投資や経費の変化、今後の展望では予想の要因及び最優先経営課題、世界的な市況変化によるビジネスへの影響と対策、DX・SDGs関連取組、アンケートから見る経済展望などについて説明した。

市場概況では、設置機械稼働状況及び工作機械輸入金額傾向、ブラジルの液晶TV、ブラジルのIT全般(モバイル・IoT市場)、ブラジルの5G状況、パブリッククラウド状況、 ブラジルの携帯電話回線契約数推移、ブラジルのブロードバンド回線契約数推移について説明した。

最後に商工会議所、ブラジル政府、日本政府への要望として、日本‐メルコスール間のEPA交渉の促進。各国メルコスール関連の最新情報の発信、政治・財政の安定化、各種改革(税制・民営化等)の加速。為替安定化施策の実行。現地生産基準(PPB)の見直し。ブラジル特有のビジネス上対応すべき点の発信を要請した。また11月11日開催のITセミナーを案内した。

PDF 2022年下期の5回部会長フォーラム 生活産業部会発表資料

PDF 2022年下期の第5回部会長フォーラム 電機情報通信部会発表資料

 

今年1月から海上輸送運賃は60%下落(2022年9月5日付けヴァロール紙)

現在の中国からの米国西海岸への40フィートコンテナ船の海上輸送フレートは5400ドルと大幅に減少しており、今年1月と比較して60%減少とBaltic Indexで判明している。

また現在のアジアからヨーロッパ向け海上輸送フレートは9000ドルと今年1月よりも42%と半額近い減少を記録してCOVID-19パンデミック以前の水準を依然として上回っているが、ピーク時の昨年9月に記録した2万ドルを大幅に下回っている。

海上輸送フレート代は、COVID-19パンデミック発生の2020年3月から上昇に転じ、世界的な半導体供給問題、港湾の混雑、コンテナ船不足などの要因で、2021年には海上輸送フレートは約10倍の高騰を記録していた。

世界的な小売大手 Walmart社は、世界的な船舶調達が窮地に陥っていたために、昨年は自社のコンテナ船調達で世界中の物資調達を余儀なくされていた経緯があった。

Walmart社やその他の大手小売チェーン網は、通常よりも早めに輸入製品を調達したしわ寄せとして、在庫が増加、衣料小売販売の Gap社、玩具メーカー Hasbro社は、北半球が春の時期に先行して輸入をしたために通常よりも多い在庫を抱えている。

今後2年間に新規建造されたコンテナ船が市場に投入されるために、2023年及び2024年にかけてコンテナ船は9.0%増加が予想、また2024年のコンテナ船の荷動きは2.0%増加に留まると予想されている。

海運大手10社は、COVID-19パンデミックの影響で過去 2 年間で莫大な利益を上げており、Moeller-Maersk社の最終四半期の純益は85 億 9,000 万ドルで、通常の通年業績を上回ったが、多くの海運会社は、今年下半期には海運市況が弱体化すると警告している。

投資銀行はIPOは2023年から徐々に再開予想(2022年9月5日付けヴァロール紙)

ブラジルのインフレ指数や金利の上昇、更に2月末からのロシアによるウクライナ侵攻などの影響を受けて、過去1年以上に亘って新規株式公開(IP0)は低迷しているが、投資銀行ではどの大統領候補が当選しても今年11月からIPOに関する動きが出始めると予想している。

更に米国をはじめとした先進諸国のリセッション入りの可能性や中国のロックダウンなど投資の障害となるリスクがあるものの、2023年からIPOやフォローアップによる投資案件は35件に達する可能性を投資銀行では予測している。

投資銀行関係者は、2023年以降の新規株式公開案件はインフラ整備関連やコモディティ商品関連が、今迄大半を占めていたテクノロジー関連IPOを上回ると予想している。

上下水道事業を手掛ける BRK Ambiental社は、今年初めに新規株式公開を予定していたが、国内外の情勢悪化で中止を余儀なくされたが、来年のIPOを検討していると予想されている。また Vinci e Pátria社が株式を所有している CBO社も来年のIPOが見込まれている。

最近のインフレの下落傾向や2.0%に達するGDP伸び率などマクロ経済指標が大幅に改善してきており、新興国の中でのブラジルへの投資再開が注目されていると投資銀行XP社の金融投資部門担当の Vitor Saraiva氏は指摘している。

2023年のIPO及びフォローオンは25社~35社、調達資金総額は600億レアル~800億レアルに達する可能性をItaú BBA社投資担当の Roderick Greenlees取締役は指摘している。

2021年のIPO及びフォローオン件数は76件で調達資金総額は1,300億レアル、2020年のIPO及びフォローオン件数は51件で調達資金総額は1,170億レアルを記録している。

最終フォーカスレポートは今年のGDP伸び率を2.26%に上方修正(2022年9月5日付けUOLサイトより抜粋)

5日の中銀の最終フォーカスレポートによると、今年第2四半期のGDP伸び率を予想を上回る1.2%増加を記録、金融市場関係者は、今年のGDP伸び率を10週連続となる前回予想の2.10%から2.26%に上方修正している。1か月前の予想は1.98%であった。

また今年のGDP伸び率の上方修正に伴って、2023年のGDP伸び率は、前回予想の0.37%から0.47%に上方修正、1か月前の来年のGDP伸び率は0.40%であった。

