企業の解雇発表が始まる 給与削減には補償へ

小売店とショッピングセンターが店舗の一時閉鎖に踏み切ったことを受け、企業の間では、最大で40%もの人員を削減するという声も出始めた。給与と労働時間が短縮された労働者には、政府から補償が支払われる見通し。

主要都市で新型コロナウイルス(COVID-19)の流行を阻止しようとする試みとして、全国のショッピングセンターに対して営業を停止するよう指導が行われ、3日にわたって市民が自主的に外出を控えた結果、小売業界では業績の見直しとサプライヤーへの支払いの再交渉を進め、3月第4週から従業員の削減を開始する。

ブラジル・サテライト店舗協会(Ablos)やブラジル・バー及びレストラン協会(Abrasel)など経営者団体の推計によると、国内の商業分野では4月末までに5,000人の雇用が削減される。

Abraselのパウロ・ソルムッチ会長によると、業界はこれまでも長期にわたって売上が低迷しており、店舗の閉鎖という事態に至って税金や家賃、給与を支払うだけの現金預金は確保されていないと経営者らは話しているという。「状況は既に劣悪だったが、ここへきてそれが劇的に悪化した」という。

一方、Ablosのチトー・ベッサ・ジュニオル会長は、大半の店舗が3月第4週から4月末までという5週間に及ぶ店舗の閉鎖となり、売上が低迷する月の運転資本を確保するの非常に困難になると断言する。国内に170店舗を展開し1,600人の従業員を抱える衣料小売チェーンTNGのオーナでもあるバッサ・ジュニオル会長は、「私自身、週から当社の従業員のおよそ40%を解雇する」と話す。さらに、「ちょうど清掃会社との契約を終えたところであり、今日19日にはIT分野のサービスを担当する人員を削減した、来週には店舗スタッフを500人削減することになる」と付け加えた。

 

集団休暇

バッサ・ジュニオル会長によると、ショッピングセンターはブラジル国内で、直接と間接を合わせておよそ40万人を雇用している。現在の情な状況が続くなら、この半数の雇用契約が解消される見通しだ。「3日前から店舗経営者らと話しをしてきたが、いずれも、50%、40%の人員削減を実施すると話している。その一部は、集団休暇を実施するが、4月以降、人員削減以外に取るべき道はない」という。

ヴィヴァラとシネマーク、エチナ、レストッケ(ル・リ・ブロンとドゥダリーナ、ジョンジョンを展開)といった企業を顧客に持つタヴァノ・マイヤー弁護士事務所のレオナルド・タヴァノ弁護士によると、クライアントが25%の労働時間の短縮や個別の有給休暇、集団休暇といった人員の削減や代替の手段の導入などを推進するのに対処するため、同弁護士事務所のスタッフらはこの72時間、不眠不休で対応に当たっているという。「私が見るところ、小売業界は、既に業績が不振となっていた店舗を中心に店舗の閉店を薦め、従業員を30%から50%削減するだろう」と同弁護士は話す。

人員の削減以外にも業界は、サプライヤーと支払い期限の先送りや、賃貸・リース契約の再交渉にも取り組んでいる。34店舗を展開する衣料小売チェーンMOBのアンジェロ・アウグスト・デ・カンポス・ネット氏は、「税金、ショッピングセンターのテナント料など、これらは頭の中に入れず、支払わない。私の経営目標は、可能な限り雇用を維持することだ」という。62店舗を展開する衣料小売チェーン、グレゴリーのアンドレア・ドゥッカ氏も、「我々は既に店舗を閉鎖しているので、ショッピングセンターが賃貸料と共益費の請求を停止するか、彼らとの協議を希望している」という。同氏は、従業員を対象に集団休暇を実施する予定で、委託販売員の解雇にも着手する。「とりあえず、使用期間を終えていない従業員を削減する。その数は100人ほどになる」という。

小売マネージング・プログラムFIAのコーディネーターを務めるエコノミストのクラウジオ・フェリゾーネ・デ・アンジェロ氏は、小売業界の経営者らには雇用の規模を削減する以外の道はないと話す。「それは、非常に心の痛い決断だが、それを判断するか破綻するかしかないのだ」と付け加えた。(2020年3月20日付けエスタード紙)

