労働集約型のサービスが高水準で推移しておりインフレの低下にブレーキをかけているとバークレイズ

バークレイズによると家事労働や美容、医療、歯科医療といった労働集約型サービスのインフレ率が過去6年で最も高くなっており、ブラジル経済におけるインフレの減速だけでなく、ブラジル政府が進める新たな消費刺激策の効果に対しても危ぶむ見方につながっている。

2023年4月までの12カ月間で、労働集約型サービスのインフレ率は+6.82%を記録、12カ月間のインフレ率としては+6.98%を記録した2017年以来の高水準で推移している。同銀行のブラジル担当チーフエコノミスト、ロベルト・セセムスキー(Roberto Secemski)氏は、「このカテゴリーが最近の調査でインフレ圧力を受けていることを確認している」と話す。

労働集約型サービスは、ブラジル地理統計院(IBGE)が計測する政府の公式インフレ指数である拡大消費者物価指数(IPCA)が計測するサービスの20%弱を占めており、全体では6%の比重が与えられている。このように、公式インフレ率に直接与える影響は限定的なものであるが、一般サービスとは異なりこのセグメントのインフレ率が全く下がっていないこと、さらにこれが他の品目に波及する可能性があることには注意すべきだという。

例えば、ギャルソンあるいは整備士のようなサービスの場合、このサービス・セグメントには含まれていないが、いずれも、外食や自動車の修理といった項目の価格設定において考慮されることが知られているとセセムスキー氏は説明する。「これは、その他の価格に対して遅かれ早かれコスト圧力として現れる可能性のある労働市場の報酬の動きを示している」と同氏は指摘する。

さらにセセムスキー氏は、別の問題として、この種のインフレは一朝一夕に下落するものではなく持続性があることが過去の経験から知られている点にも言及している。労働集約型サービスのインフレ率は2009年から2016年にかけて、平均するとほぼ2桁(+9.7%)で推移した。しかも、この種のインフレを減速させるには、激しいリセッションが必要だったと同氏は言う。「労働集約型サービスのインフレ率が強い慣性を持つことを考慮すると、悪性の挙動に陥るリスクが常に存在する。これはサービス全体にも言えることだが、労働集約型サービスではその傾向が強い」という。

さらに同氏は、労働集約型サービスのインフレ率が1年前には12カ月間で+4%と、現在の水準を3ポイント下回っていたことも指摘する。「仮に現在の(+7%近辺という)水準で固定されれば、その後、これを引き下げるのは極めて困難になる。高い水準がより長期化するほど、その水準に対してより強い慣性を持つことになる」という。

その上で同氏は、「最低賃金の引き上げと、ボルサ・ファミリア(Bolsa Família:家族手当)で子供1人当たり150レアルの追加支援など、こうしたニュースはいずれも、インフレに対する楽観的な見通しに決定的な打撃を与えかねない」と指摘。

2022年から中央銀行が金融引き締め策を通じて物価の抑制に取り組んでいる中、連邦政府の一連の政策はこれに逆行するものになりかねないとセセムスキー氏は言う。「物価上昇プロセスが根付けば、これを取り除くコストは極めて高いものになる」と同氏は警鐘を鳴らした。(2023年5月17日付けバロール紙)

ブラジル・コストはGDP比19.5%の1.7兆レアル

商工サービス省(MDIC)とゼツリオ・バルガス財団(FGV)との協力で競争力あるブラジル運動(MBC)が実施した調査で、租税と法的不安定性、資金調達、不備のあるインフラ、その他で構成される、諸外国との相対的な比較で経済的負担として経営を圧迫するいわゆるブラジル・コストが1兆7,000億レアルに達していることが示された。

これは、国内の製造業が、経済協力開発機構(OECD)の加盟国の平均的なコストと比較してより多く負担しているコストを示す。今回の結果は、ブラジル・コストがGDPの19.5%に達していることを意味する。4年前にMBCが実施した調査では、ブラジル・コストは1兆5,000億レアルで、GDP比22%だった。

4年前の調査からブラジル・コストの名目成長率は、主にインフレを中心として16%を記録したことになる。MBCのロジェリオ・カイウビー顧問は、「(インフレ率の影響を除外した)実質的な増加は非常にわずかだ」と話す。

