ドル安の為替にもかかわらず輸出が好調

 昨年のブラジルの輸出はコモデティー商品価格高騰に後押しされて、平均輸出商品価格は前年比12.5%上回ったが、輸出量は3.2%に留まった。しかし今年5ヶ月間の輸出額は前年比20%増加の600億9,700万ドルに達しており、平均輸出商品価格は9.4%、また輸出量は8.3%それぞれ増加している。

 しかし完成品輸出比率は60%まで達した数年前と比べると、今年5ヶ月間では53.5%まで低下したが、第一次産品輸出は昨年同費の28.4%から32%まで上昇している。

 今年5ヶ月間の第一次産品輸出量は前年同期比19.4%増加、半製品も8.5%増加したが、完成品はマイナス12.3%低下している。ガソリンの輸出量は985.6%、アルコール176%、トウモロコシ125.6%、大豆油121.8%、大豆かす79.2%、鉄鉱石71.5%、原油が57.3%とそれぞれ大幅に増加している。(11日付けエスタード紙)

長期ローンがリッターカーからセダンや高級コンパクトカーに

 2000年から2003年までの排気量1,000CCのリッターカーは、自動車販売の60%を占めていたが、最長6年の長期格安ローン利用で昨年は46%まで低下してきており、今年は更に低下すると予想されている。

 排気量が1,000CC以上のコンパクトカーやセダンは、7%から26%に増加しており、昨年のGM社の基本ヴァージョンのClassic車の販売比率は66%であったが、今ではエアコンやドアの電動操作などの搭載付Classic車販売が60%と逆転している。

 今年5ヶ月間の自動車販売は前年同期比24%増加、リッターカーは22%増加の39万台、3万レアルから4万レアルのコンパクトカーは倍増の6万台、6万レアル前後の中型クラスは33.8%増加の6万3,600台、10万レアル以上の高級車は67%増加の1万9,300台となっている。(10日付けエスタード紙)

会員の3銀行がサステイナブル・バンキング賞に輝く

6月7日、国際金融公社(IFC)とファイナンシャル・タイムズ紙はロンドンに於いてSASUTAINABLE BNKING 賞の授与式を行った。

 世界51カ国100以上の銀行から、151の応募があり(6月7日ファイナンシャル・タイムズ紙スペシャルレポート)、その中から総合トップに選ばれたの は、オランダABNアムロ銀行、次点が英国バークレイ銀行であったが、ブラジルからはブラジル三井住友銀行がカーボン・ファイナンス賞、スダメリス銀行を 傘下に置くABN AMRO REALはエマージングマーケット・サステイナブル・バンク賞に、又伯銀のBANCO DO BRASILはサステイナブ ル・バンカーズ賞を見事に受賞した。

  受賞に輝いた3銀行共、当会議所の会員であり極めて名誉な快挙、これを切掛けにCO2排出権取引が今後さらに活発化しそうだ。

 1997 年12月11日の気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書において地球温暖化を引き起こす原因とされる二酸化炭素、メタン等について、1990年を ベースとした先進国における削減率を各国別に定め、約束期間内に数値目標を達成する事が謳われた。この京都議定書において京都メカニズム(CDMのメカニ ズム、排出権取引のメカニズム、共同実施のメカニズム、吸収源活動のメカニズム)が盛り込まれ、それから10年を経過した現在、ヨーロッパ、ブラジル、な ど世界的にCO2の排出権取引などを中心に活発な動きがあった。

 2006年8月、社会、環境および企業統治の目的を銀行の本来業務に統合 させる事から世界銀行の姉妹機関である国際金融公社(IFC)とイギリスのファイナンシャル・タイムズ紙が共同で持続可能な銀行取引(サステイナブル・バ ンキング)賞を創設、先進国や発展途上国で活動する民間金融機関から応募を受付、同年度から表彰が開始された。

 表彰は5つのカテゴリーに 分かれサステイナブル・バンク(持続可能な銀行)賞、エマージングマーケット・サステイナブル・バンク(新興市場の持続可能な銀行)賞、サステイナブル・ バンカーズ(持続可能な銀行家)賞、サステイナブル・ディール(持続可能な取引)賞とサステイナブル・カーボン・ファイナンス(持続可能なカーボン・ファ イナンス)賞から成っている。

事務局長談話
今から約5年前、事務局長として就任直後、対外的な活動に関する仕事の第一歩は、当会議所が一刻も早く在ブラジル主要4カ国の会議所が設立した「炭素委員会」に正式メンバーとして参加する事であった。(下記のCDM活動の歩みを参照)