アイフードがレストランを対象にした5,000万レアルのファンドを設立

料理配達スタートアップのアイフード(iFood )が、新型コロナウイルスのパンデミックで危機的状況にあるレストラン業界を援助する包括対策を導入する。4月2日から有効となるもので、3月25日の詳細発表前にエスタード紙に対して独占的に明らかにした。

 

アイフードのディエゴ・バレット財務担当取締役によるとこれは、アプリ収入から5,000万レアルを原資として確保する支援基金。支援対象としての条件を備えた適格なレストランには、4月2日以降、注文があった場合に同社が請求する手数料の一部を返金する。「事業拠点が1か所、個人がオーナー、新型コロナウイルスに大きな影響を受けた地域にある。そういったレストランに当社は支援のプライオリティーを置いている」という。「レストランに対する支援金は、請求したインボイスからの返金として扱われる」という。

 

同社は、レストランへの支払いまでの期間の短縮化も進める。現在、ある店舗から返金要請があった場合、その店舗が返金を受け取るまでに30日を要する。4月2日以降、購入から7日後に、一切の追加費用を負担することなく受け取ることができる。「現在のような状況の中で当社は、厳しい財務状況に置かれている人たちに手を差し伸べることを希望している」とバレット取締役はコメントした。同社は、今回の対策で4月と5月にレストラン業界の運転資本に6億レアルを注入する支援につながると推算している。

 

また第3の対策として、「パラ・レチラル(持ち帰り)」の弾力的運用である。この機能はユーザーが料理を注文して消費者がレストラン内で消費するために受け取ることを可能にする。「当社の狙いは、レストランの飲食スペースを自由に使える状態で維持することである。当局の指導を尊重し、可能な限りこの対策を薦めたい」とバレット取締役は言う。この種のサービスに対してレストランが徴収する手数料が返金される。(2020年3月19日付けエスタード紙)

新型コロナウイルスの影響低減を狙い中銀がSelicを年利3.75%に利下げ

2020年に世界経済がマイナス成長に陥るリスクが現実のものとして浮上してきていることで、中銀通貨政策委員会(Copom)は3月18日、主要国の対応を踏襲し、ブラジル経済基本金利(Selic)の利下げに復帰した。3月18日にCopomは、Selicを年利4.25%から同3.75%に削減し、国内の政策金利の過去最低記録を再度更新した。この結果、Selicは16か月にわたって据え置かれた後、6度にわたって利下げが進められたことになる。

2月初旬の前回の会議でCopomは、3月の会議では利下げしないと言及したほどだった。ところが新型コロナウイルス(COVID-19)が大陸を飛び越えて感染を世界に広げていることと、過去数週間で市場の置かれた環境が劇的に変化したことを受け、今週の会議では政策金利を新たに利下げするという判断に至ったものである。

この1週間、ブラジル中銀はSelicを大幅に利下げすることへの強い圧力を受けてきた。米連邦準備制度理事会(FRB)が3月15日の臨時会議でFF金利を年利0%―.25%と設定した後、Selicがこれまで以上に大きな水準で利下げされるという予想が拡大した。

2017年12月以降、ブラジルの政策金利は過去最低水準を更新し続けてきた。だがその利下げを経た後でさえ、ブラジルの実質金利は依然としてプラスのままである。

インフィニティー・アセット・マネージメントの調査によると、新しい利率でもブラジルの実質金利は、主要40か国の中で最も高い。言い換えると今後12か月の資金運用は、同じ期間に金融市場が予想するインフレのパーセンテージを上回って収入を確保できるということである。

利下げ後に発表した18日の声明で、Copomは、45日後に行われる次回の会議でこの水準の金利を維持することを示唆した。だが一方で、ブラジルのような新興国の経済を取り巻く状況は、より大きな困難を伴うものになったことも強調した。(2020年3月19日付けエスタード紙)

自動車メーカーが工場を閉鎖し約5万人を対象に集団休暇

国内に製造拠点を持つ複数の自動車メーカーが、3月末に工場を閉鎖すると発表した。一時的に製造ラインを休止するものながら、国内における新型コロナウイルス(COVID-19)の流行状況と市場の需要に左右されるため、再開時期の見通しは立っていない。集団休暇を発表済みの自動車メーカー3社は、合わせておよそ5万人の従業員を抱える。