調査は、前回と同様の方法で実施されている。すなわち、ブラジルの経済環境において企業の競争力にとって極めて重要と位置付けられる12項目のガイドラインをマッピングした。さらにこれに関連して、2022年の評価では32に達した指標で評価した。

このガイドラインの中でも特に6項目が、ブラジル・コストの80%を占めるとMBCは言う。それらには、複雑な税制が含まれる。その他の項目は、ビジネスに対する資金調達、人的資本の導入(雇用)、利用可能なインフラ、法規制環境、グローバルな生産チェーンへの統合である。

研究で示された実例のひとつが、ブラジル企業が租税の算出に62日を費やしているというデータである。OECD加盟国の平均は2019年から引き続きブラジルを大きく下回る、わずか6日である。

複雑な税制をスリム化する税制改革は、少なくとも20年にわたって議論が続いてきた、ブラジルで最も難しい議論のひとつであるが、MBCのカイウビー顧問は現在の状況を楽観視している。同顧問は、「税制改革の可決が現在ほど現実味を帯びたことはない」と受け止めている。ただし、税率を議論するだけではなく、税金の支払いの実証とどのように納付するのかについても改革する必要があると付け加えた。

実業家のジョルジェ・ゲルダウ氏が理事長を務めるMBCが強調するもうひとつの課題は、人材の登用だ。教育の欠陥から企業は、人材の再教育に年間1,450億レアルを支出している。カイウビー顧問によると、人材の技術習得だけでブラジル・コストの8%を占めるという。

同顧問はさらに、「これは既知のことではあるが、教育全般の質の低さだけでなく、専門技術や専門的な訓練にあまり注意が払われて以内結果であり、現在、こうした知識や技能を教育現場で見につける若者は、中等教育修了者のわずか10%から12%にとどまる。先進国では、この比率は45%に達している」と指摘した。

各指標は過去4年間に原則的に「横ばい」で推移したが、ジャイール・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領の就任後に前政権との提携で実施された最初の調査以降、こうしたプロフィールを改善させるいくつかの種がすでに蒔かれているとMBCは受け止めている。

2020年に行政府と立法府で、ブラジル・コストを削減する可能性のある既存のプロジェクトがマッピングされている。その数、およそ700。

翌2023年に連邦政府は、そのプロジェクトのいくつかを実際に推進すべく組織的な同院を進めた。カイウビー顧問によると、「(前政権では)マッピングに加えて新規プロジェクトの提案を受け入れることはできたが、まだ提案されたプロジェクトの実際の影響を計測するためのイニシアティブが構築されていなかった」という。

同顧問が指摘する「蒔かれた種」のひとつが、ガス業界基本法の可決だという。2021年に可決した同法は、関連法規に依存するため今のところ、その効果を発揮していない。

この基本法は、競争力のある条件で天然ガスの供給を可能にし、エネルギーコストを引き下げる重要な要素である。一方、電話通信インフラでは、ブラジルはブロードバンドの普及率が30%強と進んでいる。それでもブラジルがOECD加盟国の平均水準に達するには、さらに10ポイント引き上げる必要があると今回の研究は指摘している。

今後は、2023年下半期にMDICと共同でブラジル・コスト観測機構の立ち上げを予定する。5月18日から、官民からアイデアを募集する意見招請を実施する。

連邦政府とMBCは、ブラジル・コスト削減計画の構築も想定している。この分野で重要なプロジェクトのマッピングと導入を促進するだけでなく、それぞれのプロジェクトがブラジル・コストの削減にどのような効果を発揮しているかを計測することも目的とする。

これは、実施されたプロジェクトに対して「継続的に改善していく文化」を植え付けるのに必要な評価を行う手法になると、MBCは位置付けている。(2023年5月17日付けバロール紙)

23年3月のIBGEのPMCが市場の予想を上回る前月比+0.8%を記録

ブラジル地理統計院(IBGE)は5月17日、2023年3月の月例小売調査(PMC)で小売販売量が前月比+0.8%を記録したと発表した。2月の小売販売は、前月比-0.1%でほぼ横ばいだった。IBGEのクリスチアーノ・サントス調査部長によると、3月の販売の伸びとしては2018年3月に+1.3%を記録して以来の大きなものだという。前年同月との比較でも+3.2%で、3月までの12カ月間で見るとその前の期と比較して+1.2%だった。