 当 初、幾多の手探りの勉強会を重ねていたが、常に当会議所の活動よりも一歩先行していたブラジル三井住友銀行が遂にカーボン・ファイナンス賞の優秀賞に輝い たのは非常に素晴らしくお目出度い事だ。特に同銀行の内田 肇 地球環境部長は今回の受賞の立役者であり日本でも活躍、昨年は会議所主催のCDMセミナー の講師役も勤めて戴きお世話になった方である。

 また、同じ会員企業である地場の他の2行も揃って受賞、CDM先進国になった実感がする。これからもCDMを担当する環境委員会を中心に更なる活動に期待したい。 事務局としてもベストを尽くしフォーローをするつもりである。

 

当会議所のCDM活動の歩み

2002年8月8日、在ブラジル・ドイツ商工会議所の主導下、アメリカ、フランス、イギリスの4商工会議所が発起人になり「炭素クレジット委員会」が設立された。
第 3回気候変動枠組み条約締約国会議COP3の議長国が日本であった理由から当会議所にも「炭素クレジット委員会」への参加要請があり、当会議所の GIE(外国投資家グループ)メンバーが同年9月23日、炭素クレジット委員会の第1回会合にイタリア、ベルギー、スイスおよびユーロの会議所と一緒に参加。
その後、カーボン・クレデイットの取引が、将来有望なビジネスになる可能性を秘めているため当会議所の貿易部会が中心となって各種勉強会やJETROやJBICの協力を得てCDMの講演会も数多く開催。
主要外国会議所との交流をさらに深めて行く事から2004年4月、当所のGIE委員会の中にCDM研究会を発足。当時の金岡正洋委員長はその目的、組織また活動内容を下記のように策定した。

1) 目的:CDMビジネスの動きにつき情報収集、調査、広報、意見交換等を行うことによって、商工会議所の会員企業のビジネスに資することを目的とする

2) 組織
① GIE委員会の分科会とするが貿易部会、JBIC,JETROの協力を得る.
② 研究会は、特に回数は決めないが、GIEの炭素委員会が2ヶ月に1回の頻度で開催されるので、それをメドとする
③ 研究会への参加は20社程度をメドとするが、特に定数は定めない
④ 会員は会議所メンバーで参加を希望する社全てを対象とする

3) 活動内容
① CDMビジネスについての情報収集
② CDM関連の調査の実施、単独、他機関との協力による調査
③ CDMビジネスについての研究会会員間の意見・情報交換、及び会議所会員に対する情報提供
④ CDM関連のセミナー・講演会の開催
⑤ GIEの炭素委員会に向けての準備、意見調整、提案

4) ブラジル政府等への提言等    
その後、CDM研究会は他の主要国会議所の組織に倣い、新たに環境委員会を設け活動を継続、現在に至っている。

Pdf 三井住友銀行排出権信託サービス

 

今年4ヶ月間のサンパウロ州の税収は17%増加

 今年初めの4ヶ月間のサンパウロ州財務局の税収は、電子課税伝票(ノッタ)の使用奨励で、クレジット適用による税金の間接的還元及び税支払い隠匿防止で、サンパウロ州の税収は前年同期比17%増加した。

 サンパウロ州政府は購買者、消費者、企業に対して電子ノッタ及び一般ノッタ発行で、商品流通サービス税(ICMS)に対するクレジットが得られ、このクレジットの有効期間は5年間で、自動車所有税(IPVA)の支払いに適用できる州令を州議会に提示、承認されれば来月から適用される。

 サンパウロ市の電子ノッタシステムは1年が経過したが、すでに5,800万枚発行されており、都市不動産所有税(IPTU)の50%まで適応できるクレジットは1億レアルに達している。(6日付けエスタード紙)

国内鉄鋼価格が最高10%の値上がり交渉

 PACプログラムに引っ張られて国内鉄鋼需要が、旺盛になってきているのと合せて、ドル安の為替で鉄鋼輸出の収益性が低下しており、製鉄会社は5月から価格交渉に乗出した。

 ゲルダウ社では国内鉄鋼価格を10%近く、輸出価格は10%以上を予定しており、5月から納入先と交渉開始したが、7月までずれ込む可能性があり、またウジミナス社やナショナル製鉄(CSN)も交渉を開始している。