ゼネラルモーターズ(GM)の場合、サンパウロ州とリオ・グランデ・ド・スル州、サンタ・カタリーナ州にある国内5か所の工場が再開時期を未定のまま生産を停止、2020年から2024年にかけて100億レアルを想定していた投資も棚上げした。同社によると、COVID-19の感染拡大で生じた現在のような危機的状況に対処するため、現金預金を確保する必要があるためという。

またアルゼンチンのGM子会社も同様に工場を閉鎖する。3月30日から集団休暇を実施するブラジル国内の工場と合わせて、対象となる従業員は1万9,000人である。同社はこの集団休暇は市場の需要が原因だとしているが、同グループで最も長い歴史を持つ工場があるサンパウロ州サン・カエターノ・ド・スル市の金属労組によると、この集団休暇の主な理由は新型コロナウイルスの流行である。

メルセデス・ベンツも、サンパウロ州とミナス・ジェライス州に保有する工場と、サンパウロ州カンピーナス市の流通・物流センターの営業を停止する。この停止措置は当面、3月25日から4月20日を予定し、対象となる従業員はおよそ1万人である。

今回の措置について同社は、新型コロナウイルスの予防で必要な措置だとしており、稼働の再開は国内の状況次第だとしている。また3月16日には、フォルクスワーゲン(VW)がわずか10日間であるが、3月31日からサンパウロ州とパラナ州にある4か所の工場を対象に操業を停止すると発表した。同社の場合、ブラジル国内でおよそ1万5,000人を雇用している。

 

一部では解雇の動き

 他の自動車メーカーも、今後数日内に工場の閉鎖を発表する見通しだ。一方で、CAOAチェリー・グループはエンジン生産事業を終了するとともに3月18日にサンパウロ州ジャカレイー工場で雇用していた59人を解雇した。この人数は、同工場の従業員の10%に相当する。

サン・ジョゼ・ドス・カンポス市金属労組のギラー・ボルバ理事によると、同社はこの措置の理由について製造台数が日産65台から40台に減少したためだと主張している。「新型コロナウイルスが急速に蔓延する状況下で、同社の説明には理論的根拠がない。同社は、雇用関係が失われれば民間の健康保険の適用もなくなる労働者を保護すべきだ」と同理事はCAOAチェリーの判断を非難した。これに対して同社は、コメントを避けた。

 

税制優遇措置

 GMが凍結した100億レアルの投資は、コストを削減して黒字化できなければ同グループが工場を閉鎖すると2019年に同社のカルロス・ザーレンガ南米担当社長が表明して以降、従業員とディーラー、サプライヤー、リセラーらと長い交渉を経て妥結した後に発表されたものである。一連の騒動では、サンパウロ州政府が同州内に投資する企業を対象にした減税策を発表する事態に発展した。GMによるとこの投資は、主に新製品と工場の近代化を対象にしたもので、今後、具体的な期間については白紙のまま見直しが進められる。

今回の発表は、同社としては国内製造となる初のSUVであるトラッカー(Trucker)を公式に発表したのと同じ日に行われた。トラッカーは、8万2,000レアルから11万2,000レアルで販売される。マスコミとディーラー関係者、労働者らゲストの混雑を避けるためのストリーミング配信となった同モデルの紹介に際してザーレンガ社長は、このモデルを小型SUVセグメントのトップセラーに引き上げることを希望していると発言した。

同社は生産ラインの一時停止は市場の需要が原因だと主張しているが、工場のあるサン・カエターノ・ド・スル市金属労組のアパレシード・イナシオ・ダ・シルバ委員長は、新型コロナウイルスの国内感染が拡大して社会が混乱していることが製造ラインの停止に関係しているという考えを示した。

同委員長によると、例えばABCパウリスタ地区の工場はトラッカーを製造するため、今後2週にわたり土曜日に従業員が時間外労働で対応する必要があるという。シルバ委員長はさらに、労働者が同社から受け取った情報に基づくと、製造ラインの停止は4月12日まで続く。ただし、状況によっては「この措置が中止、あるいは延長されることになるという。(2020年3月19日付けエスタード紙)