バロール・ダッタが30社のコンサルティング会社と金融機関から集めた事前予想は、-0.2%だった。予想は、下は-1.4%、上は+0.7%。

自動車と二輪車及びそのパーツと、建築資材を含めた広範囲小売販売では、3月は前月比+3.6%を記録、2月の前月比+2.0%を上回る伸びを見せた。

27社のコンサルティング会社と金融機関による事前予想の平均は-0.3%で、下は-1.8%、上は+1.3%。こちらも、市場の予想を上回る結果が出た。

また3月の広範囲小売販売量を前年同月と比較すると、+8.8%だった。

この結果、2023年第1四半期(1―3月期)で見ると、小売販売量は前期比+2.0%。さらに拡大小売販売量は前期比+3.7%だった。第1四半期として見た小売販売量の伸びは、+2.4%を記録した2021年以来の大きな伸びとなった。

IBGEは、「四半期で見ると小売販売は回復している」と受け止めている。(2023年5月17日付けバロール)

化学品部会コンサート

 

去る5月15日 18時30分~21時、化学品部会公式行事として部会コンサートを開催しました。

内容についてご報告申し上げます。(出席者・部会メンバー及びそのご家族総勢32名参加)

 

開場はある部会メンバー様の屋上テラスを拝借し、ケータリングサービスによる食事と飲み物、

演者は以前商工会議所の昼食会にもご登壇頂いた、プロサックス奏者でブラジル文化ライターの島田愛加さん、

島田さんと当地の音大同窓生であるプロギタリストの金田聖司さん、そして島田さんとも親交のある、

ブラジルのプロシンガーWilma de Oliveira(ヴィウマ ジ オリヴェイラ)さん。

 

最近の夜の冷え込みで若干肌寒い中ではありましたが、出席者、演者様と共に楽しいひと時を過ごせました。

ご準備、片付けご協力いただいた全ての方々に感謝申し上げます。

 

化学品部会 古賀 ロート・ブラジル・ホールディング

音楽会の栞 演者プロフィール 2023年5月15日 音楽会 VER.2

2023年第1四半期にプライベート・エクイティによる投資が19年以降で最低に

TTRデータ(TTR Data)との提携を通じてブラジル・プライベート・エクイティ&ベンチャー・キャピタル協会(Abvcap)がまとめたデータによると、2023年第1四半期にプライベート・エクイティ・ファンドによる投資が、2019年以降で最低水準にまで低下した。この期間、17社に対して総額6億レアルの投資が行われた。この金額は、2022年第4四半期との比較では92%の減少、前年同期との比較でも87%の減少となる。

プライベート・エクイティによる年初の主な投資には、ウォーバーグ・ピンカスによるテクノロジー会社スキャンテックに対する2億0,800万レアルの投資や、23Sによるコンソーシアムのアデミコンへの3億レアルの投資がある。2022年の場合、プライベート・エクイティによる投資は189億8,000万レアル、2021年も158億1,000万レアルを記録していた。

Abvcapによると、スタートアップに照準を合わせたベンチャーキャピタル・ファンドによる投資は第1四半期に14億2,000万レアルで、前期から42%減少した。スタートアップに投資する成熟企業のファンドで構成される、いわゆるコーポレート・ベンチャーキャピタルも第1四半期には70%減の1億8,000万レアルにとどまり、2021年の年明け以降で最低を記録した。

投資額が大幅に減少した背景についてAbvcapのピエロ・ミナルディ会長は、国内環境だけでなく国外環境でも、とりわけ高金利が企業価値を棄損するなどボラティリティーの高い状況があったと指摘。「『バリュエーション(企業価値評価)』はまだ完全に修正が終わっていないが、現時点で進められている交渉が下半期には数字として表れるはずだ」という。

さらに同会長は、業界では多くの交渉が進められていることも明らかにした。その上で、国内でより多くの資産を持つ主要なファンドが資金を調達しており、いつでも買収に動き出せる状態だと強調した。