また中銀の最終フォーカスレポートでは、2024年のGDP伸び率を1.80%増加予想、1か月前の予想は1.70%、2025年のGDP伸び率を2.00%、1か月前の予想も2.00%であった。

今年末のブラジルの公的債務残高は、GDP比59.00%と前回予想同様に据え置かれたが、1か月前の予想はGDP比59.15%であった。また今年のブラジルの財政プライマリー収支は、GDO比0.30%の黒字予想の一方で、インフレ指数を考慮しない名目負債残高は、前回予想のGDP比6.80%からGDP比6.75%に下方修正、1か月前の予想はGDP比6.80%であった。

2023年末の公的純債務残高は、前回予想のGDP比63.50%から63.30%と若干下方修正、1か月前の予想はGDP比63.70%であった。今年の貿易収支は、前回予想の680億6,000万ドルから680億3,000万ドルと若干下方修正、1か月前の予想はであった。2023年の貿易収支は、前回同様600億ドルに据え置いている。

2022年のブラジルの経常収支赤字は、前回予想の185億ドルから191億ドルに下方修正、1か月前の予想はから180億ドルの赤字であった。2023年の経常収支赤字は300億ドルが見込まれている。

今年の海外投資家によるブラジルへの対内直接投資総額は、前回予想の580億ドルから600億ドルに上方修正、1か月前の予想は572億ドルであった。また2023年の対内直接投資総額は、前回予想の655億ドルから660億ドルに上方修正、1か月前の予想は610億ドルであった。

(ZOOM)2022年下期の第4回部会長フォーラム開催

化学品部会並びに食品部会共催の第4回部会長フォーラムは、202292日午前9時から10時まで約80人が参加して開催。司会は森谷伸晃フォーラム委員長が務めた。

化学品部会の亀岡部会長は、テーマ 2022年上期振り返りと今後の展望について、ブラジル化学品業界の売上推移及びセグメント別売上では昨年の工業用化学及び肥料セクターの売上増加、農薬売上トレンド、南米市場の自動車生産台数推移やパッケージフィルム生産トレンドを説明。また輸送、ヘルスケア、農業、印刷、コンシューマー部門の回顧と展望。ウクライナ危機の市場や業績の影響について説明した。

続いてロート・ブラジル・ホールディング社の 古賀社長は、ロート製薬概要と題して、多岐に亘るロート製薬の商品紹介、会社の歴史及び業績推移、先陣を切った番組提供によるマスコミ戦略、世界戦略としての事業の多角化・グローバル化の方向性、経営の推進、人造り、副業解禁、社会貢献活動、パートナー企業OPHTHALMOS S.A社の概要、製品、売上トレンド、社会活動などを紹介した。

食品部会の部会長は、テーマ 2022年上期の振り返り並びに今後の展望、副題「ウクライナ危機を経験し、ブラジル (及び南米) 市場のビジネス環境変化を踏まえて各部会・業界の対応は? (地政学的に見たブラジル市場)」について、食品部会会員企業の主要及びサブ会員の状況、市場及び会員企業状況ではカテゴリー別動向及び会員企業状況、ウクライナ危機及びwith/postコロナにおけるビジネス環境変化の課題では、調達・供給リスク対応、コスト高対応、消費者ニーズ対応などについて説明。また食品部会はTeam Japanとして、企業の垣根を越えた、積極的な交流や連携、互いの強みを生かした協業の可能性模索で事業を通じたブラジル社会・消費者への貢献について説明した。

質疑応答ではウクライナ危機で調達先で苦労しているが、ブラジル国内での現地調達状況について質問された。

PDF 第4回部会長フォーラム 化学品部会発表資料

PDF 第4回部会長フォーラム 食品部会発表資料

7月の鉱工業部門生産量は0.6%増加(2022年9月2日付けヴァロール紙)

ブラジル地理統計院(IBGE)の鉱工業部門生産調査(PIM-PF)によると、2022年7月の鉱工業部門生産量は、前月比0.6%増加した一方で、今年6月の鉱工業部門生産は前月比マイナス0.3%であった。

今年初め7か月間の鉱工業部門の累積生産量は前年同期比マイナス2.0%、Covid‐19パンデミック前の2020年2月の水準を依然として0.8%下回っており、また2011年5月に記録した過去最高の水準よりも17.3%下回っている。7月の過去12カ月間の累積生産量はマイナス3.0%であった。

7月の鉱工業部門の部門及びセクター別生産量調査では、4部門のうち2部門、26セクターのうち16セクターで前月をそれぞれ下回っている。

また今年初め7か月間の鉱工業部門の部門及びセクター別生産量調査では、4部門のうち4部門、26セクターの内19セクターで前年同期比割れが発生している。

7月の鉱工業部門生産量が前月比0.6%増加した要因として、従業員が理由なき解雇のときなどに引き出せる積立金であるFGTS(勤続年数保証基金)からの特別引出許可政策、年金・恩給受給者向け13か月目のサラリーの前払い及びクレジット活性化政策の導入が牽引している。

一方で鉱工業部門生産量を伸び率を阻害している要因として、高止まりしているインフレや金利、半導体などの部品供給不足問題や輸送コスト上昇が依然として悪栄養を及ぼしている。