KIKKOMAN社とAZUMA KIRIN社が社名変更案内の為会議所を訪問

2020年3月18日、Kikkoman Indústria e Comércio de Alimentos Ltda. の秋元壮介取締役と Azuma Kirin Indústria e Comércio de Bebidas e Alimentos Ltda.の尾崎英之社長が会議所を訪問、応対した平田藤義事務局長にキリンホールディングス株式会社が保有する株式をキッコーマン株式会社へ譲渡すること に伴い、来る 4月1日より Kikkoman do Brasil Indústria e Comércio de Alimentos e Bebidas Ltda.と社名を改めるとの報告を行った。

Pdf新体制の発足および社名変更のお知らせ

Sosuke Akimoto, Hideyuki Ozaki e Fujiyoshi Hirata

 

Foto: Rubens Ito / CCIJB

マガジン・ルイーザとインロコが研究センターを開設

ペルナンブコ州に拠点を置くスタートアップのインロコ(InLoco)が、3月17日、レシーフェ市に研究センターを開設することで小売チェーンのマガジン・ルイーザと提携したと発表した。小売向けソルーションとロケーションシステムの開発に照準を合わせる。

150人いるインロコ従業員のおよそ20%を、研究センターに配置換えする。スタッフらは既に、小売業界向けのロケーション・ソルーションに取り組んできた。今回の提携で開発された製品はすべて、マガジン・ルイーザが独占的に使用する。同社は、このプロジェクトに投資する金額について明らかにしていない。

インロコの創業者、アンドレー・フェラス氏は、「当社の役割は、マガジン・ルイーザに対してノウハウを移転することだ」という。研究センターでは、データサイエンティストとソフトウェア開発者、製品デザイナーが課題に取り組む。

インロコとマガジン・ルイーザは、長い付き合いを持つ。マガジン・ルイーザがインロコの古くからの顧客というだけでなく、マガジン・ルイーザの創業家から投資を受け入れている。

2019年6月にインロコは、アメリカの投資ファンドであるバロール・キャピタルとブラジルの投資ファンドでマガジン・ルイーザ創業家がマネージングするアンボックス・キャピタルから2,000万ドルの出資を受けた。(2020年3月18日付けエスタード紙)

連邦政府が議会に異常事態認定を要請へ;2020年の基礎的財政収支は2,000億レアルの赤字

新型コロナウイルスによる影響に対処するため、連邦政府の経済スタッフに支出を拡大する裁量を付与。

大統領府は国会に対し、新型コロナウイルスのパンデミックへの対処を目的とした支出の拡大に向けて異常事態の認定を要請する。ボルソナロ政権は声明を発表し、歳入減少が予想される中、この措置が「ブラジル人の健康と雇用の保護」のための手段を保証すると主張した。国会がこれを承認する場合、この措置は2020年12月31日まで有効となる。

連邦政府の経済スタッフによると、連邦政府は3月17日には現在の1,241億レアルという財政目標で認められた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字額を上回る1,550億レアルの赤字という新たな目標も発表する予定である。ただしこの新しい目標額は、2020年のブラジルのGDP成長率が+2.1%、原油の国際相場が1バレル=52ドルという予測に基づいて設定されたものであり、当然ながらこの見通しが悪化する可能性はある。この予測は既に時代遅れのものであり、経済スタッフは当該文書に記載された以上の規模で年間の赤字額の見通しをアップデートする裁量が与えられる。

現時点でエスタード紙の取材で得られた情報から計算すると、危機対策で求められる歳出拡大への対応には、基礎的財政収支で最大2,000億レアルの赤字になることが求められる。ただし実際のところ、年間を通じて異常事態となれば、連邦政府は、一切の目標を達成する必要がなくなるため、いかなる金額の赤字額であれ計上が可能となる。