スペクトラの経営パートナー、レナット・アビサムラ氏は、高金利が企業のキャッシュフローを悪化させており、一部の企業では新たな経営パートナーが参画することへの抵抗感にも変化が生じ始めていると指摘する。「資本を必要とする企業は、これまで以上に積極的になり始めている」という。取引に関心を持つ企業が増えていることで環境は投資にとってより有利になり始めており、その結果、今後は発表が増加すると同氏は受け止めている。

ウォーバーグ・ピンカスのブラジル事業責任者、エンリッケ・ムラモト氏は、年初にスキャンテックを買収した後も引き続き市場で機会をうかがっているとコメントした。「証券取引所に上場している成熟した企業や非公開企業に注目しているが、その視線の中心は、より大きな成長が見込まれるテクノロジー企業である」という。

またあるプライベート・エクイティの役員は匿名を条件に、年明けにはより活発に取引が行われると期待されたが、市場のムードに水を差すような新政権の態度が投資判断にブレーキをかけ、さらにブラジルへの参入を分析していた外資系ファンドを追い払う形になったとコメントした。その上で、「高金利に我々が恐れをなしているのではない」と付け加えた。

この人物はさらに、アメリカーナスの不正会計問題が1月早々に発覚したことも、とりわけ上場企業関連でファンドによる投資にブレーキをかけたという。「この問題は、上場企業との取引やデューデリジェンスなどを複雑なものにした。その影響は非常に大きかった」と指摘した。(2023年5月16日付けバロール紙)

ペトロブラスが新たな燃料価格戦略を同社理事会が承認したと発表

ペトロブラスは5月16日、同社の製油所が販売するディーゼル油とガソリンの価格の設定に関して、輸入平価(PPI)に代わる新たな販売戦略を同社理事会が承認したと発表した。

新たな販売戦略では、顧客の代替費用を価格設定における優先的価値に据える。言い換えると、同一の製品もしくは代替の製品であれ、サプライヤー、すなわち供給における主要な選択肢により提示される価格を優先する。

さらにペトロブラスにとっての限界価値も、製品または製油所で使用する原油の生産と輸出入など、同社にとっての様々な選択肢に基づく機会費用を考慮して算出する。

同社は声明の中で、「販売戦略は、顧客が利用できる最良の代替品を考慮し、国内外の市場とのバランスを考慮して、それぞれの販売時に競争力のある価格を提示することを前提にしている」とコメントした。

またこの価格調整は、ボラティリティーが国内価格に反映されるのを回避すべく周期性を持たせず、引き続き市場及び価格検討グループにより実施される。

この新しい販売戦略を通じてより効率的で市場シェアを考慮し、精油資産の最適化を図り、持続可能な方法で利益率を追求することが可能になるとしている。

その上で同社は、長期的な財務の持続可能性と、市場とのバランスの取れた経営の維持、価値創造に向けて取り組んでいくと改めて表明、競争力のある価格設定を通じて戦略計画で想定する投資を保証すると強調した。(2023年5月16日付けバロール紙)

2023年5月15日に農務省が野鳥から国内初の鳥インフル感染を確認

農務省は3月15日、野鳥からブラジルで初めての高病原性鳥インフルエンザ感染例を確認した。エスピリト・サント州の海岸で発見された2羽のトリンタ=レイス=デ=バンド(trinta-réis-de-bando:カボアジサシ)として知られるアジサシ科の海鳥から検出された。

カルロス・ファヴァロ農務大臣は、民間部門及び公共部門の獣医療サービス全体を動員するための緊急事態を宣言した。これにより、国内での感染拡大を阻止する。

エスピリト・サント州のカリアシカ海洋動物調査リハビリ研究所(Instituto de Pesquisa e Reabilitação de Animais Marinhos de Cariacica)から通知を受けた後、獣医療サービスが鳥インフルエンザへの感染の疑いで5月10日に調査を開始し感染を確認した。

サンプルの回収後、国際獣疫事務局(OIE)の参照検査機関であるサンパウロ連邦農畜産防疫研究所(LFDA-SP)に送付され、ここで高原性鳥インフルエンザに感染していたことが確認された。

