ブラジル経済情報 - 2004年12月

【ブラジル経済情報】 速報 12月22日

PPP法案成立は来年3月以降へ

官民合弁の民活的公共事業施行を規制する「PPP法案」は、21日の上院本会議で可決されたが、下院議会でさる3月に可決された内容が手直しされたため下院議会に差し戻され、来年3月から再度審議の運びとなる。PPPはコンセッション契約で支援方と管理型に分かれる。前者はサービスを享受するユーザーから料金を徴収するほか、公的パートナーが民間パートナーに行う支払いを含む。後者は公的機関が直接、間接的ユーザ-であるサービスの提供に関する契約で、工事の施工や施設づくりも含む。

PPP式工事は工費2,000万レアル以上であること。公的部門の参加率は事業の80%まで。人的開発指数(IDH)が全国平均を下回る地方における事業の場合は例外で90%まで認められる。連邦、州、市の支払う料金額が全体の70%を超える場合、事業実施には立法府の承認が必要。PPPの最高年数は35年とする。PPP事業に費やす連邦の出費総額はその純年間収入額の1%を超えてはならない。州、市についても同様で、それぞれは契約前にその旨を上院議会及び国庫に報告しなければならない等々(22日付けエスタード紙)。

なお、21日の上院議会は遺伝子組み替え大豆の栽培を認めるとする暫定措置令223号を可決した。大統領のサイン待ち。


為替切り下げしないとパロシ財務相

1ドルが20日にR$2.70を割り、フルラン通産開発相がドル安続きで来年は輸出鈍化、貿易黒字が04年度比37%減の200億ドル止まりと警告しているが、パロシ財務相は21日、エスタード紙記者との会見で、ドル安は世界的傾向。政府が為替市場に介入することはない、と言明している。ブラジル・リスクは388ポイントに低下している。


ブラジルの国内総生産高、世界第12位

ブラジルの国内総生産高(GDP)は、今年末に5,980億ドルに達し、いままでの世界第15位から12位にあがる。GRC・ビゾン・コンサルタント会社の予測。6年前にブラジルのGDPは7,880億ドルで世界第8位だった。

なお、トップは米国1兆1,746億ドル、ついで日本4,780億ドル、ドイツ2,734億ドル。04年度末現在予測(22日付けエスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 12月20日

全国小売、10月に8.46%の伸び

ブラジル地理統計院(IBGE)調べによる10月の全国小売は前年同月比8.46%の伸び。9月の同指数が9.25%だったので、10月は前月の伸びを下回ったことになる。今年1~10月は9.27%、過去12ヵ月では7.76%の伸びとなった。しかし、小売の伸びを促進させた与信に限度があり、所得増も余り期待できないとあって、今後は伸び幅が縮み、月間6%から8%になろう。


メルコスール・サミット終わる

さる17日のミナス州オウロ・プレットにおけるメルコスール・サミットにおいて、新たにペルー、エクアドル、コロンビア、ベネズエラが準加盟国となった。同会議では対外共通関税修正にはふれず、また、財貨輸入関税統一リスト、自動車及び砂糖問題も議題に上らなかった。これに代わって域内4ヵ国における対外共通関税(TEC)の二重課税廃止(パラグアイにとっては厳しい)や加盟諸国政府の買い付け入札に域内国の企業がそれぞれに参加出来るようにすることで規制を定めた。他に域内小国の競争力強化を目的とする(パラグアイとウルグアイ対象)構造基金が創設された。これはしかし早期実現はない。インド及び南部アフリカ関税同盟(Sacu。南ア含む)からの輸入品に対する関税の引き下げも決定。次期半期の議長国はブラジルからパラグアイに移った。


政府、07年までに115億レアルを投資か

連邦政府は今週末までに公共投資対象工事リストをまとめて国会に提出する予定。IMFと約束している一次財政黒字(金利のぞく)に含めないですむ分で、05年度は輸送、灌漑、開発研究等に27億レアルを追加する。これを併せ07年までに16のプロジエクトに合計115億5000万レアルが投資される。輸出振興のため道路関係の場合、すでに予算に14億レアルが設定されているが、これに25億レアルの追加となる模様(20日付けエスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 12月13日

ドル安、米経済の行方とブラジル

世界的な流れのなかでブラジルもドル安。さきごろは一時R$2.70を割りそうなところを中銀が買い出動して押し上げた。ブラジルの新聞もドル安の行方を懸念する。強いドルを標榜しながらのドル安容認の米国。各国が外貨準備をドル中心からユーロに切り替えるのではないかに対して、「世界の準備外貨ユーロの合計は従来13.5%だったのが03年に19.7%に増えただけで、まだドルが圧倒的に多い。また、11月までに対円でドルは7.5%切り下がっているが、8,400億ドルの国債準備のうち7,200億ドルを米債券に投資している日本は、米国庫債の方がドイツ国債よりも利回りが大きいし、今後も米金利は上がる。反対にEUの金利は下がる可能性さえあるとの見方から変更の動きはなさそうである」との観測。

ブラジルにとって、ドル安が今後もつづけば輸入が増え、輸出に支障をきたす。農産物のなかで大豆は11月までに31%近く低下、綿花は40%近い値下がり、トウモロコシは同15,7%である。一方の生産コストは04/05農年度に6割近いアップ(ブラジル農務省発表)。今年並みの農産物輸出を来年継続することは困難視される(12、13日付けエスタード紙)。


公共債務の対GDP比率初の低下

ブラジルの上記比率は03年に58.7%だったのが、今年は53%か54%に低下見込み。1994年に30%だったのがその後、高金利と為替切り下げのために上昇していたもの。公式記帳外にあったエスケレット(骸骨)と呼ばれる債務を表面化したのも原因だった。1999年に財政一次収支黒字をGDPの3.23%に引き上げ、上記比率の上昇を食い止めた。03年に同黒字は4.32%に達し、今年は10ヵ月で5.6%に来ている。IMFとの約束目標は今年4.54%である。90年代の経済危機要因の一つが取り除かれようとしている。

しかし、IMFの元チーフエコノミストのkenneth Rogoff氏は、公共債務とGDPの比率は20%がのぞましいという。前途遼遠である。なお、同氏は、今回の世界的ドル安現象を見越し、警告を発していた(13日付けエスタード紙)。


アルゼンチンとの貿易紛争、メルコスール首脳会議危ぶまれる

メルコスールは創立10周年を迎え、その式典をかねてミナス州オウロプレット市で今週「メルコスール・サミット」が開催されるが、先週の亜伯の「セーフ ガード」をテーマの交渉が不調に終わり、クスコにおける南米サミットに亜のキルシネル大統領をはじめパラグアイ、ウルグアイ大統領が代表を送るだけで揃っ て欠席したことが影響する。17日の首脳会談が気がかり。サンパウロ大学のジルベルト・ヅパス教授は、メルコスールの容体を病院の集中治療室(UTI)に運ばれた患者に例える(12日付けエスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 12月08日

ルーラ大統領信頼度高まり63%へ

(7日)全国工業連合(CNI)が調査機関Ibopeに依頼した政府支持率調査(11月24-29日)結果は、経済回復により大統領信頼度が前回58%から63%に上昇したと伝えられる。政府評価におけるポジチブとの回答も同38%が41%に。同調査では、2006年の大統領選挙におけるルーラ大統領の支持率は42%。一方、野党PSDB(ブラジル民主社会党)のセーラ次期サンパウロ市長が立候補した場合33%の支持率で、決選投票に持ち込まれる予想である(エスタード市)。


中銀のドル買いで為替2.74レアルへ - 株価は下落

(7日)中銀のドル買い出動で、7日の相場は終値が1ドル=2.748レアルだった。前日比1.07%アップ。中銀は明らかにしていないが、6日に500万~1,500万ドル、7日に5,000万~7,500万ドル買い上げたのではないかと推測されている。一方、ボベスパ平均指数は、同日行われた大規模電力競売が期待外れだったために電力株が下落。また、国際鉄鋼価格がピークに達したとの見方から鉄鋼株が売られたのも原因で2.51%の下げを演じた。引け値は25,000割れの24,998ポイントだった。


電力競売、価格は政府予想よりも28%安つける

(7日)政府は7日、既存発電所の電力を競売に付し、合計17,008メガワット平均をR$720億で売買した。政府が当初予想した金額を28%下回った。安値は配電会社の消費者価格に転嫁されるが、売り手側にとっては不利で新発電プロジエクトへの投資意欲がそがれるとされる。発電業者一部はメガワット/時あたり110レアルを予想したが、93レアルを超えず、時間がたつにつれドンドン下がった。2005年契約は平均R$57.51/MW。同06年は同67.33。07年同はR$75.46だった。火力発電には妙味がないという業者もいる(エスタード紙)。


南米サミット、メルコの亜・ウ大統領欠席

(8日)今日からペルーのクスコで開催される南米サミットは、「南米共同体」設立をめざすが、メルコスール加盟国アルゼンチンのキルシネル大統領、ウルグアイのバトレ大統領は欠席。パラグアイのドウアルテ大統領も7日夜まで出席未確認。フオクス墨大統領はオブザーバーとして招かれていたがこれも欠席。12カ国の政治・貿易統合をめざすイベントにしては力強さに欠ける。ルーラ大統領は午前中に出発、正午にクスコ到着予定(エスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 12月02日

貿易、11月は27億ドルの黒字

(1日)11月の貿易収支は輸出81億5,900万、輸入60億8,200万で20億7,700万ドルの黒字だった。1~11月の黒字累計は301億9,600万ドルで、政府の今年度目標の320億ドルにあと1歩である。過去1~12月はすでに329億ドル強で、今年の政府目標額を超えた(エスタード紙)。


経済指標好転で株価高騰、ドル安さらに

(1日)国内総生産(GDP)が第3四半期に前年同期比6.1%アップ、輸出は引き続き好調などを受けて、ブラジル・リスクは2日に402ポイントに下がった。一時は396ポイントに来た。同日、国際市場でC-ボンドは0.56%アップ、額面の101.25%で取り引きされた。

ドルはさらに下押し1ドルが2レアル71で引けた。サンパウロ平均株価は0.42%上げ、ボベスパ指数は2万5000ポイントを突破、2万5,234ポイントで終わった。出来高は15億7,600万レアル(エスタード紙)。


自動車販売好調、年内154万台達成か

(1日)さる11月の自動車販売台数は13万8,800台で、前年同月比6.5%増。前月比も1.4%増である。乗用車、軽商用車、バス、トラックを合わせたもので、今年の販売台数は140万台。昨年の同期比11.3%増である。 乗用車及び商用車(販売全体の90%を占める)だけで131万台の販売。

メーカー別に見ると、トップはGMでシエアー24.4%。ついでフイアット23.8%。以上はエスタード紙の速報。公式数字は全国自動車工業会(Anfavea)が近く発表予定。


ペトロブラス、新精油所建設を早める動き

(1日)ペトロブラスは、07年に着工を予定している新精油所を今後、燃料消費が急増すれば早める方向にある。04年に燃料消費量の伸びは2.4%と予想していたが、すでに3.5%伸びた。05年に経済成長がさらに高まれば着工前倒しに踏み切る。カンポス油田に近いサンパウロ、リオ、エスピリト・サント3州が新プラント誘致を争っている。

ブラジル経済情報 - 2004年11月

【ブラジル経済情報】 速報 11月30日

国内総生産、第3四半期は6.1%の伸び

(30日)ブラジル地理統計院(IBGE)が30日に発表したところによると、第3四半期の国内総生産(GDP)の伸びは昨年の同期比6.1%で、過去8年間における最高。前期比は1%の伸び。今年第1~第3四半期は5.3%の伸びとなった(エスタード通信)。


サンパウロ市内のガソリン販売店に手入れ

(30日)サンパウロ市警察は、今日30日から市内のガソリン販売店取り調べを行う。溶剤混入ガソリンを売る店が増え、知らずに使った消費者が迷惑を蒙ることは早くからマスコミによって取り上げられている。当局では今回120名を動員、訪問先の店からサンプルを抜き取り、これを検査に回すもの。保安局によると、最低100店を対象とする(エスタード通信)。


国家保安軍、ビトリア市の治安維持に出動

(30日)ビトリア市内のバス10台焼き討ち事件のため、21日からブラジル陸軍部隊が大ビトリア圏内巡回に乗り出しているが、今日30日から新設の「国家保安軍」が出動、軍隊と交代する。国家保安軍は各州軍警兵、消防隊員の選りすぐりをもって構成されるエリート部隊。市内では連邦、州政府による麻薬密売業者の暴力犯罪取締りが行われているが、これが妨害されており、麻薬犯罪者らを収容する刑務所問題もからんでいる。

市内の商店街では、19日から店主らに麻薬犯グループから脅迫電話が寄せられていたが、トレビザ(家電量販店)が27日夜、焼き討ちにあった。29日早朝にはビマギ(シュラスカリア関係)では爆弾が破裂、鉄扉が曲がり、ガラスが飛び散った。29日、店主たちは怖れて店を閉めた(UOL通信)。


米、ブラジルの輸入低調を問題視

(29日)世界貿易機関(WTO)が4年に一度行う貿易査問会で29日、ブラジルの貿易政策が問われた。米国にとって好機会。ブラジルの輸出が伸び、輸入が低調なのをとらえ、ブラジルが輸出を伸ばし、輸入を抑えて行く現行方針には限界がある。ブラジルはサービス及び工業財の部門を開放する必要がある、との意見。また、ワシントン、ブリュッセル、東京はブラジルに対して金融サービス、運輸、電気通信、情報の諸分野の開放を求めた。豪州は鉱業分野の解放を、スイスはこれら分野解放が外国からの投資に魅力的とし、チリもサービス部門の解放を求めた(30日付けエスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 11月25日

PMDB離反食い止めに政府躍起

(24日)最大政党のブラジル民主運動党(PMDB)が、10月末の市長選挙(第2回目投票)結果を見て、連邦政府との連立から身を引く動き。ルーラ大統領は24日、同党の下院議員76名中の64名を昼食会に招き、引き止めにつとめた。内閣改造を目前に控えているところから、PMDBに大臣ポストをふやす方針だが(現在2名)、同党は一枚岩ではなく、ルーラ大統領派、サルネイ上院議長派、カルドーゾ前大統領派等に分かれる。上院議員は22名おり、政府は離反を何としても阻止したいところ。

政府側は昼食会後、「PMDBは引き続き政府支持の姿勢」としているが、同党の独立方針貫徹の気運をくずすことは出来なかった模様。来る12日の党全国大会の結果待ち。


政府ドル買いに出る - 対外債務返済への外貨調達

(24日)中銀は24日、国庫が今年12月から来年6月までが期限の対外債務返済にあてる約30億ドルを国内市場で調達すると発表した。このドル買い情報により連日下げ続きだったドルは上向いたが、0.4%の上げR$2.755で引けた(エスタード紙)。


ペトロブラスのタンカー42隻建造プラン動き出す

(24日)トランスペトロ(ペトロブラス系)は今日24日、合計42隻、総工費約40億ドルのタンカーの入札に関する業者資格選考告示を配布に踏み切る。発注は2回に分け、最初は22隻で向こう60日以内に最終告示(エジタール)を出す。残り20隻はそのあと。国内在外国企業にも応募が認められる(エスタード紙)。


海賊版取締り審議会発足

()トマス・バストス法相は24日、所有権侵害・海賊版撲滅審議会のメンバー就任式を挙行した。7省、国会、連邦警察、道路警察、民間社会の代表者らをもって構成されている。政府調査によると、全国で海賊版取引に動くお金は年間560億レアル。タバコ、酒、燃料、CDなどで、メルコスールに浸透、とくにパラグアイでさかん。ブラジルでは正規労働者200万人がこれらの取引によって失業しており、脱税総額は年間推定84億レアル。海賊版の製造業者や密輸業者を逮捕するほか、販売店を閉鎖させるために05年から活動開始(エスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 11月22日

大ビトリア圏の警備に軍隊出動 - ミナス州で土地なし農民5名射殺

(22日)さる18日から21日にかけて、大ビトリア圏内で10台ものバスが焼き討ちされた。エスピリト・サント州のパウロ・ハルツング知事は軍隊の出動を要請、昨日から軍隊によって市内に厳戒態勢が敷かれている。公立校の夜間授業は中止、夜間の運行バス台数は減り、州警兵隊が護衛にあたる。軍隊が引きあげるめどは立たない。

州警兵隊の機動部隊が刑務所警備を固めたのに抗議する囚人らの指導による、当局のもぐり運送業者抑圧への反抗、あるいはこれらの業者間の対立など原因が挙げられている。

一方、ミナス州ではジエキチニョニャ渓谷のノ-バ・アレグリア農場(フエリスベルグ郡。ベーロ・オリゾンテ市から731km)では20日夜、覆面武装集団が土地なし農民(MST)のテントを襲い、テントを焼き5名を射殺、13名を負傷させた。州警兵隊が出動した(エスタード通信、エスタード紙)。


先進国、債務国規制

(21 日) ベルリンで開催されていた先進諸国と開発途上諸国による世界20ヵ国中央銀行総裁会議(G20)は21日に終了したが、ブラジル提案の将来、金融危 機やデフオルトに瀕した債務国の取らなければならない措置、対する貸手国の対応を定める規制が承認され、パロシ伯財務相及びメイレレス伯中銀総裁は満足の 態度だった。アルゼンチンは欠席した。①デフオルトの場合、債務国は特定債権者を優遇してはならない。債権者側は短期クレジット、銀行間クレジットラインを保持する。②一方的な行動に出ない。常に交渉による解決に努力する。③金融危機に陥った国は、経済回復に向けてとる政策を常に明確にする。貸手国による債務国の金融経済関係指標へのアクセスが保障されること。④債権国、債務国双方の間に立つクレジット委員会を設ける等々。


京都議定書発効はブラジルに有利 - 懸念もあるが

(19日)、ジエトウリオ・バルガス財団(FGV)において持続性研究センター(CES)主催の環境会議が開催された。ロシア上院議会が04年10月27日に「京都議定書」を承認したことを受けて、京都議定書発効はブラジルにとって非常に有益といった点が協調された。カーボン・クレジット市場に参加できる点。一方、同議定書の第2期、2012年から必ず開発途上国にも地球温暖化防止のためのガス排出量削減が義務付けられる。それはブラジルの場合、アマゾニアにおける熱帯雨林の伐採防止義務となって現われるといった点が懸念された。


【ブラジル経済情報】 速報 11月18日

Selic金利、年17.25%へ

(17日)中銀通貨政策委員会(Copom)は17日、経済基本金利(Selic)を0.5ポイントパーセント引き上げ年17.25%とした。先行きインフレ懸念が原因。1有力エコノミストによると、広範囲消費者物価指数(IPCA)が月0.4%から0.45%であればよいが、0.50から0.55%のレベルに来たため、ドル安、原油価格下落にも拘わらずSelicは引き上げられた。1専門家は「金利引上げは投資家の投資意欲をそぎ経済回復を妨げる。今年のクリスマス商戦に響く」と悲観的な見方をする。

政府の債務はSelicの0.5ポイントパーセント引き上げによって、向こう12ヵ月間に20億レアル増える。今後もSelic引き上げがあり得るが17.5%が限度だろうとする見方、来年18.25%に行くという悲観的見方もある(18日付けエスタード紙)。


上院議会、司法改革法案を可決

(17日)の上院本会議で「司法権改革法案」第2回目の投票が行われ、賛成56票、反対2票で可決された。提案されてから可決までに13年の歳月が流れている。要点は新設される司法、検察審議会による外部からの裁判所、検察庁のコントロール(しかし、不正・汚職判事を退ける権限はない)、連邦最高裁(STF)が判事11名中の8名の賛同を得てとられた判決は第1審判事にとって判例になる(義務的)など。これによって最高裁の裁く件数は8割方減る。しかし、「骨抜きで改革とは言えない。バンソウコウを貼ったにすぎない。ノロノロ裁判は今後も変わりなく続く」と批評する判事もいる(18日付けエスタード紙)。


韓国の盧大統領来伯

(16日、17日)韓国の盧武絃(ロームヒヨン)大統領が11月16日に来伯した。盧、ルーラ両大統領の間で「メルコスールと韓国の自由貿易協定」締結をめざす共同研究約定、また、鉱物資源類及びエネルギー開発をめざす覚書が交わされた。

民間ではバーレ・ド・リオドーセによるポスコへの鉄鉱石供給契約。両社はマラニョン州に製鉄所を設立する計画。

来年第1四半期にブラジルの技術ミッションが訪韓、韓国から同ミッションが来伯、エネルギー面における新プロジエクトの可能性を調査する。他方、ペトロブラスとSK石油間で戦略協定が交わされた。

ブラジルが採用するデジタルTV標準についての話し合いもあった。ルーラ大統領が05年5月に訪韓するので、そのさいに情報技術分野における協力協定を交わしたいともする。中小企業家80名が来伯、ブラジル企業家とのコンタクトを行った。

投資する韓国企業

・ LG社 セルラー電話増産をめざしタウバテー工場増拡に5000万ドルを投資。年産240万個を05年405万個、06年には650万個に増大する計画。03年の売上6億ドル。

・ サムスーン社 国内テレビ市場の20%獲得目標。95年にいったん製造に着手したが中途で断念、捲土重来を期す。高価なAV分野に主眼をおく。今年は電算機モニター、セルラー、HDD等の販売で7億ドルの売上予想。

2.5-ベトナムのトラン・ドゥク・ルオング大統領来伯

ルオング大統領は16日に来伯した。エンブラエルは、ベトナムの航空会社にジエット旅客機を売り込むことに同国政府の了解を取り付けた。

ベトナムの国民総生産(GDP)は400億ドル(03年。世銀データ-)で、年間経済成長率が年平均7%。05年には8.5%成長期待。アジアで最もめざましい伸びを見せている。ブラジルとの年間貿易額は往復5000万ドル(以上、17,18日付けエスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 11月17日

ブエノスのシチバンク、ガリシア銀行で爆弾事件―1人死亡

(17日至急報)ラナション紙のオンライン情報によると、ブエノスアイレスのシチバンク支店で爆弾事件が発生、警備員1人が死亡した。ガリシア銀行支店でも仕掛け爆弾が破裂したが、人命に別状はなかった。しかし、店内客は一時パニック状態に陥った(エスタード通信)。


17日の為替、株式

()正午過ぎのサンパウロ為替相場は16日のR$2.80割れを継続、17日にはR$2.76レアルをつけている。一方、ボベスパ平均株価は1.8%の上げを示している。


アレンカール副大統領とラムスフイールド米国防長官会談

(16日)第6回米州国防相会議が今日17日からエクアドルの首都キト市で開会されるが、同会議に先立ち、ラムスフイールド米国防長官とアレンカール伯副大統領(国防相兼任)が16日に同市で会談した。ラ長官は、ブッシュ米大統領の優先課題である国際テロ防止戦略で、ブラジルをはじめ米州各国が汎米防衛委員会(JID)に協調するよう求めた。ラ長官は、自爆テロなどのテロ行動への最良の対応処方箋は、目下米国がイスラム諸国でとっている民主主義制度普及であると述べたとされる。ア副大統領は、自爆テロは新手のテロ戦術であり、ブラジルとしても懸念するが、軍諜報部を通して監視につとめており、その必要はないと感じると語った。同副大統領は今日の開会式に「武力による抑圧だけでなく、飢えと貧困をなくす事もテロ撲滅手段である」と演説する予定。米国案にはカナダが賛成しているのみ。

なお、南米における各国の軍備予算は世界の他地域に比べて少なく、最高はチリの対国内総生産(GDP)4%。ついでコロンビアの同3.7%、エクアドル3%、ブラジルは2.3%。経済不況下のアルゼンチンは1.4%。

●JIDは米州各国の軍隊によって対ナチス、ついで冷戦下における対共産主義封じに貢献した。欧州における共産主義の瓦解後JIDは新しい役割を求めている。米国はラ米各国政府に対して、21世紀の軍隊が従来の国土防衛のみでなく、組織犯罪や汚職対策及び地域における司法上の不備を補うなどの役割を担う事を求めている。これは米国の大企業体の対ラ米投資関係利害を反映するもので、これら組織犯罪や汚職のはびこりが投資の妨げになっているというもの。犯罪関係統計数字は世銀データ-に基づく。治安→投資→経済発展をはじめて結びつけたものである(15、16、17日付けエスタード紙)。


サントス銀行、中銀介入下に - 投信は営業停止

(16日)12日に中銀が介入したサントス銀行(業界21位、エジマル・シジ・フエレイラ頭取)に執政官としてバニオ・アギアール氏が任命された。顧客は各自2万レアルまでの引き出しを認められる。一方、有価証券取引委員会(CVM)は、同行系投信の営業を30日間の停止処分に付した。同行の経営難は早くから噂されていて、最近取り付け騒ぎがあって中銀の介入となったもの。

中銀は、公的総資産6億レアルの同行は1億レアルの債務超過としているが、市場筋はこれを上回るのではと見ている。経営者らは身売りを考えている模様だが、大手銀行筋では食指が動かない模様。

なお、労働者党(PT、与党)がサンパウロの本部建築に集めた資金が同行に預金されたために党首脳部は困惑している。党首脳部は金額を発表していないが、1ショ-で40万レアルを集めたことが報じられている(16、17日付けエスタード紙)。


伯銀頭取辞任、社経開銀総裁も辞任意向

(16日)カシオ・カセビ・ブラジル銀行頭取は16日辞任を表明、パロシ財務相が同日辞任を発表した。ロサノ・ピント同行国際部門担当副頭取が後任に任命された。対外不正送金、コンサルタント不正雇用、労働者党(PT)本部建築融資のためとしての1ショー入場券のまとめ買い - 等で評判が芳しくなく、プラナルト宮、バロシ財務相の信頼を失っていたもの。

一方、メイレレス中銀総裁を表面だって非難した社会経済開発銀行(BNDES)のカルロス・レッサ総裁は、ルーラ大統領の判断で解任決定とされていたが(大統領補佐官はこれを否定)、先週末に辞任をほのめかした事か明らかになった(16日現在。17日付けエスタード紙)。


中国の勝利

(17日)のエスタード紙論評は、さきごろ来訪し、数々の商談をまとめ大きな成果を挙げて帰国の途についた中国の胡錦濤主席(Hu Jintao)との交渉においてブラジルが得たものについて焦点をあてている。

それによると、ブラジルは中国が「市場経済国」であることを認めた。これは貿易上の譲歩以上のものである。世界貿易機関(WTO)の加盟147国中ブラジルは23番目に、中国が市場経済国であることを認めた。ブラジルは中国から貿易上の譲歩以外に国連安全保障常任理事国入りへの支持を取り付けた。

しかし、中国が市場経済国であることを認めるのは、ブラジル政府が今後中国のダンピング行為に対して打つ手を制限されることにつながる。WTOの制約下におかれる。ブラジルの企業界からは受ける損失が大きいと非難されている所以である。察するに「戦略」という言葉の見解に中国側とブラジル政府側の間に大きな相違がある。ルーラ大統領は南南同盟のフアンタジ-に生きるが中国にはそれがなく、他国の空想をうまく利用して利益を得るという事のようだ。


【ブラジル経済情報】 速報 11月10日

ルーラ大統領、連立党議員らに6億レアル交付約束

(9日)政府発令の21の暫定措置令が、政府支持党所属下院議員らの不満が原因で審理・表決作業がおくれて3ヵ月になる。国会議員に割り振る予算は今年12億レアルも計上されているが、実施はその16%で、これが不満の原因。放置すれば政治危機に発展する可能性があり、ルーラ大統領は9日、政府支持党リーダーらと会議し、6億レアル交付を約束した。

上院及び下院議長の再選法案も原因。議長選挙は来年行われるが、再選にはその旨の補足案承認が必要。再選を狙うジョン・パウロ下院議長が何時、他議員らの意表をつき油断しているときに表決にかけるか分からない。とくにいま政府から離れようとするブラジル民主運動党(PMDB)議員らが警戒している。パウロ議長は、「下院議会空転が議長再選反対にあるのならば、補足案を引っ込める」と語っている(10日のエスタード紙)。


胡錦濤主席、12日ブラジリアへ - 企業人400人を引率

(9日)中国の胡錦濤主席が12日ブラジリアでルーラ大統領と会談。まず、ブラジル産牛肉輸入への中国市場開放は固い。中国はブラジルに対して、中国が市場経済国であることを公式に認めるよう求めるであろう。認めればブラジルに対する中国の投資が増えるという。ついで中国とメルコスールの自由貿易地域設立も交渉テーマにあがろう。問題はメルコスールの加入国パラグアイが台湾と国交を持っていること。ブラジル側からは、ブラジルの国連安保常任理事国入りへの中国の支持取り付け。これは日本とのかねあいから中国がどう回答するか。ブラジルはまた、中国の大豆輸入問題が全面的に解決するよう希望する(10日付けエスタード紙)。


GM、サンセバスチオン港から自動車輸出

(9日)伯GMは生産の20%を輸出しているが、メキシコ向け輸出をサンセバスチオン港に切り替え、飽和状態のサントス港積み出しよりも20%の経費節約になるとされる。最初の積み出しが9日行われた。当日はアルキミン州知事が出席した。


政府の抜本的な航空業界支援策詰め延期

(9日)国防相交代が原因。9日に予定されていたパロシ財務相、ジルセウ大統領官房長官とバリグ航空代表間会議も見送られた。市長選挙が終わり、インフラエロ公社によるバリグの空港使用料滞納分の支払い催促が始まろう。一方、バスピ航空は市場占有率が一時の9分の1、4%台に落ち、経営逼迫状態。身売りの話も出ている(10日付けエスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 11月05日

サンパウロ市のインフレ、ICV指数では0.53%

(5日)サンパウロ市の10月の生計指数(ICV)は0.53%で、9月の0.29%に比べて大幅アップ。調査元の労組間社会経済調査統計所(Dieese)は、殆どの品目において値上げが見られたという。燃料アルコール7.54%、ガソリン1.88%、ジーゼル油1.82%、砂糖1.26%、健保・医療保険料1.74%、外食費1.22%、食料0.72%など。Dieeseは、給料の引き上げではなく、クリスマスが近づいたのが原因だろうと見る。  一方、サンパウロ大学系FIPE調べによる10月の消費者物価指数(IPC)は0.62%で、これも9月の0.21%に比べて大幅アップである(5日付けエスタード紙、同通信)。


増給は実質6%が一応の基準か

(4日)サンパウロ、リオ、ポルト・アレグレ、ベーロ・オリゾンテ各市の銀行員労組は 4日、インフレ目減り分カバー及び実質1,8%から6.07%(取得給料額によって異なる)のアップを盛り込む銀行側との合意を受け入れた。 一方、単一労センター(CUT)系金属労も4日、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)の第9グループ(機械、家電、他)とのベア交渉をまとめた。過去12ヵ月のインフレカバー分にプラス実質4%(給料2,950まで)。2,950レアル以上の給料には一律250.75レアルのプラス。他方、フオルサ・シンジカルは、同第9グループ及び第3グループ(自動車部品、ねじ、錬鉄)と鉄鋼、鋳造部門との間に過去のインフレ目減りカバー及び実質4%アップで合意している。あとは第10グループ(機械、鉄工等)が残るだけ(5日付けエスタード紙)。


不動産ローン資金、来年はR$120億へ

(4日)連邦貯蓄銀行(カイシャ・エコノミカ)のマトゾ頭取によると、今年の不動産融資資金合計額は100億レアルで、来年は120億レアル予想。同行は先週、マイホーム購入を奨励する方策を発表しているが、ローン利用者が増えるためには経済成長と共に経済基本金利のSelicを下げる必要があるとされる(5日付けエスタード紙)。


ビエガス国防相辞任、アレンカール副大統領が兼任

(4日)軍政時代の1974年に獄舎内で不慮の死を遂げ、拷問死ではないかとされていたウラジミル・ヘルゾグ記者らしき写真が外部にもれ出て問題となり、軍部が声明を出したが、その内容に納得が行かないとして、軍首脳部と意見対立していたビエガス国防相は4日辞任した。アレンカール副大統領が国防相兼任となった。なお、これが引き金となり、来年2月のカーニバル後に内閣改造、との推測がなされ始めた(5日付けエスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 11月03日

ブッシュ優勢、米大統領選挙

(3日)米大統領選挙の開票作業はきょう夕刻終了予定とされるが、中間発表ではブッシュ大統領が選挙人数で254を獲得、ケリ候補が252と接戦が展開されている。ブッシュ陣営では大統領は286人を予想、再選は固いと見ている。全米得票数総計はブッシュ候補51%、ケリ候補は48%である。

国際金融界ではブッシュ勝利の見通しからドル買いが始まり、日本時間の3日午後10時には1ドルが106円55銭をつけている。

ブラジルに対する影響だが、どちらが勝利しても余り大きな変化はない。ケリ候補が勝てば保護貿易ロビイストや労組とのつながりが強いため、今後のFTA交渉が厄介になるとする見方がなされている。なお、3日正午のサンパウロ市の為替相場は1ドルがR$2.84、ボベスパ平均株価は1.84%の上昇。


全国第2次市長選挙 - 与党はサンパウロ、ポルト・アレグレで敗退

(1日)第2次市長選挙は10月31日に行われた。

サンパウロ市では、セーラ候補(ブラジル民主社会党=PSDB)が333万票、54.86%を獲得、対立のマルタ候補(労働者党=PT、現市長)に9.72ポイントの差をつけて当選した。  一方、従来PT勢が強く16年間にわたって抑えて来たポルト・アレグレ市では、ジョゼ・フオガッサ候補(社会民衆党=PPS)が53.32%の獲得票で、前市長のラウル・ポンチ候補(PT)に6ポイントの差をつけて勝利。ついでクリチーバ、ゴイアニアなどの州都及びサントス市でもPT候補が敗退、連邦政府に大きな痛手。

とくにサンパウロ市では、ルーラ大統領がマルタ候補への投票を呼びかけ、選挙裁判所から罰金を言い渡された。また、主要閣僚が肩入れし、他方、政敵で不正対外送金の疑惑によって告発されているマルフィ候補に支持を求めるなど、なりふり構わぬ必死の攻勢に出たが、その努力も空しくマルタ候補は一敗地にまみれた。“マルタッシャ”とやゆされた税金攻勢に嫌気がさし、減税を公約したセーラ候補支持に回った有権者が少なくなかったのも原因の一つと見られる(各紙)。


貿易収支、10月は30億ドルの黒字

(3日)10月の貿易収支は、輸出88億4,300万ドル、輸入58億3,600万ドルで、30億ドルの黒字。今年1-10月黒字累計は281億ドルとなった。通産開発省(MDIC)発表。

ブラジル経済情報 - 2004年10月

ブラジル経済情報 - 速報 10月28日

工業設備の稼動率平均は86.1%へ

ジエトウリオ・バルガス財団(FGV)調べによると、国内工業の設備稼動率平均は10月に86.1%に達した。FGVでは、1977年いらいの高率で工業の持続的成長を示すが、2005年に投資が行われようから心配ないと見る。2001年には総売上の8.46%の平均投資だったが、02年、03年にはこれが5.8%に下がり、前途が懸念されているもの。今年は6.52%期待。

平均稼動率を部門別に見ると、消費財82%、資本財81%、建築材料85.8%、中間財89%(エスタード紙)。


クロール社とオポ-チュニテイ銀行に連邦警察が手入れ

連邦警察は27日、リオ、サンパウロなどにおいてクロール探偵社とオポーチュニテイ銀行に手入れを行い、同探偵社の社員5名を逮捕し、テレコン・イタリアや政府高官の電話盗聴に使用されたと思われる機材類、また書類多数を押収した。

クロール社は国際的組織を持ち、ブラジル事務所が顧客のブラジル・テレコン(オポーチュニテイ銀行系)の依頼でライバルのテレコン・イタリア電話会社を秘 密裏に調査し、またグシケン広報戦略長官をはじめ、ブラジル政府高官の電話を盗聴するなどスパイ行為を働いていたというもの。クロール社は、テレコン・イタリア調査において法律違反を犯すようなことはしていない、との声明書を出している(28日付けバロール紙)。


EU、中印伯産の特恵関税品輸入を漸減

EUは27日、世界貿易機関(WTO)において、今後中国、インド、ブラジルからの特恵関税品輸入を漸次減らす。上記3カ国は大国で投資を誘致できる。このため弱小国が不利な立場に追い込まれるので、これら弱小国に特恵関税の新システムを構築すると発表した。ブラジルはいち早くこれに反発した。EUの特恵関税輸入額は年間520億ユーロ(03年)で、ブラジルからは02年に25億ユーロが輸入されている。同年のブラジルの対EU輸出総額は180億ユーロ(バロール紙)。


穀物生産1億1,925万トン止まり

ブラジル地理統計院(IBGE)調べによると、03/04農年度穀物生産は1億1,925万トン、前農年度の1億2,360万トンを下回った。減産は天候不順が原因。しかし来年度は1億3,000万トンへの増産を期待する(GM、エスタード両紙)。


ブラジル経済情報 - 速報 10月26日

ブラジルの上期輸出増幅、世界平均を上回る

(25日)世界貿易機関(WTO)調査によると、ブラジルの今年上期輸出額は前年同期比31%増だった。同期の世界の平均は20%増であり、ブラジルはこれを上回った。一方、2003年度ブラジルの農産物輸出はタイについで世界第2位。 WTOによると、2002年から2003年にかけてブラジルの輸出は21%伸びたが、これは国際穀物相場高騰による。

なお、輸出国としてのブラジルの位置は世界で25番目(03年度)。1980年に200億ドルを輸出、世界輸出総額の1%だったが、90年には310億ドルで同0.9%。これが03年には730億ドルを輸出して1%を取り戻した。世界輸出国トップはドイツで7,483億ドル、2位は米国7,238億ドル、3位は日本4,718億ドル。中国は4位で4,370億ドル。以下10位まで仏、英、蘭、伊、ベルギーの順(26日付けエスタード紙)。


輸出好調で来たが、10月第4週に落ち込む

26日付けガゼッタ・メルカンチール紙(GM)は、通産開発省通商部(Secex)レポートの数字をもとに、ブラジルの輸出動向を占っている。それによると、今年は10月までに輸出769億ドル、輸入494億ドルと輸出は好調。収支は275億ドルの黒字(前年同期比37.7%増)。しかし10月第4週に昨年10月の第4週比34.9%増だが、今年10月の第1~3週平均に比べると13.8%減である。この下向き状態は今年末までつづく模様。

その半面、資本財や原料素材類の輸入が増えている。10月第4週に2億8,660万ドルの輸入。これは昨年同期に比べて31%増である。


金属労スト、27社の操業停める、ベアはINPCベース

(25日)サンパウロ金属労は25日、27社の従業員をスト誘導、工場の操業を停止させた。うち22社がベア交渉に応じ、操業再開。ベアは全国消費者物価指数(INPC)をベースに、昨年11月から今年10月までのインフレ目減りのカバー、プラス4%の実質アップ。昨日、26日には別の20数社の工場でスト予定としていた。


ブラジル経済情報 - 速報 10月25日

総合市場物価指数(IGP-M)は1~9月に12.54%アップ

(24日) 為替は落ち着いているが、物価のほうは電気や電話の料金改定が総合市場物価指数(IGP-M)リンクのため、先行き心配である。IGP-Mは今年1~9月に12.54%のアップである。卸売物価のウエイトが大きい同指数に直接インパクトを与えたのは、中国やインドなどの急速な需要増がもたらした原料素材類の値上がりで、今年のみでなく来年の国内インフレにも影響する。中銀は来年のインフレ予測をこのほど、4.5%から5.1%に上向き修正したが、これはペトロブラスによる年内ガソリン、ジーゼル値上げを織り込んだもの。

政府は高率なIGP-Mをさけ、先週行われた発電会社と配電会社間の電力契約価格改定にはIPCAを採用させる事にした。IPCAは広範囲消費者物価指数と呼ばれ、政府の指定インフレ指数でもある。今年1~9月はIGP-Mよりもはるかに低い5.49%である(25日付けエスタード紙)。


ルーラ大統領は何か勘違いしているのでは?