連邦政府と州政府、市役所に対する公会計の基本法となる財政責任法(LRF)では、第65条において、異常事態が宣言される場合において、予算の凍結の必要性を含めて財政目標の履行停止を認めている。仮に異常事態の宣言が承認されない場合、連邦政府は、1,241億レアルの赤字という財政目標を達成するため、予算法の条件に基づき状況変化に対処するため約300億レアルの歳出節減が求められる。このため連邦政府としては、国会が異常事態の宣言を承認する必要がある。また州議会と市議会も、州及び市においても同様の宣言を承認する見込み。

 

新たな対策

連邦政府は、2方面で新たな対策を計画している。ひとつは非正規労働者に対する一時的な所得給付、もうひとつは財務状況の厳しい企業に対する雇用契約の一時的な凍結である。雇用契約が凍結された労働者は、連邦政府から失業保険の給付を受ける。連邦政府は、一連の危機による影響を強く受けるサービス業界を視野に入れている。同様の対応は、2008年の国際金融危機においても採用されており、この対処に連邦政府は約150億レアルの支援を想定する。

ジャイール・ボルソナロ大統領は、非正規雇用の労働者に対する支援プログラムはパウロ・ゲデス経済大臣が準備しているとコメントした。「バウチャーに相当する何か。金額の決定と、その支払いをどのように組織化するのかという部分が定まっていない」という。エスタード紙が取材で入手した情報に基づくと、この給付が施行されれば、そのコストはおよそ200億レアル前後となる。

連邦政府は外にも、原油相場の下落とGDP成長率が下振れすることによる歳入減への対処も求められる。GDP成長率が0.1パーセントポイント低下するごとに、歳入は15億レアルから20億レアル減少する。上院の独立財政院(IFI)はレポートで、石油ロイヤルティーに関連した連邦政府の歳入が170億レアル減少すると指摘している。

エレトロブラスの民営化法案の国会可決も難しくなっており、想定する事業売却益収入から同電力公社の民営化に関連した160億レアルも削減される。

連邦政府はさらに、利益が減少する官営銀行及びペトロブラスの配当減少についても対処することになる。この支払いは、連邦政府の現金預金を強化するとお期待されていたものである。

 

投資

この外、ロジェリオ・マリーニョ地域開発大臣のスタッフが、工事が中断していた公共工事に100億レアル規模の予算を注入することも検討している。

 

国会

経済スタッフのメンバーはエスタード紙に対して、異常事態宣言の承認は、歳出上限規定(歳出拡大の上限をインフレ率に制限する規定)を修正することなく連邦政府が公会計を運営する裁量を与えると説明した。(2020年3月18日付けエスタード紙)

新型コロナウィルスについて造詣深い専門医と意見交換

現在の新型コロナウィルス感染拡大の事態には緊急対応が重要であり、3月17日(火)午前、本件に造詣深い専門医に会議所にお越し頂き、全世界の感染国でとられた対応措置をはじめ、今後のブラジル保健省の緊急対策動向及び公立/私立病院の施設能力や対応状況についていろいろと意見交換を行った。

この専門医はサンタクルス病院技術イノベーションディレクターでサンパウロ大学医学部医療レジデンシーコーディネーターでもあるルイス・キムラ氏である。

その他、会議所では会員企業宛てに新型コロナウィルス対策についてのアンケートを実施するが、その内容についても事前にキムラ専門医に監修いただいた。

なお、新型コロナウィルスに関する情報収集として、サンパウロ日伯援護協会にも同様なお願いをしている。

会議所からの参加者は平田藤義事務局長、日下野成次総務補佐、伊藤ルーベンス編集担当、久場アレシャンドレ会計担当補佐。

意見交換の模様

キムラ サンタクルス病院技術イノベーションディレクター・サンパウロ大学医学部医療レジデンシーコーディネーター

Fotos: Rubens Ito/CCIJB

新型コロナウイルス問題で連邦政府が1,473億レアル規模の包括対策を発表

新型コロナウイルス(COVID-19)への対策で政府としてより有効な答えを出すよう求められたパウロ・ゲデス経済大臣が、経済分野と社会的弱者の救済を目的とした1,473億レアル規模の包括対策を発表した。一部のイニシアティブは行政により即時実施される可能性があるが、家族手当(ボルサ・ファミリア)の申請を求める国民の行列への対処を含め603億レアル分の対策は国会で承認を経る必要がある。