確認を受けて連邦政府は、野鳥の高原性鳥インフルエンザの感染はブラジルの防疫ステータスに影響するものではなく、ブラジルの家禽製品の防疫に障壁を設けるべきものではないと強調した。

SNSに投稿した動画でファヴァロ農務大臣は、「野鳥であるため、貿易の制限につながる何等のリスクも存在しない。防疫システムは機能しているが、我が国の防疫システムが効果あるものと認められ続けるには、明確かつ透明で迅速に対応する必要がある」とコメントした。

また農務省は、調査の進捗及び疫学的状況の進捗によっては、農務省及び各州の当局により鳥インフルエンザの蔓延を回避するため新たな防疫モデルが採用される可能性があるとコメントした。

さらに政府は声明で、「同時に、病気及び予防策に関する広報活動が強化される」と説明した。

高原性鳥インフルエンザは高い感染力を持ち、野鳥や家禽に影響を及ぼす。動物保健局は既に、OIEに対して感染確認について通知している。(2023年5月15日付けバロール紙)

第59回カマラゴルフ会 開催報告

相互啓発委員会主催の第59回カマラゴルフ大会は、2023年5月14日(日)、サンパウロPLゴルフクラブにて34名の参加にて開催しました。

皆様のご参加、ご協力に心より御礼申し上げます。

次回は2023年8月20日(日)の開催を予定していますので、皆さまのご参加を心待ちにしております。

相互啓発委員会一同

2026年までの平均成長率ランキングでIMFがブラジルを190か国中ワースト25と分析

第3期ルーラ政権(2023-26年)におけるブラジルのGDP成長率は、世界190か国の成長率ランキングでワースト25にとどまると国際通貨基金(IMF)が予想している。ただし、GDPの名目額で見ればブラジルは、世界10大経済国に復帰する見込みだ。

ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(PT:労働者党)のの在任期間となる2023年から2026年にかけてIMFは、ブラジルが+6.45%の成長を達成すると予想する。ただしこれは、世界平均の+13%を下回るだけでなく、ラテンアメリカの平均である+9%、新興国の平均である+17%も下回る。それでもジャイール・ボルソナロ前大統領(PL:自由党)の時代に記録した+5.73%(ワースト81)を上回る。ワースト・ランキングでは、順位が下がるほど、相対的な成長率は大きくなる。

レアル計画の導入後で見ると、第3期ルーラ政権で想定される成長率は、2015年から2018年(ワースト12)ほどは悪化しない模様だ。この期間はジウマ・ロウセフ大統領(PT)が第2期を務め、同大統領の弾劾後は部分的にミシェル・テーメル(Michel Temer)大統領(MDB:ブラジル民主運動)が政権を担当、この間にリセッションを経験した。

第2期ルーラ政権(2007-2010年)のブラジルはワースト64で、新興国の平均を上回る成長を達成した。当時のブラジルは名目GDPの規模で見ても世界7位の経済国だった。その後、ジウマ政権/テーメル政権で9位に転落、ボルソナロ政意見ではトップ10から陥落して11位に転落した。第3期ルーラ政権についてIMFは、2026年には8位に浮上すると予想している。これは、フェルナンド・エンリッケ・カルドーゾ大統領(PSDB:ブラジル民主社会党)の1998年当時と並ぶ。

ガラパゴス・キャピタルの国際問題担当チーフエコノミストのジャイメ・ヴァルディヴィア氏は、「ブラジルは非常に厳しい状況に直面する」と話す。同氏によるとブラジルは、年間+1%を大きく上回る成長を支えるだけの広範囲な需要があると信頼するに足る根拠は乏しいという。「+1%から+2%の間というのが、妥当なマージンだ」という。

同氏によるとブラジルは、様々な理由から成長率が緩やかなものになる。第1に、世界的なパフォーマンスも脆弱なこと。「新興国とブラジルのア貿易相手国の多くで経済成長率が低迷する」とヴァルディヴィア氏は言う。

加えて同氏は、4、5年前と比較して金利が世界的に高金利で推移していると話す。「2008年以降、米国と欧州連合(EU)のような重要地域で金利がほぼゼロ近辺だった。現在、先進国は経済のバランスを模索する必要のある場所になっている」と同氏は指摘する。