(24日)米州自由貿易圏(FTAA、ポ略語はAlca)設立交渉が頓挫し、EUとメルコスールのFTA交渉も当初予定の10月末合意にいたらず、来年に延期された。代わって南米共同体づくりをめざすメルコスールとアンデス共同体(CAN)の協定が先週締結を見た。

域内貧困諸国に対して特殊優遇条項を設け、域内での自由貿易が可能となったわけだが、ブラジル人企業家らは、協定が極めて複雑な内容で解釈が困難なため、「実践面でのテストを待って」と言う。

そのような状況下において、ルーラ大統領がさる20日、サンパウロの自動車サロン開所式の席上で、「日米欧との関係を重視するが、データ-によると世界は これらの市場よりもっと大きい」とのべた事にカルロス・サルデンベルグ記者が、「大統領は勘違いしているのでは」、と異論を唱えている(下記。なお、大統領のあいさつの言葉は新聞紙面には出ていない)。

世銀統計によると、世界中の商品及びサービスの生産の80%は先進諸国によって占められている。日米欧をはずしたら残るところは極めて小さい。大統領は南南通商推進を優先、エマージング国家群、貧困国家群を集めた経済ブロックのリーダ-になろうと考えているのであろう。だが、それをしてもブラジルの貿易拡大にはつながらない。南南の経済大国である中国やインドは競争力のない自国農業を保護しなければならないので、ブラジルの農産物に対して市場を開放しないであろうし、ブラジル側は中国の工業製品に対する高関税を下げることは考えないだろう。

ブラジルは北の先進諸国とのFTA協定がまとまらず、南の貧困諸国との貿易増大ものぞめない。その上、メルコスールはアルゼンチンに足払いされている状態であることに注意する必要があろう(10月25日付けエスタード紙)。


ブラジル経済情報 - 速報 10月21日

Selic金利、予想を上回る16.75%/年へ

20日)市場筋予想を大きく上回る0.5ポイント・パーセントの引き上げで、Selic(経済基本金利)は年16.75%となった。引き上げた中銀は、「Selicの緩やかな調整の継続」と理由説明を行っているので、今後も引き上げが行われる可能性が強い。

Selicの引き上げが小売月賦販売を直撃するところからリオ商業連盟(Fecomercio)はただちに「見通しがよくなったクリスマス商戦に水をかける」と批判。サンパウロ工業連盟(Fiesp)のスカフィ会長は「市場からデイマンド・インフレの危険性が遠のいた時の金利引き上げは問題である」と批判的。国際原油価格高騰のおり、国内ガソリンやジーゼル油値上げが来年のインフレ悪化を予想した対策手段のSelic引き上げだが、これで他の消費者金利等はどうなるか? 下記金利は年率。

商業金利は102.13%へ、クレジット・カードは215.22%へ、銀行特別小切手は160.92%へ、銀行の消費者ローンは52.16%へ、銀行の対個人融資は100.31%へ、金融会社の対個人融資は297.60%へ(以上はエスタード、バロール両紙)。


EU、メルコスール交渉は10月末までまとまらず

(20日)ポルトガルのリスボンで行われたEU、メルコスールの代表者会談は20日、約6時間にわたったが、双方の歩みよりをめざす案(柔軟化)をもってしても合意にいたらず、今月末までの合意は絶望となった。交渉再開は来年の第2四半期予想。米州自由貿易協定(FTAA=Alca)向けのメルコスールと米国の交渉に並行的になるか、との質問に対してアモリン伯外相は「ここではAlcaを交渉しているのではない」と回答した(バロール紙)。


政府の電算機大衆化計画

(20日)大衆向け小型電算機製作プログラムが近くルーラ大統領に提出される。月収4から10最低賃金取得層の購入を直接補助するもの。価格はR$1,200程度で、インターネット・アクセスの20時間/月込み(バロール紙)。

税務署監督官の応対ハウツ-ブラガ・マラフオン教授のご寄稿

“招かざる客”税務署の監督官が訪れたらどう応対する。日頃から落ち度がないようにしておくのが第1だが、訪問を受けたら丁寧に応対する。自分に利があっても監督官に自分の意見を強く主張するような事はしない。出来るだけ協力的であること。高圧的に出られる場合もある、等々。ブラガ・マラフオン教授ご寄稿文の要旨邦訳。当所ホームページの「会議所ニュース」に掲載。


ブラジル経済情報 - 速報 10月20日

全国小売、8月は7.53%増

(19日) ブラジル地理統計院(IBGE)調べによると、8月の全国小売販売は前年同月比7.53%増だった。今年1~8月の伸びは9.45%となった。伸び率はしかし、7月の12.04%に比べて低い。IBGE商業部門コーデイネーターのニーロ・ロッペス氏は、「伸び率低下は予想以上。しっかりした雇用及び所得増がなければ高い伸び率を維持することは困難」と分析している。同院は前月比の統計数字は出さない方針。

8月の前月対比について全国商業連合(CNC)のタデウ・デ・フレイタス経済部会長は、「8月は7月比で2.6%減(季調済み)。また、今後は漸次伸び率低下のため今年は昨年に比べて7%の伸びに止まろう」と予測する。

しかし、スーパー・マーケット業界は、今年末のクリスマス商戦向け食料品や飲み物の仕入れを量的に昨年に比べて17%増やす(ブラジルスーパー協会=Abras予測)と強気。ビールの仕入れについて業界の8割が15%増やすと言い、国産果物に関しては77%の回答が「17%増やす」である(20日付けエスタード紙)。


工業界の雇用好転、8月に前年同月比3.1%アップ

19日)ブラジル地理統計院(IBGE)調べによると、8月の工業増産によって労働市場は好転、さる8月の雇用は前年同月比3.1%アップ。前月比では0.9%アップ。工業界の給料面も前年同月比平均9.6%、今年1~8月9.1%、過去12ヵ月5.3%とそれぞれアップ(エスタード、バロール両紙)。


自動車業界各社黒字へ

(19日)ブラジル国内市場で長年にわたり赤字を余儀なくされていた自動車業界は今年黒字に転じる。フオードは南米域内で第3四半期に5,900万ドルの黒字。フオルクスとフイアットは今年黒字予想。GMは8年振りの黒字決算予想。しかし、各メーカーともそれに満足せず、政府に対して工業製品税(IPI)減税、労働者支援基金(FAT)の自動車ローン原資振り当てを希望する。よくなった環境の中で明日21日からサンパウロ市内アニエンビー館で「国際自動車サロン」が開かれる。(バロール、エスタ-ド両紙)。


ブラジル経済情報 - 速報 10月13日

鉱工業生産、6ヵ月連続の伸び

(11日)ブラジルの8月の鉱工業生産は前年同月比13.1%アップ。さる7月比1.1%アップであった。今年1〜8月累計は8.8%、6ヵ月連続の伸びである。6ヵ月連続の伸びを記録したのは、レアル・プラン初期の1994年いらいで10年目。過去12ヵ月では6.5%の伸びである。ブラジル地理統計院(IBGE)調べ。

同院によると、力強い伸びだが、例年8月から10月がピークなので、今後はいままでのような伸びはなく、11月から12月にかけて伸び率はちぢむであろう。また、今後伸びを継続できるかについて、生産設備、エネルギーや輸送インフラ面の能力が限界に近いことが気がかりと見る(10月12日付けエスタード紙)。


原油価格ピークにあり、国際工業原料価格は05年に下向く

(12日)英国のコンサルタント会社EIU予測によると、国際原油価格はすでにピークに来ており、今後は下降を始め05年にブレント・タイプ原油の年間平均がバレルあたり34.8ドル、06年の年間平均は同28.4ドルになろう(04年10月12日現在は49ドル60)。

また、工業用原材料は中国の経済成長の減速化傾向から需要が減り始めており、とくに繊維価格は下向いている。中国のみでなく世界経済が減速化傾向から工業用原材料の需要が減る。いままでの高価格からメーカーは生産増に走り、その結果が供給面の圧力を今後もたらす。05年にはまだ著しい原材料価格下落はないが、06年に入るとそれがはっきりとし、投機家らは工業用原材料投機から手を引き、他の投機先を探すことになろう(13日付けエスタード紙)。

他方、ブラジルではペトロブラスによるガソリンやジーゼル油価格の調整が遅れている。同社筋は「国際価格がどの辺に落ち着くのかが見極め切れないため」と言うが、市長選挙(2次投票)絡みで政府が値上げをためらっているので、10月末の選挙がすめば値上げが来るとの見方もなされている。


外来直接投資、国別ランクでブラジルは世界の17位

(12日)英グローバル・コンサルタント会社A.T.Kearney社によると、02年に直接投資の対象諸国中9位だったブラジルは昨年17位に転落した。02年166億ドルから03年に100億ドルへ。経済が回復基調で成長路線に乗りつつあるが、まだ規制面で問題があり、他の開発途上諸国に比べて条件が劣る、ブラジルは5大潜在国中最もリスクの高い国と見られているのである。世界中から直接投資の集中する国は中国がトップで、米国が2位。いままで6位だったインドが3位になった(エスタード紙)。


ブラジル経済情報 - 速報 10月08日

9月のインフレ、IPCAベース0.33% - INPSでは0.17%(8日)

IPCA - 広範囲消費者物価指数(IPCA)ベースでは、9月のインフレは0.33%と8月の0.69%に比べて低かった。1~9月は5.49%、過去12カ月は6.7%に来ている。9月の低インフレは食品類が平均で0.19%下がったのが大きな原因。8月に0.85%上昇した食品類のうち玉ねぎが17.43%下がり、トマト15.9%、葉野菜類9.24%、砂糖9.38%とそれぞれ下がった。

INPC - 一方、低所得者層の物価動向をはかる全国消費者物価指数(INPC)ベースだと、9月のインフレは0.17%とこれも低かった。8月は0.5%だった。今年1~9月は4.59%、過去12ヵ月は5.95%。ブラジル地理統計院(IBGE)調べ。


パラグアイ、一部輸入品のメルコ域内自由化を受け入れ

(7日)パラグアイ政府は7日、輸入品一部のメルコスール域内自由通過案受諾を発表した。メルコスール加盟国がいったん対外共通関税(TEC)を払って輸入した商品がパラグアイに入る場合、再び課税される事がなくなる。EUはこの2重課税に反対していた。去る7月のプエルト・イグアス(アルゼンチン領内)のメルコスール会議で、海岸を持たないため自由化反対に固執するパラグアイ外相のレイラ・ラシジ女史は、他3国外相から強い圧力をかけられ、ついに泣き出したとされる。 今回の措置で関税ゼロとなるのは種子、特定の肥料及び鉱物類。

しかし、FTAA(米州自由貿易圏。Alca)設立交渉が失敗し、いままたEUとの交渉が難航しているメルコスールでは、ブラジルのルーラ大統領が7日にメルコスール常任代表会のエドウアルド・ドウアルデ会長と会談、残る手段として今年末までに「南米共同市場」の形成案を急ぎまとめる事を協議した。

他方、ブラジルが世界貿易機関(WTO)の次期事務局長にルイス・セイシャス・コレア大使を推薦する案を持つ。これには自国から出そうとするウルグアイが猛反対で、メルコスール割れが懸念されるところである(バロール紙、エスタード紙


収拾困難な銀行員スト

(7日) 銀行団体側が譲歩せず、官営のブラジル銀行は譲歩の方向だが、これも官営の連邦カイシャ・エコノミカが譲歩に応じない。与党PT(労働者党)の大臣や国会議員らが調停に入ったが、解決策が見当たらず、銀行労側も困惑している。ブラジル銀行はスト期間(24日間)の埋め合わせは3分の1を赦免、残り3分の2を残業でと提案している(エスタード紙)。


ブラジル経済情報 - 速報 10月07日

バイオ安全法案、上院本会議で可決

(6日) 上院議会は6日の本会議で「バイオ安全法案」を賛成53票、反対2票で可決した。内容は、遺伝子組替え大豆の今年度栽培及び収穫大豆の取り引き及び、3年以上凍結されているES細胞(胚性幹細胞。各種病気治療に使用)の利用研究を認めるもの。上院から下院議会に戻され再審議されることになったが、下院議会ではいま政府乱発の18もの暫定措置令が(すでに有効期限切れもある)審議を待っており、表決によって承認になるにしても遺伝子組替え大豆のばあい、とても播種期に間に合いそうにない。大豆農家は政府による新たな暫定措置令(MP)発令を期待する(各紙)。


脱税、Refis 2で訴訟停止に - 連邦税に限らず

(6日) 脱税で起訴されている納税者は、政府の「第2滞納税回収計画(Refis 2)」の分割払いプランに合流することによって、訴訟停止になる。一方、連邦最高裁(STF)は、Refis 2以後に、それも訴えられていても分割払いに応じれば訴訟は停止になるとの裁定を下した。しかも連邦最高裁は、税金は連邦税に限らず、州税の場合にもあてはまるとして商品流通サービス税(ICMS)に関する当局の訴えを中止させた。

2000年2月のRefis 1は、納税者が起訴される前にRefisに合流すれば、連邦税関連では起訴されない、とした。それが、昨年のRefis 2(法規10,684/2003)は、さらに1歩進め、起訴された後であっても、Refisに合流すれば、訴えは停止されるとなった。税金の種類についても、それが連邦税であるとはとくに定めていない(7日付けバロール紙)。


バスピ航空に24時間以内の債務返済判決

(7日) 上記判決はサンパウロ第42法廷が下した。米系2社がバスピ航空の破産申請を求めたことに対するもの。一方、国防省は、バスピの営業認可証更新に社会保険料(INSSへの)完全納付証明書と連邦収税局の同完全納税証明書を明日までに提出するように言い渡した(エスタード紙)。他方、国防省では、バスピが全面運行停止にならないように、6ヵ月間有効期限の仮営業認可証の付与を考えているとされる。バリグ航空に対してはすでに同じ措置がとられている。


外国人の会社設立や手続き簡易化(エスタード紙7日)

外国人(個人)がブラジルで開業するにおいて要求される最低資本金20万ドルを5万ドルに引き下げた。労働省移民審議会決定。外国人の短期就労関係ビザ給付に関する官庁手続き簡易化も決まった(7日付けエスタード紙)。


ブラジル経済情報 - 速報 10月06日

パウエル米国務長官来伯

(5日) ブラジル政府は、パウエル国務長官にブラジル軍指揮下のハイチ国連平和維持軍の苦境を訴え支援を求めた。予定の6,000人の部隊編成は2,700人にしか達せず、旧アリスチデス政権支持反乱軍の活動封じ、最近カリブ海域を襲ったハリケーンで被災地国民に対する食糧や医薬品配給、病人手当てがままならないため。長官はネパールやスリランカ各国の軍隊派遣を急がせるようアナン国連事務総長に働きかけることを約束した。

第2次ブッシュ政府での留任を望まないとする同長官は、ブッシュ大統領はラ米の左翼政権と友好関係を保って行く、ベネズエラのチャーベス政権と米国間にお けるブラジルの仲介に期待、ブラジルは国連安保常任理事国入りの有力候補(他の候補国からも協力要請がある立場上、特定国支持は出来ないと説明)、核計画 ではブラジルの平和利用を信頼、また他国から核兵器を購入しない、核技術を他国に流さない点を信頼するほか、国際原子力機関(IAEA)の査察でもめてい る事にそれほど心配しない等をのべた(バロール紙)。


株式市場、9月は外資4億5,200万レアルの売り越し

(5日) サンパウロ証券取引所(Bovespa)発表によると、9月のサンパウロ株式市場における外国人投資家の動きは買い57億7000万レアル、売り62億2,200万レアルで4憶5,200万レアルの売り越しだった。年初に高額外資流入があったため、1-9月累計はまだ5億3,700万レアルの入超。

9月全体の出来高は244億レアルで、前月比8.03%減だった。投資家別に見ると個人投資が全体の29%。ついで機関投資家28.9%、外国人投資家24.6%、金融機関13.3%、企業4.1%、その他0.1%(ジアリオ・ド・コメルシオ紙)。


GEセルマとGEバリグがバスピ航空の破産を申請

(5日) 財政危機に陥っているバスピ航空は、GEセルマ及びGEバリグ(バリグ航空とは無関係)に飛行機のメンテナンス料900万レアル(昨年4月期限)の支払いが出来ず、上記2社から破産申請がなされた。一方、ブラジル空港インフラ業務公社(Infraero)にも7億7,400万レアルの負債があり、それまでの空港タックス支払いがなければ、来る13日以降は前払い制にし、前払いがなければバスピは空港を使用できなくなるとの通達を出した(各紙)。


ブラジル経済情報 - 速報 10月05日

ブラジル・リスク4%低下でドル安、株高

(4、 5日) 国際原油価格の一時下げ(註:5日は再び50ドル/バレルを超えた)、全国市長・市議選挙において与党PT(労働者党)が優勢、ブラジル・リスク をはかるJ.PモルガンのEMBI+が4%下がり441ポイントに来た(今年最高は5月の805ポイント)等が要因で、4日のドル相場はR$2.82に下 がった。サンパウロ証券取引所の平均株価指数(ボベスパ指数)も1.56%高で24,000ポイントを超えた。外国人投資家も戻り始めたとされる(4日付けバロール紙)。


外銀、アルゼンチンから撤退

(4日) 国際金融院(IIF。シチグループなど会員300)の幹部筋によると、950億ドルの債務不履行に陥っているアルゼンチン政府が、その損失を埋め合わせしないため、伊系ナシオナレ・デ・ラボレなど諸外国の銀行5行がアルゼンチンから撤退した、あるいは撤退を開始している。仏第3のソシエテ・ジエネラレもアルゼンチン事業の売却を考えている。金融システムが破綻状態のところへ外銀が撤退すれば、アルゼンチンの経済成長が危くなる。IMFは今年7%の成長を見るであろうが、来年は4%に低下すると予想している。

外銀群は2002年のデフオルト以来、計130億ドルの損失を蒙っている。IMFはアルゼンチンが至急、債務対策計画をねるよう要求している(5日付けバロール紙)。


全銀労連、ベア要求額を引き下げか

(4、5日) ブラジルの銀行員ストは5日、開始いらい21日目に入ったが、サンパウロ市内では200支店が応じている程度。スト側は全国州都に及ぶというが、スト離れ行員も多く、全銀連(Fenaban)側に譲歩の気配はない。スト行員らは、ルーラ大統領に調停を求める一方、国会議員らに支援を働きかける動きだが具体化できるかどうか。要求していた25%のベアを引き下げる、あるいは労裁の裁定に委ねる等の選択肢が残されている(エスタード紙)。


石油労、4日に一部でスト入り

(4日) ペトロブラス系精油所一部が4日にスト入り。24時間時限で、ポップコーン・ストと名付け、毎日どこかの精油所で工員らがストを打つもの。ベア要求は13.2%だが、これに対してペトロブラス側は7.81%を提示していたが4日になり、新提案を出すと発表した(エスタード紙)。


ブラジル経済情報 - 速報 10月04日

サンパウロ市長選、トップはセーラ候補

3日の市長選挙の結果、野党PSDB(ブラジル民主社会党)のセーラ候補は43%と予想以上の得票だった。与党PT(労働者党)のマルタ候補 ―現市長― は35%で、10月末の決選投票に持ちこまれる事になった。世論調査結果の予想以上の得票率は、浮動票がセーラ候補に流れた結果と見られる。

また、今回は市会議員改選も行われ、日系から神谷ウシタロウ(PFL=自由前線党)、羽藤ジョルジ(PMDB=ブラジル民主運動党、現職)、野村アウレリオ(PV=緑の党)の3候補が当選。日系社会にも親しまれているウイリアム・ウー候補(現職=PSDB)も高得票で再選を果たした。 

なお、サンベルナルド・ド・カンポ市ではウイリアム・ジブ市長(PSDB)が再選を果たし、PTのビセンチニヨ候補は敗退した。サント・アンドレ市ではジョン・アバミレノ候補(PT)とブランドン候補(PSDB)の間で2次選が争われる。カンピーナス市ではカルロス・サンパイオ候補(PSDB)とエーリオ・サントス候補(PDT=労民党)が2次選へ。


各州都の市長選挙結果

リオ・デ・ジャネイロ市ではセザル・マイア現市長(PFL)が再選を果たした。ベーロ・オリゾンテ市ではフエルナンド・ピメンテル候補(PT)が当選。しかし、他の下記市では過半数の票が取れず2次選に持ちこまれた。

・ クリチーバ市 -ベト・リッシャ候補(PSDB)とアンジエロ・バニョニ候補(PT)

・ サルバドール市 - ジョン・エンリッケ候補(PDT=労民党)とセーザル・ボルジエス候補(PFL)。

・ マナウス市 - アマゾニノ・メンデス候補(PFL)とセラフイン・コレア候補(PSB=ブラジル社会党)。

・ ポルト・アレグレ市 - ラウル・ポンチ候補(PT)とジョゼ・フオガサ候補(PPS=社会民衆党)。

総括すると昨日の選挙の結果、与党PTは最終的中間発表の段階で州都市長6名を当選させ、2次選結果と合わせ14名当選予想。対する野党のPSDBは7名を当選させる見込み。PMDB、PPS、PSB、PFL、PDT各党は昨日の選挙において、それぞれ1名を当選させた(以上、エスタード、バロールなど各紙)。


ブラジル経済情報 - 速報 10月01日

9月の投資益、株式がトップ

9月は、株式投資が1.94%で金融商品中の儲け頭。銀行定期預金証(CDB)、銀行間預金証(CDI)を中心とするDI投信、確低利投信は揃って1.24%だった。商業ドルは-2.36%。金は0.26%の値上げ。9月のインフレは総合市場物価指数(IGP-M)で0.69%。なお、年レベル(1-9月)では株式4.54%、CDB9.29%、ドル-1.06%、金-0.26%、IGP-M10.25%(GM紙、エスタード紙)。


Selic金利引き上げ不可避か

中銀は30日、05年のインフレを広範囲消費者物価指数(IPCA。政府の指定インフレ指数)レベルで5.6%との予想を発表した。当初予想の4.5%を大きく上向き修正したもの。金融界では、中銀が現在16.25%/年の経済基本金利(Selic)をさらに引き上げ、16.67%で越年するとの予測もある。

中銀が今年の国内総生産(GDP)の伸び率予想を4.4%に引き上げた(それまで3.5%。IMFは4%予想)こともSelic金利引き上げ要因とされる。なお、今年のIPCAは当初予想の6.4%を7.2%に修正。いま一つのインフレ要因である燃料価格は今年9.5%引き上げ予想(エスタード紙、バロール紙)。


送電線コンセション入札、スペイン系企業がめぼしいところをさらう

電力庁(Aneel)が30日、サンパウロ証券取引所で行なった同入札において、スペイン系のエレクノ-ル及びイゾルクスがめぼしいところの4件中の3件を落札した。入札に付されたのは11ロット(新送電線12と6サブステーション。送電線の全長2,860km、投資総額R$21億)。安いもの勝ちで平均34.8%の逆ザヤだった。送電線と落札企業( )。単位:レアル

・ クヤバ/イツンビアラ - マットグロッソ/ミナスの2州間(エレクノール) ― 競り落とし金額9,870万。

・ イバイポラン/ロンドリーナ - パラナー州(ウイラプル・コンソーシアム) - 1,430万。

・ カスカベール・オエステ/フオス・ド・イグアス -パラナー州(グラリャ・アズール・コンソーシアム) - 1,100万。

・ ツクルイ/ビラ・ド・コンデ - パラー州(イゾルクス・ワット) - 3,450万。

・ フルナス/ピメンタ - ミナス州(ミナス中西コンソーシアム) - 810万。

・ イツチンガ/ジュイス・デ・フオーラ - ミナス州(ミナス東南コンソーシアム) - 1,170万。

・ マカエ/カンポス - リオ州(フルナス電力) - 880万。

・ ミラグレス/タウアー - セアラー州(サンフランシスコ電力=Chesf) - 630万。

・ ミラグレス/コレマス - セアラー州、パライーバ州間(同 Chesf) - 350万。

・ ポルト・プリマベ-ラ/ドウラドス及びポルト・プリマベーラ/インビルス - サンパウロ州、南マットグロッソ州間(イゾルクス・ワット) - 4,370万。

・ カンポス・ノボス/ブルメノウ - サンタ・カタリーナ州(カブレー・コンソーシアム) - 3,930万。(GM紙、バロール紙)。

ブラジル経済情報 - 2004年09月

【ブラジル経済情報】 速報 9月30日

IMF、今年の世界経済成長率を5%へ上向き修正

IMFは29日、今年の世界経済成長率を5%に上方修正した。3月時点では4.6%予測だった。しかし、来年は若干弱まり4.3%成長と見る。世界経済の牽引車は引き続き米国経済で今年4.3%、来年は3.5%の成長予想。世界第2の経済大国日本も上向き修正されて今年4.4%の成長予想となった。

ブラジルと関係の深い各国の04、05年度経済成長率予想

なお、石油輸出国のベネズエラは原油価格高騰により今年12.1%伸びるが、来年は3.5%の成長に下がると見られる(エスタード、GM紙)。

ブラジル経済に対するIMFコメント

ブラジルは安全な道を選んでいる。今後は司法、規制システムを改革すると共に労働市場に弾力性を持たせ、ビジネス環境の改善、州税制改正等を実現しなければならない。(エスタード紙は、これはまさにルーラ大統領の経済成長向け戦略における説明と同じ表現、としている)。なお、ブラジル地理統計院(IBGE)が30日に発表したところでは、ブラジルの今年上期の国内総生産額(GDP)は8,168億レアルで、昨年の上期に比べて4.2%のアップ。


パウエル米国務長官の来伯

同長官は来週月曜日に到着、水曜日離伯の日程でブラジルを訪問する。昨年末から計画されたが遅れていたもので、ルーラ大統領と会談。ベネズエラの現状、ブラジルが軍隊を派遣して治安維持に協力するハイチの現状のほか、国際原子力機関(IAEA)によるリオ州レゼンデにおけるブラジルのウラン濃縮プラント査察について話し合うと思われる(エスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 9月29日日

ブラジル企業の対外債務返済増える

(28日)ブラジル企業のなかで、対外債務繰り延べをさけ返済するケースが増えている。中銀では債務リスケのケースは今年1~8月に全体の64%。今後はこの比率が70%のレベルで推移すると見る。いま外資調達に動くのは輸出で外貨を稼ぐ企業。外貨収入のない企業は国内金融市場における社債発行などで資金を調達している。なお、2003年6月から1年間にブラジルの対外債務総額は141億ドル減り、2,046億7000万ドルになった。

中銀は、債務軽減を可能にしたのは同期の経常黒字が79億ドルで企業、政府がドルを購入出来た事とする。また、2005年の経常収支は1億ドル黒字予想だが、外国からの直接投資が140億ドル期待のところから(今年は106億ドル見当)、来年も債務軽減はつづくと予想する(9月29日付けバロール)。


8銀行、小切手税12億レアル余を脱税 - 特別投資勘定では同税免除

(28日)連邦収税局(SRF)は28日、国内の8銀行が合計12億5000万レアルに上る銀行小切手税(CPMF)を脱税している。さらに12行に調査の手入れをしていると発表した。うち、いくつかの銀行はCPMF規制が明確でなく、課税対象なのかどうかが分からなかったと説明している。

同局は28日、10月1日以降実施の規則インストラクション450号(IN)を連邦官報に掲載した。銀行はお客のために義務的に金融投資のための「金融勘定」を設定しなければならない。その範囲内の金融投資の決済はCPMF免除。株式、ポウパンサ貯金除く。(エスタード、バロール紙)。


ビールの人気、全国トップはスコールだが大サンパウロではカイゼル

(28日)ラチン・パネルの最近の調査によると、スーパーでの売上で見る限り、大サンパウロ都市圏でのトップはカイゼル。ついでババ-リア、ブラマ、アンタルチカ、ノーバ・スキンの順。これが全国ではスコールがトップ。これにカイゼル、ノーバ・スキン、ブラマ、ババ-リアの順。大サンパウロ都市圏で2位のババ-リアは全国では最下位である。

ところで、ブラジル全体のビール消費量の半分を南伯及び東南伯が占める。サンパウロ市で全体の25%。サンパウロ州で同36%(29日付けジアリオ・ド・コメルシオ紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 9月28日

サンパウロ州司法公務員スト終わる - バスピ航空でスト開始か

(27日)91日間にわたった上記ストは27日、公務員側が14%の給料調整を受け入れ(要求は39%)終了した。もっとも当初75%だったスト参加者は40%に減っていた。しかし、ストのため解決の遅れた訴訟問題が山積み。今後の作業処理が大変である。

一方、全国銀行員スト(全面的ではない)は解決が遅れている。銀行員側は27日に全銀労(CNB)が、銀行側の提案が来るまでストを続けると決定した。銀行員のストでウケに入っているのはロテリア販売店。もろもろの支払いを受け付けるので利益につながる。仕事が30%増えたとされる(エスタード紙)。

他方、27日のバスピ航空会社パイロットら乗組員の会合結果、28日夜から48時間のストが決定した。さきの交渉で遅配給料を先週末までに支給する約束だったのを会社側が履行しなかったため(28日付けバロール紙)。


バーレがウジミナスの議決権株22.99%を売却か

28日付けガゼッタ・メルカンチール紙は、バーレ・ド・リオドーセのアグネリ社長がニューヨークでこの旨を発表したと報じている。国際投資家らを前にした会社説明会の席上でのこと。カラジヤス鉱山では2007年/08年に1億トンの鉄鉱石を生産する計画とのべたとされる。なお、同社はフイッチ・レーシングからBB-に格上げされ、これで国際金融市場での資金調達コストが低くなるとされる。


大売れ異変にびっくり - エコ貯蓄証券

(27日)ブラデスコ保険は、「購入者は、将来はげ山になることが心配されている海岸山脈(マッタ・アトランチカ)の再植林づくりに貢献します」という貯蓄証券を売り出したところ予想の2倍に近い19万口が売れて会社のほうがびっくり。10万口あたり100万本の植樹で、これについては「SOS海岸山脈財団」と契約しているもの(28日付けジアリオ・ド・コメルシオ紙)。


エマージング市場に目をつける自動車メーカー

(27日)先進諸国の市場が停滞気味のため、自動車メーカーは低所得層の多い国々への進出を余儀なくされている。ルーマニア、マレーシャ、イラン、モロッコ、ロシア、スロバキャ各国。低コストの車の生産が必要で、そうなるとブラジルはコンパクトカーでは競争力が持てない懸念が出てくる(28日付けバロール紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 9月27日

原油自給は2006年から - 国際原油相場再び高騰

(27日)ペトロブラスのジョゼ・ドウトラ社長はさきごろ、バンデイランテスTVとのインタビューで、ブラジルは現在の原油消費量で行けば、2005年末までに自給できるようになる(カンポス海底油田の採油開始で)。ただし、今後も消費が増えるであろうから、年間生産量(日量平均)と年間消費量(同)が同じになるのは2006年からと語った。しかし、ジーゼル油は例外で輸入に頼らねばならない。

その原油国際相場は、ハリケーンの影響、ロシアのユコス社問題、ナイジエリアの生産問題、米備蓄量減等から高騰、バレルあたり50ドルへ1歩のところまで来ている(27日午前)。ドウトラ社長はさる24日、「今後の国際原油価格次第によっは、近日中に燃料価格を値上げしなければならない」と述べている。