 ウジミナス社の鋼板生産量は1,000万トンであるが、国内需要に対応するために厚板の輸入を開始、昨年の厚板の国内生産は190万トンで、73%が国内向けであったが、今年は90%が国内向けに出荷される。(6日付けガゼッタ・メルカンチル紙)

今年4ヶ月間の鉱工業成長率は4.3%

 6ヶ月連続で伸びていた鉱工業界の4月の成長率は前月比マイナス0.1%となったが、前年同月比では6.0%、今年4ヶ月間では4.3%増加しており、危惧する必要はない。

 4月の鉱工業の成長率低下の要因として、食品部門は−1.9%、衛生・香水が−5.7%、電子・通信部品−3.4%、石油・潤滑油部門は−1.2%とそれぞれマイナスを記録した。

 ドル安の為替によるセルラー及びテレビの生産低下で、電子・通信用部品は前年同月比‐14.1%、木材部門も−8.6%とそれぞれ為替の影響を大幅に受けているが、設備投資用機械・装置は20.5%、自動車関係が11.2%とそれぞれ大幅に増加している。

 投資の目安となる4月の資本財は、前月比−1.2%と僅かに落込んだが、前年同月比では17.4%、今年4ヶ月間では15.4%と大幅に増加、また部門別の資本財伸び率の比較では、鉱工業部門が前年同月比23.2%、農業39.4%、運輸13.3%、エネルギー20.6%、建設部門が23.3%と大幅に増加している。(6日付けエスタード紙)

時事論評     バブルの風体

時事論評             バブルの風体

 国際金融市場は昨日、中国政府が、株式の売買所得にかかる印紙税率を0.1%から0.3%と3倍に引き上げた事を受け、再び強風と立ち向かった。

 各株式市場は、一通り落ち着きを取り戻してから平静に戻り、特にアメリカのCopomに相当するFomcが、同じ懸念材料であった米国経済に関する問題について楽観的な見通しの発表を行ってから回復が顕著になった。

 しかし、中国問題は喉元を過ぎたとは言えない。
 大幅な引上げではあるが、まだまだ低い徴税率である。この強風がもたらした結果は中国の税当局による徴税そのものではなく、バブルの崩壊を回避しようとする当局の意図が備わっているかであった。上記の0.3%でも株式市場が正常化しない場合、更なる引上げが見込まれているからだ。

 昨日、上海証券取引所のCSI 300指数は-6.8%と大幅安となり、それ以上の急落を防いだ唯一の理由は、300銘柄のうち半分以上が10%の値下がり幅を限度に、ストップ安になった。この調整は今後さらに続く要因が揃っているからである。いつ仮に30%暴落しても誰も驚く者はいないだろう。株価は今年だけでも、100%近い値上がりがあったからだ。

 一週間前、フェデラル・リザーブ(米国中銀)の前議長のアラン・グリーンスパンは、シャンハイ取引所の「横溢」(おういつ)を指摘した上で、「劇的に収縮する」と警告した。氏が訴えるクラッシュを中国側当局は増税により回避しようと考えているのである。

 シャンハイ付近のアジアの証券取引所では余震が感じられたが、ブラジルを含むそれ以外の世界各国では、震撼というよりも相場観に嫌気がさし、利食いの口実が出来た程度で済んだ。

 アナリストの現在の関心ごとは、グリーンスパンがいう劇的な収縮が世界経済に与えるインパクトの範囲である。ブラジル経済の利害関係も正にそれに当たり、現状の世界潤沢が乱れた場合、ブラジルがあやかっている景気要因が消滅する可能性がある。

 中国の株式市場は既にマンモス化している。昨日付けの取引高は530億ドル、ニューヨークの倍であり、ブラジルの27倍に相当するものである。ただし、問題も多く、経験不足や中国人投資家側の金融取引の選択肢の不足もあげられる。58年間にわたる共産主義によって、リスク文化が崩壊し、今日の中国人はリスクに対応できない感がある。それだけに投機的な波にのめり込む過剰な傾向が起こっているからだろう。

 しかし、IMFの元首席エコノミストであるハーバード大学教授のケネス・ロゴフ氏曰く、世界中の全ての株式市場とは異なり、「中国の株式市場は実体経済とごく希薄な接点しかない」のである。即ち、中国当局による市場操作が困難になり、株式市場で数兆元ものバブル資産がはじけ飛んだとしても、国際経済が受ける損害は小規模なもので済む、ということである。