これと同時に新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは各国政府にとって社会的問題となっており、積極的な財政拡大プロセスを後押ししている。「現在の世界はより複雑な状況にあり、他方で、バランスを回復する必要にも迫られている」という。

ヴァルディヴィア氏は、ブラジルの経済成長率が低迷すると見る一方で、中国がブラジルのプラス成長を支えるのに十分な役割を果たすとも予想している。ただしブラジルの成長に対する国内の需要は明確ではない。農畜産業は引き続き、工業と同様に重要な位置を占める。「だが、新しい財政の枠組みに関する議論と税制改革に対する議論が進行中。こうした大きな負荷を抱えたまま成長するのは極めて困難だ」と同氏は言う。

ボルサ・ファミリア(Bolsa Família:家族手当)やマイホーム普及計画(ミーニャ・カーザ・ミーニャ・ヴィダ)のような、過去のPT政権で成功した計画も継続すべきだが、「それはブラジルのような国の予算の制約の範囲内でのことだ」とヴァルディヴィア氏は指摘する。「ブラジルは関係国と比べても債務が大きい。このため、債務の安定に向け、今後数年の新しい財政の枠組みを国会で可決させることが重要だ」という。

オックスフォード・エコノミクスのラテンアメリカ担当チーフエコノミスト、マルコス・カザリン氏は、今後数年で平均+3%に近い成長サイクルがブラジルにあるとしても、「そこに入り込んでいるわけではない」と指摘する。

カザリン氏はブラジルの国民1人当たりGDPを、米国と日本、英国などの先進孤高グループと比較している。これは、ブラジルのGDPが人口の規模により「誇張される」ことを回避する方法である。この国民1人当たりGDPの比率が上昇すれば先進国以上にブラジルが急速に成長していることを意味し、低下すればこれらの先進国と比較してブラジルはより貧しくなっていることを意味する。

カザリン氏は、「第1期のルーラ大統領は、過去にないほどの富をブラジルにもたらした」と話す。従来なら先進国の労働者1人でまかなっていた生産でブラジルは4人の労働者を必要としていたものを、わずか3人にまで縮小したという。

その「キャッチアップ」は、対外部門が影響していると同氏は言う。交易条件(輸出価格と輸入価格の関係)が大幅に改善したと同氏は指摘。「コモディティー・ブームは極めて重要だった」という。

ブラジルの国民1人当たりGDPは2014年にピークを記録した後に「垂直落下」を記録して、2019年前後にようやく安定したとカザリン氏は話す。そして2020年から2022年にかけての直近のコモディティー・ブームでも、ブラジル経済の収縮は非常に緩やかだったという。

さらにカザリン氏は今後4年間のブラジル経済に関して、GDP成長率が平均で+2.5%前後という「成長サイクルの波」が来ると予想している。同氏によるとこれは、国内経済の需要ソースの変化を反映したものだという。

「対外部門がブラジルの今後数年の成長の原動力になるとは限らない。公共部門が大規模な契約主体となり、給与政策もより寛大なものになるだろう。所得はこれまで以上に上昇し、公共部門と民間部門が恩恵を受けるだろう」という。

しかしながらこの成長は、インフレ圧力を強めるものでもあるとカザリン氏は指摘する。「+3%に低下するどころか、インフレは+4%前後で安定している」という。そしてこれが金利の水準にも影響する。「マクロ経済のバランスが悪化することは間違いに会い」と同氏は受け止めており、実質金利画より高くなり長期の投資に「扉を閉ざす」と指摘した。

シティのラテンアメリカ担当チーフエコノミスト、エルネスト・レヴィラ氏は、今後4年間のブラジルの経済成長について、世界経済の回復及び内需の回復のように、対外部門と対内部門がほぼ同等の重要性を持つと受け止めている。

同氏は、これがまさにブラジルの直面する課題だ、と指摘する。「成長を改善するには、対外部門が恵まれている必要があるが、同様に、国内経済に対して良好な政策を導入できるだけの能力も必要だ」という。