中国資本のノランダ買収決定か - バーレは圏外に

(25日)中国ミンメタルズが、ブラスカン銀行が所有する非鉄金属大手ノランダの株式42%のネゴに入る。アルミ部門を含めれば47億ドルの商談とされる。ブラジルのバーレ・ド・リオドーセもブラスカンの所有する同社株に興味を持っていたが、このため外される事になった模様(GM紙、バロール紙)。


EU、メルコスールのFTA交渉再開したが

(26日)メルコスールはこのほど、EUに対してさらに充実したFTA案を提示した。これに対してEU側は、農業関係案をEU圏内各国の同意取り付けが出来ずメルコスール側に未提出。このため2経済ブロック間交渉の進捗が遅れ、予定の10月末までに合意することが困難と見られ始めた(バロール紙)。


財政一次収支黒字、8月に109億レアルへ

(24日)公共部門(連邦、州、市並びに公社群含む)の財政一次収支は8月に109億レアルの黒字で、月では史上最高である。1-8月累計はR$637億で、IMFとの約束である目標R$569億をR$68億も上回った。国内総生産(GDP)の5.82%相当である。これは、ブラジル政府が新しく設けるべくIMFに提示しようと考える目標の4.5%を大きく上回る(各紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 9月24日

政府、投資促進プログラムを発表

(23日)パロシ財務相は23日、投資促進プログラム「インビスタジャ」を発表した。機械・装置類価格に組みこまれている所得税(IR)、社会保険融資納付金(Cofins)及び社会統合プログラム(PIS)の購入企業に対する還付を前倒し実行し、企業はその見返りに投資するというもの。

同プログラムは3週間前、全国工業開発審議会(CNDI)が提案した内容をベースにする。PIS及びCofins還付はすでに税務クレジットの形で48ヵ月相殺だが、これを24ヵ月に短縮する。政府にとって12億レアルの税収減。また、購入企業は機械・装置類額を所得税計算ベースから半分の期間で除くことが出来る。現在は10年だが、これが5年に短縮される。すでに5年での減価償却が認められている企業には2年半に短縮。2005年末まで有効。政府にとって5億レアルの税収減(エスタード紙)。


バリグ支援含む航空業界再編策近く発表か

(23日)政府は膨大な負債を抱えるバリグ航空の救済に腐心しているが、具体的な支援策は10月3日の統一地方市長・市議選挙後発表の見込み。一方、バスピ航空はさる21日、給料遅配や社会負担金の積立不足等(PIS、INSS)に抗議する従業員ストにあい、計87便が欠航。お客はバリグ、TAM、ゴルなどの他航空会社便を利用した。座席がなくホテルで過ごしたお客もいた。

他方、24日付け「バロール紙」は、大統領官房室の要請によりコンサルタント会社トレビザンが作成した計画をベースに、政府が国内航空業界再編策を検討中と報じている。国内資本の航空会社同士の競争を緩和させる余剰便減らし、国内資本航空会社の強化をはかる、航空業界を取り締まる政府の新取締機関を設立する - など。バリグを救うのを機会に業界全体を再編しようとするもの。


中国、ブラジルにガスパイプライン敷設工事 - 11億ドルの投資

(23日)マンテガ企画相が23日に発表したところによると、鉱山動力省が中国側と契約書を交わした。リオ州マカエ-からバイア州サルバドル市に至るガスパイプライン(ガゼネ)工事で、中国が11億7000万ドルを、ブラジル側が1億3000万ドルを投資。


【ブラジル経済情報】 速報 9月23日

全国失業率上向く

(23日)6大都市圏における8月の失業率平均は11.4%で、7月の11.2%を上回った。同圏内における就労人口は1,920万人、失業人口は246万人。一方、同圏内における就労者の平均所得は8月にR$893.10で、昨年8月に比べて0.9%減。今年7月比で1.4%減。ブラジル地理統計院(IBGE)発表。


株式市場から外資引きあげ

(22日)サンパウロの株式市場における9月1-17日間の外人買いは31億1,130万レアル、売りは35億600万レアルで、3億9,470万レアルの売り越し。通年ではまだ約6億レアル近い買い越しだが、米国が金利引き上げに移った8月いらい4ヵ月連続の収支マイナス。外国人投資家が利益を求めてブラジル株式市場を去って行くもの(バロール紙)。


牛肉関係情報(22日)

・ 対ロ売りこみ困難 - アマゾナス州における口てい疫罹病牛の発見が原因で、ロシアがブラジル産牛肉輸入を拒む。モスクワにおけるロ伯交渉は難航している。砂糖ではロシア側が、輸入関税を国際相場の動きに合わせる変動性にすることを提案、伯側は「のめない」としている。

・ 国内肥育牛相場下落

一方、ブラジル国内における肥育牛の値段が端境期にも拘わらず低下している。この40日間に3.8%下がり、アローバ(15kg)あたり60レアルとなった。異常な高気温、今年初めに売り惜しんだ牧畜家らが冬場に期待した雨が降らなかったために持ちこたえられず売りに出した。種牛まで売っているのが原因とされる(エスタード紙、GM紙)。


アセロル、2010年までブラジル鉄鋼事業に30億ドル投資

(22日)需要増大への対応、コスト低減のための設備増拡等に30億ドルを投資するものだが、うち10億ドルはツバロン製鉄への出資にあてる。設備増拡によりベルゴ・ミネイラの生産を50%アップする(23日付けGM紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 9月22日

きょうはブラジルの“立春”

ブラジルはきょうから春。国立気象院(Inmet)によると、エルニーニョ及びラニ-ニャ現象の影響はないが、今年の春は高気温がつづきで雨が少ない。<


米金利引き上げの影響

米連邦準備理事会(FRB)は21日、FF金利を0.25ポイント・パーセント引き上げ年1.75%とした。予想通り、あるいはインフレ懸念薄というところから、ブラジル金融市場は同日、比較的落ち着いていた。ドルは0.2%下げの引け値R$2.869で、平均株価は0.12%の上げ。きょう22日は午後1時半に1ドル=R$2.872、株価は0.19%の下げである。


サンパウロ州のICMS税引き下げ

アルキミン州知事は21日、商品流通サービス税(ICMS)減税措置を発表した。自動車部品、食品、医薬品、化粧品、洗剤等は工業、卸売りレベルで12%に引き下げた。楽器類、おもちゃ、ワインは工業レベルで12%へ、皮革類の卸し販売も同率に引き下げられた。サンパウロ州内工業の競争力強化が狙いとされる。しかし、小売には引き続き自動車部品、医薬品、食品は18%課税。化粧品類、洗剤は25%課税(GM、バロール、エスタードの各紙)。


大手企業や銀行泣かせのCN

税金類の滞納は一切ないとする「完納証明書」(セルチドン・ネガチ-バ)は、入札参加、為替取組、融資取り付けに必要書類だが、これを申請する企業や銀行に対して連邦収税局はきびしい態度でのぞんでおり、各社、各行とも当該機関からの入手が困難。連邦収税局前には長い列が出来る。法律改正を要求するが、同局はガンとして首をたてに振らない(22日付けバロール紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 9月21日

銀行員スト6日目に入る

(20日)当初は合流の少ない部分的銀行員ストだったが、6日目を迎えた20日には全国18州に拡大、参加者が合計20万人に及んだ。全国銀行連盟(Fenaban)は、きょう21日の午後3時から労組側との再交渉に入った模様。

一方、労働検事当局は20日、サンパウロ第2地方労裁にスト裁定を求める訴訟に持ち込んだ。他方、リオでは民事裁判所に持ち込み、リミナール(予備判決)を勝ち取り、銀行労のピケを押しのけて各支店を再開した銀行もある。銀行労側では労裁権限無視の頭越し行為と不満である(21日付けエスタード紙)。


CUT系ABC金属労一部が無期限スト突入

(20)サンベルナルド・ド・カンポ市のマキタ、オチス、コネキセル、マークグランドフス各社の工場が20日からストを打たれている。スト工員は全部で約1000人。先週末の会議で機械、電気器具、電球、鉄鋼品部門の工場を止めることを決定した。きょうからエバコン、エンブラモトル、ボンフイオ3社の工場でスト入り予定。実質ベアと11月の給料調整月を9月に早めるよう要求する。鋳物部門ではすでに、調整月を現行の11月から9月に早める事について会社側の内諾を得たとされる(20日付けエスタード紙)。


Selic金利引き上げ、消費者の購買意欲をそぐ

サンパウロ商業協会(ACSP)調べによると、中銀がさる15日にインフレ懸念から年16%のSelic金利を16.25%に引き上げてから、月賦販売が下向きはじめた。ACSPの調査機関への9月16日~19日間の客先信用調査依頼件数は、8月同期比で7%減。

カザス・バイア、ロージャス・セン、ロジアス・コロンボでははっきりと売上減少が感じられた。しかし、今年末のクリスマス商戦が昨年に比べて2、3割の売上増という見通しには変わりないとされる。店によっては、9月の売上は8月比10%減もあり得るという。そんな中で、金融市場筋が中銀は10月に再びSelicを0.25ポイント・パーセント引き上げるとの予測をしている。(21日付けGM紙、エスタード紙)。


米、ブラジルの海賊版取り締まり状況を調査

米通商代表部(USTR)のアリゲイヤ-次席がきょう訪伯するが、ブラジル政府から知的所有権保護令の遵守状況に関する報告を求める。もし、回答が不充分な場合、米政府はブラジルを特恵関税システムから外し、25億ドルの対米無税輸出ができなくなる可能性がある(21日付けバロール紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 9月20日

セーラ支持率40%を突破、マルタ30%割れ-サンパウロ市長選

(18日)世論調査機関のGPP院がさる土曜日に行った調査によると、サンパウロ市長選ではセーラ候補(民主社会党=PSDB)支持率が40%を突破、40.9%に上昇した。対抗馬のマルタ候補(与党、労働者党=PT)支持率は30%を割り28.7%に低下した。10月3日の選挙を前に宣伝戦が激化、マルタ候補による強烈なライバル候補攻撃がかえって有権者のPT候補離れを招いているとのコメントが聞かれる。

マルフィ候補(進歩党=PP)は13.3%に止まり、エルンジナ候補(ブラジル社会党=PSB)は3.3%の支持率(ジアリオ・ド・コメルシオ紙)。


小売、7月は前年同月比12.04%増

(17日)ブラジル地理統計院(IBGE)調べによると、全国の小売販売平均は7月に前年同月比12.04%増だった。8ヵ月連続の伸びである。今年1-7月は9.74%増、過去12ヵ月は4.67%増である。同調査は前月との比較はしていないが、全国工業連合(CNI)経済局の試算によると、7月は6月比で0.8%アップ。しかし、6月は5月比1.5%増だったので、7月の販売伸び率は前月の半分。

なお、7月に最も伸びたのは家電製品、家具の32.22%。ついで自動車、2輪車、同部品22.44%、事務用機器、情報機器、通信機器類の21.66%、家庭用品17.62%、ハイパー、スーパー、食品、飲み物、タバコ10.35%など(エスタード紙)。


アルゼンチン中銀総裁交替

(18日)プラットガイ総裁が退き、マルチン・レドラド財務次官(国際経済問題担当。43歳)が後任に決定した。ガイ総裁は、アルゼンチン政府は債務リスケにあたり、債権者側にもっと譲歩する必要があると主張して、キルシネル大統領及びラバニャ財務相と意見が合わなかった。

キルシネル大統領は先週末、IMFへの負債25億ドルのうち、10億ドルの返済期日を1年後に延期させることに成功した。今週中にニューヨークを訪れるが、デフオルトになっている債務の再交渉が重要課題。IMFは25%しか返済しないというアルゼンチン政府に対して大幅に内容を改めるよう要求している(9月20日付けバロール紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 9月17日

日本、ブラジル産マンゴ輸入を認可

(16日)小泉首相は16日、ルーラ大統領との会談席上で、日本がブラジル産マンゴの輸入を認可する旨を伝えた。ブラジル側は、口てい疫を理由に日本が輸入を禁じているブラジル産牛肉の売り込みに懸命。アモリン外相は昼食会で、ブラジルは大陸国であり、口てい疫のある地方は北部。そこを遠く離れた南部地方の牛肉は心配ない点を強調していた(エスタード紙)。


ドル安、R$2.90以下へ、株価は回復

(17日)中銀はSelic金利を若干引き上げたが、今後引き上げるにしてもゆるやか、ブラジル・リスクが500ポイントを割り484に下がった、国際原油価格に下押し兆候、等から、ドルは16日、R$2.90以下に下がり引け値はR$2.88。きょう17日の午後4時現在R$2.86に来ており、中銀のドル買い出動も考えられる。

一方、ボベスパ平均株価は16日に2.38%上昇、きょう17日も午後4時現在、0.93%と1%に近い上昇である(エスタード紙、同通信)。


バイオ安全法案表決遅れる

16日の上院議会は、定員不足のため同法案の表決を10月5日に延期した。南部の農家は遺伝子組替え大豆播種期を目前に控えており、10月まで待てない。南リオグランデ州の1農家は「この種子しかない。認可の有無に拘わらず播種する」と語る。政府が暫定措置令を発令するしかないが、プラナルト宮は発令しない、との姿勢(16日現在)―各紙。


ペトロブラスとウルトラが新エチレン・センター建設を検討

(16日)旧コペネ(現ブラスケン)クラスのエチレン・センター建設プロジエクトをペトロとウルトラ・グループが交渉中である。すでに社会経済開発銀行(BNDES)に提出ずみで、20億から30億ドルの投資規模。同行は事業をフアイナンスすると共に株主になる見込み。ペトロのマルリン海底油田の原油を精油する施設込み(バロール紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 9月16日

Selic金利16.25%へ

(15日) 中銀は15日、経済基本金利(Selic)を0.25ポイント・パーセント引き上げ16.25%とした。中銀が同日「経済基本金利をじょじょに調整する」と発表しているところから、市場筋では、今後も引き上げが行われ、景気停滞が来ると警戒している。Selicの若干の引き上げは、クレジット取引にさほど影響はないが、しかし、心理的には景気にマイナス効果をもたらす模様だ(各紙)。

エスタード紙は、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)のオラシオ・ピバ会長の「Selic引き上げは投資家及び消費者に不安感をもたらし、投資にブレーキをかける」とするコメントを載せている。また、ブラジリアの国会でも野党だけでなく、与党内にも経済回復に水をかける行為との批判の声がきかれる。


議会のバネスタード調査委員会(CPI)の波紋

(15日)米当局から上記CPI及びブラジル検察庁に寄せられたデータ-によって、著名財界人や政治家多数が対外送金に不正“ドル運び屋”を使っていたことが明らかになった。16日付けエスタード紙は2ページにわたって内容を報じているが、それによると、97年から2003年までに行われたニューヨークのMTB銀行経由の取引は53万4000件、総額170億ドルにのぼる。

情報がもれ、15日の国会は騒然となり、重要な官民合弁のインフラ事業計画法案(PPP)の審議が中止になり、同日予定の表決が見送られた。ドル送金を仲介する“運び屋”はブラジル人、パラグアイ人、ウルグアイ人、あるいは税金天国の国の人々である。対外送金だけでなく、外国からブラジルへの送金も含まれ、フラガ前中銀総裁の名も見られる。前総裁は、知らずに不正送金を行っていたと語る。

マルフィ現サンパウロ市長候補(元市長)、アルメイダ(C.R.アルメイダ土建社主)、モラエス(ボトランチン・グループ)、チャプ・チャプ(サンパウロ 土建業者組合理事長)、各氏のほかに、フルラン現通産開発相の兄弟2名、政界実力者で野党リーダーであるジエレイサッチ上院議員の親戚の名前も見られる。

企業ではバリグ航空、バスピ航空及び先に破綻したトランスブラジル航空、パルマラッチ、カーザス・バイア、オポーチュニテイ銀行など。


小泉、ルーラ会談

(16日)日本の各新聞のインターネットは、はやばやと16日の小泉首相とルーラ大統領の会談に関する記事を流している。NIKKEI NETによると、国連常任理事国入りをめざす日本とブラジルが相互支持しあうことの確認、ブラジルを含むメルコスールと日本の経済関係活性化で意見一致を見た等々。


【ブラジル経済情報】 速報 9月15日

小泉首相来訪、対伯投資環境整備を強調
サンパウロ州の産業界は日本に熱い視線

首相の訪伯としては8年ぶり。小泉首相は14日、日本の円借款協力による(500億円)チエテ川の川底掘削等の改修工事現場を視察、午後はサンパウロ州内プラド-ポリス(リベイロン・プレット地方)のサンマルチニョ・アルコール工場を視察した。アルキミン州知事、ロドリゲス農相らが同行。

日本は環境問題及び国際原油価格高騰から(註:14日現在、NY先物相場がバレルあたり44ドルを超えた)燃料アルコールが必要とロドリゲス農相談。同産業界は、「日本は年間18億ドル市場。ガソリンへ10%のアルコール混入が許可になった場合(現在3%)、60億ドル市場になると試算」、熱い視線を日本市場にそそぐ。首相は「当地エタノール産業への投資はまだ先。検討余地はあるが」とのべている。ブラジル側は日本で高級熱帯果実であるマンゴの対日輸出可能性にも期待する。年間5,500万ドル輸出可能。

14日夜、ホテル・インテルコンチネンタルで首相と日本経団連派遣の「日伯経済合同委」メンバーとブラジル日本商工会議所会員会社代表らとの懇談が行われた。首相は、ブラジル経済が安定し、可能性に富んだ国であり、日本の民間企業が投資できるよう環境整備につとめる考えをのべた。

当地エスタード紙によると、明日のルーラ大統領との会談後に日伯両国間のバイラテラル委員会(双方5名ずつで構成)設立が発表になる予定。ブラジル側委員の一人にエリエゼル・バチスタ元バーレ・ド・リオドーセ社長が有力。同委は、ルーラ大統領の来年4月の訪日に向け自由貿易協定(FTA)交渉のアジエンダを整える。

なお、14日夜、ホテル・インテルコンチネンタルで夕食懇談会が行われ、日本側メンバーの自己紹介を兼ねたスピーチがあり、ブラジルにおける過ぎし日の苦労談等の披露があったが、スペースの都合上、同記事は別個に9月15日付け「ブラジル経済情報」に掲載します。


銀行労スト腰砕け、金属労は来週月曜日スト入り予定

過激派の単一労連(CUT)系銀行労及び金属労はベア交渉で態度を硬化させている。サンパウロ、リオ、ブラジリア、フロリアノーポリスの銀行員らは、14日夜の会議で今日15日からのスト入りを決定した。しかし、15日のパウリスタ大通の銀行は、スト中と張り紙はあるが就業している支店、同じ銀行でも平常通りの支店、スト中の支店があるなどマチマチ。

「明日は?」との質問に対して「分からない」という行員の返事だった。きょう15日夕刻に労組幹部らはスト決定を維持するかどうかを協議する予定とされる。

エスタード紙によると、銀行員のベア期日は9月1日。固定給R$1,200、ベア25%(実質17.68%アップ込み)及び給料1ヵ月分相当の企業利益参加給付を要求している。これに対して銀行側は、それまで提示していた調整率6%を8.5%に引き上げた。月給R$1,500の行員には、さらに固定額R$30上乗せ。利益参加については、給料額の80%相当まで及びプラスR$705との回答を出した。

上記都市以外に、ポルト・アレグレ、クリチーバ、サルバドル、テレジナ、ナタル、ポルト・ベーリョ、サンルイス、クヤバ等の銀行員らも銀行案受け入れを拒否した。ちなみに銀行員人口は30万人。

一方、金属労は11月がベース期日だが、これを9月に前倒しするよう要求するほか、インフレ目減り分のカバーと実質増給を求める。金属労は態度を硬化させ、すでに一部の工場では工員らがストを打っている(サンベルナルド、ジアデマ、カジャマル、サルト、ソロカバ各市)。

他方、工員人口16万人の自動車及び同部品関係では実質4%のベアと残業時間コントロールを勝ち取っている。


【ブラジル経済情報】 速報 9月13日

中銀、金利の1.5ポイント・パーセント引き上げを研究

(12日)応用経済研究院(Ipea)は、中銀が今年末までに経済基本金利のSelicを16.5%に引き上げる可能性があると予測しているが、12日付 けエスタード紙によると、中銀が現在の年16%を17.5%までに引き上げた場合の経済インパクトを約1ヵ月前に研究した結果、インフレ抑えに効果的であ る、との結論に達した。金利引上げ期待はすでに銀行の先物金利に織り込まれている。銀行の同金利は2005年1月が16.87%に来ている。1ポイント・パーセントの上昇である。先日のジルセウ大統領官房長官の「Selic金利引上げは国内経済成長を阻害しない」とする発言は、政府の金利引上げ示唆とも受け止められる。


加系企業がカラジャス方面のニッケル鉱山開発に投資

(11日)カナダ資本のオンサ・ピューマ鉱山(カニコ・リサルス社系)は、パラー州東南部のカラジャス地方でニッケル採鉱に10億ドルを投資する計画である。オンサ鉱床は幅3.6km、長さ23km、ピューマ鉱床はこれより一寸小規模だが、2鉱床は北アグア・アズル、オウリランジャ、パラウアペバ、フエリキス・ド・シング各郡にまたがる。総額10億ドルのうち、2007年までに5億5,000万ドルを投資する。ブラジル最大のニッケル開発計画。すでに地質学者、技師らが現地に到着し、トラクター、測量機器類が搬入されている(12日付けエスタード紙)。


新電力開発モデル、改正で1歩前進と電力業界称賛

ルーラ大統領がさきごろ訪米のおりに行った米国資本家相手の説明会は、投資家らが中途で席を立つなど、反応がいまひとつだったが、スペイン、ポルトガル、 中国、カナダなど各国の電力業界代表らに積極的に説明を行ってきたジルマ鉱山動力相は、「十分な感触を得ており、投資が現実なものになりつつある」と語 る。

新電力モデルの規制には法律2、政令5があり、最終政令はさる8月12日付け発令。なかには環境ライセンス未取得のものもあるが、現在40もの発電所プロジエクトが検討されている。

新電力モデル法案は下院議会を通過したが、上院議会で阻まれ、ジルマ鉱動相は上院議会有力者や電力業界代表らと会合を繰り返し、変更、改正を重ねた。その結果、このほど、電力業者団体のブラジル電力取引業者協会(Abraceel。パウロ・タバレス会長)から、新電力モデルを称賛する書簡がジルマ鉱動相のもとに寄せられた。しかし、ブラジル電力事業への民間の投資が現実となりつつあるかどうかは、来る12月の55MWの電力競売(05年~08年渡し)の結果に待たねばならない(12日付けエスタード紙)。


EU、メルコスールFTA向け交渉再開、だが妥結はまだ遠い

(12日)EUのラミー通商担当委員は12日、ブラジリアでアモリン伯外相、ロドリゲス同農相、フルラン同通産開発相と会談し、来る20日のEU、メルコスール会議でメルコスールの希望する一括提案を双方が交わすことに同意し、交渉再開の見通しとなった。

双方は予定通り10月末までに合意に持ち込めるよう努力するが、①11月1日に新EU委員会が発足し、ラミー通商委員の後任に英国のピーター・マンデルソン氏が就任する。新通商委員はメルコスールに対して譲歩する余地がない。②メルコスールとの貿易額はEU貿易全体の2%にしか過ぎない。③米州自由貿易圏(FTAA。Alca) 設立向けのFTA協定交渉の推進中は、EUにとってメルコスールとの交渉は緊急事だったが、FTAA交渉が頓挫しているいま、急がなければならない理由が ない - などから、交渉妥結が遅れるとするアデナウアー・スチフツング財団のホフメイステル理事長の観測が13日付け「バロール」紙に掲載されている。


【ブラジル経済情報】 速報 9月09日

政府、7.5億ユーロ起債 - ペトロは6億ドル起債との情報

(8日)ブラジル政府はこのほど、欧州市場における7億5,000万ユーロの起債(9億1,365万ドル相当)を終えた。当初5億ユーロと伝えられていたが、需要額がその4倍の20億ユーロとあって増額となった。金利は8.5%。メイレレス中銀総裁は「ブラジル経済が外的要因に弱いとする脆弱性を乗り越えた」との意見をのべた。

一方、ペトロブラスは8日、国際金融市場において6億ドルを起債した。10年期限の債券発行。こちらも当初5億ドル予定だったが、12億ドルの需要があり増額となったとされる。ただし、8日にペトロ側の担当者がつかまらず、情報は確認されていない(9日付けエスタード紙)。しかし、上記情報から8日の国内ドル相場は軟化し、1ドルが最低線でR$2.896を付けたが、引け値はR$2.901.


株価は横ばい - 外国人投資家離れで

(8、9日)8日のサンパウロ証券取引所(ボベスパ)の出来高は約12億レアルだったが、外国人投資家が減り平均株価は横ばい。9日は1%強の下げ(午後2時現在)。8月のサンパウロ株式市場の外貨収支は-5億7,900万ドル。7月の-8億1,600万ドルを下回ったが外資離れが続いている。非居住者の対外送金勘定(CC-5)経由の送金は8月に21億ドル強で98年10月いらいの高額(9日のエスタード紙、同通信)。GM紙によると、今年1-8月のCC-5勘定による対外送金総額は36億ドル。外資系企業がドル安を利用して早めに債務を本社へ返済した、ドル安で対外送金が増えた、キャピタル・フライトとは思えない-などのコメントが聞かれる。


Selic金利、今年末に16.5%か - 8月インフレは1.31%

(8、9日)応用経済研究院(Ipea)はこのほど、国内のインフレ傾向から中銀は今年末までに経済基本金利(Selic)を16.5%/年に引き上げる可能性があるとの予想を発表した。現在16%である。国内総生産(GDP)の伸びを4.6%予想に上向き修正し、インフレは広範囲消費者物価指数(IPCA)ベースで今年7.3%と上向き修正した(それまで6.5%)。また、国内投資は昨年度に比べて7.6%増加する(それまで5.3%)が、しかし、持続性のある経済成長の確立には国内貯蓄を増やし、投資のさらなる増大を実現する必要があるとしている(9日付けエスタード紙)。なお、FGVが9日に発表した8月の国内総合物価指数(IGP-DI)は1.31%アップ。これで今年1-8月累計は9.53%となった。過去12ヵ月累計は12.37%である。


鉱工業生産、7月は前年同月比9.62%増

IBGEが9日に発表。前月比では0.5%増。


【ブラジル経済情報】 速報 9月08日

アルゼンチンに地震、死者1名、学童らケガ

(7日)今夏の北半球は大型台風や地震に痛めつけられているが、南半球でもアルゼンチンが7日午前8時30分ころ、震度6.3の地震に見舞われた。震源地はアンデス山脈の麓カタマルカ州。サンフエルナンド市では学童たちが校舎の塀が崩れて負傷したほか、1老婦人が心臓マヒで死亡した。ブエノスアイレス市では高層ビルの住民にゆれが感じられた。パラグアイの首都アスンションでは高層ビルの住民らが一時避難した。


米、ウルグアイの投資協定合意へ - 10月調印予定

(7日)米通商代表部(USTR)のゾエリック首席代表、ウルグアイのアルフィエ経済財務相は7日ワシントンで、両国の2国間投資協定が合意に至ったことを発表した。10月調印予定。昨年11月に交渉が開始されたもので、締結によって米国投資家の対ウルグアイ投資保護が保障される(ウルグアイの対米投資の場合も)。メルコスール加盟国が米国と結ぶ初の協定(8日付けエスタード紙)。


ラバニャ亜経済相、明日来伯 - 伯の企業誘致恩典廃止要求か

アルゼンチンのラバニャ経済相は明日ブラジリア着、ルイス・フルラン通産開発相らと会談する。ブラジルが税制恩典を出して企業誘致に成功している(例えば伯がこの数年間に21の組み立て工場を誘致したが、アルゼンチンには僅か2工場)が、アルゼンチンは不利な状況下にあるため、この税制恩典を廃止するようブラジル側に申し入れる予定。また、自動車関係は2006年以降、メルコスール域内で貿易自由化予定だが、これも中止するよう申し入れる。ブラジル車がアルゼンチン市場の64%を占有するが、アルゼンチン車のブラジル市場占有率は2%にも満たないのがその理由。


国内総生産4.23%の伸びと中銀予測 - 工業生産性上期に7.2%アップ

(6日)ブラジル中銀は6日、今年の国内総生産(GDP)の伸びを4.23%予想に上向き修正した。それまで4%予想だった。明年は引き続き3.5%予想。鉱工業生産が上期に6.34%伸びた実績を踏まえたもので、企業、銀行を対象に行ったアンケート調査の結果。

一方、工業開発研究院(Iedi)調査によると、今年上期の国内工業の生産性向上は7.2%だった。サンパウロ州はそれを上回る10.53%。Iediのジューリオ・アルメイダ理事は、とくに電気電子、精密機器、通信機器業界が21.6%と著しいアップとしている(7日付けエスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 9月03日

電 力 関 係 情 報(2日)

a)電力消費、8月に19%近い伸び

国内電力消費量が8月に対前年同月比で9.37%伸びた。東南伯及び北伯地方に著しい。全国電力オペレーター・システム(ONS)ではしかし、まだ電力供給面に余力があり、当面は心配ない。心配なのは同部門に対する投資不足、としている。電力庁(Aneel)では、今年内に新しい電力2,500MW、05年に3,058MW、同06年に2,763MW、07年に438MWを追加できる。しかし、今後新発電所プロジエクト着手がなく、現在のテンポで経済成長がつづけば2008年には電力供給面に支障をきたす、と予告している。つまり、年間4.5%~5%の電力消費増があるとなれば、毎年3,200~3,500MWの電力供給増が要求されるというもの。ちなみに8月18日の消費量は57,647MWだった。8月全体では32,385GW/hだった(全国電力統合システム=SIN調べ)。(エスタード紙)。

b)エレトロブラス、中国の三峡ダム建設に協力

北京で開催中の「エレトロブラス・グループの潜在能力と中・伯ビジネス・チャンス」セミナーに出席したエレトロブラス電力のシラス・ロンドウ社長は2 日、揚子江中流で計画推進中の「三峡ダム」のヤンツ-三峡ダム・プロジエクト開発との間で、エレトロブラスが同計画に協力を約束する協約にサインした。三峡ダムは、世界最大の水力発電所で、すでにタービン8基が始動している。ジルマ・ロウセフ鉱山動力相も北京を訪れ、中国政府高官らと会見する(3日付けエスタード紙)。 なお、同発電所は完成すれば年間発電量840億キロワット/時見込み。


インフレ、サンパウロ市は8月に1%近く

(3日)サンパウロ市の8月のインフレは消費者物価指数(IPC。サンパウロ大学系Fipe調べ)ベースでは0.99%。7月は0.59%だった。8月は家賃1.78%、食費1.06%、運賃1.05%等のアップ(エスタード通信)。


やみドル業者大量逮捕で米企業は対伯送金に慎重態度 - 検察当局は中銀総裁の送金調査を収税局へ申し入れ

(2日)さきの連邦警察による国内やみドル業者62人逮捕の情報が原因で、米企業は社名が傷つかないように対伯送金ルート選びに慎重を期している(3日付けバロール紙)。

一方、同日のエスタード紙は、「元パラナー州銀のバネスタード関係で、対外不正送金(受け取りも)に問われる政治家は137名にのぼる。クラウジオ・フオンテレス検事総長は氏名発表を避けているが、バネスタード及びその他の4銀行経由で対外送金された金額は1996~2000年だけで240億ドルにのぼる。公務員らも加わっている、とのべた。また、検察当局は、メイレレス中銀総裁が所得申告せずに資金を対外送金したとするマスコミ報道をもとに、詳しく調査するよう連邦収税局へ申し入れた」と報じている。


【ブラジル経済情報】 速報 9月02日

EU、メルコスールのFTA合意遠のく

(1日)外交及び企業筋によると、欧州委員会メンバー交代のためEU、メルコスール間の自由貿易協定(FTA)向け交渉の合意は、当初予定の10月31日までは無理。メルコスール側は、世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドで、ブラジルの立場が明白になった後の交渉再開のほうが望ましいという。国内農業界は交渉の遅れを非難しているが。

ブリュッセルは、EUの最終提案によって、メルコスールの対EU輸出額が約30億ユーロ増大する。EU側の対メルコスール輸出は約16億ユーロ増えるとしている(2日付けバロール紙)。


自動車の保険料、会社によって大きな差

2日付けGM紙は、保険ブローカー団体CQCSの依頼で3保険ブローカーが行った調査結果として、自動車保険の保険料が、会社によって大きな差があると報じている。

ここでは保険会社の社名は伏せるが、仮にA社は保険料即金払いでR$3,208だが、B社はぐっと安くR$1,918。しかも事故のさいのフランキャにはさほど大きな差がない。

全国民間保険・貯蓄会社連盟(Fenaseg)では、保険金額の多寡はもとより、フランキャ額(免責)、車種、ドライバーのプロフイール、追加保険カバーの度合い等によって保険料に差が出る。はじめての保険契約と更新の場合も差がある、と説明している。


8月の儲け頭は株、ドル投機は3.6%のソン

(1日) ドル安のまま9月に入ったが、8月は約3.6%の下げ。9月1日は1ドルがR$2.929で終わっている。米金利関係情報に目新しいものはなく、ブラジル・カントリーリスクも下がり、政府が海外市場で外貨を調達する可能性がある等々からドル相場は軟化している。

株式はボベスパ平均株価が前月比2.03%上がっている。今年2.55%の上昇である。ドルのほうは今年0.93%上昇(バロール紙)。なお、ブラジル国内の第2四半期経済成長が5.7%と著しかったとする報道にも拘わらず、株価が高騰しなかったのは、すでに織り込み済みだったためと見られている。一方、DI投資信託は8月に1.24%の粗利益。なお、8月のインフレは総合市場物価指数(IGP-M)ベースだと1.22%(エスタード紙)。

ブラジル経済情報 - 2004年08月

【ブラジル経済情報】 速報 8月31日

メーカーと部品業界対立表面化 − 自動車業界

(26日)現在の生産体制では、自動車メーカーと同部品業界の関係にいっそうの緊密化が要求されるところだが、現実はその逆で、それがはっきり現れたのが、さきごろサンパウロで開催された「SAEブラジル−自動車工界の動向」セミナー。

メーカー側は、部品メーカーが投資を怠り、その結果がいまの部品、コンポーネント不足を招いたとなじる。これに対して部品メーカー側は、自動車メーカーが部品工業側に利幅圧縮を強要することを原因にあげる。部品業界団体のSindipecasは、「双方共原材料値上がりに痛めつけられているが、自動車メーカーのほうは今年16%も値上げが出来ている。われわれ部品メーカー側はとてもそれだけの値上げは出来ない。それと昨年の不況下、われわれは国内の販売減退を輸出増によってしのいだ。自動車メーカー側からなんらの支援も期待出来なかったため」とものべる(27日付けエスタード紙)。


電力料金、19.46%値上げ

(26日)エレクトロ電力は27日に電気料金を平均19.46%値上げ。同社配電先はサンパウロ州の223郡、南マット・グロッソ州の5郡。しかし、住宅、商業には値上げが16.55%と若干低い。26日に電力庁(Aneel)が発表した。また、東北伯のマラニョン、ピアウイ、アラゴアス、パライーバ各州でも15%台から19%台の値上げ(27日付けエスタード紙)。


農産物減収 − 今年は1億1,950万トン予想

(27日)ブラジル地理統計院(IBGE)によると、7月調査の結果、今年は昨年に比べて3.7%減の1億1,950万トンの収量予想。昨年は1億2,360万トンだった。穀物収量の4割を占める大豆が南伯地方及び南マット・グロッソ州の旱魃で4,920万トンへ4.5%減ったことが最大の要因。IBGE発表。