今回の発表は、COVID-19の影響を乗り切るために経済省に対策を求めるべくジャイール・ボルソナロ大統領がバー及びレストラン業界の代表者を伴って経済省を訪問した後に発表された。

今回の対策を策定する上でゲデス経済大臣のスタッフは、キャッシュ・フローには影響を与えるものの2020年末時点で財政への影響が発生しないという内容とすべく留意した。対策の多くが、企業の納税期日を一時的に停止するだけのものであるが、これらの企業は、定められた方法で2020年内に未納税を完済しなければならない。その他のめぼしい対策は、年金受給者とINSSの給付金受給者に対する13か月給付の初回及び第2回の支払い及び2020年に予定する賞与の支払いの前倒しのように、支出の前倒しである。

今回の対策の発表に当たってゲデス経済大臣は、過去数日にわたる対策の要求に対して自身を擁護し、我が国は「パニックの心理学、敗北主義」に屈してはならないとコメントした。「我々は、できることは何もないとして、相手に要求するばかりの状況に陥ってはならない」と、具体的な名前には言及せず発言した。さらに同大臣は、今回の対策が最初のパッケージだと強調して、数日内に新たな発表があることを示唆した。また航空会社に対する課税の一時的な停止と観光業界向けの追加対策については現在も協議が重ねられている。

 

隔離対策

ゲデス経済大臣は、若年層については外出する一方で新型コロナウイルスに対する危険性が高い高齢者は隔離対策を取るよう提案した。「全員が家に籠もれば、GDPが崩壊する」という。その後に同大臣は、最善の指針を示すのは保健省の責任だと付け加えた。

経済省が発表した対策額のうち834億レアルは、より貧しい人たちと高齢者に振り向けられる。残りの594億レアルは、雇用の維持に対する対策費となる。連邦政府によるとこれらの資金は、今後3か月をかけて経済に注入される。対策リストには、3月16日に発表された新たな対策に加え、先週の時点で発表済みだった対策を含む。

新しく加えられた対策の中には、年金受給者とINSSの給付金受給者に対する13か月給付の第2回分、総額230億レアル以上の支払いを5月に前倒しすることも含まれる。この13か月給付の初回の支払いについては、連邦政府が先週、4月に前倒しすると発表済み。言い換えると、この初回と第2回で総額460億レアルの経済波及効果が発生する。この支払いは例年、8月と12月の2回に分けて実施される。

連邦政府はさらに、例年なら7月から12月に支払われる賞与、総額128億レアルを6月に支払うことも決定した。

またエスタード紙が既に報じたように、連邦政府は家族手当に関してもおよそ31億レアルの支出を認める。オニックス・ロレンツォーニ市民大臣は自身のツイッターで、120万戸の家庭が家族手当計画の対象となり恩恵を受けることになるだろうとコメントした。連邦政府の経済スタッフは、この対策費によって家族手当を申請する家庭の行列が事実上ゼロになるはずだと発表した。ただし、2019年12月の時点でエスタード紙が報じたように、360万戸の家庭が貧困あるいは極貧状態にあるとされたが、手当を受け取っていなかった。連邦政府は、同計画の受給対象となるための条件が変更されるかどうかについて、詳細を明らかにしなかった。

連邦政府はさらに、1988年10月までに預金されて社会統合計画負担金(PIS)/公務員財形計画(Pasep)の基金にとどめ置かれてる資金から215億レアルを勤続期間保障基金(FGTS)に移転し、FTGSの保険金の一部引き出し承認を再度実施する。対象とする加入者と引き出しを認める金額について、経済スタッフは現在も検討を進めている。連邦政府は、この引き出しを5月に実施する予定。「適切な時期に承認する引き出し額の発表を行う」と、財務省のワルデリー・ロドリゲス財務特別局長はコメントした。同局長の発言に先立ってゲデス経済大臣は、現在6,101.06レアルに定められているINSSの限度額まで引き出すのを承認したいと政府は希望しているとコメントしていた。(2020年3月17日付けエスタード紙)

対策の内訳

弱者対策(834億レアル)