シティは、2026年までにブラジルが平均で年間+1.5%を記録すると予想。「ブラジルにとって、そしてブラジルが抱えている課題を解消するには、低いと言わざるを得ない水準だ」とレヴィラ氏は指摘する。他のラテンアメリカ諸国と同様にブラジルも、依然として、潜在成長率が低いという問題を抱えているのだ。

カザリン氏は、「人口動態が労働市場の成長に貢献せず、投資に対して十分な貯蓄能力もない。景気循環的な改善があったとしても、構造的にそこまで成長することは不可能であり、結局のところ、それは一過性のものにとどまる」という。(2023年5月15日付けバロール紙)

ペトロブラスが23年5月15日から価格戦略の変更を検討へ

ペトロブラスが5月14日、市場への声明を通じて、社内でディーゼル油及びガソリンに対する価格政策の変更を協議していることを明らかにした。新たに導入する計算式について詳細を明らかにしたかったものの、同社はこの変更について、同社の経営審議会がこの週明けに協議して燃料の価格を決定するための新たな販売戦略にまとめられる可能性があるとしている。

同社の声明によると、「この点に関して当社は、起こりえる変更については技術的観点及びガバナンスの実践及び社内の手続きに準拠することを明確にするものである。この問題に関して下される判断は重要事実として、市場に対して適時公表される」という。

国際相場をベースに販売価格を決定するという同社が現在採用している価格政策に対して連邦政府から変更を求めて圧力がかかる中、この議論の成り行きに市場関係者らは注目している。5月12日には、同社のジャン=ポール・プラテス総裁が、来週(5月第3週)にも同社が新たな価格戦略を発表すると発言したが、詳細については言及しなかった。

プラテス総裁によると、これと併せて価格の変更についても発表される可能性がある。同総裁はこの日、「今ここで明かせば、後で誰も興味を持たなくなる。基準となるのは、安定性対ボラティリティーだ」とコメントした。

2023年第1四半期決算に関するマスコミとの共同記者会見の席上、プラテス総裁は、1年を通じて価格の変更がなかった時代にも、2017年のようにわずか1年で118回もの変更が行われた時代にも戻らないと断言した。

この席上、同総裁は「内外価格差は存在しない。存在するのは輸入に対する価格差だ。販売機会を失う気はなく、顧客に対して魅力的な価格を提示する」とコメントした。ペトロブラスは2016年から、輸入平価(PPI)を採用している。この計算式は、国際市場における原油は製品の価格変動と為替相場の変動を考慮する。ルーラ政権発足後に就任して以降、プラテス総裁は、PPIが同社のドグマ(無批判に盲従してきた教条主義)になってはならず代替の価格政策を模索すると度々発言してきた。

リオデジャネイロ・カトリック大学(PUC-Rio)エネルギー研究所のエジマール・デ・アルメイダ教授は、同総裁のこれまでの発言について、PPI政策を逸脱することなく技術的基準に基づき価格政策を調整することを示唆してきたと指摘する。「ジャン=ポール・プラテスの発言だけでなく声明からも、それを強調している」という。

同教授によると、ペトロブラスの価格政策には、例えば調整のタイミングや地域ごとの価格差などに関連して部分的に改善する余地があるという。「常に、技術的に調整する余地はあり、それによって同社が2010年から2014年に発生したような問題を抱え込むと意味するものではない」という。アルメイダ教授はさらに、政府が当初発言していたのは価格決定において国際市場にもはや追従すべきではないということを示唆していたが、もはやそのような価格戦略は実現不可能だという考えも示した。「ペトロブラスに損害をもたらすというだけではなく、エタノール燃料も含めた燃料市場のバリューチェーン全体に構造的混乱を与えるからだ」という。

ただし、銀行のアナリストや燃料業界の専門家の間では、ペトロブラスが原油の国際相場を無視して国内で販売する燃料の価格を引き下げかねないという強い懸念がある。プラテス総裁が言及したような地域別あるいは州別、個別の顧客に対する価格慣行の実現可能性についても疑問視する声が強い。複数の専門家が、ペトロブラスは何をしようとしているのか詳しく説明する必要があると指摘している。(2023年5月15日付けValor紙)