財政一次収支黒字さらに増大

(27日)ブラジルの公共財政一次収支黒字(金利差し引き。連邦政府、州、市、公社群含む)は7月に66億1000万レアルで、1−7月累計は527億レアルとなった。国内総生産(GDP)対比5.59%相当である。過去12ヵ月では746億レアルで、IMFとの約束の最低線目標4.25%を上回る4.65%に来ている。中銀発表。

しかし、金利を含む名目額は昨年の8,771億が今年7月には9,456億レアルに来ており、6月に98億レアルだった金利が7月に103億レアルに増加した点を指摘、28日付けエスタード紙は、「原因は高率のSelic金利による。7月は国債増発、紙幣発行により計37億レアルをカバーしている。国債増発は将来の高金利負担につながる」とコメントしている。


2004年国際オリンピック大会 − ブラジルは金メダル4個を獲得

(29日)29日に閉会したアテネ大会におけるブラジルのメダル獲得数は金4、銀3、銅3の計10個で、金メダル獲得数では世界第18位。

金メダル獲得順位では米国が35個でトップ。2位は中国32、3位ロシア27、4位豪州17、5位日本16個だった。ドイツは14個。ちなみにメダル獲得総数は米国103個。中国63、ロシア92、豪州49、日本37個。ドイツは48個。


34年間で人口2倍に − ブラジル

(30日)ブラジル地理統計院(IBGE)が30日に発表したところでは、ブラジルの総人口は2004年に1億8,200万人に達するはず。1970年当時の人口の2倍である。1950年代に人口増加率は年平均3%だったが、現在は1.44%。減少傾向は今後もつづくが、2050年には総人口は約2億6,000万人予想である。しかし、2062年ころから人口増加ゼロになる予想(エスタード通信)。<


【ブラジル経済情報】 速報 8月26日

Fiesp会長にスカフィ氏当選

(25日)25日に行われたサンパウロ州工業連盟(Fiesp)会長選で、ピバ現会長派の対立候補のパウロ・スカフィ氏が、ピバ会長派候補のクラウジオ・バス氏を破り当選した。しかし、姉妹団体であるサンパウロ州工業センター(Ciesp)会長にはバス氏が当選し、従来、同一会長の下に運営されて来た2団体は、はじめて別々の指導者を持つこととなった。

選挙運動中に非難、応酬が行われて来ただけに、選挙当日のまだ開票結果不明のとき、両候補が手を握り合うポーズの写真がとられ、それが翌日の新聞に報道されたが、分裂が考えられる会員企業界を次期会長がまとめて行くのは楽ではなさそうである。

スカフィ次期会長は、ブラジル繊維工業会(Abit)会長で、連邦政府の社会経済開発審議会のメンバー。政府の高金利政策を批判するアレンカール副大統領(紡績工業のコテミナス社経営)及びその子息と親しい間柄。アルキミン・サンパウロ州知事とも親しい。パラマウント・ランスール相談役(エスタード紙)。


欧州委員会メンバー一新でEU、メルコスール協定合意におくれか

(25日)EU、メルコスールの自由貿易協定向け交渉が当初予定の10月までにまとまる可能性はうすい。ブリュッセル駐在のグラッサ・リマ伯大使の見解である。要因は11月1日に行われる欧州委員会メンバーの交代。このさき、双方は9月13日に衛生検査面で交渉し、ついで20〜25日に最終合意向けの話し合いを試みる予定。10月には欧州委メンバーは事務引継ぎへの準備に追われる。新メンバーらも「交代が差し迫っているなか、現メンバーらによる対メルコスール譲歩は困難」と見る。


インド、ブラジル間交渉進む

(25日)EU、メルコスール交渉は難航するが、インドとブラジルの特恵関税交渉は進む。9月6日にはインド代表がブラジリアに到着、特恵関税交渉妥結に向けブラジル側と話し合う。それぞれが450品目を提示する。


先進諸国の非関税障壁に備え農務省、Sapiシステム打ち出す

(25日)ロドリゲス農相がきょうロンドリーナ市(パラナ−州)で発表予定。世界貿易機関(WTO)の裁定もあり、先進諸国は今後、農産物への補助金の削減や輸入にかける高率関税を下げなければならず、それに代わる非関税障壁を採用するであろう。それは農業者の半奴隷式、あるいは未成年労働者使役、環境保全、肥料や農薬の品種や使用量制限、特定農薬の禁止等であろう。それに備える手段の一つが今回の農牧一貫生産システム(Sapi)である。これは種子から収穫、船積みまでを規制するものである。ロドリゲス農相は、Sapiの普及には現在の農家の“頭の切り替え”が必要という。(26日付けエスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 8月25日

燃料アルコール消費急増 − サンパウロ州で66%増

(24日) 25%だった商品流通サービス税(ICMS)が昨年末12%に引き下げられたサンパウロ州で、燃料アルコールの販売が今年上期に66%増加した(前年同期比。原油庁=ANP調べ)。一方、パラナ−州でもICMSの税率25%が18%に下がったところから燃料販売が同期に48%増加した(全国燃料、潤滑油販売業者組合=Sindicom調べ)。

Sindicom筋によると、ICMS税率が25%のころ、燃料アルコールはサンパウロ州の生産工場から他州へ売られ、その後サンパウロの販売店に回されて来ていた。

なお、リオ州ではICMSが31%のところから、サンパウロ州やパラナ州とは反対に燃料アルコール販売が上期に33.3%落ち込んでいる(25日付けGM紙)。


大サンパウロ都市圏の失業率下がる

(25日) 大サンパウロ都市圏(39郡を包含)における7月の失業率は18.5%に下がった。6月に19.1%だった。サービス部門で7万3000人を雇用し、工業は横ばいだったが、商業は3万5000人解雇した。39郡の失業者人口は184万人と推定される。Seade(サンパウロ州データ−分析システム)とDieese(労組間社会経済調査・統計所)の調べ −エスタード通信―。


きょう銀行員スト

(25日) 一部新聞に、パウリスタ界隈の銀行の開店・始業時間が多少おくれるだろうとの報道だったが、12時になっても開かない。スダメリス銀行のブリガデイロ支店前のピケ隊員は「きょうは1日中閉店。明日は平常に戻る予定」と返事した。イタウー銀行のパウリスタ支店でも同様の返事。銀行員側の要求は、インフレ目減り分6.22%調整と実質17.68%のアップ並びに14ヵ月給料支給等々。現在、ブラジル全国で銀行員人口は40万人。


自動車メーカー、部品を空路輸入

国内部品メーカーの生産が追いつかず、フオルクスワーゲンはブレーキ・デイスクを飛行機で輸入している。いままで輸入は高度技術の部品に限られていたが、ここに来て、さほど付加価値のない部品までが輸入され始めた。ボッシュのシャシ部門担当者は、これ以上注文が増えれば鋳造品も輸入しなければならないという。錬鉄部門では遊休率ゼロに来ている(25日付けバロール紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 8月24日

経済成長には官僚主義排除が必要 − 世銀調べ ー

(23日) 世銀によると、ブラジルは会社設立までに時間がかかる事において世界第5位。従業員を解雇するにあたって支払わされる負担の重さでは世界第4位。また、労働規制のきびしさでは世界で12番目。このようなランクを踏まえ、世銀は、“官僚主義オリンピック”に負ける方向に努力すれば、例えば会社設立手続きを簡略化するだけで、2年間で国内総生産(GDP)がR$136億増える。これに労働法改正や破産プロセス法関連改正を加えれば、さらに年間2.2ポイントパーセントふえると結論づけている(24日付けDC紙)。


ブラジル産品の海外プロモーション奨励策

(23日) ルイス・フルラン通産開発相は23日、サンパウロ市で、ブラジル産品の海外プロモーションを目的の対外送金における所得税免除の恩典付与手続きの簡素化を発表した。同大臣はまた、輸出業務の簡略化を実施することで今年1,000億ドルの輸出を実現したいとものべた。

なお、第3週までに8月の貿易黒字は7億4200万ドルで、今年の黒字累計は200億ドルを突破、206億ドルに達した(24日付けGM紙)。


BNDES、内資の製薬工業を支援

(23日) 社会経済開発銀行(BNDES)は、国内の2製薬工業の設備拡張プロジエクト支援を決定した。金融支援を受けるのはエウロフアルマ(遺伝子関係)で、投資総額2億レアルのうちの約40%融資。他はリビス・フアルマセウチカ(制ガン関係等)で、1,500万ドルを投資して工場を建設中。BNDESは製薬業界の国内企業奨励のために融資ライン「プロフアルマ」を開設した(24日付けバロール紙)。


リオ州工業連盟のビエイラ会長再選、− サンパウロのFiespは明日

リオ州工業連盟(Firjan)の会長選挙結果、ゴウベイア・ビエイラ現会長が再選された。任期は2004年/2007年(GM紙)。一方、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)の会長選挙は明日25日、アベニダ・パウリスタのFiesp本部で行われる。候補者はピバ現会長派のクラウジオ・バス氏と反対派のパウロ・スカフ氏。コラムニストのセルソ・ミング氏は、Fiespが次第に会員のインタレストを守ることが困難になっていきつつある。このため、工業はFiesp参加の企業組合から、他の業界団体、例えば自動車ならAnfavea、基礎工業ならAbdib、機械ならAbimaq、化学ならAbiquim等を新しいチャンネルに求めているとコメントする(24日付けエスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 8月23日

FTA関係情報 − 中智、日韓、日印など

(22日) 日本と韓国の自由貿易協定(FTA)締結向け交渉が23日に開始された。また、23日から29日にかけて、中川経済産業相が経済界代表17人と共にインド、シンガポールを訪問するが、インドとのFTA交渉を発足させる準備と見られる。

一方、エスタード紙によると、南米のチリは中国とFTA交渉を開始する動きである。ブラジルと中国のFTA交渉に先駆けるもので、チリはさらにインド及び日本とのFTA交渉も射程圏内におくといわれる。

ルーラ大統領はさきの訪中で、ブラジルと中国のFTA交渉着手を期待していたが、ブラジリア駐在のジアン・ユアンデ中国大使から出発直前に、ブラジルとのFTA交渉に当面は関心がないとの報告を受けた。中国はアジア地域での2国間貿易協定を優先するというもの。ブラジリア駐在のオズワルド・プシオ・チリ大使は、今週末にも中国との間で合意にいたる旨を述べたとされる。


政府は対伯投資相談室を設けたが

23日付け「エスタード」紙が、日刊経済紙「バロール」の報道として伝えたところによると、ブラジル政府は外国人投資家のための「投資家相談室」を開設した。最初の会合では18社が、外国資本に対する規則変更が行われない事の確認を求めた。また、重税、官僚主義、環境ライセンス取得の困難さ、商標及びパテント登録に要する期間の長さ − 等について不満をのべた。

こう言った不満はすでに外国企業の間で広く知られていることであり、それらの障害が除かれる見込みがなければ投資先を他国に変更することになりかねない。これらの問題の中に一つ、ロウセフ鉱山動力相が抗議した環境ライセンス給付おくれがある。これは政府部内、つまり環境省と鉱山動力省間の問題である。

また、ブラジルで会社を設立する、あるいは閉鎖することの困難さも問題である(複雑な書式や手続き)。法的システムは不必要なほど複雑で、歩みがのろい。今日、判事の判断基準によって社会性、公共性上、条項を無効とされる事もあるところから、ブラジルでは「契約」の効力を、確信をもって言えないほどである。

投資相談室の重要性は認めるが、解決できない点もあろう。解決は規制面、税金面等における改革が行われて始めて可能になろう。


【ブラジル経済情報】 速報 8月19日

Selic金利は16%/年にすえおき

(18日) ブラジル中銀は18日、経済基本金利(Selic)を年16%にすえおくと決定した。目標を上回りそうなインフレをにらんだ決定であり、今後の金利傾向にはふれていない。多くの経済アナリストは、Selic金利が今年末まで下がらないのではないかと見る。

なお、Selic金利動向を見ると、昨年2月20日に26.5%だったのが、6月19日に26%へ下がり、以後7月24日に24.5%へ、8月21日に 22%へ、9月18日に20%へ、10月23日に19%へ、11月20日に17.5%へ、12月17日に16.5%へ漸次引き下げられ、16.5%/年で 越年した。

今年は3月17日に16.25%へ、4月14日に16%へ引き下げられ、以後8月現在まで16%を維持(中銀データ−)。


小売り、6月に前年同月比12.8%アップ

(18日) 6月の小売販売は量的に前年同月比12.8%アップだった。今年1−6月は前年同期比で9.33%アップ。上期販売の内訳を見ると家具、家電製品が29.4%と大きな伸び。つ いで通信、事務機器、情報機器が27.54%、家庭用品及びその他身回品が19.84%、二輪、四輪、同部品類が16.68%、医薬品、化粧品類 10.9%、生地、衣料品、靴7.33%、燃料、潤滑油7.26%、食品、飲み物、タバコ類5.38%、建材0.95%アップ。なお、新聞、雑誌、書籍類、紙類は−1.33%だった。ブラジル地理統計院(IBGE)調べ。なお、今年1−6月(月別)小売動向を前年同月比で見ると下記表通りの伸び。

・1月5.98%

・2月5.02%

・3月11%

・4月10.15%

・5月10.83%

・6月12.8%(エスタード紙)


サントス港湾の順法スト

(18日) サントス港湾従業員の順法ストは3日目に入り、18日には入港貨物船30隻中の10隻は荷役作業ストップ。20隻はノロノロ作業の状態だった。砂糖、肥料、コンテナの順に被害を受けている(GM紙)。


* 訂正とお詫び

17日付け速報で、1年半に及ぶ議会の「バネスパ銀行調査委員会」を「バネスタード銀行調査委員会」に訂正すると共に、関係の方々に深くお詫び申し上げます。編集担当。


【ブラジル経済情報】 速報 8月17日

中銀総裁は“大臣級” −政府が暫定措置令出す

(16日) 上記によってメイレレス中銀総裁がなんらかの罪に問われたばあい、裁くのは連邦最高裁判所のみとなった。これは数ヵ月前から「中銀の自治権」案と共に政府部内で討議されていたものだが、今回、バネスタード銀行の不正対外送金を調べる議会調査委員会(CPI)の調査過程で、メイレレス中銀総裁の名が出て週刊誌に不正として取り上げられたため、政府は暫定措置令の発令を急いだ。パロシ財務相の働きかけにもよる。金融市場は好感を持つが、野党側は国会において強く非難している(バロール紙、GM紙)。


連邦警察が750人を動員、大掛かりなやみドル業者追及

(17日) 1年半に及ぶ議会の「バネスタード銀行調査委員会」(CPI)関連で、不正対外送金容疑者1,700名の銀行口座開示などプライバシー面が侵 害され、銀行エグゼクチブ29名が含まれるなどから、大量1,700人の口座開示は行きすぎとされ、また、その関連情報が外部にもれ、国会議員関係者と名 乗り、「・・・・・・レアル出せば議会調査委員会に出頭しないですむように取り計らう」などを企業家に持ちかける例も見られるところから、CPIつぶしの 工作も見られる(エスタード紙)。

そんな中、17日午前5時から全国でやみドル業者を取り押さえるために連邦警察署員750人を動員する大掛かりな「フアロレイロ作戦」が開始された。りオ、サンパウロ、ベ−ロ・オリゾンテ、カンピーナス、レシフエ、マナウス、ベレン、ジョン・ペソア各市での展開。サンパウロ市だけで230人が出動、午前11時までにやみドル業者90名を逮捕したとされる。目標は200数十名。

とくにBeacon Hill銀行(頭取はグアテマラ人)はマネーロンダリングの最大手。ブラジル、パラグアイ国境の町のフオス・ド・イグアスにあるバネスタード銀行支店、同ニューヨーク支店経由などで4年間にタックス・ヘイブンへ合計300億ドルを持ち出したとされる。Beacon Hillには米当局の調査の手が伸びており、ブラジル側捜査官らに米当局から百万件以上の不正送金関連のデータ−を盛り込んだCDが手渡されている(エスタード通信、フオーリャ・オンライン)。


ドル相場、3レアル以下の2.99へ

(17日) 国民投票におけるチャベス・ベネズエラ大統領の勝利が国際原油価格高騰を抑える、政府のIPI減税が企業に有利等から、4日間連続下げの後、ドル相場は16日にさらに下げ、3.008の引け値。きょう17日は正午過ぎに3レアル割れのR$2.997にきた。政府のメイレレス中銀総裁擁護策もプラス材料とされる。

一方、ボベスパ平均株価は16日の1.69%上昇につづき、17日も1.36%の上げである。


【ブラジル経済情報】 速報 8月16日

チャーベス大統領罷免否決 − ベネズエラ国民投票

(16日) 15日に行われたベネズエラの国民投票の開票結果、チャーベス大統領罷免反対票が、罷免賛成票を上回った。大統領は「民主主義の道を歩み出した」と勝利宣言した。16日のニューヨークにおけるWTI原油先物相場は46ドル91の高値更新後、これを受けて46ドル20まで下がった(エスタード通信、他)。


メルコスール常設仲裁裁判所、加盟国のア、ウ首脳不在の開所式

(13日) メルコスール常設仲裁裁判所の開所式が13日、アスンションで行われたが、出席した首脳はルーラ大統領とパラグアイのニカノール・ドウアルテ大統領だけ。アルゼンチンとウルグアイの大統領は欠席した。ルー ラ大統領は、亜伯経済摩擦が続くおりのことから時宜的イベントとのべたが、数日前に発生したアスンションの1ス−パーの火災事故犠牲者(380名とされ る)に1分間の黙祷をささげたドウアルテ大統領は、「メルコスールは地域的統合の在り方を根本的に問いなおす必要があるのでは」と心配を隠せない(エス タード紙)。


EU、メルコスール交渉、暗礁に乗り上げる

(12日) 10月末までに包括的交渉を合意に持ち込むのが双方の目標だが、ブラジリアで開催中のEU、メルコスールの自由貿易協定向け交渉は12日、セ ンシブルなテーマにおける対立の結果、EU側は「ブリュツセルの指令来ず」をメルコスール側につたえ、交渉は打ち切りとなった。

双 方は、互いに前回交わした提案内容を改め、メルコスール側がサービス、投資、政府調達、工業財貨調節を含めるのに対し、EU側は農産物の対EU市場アクセ スをまとめ再提出の予定だったが、EU側は小出しにし、メルコスール側は小出しでは全体の輪郭がつかめない、交渉できないと突っ張った。

EU側は、メルコスール側がマスコミ相手にさく時間のほうが、交渉相手対応にさく時間よりも長い事にも不満である。9月13日に会議再開予定。双方とも、10月末を最終期限とする目標は変わらないとしている(13日付けエスタード紙)。

一方、16日付けGM紙は、「ブラジルの国内総生産(GDP)の3分の1を占める農牧畜を代表する全国農業連合(CNA)が、EU、メルコスールの交渉決裂は、メルコスールからの年間輸出20億ドル増、72万人の新規雇用創出を不可能にする点を警告している」と報じた。


【ブラジル経済情報】 速報 8月13日

政府、上院にPPP法案の選挙前表決を働きかけ

(12日) 政府及び企業界は、国内のインフラストラクチャ不備が経済発展を妨げると考える。そこから、企業界はインフラ工事の工費(年間200億ドル)のフアイナンスを可能とする政府、民間の合弁事業規制法案PPPの早期成立を希望する。同法案は上期中に下院議会で可決ずみ。

同法案は現在、上院経済委員会(CAE)で審議待ちの状態である。ギード・マンテガ企画相は12日、サルネイ上院議長を訪れ、PPPが10月3日の市長・市議選挙前に上院で可決されるよう働きかけた。企業界はまた、与野党双方に働きかけている。全国工業連合(CNI)は、投資家に保証が約束されるよう上院議会で手直しされることを希望する。

上記200億ドルの内訳はエネルギー55億、原油及び天然ガス65億、運輸40億、上下水道等20億、電気通信20億(各)ドル。

なお、同法案に対して野党側は、選挙前に成立すれば政府側の選挙材料に利用される、と強く反対している(GM紙)。


アテネ・オリンピック、5億レアルのメデイア広告収入

きょう13日開会のアテネ・オリンピック大会で、国内各メデイアの稼ぐ広告収入合計はR$5億レアルと推計される。TVグロボはフオード、ブラデスコ、ネスレ、カイゼル、ビザ5社に売りこみ1億レアルに近い広告費収入。バンデイランテス、スポーツTV、バンジスポーツ、ブラジルESPN各局も実況放映。


日伯新時代 − 「実業のブラジル」誌45周年記念講演会

いまの中国、韓国とブラジルの関係は、日伯関係の「何時か来た道」(1070年代)を思わせる。違うのは、70年代は日本からの一方的な投資だったのが、04年はブラジル企業が中国へ投資している点。ア ジアの中の日本、南米の中のブラジルと位置づけること、東アジア統合が現実のものになるかも知れない等々、堀坂上智大学教授、日本経済新聞アメリカ社の和 田社長2講師による変化しつつあるBRICS(ブラジル、中国、ロシア、インド、南ア)の一員のブラジルに関する講演。

鈴木社長は、「創立の数年後、ピンチに追い込まれていたところを会議所事務局の専務にすえてもらい後藤さん(現会議所顧問)に助けて頂いた。おかげで45周年を迎えることが出来た」と往時を回想(8月12日夜)。


【ブラジル経済情報】 速報 8月12日

NY原油価格45ドルを突破

(12日) ニューヨーク原油先物相場(9月渡し)が12日午前、一時バレルあたり45ドル50をつけた。正午には45ドル35で取り引きされていた。今回の原油相場高騰が長引けば、国際経済に影響する。


米・中経済鈍化の対伯影響

(11日) 米国は4.5%の経済成長を保つが、急速な景気過熱によるインフレ懸念から金利を引き上げれば、ブラジルの外資調達金利が上がり金融面でマイナス。ブラジルの対米輸出は2003年第1四半期に全輸出の25%だったのが現在は20%に落ちている。米経済成長が鈍化すれば、ブラジルの対米輸出はさらに下がる。ちなみに今年1−7月の対米輸出額は108億ドルだが、これは前年同期比10億ドル減である。

一方、中国は10%近い経済成長だが、同国政府はインフレ懸念から景気冷やしにかかった。鉱工業生産は7月に15.5%の伸びだったが、これは過去12ヵ月における最低である。今年2月の23.2%をピークに漸減しているもの。政府は金利引き上げの方向にあるが、元のドルリンクを変えることには抵抗している。ブラジルの対中輸出は今年1−7月に33億ドル、前年同期比8億ドル増で、このあたりは対米輸出減と異なる。ちなみに2003年度の対中輸出は45億ドルで、今年は80億ドル予想である。景気鈍化があってもブラジルの対中輸出にはさほど影響はないのではないか。また、中国の景気鈍化は、アジア諸国を道連れにする。各国大手投資家の対中直接投資総額は年間500億ドルだが、今後は減るであろう。ブラジル政府が上手に手を打てば、その直接投資をブラジルに呼び込むことが可能であろう(12日付けエスタード紙)。


伯パルマラット和議入り、今後債権銀行団の管理下入リか

(10日) サンパウロの第29民事裁は10日、さきに破綻した伊パルマラットのブラジル子会社、ブラジル・パルマラット商工とパルマラット・パルチシパソンエスの和議入りを認めた。前者は約3億3000万レアル、後者は9億5000万レアルの負債を抱える。両社は今後24ヵ月かけて債務を返済する。1年後に40%、2年後に60%。パルマラット側は再建案を17の銀行に提示しているが、合意にいたれば、銀行団のコントロール下に入る(エスタード紙)。


バリグ航空に政府の梃入れ?

(11日) バリグ航空を救え、はルーラ大統領だが、推定60億レアルの負債を抱える同社に対して社会経済開発銀行(BNDES)、財務省、法務省、大統領官房による再建案が練られている。政府は資本参加しないというが、BNDESが1億5000万ドル注入するとの噂が流れている。


【ブラジル経済情報】 速報 8月11日

今年7月のインフレは0.91%

(11日) 7月の広範囲消費者物価指数(IPCA。政府の指定インフレ指数)は、0.91%で、6月の0.71%を上回った。これによって今年1−7月のインフレは4.42%となり、過去12ヵ月累計は6.81%。さる7月は昨年4月いらいの高率だった。

原因は電気3.67%、固定電話4.88%など公共料金、及びガソリン2.46%、燃料アルコール2.61%の値上がり。

一方、全国消費者物価指数(INPC)も7月は0.73%の上昇。今年1−7月に3.89%、過去12ヵ月は6.3%。ブラジル地理統計院(IBGE)発表。

なお、国際原油価格が瞬間風速でバレルあたり45ドルを突破した状況下の10日、原油価格が高止まりするようであれば、今週末、あるいは来週中にもペトロブラスがガソリンを10%前後値上げするという情報が市場に流れた。


ブラジル、2005年にも原油輸入ゼロに

(10日) 2006年央予定を2005年内に早めるもの。ペトロブラスが公式発表したわけではないが、「会社首脳部のコンセンサス」とはギリエルメ・エストレラ生産開発担当取締役談。輸入をゼロとするには日量185万バレルの生産を要求される。今年は日量生産125万バレルで年末を迎える予想。なお、ブラジルの原油輸入量は全消費量の10%程度(エスタード紙)。


亜伯貿易摩擦の背景

(10日) 伯産繊維品、履物、冷蔵庫等の輸入に対して障壁を設けるアルゼンチンが今度はペトロブラスを非難した。ペトロブラスがアルゼンチン国内で政府の認可もなく燃料を値上げした、同社はパタゴニア州内での天然ガス輸送網拡張工事においてリーダーシップが欠如しているというものでアモリン外相に伝えた。

同じメルコスール加入国同士のあつれきの背景には、アルゼンチン企業の競争力不足もさることながら、ブラジルとケンカすることでキルシネル大統領は点数をかせげる(支持率低下を防ぐ)。対外債務デフオルト下のアルゼンチンは、IMFとの関係が悪化している。IMFと事を構えるうえでブラジルを自陣営に引き入れる必要があるが、その手に乗らないブラジルを挑発しつづけている。(エスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 8月10日

ルーラ政府に38.2%がポジチブの評価

(10日) インスチツト・センススが全国運輸連合(CNT)の依頼によって行った7月初めの世論調査の結果、ルーラ政府にポジチブの評価を与える回答率が、前回、6月の29.4%から38.2%に上昇した。ルーラ大統領の実行力評価も前回の54.1%が今回58.1%にあがった。

調査元のセンススでは、上昇はしたがまだ同傾向が今後も続くという確信は持てない、とコメントしている。今回の上昇は景気回復に負うところが大きいとされる(エスタード通信)。


サンパウロ市長選、3候補中の支持率トップはセーラ候補

(9日) ジアリオ・ド・コメルシオ紙の求めによって、インスチツトGPPがさる7、8日に行った世論調査によると、トップはセーラ候補(ブラジル民主社会党=PSDB)で支持率28%(前回の7月末調査では24.5%)。ついで現市長のマルタ候補が26.4%(労働者党=PT、同24.2%)。マルフィ候補は21.9%(進歩党=PP、同22.4%)。セーラ、マルタ両候補は伸びたが、マルフィ候補は支持率低下。また、エルンジナ候補(ブラジル社会党=PSB)は6.1%が5.5%へ下がった(ジアリオ・ド・コメルシオ紙)。


ブラジル、近く中国へ大豆輸入の新規制を求める

(9日) ブラジルは近く、米国、アルゼンチン同様に大豆輸入における衛生検査に関する新規制(国際水準の)適用を要請する。3ヵ月前に発生したブラジル産大豆の輸入禁止事件の再発を事前に防止したいとするもの。

ロドリゲス農相は、10月央に開始する来農年度大豆の生産コストがアップし、これに米国の増産が原因の国際大豆相場低下が追い討ちをかける事がブラジル農家の栽培意欲を減退させることが心配という。国際相場下向きのため新クロップ大豆の先物買いが減っている(10日付けバロール紙)。


IPI減税は石油、土建、紙パ、アグリビジネス、鉱業にプラス

9日の連邦官報に政府が先週末に発表した減税法が掲載された。機械類の工業製品税(IPI)3.5%を2%に引き下げるもの。アグリビジネス用機器、自動車、トラクター、クレーン、鉱業用機器、その他に対して減税(10日付けGM紙)。なお、これで設備拡張に踏み切るメーカーも出て来るとされる。


【ブラジル経済情報】 速報 8月09日

貿易、8月第1週は10億ドル近い黒字

(9日) 8月第1週は、輸出21億600万ドル、輸入11億6900万ドルで9億3700万ドルの黒字だった。前年同期比で、輸出は3.1%増だが輸入は6.1%減(いずれも1日平均比較)。これによって今年1月〜8月第1週までの黒字累計は194億6600万ドルとなった(昨年同期は127億3000万ドル)

なお、7月は輸出89億9000万ドル、輸入55億1000万ドルで、34億8000万ドルの黒字だった。(通産開発省貿易局=Secex発表)。


自動車工業、新規雇用に踏み切る

(7日) 9日付け「エスタード」紙は、自動車業界が長引いた不況から脱出、7月に1298人を雇用した。今年1〜7月に合計6000人の新規雇用。7月雇用内容はフオードが最も多く1700人、ついでフオルクスワーゲン1100人、GM1000人、フイアット620人、メルセデス・ベンツ600人等と報じている。


広告業界、今年上期に15〜20%の売上増

(7日) 広告部門は年間50億ドル市場。メイオ・エ・メンサージエン誌によると、今年上期は15〜20%の売上増だった。過去3年間、消費者の購買力低下、失業増、小売伸び悩みに引っ張られた同業界では、内資の広告会社の多くが外資系と提携している。そんな中で独自生きぬく数少ない内資のタレント社(グロボTVの「今年のプロ賞」を獲得)のジュリオ・リベイロ社主は、グロバリゼーションで、10年前に1500レアルだったセルラー電話が現在120レアルで購入できる。女性の職場進出で家庭の収入が増えるなどの変化が見られる。企業の社会的責任も問われはじめている。価値観の変化であり、企業側は「ポスト消費者社会」が到来した事に目を向ける必要があるとコメントしている(8日付けエスタード紙)。


ブラジル独自のデジタルTVシステム研究は時間のロス

(8日) 政府は、ブラジルが米国のATSC、EUのDVB、日本のISDBに比較できるような独自のデジタルTV技術開発のために6500万レアルの資金を投じ、11の省及び数十の大学を動かして奨励するが、時間のロス。独自の技術でなくモデルなら納得できるが。(以上はブラジル契約テレビ協会=ABTA)のアレシャンドレ・アネンベルグ会長のコメント。なお、政府は2006年のデジタルTV設置をもくろむ(エスタード紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 8月06日

メイレレス中銀総裁の立場困難に

週刊誌の脱税暴露記事でメイレレス中銀総裁の立場が危い。ベジア誌のインターネットは、総裁が5万ドルをやみドル業者に送金したと報じている。このため金融市場がゆれ、サンパウロの平均株価が5日、3.82%下げた(エスタード紙)。6日の午後4時現在は1%近くにもどしている。 

一方、イストエー誌は総裁が評価額4万レアルの所有不動産を1レアルと税務署に申告していると報じた。老齢年金生活者の1弁護士から0.01レアルで購入したもので、リオ州バソウラの登記所に登録されている(フオリア・オンライン)。<


鉱工業生産、6月に13%アップ

6月の国内鉱工業生産は前年同月比13%、前月比0.5%アップ。4ヵ月連続の伸びで、今年上期は7.7%アップである

繊維、機械、化粧品、自動車が伸び、飲み物、基礎金属、紙パが落ちている。ブラジル地理統計院(IBGE)が6日に発表。なお、エスタード紙は今年の自動車生産が210万台に達するという自動車業界団体Anfaveaの予想を報じている。


全農のアルコール調査団来伯

日本の全農がブラジルへアルコールのガソリン混入事情調査団を派遣した。一行は5日、農務省砂糖アルコール局のブレッサン局長と2時間にわたって話し合った。全農は燃料販売店5000軒を所有している。 ブラジル側は日本が18億リットルの市場を開くと期待している(エスタード)。


米系銀行がブラジル事業拡大へ

アルゼンチン危機いらいラテンアメリカでの事業が縮小気味だった米系銀行がブラジルでの事業拡大に乗り出した。バンクボストン(バンク・オブ・アメリカ銀行系)は中小企業のための支店網を拡張する計画で450名を新たに雇い入れる。

シチバンクは4年間現状維持だったが、今年末までに12の新支店開設予定。シチフィナンシアルは29店舗開設予定。米系ではないが、ABNアムロ銀行のブラジルのリテール部門が好調、昨年は同行全世界でのリテール収入の13.3%を占めた(バロール紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 8月04日

原油ショック、NY相場44ドル34セントへ

4日のNY原油先物相場は1バレルあたり44.34ドルをつけ、83年の取引開始いらいの最高値を更新した。石油輸出国機構(OPEC)に増産能力が欠ける、ロシアの大手ユコスの原油減産実施、ベネズエラの政治問題等が懸念材料。OPECは目いっぱい、日量2,750万バレルを生産し、生産枠の2,600万バレルを上回っている。相場動向についてアナリスト筋は、上昇傾向で45〜50ドルの価格帯で高止まりすると予測する。

ブラジル国内ではペトロブラスのジョゼ・ドウトラ社長が、「1バレルあたり40ドルから45ドルの高値が続けばガソリンの値上げに踏み切らざるを得ない」との意見である。有力コンサルタント筋では、原油相場が9月末までに40ドルを割らなければ、中銀は経済基本金利(Selic)の1ポイント・パーセント引き上げに迫られると予測する(各紙)。


燃料アルコール10%〜11%の値上がり

(3日) ペトロブラスはガソリン値上げをせずに耐えているが、燃料アルコール業者らは値上げに踏み切った。原油庁(ANP)は、国内のアルコール1リットルの小売価格は7月に平均3.9%値上げと発表しているが、サンパウロではそれをはるかに上回り、店によっては10%〜11%も値上している。サンパウロ州燃料小売店組合(Sincopetro)によると、州内の小売店総数は8,400軒、来週中に全店が値上げ見込み(エスタード紙)。


工業界は新たな値上げを迫られる

国内需要の高まり、原油など農産物以外の国際商品高が原因で鉄鋼、自動車、紙パ、石油化学、電気電子工業などは、新たな値上げを迫られる。クラビンは近日中にボール箱を値上げ予定。ペトロブラスはナフサ値上げを発表した。5〜8%になる見こみ。家電メーカーは量販店へ6〜8%値上げを示唆した。自動車ではフオルクスワーゲンが販売店に平均1.5%値上げの価格リストを渡した(4日付けバロール紙)。<


アルゼンチンで“土地なし市民”運動激化

ブラジルの“土地なし農民”運動(MST)は、一向におさまらず他人の土地侵入事件が後を絶たない。地権が明確でない農場、非生産の広大農地が狙われる。地主が法的に訴えて追放すれば次ぎの別の農場に不法侵入する。最近では規模が大きくなり次第に政治力をつけはじめた。アルゼンチンの場合は、失業者らが集団化したもので、ピケテイロと呼ばれる。MSTのように過激的スローガンを掲げる。カジノを占拠し1万ペソを手にして退散のケースあり(バロール紙)。


【ブラジル経済情報】 速報 8月03日

サンパウロ市の7月の小売販売伸びる

(2日) サンパウロ商業協会(ACSP)調べによる7月の銀行小切手決済の小売販売、割賦販売指数は共に伸びた。前者が4.7%、後者が6.9%(いずれも前年同月比)の伸び。今年1−7月では1.7%と7%の伸びである。8月8日の「父の日」の盛上りを期待している。下表は販売関連数字。出所:ACSPのガストン・ビジガル調査研究所(3日付けDC紙)。