発表済みのもの

  • 年金受給者とINSSの給付金受給者に対する13か月給付の初回の支払いを4月に前倒しする―230億レアル。
  • 年金受給者と給付金受給者に対する源泉徴収型ローンの金利の上限を引き下げローン期間を長期化する。

 

新たに発表されたもの

  • 年金受給者とINSSの給付金受給者に対する13か月給付の第2回の支払いを5月に前倒しする―230億レアル。
  • 社会統合計画負担金(PIS)/公務員財形計画(Pasep)で引き出されていない金額を勤続期間保障基金(FGTS)に移して同基金の保険金の一部引き出しのための原資とする―215億レアルの経済波及効果
  • 賞与を6月に前倒しして支払う―128億レアルの経済波及効果。
  • 100万人以上の受給者を加入させる家族手当(ボルサ・ファミリア)の強化―31億レアルの経済波及効果。

 

雇用維持対策(594億レアル)

新たに発表されたもの

  • 勤続期間保障基金(FGTS)の納付期日の3か月延期―300億レアルの経済波及効果。
  • 小・零細企業向け税及び賦課金統合納付制度(Simples)の連邦税の部分の期日の3か月延期―推定222億レアル。
  • 所得創出計画(Proger)/労働者支援基金(FAT)による小・零細企業への与信供与―50億レアルを想定。
  • 公的社会支援諸機関(システム)の賦課金の50%控除―経済波及効果22億レアル。
  • 輸入された工業用の中間投入財及び原材料に対する積み下ろし前の手続きの簡略化。

 

パンデミック対策

発表済みのもの

  • 社会保障サービス(INSS)の給付金受給者に対して現況届の120日間停止。
  • 医療・病院用品の課税審査の優先的取り扱い。
  • 医療・病院用品の通関作業の優先。

 

新たに発表されたもの

  • 自動車の第3者損害賠償責任義務保険(DPVAT)の余剰金の統一保健システム(SUS)への資金の移転―45億レアル。
  • 医療・病院用品の輸入税率をゼロに引き下げ(2020年末まで)。
  • COVID-19対策で必要とされる品目リスト掲載品の輸入に対する工業製品税(IPI)の一時的免税措置。
  • COVID-19対策で必要とされる品目リスト掲載品の国内生産に対する工業製品税(IPI)の一時的免税措置。

2020年GDP成長率が+1%を下まわるという見方まで浮上

新型コロナウイルスのパンデミックに起因する社会・経済的な危機を受けてエコノミストは、ブラジルの経済成長に対する計測と見通しのやり直しを進める. 専門家の間では、既に、2020年のGDP成長率が+1%を切るという意見も出始めている。

MBアソシアードスは、2020年のGDP成長率の見通しをこれまで+1.7%としていたが、今回1.0%に引き下げただけでなく、第1四半期のマイナス成長は確定的とした上で、パンデミックが4月から6月にも引き続きどのような影響を与えるかにもよるが、上半期にリセッションとなる可能性もあるという認識を示した。同社はレポートの中で、「3月と4月に予想される経済活動の停滞は、上半期全体に影響を及ぼす」と指摘した。

アチーバ・インベスチメントスのチーフエコノミスト、カルロス・タデウ・デ・フレイタス・フィーリョ氏は、仮に新型コロナウイルスの伝染が中国で発生した状況を後追いして3か月にわたって下げ圧力となるなら、2020年のGDP成長率は最大でも+1.0%になると話す。その上で、「小・零細企業に与える打撃を考慮すれば、この水準を達成できれば喜んで良いと言えるものだ」と付け加えた。

3月16日にブラジル中銀は、2020年のGDP成長率に対する見通しが先週の+1.99%から+1.68%に低下したとする、金融機関を対象に実施している経済動向調査「Focus」の最新調査結果を発表した。

ジャイール・ボルソナロ大統領は3月16日、ブラジルの2020年のGDP成長率について、+2%には達しないという考えを示した。同大統領によると新型コロナウイルスのパンデミックは非常に憂慮すべき事態だという。3月11日に経済省は、2020年のGDP成長率に対する見通しを、それまでの+2.4%から+2.1%に引き下げたばかりである。(2020年3月17日付けエスタード紙)