           < 2007年5月31日付けエスタド紙に掲載されたコラム>
                   著者:Celso Ming(セルソ・ミング)

サルバドール歴史視察ツアー

 商工会議所相互啓発委員会主催のサルバドール歴史視察・リゾートツアーが6月1日(土)~同3日(日)まで2泊3日、総勢24名が参加して開催された。

 ユネスコ世界遺産に指定されているサルバドール市の旧市街地は、世界中からの観光客が訪れる観光名所であり、一行はバハ要塞、野口英世博士が研究していた医科大学、サンフランシスコ修道院教会、世界最初の黒人奴隷市場があったペロウリーニョ地区と同広場などを興味を持って見学、ブラジルの歴史の一端を知ることができる有意義な視察旅行となりました。

 サルバドール市内の歴史名所を視察後、一行はブラジル東北部でも有数のリゾート地であるPraia do ForteにあるIberostarホテルに宿泊、バイーア料理の食事や広々としたグリーンでのゴルフ、浜辺での甲羅干しや海水浴など会員および家族の皆さんとのんびり和気藹々と週末をすごし、会員相互の親睦を行い、思い出に残る楽しい視察旅行となりました。

以上/ 相互啓発委員会の伊藤聖治副委員長(丸紅)

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時事論評 偽りの解決方法

時事論評               偽りの解決方法 

エスタード紙のワシントン特派員パトリシア・カンポス・メーロへのインタビューで、国際的な人気ブログを持つ経済学者のヌリエル・ルービニは、現在のレアル高傾向を反転させることが目的だとすれば、金利の大幅是正だけでは不十分であると述べた。同氏曰く、投機資本の流入に何らかの管理手段を設けなければならないとのことである。

 投機資本の抑制案は繰り返し提唱されているが、ルーラ政権は、イデオロギー的ではなく、むしろ実務的な理由から常にその実施を拒否してきた。前提としては、内国為替におけるドル安の主要な原因の一つとして、利鞘を目的した資本の流入があげられるというものであるが、統計上、そのような大々的な流れがあるとは伺えない。それはさておき、ルービニの考えには批判すべきものがある。もし金利の大幅是正は無駄であると言う認識であれば、ルービニ自身が内外の金利差が投機的なレアル高の主要因であるということを認めていないことになるからである。

 ブラジルでは金利の利鞘取引が非常に旺盛であることについて否定する者は誰もいないが、当該取引は、新規の資本流入よりも、通常なら送金されていたはずの留保利益によって行われているようである。

 いずれにせよ、投機目的の資本の流入時における規制を薦められない理由は、上記以外に少なくとも4つはある。

 最初に、短期資本が激しい勢いで流入しているとすれば、定義上、「短期」に流出するために、レアル高に貢献した分、レアル安にも貢献する筈である。従って、流入規制の導入は、その資本の長期化を奨励すること以外に他ならない。ドル相場はここ4年間、下がってきている。4年前の投機資本の流入が現状に関して重要だったとすれば、4年前から流出していなければならず、為替レートの逆転の一助になっていたはずだが、実際にはそうならなかった。資本流入は憶測されているほど投機目的ではないし、あるいは投機資本は全体的にあまり顕著ではないと云う事なのだ。

 第2の理由は、(抑制することが望まれている)利鞘を狙って流入する短期資本と、(抑制が望まれない)貿易融資を目的とした同じく短期の資本流入を見分けることは困難である、とうい事だ。さらに貿易取引の融資は単なる装いであることもあり得る。例えば、ある機械を輸入する業者は外国の融資を受ける事もあるが、決済資金が不足している理由からではなく、国内市場において自己資本に充てるためである。

 第3の理由は、投機資本と長期投資を確実に見分ける唯一の方法は、国内に留まる期間を確認する、ということしかないことである。このように流入時にコントロールする意味はなく、流出時にコントロールを設けるべきである。ただし、そういう場合にも流入時に起こるレアル高は避けられない。

 そして4つめの理由は、過去にそのメカニズムを採用した国の前例があり、成果をあげていないことだ。例えば、チリは未だにペソの過剰な為替高の問題をかかえているが、1998年に投機資本の流入抑制を導入した後に、有効ではないという理由のために断念している。今年初めのタイの場合は悲惨な結果に終わっているし、3週間前に短期資本の「検疫」を導入したコロンビアも、未だにペソ高に歯止めをかけることが出来ないままである。

             <2007年5月29日付けエスタード紙に掲載されたコラムの翻訳文>