アイテム 04年7月 3年7月 増減%
不払い手形登記件数 70,627 101,491 −30.4
破産申請件数 224 612 −63.4
破産宣告件数 14 67 −79.1
和議申請件数 3 8 (3/8)
和議認可件数 3
割賦販売信用調査依頼件数(SCPC) 1.680,588 1,572,408 6.9
小切手信用調査依頼件数(Usecheque) 1,949,987 1,862,412 4.7

 


自動車販売、7月は約18%の伸び

(2日) 7月の自動車販売は13万3,900台で、前年同月比約18%増であった。さる6月比では2.5%増。今年1−7月累計は85万7,000台で前年同期比12.5%増。販売好調からメーカーは乗用車価格を1.5%〜2%値上げした(各紙)。


金融収入はPIS/Cofins免除

(2日) 去る30日の連邦官報は、金融収入のPIS及びCofinsの税率9.25%をゼロとする政令5,164/04号を掲載した。ただし、この税率ゼロは同上を累加的システムで納める企業に対してであって、推定利益で所得税を納める企業には適用されない。昨日から実施。1有力コンサルタントは、自動車メーカーや電気通信会社は税率ゼロの権利ありと見る。(3日付けバロール紙)。


警官が17時間に1人死亡

3日付けフオーリャ・デ・サンパウロ紙によると、治安悪化でブラジルでは17時間に1人の割合で警官、軍警兵が死亡する。本職以外の勤務として警備に雇われ、襲撃に反抗して射殺されるケースが多い。今年1月から7月15日までに全国で合計281人が死亡した。ゲリラ相手に戦うコロンビアの警官隊の65人をはるかに上回る。


【ブラジル経済情報】 速報 8月02日

WTOの新ラウンド交渉、決裂は回避された

(1日) ジュネーブで開催されていた世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(新ラウンド)は、31日に新ルールでともかくも合意した。交渉決裂は今後の世界経済の安定成長に影響しかねないとの配慮から。先進諸国と開発途上諸国との間には米欧の補助金削減が焦点で、米国の綿花生産者への補助の大幅削減、EUの巨額輸出補助金廃止もきまったが、削減・廃止の具体的な進め方は今後の交渉に委ねられる。日本のコメは重要品目として例外扱いとなる。 今回の会議でG−20グループの台頭が注目された。なかでも農業分野交渉におけるブラジルのアモリン外相の活躍が目立った。

しかし、2日付けバロール紙は、先週末のWTO交渉合意の結果としてブラジルの得るところは実際のところまだ明確にはつかめない。ブラジルをはじめとする開発途上諸国が、米国に対して他の農業分野に補助金を維持できるような譲歩をしたため、と報じている。


ルーラ大統領、きょう中小企業支援計画発表予定 − サ州でも中小支援

(2日) 同計画によると、国内の11工業団地の企業が支援を受ける。最初は輸出向けプロジエクトへの金融支援で、合計2000万レアルの予算を確保する。

一方、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)は、州政府及び中小企業支援機関のSebraeと共に世銀から1000万ドルの融資を取りつけ、これを60の工業集団に転貸する計画で交渉。上院議会の承認が必要で、この下期に審議見込み(GM紙)。


電力部門に新ルール

ルーラ大統領、ジルマ・ロウセフ鉱山動力相による新ルールが30日に発表された。国内景気回復が顕著なところから、年経済成長が4.5%にいたっても電力不足による大停電が発生することがないように、新たな規制を設けたもの。電力競売において配電業者はコンソーシアムを組み、最安価格で購入する。その最初の競売は今年11月か12月に行われる予定。一方、業界における電力料金焦げ付きが頭の痛いところだが、電力供給側は未払いの場合、消費者でなく住所を対象に供給を中断することが許される。

現在2000−2002年に入札で決定した36の水力発電プロジエクトのうち26が未着手のまま。新規制に対してのコメントは、「これに手がつけられるかは今後に待たなければならない。だが、我々の要望が盛り込まれたので、以前のモデルよりもよくなった(Abrage=ブラジル発電会社協会のフラビオ・ネイバ会長談)」。また、「3メガワット以上の電力消費者は今後、電圧に関係なく自由になった。規制がはずされたわけで、これは投資家の関心を呼ぶ」とコメント(デルタ電力販売のリスボア専務談)。31日付けエスタード紙)。

2004年下期業種別部会長懇談会

ブラジル日本商工会議所総務委員会(浅賀委員長)及び企画戦略委員会(多田委員長)共催の「2004年下期の業種 別部会長懇談会」は、8月5日午後3時~6時30分、安田保険講堂で開催された。浅賀委員長司会の下、11部会の部会長、あるいは副部会長それぞれによ る、「ブラジル経済2004年度上期回顧と下期展望」についての発表。

個別テーマとして 「ルーラ政権の政策・方針による影響・課題、FTA問題、中国・アジア関連、部会内の個別業種に絞った課題等々に関する具体的・実体的な見解」にも触れた が、昨年の不況からの景況回復が2、3を除き多くの業種において顕著な半面、PIS、 Cofins増税が各業種に、税制恩典廃止がとくにマナウスの企業に影響していることが印象づけられ、政府当局に対して善処方を働きかける必要性のある事 を痛感させられた。また、質疑応答も活発に行われた。当日の出席者、各部会代表の発表者は次の通り。

  • 司会の言葉 浅賀総務委員長


    浅賀総務委員長

    前回同様この「部会長懇談会」は、私共の総務委員会と企画戦略委員会の共催です。ここから吸い上げた問題を今後の会議所活動に反映させて行きたいと言うこと から、両委員会の共催とさせて頂きました。要領は皆さんご承知のように、一つの部会の持ち時間は15分です。前半は5つの部会に発表していただき、コー ヒーブレイクをはさんで後半は6部会、1つの部会は一応15分。なるべくその時間の範囲内でやって頂き、目安としてはご説明を10分程度、その後各部会ご とに質疑応答の時間を設けてございます。8分ぐらいたったところで、「そろそろまとめに入って下さい」という意味での合図をさせて頂いて、10分程度で一 度話を締めくくり、ついで「質疑応答」という手順でやってまいりたいと思います。

    部会のご説明に入る前に田中会頭のほうからご挨拶を頂いて、そ れから各部会の説明に入りたいと思いますが、会場は禁煙ですので、催された方は外の決められております喫煙場所で、ご懸念なくブカブカ吸って頂きたい。こ こでは禁煙ということで改めてお願いします。それでは会頭、よろしくお願いいたします。

     

     

  • 会頭挨拶 田中会頭


    田中会頭

    経済は成長路線に乗ったが先進諸国及びBRICSの動向に要注意

    田中会頭 そ れでは簡単にご挨拶させて頂きます。本日は、当会議所のメインイベントである「業種別部会長懇談会」にご多忙中にも関わらず、多数ご出席頂き、まことに有 難うございました。とくに石田総領事以下の総領事館の皆様、ブラジリアからわざわざお越し頂いた大使館の笹本一等書記官に厚くお礼申し上げます。この懇談 会は1970年代に開始され、約30年の歴史を持つ行事で、年初と年央の2回、ブラジル経済の回顧と展望を行っております。今回「は2004年上期の回顧 と下期の展望」を行うことになっています。近年、「開かれた商工会議所」の方針に則り、会員以外の一般の方々にも自由に参加していただき、日本語からポル トガル語への同時通訳も用意しております。

    国民多数の期待を集めて誕生したルーラ政権は1 年半経過しましたが、経済の面ではまさに辛抱の期間であったと言うことが出来ると思います。前政権末期から再燃傾向にあったインフレを抑制し、年金改革な どの構造改革など"負の遺産"を整理するため、持続的経済成長を図るという公約を一時的に犠牲にする厳しい引き締め政策を余儀なくされました
    高金利政策の維持、マイナス成長、失業増加などに対する党内、政府内、労使双方からの攻撃を受け、パロッチ蔵相、メイレーレス中銀総裁は四面楚歌の状態に陥りましたが、ルーラ大統領の経済スタッフに対する信頼は失われませんでした。
    昨年後半から回復を始めたブラジル経済は、今年に入ってから一段と力強さを加え、レアル・プラン以来10年ぶりとも、あるいは「ブラジル経済の奇跡」いらい30年ぶりともいわれる成長路線に乗ったという意見もあります。

    しかし、今日の世界経済はグローバル化しておりますので、ほぼ同時並行的な回復傾向にある米国、日本などの先進国やブリックス(BRICS*)と呼ばれる諸国の動向はもちろんのこと、近年影響力を強めている地政学的リスクに対する警戒も必要であると思われます。
    終わりになりますが、立派な会場を提供して下さいました安田保険、本懇談会担当の総務、企画戦略の各委員会や各部会を始め、事務局の皆さんの努力、ご協力にお礼を述べて、私の挨拶を終わりたいと思います。
    *BRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国など)。

     

     

  • コンサルタント部会 桜井コンサルタント部会長


    桜井コンサルタント部会長

    新しい商工会議所に脱皮しよう

    桜井 コンサルタント部会長の桜井です。本年度からコンサルタント部会は、コンサルタント部会にふさわしい何らかの提言を行うことにしております。今回は、「いかにブラジル日本商工会議所をより一層活性化させるか」についてお話しさせて頂きたいと思います。
    ご承知の通り、日本とブラジルの経済関係はここ十数年来低迷の一途を辿ってきております。ではどちらが悪いかと言いますと、両方とも悪いんですが、更に突 き詰めていきますと、私は日本側のほうにより責任があると思います。その一例として、ブラジル政府の人もよく言いますが、ルーラ政権以降、ブラジルから6 名の大臣が日本に行っています。しかし日本からは一人も大臣が来ていません。この例に代表されるように日本側に責任があるんじゃないかと思っています。

    但し、ここにきて、両国の関係がかなりの変化を示しつつあります。一つは日本とブラジルの経済が非常に良くなって来たことからであります。2番目は BRICS議論により、ブラジルがいま世界的に注目され、日本でも注目を集めていることであります。 第3番目は、ブラジル側、日本側双方から両国の関係 を正しく評価しようという新しい動きが出ていることです。第4番目はいまアウキミン・サンパウロ州知事が日本に行っていますが、今後、小泉総理の来伯と か、ルーラ大統領の訪日とか予定され、要人の往来も盛んになるだろうと言うことです。
    従いまして、今年末から来年にかけて日伯両国の関係が非常 に緊密化して、我々も皆様方も全て忙しくなるんじゃないかと思います。こういう時期に一度、商工会議所のあり方に関わる抜本的な問題点を洗い出し、新しい 日伯経済関係の動きに合致した新しい商工会議所に脱皮する必要があるというのが我々の認識であります。

    提案内容は、これからお話しすることを受けまして、商工会議所内に「商工会議所活性化特別タスクフォース」、または、「ワーキンググループ」を設置して、 9月から11月まで3ヵ月くらいかけて、新しい日伯関係にふさわしい商工会議所のあり方というのを議論し、その結果を来年度以降の商工会議所の活動に反映 させるということです。

    問題提起6つのポイント
    人材関連コミテイ新設、委員会、部会の見直し等

    そ れで、問題提起として、6つのポイントがあります。商工会議所の目的、組織、人、金、会議所の運営プログラム、各種課題の6つであります。最初の目的につ いては、定款にいろいろ書いてありますが、どちらかというと親睦に重視重点がおかれている。このことは、全世界の日本商工会議所永遠の課題ですが、今後は 目的に添った形で、もう少し親睦から目的オリエンティッドにすることが必要かと思います。
    組織については、事務局がありますが、事務局の業務の増大にどのように対処するか、あるいは現在の組織図が適当であるか、事務局にふさわしい権限が与えられているかとか、あるいは事務局長の権限をもっと強化すべきではないかとか、そういうポイントがあると思います。
    常任理事会については、いま月例の会議では昼食会の前に1時間とか1時間15分位話をしていますが、ルーティンの問題の討議が多い。どうあるべきかについてもう少し時間をかけて話をすべきだと考えます。

    現在13の委員会があります。これも現在の委員会のままでいいのか、あるいは新しい時代に即した形で委員会を新たに設置するとか、あるいは現状の委員会の数が適当かどうかとか、それぞれの委員会がしっかり機能を果たしているかという分析も必要ではないかと思います。
    他の欧米の商工会議所を見ていますと、例えば「人材関連のコミテイ」、これ英独仏米の全部にあって、日本商工会議所にはありません。今後の商工会議所の発 展等を考えますと、例えば企業の社会的責任関連、ブラジルコスト関連、FTA関連、投資促進の関連の委員会の設置を検討する時期に来ています。その他、ブ ラジルにある他の5つの日系商工会議所とかメルコスルの日本商工会議所との関係とか、そういった連絡業務も必要だし、いま27万人日本にいますデカセギの 方々の企業化支援等も必要ではないかと考えます。

    部会の活動と機能については、これも会 員の増減があるので、現在の部会の数、名称でいいのか、あるいは独自にまた新しく設置するかどうか、そういうことも検討する必要があるかと思います。将来 の発展を考えますと、例えばIT部会、個人会員部会、デカセギビジネス部会とか、あるいはいま運輸サービス部会に入っていますが観光というのが非常に重要 ですので、例えば観光を一つの部会にするとかも考えられるのではないかと思います。

    次に 「人」の問題。会議所の運営がうまく機能するかはまさにこれ「人」にかかっています。会議所の仕事はこれ全くボランティアで、仕事の合間を縫ってみんな一 生懸命頑張ることになります。それゆえに更に「やる気」と「ボランティア精神」に富んだ理事,常任理事が望まれるということです。それでここでは、例えば 理事、常任理事の選出方法が今のままでいいのかとか、あるいはその機能、役割がちゃんと明確になっているかも議論する必要があるのかなと思います。
    それから部会長の選出もいろいろあり、持ち回りというのが結構多い。持ち回りでも全然構わないと思いますが、その場合でも、やはり腹をくくり、ジタバタしないでしっかり頑張って頂くことも必要と思います。

    会員数も増やそう

    それから「お金」、予算の問題ですが、予算の問題で一番重要なのは会員をいかに増やすかです。米国商工会議所の場合5560社が会員になっています。ドイ ツ商工会議所は1000社、それからフランスは700社ということです。日本商工会議所の場合、まあ280社プラス16個人で300弱です。従って、やは り会員数を増やすのが財政基盤を恭子にする上で非常に重要な要因かと思います。

    ではどう すか?未加入の日本進出企業にやはり積極的に働きかける、コロニアの企業に対して積極的に勧誘する、日本に進出しているブラジルの企業を勧誘する、あるい は日本と取引をしているブラジル企業に働きかける、あるいは、個人企業、個人会員を勧誘する、デカセギビジネスの方々にも入って頂く、それから海外メン バーを誘致することも必要です。
    それからもう一つは広告収入、スポンサー探し、共催活動の積極的推進という方法もあります。これらの点について は、どちらかというと商工会議所はあまり積極的ではないが、今後はやはり広告収入とかスポンサー探し、それから、共催活動等をやって極力コストを削減し、  それによって、いろんなイベントを楽しく有意義なものにする事がやはり必要かなと思います。

    次に会議所の運営・各種プログラムですが、例えばいま総会はどちらかというと昼食会になっている。昼食会では飲んだり食ったりしますので、総会はやはり ちゃんと座ってやるのが必要でないかと思います。年に2回ぐらい、そこで新年度のプログラムとか、去年何をやったとか、中間報告とかをやることが必要かと 思います。月例昼食会は、今度アウキミンさんが来ますが、日本商工会議所の重要性から考えますと、やはり年に1、2 回は、その連邦政府の大臣が来るというかたちでやることが必要かなと思います。
    年次報告書ですが、他の商工会議所はハードカバーで割合しっかり した年次報告書を出しています。日本商工会議所はハードカバーではなくて、コンピューターで出しているが、やはり、将来的にはちゃんとした、ハードカバー で出して、1年間何をやったか、今後何をするかを明確に打ち出すことが必要だと思います。
    それから、いろいろな事態に応じて、臨機応変にサブコミテイも設け、そこで、どんどん新たなことをやって行く。サブコミテイによって隠れた人材等をたくさん発掘できると思います。

    商工会議所の国際化を目指そう

    次に「各種課題」ですが、第1のポイントは、会議所の国際化です。これは永遠の課題ですが、会議所を発展させる上で避けて通れない問題ですので、相当真剣に取り組む必要があると思います。
    2番目のポイントは提言能力の向上です。ブラジルでビジネスをする上で皆さん方が困っておられるのにブラジルコストの問題があります。ビザの発給、通関, インフラ,税金,治安等々いろんな問題です。ブラジル政府は往々にして頭だけで考えるという性格があるので、不適切な政策が出てきた場合、スピーディかつ 適確に対応する必要があります。従って、この問題には専任の常任委員を一人設けるぐらいの心づもりでやらないと、うまく行かないと思います。

    それから企業の社会的責任活動への取り組みがあります。これは日本でも相当話題になっています。ブラジルは私もいろいろと調査しましたが、この分野では、 非常に面白い国であります。いろいろなプログラムをやっており、バラエティに富んでいます。アメリカ商工会議所は 82年より「ECO賞」を設けていますし、フランス商工会議所も、つい3年前ぐらいにLIF賞というのを設け、優れた社会的責任活動を行っている企業に対 し、表彰している。ドイツ商工会議所も熱心です。日本商工会議所もそろそろこの問題に関して頭に入れておいた方がいい時期に来ています。場合によっては、 常任委員会を作るぐらいの力の入れ具合にしても決しておかしくないと思います。

    4番目は 全員参加に関連することです、田中会頭のご意見で「開かれた会議所、全員参加の会議所」がスローガンになり、昨年度に比較して、だいぶ良くなっていると思 いますが、やはりまだ「全員参加」から遠いという感じです。従いまして、一度会員企業にアンケート調査をして、参加の状況とか、どのようにすれば参加して もらえるのか、あるいは参加しやすくなるのかをアンケートする。それを受けて、そのコメントを受け入れられるようなメカニズムをつくることが望まれます。 ホームページへの投稿、会議所機関誌の発行とか、いろんな形があると思います。一例として、この7月に EMBRAERの工場見学がありました。これは非常に人気がありましたが、こういった形のプログラムをどんどん増やして行くのが必要かと思います。

    最後に、今後の課題ですが、長年会議所に対して、功労のあった人を表彰するとか、そういう特別賞のようなものを設けることが必要かと思います。それから、 商工会議所に入会したからと言って必ずしも商売に結びつくことにはならないと思いますが、お互いに紹介し合うというメカニズムが必要です。とりわけ昼食会 の時は、その前に「カクテル」の時間がありますので、あの人、この人とちょっと知り合いになりたいという人がいれば、事務局で紹介する世話するというメカ ニズムが必要と思います。

    東京にブラジル商工会議所OB会をつくろう

    東 京の日本商工会議所は、あまり海外の商工会議所のためにやってくれませんが、海外の商工会議所が団結してもっとちゃんと真面目にやってよと言う必要がある と思います。それからもう一つは2008年に、「移民100周年記念」というのがあります。これは、コロニアの方々が主人公であるのは言うまでもないこと ですが、我々も同じ船に乗っておりますし、商工会議所の会員企業もコロニアの方々が今まで一生懸命やってこられたことによる恩恵を相当受けていることもあ りますので、そのオール日本という発想でもう少し、どういう形であれ、このイベントに我々としては乗った方がいいんじゃないかと思います。2008年には 経済も良くなって、日伯関係も良くなっていると思いますので、何もしないと将来において禍根を残すことがあり得ると思います。

    商工会議所の文化的活動は比較的少ないのが現状です、サンパウロは非常にエキサイティングな都市なので、商工会議所としても、文化的な活動を取り入れるべ きだろうと思います。駐在員夫人の方々がいま、「ブラジルを知る会」とか、いろいろやっておられますが、駐在員夫人、あるいは会議所の会員企業の夫人も何 らかの形で参加できるような形のプログラムも将来的に必要かなと思います。
    それから更に、ブラジリアの日本大使館からは、今回は笹本さんにいらして頂いていますが、経済担当班の方が少なくとも年に4回、3カ月に1回くらい来ていただくともっとコミュニケーションが良くなると思います。

    最後に「ブラジルの商工会議所OB会」っていうのも東京に設立すればいいと思います。いま、それぞれの駐在時代の人々が集まって、いろいろやっていますが、それをちゃんとした形のOB会を設立すればいいと思います。
    以上ですが、提案致しましたこととか、あるいは新しいことを含め、9月から11月にかけて会議所内にワーキンググループ等をつくって頂きまして、引き続き議論して一番合理的かつ、よい会議所の運営が出来るようにすることを提案したいと思います。

    時間との関わり合いで、全部を話すことは出来ませんので、お帰りの時に、そのフルテキストを事務局にお願いして渡して貰うようにしていますので、皆さん方ご一読して頂いて、どんどんこの会議所活性化に参加して頂くことをお願いしたいと思います。

    司会 あ りがとうございました。なかなか悩ましい問題を正攻法でバッサリと斬られた感じもしますけれども、これはこの場で質疑するというよりも、桜井さんのほうか ら9月以降、タスクフォースをつくってとのご提言もあり、この問題は取り上げ方を一度、常任理事会等に計って進め方を考えたいと思います。皆さんもこれま でボランティアで会議所の活動をいろいろ時間的な制約など難しいなかでやって来られたと思うんですが、今回桜井さんからのご提言を受けて会議所としても、 もう一段脱皮するような方向で議論に載せたいと思います。特段なんかご質問があればお受けしたいと思いますが、いかがですか。はい、どうぞ。

    桜井部会長の提案は常任理事会で検討したい

    田中  ご提言ありがとうございました。ご承知のように工藤会頭時代に一昨年、組織とそれに関連して定款の大改革をやりましたが、まだ十分でないということは、そ の通りだと思います。たまたま桜井さんの新しい目で見られて、ご自分の経験なんかも含めてご提言頂きましたので、早い機会に常任理事会等で検討していく と、そういうふうにしたいと思っております。その節はご協力をよろしくお願い致します。

     

     

  • コンサルタント部会(レポート)

    いかにブラジル日本商工会議所をより一層活性化させるか

     

    「提言」 04年8月5日

    1.はじめに

    日本とブラジルの経済関係は、この10数年、貿易分野でも投資分野でも低調に推移してきた。日本企業のブラジルに対する関心も、ブラジル企業の日本に対する 関心も低いものであった。しかし、ここにきてかなり情勢が変化しつつある。まず日本経済が低迷から脱し、昨年は、2.7%の成長を遂げ、今年はさらに高い 成長が予想されており、ブラジル経済も、昨年のマイナス成長から今年は、高成長が見込まれている。第2にBRICS議 論により、ブラジルが世界的に注目されるようになったこともあり、日本でも大きな関心を集めつつある、第3に、ブラジル側からも日本側からも両国の関係を 正しく評価しようとする新しい動きが出てきていること等の背景から、両国の関係が変化する兆しが見えており、近い将来より活発化することが予想される。一 方ブラジル日本商工会議所は、1940年に正式に設立され、今年で64年を迎える。本年度より本会議所は、「開かれた会議所、チャレンジする会議所、全員 参加の会議所」という3つのテーマのもとに変化しつつあるが、他の欧米商工会議所の理念や活動に比較すると改善すべきことが多い。またブラジルの変化や現 政権、次期政権のテーマに沿った明確な中長期のビジョンの策定や具体的な会議所の方針の策定も望まれるところである。

    一度抜本的に問題点を洗い出し、新しい日伯経済関係の動きに合致した新しい商工会議所に脱皮することを提案する。下記の項目にしたがって問題提起を行なう。

    2.提案

    今回の問題提起を受けて、商工会議所内に「商工会議所活性化特別タスクフォース」を設置し、9月から11月まで3ヶ月をかけて、「新しい日伯関係にふさわしい会議所のあり方」を議論し提言する。提言結果を来年度事業に反映させることを提案する。

    3.問題提起

    「商工会議所の目的」

    いずれの外国商工会議所の目的もその目的とするところは、多かれ少なかれ同様であるが、実態面において、日本商工会議所の場合、会員間の親睦に重点が置 かれがちである。今後は、少しずつ本来の会議所の目的に添って事業運営をめざすべきであろう。ちなみに当商工会議所の目的は、下記の4点であるが、定款に 定める9項目の内に親睦がある。

    ① 日伯貿易の促進ならびに両国に関係のある商工業の奨励および助長

    ② 会員の商工業活動に関する相互啓発

    ③ 日伯政府ならびに関係機関に対する会員の商工業活動に関する総合的意見の開陳

    ④ 会員の商工業活動より生ずる諸問題に関する友誼的解決の仲介

    「組織」

    1)事務局

    ① 増大する事務局業務にどのように対処するか

    ② 事務局の組織(図)は、時代のニーズにあっているか

    ③ 事務局の役割は、極めて重要であるが、それにふさわしい権限が与えられているか

    ④ 事務局員の給与等は適正かどうか

    ⑤ 事務局業務が過多になっていないか

    ⑥ 事務局長の権限を強化する必要はないのか

    2)常任理事会

    ① 現状は、月例昼食会の前の1時間~1時間15分程度で、報告事項が中心。会議所のあり方等につき十分時間をかけて議論されていない。

    ② 常任委員会で決定すること、事務局が決定できること、各委員会・部会が決定できることが必ずしも明確ではない。

    ③ 月に1回常任委員会が開かれるが、今後即断が必要なことが増加することが予想される。そこで必要に応じ、持ち回り決裁、臨時会議の開催等フレキシブルに対応できるようにする。

    3)委員会の機能と活動

    ① 現在の委員会のままでいいのか、それとも新しい時代に応じた委員会を新たに設置すべきか

    ② 委員会の数はどうか。委員会の業務量にバラツキはないか

    ③ 役割を果たしていない委員会はないのか、それぞれの分析

    ④ 米 英仏独の商工会議所の委員会は別紙資料のとおりであるが、4つの会議所全部にあり、日本の会議所にないコミテイは、「人材関連コミテイ」。その他今後の日 本会議所の発展を考える上で、設置の可能性を検討すべきと思われるものは次のとおり。「企業の社会的責任関連」、「ブラジルコスト関連」、「FTA関連」、「投資促進関連」、「その他ブラジルにある5つの日本商工会議所、メルコスルにある日本商工会議所との連絡関連」、「出稼ぎ企業化支援関連」等

    4)部会の機能と活動

    ① 会員数の増減によって、部会の数、部会の業種は変化すべきであるが、現在の部会名・数は適当かどうか

    ② 会員数からみて、成立たない部会はないかどうか(例 建設・不動産)

    ③ 将来の産業の動向や会議所の新規会員獲得の面からみて、設置を検討したほうがよいと思われる分野はないのか(例 IT、個人会員、出稼ぎビジネス等)観光については、現在運輸サービス部会に所属しているが、将来的には独立させるべきであろう。

    ④ 部会活動は、少数の例外を除き、部会員間の懇親に重点が置かれがちであるが、商工会議所の本来の目的にそった活動を展開すべきではないか

    「人」

    会議所がうまく機能するかどうかは、ひとえに「人」にかかっている。会議所の理事や専任理事はすべてボランテイアであり、それぞれの多忙な業務の合間を縫って活動することになる。すべての役員は、「やる気」と「ボランテイア精神」に富んでいなければならない。

    1)現在の会議所会員数は、280社、個人会員数、16名である。その中から理事として60名が立候補し、各部会から選出されるという方法になっているが、この方法で良いかどうか。理事の役割を再認識し、定款に定める任務と権限を認識すべきではないか。

    2)専任(常任)理事は、理事の中から選出され、現在会頭、副会頭4名、専任理事、8名の合計、13名となっている。委員会の業務と密接に関連するが、専任理事数及び業務の分担は適切かどうか。

    3)専任(常任)理事の立候補にあたっては、会議所で何を推進・実行したいのかを総会や会議所レポート等の場で発表し、任期終了時にその結果を広く知らせるというメカニズムが必要ではないのか。

    4)専任(常任)理事が同一業種(同一部会)からの企業に偏っていないか。

    5)部会長の選出は、立候補形式であるが、持ち回りの場合、引き受けたからには、しっかり任務を果たすという姿勢が必要。

    「金」

    会議所の活動をする上で、「人」と並んで重要なのは、「金」、「予算」である。

    1)会員をいかに増やすか

    米国商工会議所の5,560社(ブラジル企業70%、米国企業20%、外国企業10%)にはとても及ぶべくもないが、会員数を増やすことは、会議所の活性化につながるし、発言力の強化に影響する。今後会員数を増やすにはどうすればいいのであろうか?

    ① 未加入の日本進出企業に対し積極的に働きかけ勧誘する。

    ② コロニアの企業に対し積極的に勧誘する。

    ③ 日本に進出しているブラジル企業を勧誘する。

    ④ 日本とビジネスしているブラジル企業に働きかける。

    ⑤ 個人企業、個人会員に呼びかける。最近、個人企業の会員が増加しつつあるが、これら個人会員の今までに培われた能力、ノウハウにも着目すべき。

    ⑥ 出稼ぎビジネスを展開する企業に呼びかける。

    ⑦ 海外メンバーも勧誘する

    ⑧ 会員増強のための専任理事を設ける。

    ⑨ 会費に見合ったサービスを提供しているかを常に考える。

    2)広告収入、スポンサー探し、共催活動の積極的推進

    ① 今後、会議所が発行する各種媒体、ホームページについては、他の外国商工会議所並に広告のスポンサー探しを行なうことが必要である。

    ② 会議所が行なう各種イベントについてもスポンサーを見つけ、極力コストを削減するようにする。

    ③ 各種イベント、セミナー・シンポジウムなどのオファーがあれば、内容を分析し、有意義と判断すれば、積極的に共催をすることによって、会議所のプログラムをより有意義なもの、楽しいものにする。

    ④ 他の外国商工会議所は、無料による一般サービスと有料によるサービスの2つがある、将来的には、有料サービスも検討すべきである。

    3)活動予算の査定

    本年度から、各委員会、各部会からの予算要求方式が導入された。これは、会議所の活性化に大いに役立つ措置である。今後とも継続し、各委員会、各部 会のやる気を引き出させるような査定を心がけるべきであろう。また年度途中で中間見直しを行い、必要に応じ再配分することも望まれる。

    「会議所の運営・各種プログラム」

    1)総会

    ① 現在では、総会と昼食会が一緒になっているような印象だが、総会は、年2回程度食事スタイルではなく、会議方式でやるべきではないのか?そして、全会員が必要に応じて発言できるようにすべきでないのか?

    ② 年2回の総会によって、年初に新年度のプログラム、予算の採択、前年度の活動・予算報告の承認等を議論し、もう1回の総会では、中間報告をするというのが必要である。総会では、各専任委員、部会長が活動報告を行なう。

    2)月例昼食会

    ① 昼食会には、毎年、必ず開発商工大臣、大蔵大臣クラス、サンパウロ州知事クラス、日本からの大臣、文化人、要人等を招けるように力をつけるべきである。日本商工会議所の重要性からみて十分可能と思われる。

    ② そのためには、月例昼食会の日程などもフレキシブルに考える必要があろう。

    3)部会長懇談会

    この懇談会は、産業別の動向がわかるので非常に良い。今後とも続けるべきである。

    4)年次報告書の作成

    他の外国商工会議所は、総じて立派なハードカバーの年次報告書(ANNUAL REPORT)を発行している。会員名簿と一緒になっているものが多い。1年間に会議所として何をやったのかを知ることができるし、会員企業の概要も知ることができる。さらに新規会員の勧誘にも役立てることができる。日本会議所でも検討すべきである。

    5)必要に応じてサブコミテイ(小委員会)の設置

    会議所の会員企業は、多くの業種をカバーしているし、会員企業の人材も豊富である。したがって、各委員会及び各部会の必要に応じ、サブコミテイをフレキシブルにつくり、隠れた人材をどんどん発掘・活用する。

    「各種課題」

    1)会議所の国際化をめざして

    国際化は、全世界の日本(人)商工会議所の永遠の課題であるが、会議所を発展させる上で、避けて通れない問題である。

    ① 会員数を増やそうとすれば、ブラジル企業、コロニア企業、外国企業に働きかけを行なう必要がある。

    ② 総会、月例会、食事会での使用言語、通訳等の問題にどう対処するのか。

    ③ 会議所の国際化担当専任理事設置の必要性を検討する。

    2)会議所の提言能力の向上

    ブラジルでビジネスする上で、ブラジルコストの問題が常に浮上する。ビザの発給、通関に伴う問題、複雑な行政手続きの問題、複雑かつ高い税制、社会負 担金、治安、インフラの整備、ルールの不透明性等々企業活動にとり極めて密接な関係のある政策措置等が採用され、会員企業の立場を擁護、主張する必要性が 出てきた場合、意見を集約し、ブラジル政府当局に提言する機会も増加することが予想される。従来、日本商工会議所は、諸外国の会議所に比して、提言活動は 少なかったように思われる。タイミングを逸した提言は、提言にならないこともあり、今後迅速かつ的確に提言できる体制を整える必要がある。この分野を担当 する専任理事の設置も検討すべきである。

    現在大使館が商工会議所に提案している「メルコスルとの具体的改善策についての協議の場」も会議所にとって、提言の場を増やす良い機会ととらえることができよう。

    3)企業の社会的責任活動への取り組み

    日本でも企業の社会的責任やグッド・コーポレート・シチズンといったことが注目され、大企業を中心として企業活動の一環として位置付けられるように なっている。ブラジルでもこの分野での活動は、非常に積極的で、プログラムのバラエテイをみても大いに学ぶべき点が多い。サンパウロの米国商工会議所も 1982年より、ECO賞(企業-コミュニテイ賞)を設立して優秀企業を表彰しているし、ドイツ商 工会議所も力を入れだしている。ブラジルに進出している日本企業もこの問題につきより一層関心を持ち、実践に努める必要が出てこよう。会議所としても、組 織的に取り組む時期に来ている。専任理事を設けることや優秀なプログラムを実施した企業に対し、表彰する制度も検討に値する。

    4)全員参加の会議所をめざして

    本年度より、会議所のスローガンとして、「全員参加の会議所」というのがある。本年度は、昨年度に比較し、少しずつ会議所の活動が活発化しているが、全 員参加からは程遠い感がある。少しでも多くの会員に会議所活動に参加してもらうには下記のような点に留意すべきであろう。

    ① 一度、会員企業(人)にアンケートをし、参加の状況、どのようにすればもっと参加できるか、参加しやすくなるかを問い合わせる。

    ② 会員の意見、コメントを受け入れられるようなメカニズムをつくる。(ホームページへの投稿、会議所機関誌の発行と寄稿等)

    ③ 参加しやすいプログラム、有意義なプログラムをより多く実施する。(7月に開催されたEMBRAER見学は、大成功であった)各委員会、各部会で年最低1つのプログラムを実施し、会議所全員に参加を呼びかける。

    5)その他今後の課題

    ① 長年会議所に対し、功労のあった人に贈る特別賞のようなものをつくる。

    ② 1年間で最も会議所活動に貢献のあった会員企業を表彰する制度をつくる。

    ③ 商 工会議所に入会したからと言って、必ずしも商売に結びつくことはないが、それでも会員間の商売に繋がるような機会をできるだけ多くつくり、積極的にお互い を紹介し合ったり、アポイントを取り合えるような雰囲気に持っていくべきである。これによって、新規会員を増加させることができよう。

    ④ 東京の日本商工会議所に働きかけ、もっと世界中に存在する日本(人)商工会議所と連携を深め、場合によっては、支援するメカニズムをつくるように働きかける。

    ⑤ 2008 年の「移民100周年」はコロニアが主人公であることは言うまでもないが、同じ船に乗るものとして、またコロニアの方々が築いてきた過去の業績によって大 いに恩恵を受けている会議所としても、オール日本という発想を持って、もっと協力・支援する必要性がないのか。2008年に向けて、会議所としてのプログ ラムを考えなくてもいいのか。2008年には、日伯関係は、間違いなく好転していると思われるので、何もしないと禍根を残すことになろう。

    ⑥ サ ンパウロは世界的にみてあらゆる意味でエキサイテイングな都市であるが、治安の問題、サンパウロには何も見るべきものはないといった先入観によって、その 魅力を理解する駐在員等の数は思ったほどには多くない。そこで会議所としても文化的な面での活動も展開することが望ましい。駐在地を理解することは、仕事 をする上でも大いに役立つ。

    ⑦ 現在会議所の活動の中で、夫人や家族が参加できる機会は、忘年会、大旅行を除き殆どない。駐在夫人間の「ブラジルを知る会」は、活発に行動しているが、会議所としても夫人、家族も参加できるようなプログラムを増加させることが望まれる。

    ⑧ サンパウロ総領事館との関係は密接であるが、ブラジリアの日本大使館とのコンタクトの強化が望まれる。年に最低3回くらいは、ブラジリアから月例昼食会等に出席していただくことが望まれる。

    ⑨ 新しいブラジルを紹介するためのビデオの作成

    ⑩ ブラジル日本商工会議所OB会の設立

    それぞれの駐在時代の仲間が集まり、年に数回集まるというケースは良く見られるが、すべての時代の会員を対象としたOB会は存在しない。設立の検討が望まれる。

    以上

     

    主要外国商工会議所の委員会

    「米国商工会議所の委員会」(2003年年鑑)

    1. ビジネス問題コミテイ
    2. アグロビジネスコミテイ
    3. 貿易コミテイ
    4. テクノロジーの権利コミテイ
    5. E-ビジネスコミテイ
    6. エネルギーコミテイ
    7. 財務コミテイ
    8. クライアント関係コミテイ
    9. 投資コミテイ
    10. ヤング・エグセクテイブコミテイ
    11. ロジステイックコミテイ
    12. 環境コミテイ
    13. サービスの質的向上コミテイ
    14. 人材コミテイ
    15. リスク・安全コミテイ
    16. 健康コミテイ
    17. 技術コミテイ
    18. テレコミュニケーションコミテイ
    19. 建設ビジネスコミテイ
    20. 経済コミテイ
    21. マーケテイングコミテイ
    22. ラテンアメリカ・ビジネスコミテイ
    23. 事務局関係コミテイ
    24. FTAA タスクフォース
    25. IT コミテイ
    26. Advocacy コミテイ
    27. 27.? ?ブラジル政治情勢分析コミテイ
    28. カーボン・トレード問題外国商工会議所間関係コミテイ
    29. 情報化政策コミテイ
    30. 企業問題コミテイ
    31. 人材開発担当デイレクター、副会頭グループ

    その他FTAAの3つのサブコミテイ等10のサブコミテイがある

    「ドイツ商工会議所の委員会」(2003)

    1. 常設委員会
      ブラジル全国
      1. 全ブラジルドイツ商工会議所審議会
      2. メルコスル域内ドイツ商工会議所審議会
      3. ブラジル・ドイツ会議
      4. メルコスル
      5. 教育・雇用

      サンパウロ

      1. 経済
      2. 中小企業
      3. ソーシャル・コミュニケーション
    2. 特別委員会
      1. 会員
      2. 労働・社会
      3. 学校教育
      4. 薬品工業
      5. ブラジルコスト
      6. 犯罪防止
      7. 定款
      8. 会議所イベント
    3. 経験交流グループ
      1. 機械工業
      2. 人材開発
      3. 権利と税金
      4. 経済
      5. 情報化
      6. コミュニケーション
      7. 環境
      8. 食品
    4. コンタクト
      1. 支所(パラナ、ミナスジェライス)
      2. 事務所(サンタカタリ-ナ、バイア)
      3. 支部(カンピーナス)
      4. ジュニア・チェンバー
      5. ユーロ会議所
      6. 社会文化研究所
      7. 技術研究所
      8. その他学校、病院等13のコンタクト先

    「フランス商工会議所の委員会」(2003)

    1. 財務委員会
    2. インターネット委員会
    3. 法務委員会
    4. ビジネス委員会
    5. 環境委員会
    6. 社会プロジェクト委員会
    7. 人材委員会
    8. 観光委員会
    9. 欧州・ユーロチエンバー関係

    「英国商工会議所の委員会」(2002/2003DIRECTORY)

    1. 法務・税務コミテイ
    2. 環境・技術コミテイ
    3. 人材コミテイ
    4. CEO朝食会コミテイ
    5. 産業・インターネット・コミテイ
    6. 貿易コミテイ
    7. 倫理コミテイ
    8. 財務経済問題コミテイ
    9. 観光コミテイ

     

    コンサルタント部会の活動報告

    (2004年度上半期)

    1) セミナーの開催

    ① 2月12日(木) 「ブラジルにおける見本市ビジネスの動向」

    ② 2月3日(水)  「メルコスール・セミナー」(貿易部会との共催)

    ③ 2月3日(水)  「第1回CDMセミナー」 (貿易部会との共催)

    ④ 3月19日(金) 「法律セミナー」(法律委員会との共催)

    ⑤ 4月16日(金) 「第2回CDMセミナー」 (貿易部会との共催)

    ⑥ 5月12日(水) 「企業の社会的責任プログラム・セミナー」

    (貿易部会との共催)

    ⑦ 5月20日(木) 「企業の監査セミナー」

    ⑧ 6月22日(火) 「メルコスルとFTA」(日伯委員会、貿易部会との共催)

    「今後の予定」

    ⑨ 8月20日(金)  「ブラジルでいかに企業PRを行うか」セミナー

    講師 遠山景孝氏

    ⑩ 9月3日(金)   「ブラジルで損しない方法」セミナー」

    講師 山下晃明氏

    ⑪ 10月       「ブラジルの政治事情」 講師 日本大使館政務担当

    ⑫ 9月から11月にかけて、サンパウロ州政府の協力を得て、IT都市間ピーナスと

    州内アグロビジネスの視察を予定

    2) ブラジル進出企業現地化調査(進捗状況)

    7月下旬  調査項目の最終案作成

    7月末   アンケート調査を会員企業に送付

    8月20日 アンケート回収

    9月中   アンケートまとめ

    10月初め 発表

    コンサルタント部会提言に対する2004年10月の常任理事会での回答

    見ずらければ、ここからダウンロードして下さい

  • 金融部会 村田金融副部会長


    村田金融副部会長

    マクロ経済好調だが、政治面の脆弱性見せた半年

    村田 ブ ラデスコ銀行の村田です。 今日は部会長の三井住友保険の角田さん、それから副部会長の野崎さんがいらっしゃいませんので、私が代わりに発表させて頂きま す。金融部会は、銀行セクターと保険セクターを分けて発表しておりますが、それと同時にマクロ経済に関しても少しお話しをして行きたいと思います。

    まず2004年の上期の回顧ということで、ルーラ政権は前政権を踏襲して、比較的順調な滑り出しを切りましたけれども2年目に入り、会頭がおっしゃったよ うにマクロの数字が非常に好調な半面、政治面等の脆弱性を少し見せた半年だったというふうに大きく括って認識しております。

    貿易収支は非常に好調に始まり、1月中旬はブラジルのいわゆるリスク指標であるEMBIも+400bpを割れたというところで始まりましたが、ルーラ政権 誕生初の政治スキャンダル、あのジニス官房補佐官の収賄等もありまして、更に米国金利の引き上げの観測、アメリカのインフレの再燃懸念、国際テロ懸念、原 油高とこういう要因もありまして、5月にはEMBIは+800bp、2倍ほどまで上昇し為替は売られてR$3.2 まで落ち続けました。現段階、足元は落ち着いてきてEMBIも6月末の時点で+641bp、為替もR$3.1で終了しております。
    政治面では、 ビンゴ営業禁止の暫定令の否決や最低賃金交渉とかで、上院と下院でいろいろと難航したのに見られるように、ルーラの国会運営能力の低下が確認された時期も ありました。それは昨年12月に84%であった支持率が、6月には71%まで低下したことにその現象が見て取れると思います。

    特筆すべきは上期150億ドルの貿易黒字

    そ うはいうものの、最低賃金も最終的には可決しましたし、破産法、これは上院で承認され、いま下院に戻っているところですが、国会運営能力はそうはいっても 依然、きちんと維持しているところも見逃せないと思います。経済全般は確実によくなって、ファーストクオーターは2003年度の第4クオーター比 1.6%、前年同期比2.7%の成長と予想以上の伸びを示して来ました。小売販売も全体の数字としては順調に伸びております。さらに特筆すべきは貿易収支 でして、輸出は433億ドル、輸入は283億ドルと言うことで収支は150億ドルのプラスで半年を終えています。失業率も景気回復等により足元改善が見込 まれております。

    収益を大きく伸ばした銀行業界

    そ う言うことで、マクロの大きな経済面、政治面を見てきましたが、銀行業界全般を簡単にお話ししますと、ファーストクオーターの民間の上位3行平均利益が前 年同期比で22%の増加、それからバンコ・ド・ブラジルに28.5%の増加と言うことで、銀行業界は前年比の数字を見れば、非常によい数字をあげておりま す。足元ですね、ブラデスコ、イタウーも速報で6月の決算を出しておりますが、そちらのほうも大体この数字の範囲内で収益は増加しております。Selic 金利ですが、これは2003年に26.5%から16.5%へ大きく下げてきたが、2004年度の前半は引き下げが非常に限定的だと言えます。16.5%か ら 16%までしか下がっていないのは、途中でいろいろアメリカの金利引き上げだとかと言うタービュレンスもあって、大きな引き下げが出来なかったということ です。為替は先ほど申し上げましたようにR$2.8で始まって3.2までつけて、6月末3.11ということです。

    貸し出しスプレッド縮小、競争激化の下期予想

    Selic金利は年末15~16%/年、為替は同R$3.10~3.20予想

    下期の展望ですが、引き続きアメリカの金利動向が大きく影響すると考えており、こちらの動向を注視する必要があると思います。政治面では10月に地方選 挙、市長選挙が行われますので、こちらはルーラ政権の次の大統領選、2006年の大統領選の前哨戦という意味で非常に大切なポイントだと見ております。先 ほど、前半でのべました低下傾向のルーラ政権の支持率は、足元の景気が回復している、失業率もそれに伴って回復するのではないか、それに伴い所得の改善も 来るという見込みもあって、下期はやや回復するのではないかと考えられております。

    貿易収支は、おそらく前年の248億ドルの貿易黒字を大幅に上回って、270億ドルの黒字を積み上げると見ておりますが、大豆取引問題に代表されますように、中国向けの輸出の不安、ブラジル牛の口てい疫問題などいくつかの注視していくポイントもあるかと思います。
    経済成長率は今年3.5%を見込んでおります。引き続き好調な輸出、内需回復というところが牽引車になると思われます。

    直接投資は5月までの累計で33億ドルと非常に低いんですが、6月にはルーラ大統領がニューヨークで投資家向けの会合を実施するなど努力も重ねており、下期には回復が見込まれ100億ドル、110億ドル程度の数字まで上げるのでないかと見る向きもあります。

    銀行業界に関しましては、金利が低下することにより、いわゆる企業取引の貸し出しに企業や個人の貸し出しに向けなければいけない事もあり、貸し出しスプ レッドの減少、それから競争の激化が顕在化してくると思われます。個人消費者のローンを各行とも伸ばすという風に制約をしていますが、このあたりどのぐら い伸びてくるか、個人のですね、足元の回復にもよるかと思いますが、ここは一つ注目ポイントだと思います。
    我々いつもですね、各銀行四行で12月末の為替と金利の予測をしております。12月の末は、3行が個別とは申しませんが3行がR$3.10での着地、1行が3.20での着地というアンケートをまとめております。
    金利に関しましては1行が15%、もう1行が15.5%、16%ちょうどが2行ということで、まあ、15から16%が金利のゾーンだと各行は見ています。

    保険料は上期に全体で拡大

    下期は収益環境が厳しくなる見通し

    そ れでは、足早に来ましたけれども、保険のほうを簡単にご説明したいと思います。保険業界のほうは収入保険料が、これはVGBL(運用型年金保険)を除いた 数字ですが、全体で10.4%の増加と市場は拡大傾向です。中身を見ますと、自動車保険が12.2%、それから人保険、これは生命保険プラス傷害保険とい うのが13.3%と増加しております。自動車保険におきましては全体の保険料の44%、人保険は26%を占め、この部分が大きく牽引しております。地域別 にもサンパウロが50.7%、リオが 11.6%、ミナス・ジェライス州が6.9%とこのいわゆる市場マーケットの規模も、地域別の規模も前年比そこそこ変わらずに来ており、従って地域によっ て大きく増えたということはなく、均一的に全国的に市場を拡大していると見ております。

    収益性の大項目である損害率、こちらは60.9%と2.2%の改善をしております。一方、中身を見ますと、自動車保険では1.8%の悪化。強盗や盗難事故 件数が改善しないことに、プラス価格競争が激化していると言うことで損害率が悪化しております。それから保険業界でも大切な運用益は0.6%の減少と、こ れは市場金利が下がって来たということで影響を受けております。

    下期の展望は、引 き続き市場は拡大の傾向にあります。ただ、市場金利が低下してくることが大体読めておりますので、価格競争が一服しまして、今後、保険料水準が見直しにな る動きも出て来るのではないかと見ております。強盗や盗難、保険金詐欺については抜本的な対策が見当たらないと言うことや、足元の経費はインフレに応じて 増加して行く部分もあり、保険業界の収益環境は下期に向かいましては、非常に厳しいものになって行くと見ております。以上でございます。

    司会 ありがとうございました。非常に広い範囲を駆け足でご説明頂きましたが、皆さん一番ご興味があるお金の話ですんで、ご質問がありましたらどうぞ。例年、ここの村田さんの所は神様しか分からない領域についてもよく質問が出るところですが(笑い)。はい、どうぞ。

    田中 いま言われた金利が15から16%というのは年末?

    村田 はい、あの年末のSelic*予測金利です。

    金岡 (ブラジル伊藤忠)  い ま一番ホットな話題であります、中銀の総裁、それからバンコ・ド・ブラジルの総裁が海外に不正な口座を持っていると報じられ、ルーラ大統領は一生懸命それ を抑えようしているようですが、これからどういう風に展開しそうですか? なかなか予測は難しいと思うのですが、コメント頂ければ幸甚です。

    中銀総裁の脱税暴露記事を注視

    インフレは先行き上方修正可能

    村田 こ れはマーケットが求めたのか、ガバメントが求めたのか、メディアがあれしたのか、一寸ことの発端は分かりませんが、そこに対する対応がですね、中銀として もきちんとして行かないとマーケットがまた不安になると思います。 中銀自体は金融監督庁として単独で、きちんと、まあ、オートノミィを与えるというのが パロッチの当初の意見でしたから、その中でどう解決して行くかっていうのを非常に、逆に我々もよく見ていきたいと思います。
    残念ながら月曜日に 行われた中銀総裁とのランチでは、一方的に中銀総裁が話しまくって、そのまま帰ってしまいましたので、「どうなるの?」という質問をするひまがありません でですね、銀行を中心とした昼食会もあったんですが、そこでも聞けずじまいでして、非常にまとまらない答えですが、あの、よくこの問題は皆さん見ておかれ た方がいい、というのが結論なのかなと思います。

    司会 ありがとうございました。それ以上でもそれ以下でもないって言うなかなか難しい質問だったと思います。はい、どうぞ。

    大前(ブラジル三井物産) た だ今、経済指標は概ね良好だとのご説明がありましたが、その中で、インフレ率については政府の当初の予想より高いものになりそうだということ、また、経済 成長率についても、むしろご指摘の3.5%よりもかなり上方修正されるのではとの意見が多いと理解しております。その辺についてどうお考えになりますか?

    村田 こ れを取りまとめている時期からすると、その後刻々と状況が変わり確かに足元の経済は非常に良くなっております。6月末時点で締めて、7月中旬に我々会合し た時点ではこの数字で読んでいましたが、若干、経済成長は、このままのペースで行けば消費も非常に伸びるという予想がありますので、上方修正される可能性 が高いと思います。
    インフレも予定より一寸上がるというような動きもあると思いますが、いま足元の予測とか持って来ていないのでお答えできません。 すいません。

    *Selic=経済基本金利

  • 金融部会(レポート)

    「2004年度上期の回顧と2004年度下期の展望」(案)

    1.2004年度上期の回顧

    銀行業界

    前政権の政策を踏襲して国際信用を回復し、順調なスタートを切ったルーラ政権であったが、政権2年目となる2004年の上期は、マクロ経済の確実な良化を確認しつつも、改めてその脆弱性を認識する半年となった。

    昨年の好調な貿易収支等の発表に伴い、1月中旬には対外的なブラジルリスクの指標となるEMBI+は400bp割れとなり、C-bondも100セント以上の値をつけた。こうした好環境のもと、連邦政府の他、CVRDが民間企業としては初となる30年物の債券の発行にも成功した。

    然しながら、このような安定した状況は長くは続かず、カーニバル前に発覚したルーラ政権初の政治スキャンダル(ジ ニス官房補佐官の収賄)に加え、米国金利の早期引き上げ観測、インフレの再燃懸念により、カントリーリスクの悪化に拍車をかけることとなった。更に、中国 の投資抑制政策、中東情勢や国際テロ懸念、原油価格の高騰によって、1月には400bp割れまで改善していたEMBI+が5月には2倍の水準となる 800bpまで悪化し、為替も3.2レアルまで後退した。

    その後、予想以上に好調な結果となった第1四半期の国内総生産、新記録となった5月の貿易収支、最低賃金が与党案で決着したこと等を好感し、市場は落ち着きを取り戻し、EMBI+641p、3.11レアルで上期を終えている。

    政治面では、年金/税制改革といった重要な政治課題があった昨年と比べ、今年はルーラ政権の政治手腕が試される機会は少ないと考えられていた。

    然しながら、ビンゴ営業禁止暫定礼の否決、最低賃金交渉の難航に見られるように、ルーラ政権の国会運営能力の低下が確認されることとなった。この背景には、昨年から続く景気不振、雇用の不足等に対するPT党内外の不満が蓄積されてきたことが大きな要因となった。また、政治スキャンダルによってクリーンなイメージが傷つけられたこともあり、ルーラ政権の支持率は昨年12月の84%から6月には71%まで低下することとなった。

    但し、結局最低賃金が紆余曲折の末とはいえ与党案で決着したことや破産法案が可決したことからも、ルーラ政権の国会運営能力は陰りがあるとは言え依然として維持されていると考えられる。

    経済全般は昨年に引き続き確実に良化していることを確認することとなった。第1四半期の国内総生産は昨年の第4四半期比1.6%、昨年第1四半期比2.7%の成長と、予想以上の伸びを示し、その後も鉱工業生産、自動車の生産/販売等の景気回復のニュースが相次いでいる。また、小売販売も6ヶ月連続で拡大している。

    特筆すべき事項は貿易収支であろう。ルーラ政権が経済成長の重要な施策として輸出拡大を位置付けていることは明確である。上期にはメルコスルとEUとの自由貿易協定、FTAA交渉の他にも、中国・インド・アラブ諸国に大々的なミッションを引き連れて訪問し、輸出の拡大を推進しようと画策しており、今後の更なる輸出拡大が期待される。

    上期の貿易収支は、輸入が内需の回復もあり昨年同期比23%の上昇となる283億ドルとなったものの、膨大な中国の需要やアルゼンチンの需要回復に加え、米国の狂牛病問題やアジアの鳥インフルエンザ問題にも後押しされ輸出が過去最高の433億ドルを記録したことから、貿易収支も150億ドルの記録的な黒字を計上している。

    懸念される事項としては、高い失業率、実質所得の減少が挙げられるが、景気の回復に伴い改善が見込まれている。

    銀行業界では、年当初には低迷する需要により貸出が伸び悩んだことに加え、特にトレードファイナンス向けの潤沢な調達資金があり、金利収入の低下を余儀なくされた。然しながら、手数料収入と支出の削減により、第1四半期は好決算が相次いだ。民間3大銀行は第1四半期に平均22%の純利益の増加を記録し、Banco do Brasilも28.5%の増加を記録した。

    また、各行とも業容と規模の拡張を計画しており、中小スーパー、商店、小売業者との提携により、リテール業務の拡大を視野に入れている。

    2003 年度に26.5%から16.5%まで引き下げられていたSELIC金利であるが、上期の引き下げは限定的なものとなった。インフレ再燃の懸念から、 SELIC金利は1月、2月は据え置かれ、3月に0.25%の引き下げに転じたものの、4月の0.25%引き下げの後は、レアル安/原油価格の高騰等に伴 うインフレ上昇の懸念が根強く、5月、 6月は再び据え置かれることとなった。この結果、年初比0.5%の引き下げとなる16%で上期を終えることとなった。

    為替相場に関しては、年初2.8レアル台でスタートしたものの、冒頭に述べたように、カントリーリスクの悪化に伴い一時3.2レアルまで下落し、その後のカントリーリスクの改善や好調な貿易収支に支えられ若干押し戻したものの、3.11レアルで6月末を迎えることとなった。

    2.2004年度下期の展望

    2004年度下期は、6月に0.25%引き上げられた米国金利の動向を注視しつつ、原油や食料、卸売物価等に見られるインフレ上昇の懸念を押さえ込み、どこまで好調な景気を維持/促進し、失業率/所得の改善を図れるかが注目される。

    政治面では2006年の大統領選の前哨戦とも言われている10月の市長選挙が最大の関心事であり、選挙直前の各党、各候補者の動向に注目いたしたい。また、低下傾向にあるルーラ政権の支持率に関しては、景気回復に伴う失業率/所得の改善等によって、下期には相応の回復が見込まれる。

    貿易収支は、内需回復による輸入の増加が見込まれているものの、過去最高の貿易黒字となった昨年の248億ドルを超える270億ドル程度の黒字が見込まれている。但し、大豆引取り問題に代表される中国向輸出の不安や、ブラジル産牛肉の口諦疫問題等、動向を注視する必要があろう。

    また、経済成長率は、引き続き好調な輸出、内需回復により牽引され、3.5%程度の成長を見込んでいる。

    直接投資は、5月までの累計で前年同期並みの33億ドルとなっているが、6月にはルーラ大統領がNYで外国投資家向けの会合を実施する等、地道な努力を重ねていることもあり、下期には回復が見込まれ、市場関係者は昨年比若干の増加となる105-110億ドル程度と見込んでいる。

    銀行業界は、経済全体の回復と相俟って業界全体では引き続き成長と競争激化が見込まれる。

    手数料収入が好調とは言え、貸出スプレッドが低下し、競争が激化する中、貸出ボリュームの積み上げは極めて重要な位置付けとなっている。所得の回復等に伴う個人・消費者ローンの伸びは期待されるが、最低でも15%の増加を計画していた各行の年初の目標が達成できるかに注目いたしたい。

    レアルの対ドル為替相場動向は、国内景気の改善状況、好調な貿易収支の持続、外貨資金繰り、米国金利動向等によって左右されるであろうが、市場関係者は年末も6月末と同水準となる3.10レアル程度を見込んでいる。

    SELIC金利は、景気回復を持続するためにも、引き続き引き下げが見込まれるものの、インフレ上昇の懸念が根強いことから、その引き下げ幅は限定的と予想され、年末時点で15%程度となる見通しである。

    以上

     

    各銀行の今年末為替レート及び金利予測

    銀行

    為替US$/R$

    Selic金利%

    A行

    R$3.10

    15.5

    B行

    3.20

    16.0

    C行

    3.10

    16.0

    D行

    3.10

    15.0

    2004年8月

    保険業界

    1.2004年上半期の回顧

    Susep(保険監督庁)が発表した2004年5月末現在の公式データに基づき、2004年上半期のブラジルの保険業界の動向は次のとおり。

    (1)収入保険料

    2004年上半期(1月~5月)の全種目の収入保険料(但し、健康保険及び運用型年金保険(VGBL)は除く)は107,6億レアル(約3.841億円)であり、対前年同期比で10,4%の増加となった。ブラジルにおける保険市場の拡大傾向は継続している。

    保険種目別では、自動車保険12,2% 増、火災新種保険5,8%増、運送保険4,8%増、人保険(生命保険+傷害保険)13,3%増という結果であった。ブラジルの保険市場における主要種目 (自動車保険は全収入保険料の44%、人保険は26%を占める)の2桁以上の増率により、保険市場全体の拡大に繋がっている。

    また、地域別にはサンパウロ州が50,7%、リオデジャネイロ州が11,6%、ミナスジェライス州が6,9%、リオグランジドスル州が6,3%、パラナ州が5,7%と前年とほぼ同じ割合となっており、ブラジル全土で均一的に保険市場が拡大していることを示している。

    (2)収益性(損害率、運用益等)

    保険会社の収益を大きく左右する指標である損害率(支払保険金/ 収入保険料)は全種目通算で60,9%と、対前年同期比で2,2%改善した。保険種目別の損害率を対前年同期と比較すると、自動車保険は1,8% (72,4%→74,2%)悪化し、火災新種保険は10,8%(56,7%→45,9%)、運送保険は5,9%(52,5%→46,6%)、人保険は 3,8%(53,7%→49,9%)それぞれ改善した。

    最大種目である自動車保険の損害率の悪化が継続していることは(2002 年末:71,0%、2003年末72,7%)保険会社にとっては非常に大きな懸念材料である。その原因としては、支払い保険金に対して大きな割合を占めて いる強盗・盗難事故件数が一向に改善しないことや保険会社間の価格競争がより一層、激しくなっていることが考えられる。

    また、市場金利の低下に伴い、2004年上半期(1月~5月)の保険会社全社合計運用益は18,3億レアル(約653億円)であり、対前年同期比で0,6%の減少となった。

    (3)トピックス

    2003 年に自動車保険をめぐる、詐欺行為(車両保険の全損処理をめぐるもの)が世間の注目を集め、多くの保険会社が車両保険の引受方法を事前に契約者と支払い保 険金額を取り決める方式から事故時点での市場価格を支払う方式に変更をした。しかしながら、契約者への説明が不足し、消費者保護の観点から新たな問題と なっており、現在も、引き受け方法については混乱している。

    また、Susepの保険会社への管理監督が強化されており、特に内部監査体制の整備と実行やマネーロンダリングを防ぐための通達が出されている。

    2.2004年下半期の展望

    (1)収入保険料

    ブラジルの経済状況の安定した発展が見込まれるため、下半期も引き続き保険市場の拡大傾向は継続するものと思われる。

    一方、市場金利の更なる低下や損害率の悪化により、価格競争も一服し、保険料水準の見直しの機運が高まることもあり得る。

    (2)収益性(損害率、運用益等)

    保 険事業自体の収益に多大な影響がある自動車保険の損害率の悪化に歯止めを掛けるためには、収入保険料を増やすか、支払い保険金を減らす以外に方法は無い が、車両の強奪・盗難、また保険金目的の詐欺を減少させる抜本的な対策が見当たらず、ブラジルの治安状況も好転することが見込まれないことから支払い保険 金を減らすことは難しく、他方、インフレによる経費増があるにもかかわらず、大手保険会社による激しいシェア獲得競争が続いており保険料水準の大幅な引き 上げも難しい。そのために保険事業自体の収益性を向上するためには引受リスクの厳格な選別が重要となってくる。

    さらに、市場金利の更なる切り下げがある可能性もあり、資産運用環境が好転することはあまり期待できず、運用収益は昨年同期比で減少する可能性が高いため、保険会社の収益は前年以上に厳しくなることが予想される。

    (3)トピックス

    昨年以降、Susepによる保険会社に対する管理監督が厳しくなってきているが、この傾向はさらに強まり、契約者保護のために、契約内容(保険料の支払い期限等)を正確に契約者へ伝えることや、保険会社内部監査体制を整備することが通達で求められている。

  • 貿易部会 中村貿易部会長


    中村貿易部会長

    通年で260億ドルの貿易黒字予想

    中村 それでは、貿易部会よりブラジルの貿易概況に関しまして「上期の回顧、通年の見通し」を中心にして報告いたします。資料等につきましては、ジェトロサンパウロ事務所のご協力を戴きました。後日、商工会議所のホームページに掲載されますのでご参照下さい。
    先ず、貿易収支全般についてですが、本年上期の貿易収支は150億4900万ドルの黒字となりました。 上半期としては史上最高を記録しまして、引き続き記録を更新中です。要因は輸出の増加、アルゼンチン経済の回復に加えて、依然として旺盛な外需によるものです。

    通年では下期も好調な輸出が持続する見通しで、同時にブラジル国内の景気の回復で輸入増も見込まれることから、ブラジル中央銀行は昨年の248億ドルの貿 易黒字を上回る260億ドルの黒字を予想しております。 上半期の輸出は輸出額の記録を更新中で、カテゴリー別に見ますと、一次産品、半製品、完成品全て の項目で大幅な増加を記録しています。金額ベースでは一次産品の増加が42% と最も大きく、数量的には9.8%の伸びになっており、一次産品の価格の上昇による影響が大きいものと思われます。数量ベースでは完成品の増加率が最も大 きく26.9%でした。一次産品で主として増加したのは大豆関連の輸出です。大豆は数量ベースで3.3%の増加ですが、金額ベースでは 39.7%と大幅に伸びております。また、大豆粕は金額ベースで62%の増加となっています。 仕向先としてはオランダ、ドイツなど欧州向けが増加してい ます、畜産物ではアジアでの鳥インフルエンザや狂牛病の影響で、チキンが金額ベースで58.3%の増加、牛肉が金額ベースで82.1%と大幅な増加となっ ております。

    完成品の最大輸出は航空機、乗用車がこれにつぐ

    半製品で最も大きな割合を占めたのはスラブなどの鉄鋼半製品ですが、金額ベースでは18.2%となっているものの、数量ベースでは8.4%の減少となっています。主要輸出相手国別では米国向けが62.1%増加した他、タイ向けが倍以上の増加を記録しています。

    完成品では最大の輸出品目は航空機で前年同期比67.8%の増加となっております。仕向国はメキシコ、スウェーデン、ポーランドなど前年に実績のなかった 仕向先が記録されております。完成品の輸出の第二位は乗用車で、金額ベースで28.8%増、台数ベースで20%の増加となっております。主要輸出先として は前年に続いてメキシコ、アルゼンチン、米国と続きます。米国向けは62.3%と減少しましたが、アルゼンチン向けが225.3%と急速に回復しておりま す。乗用車全般の輸出は、ラテンアメリカ各国向けが顕著となっているのが実情です。

    輸出全般に関して仕向国別に見ますと、多い順にアメリカ、アルゼンチン、中国となっていますが、特に昨年 79.3%の伸び率を記録した中国は本年34.3%の増加となっており、減速傾向に入ったと言えるのではないかと思います。一方、特徴的なのは欧州向けの 輸出が増加したことで、特に大豆関連品目や鉄鉱石などの一次産品が牽引しています。ユーロ高の影響もあると考えられます。また、前年に引き続きアフリカ、 中東向けなど非伝統的な相手国への輸出の増加も加速しており、それぞれ63%増加、52%増加となっております、因みに昨年はそれぞれ20%程度の増加で した。

    経済回復に連れて輸入増大

    次に輸入についてですが、2004年第1四半期のGDPの成長率は前年同期比2.7%の増加で今年に入っても着実に回復傾向にあると言えます。そのため、 上半期の輸入額も25%の増加となりました。品目別に見ますと、資本財では事務用機械、工業用資本財部品が増加しております。企業による生産拡大、設備投 資の回復傾向を表していると思われます、特に集積回路の輸入増が著しくなって、主要輸出相手国の米国、韓国からの輸入が大幅に増加しております。また、台 湾、中国、日本、シンガポールからの輸入も大きく増えております。これは携帯電話をはじめとする電気電子製品の生産拡大によるものと思われます。消費財で は装飾品、家庭用機器、耐久消費材用部品などが増加しており、国内消費の回復が伺われます。輸入相手国別に見ますと、とりわけ中国とナイジェリアからの輸 入増が顕著です。特に中国からは送受信機の部品、集積回路、液晶ディスプレイなど電気電子関連部材が大きく増加しました。

    対日貿易は伸びたが、伸び率は低い

    次に、対日貿易についてですが、2004年上半期の対日貿易は輸出、輸入共に伸ばしました。然しながら、ブラジル貿易全体の伸び率に比較しますと、依然として低い伸び率に留まっております。
    日本のシェアを貿易額ベースに見ますと、輸出で前期比0.33ポイントの減少、輸入で0.36ポイントの減少となっております。輸出品目では今年初めにア ジアを中心に発生した鳥インフルエンザの影響でチキンが金額ベース、数量ベースでそれぞれ189%、79.8%と大幅に増加しました。主要品目の鉄鉱石で は金額ベースで6%の増加とはなっていますが、数量ベースでは14.3%の減少です。日本の製鉄産業向けと思われますが、ニッケルカソードの輸出は 203.7%と大幅に増加しています。

    中国景気の影響で日本の製鉄産業は活況を呈 しており、ニッケル、コバルトなど希少金属のニーズが高まっていると思われます。また、エチルアルコールの輸出額も187.6%と増加しています。日本で は昨年8月にガソリンへのアルコールの混入率の上限が3%に定められたこともあり、ブラジル側では燃料用アルコールの対日輸出への期待が高まっておりま す。

    最後に2004年通年の貿易見通しですが、下半期につきましても輸出・輸入ともに順 調に増加するものと思われます。中央銀行では、貿易収支の黒字として冒頭に申しました通り、260億ドルの黒字を予想しております。これは外的な要因のみ ならず、ここ数年続いた国内経済の停滞でブラジル企業の輸出シフトが定着したことによって引き続き、好調な輸出が続くであろうとの見方からです。また、こ れから注視すべき点はアルゼンチンとの貿易摩擦の深刻化、中国による大豆、鉄鋼関連製品の買い控え並びに市況の混乱、イラク問題の悪化、原油の高騰などが あると思われます。また、増加している輸出に伴い、コンテナ不足、海上運賃の高騰、輸送インフラの整備などロジスティック面での問題がブラジル側で顕在化 しているのが実情だと思われます。

    部会活動では積極的にセミナーを開催した

    最後に貿易部会は上半期の活動といたしまして、コンサルタント部会、貿易部会の共催で1月にNEXI(日本貿易保険)ニューヨークの長谷川所長をお招きし て、貿易保険についてのセミナーを行いました。3月にはジェトロの竹下氏をお招きしてメルコスールについてのセミナー並びにCDMのセミナーを開催いたし ました。4月にはこれは協力ですが、JBICの肥沼氏とブラジルDNAの局長ミゲルさんをお招きして、CDMについてのセミナーを開催いたしました。5月 には、コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティー(CSR)につきましてETHOSのアゴスティーニョ専務理事、並びにジェトロの桜井所長の協力を 得ましてセミナーを行いました。6月にはジェトロ・ブエノスアイレスの稲葉所長をお招きして、メルコスールの FTAの交渉状況全般についてのセミナーを行いました。

    下半期につきましても、会員の皆様のご興味があって、且つ共通のトピックスと思われるものについて、引き続きいろいろなセミナーを積極的に開催して行きたいと思いますので、是非ともご参加をお願いいたします。

    司会  ありがとうございました。それでは会場の皆様でご質問がある方は挙手でお願いいたします。

    佐原  か なり輸出ドライブがかかっているという認識ですね。その中でとくに7 月に、サンパウロ州の中部にあるアルコールを製造しているところで、年に一度シエンペックというシンポジウムがあり、7月の12日から1週間、その会に商 工開発大臣のフルランさん、農務大臣のロドリゲスさん、BNDESのカルロス・レッサー総裁も来られて、かなりブラジル側は、次にブラジルが売るのはアル コールだと、えらい力が入っているわけですね。

    そういう意味で日本のほうでアルコールが 3%許容されると、とくにブラジルのほうで、自動車のフレックス・フィエルですか、そういうのも最近よく自動車として売れている。さらにその100%アル コールの車も市内では結構、経済性よくノーメンテナンスで最近は走っておる、ということになりますと、次に輸出するのはアルコールだというブラジル側の意 見を、これどういう具合に我々としたら取り上げて、協力するのか。なんか日本側で3%、許容認可されたことについてかなりブラジル側はバッテリー上がって いるんですよね。輸出しようと。だけど、なかなか具体化しない。そしたら大体どういうスケジュールで、どういう問題を解消してそういうプログラムが成り立 つのかと、いうあたりをザクッと貿易部会で誰かご存じの方からご説明願えたら有難いんですが。

    司会 これはハッキリ言って、大前さんに振りますけど一言コメントお願いいたします。

    日本側とブラジル側に未だ大きな見解の差がある-燃料アルコール混入

    大前(ブラジル三井物産) ブラ ジル側に気合入っていると言っても、実態的には、日本側とのギャップがどんどん広がっているのが実情です。ご承知のように、日本では去年8月、いわゆる 「品確法」の改定により、ガソリンの強制規格に3%までアルコールを混入してもよいとの規定が追加されましたが、これはマンダトリーではなく、もし混入し たければ3%までは認めるというものです。その意味で、この法律に強制力は無いものの、将来一律アルコールを3%混入する、いわゆるE3の導入が実現する とすれば、それを可能ならしめる法的規制の緩和という具合には評価できると思います。問題は、これをブラジル側が非常に過大評価しておりまして、それがあ たかもマンダトリーのごとく理解している人が非常に多い。実体はそうではないんですが・・・。

    E3の導入により日本側で最も直接的被害を受けるのは、石油業界だと言われています。装置産業である石油業界はこれまで相当のリストラを強いられてきてお り、ここでまたアルコールの混入が義務付けられると、それに見合いの分だけガソリンの生産量を減らさなければならない。それも一つの大きな理由で燃料アル コールの導入には非常に慎重であり、その意向を受けてという言い方はおかしいかも知れませんが、政府側では経済産業省がある意味で非常に慎重であるという のが現状です。一方、京都プロトコール、これはロシアが批准すれば発効しますが、発効すると日本は2008年から 2012年までの5年間で1990年基準の6%削減義務を負うことになります。しかも、1990年以降現在までにまだ温暖化ガスの排出量が増えている訳 で、実質的には1990年基準で10数%削減しなければならぬという、非常に重い義務を負うことになります。これに対し色々な再生可能エネルギーの選択肢 が検討されていますが、その中で恐らく時間的にも、また、経済的にも最もプラクティカルと判断されるのが燃料用エタノールの導入であろうと言われていま す。この点、日本政府内では環境省が最も積極的に対応しておられるように聞いております。

    このような状況下で、ブラジル側では一体いつからそれを導入するんだという質問が非常に多いわけですが、現状、日本側では、スケジュールを含めて未だ何も 具体的なものは決まってないというのが実情です。但し、品確法の改定により、地域によってはいくつかの自治体でアルコールを3%混入したガソリンを使って 小規模な実験をやって見ようという動きが起こりつつあるのは事実です。

    それから、 環境省が一つの目標として掲げているのが、地域実験から始めて徐々にE3、即ち、アルコール3%混入ガソリンの導入対象地域を増やしていき、最終的には 2012年までに全国一律E3を導入することですが、これはまだ相当先の話なので、そういう観点から、冒頭で申し上げたように、ブラジル側と日本側の ギャップが非常に大きく、従って、ブラジル側の期待が高まれば高まるほど、日本側の進展が遅いことに対するブラジル側の苛立ちにつながるという展開となっ ているのが、ある意味で大きな問題と認識されます。

  • 貿易部会(レポート)

    ブラジル貿易概況-2004年上半期実績と通年の見通し

    1.貿易収支、黒字記録を更新中:

    開発商工省の統計によれば、2004年1月‐6月における貿易収支は150億4,900万ドルの黒字となり、同期間における過去最高記録を更新しました。黒字増加の要因は大幅な輸出増加によります。輸出額は前年同期比31.2%増の433億600万ドル、輸入額は同25.0%増の282億5,700万ドルとなっています。輸出増加の要因は順調なアルゼンチン経済の回復に加えて、依然として旺盛な外需によるものです。2004年下半期も好調な輸出は持続する見通しですが、同時に国内経済の回復で輸入増が見込まれると思われます。ブラジル中央銀行では6月時点で2004年の貿易収支黒字額を、前年実績(248億ドル)を上回る260億ドル、フルラン開発商工相は280億ドルと予想しています。

    2.依然として伸び続ける輸出:

    2004年上半期輸出は、前年の増加ペースを引き継ぐ形で輸出額記録を更新中です。製品カテゴリー別にみると一次産品、半製品、完成品全ての項目で大幅な増加を記録しています。なかでも輸出額の3割強を占める一次産品の増加率が金額ベースでは42.0%と最も大きくなっていますが、数量ベースで見ると9.8%増に留まっています。即ち、一次産品については価格の上昇による影響が大きいものと見られます。数量ベースで伸び率を見ると、完成品の増加率が最も高く26.9%増となっています。

    一次産品の輸出額は136億6,300万ドルで、主に増加に貢献したのは大豆関連輸出です。大豆は数量ベースで3.3%増と低い伸び率になっているものの、金額ベースでは39.7%と大幅に増加しています。仕向け先別に見ると、金額ベースでオランダ、ドイツ、スペイン、イタリアなど欧州各国向けの伸びが20%~55%程度と著しくなっています。一方、最大の大豆輸出相手国の地位にある中国向けは38.8%となっています。大豆かすは金額ベースで62.0%増、数量ベースで19.3%増でした。大豆かすも同様に欧州向けが増加しています。

    また、畜産物ではアジアにおける鳥インフルエンザや狂牛病の影響で、鶏肉が金額ベースで58.3%増、数量ベースで21.7%、牛肉が金額ベースで82.1%増、数量ベースで35.7%増と大幅に増加しました。

    半製品の輸出額は前年同期比19.8%増の59億5,000万ドルで、最も大きな割合を占めたのは鉄鋼半製品(15.5%)です。同品目では金額ベースで18.2%増となっていますが、数量ベースでは8.4%の減少となっています。主要輸出相手国別に見ると、金額ベースで米国向けが62.1%増加した他、タイ向けが倍以上の増加を記録しています。なお、前年に輸出が好調であったパルプは、数量ベースで9.3%増、金額ベースで0.9%減となり、輸出価格の低下が見られます。

    完成品の輸出額は前年同期比29.9%増の230億2,300万ドルで、輸出額全体の53.2%を占めています。完成品の中で最大の輸出品目は航空機です。航空機輸出額は前年同期比67.8%増の15億5,200万ドルで、メキシコ、スウェーデン、ポーランドなど前年同期に実績のなかった仕向け先への輸出が記録されています。完成品の輸出品目第2位の乗用車は金額ベースで28.8%増(14億5,300万ドル)、台数で20.0%増(23万3000台)でした。乗用車の主要輸出先は前年に続きメキシコが1位で、以下アルゼンチン、米国と続きます。米国向けは62.3%と減少しましたが、アルゼンチン向けの輸出が225.3%増と急回復しています。乗用車輸出では全般的にラテンアメリカ各国向けの増加が顕著となっています。

    輸出相手国別にみると、輸出額の大きい順に米国、アルゼンチン、中国となっています。米国向けが7%と低い伸び率となる一方、アルゼンチン向けが乗用車、送受信機など工業製品を中心に大幅な増加を示しています(78.0%増)。中国向けは34.3%増ですが、前年の中国向け輸出額の伸び率79.3%を考慮すると増加ペースは減速傾向に入ったと言えます。一方で特徴的なのは欧州向けの輸出増で、大豆関連品目や鉄鉱石をはじめとする一次産品が牽引しました。また、ユーロ高の影響もあると考えられます。

    前年に引き続き、非伝統的な相手国への輸出増も加速しています。アフリカ向けが63.0%増、中東向けは52.2%増と軒並み増加しています。因みに両地域向けはそれぞれ前年はおよそ20%の増加率でした。

    3.順調に増加する輸入:

    2004年第1四半期のGDP成長率は、前年同期比2.7%増、前期比で1.6%増でした。

    前年はマイナス成長を記録しましたが、今年に入って着実な経済回復傾向を示しています。その為、上半期の輸入額も増加し、前年同期比25.0%増の282億5,700万ドルとなりました。財別に見ると、輸入額の53.6%を占める原材料・中間財の輸入増が著しく、前年同期比26.7%増の151億4,600万ドルとなっています。資本財は14.0%増の55億3,700万ドル、消費財は21.1%増の31億6,700万ドルとなっています。燃料・潤滑油は38.5%増の44億800万ドルでしたが、数量増に加えて国際的な原油価格の上昇による影響もあると思われます。

    品 目別に見ると、資本財では事務用機械・装置、工業用資本財部品などが増加しました。資本財輸入増は企業による生産拡大、設備投資の回復傾向を現していま す。増加率が大きかった原材料・中間財では、医薬・化学品、中間製品、鉱物製品などの主要品目で増加しています。また、集積回路の輸入増が著しくなってい ます。同品目では主要輸入相手国の米国、韓国からの輸入額がそれぞれ58.3%、51.4%の増加を記録し、それ以外にも台湾、中国、日本、シンガポールからの輸入額が大きく増加しています。これは携帯電話をはじめとする電気電子製品の生産拡大によるものと思われます。消費財では、耐久消費財の増加が著しくなっています。乗用車の輸入は3.9%減少したものの、装飾品等、家庭用機械・装置、耐久消費財用部分品などで増加しており、国内消費の回復が伺われます。

    輸入相手国別にみると、主要相手国の多くで輸入が増加しています。とりわけ輸入増加が顕著なのは中国とナイジェリアです。中国からは送受信機部品や集積回路、液晶ディスプレイなど電気電子部材が大きく増加し、また、ナイジェリアからは原油の輸入が大幅に増加しました。

    4.貿易額は増加するも全体に占めるシェアは低下:

    2004年上半期における対日貿易は輸出が前年同期比17.4%増の12億2,000万ドル、輸入が同15.6%増の12億8,500万ドルとなり、輸出入ともに増加しました。然しながら、ブラジルの貿易額全体の伸び率に比較すると依然として低い伸び率に留まっています。日本のシェアを貿易額ベースで見ると、輸出で前年同期比0.33ポイント減の2.82%、輸入で同0.36ポイント減の4.55%となっています。輸出では今年初めにアジアを中心に発生した鳥インフルエンザの影響で、鶏肉が金額ベースで前年同期比189.3%増の2億3500万ドル、数量ベースで79.8%増の14万8000トンと大幅に増加しました。尚、主要輸出品目の鉄鉱石は金額ベースで6.0%増でしたが、数量ベースでは14.3%減少しています。 ニッケルカソードの輸出額も前年同期比203.7%と大幅に増加していますが、日本の製鉄産業向けの原材料としての輸出と見られます。中国需要の影響もあり、日本の製鉄産業は活況を呈しており、ニッケル・コバルトなどの希少金属のニーズが高まっています。また、エチルアルコールの輸出額も187.6%増加しています。日本で2003年8月にガソリンへのアルコール混入上限が3%に定められたことを受けて、ブラジル側では対日輸出への期待が高まっています。

    一方、輸入では自動車部品、ベアリング・歯車及び同部品、集積回路と主要な品目で増加しています。

    5.2004年貿易の見通し:

    2004年下半期についても輸出入は順調に増加するものと見られます。中央銀行では6月時点で2004年の輸出額は前年比14.5%増の830億ドル、輸入額は同18.0%増の570億ドル、貿易収支額を同4.8%増の260億ドルと予想しています。又、フルラン開発商工相は輸出額を880億ドル、輸入額を600億ドル、貿易収支額を280億ドルと予想しています(7月1日時点)。好調な輸出が持続する一因として、外的な要因だけではなく、ここ数年続いた国内経済の停滞で企業の輸出シフトが定着したとの見方もあります。ブラジル貿易協会(AEB)のジョゼ・アウグスト・カストロ氏は、「大部分の企業が今までに獲得した海外の顧客を失わない為に輸出を続けるであろう」との意見です(2004年7月20日付けValor紙)。

    輸入については国内消費が上向き、好調な輸出が持続すると見られていることから、引き続き原材料・中間財を中心に増加が予想されます。尚、2004年の国内経済成長率は今年はじめの予想通り3.5%~4.0%が見込まれています。

    為替については、中央銀行が市中銀行の予測をまとめた資料(7月27日時点)では年末値が1ドル=3.10レアルとなっており、安定が見込まれています。

    なお、今後のリスク要因はアルゼンチンとの貿易摩擦問題の深刻化、中国による大豆、鉄鋼関連製品の買い控えや市況混乱、イラク問題の悪化、原油価格の上昇などが考えられます。特にアルゼンチンとの摩擦ではマナウス製のカラーテレビに21.5% の対外共通関税が課され、日系進出企業への影響も懸念されます。又、同問題では、家電製品だけではなく、その他の品目に波及する懸念があり今後も注視が必 要と思われます。又、増加する輸出に伴いコンテナ不足、海上運賃の高騰、輸送インフラの整備などロジスティック面の問題がブラジル側で顕在化しています。

    表1 ブラジルの主要商品別輸出入 (単位:100万ドル,%)

      2003年(1-6) 2004年(1-6)    
      金額 金額 構成比 伸び率
    輸出総額(その他を含む) 33,002 43,306 100.0 31.2
    一次産品 9,620 13,663 31.5 42.0
    大豆 2,171 3,032 7.0 39.7
    鉄鉱石 1,628 2,080 4.8 27.8
    大豆かす 1,072 1,737 4.0 62.0
    原油 989 1,290 3.0 30.4
    鶏肉 742 1,175 2.7 58.3
    半製品 4,967 5,950 13.7 19.8
    鉄鋼半製品 779 922 2.1 18.2
    パルプ 840 832 1.9 △ 0.9
    507 629 1.5 24.1
    完成品 17,720 23,023 53.2 29.9
    航空機 925 1,552 3.6 67.8
    乗用車 1,129 1,454 3.4 28.8
    鉄鋼圧延品 587 890 2.1 51.6
    靴・同部材 771 882 2.0 14.4
    自動車部品 678 877 2.0 29.4
    自動車用エンジン・同部品 834 854 2.0 2.3
    輸入総額 22,605 28,257 100.0 25.0
    資本財 4,856 5,537 19.6 14.0
    工業用機械 1,641 1,470 5.2 △ 10.4
    事務用機器 984 1,233 4.4 25.3
    原材料および中間財 11,950 15,146 53.6 26.7
    化学・薬品 3,617 4,457 15.8 23.2
    中間製品(部品) 1,952 2,552 9.0 30.8
    鉱産品 1,686 2,268 8.0 34.6
    輸送機器部品 1,750 2,243 7.9 28.2
    その他農業用原材料 712 1,262 4.5 77.2
    消費財 2,616 3,167 11.2 21.1
    非耐久消費財 1,461 1,672 5.9 14.5
    医薬品 584 664 2.4 13.8
    食料品 451 500 1.8 10.8
    耐久消費財 1,155 1,495 5.3 29.5
    装飾品 328 411 1.5 25.4
    燃料および潤滑油 3,183 4,408 15.6 38.5

    出所:開発商工省貿易局表

    表2 ブラジルの主要国・地域別輸出入(単位:100万ドル,%)

      2003年(1-6) 2004年(1-6)    
      金額 金額 構成比 伸び率
    輸出総額 33,002 43,306 100.0 31.2
    米国 8,100 8,679 20.0 7.1
    アルゼンチン 1,843 3,281 7.6 78.0
    中国 2,161 2,901 6.7 34.3
    オランダ 1,866 2,373 5.5 27.2
    ドイツ 1,495 1,974 4.6 32.1
    メキシコ 1,210 1,667 3.8 37.8
    イタリア 1,054 1,475 3.4 39.9
    日本 1,039 1,220 2.8 17.4
    チリ 857 1,120 2.6 30.6
    フランス 784 1,042 2.4 33.0
    英国 829 982 2.3 18.5
    スペイン 659 912 2.1 38.4
    その他 11,105 15,682 36.2 41.2
    輸入総額 22,605 28,257 100.0 25.0
    米国 4,392 5,385 19.1 22.6
    アルゼンチン 2,345 2,552 9.0 8.8
    ドイツ 2,095 2,319 8.2 10.7
    ナイジェリア 677 1,643 5.8 142.5
    中国 902 1,492 5.3 65.3
    日本 1,111 1,285 4.5 15.6
    フランス 856 1,119 4.0 30.7
    イタリア 877 926 3.3 5.5
    アルジェリア 504 797 2.8 58.1
    韓国 553 780 2.8 41.0
    チリ 357 619 2.2 73.3
    英国 605 615 2.2 1.6
    その他 7,330 8,727 30.9 19.1

    出所: 開発商工省貿易局

    表3 ブラジルの対日主要品目別貿易(単位:100万ドル,%)

    輸出 2003年(1-6) 2004年(1-6)    
      金額 金額 構成比 伸び率
    鶏肉 81 235 19.3 189.3
    鉄鉱石 212 225 18.4 6.0
    アルミニウム 200 169 13.9 △ 15.3
    コーヒー豆 52 60 4.9 15.5
    鉄合金 56 57 4.7 1.9
    パルプ 57 55 4.5 △ 2.9
    大豆 47 41 3.4 △ 12.0
    冷凍オレンジジュース 36 35 2.8 △ 3.6
    ニッケルカソード 9 29 2.4 203.7
    木材 21 24 1.9 13.9
    その他 267 290 23.7 8.3
    合計 1,039 1,220 100.0 17.4
             
    輸入 2003年(1-6) 2004年(1-6)    
      金額 金額 構成比 伸び率
    自動車部品 94 134 10.5 42.8
    ベアリングおよび歯車・同部品 59 74 5.8 25.7
    集積回路 60 64 4.9 6.7
    自動車用エンジンおよび同部品 52 54 4.2 3.7
    乗用車 31 41 3.2 32.1
    自動データ処理機部品 24 39 3.0 60.7
    測定および点検機器、装置 35 38 3.0 9.3
    送信・受信用機器・部品 32 33 2.6 3.6
    コークス等 17 33 2.6 93.8
    ポンプ・コンプレッサー・換気扇・同部品 36 31 2.4 △ 12.4
    その他 672 743 57.9 10.7
    合計 1,111 1,285 100.0 15.6

    出所:開発商工省貿易局

  • 化学品部会 板垣化学品部会長


    板垣化学品部会長

    司会-それでは、ちょっと時間がオーバーして来ましたので、次の化学品のほうに参りたいと思いますが、化学品はもうこれ例年、対象範囲が広くて、部会長さん説明が大変なんですが、今日もよろしくお願い致します。

    化学品 - 全般は10%増と工業部門平均を上回った上期

    板垣 化 学品部会の発表をさせて頂きます。いま浅賀委員長のほうからもご説明ありましたように、化学品部会は、いろんな業種が混ざっており、私個人的に思うのは、 貿易部会、自動車部会とか、それから食品部会の中に入るような企業がたくさんあるんじゃないかと。先ほど冒頭に桜井さんがおっしゃられた、部会の再編がも しあるとすれば、化学品部会はそういったところに分けられるんじゃないかと常々思っております。
    今回の発表内容のなかも多くは、やはりブラジルの輸出の主力であります大豆とか、いまお話のありましたエタノールとか、農産物と関わるようなところも多々出てきております。

    とりあえず、化学品部会の源流、原料となるところの化学原料の分野から、発表させて頂きたいと思います。本年の上期、化学・製薬部門におきましては、3 月、4月にかけて輸入が35.7%減少、輸出も7.4%減少となり昨年比、貿易収支では3億6千万ドルの赤字となっております。しかしながら生産量は、昨 年同期比で製薬では18%、シャンプー、石鹸、洗剤といったような分野では23%の増加。それからアルコール精製分野では2.5%増。化学品、製品全般に おきましては10%増と工業部門の平均を上回る進展となっております。

    それから、 石化全般でみますと、原油価格上昇によるナフサ高騰から製品全般が値上げを余儀なくされまして、特に、アクリル酸エステル、吸収性樹脂など一部商品におき ましては、原料不足による供給不足が深刻化しております。このような状態は来年はじめごろまで続くのではないかと予想されております。

    それと自動車の生産台数が先ほど、中村さんのほうからもありましたように、昨年比で生産台数は上期10%増。その他、マナウスにおきます携帯電話、音響機器といった電気電子製品、それから家電製品の好調を受け逆に樹脂、レジンが不足になっております。
    また、世界規模で見ますと、昨今の中国の生産の勢いが凄まじいと言うこともあり原油の生産、使用量もいま世界第二位ですか。で石化関連製品、とくにポリエチレンとかポリプロピレンといった原料エチレンの不足によって、こういった原料が品薄の状態になっております。

    下期に大きな変化はなさそう

    燃料アルコール品薄が懸念材料

    こ の分野におきます下期の展望ですが、化学品全般に大きな変化はないと思われます。不安要素と致しましては、先に発表されたように、海上運賃の値上げ、それ から中国に物がどんどん行っており、船、それからコンテナ等が不足して、輸出入に対する影響が大きいと予測されております。

    それと先ほど来、話題にのぼっております燃料用エタノールですが、砂糖きびを原料とするアルコールと言いますと、私はピンガぐらいしか思い浮かばなかった が、今回、会議において、砂糖きびを原料として燃料用エタノールをつくっておると。また、輸出が非常に活発化して、昨今インドの砂糖きびが非常に不作と言 うことでエタノールだけではなく、砂糖も不足して相場が高騰しており、ブラジル国内のメーカーは、砂糖主体の生産体制にシフトし、また、燃料用アルコール の輸出も活発化しているために燃料用アルコール、エタノールが品薄感を見せておると言うことです。
    先ほど日本では3%、マックスで入れてもいい と言うことですが、現在、ブラジルではガソリンの中に25%アルコールが入っているそうです。で、それが品薄になって来ているので、22%ぐらいまでに減 少するのではないか。それによって、ガソリンが値上げし、燃料用のアルコール、エタノールの値上げにつながって行くことが懸念されております。

    工業材料業界、大衆商品業界は2ケタ進展

    続 きまして、こういった原料を使って製品をつくっております工業用の接着剤、シール材、まあ、実は私共の会社ですが、それと工業用のレジンに対する着色剤等 をつくっています工業材料業界を見ますと、上期は自動車、オートバイ、化粧品、工業商品、家電といったものが生産好調で原材料は値上がりしている、あるい は、2月のPIS、Cofinsの増税。これに対応して大幅な値上げを実施したことにより、販売は昨年同期に比べ2ケタ進展した企業が多くなっておりま す。

    下期は大幅な金利の低下は期待できない。それから原油価格がおそらく高くな り、そのために関連商品、関連原料が値上げされるであろうと。それから電気代、電話代などの値上がりによって経費も上がるであろうと不安要素がある一方 で、下期は商品の供給先である自動車関連、工業製品関連、家電関連の業界が好調を維持するであろうから、上期以上の販売が予想されております。

    次に化粧品、文房具、家庭用の接着剤、それからフィルムと言った大衆商品業界に関しては、昨年に比べインフレの低下、金利が昨年に比べて低下したことで、 一般消費者の購買力が増した。また、PIS、Cofinsの増税分を、年初に値上げしまして、文房具、家庭用接着剤の分野は昨年同期比2ケタ進展しており ます。

    また、こういった業界は、原材料はほとんど海外からの調達になっており、為 替安定のお陰で予想より調達が安くすんで、増収・増益につながっている企業が多くなっております。大衆商品分野は、すでに値上げしており、下期は値上げし にくい状況にある。それと昨今、中国製廉価版とか模造品が入って来ておりますので、上期ほどの好条件は望めない、厳しい状況になるであろうと予想しており ます。

    好調だった農薬、飼料添加物 - 下期も好調予想

    最 後に農薬、それから殺菌剤、防虫剤、飼料添加物の業界。輸出の花形であります大豆の作付面積が増え2200万ヘクタールほどになったそうです。日本の米の 作付面積が200万ヘクタールですから、これに比べますと約10倍から11倍の面積で、日本国土の約二分の一の広さ。それが全部大豆で埋まっているという 国です。 前回のこの会議の時に発表させて頂いた、この業界で懸念しておりましたサビ病がありました。サビ病が今期の大豆に蔓延するんではないか、心配だ というお話があったと思うんですが、実際には、サビ病を防止するために殺菌剤が爆発的に売れ、逆に、心配どころか上期は、昨年同期に比べ殺菌剤の販売が 75%増、業界全体で75%増で非常に好調さを堅持しております。

    そのなかで懸念されたのは皆さんご存じ、ブラジル大豆の最大の輸出相手国であります中国からの農薬混入クレーム問題でしたが、最終的には技術的な裏付けって言うものが、中国のほうから示されないまま輸禁が解禁されて元に戻った、と言うことで落ち着いております。
    それと飼料添加物は、アジアの鳥インフルエンザを背景にして鶏肉を中心にした食肉輸出が増大。それから、飼料添加物のいろいろな品揃えの拡大で、上期販売は非常に好調で、年間予算の約60%強を達成しております。

    一方で、価格競争が激化してドル建てで比べますと、昨年比若干減少という状況です。先ほど来、 Pis/Cofins*のお話しをさせて頂いていますが、この農薬とか殺菌剤の分野は、Pis/Cofins*とか関税がかからない、恵まれた業界で、非 常にブラジル政府から優遇されている化学品部会のなかでも特に増収・増益の業界です。
    そのなかに家庭用殺虫剤がありますが、この家庭用殺虫剤だ けは贅沢品とみなされ、これだけはすべての税金がかかります。 そういった訳で、上期はあまり蚊も出て来なかったと言うことで、あまり売れなかった。ま た、安い競合品が非常に出て来て、値下げ圧力が強まり大苦戦していると言うことです。

    下期の展望として、農薬・殺菌剤の分野は、おそらくこのまま好調さを堅持していき、通期では前年比約25%から30%の進展をするであろうと予測しております。

    それと飼料添加物の分野は、上期の値下げ、競争の激化が更に進むと言うことで、品揃えをたくさん行って、顧客の満足度を上げて対抗して行くと考えています。以上です。

    *PIS=社会統合プログラム(基金)、*COFINS=社会保険融資納付金

  • 化学品部会(レポート)

    1.2004年上期の回顧と下期の展望

    1)2004年上期の回顧

    昨 年、ルーラ政権は大方の予想に反しインフレ抑制を主眼にした堅実な政権運営を実施した。高止まりではあったが金利低下、貿易収支大幅黒字、対ドルレアル 高、カントリーリスク低下などの反面、国民の平均給与前年比マイナス、失業率前年比アップ、購買力低下、と国内経済の活性化には厳しい1年であった。

    2004年上期は引き続き税制改革、社会保障制度改革、インフレ抑制、貿易黒字拡大、慎重な金利引下げ、最低賃金引き上げなど実施し、好調な輸出とアグリビジネスに支えられブラジル工業連盟(CNI)によれば1-5月の生産は昨年同期比6.5%の拡大となりブラジル経済に回復傾向が見られた。 しかしインフレターゲットを重視するあまり、金利が期待されたほどは下がらず、また積極的な経済推進策も見られず本格的な経済回復までには至っていないとみている。 個々の業界に関しては以下の通り。

    【化学原料】商社

    1)化学・製薬部門では3~4月にかけての輸入が35.72%減、輸出も7.41%減となり、貿易収支は3.6億ドル赤字。しかしながら生産量は昨年同期比で製薬18.61%増、シャンプー・石鹸・洗剤23.67%増、アルコール精製2.46%増、化学製品10.74%増と工業部門平均を上回る進展となった。

    2)石化全般でみると原油価格上昇によるナフサ高騰が製品全般の値上りを余儀なくされている。 特にアクリル酸エステル、吸水性樹脂(SAP)など一部商品では原料不足による供給力不足が深刻化。ある商社ではSAP輸入量が前年比30%減で、この状態は来年始めまで続くと予想。

    3)自動車の生産台数が昨年比10%増、携帯電話・音響機器など電気電子、家電製品の好調を受けて、逆にレジンが不足気味。また世界規模で見れば中国の生産の勢いが凄まじい為、石化関連製品、特にポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などが原料エチレンの不足による品薄の状態。

    4)下 期についても化学品全般では大きな変化は無いと思われるが、不安要素として海上運賃の値上げ、船・コンテナ不足による輸出入に対する影響が大きいと予測。 また砂糖黍を原料とする燃料用エタノール輸出の活発化とインドの砂糖黍不作も相まって砂糖相場が高騰しており、国内メーカーは砂糖主体の生産にシフト、そ の結果燃料用エタノールに品薄感が広がりを見せている。ガソリンへの添加率変更、ガソリン値上げ、燃料用エタノール値上げなどの影響が懸念される。

    【工業材料業界】工業用レジン着色剤、工業用接着剤・シール剤など

    1)自動車・2輪、化粧品、工業製品、家電の生産好調により、また原材料の値上がり、PIS/COFINSに対応した値上げにより販売は昨年同期比2桁進展した企業が多い。

    2) 下期の見通しとしては、①大幅な金利低下が期待できない ②原油価格高による石油関連商品、原料の値上げ ③電気代、電話代などの値上がりなどの不安要素 がある一方、商品供給先である自動車、工業製品、家電などの業界は下期も好調さを維持すると見られ、上期以上の販売とコストダウンによる収益確保を目指 す。

    【コンスーモ業界】写真フィルム、化粧品、文房具、家庭用接着剤など

    1)昨年に比べインフレの低下、金利低下により購買力が増し、またPIS/COFINS増税分の値上げを実施したため、文房具、家庭用接着剤分野では売上が昨年同期比2桁進展。また為替が比較的安定していたため海外からの原料調達が予想より安く済み、増収増益につながった。

    2)下期の見通しとしては、①金利の現状維持、②インフレ上昇、③為替のドル高模様、④上期に実施したため値上げし難い状況、⑤中国製廉価品、模倣品の横行など、上期ほどの好条件は望めないため、厳しい状況になると予想。

    【農薬業界】農薬、殺菌剤、防虫剤、飼料添加物

    1)大豆の作付面積が増え2200万ヘクタール。 これは日本国土の約2分の1、日本の米作付け面積(200万ヘクタール)の約10倍の規模。

    2)農薬業界の上期ドルベース売上実績は好調であった昨年同期比75%増と更に好調さを堅持。 主な理由は02/03シーズンから顕在化した大豆サビ病対策用殺菌剤が昨年末の品不足から本年当初に大量出荷されたため。

    3)販売が好調な中にあって、1つ懸念されたのは伯国最大の大豆輸出相手国の中国が、農薬混入問題で輸入拒否という政治問題に発展したことであったが、技術的裏付けを中国が示さぬまま禁輸は解禁された。

    4)アジアの鳥インフルエンザを背景に鶏肉を中心とした食肉輸出増大と商品品揃え拡大により、販売は好調で年間予算の6割強に達した。 一方で価格競争激化によりドル建て換算では昨年比微減。

    5)農薬、殺菌剤などはPIS/COFINS、関税がかからないが、家庭用殺虫剤は関税、PIS/COFINS、ICMSがかかる。上期は不需要期でもあり、またジェネリック品の攻勢もあり値下げ圧力が強まった。

    6)下期の展望として、農薬・殺菌剤では①大豆農家の生産意欲は強く作付面積も増えると予想。 ②サビ病対策不可欠 ③中国禁輸騒動解決などにより上期の好調さを維持し、通期では前年比25~30%の進展予想。

    不安材料として上期に発表された農業資材へのPIS/COFINS適用除外に関して実施細目が決まらず、8~10月の出荷ピークを前にロジスティックを含め甚大な影響が危惧される。飼料添加物は上期の傾向が更に強まる見込みで、品揃え拡大し顧客満足度を高め対抗していく。

    2.ルーラ政権の政策、方針による影響、課題

    1)ブラジルは石油産出国ではあるが、これを原料にした石化品への改質は行なっていない。このため国内で製造する化学品メーカーは原料調達を輸入に頼っているのが現状。 昔から言われ続けてきた「ブラジルコストの解消」がなされるどころか、PIS/COFINSの上昇、移転価格税制の過剰適用強化など、益々製造業にとっては厳しい環境となっていると思われる。

    2)国の根幹は製造業の成長であり、雇用機会拡大、失業率減少を掲げるのであれば製造業を育てる政策を急ぎ強化していただきたい。

    以上

     

  • 機械金属部会 佐原機械金属部会長


    佐原機械金属部会長

    鋼材の価格高騰で活性化の鉄鋼分野

    佐原  機械金属部会の佐原です。当機械金属部会も幅広く、製鉄、重機械、重電、それから一般建設機械。さらに工具、ネジ、ベアリング、はたまた航空機部門まで包含しております幅広い部会でして、非常に難解な報告になるかと思います。
    2004年上期の回顧は、経済全般については金融部会、貿易部会のご報告を参考にしてお聞き頂ければ幸いです。

    まず製鉄鋼材分野。非常に活性化して、鋼材国内価格も印象によりますと、.マックス40%アップしているものがある。大体今日の新聞をみますと、国際相場 で33%くらい上がっている。さらにブラジルのIBSという製鉄関統計院の統計では平均13%と言っていますが、われわれ機械金属部会の鋼材を買う方と致 しましたら、20%以上は上がっているのが実感です。
    ということで、製鉄関係は浅賀総務部長さんの出資されている会社の収益性も非常に高い。更 にその分野全体で積極投資して行くと。とくに今後、今年も含めて 5年間にて74億ドルを投資して行くと言うことで、ブラジルの製鉄は世界に稀なる、非常に元気のいいビジネスであると言うのが力点とされます。

     

    • 積極的投資に欠けるエネルギー分野
    • 車両入札では、低価格の海外メーカーに大敗
    • 重機、紙パ、石化、製缶分野に受注増
    • 農業機械はアグリビジネス公共背景に好調
    • 一般産業向け工具、ネジ及び軸受け分野も好調 - 特殊工具は50%増

     

    2 番目に電力・エネルギー分野。2年前に多数計画されていたガスを使った火力発電案件が頓挫している。PT政権の電力料金統制価格、水力発電、風力発電の開 発、再評価等の方針が明確になった後、民間投資の火力発電プロジェクト、いわゆるIPPが止まってしまっている。天然ガス利用の小型高ジェネレーション案 件のみが実施されている程度で、積極的な投資が少ないという状況に変わってきました。

    3番目、新規大型プラント分野。先ほど申し上げました、製鉄および紙パルプ分野での新規大型投資案件が成約している。また、交通システム案件。バイーア、 サルバドール市の車両商談に引き続き両市の車両入札があったが、海外車両メーカー、とくに韓国勢の低価格にすべて大敗している。と言うことで国内の製造 メーカーは非常に苦しんでおると。

    4番目、重機械、製缶分野、紙パルプ、石油化学のそれぞれの業界は好況で、設備投資も堅調であり、受注による仕事量は確保できている。

    5番目、農業機械、建設機械分野。アグロビジネスの活況な市場を背景に、農業機械業界全体では、生産台数が前年度同期比約21%伸びて好調である。更に農 産物輸送のための道路整備向け建設機械の出荷も増加している。輸出市場では北米、欧州、アジア、アフリカ、中南米ともに好調に推移しており、とくに欧州諸 国とアルゼンチンの回復が顕著であった。実際に輸出が増加した原因として、アメリカキャタピラ社、欧州ボルボ社が、ホイルローダー機種の生産をブラジルに 特化、一極集中し海外への出荷体制を確立したこともある。

    6番目、一般産業向け工 具、ネジ及び軸受け分野。精密切削対摩耗工具は昨年下期より顕著な右肩上がりの好調を持続している。毎月新記録を更新しており、特殊工具は50%増の状況 もある。生産量は新規投資の稼働を待つ状況である。自動車、鉄鉱石及び鉄鋼圧延業界向け出荷は好調が持続されると。

    次に一般電動工具分野です。従来主力の建設関連は横ばいの状況であるが、工業関係工具の事業増加で販売は対前年比 20%アップしている。ネジは国内経済の回復基調に伴い、ネジの主要業界である自動車、同部品工業及び電機・家電業界業容アップにより、生産・販売量も アップした。自動車部品メーカー向けは約40%増、電機・家電メーカー向けは23%増であり、上半期全体では昨年同期比13.7%の増加となった。

    次に軸受け。ネジ業界同様に自動車向けが堅調であり、第2四半期から家電等の消費財の需要増も加わり極めて好調であるが、供給側の生産能力不足と材料費高騰がネックになりつつあると言うことで、上期の回顧でかなり好調な業種が多数見受けられる状況であります。

    下期もFGV予測は良好

    次 に下期の展望。ゼツリョ・バルガス財団が7月に工業分野の企業に対して行った調査では、事業の経営環境の改善と将来への楽観的予想が確認されている。今後 3カ月の事業に対する予想と生産に対する予想は共に最高であり、6カ月間の事業の見通しについては良好と回答があった。

    上期の業種より、広範囲な業種を包含する当機械金属部会では、好調分野として素材メーカーの製鉄ビジネス及び農業建設機械メーカー、アグリビジネス向けがあり、更に一般産業向け、工具、ネジ、軸受け業界では、好調が昨年下期より持続している。

    それぞれの分野について簡単に報告しますと、製鉄素材っていう分野では、中国経済の一時的な過熱調整等から国際市況が軟化し、それに伴う一部鋼材の国内市場への回帰から国内事業が一時的に緩和される局面は予想されるが、全体としては引き続きタイト状況は変わりない。
    農 業建設機械の下期の展望では、国内農産物市況の景気より、現在の好調が持続する見込みであり、農業界全体で国内販売は約5%増、輸出は約25%増の予想で ある。海外市場は中国経済の減速傾向、及び最近の北米住宅着工件数の減少傾向を判断材料とするが、一方、他の市場はブラジル国内と同様に好調を維持する見 込みの予想である。

    工具、ネジ、軸受け、工具業界では下期の販売増加20ないし 30%アップに備えて輸入量の増大、または新規設備の早期稼働を期待する。ネジ業界では、自動車、家電業界の増加率予想、上半期の半分程度を見込み、昨年 同期比の10ないし15%程度の増を見込み、軸受け業界ではすべての軸受けはフル生産状態にあり、設備投資を検討し始めている状況で、上半期を上回る予想 でああります。
    そのように製鉄素材、農業建設、一般工具、ネジ、軸受けとすべて好調な業績が下期も続く予想です。
    更に、プラント、重機械業界は消極的になった電力エネルギー分野以外の紙、パルプ、製鉄及び石油化学の分野にて引き続き投資意欲旺盛で、日系企業の大型案件の受注を期待したいと言うことです。

    ルーラ政権で唯一評価できるのは緊縮財政

    年金改革、労働法・税制改革は未完の状態

    個 別テーマとしては、とくにここでルーラ政権の政策方針における影響、課題。とくに、製造業界にとり現ルーラ政権について唯一業績を評価出来るのは、パロッ チ大蔵大臣の緊縮財政であり、年金改革、労働法及び税制改革は未完の状態である。とくに国内製造業及び輸入販売ビジネスでの複雑な税制は、各社の重い負担 になっている。複雑で不明確な税制を簡略化し、透明性を高めるための税制改革が早急に肝要と考える。とくに今年 2004年度より大幅に変更になったCofins問題は現政権の改革方針と大きく異なるという考えが大半でした。

    個別業種に絞った問題。農業機械のジョンディア、建設機械のキャタピラ、ボルボのグローバル生産体制方針として、ブラジル国内にて生産する機種を特化、本 国での生産を打ち切りブラジル国内、および海外への生産拠点と位置づけて投資している。また、世界の大手工具メーカー、Sundwuch(スゥエーデン) も本国の主力工場をすべてブラジルに移管した生産体制を構築している。日系メーカーのブラジル進出、投資方針に参考になる事業事例が最近目立つようだ。

    トピックスはエンブラエルの対米国防省売り込み成功

    最 後に事務局の方からトピックスとして、最近、輸出でがんばっている航空機メーカーのエンブラエル社について一言。先般、航空機メーカーのエンブラエル社 が、米国防総省向けのACS、アエリア・コモン・センサー、情報収集電子システムを搭載したERJ145型を 58機受注しました。川崎がエンブラエル社と共同開発いたしました170、190シリーズの民間ジェットも受注活動を展開中であり、現在受注総数として 170型が300、190型が200機に達しています。170型ジェットはすでに客先への納入を開始しています。ブラジル国内の主力組立工場であるCEB 社にても190型用の主翼をすでに5機を試験テスト用に、更に2機をエンブラエルに納入しています。現在、ガヴィオン・ペイショットの飛行場にて、フルア センブリングされた3機の190型ジェットがフライトテスト中であり、来年度中にも型式証明を取得し、客先に納入する予定であります。
    ちょっと蛇足でありますが、トピックスとして一つ、事務局の方から現状報告するように言われましたので付け加えました。以上でございます。

    司会 ありがとうございます。電力エネルギーを除くとほとんど絶好調、というようなご報告でしたが、ご質問はございますでしょうか。はい、どうぞ。

    河内山(日立) 全 ての分野で絶好調と言うことですが、材料価格が非常に高騰してきていると。まあ、鉄鋼関係で大体20%とかなりの値上げだと思うんですが、好調を背景に、 売り上げ価格の方にはこれ転嫁できていると言うことでしょうか? 一般の農業機械だとか、製鉄所のほうは転嫁できていると。

    佐原 わ れわれ機械金属部会の全体の意見では、とてもとても販売価格に転嫁できない。 さらにまた、納期もかなり長期を要求されますので、材料が入るまでの納期で すね。非常に苦しい状況だということで、一つの考え方として、輸入枠を海外からの安い鋼材の輸入枠を増やして欲しいと。まあ、その税率も少し下げて欲しい と、特に去年の後半から国内市場に出回っている鋼材が非常に少なくなってきた。輸出ドライブがかかってみんな輸出しちゃう。
    ところで、この前、ウジミナスのリナルド社長は、「ブラジル国内の製造業のために、われわれは無理してでもブラジル国内に製品を回帰させる」、とおっしゃられたので、われわれも非常に期待するところは大でございます。

  • 機械金属部会(レポート)

    1.共通テーマ

    <ブラジル経済2004年上期の回顧と下期の展望>

    =上期の回顧=

    ① 製鉄・鋼材分野

    -非常に活性化して、鋼材国内価格もMax.40%Upしているものもある。

    -収益性も高い。

    -積極投資して行く。今後、今年を含めて5年間にて74億ドルを計画している。

    ② 電力・エネルギー分野

    2年前に多数計画されていた火力発電案件が頓挫している。PT政権の電力料金統制価格、水力発電・風力発電の開発再評価等の方針が明確になった後、民間投資の火力発電プロジェクト(IPP)が止まっている。

    天然ガス利用の小型Co-Generation案件のみが実施されている状況にて積極的な投資がない。

    ③ 新規大型プラント分野

    -製鉄及び紙・パルプ分野での新規大型投資案件が成約している。

    -交通システム案件ではBahia/Salvador市の車輌商談に引き続き、Rio市の車輌入札があったが、海外車輌メーカ(韓国勢)の低価格にすべて敗退している。

    ④ 重機械・製缶分野

    -紙・パルプ、石油化学の夫々の業界は好況で設備投資も堅調である。受注による仕事量は確保できている。

    ⑤ 農業機械・建設機械分野

    -アグロ・ビジネスの活況な市場を背景に農業機械業界全体では生産台数が、前年度同期比にて約21%伸びて好調である。更に農産物輸送のための道路整備向け建設機械の出荷も増加している。

    -輸出市場では北米 欧州 アジア アフリカ 中南米ともに好調に推移しており、特に欧州諸国とアルゼンチンの回復が顕著であった。実に輸出が増加した要因として米国Catapillar社、欧州Volvo社がホィールロータ機種の生産をブラジルに特化一極集中し、海外への出荷体制を確立したことにある。

    ⑥ 一般産業向け工具、ネジ及び軸受分野

    -精密、切削、対磨工具

    昨年下期より顕著な右肩上がりの好調を持続している。毎月新記録を更新しており、特殊工具にては50%増の状況もある。生産増は新規投資の稼動を待つ状況である。

    自動車、鉄鉱山及び鉄鋼圧延業界向けの出荷は好調が持続される。

    -電動工具

    従来主力の建設関連は横ばいの状況であるが、工業関係工具の需要増加で販売は対前年比20%Upしている。

    -ネジ

    国内経済の回復基調に伴い、ネジの主使用業界である自動車、同部品工業及び電気・家電業界の業容Upにより、ネジの生産・販売量も増加した。

    自動車部品メーカー向けは約40%増、電気・家電メーカー向けは23%増であり、上半期全体では昨年同期比13.7%の増加となった。

    -軸受

    ネジ業界同様に自動車向けが堅調であり、第2四半期から家電等の消費財の需要増も加わり極めて好調である。 供給側の生産能力不足と、材料費高騰がネックとなりつつある。

    =下期の展望=

    FGV(ゼッリオバルガス財団)が7月に工業分野の企業に対して行った調査では、事業経営環境の改善と将来への楽観的予想が確認されている。

    今後3ヶ月の「需要」に対する予想と「生産」に対する予想共に最高であり、6ヶ月間の事業の見通しについては <良好>と回答があった。

    上期の業績より、広範囲の業種を包含する当機械金属部会では好調分野として素材メーカーの製鉄ビジネス 及び農業・建設機械メーカーのアグリ向けビジネスがあり、更に一般産業向け工具・軸受・ネジ業界では、好調が昨年下期より持続している。

    ① 製鉄・素材

    中国経済の一時的な過熱調整等から 国際市況が軟化し、それに伴う一部鋼材の国内市場への回帰から国内需要が一時的に緩和される局面は予想されるが、全体としては引き続きタイトな状況は変わらない。

    ② 農業・建設機械

    国内農産物市況の景気より、現在の好調が持続する見込みであり、農業業界全体で 国内販売は約5%増、輸出は約25%増の予想である。   海外市場は中国経済の減速傾向、及び最近の北米の住宅着工件数減少傾向を判断材料とするが、一方他の市場はブラジル国内と同様に好調維持する見込みの予想である。

    ③ 工具・ネジ・軸受

    工具業界では下期の販売増加(20~30%Up)に備えて輸入の増大、または新規設備の早期稼動を期待する。

    ネジ業界では、自動車及び家電業界の増加率予想(上半期の半分程度)を見込み、昨年同期比の10~15%程度を見込む。

    軸受け業界では、全ての軸受けメーカーはフル生産状況にあり、設備投資を検討し始めている状況である。上半期を上回る予想。

    ④ プラント・重機械業界にては、消極的になった電力・エネルギー分野以外の紙・パルプ、製鉄及び石油化学の分野にて引き続き投資意欲旺盛で日系企業の大型案件の受注を期待したい。

     

    2. 個別テーマ

    =ルーラ政権の政策・方針による影響・課題=

    ルーラ政権にて唯一業績を評価されるのは、パロッチ大蔵大臣の緊縮財政であり、年金改革、労働法&税制改革は未完の状態である。特に、国内製造業及び輸入販売ビジネスでの複雑な税制は各社の重い負担になっている。

    複雑で不明確な税制を簡略化し、透明性を高めるための税制改革が早急に肝要と考える。

    2004年度より大幅に変更になったCofins問題は、政権の改革方針と大きく異なる。

    =個別業種に絞った課題=

    農業機械のJohn Deer社(米)、建設機械のCatapillar社(米)、Volvo社(ス)のGlobal生産体制方針として、ブラジル国内にて生産する機種を特化(本国での生産を打ち切り)して、国内及び海外への生産拠点と位置付けて投資している。また、世界の大手工具メーカ Sundwuch社(英)も本国の主力工場での生産を全てブラジルに移管した生産体制を構築している。

    日系メーカーのブラジル進出投資方針に参考になる事業事例が最近目立つようだ。

    以上

  • 繊維部会 二宮繊維部会長


    二宮繊維部会長

    今冬は寒波襲来で店頭在庫一掃

    下期も春夏もの生産が順調に行きそう

    二宮 東洋紡、二宮です。繊維部会の報告をさせて頂きます。司会の方からもう、言って頂いたんで、実を言うとその一言で終わるんですが、それだったら1秒ぐらいになる(笑い)。せっかく準備してきたんで、気合入れてご報告させて頂きます。

    まず上期の回顧ですけども、皆さんご存じのように繊維の小売市況は、昨年の後半、夏の天候不順により、夏物衣料の売れ行きがいま一つでして、本年1、2月 まで同じような傾向がありました。先行きを心配したんですが、カーニバル明けの3月ぐらいから少しずつ、売れ行きがよくなり、特にいまお話がありました 5、6月の寒波襲来。これで重衣料、これはウールなんかの厚手の生地ものですけども、それから軽衣料ですね、綿など使用の下着やシャツもよく売れ、お陰様 で店頭在庫は一掃されました。
    この効果は、あとでご説明します各分野の上期業績を押し上げる要因となり、また、下期の春夏もの生産が順調に行きそうな期待感を持たせております。
    ブラジルでは日本と違い、生産段階と小売段階が直結しております。日本の場合は間に中間段階、問屋さんと言うような流通段階があるものですから、えー、備 蓄在庫(中間在庫)という概念があり、小売屋さんが売れても、生産段階が良くなるかは、なかなか読みづらいけれども、ブラジルでは大変に読みやすいと言う ことです。

    綿糸、羊毛糸は堅調

    ま ず糸の生産販売動向ですけど、綿糸、綿の糸。国内販売は、小売市況の好調さや地方選挙需要により好調に推移しました。地方選挙用って言っても、一寸分かり にくいと思うんですが、選挙用のTシャツ、あれは、綿糸の空紡糸という安い糸で出来ております。で2年に1度選挙がありますので、まあ、非常に我々にとっ てはいいと言う形です。
    それから綿糸の輸出は、為替のレアル高と国内原綿高により昨年比、量で68%、金額で92%と不調に終わっております。 採算面では昨年半ばからの中国要因による原綿の国際相場、これは大豆と同じですが、悪化が予想されたが、年初からの値上げとかPIS、Cofins分の転 嫁が比較的スムースに行き、それとその後、原綿価格が下落して、業績は堅調でありました。もっと有り体に言えば、「お陰様で儲かりました」と言うことです (笑い)。

    羊毛糸は原毛相場が落ち着いたことと装飾用途の需要を確保出来たこと、寒波によるセーターの販売が好調でして、業績も堅調でした。
    ブラジルで絹糸をやっているのをご存じの方は、多分あまりいないと思うんですが、絹の糸は生産量の80%が日本向けでして、これまで業績不調だったのが30%の値上げにより、やや好転したと言うことです。

    縫製品生産も好調

    それから生地縫製の生産販売動向ですが、これも、まあ好調でありました。
    ジー ンズは相変わらず好調です。ブラジルがジーンズに大変強いというのは皆さん、多分ご存じだと思うんですが、相変わらず好調で、付属品も好調を維持してい る。もっと具体的に言うと、石川さん(YKK)のところのジッパーも大変によかったと言う。YKKさんから数字も貰らっていますけど、余り言うといかんか も知れないので、「よかった」ということで(笑い)。
    輸入生地は、5月からこれにもPis/Cofins 9.25%が課税されています。結果的には12%ぐらいコストを上げるので、採算的には苦しくなっていると言うことです。

    綿花は国内消費向けが輸出指向に変更

    そ れから最後に綿花の生産量と価格ですが、ブラジルの綿花生産は、これまで主として国内消費向けでありまして、国際相場へのリンク度が非常に少なかったんで すが、近年、オーストラリアの作付け面積の減少、それから中国の買い付け量アップ等により、国際的に買い付けられ始めております。で、2000年から生産 量が急増しており、本年の生産量は前年比68%アップの125万トンと予想されております。輸出はそのうち 36%の45万トンと見られており、これはわれわれの国内紡績に多少影響ありまして、輸出のほうが先物契約、国内紡績は原則、近場買い契約です。また輸出 はドル決済、費用ともドル決済と言うことでお百姓さんは出来れば輸出したいと言う感じでして、われわれの買い方に影響が出ています。

    次に下期の展望ですが、まず繊維の小売市況のほうは、先ほど申し上げたように寒波の襲来や在庫一掃ということで、小売店の資金繰りは大変楽になり、春夏衣 料の店頭導入がスムースに行くと予想されております。8月の気温次第ですけれども必ず活発化すると言うふうに縫製産業は楽観しております。

    それから最近の報道によりますと各種の経済指標、いろんな指標は上向きのようで多分、消費傾向はさらに上向くと予想しております。まあ、多少懸念材料があ りまして、二、三申し上げますと、まず綿糸の生産販売は、国内の原綿動向がちょっと読みづらい段階に来ております。綿にも下級綿、上級綿がございますが、 下級綿は相場が下がりすぎて、来年の作付面積はダウンするのではないかと言う感じが一つあります。
    それから上級綿は、相場が今後急騰するという 見方はありませんが、量に関しては二通りの見方が現在あります。最近は天候が不順で、そういうのが継続して行きますと、生産量が少なくなり、手当に困るん じゃないかと言う見方が一つあります。 もう一つは、売り惜しみって言いますか、一寸相場が下がっていますので、売り惜しみしが見られます。えー、そうい う玉が出現するかどうか。それからまた、船積みが非常に出来にくい。そういう輸出玉の還流で数量の心配がなく価格もダウンするか。まあ、いい方と悪いほう と我々にとっては、二通りの可能性があるということです。

    今後綿花相場は中国次第、綿糸輸出はコンテナ不足が業績に影響予想

    そ れから綿花の国際相場は中国次第という点で、下期から来年にかけては変わらないが、来年度の収穫は北半球綿産国で非常にいいんじゃないかと皆みており、全 世界の生産量は多分上がって行くと見られております。価格弱含みというのが大方の見方ですが、これも中国動向次第ということです。

    懸念材料は、やっぱり綿糸輸出ですね。これは船便とかコンテナの不足、船賃の高騰、レアル高の傾向、それから、アジア勢との競争、他、いろいろありまして前年実績は下回りそうと言うことです。
    あと、コスト的にはやっぱり電力料金の高騰があります。サンパウロ州ですでに30%、一番安いサンタ・カタリーナで20%と言うようなかたちです。30%も上がりますと大変にコストを押し上げます。
    絹糸は仕入れ値を17%アップしたにも関わらず、養蚕の休止に歯止めがかからず、原料繭の手当に苦労しそうであると言うことです。
    それから、薄地織物の輸出ですけれども、アルゼンチンの輸入規制を心配しております。クォーター等の規制が実施されると大きな打撃を受けると言うことです。

    FTAAではいい方向だが、中国とのFTAは繊維に打撃

    そ の他ですね、最近、FTAの問題をいろんなところが取り上げておられますが、我々にしますと、もちろんアメリカとのFTAは非常にいい方向で、輸出しやす くなるけれども、最近、中国との接近ということで見ますと、もし中国とのFTAでとくに縫製品。そちらのほうの関税が下がりますと、繊維産業界はかなり打 撃を受けるじゃないか。製品メーカーが少なくなりますから糸が売れなくなると言うような事があると思います。

    あと、「ルーラ政権下の影響と課題」っていうテーマがありましたけれども、これは他の業界とほとんど同じでして、当業界特有の問題というのはありません。 まあ、普遍的なことですが、今後やはり税金の問題ですね。それからストライキ頻発の問題。これは、原綿輸入と原糸輸出に影響が出ています。
    それとあと、センノッタ、メイアノッタ、まあ、そう言うような事です。それからあとですね、これは、課題にはなかったんですけれど、ブラジルの繊維産業、まあ、この機会にちょっと宣伝しておきます。

    綿花生産、ブラジルは世界第6位

    ブラジルの繊維産業に就労する人口は143万人です。工業就労人口の約11%ということで、副大統領さんもご自身の繊維企業を持っていますから、このブラ ジルでは、そういう関連の発言力が強いと見ていますんで、さっき中国との問題を申し上げましたが、多分政府は国内繊維産業の保護を当分続けるだろうと見て います。
    それから先ほどの綿花の話ですけれども、ご参考までに綿花、先ほど125万トンというようなお話しをしましたが、これは世界第6位ですね。1位は中国、487万トン、2位がUSA396万トン、3位がインド259万。パキスタン4位で160万トンですか。

    司会 それではご質問を受けたいと思います。はい、どうぞ。

    ブラジル繊維品の輸出競争力は?

    金岡 中国のFTAの影響などについてご説明頂きましたが、輸出という意味でブラジルの繊維製品、アパレルと言うことにしたらいいと思うんですが、品質、価格、デザイン面で世界的にどの程度の競争力があるのでしょうか?
    サンパウロ州というのは、比較的繊維産業がいろいろやっているところで、先日、サンパウロ州のFiespのミッションが日本に行った時も、かなり繊維関係 のメ-カ-さんが参加されたようですが、彼らの話を聞くと結構世界的にも、アメリカ、ヨーロッパに出ていると。あるいは、サンパウロ・ファッション・ ウィークもそのうちにパリ、パリコレ近くまでやるんだと意気込みはあるようですが、二宮さんの、ご専門のところから見てどの程度の力があるのか教えて頂き たいと思います。

    ブラジル品は高関税で守られているが、ジーンズは圧倒的に強い

    二宮 ま ず輸入品との競合関係ですが、私のところは綿紡なんで、綿糸に関係のあるところを申し上げますと、2002年の綿糸の輸入量は、1800トンで対国内生産 比0.2%。それから綿布の輸入量は5千トンで0.6%。縫製品の輸入量が2万1千トンで 1.6%と言うことからみると、ブラジルは大変競争力があると見えますが、実は関税が非常に高く製品で18%、糸で16%、原綿で10%の関税に守られて いるので国内にまだ入っていないということで、すなわち国際競争力があると言うことではありません。
    それから綿糸の輸出。先ほど輸出を申し上げましたが、まあ、バクッといってブラジルの糸の生産量は約100万トンで、そのうち輸出が昨年度で4万トン程度、2003年で4万6千トン。全体にまあ、国内産業ですね。
    その中で一番強いのはジーンズで、ジーンズはもう圧倒的に強い。これはもう問題ない。全世界の中で一番強いんじゃないですか。それからあと製品で強いのは水着。

    ファッション性はまだだが、モデルは世界一の折り紙つき

    さっきのアパレル・ファッション。私の知っている限り、今日現在、衣料品では世界でファッション性があるとは認められていないのではないですか。
    ただ、一番認められているのはモデルですね、モデル(笑い)。これは、まあ、私もそうですが、日本から来た人は特にそう思うように。モデルは世界一位。こ れ間違いないです(笑い)。これはあの、主観と独断ではなくて、ある雑誌にも載っています。そういう意味におきましては、モデルが大変にいいので着ている 物がよく見える(笑い)。で、その中でも水着は特にですね、えへへへ、これだけ小さくて、あと全部身体ですから、大変に水着もよく見えるとと言うことじゃ ないですか。水着はもう日本でも買い付けています。

    だからまあ、そういう意味でブラジル・ ファッションは近い将来大躍進するであろうと言う期待感はありますが、国内の縫製レベルはそれほど高くないと思います。私の知っている限り中国のほうが上 ですね。あの、要するにいい物をつくるという縫製段階でははるかに上と言うことです。南米では、アメリカから型紙を持って来てその通りにつくると言うこと は、かなりやっていると聞いております。まあ、ざっと、このようですが、商社さんの商売からみると期待はずれのような答えになるかも知れませんが、モデル は輸出できると思います(笑い)。

  • 繊維部会(レポート)

    2004年上期の回顧と下期の展望

    Ⅰ.上期の回顧

    1.繊維小売市況

    昨 年度後半の市況は夏の天候不順によって夏物衣料の売れ行きが今ひとつであった。本年1~2月は同じような傾向で先行きを心配したが、カーニバル明けの3月 から少しづつ売れ行きが良くなった。特に5~6月の寒波襲来で重衣料(ウール等使用の厚手生地物)が売れ、ついでに軽衣料(綿など使用の下着やシャツ等) も売れて、店頭在庫は一掃された。この効果は後述する各分野の上期業績を押し上げる要因となり又下期春夏物生産が順調にいきそうな期待感を持たせている。

    2.分野別状況

    ブラジルでは生産段階と小売段階が直結している。日本の問屋のような中間流通段階がなく流通在庫、備蓄在庫はほとんど無い。従って小売りの売れ行き動向がすぐに糸販売、生地販売、縫製の各段階の売れ行きを左右する。

    (1)糸の生産販売動向

    綿糸(リング糸、空紡糸)の国内販売は繊維小売市況の好調さや地方選挙用需要により好調に推移した。綿糸輸出は為替のレ   アル高と国内原綿高により昨年比、量で68%金額で92%に終わった。

    採算面では昨年半ばからの中国要因による原綿の国際相場高騰で悪化が予想されたが年初からの値上げやPis,Cofins分の転嫁が    比較的スムースにいった事、その後原綿価格が下落した事によって業績は堅調であった。

    羊毛糸も原毛相場が落ち着いたことによって、椅子ばり等の装飾用途需要を確保できたことや、寒波によるセーター販売好調により業績は堅調で    あった。絹糸は生産量の80%が日本向けでありこれまで業績不調であったが30%の値上げによりやや好転した。

    (2)生地、縫製 の生産販売動向

    小売冬物製品好調を受けて厚地、薄地とも好調であった。ジーンズは相変わらず好調で、付属品も好調を維持している。輸入生地は5月か      らPis,Cofins9.25%が課税され(結果12%↑)採算的には苦しくなっている。

    (3)綿花の生産量と価格について

    ブラジルの綿花生産はこれまで主として国内消費向けであり国際相場へのリンク度が少なかった。しかしオーストラリアの作付け面積減少、中国の    買い付け量↑に伴い国際的に買い付けられ始め、2000年から生産量が急増している。本年の 生産量は前年比68%↑の125万トンと予想さ    れている。輸出はそのうちの36%、45万トンと見られている。輸出は先物契約であり(受け渡しも 先)国内紡績は原則期近契約である。本年上    期は天候不順の影響により上級原綿の生産が少なく、また輸出デリバリー優先により(国内紡績は)買い付 けにやや苦戦した。

     

    Ⅱ.下期の展望

    1.繊維小売市況

    寒波襲来、在庫一掃によって小売店の資金繰りは楽になり春夏衣料の店頭導入はスムースにいくと予想される。8月の気温次第で商品仕入れの本格開始が9月に ずれ込む恐れはあるが必ず活発化すると縫製段階は楽観している。さらに最近の報道によれば各種経済指標は上向きのようであり消費性向はさらに上向くと予想 されていることも製品生産段階の下期展望を明るくしている。この楽観は原糸販売、生地販売、輸入製品販売各層共通である。懸念材料は各分野によって異なっ てはいるが多少見受けられる。

    2.懸念材料

    (1)綿糸生産販売

    ①国内原綿動向が読めない

    下級綿 相場が下がりすぎて来年の作付け面積↓の恐れがある。

    上級綿 相場が急騰するとの見方はないが量に関して二通りの見方がある。

        a.天候不順継続で生産量が少なく、手当てに困る事態になるか

    b.売り惜しみ玉の出現と船積みが出来ない輸出玉の還流で数量の心配がなく、価格も↓する。

    ②国際相場は中国次第という点で下期から来年にかけて変わらないが、北半球綿産国の豊年期待のもと全世界の生産量↑が予想されている。価格弱含みというのが大方の見方であるが、中国動向が読めず従って相場も読めない。

    ③綿糸輸出は船便やコンテナの不足、フレッチの高騰、レアル高傾向、アジア勢との競争の中で販売量、価格とも↓傾向にあり前年実績を下回りそうである。

    ④電力代の高騰は4月からであるが下期はフルにマイナス寄与してコストを押し上げる。アップ率は州により異なるが10~30%であり企業努力ではカバー出来ず、業績↓が確実である。

    (2)絹糸では仕入れ値を17%↑したが養蚕の休止に歯止めがかからず原料繭の手当てに苦労しそうである。

    (3)薄地織物ではアルゼンチンの輸入規制を心配している。クオーター等の輸入規制が実施されると大きな打撃を受ける恐れがある。

     

    Ⅲ.その他

    1.ルーラ政権下の影響と課題

    (1)税金の↑と煩雑さPis,Cofinsの課税範囲

    輸入課税

    (2)ストライキ頻発原綿輸入の遅れ、原糸輸出の遅れ

    (3)インフレの押さえ込みは評価するが、景気対策が少ない。

    (4)センノッタ、メイヨノッタ企業問題の放置→安値玉対策

    2.中国とのFTAで糸、生地、製品の輸入関税が無くなると繊維生産業界は壊滅状態になる恐れがある。(綿花生産は除く)

    以上

     

  • 食品部会 疋田食品部会長


    疋田食品部会長

    輸出は好調だが、船腹、コンテナ不足に悩まされる

    国内はまだ素直に「儲かった」といえず、下期に期待をかける

    疋田 食品部会の三井アリメントス、疋田でございます。食品部会上半期の回顧では、食品部会を輸出と国内の二つに分けてお話します。輸出は引き続き好調を持続しています。ただ好調を持続しているが故にいろいろな問題が起こっています。

    それは船積みの問題。それから積み出し港の処理能力不足の問題。それから商品を詰めるコンテナ不足の問題などです。
    一方、国内市場は、昨年は停滞状況にありましたが、今年は、回復の兆しが見えています。食品全般については、生産量で前年同期比3%程度の伸びと言われていま すが、食品でも多くの種類の商品があり、一部の商品を除いては国内消費市場での好況感がわれわれメーカー、あるいは販売会社のほうには、もう一つ実感され ておらず、二宮さんの繊維部会のように素直に「儲かった」と言えるような状況にはまだありません。従って、下期に期待をかけているのが現状です。

    もう少し詳しく申し上げますと、輸出のほうは先ほどから何度も出ております大豆、これは今年の収穫が5200万トンという予想でしたが、天候上の干ばつとか病虫害の影響で4980万トンと当初の予想よりも減産になっています。
    しかし輸出は依然好調でして、中国との品質問題も6月下旬に政府間で一応の決着を見まして、これですべてが解決したとは思えませんが、これからも中国向けの輸出を中心に好調持続が期待されます。
    来年の大豆の収穫量は、今年の約5千万トンから6千万トン規模にまで拡大すると見込まれています。

    大豆収量は6千万トン規模見込み - コーヒ園が大豆畑に変わる

    実際、私はコーヒー屋でして、ミナス・ジェライス州のコーヒー農園をまわっていましても、つい数ヵ月前までコーヒー農園だったところがコーヒー樹を切り倒して、大豆畑になっていると言う例がいくつもあります。
    ブロイラーですが、これは上半期で111万トン。これは前年比21.5%増。砂糖は上期で630万トン。これは前年比53%増という記録的な増加になっております。
    オレンジ果汁は135万トン。 これはブラジルの輸出の新記録です。それからコーヒー、これは、コーヒーの豆とインスタントを合わせた数量ですが、上期で 1170万袋。これは数量では前年比約7%ダウンです。しかし金額では8億6600万ドルで前年比19.4%増となっています。コーヒーもここ3、4年続 いた歴史的な国際相場の安値から少し回復して来て、昨年2003年の上期の平均から比べると、国際相場の指標であるニューヨークの先物市場価格で平均約 16%値上がりしている。これが、輸出金額が伸びている原因です。

    食品添加物の対日輸出増加

    あとは食品添加物、香料等です。これは主に日本向けですが、日本市場の末端消費が好転している結果、これらの輸出も増加しています。
    ただ先ほど、触れましたように、船腹の不足、また、船に積んだはいいけども、抜港により貨物が本来の仕向地で降ろされないと言うような問題も起こっており ます。コンテナ不足による港での滞貨、それによる保管費用の増加が報告されています。それから、サントスはじめ積出港の、貨物の処理能力の不足というよう な、インフラ上の問題も表面化して来ています。
    国内では、これは今年の上半期に総需要の拡大が期待されたけれども結果としては1.3%程度、わずかに前年を上回る程度で、期待ほどには盛り上がりませんでした。
    価格も若干下がり気味で、シェア拡大、数量拡大をメーカーさんは努力されましたが、各社の評価としては厳しい上期であったということです。
    乳製品市場は競合が激しくて、特価販売が常態となっており、乳酸菌飲料、これは特に競争が激しくて、生産量で前年同期比13%減。それからヨーグルト類が4.7%減、デザート類が18%減と、この辺は前年対比で生産量が落ちております。

    調味料、コーヒー共に増加 - 日本食レストランは飽和状態(サンパウロ市)

    調 味料のほうは前年同期比で2%の増で、金額は19%増と、比較的順調な推移となっています。それからコーヒーは、国際相場が16%程度、値上がりしたこ と、また、ブラジル国内市場の成長が依然として続いていることから数量、金額ともに前年比増加。ブラジル・コーヒー工業会(Abic)の発表では国内の コーヒー市場は前年比5%程度拡大するだろうとの予想です。
    それから日本酒、しょうゆ等ですが、これらの主要顧客である日本レストランについて、以前、サンパウロ地区で600軒あるという記事が出ました。 皆さんもご覧になったと思いますが、どうもこれは誇張された数字のようで、300軒から350軒が実態のようです。
    ただ今年に入って、新規開店のペースが昨年に比べてだいぶ落ちて来て、とくに市内では新規開店が減っており、日本レストランは飽和状態、最近の新規開店は地方都市のほうが多いそうです。
    販売の状況としては上期、お酒は前年同期の水準は数量的には確保出来たが、競争が厳しくて採算的には苦しいと言う報告がありました。

    業界は政府にトレーサビリティ-体制確立を希望

    下期輸出は引き続き好調を持続。ただ、消費国から品質管理の要求が更に強まると思われ、品質管理の一環であるトレーサビリティー体制の確立が必要であると思われます。
    それから国内は雇用の更なる改善等によって、景気回復が末端商品に及ぶことが期待されており、すでに6月は、大手スーパーの売り上げが前年同期比11%増で、下期がよくなるとの予想の一端がすでに見えて来ているような気がします。
    ブラジル政府への要望ですが、これはもう皆さんが挙げた項目と殆ど同じですが、トレーサビリティー体制の確立のために、ブラジル政府が積極的に関与して欲しいという希望がありました。
    それから輸出港の能力改善への設備投資、インフラ整備。先ほどから出ております税金の簡素化、明確化。それから、まあ、一般的な話しですがインフレの回避、そして通貨の安定というのが食品部会からの報告です。以上です。

    司会 それではご質問をお受けしたいと思います。いかがですか。はい、どうぞ。

    多田(伯国三菱商事) ブラジル政府への要望という、そのトレーサビリティー体制確立のために、ブラジル政府に関わって欲しいと言うことですが、もうちょっと具体的に言うと、どう言うことなんでしょうか?

    トレーサビリティー情報、チリの例

    疋田 こ れは、一つにはチリで、チリ財団と全国商業会議所が、チリの産品、食品の業者向けに、インターネットで「食品トレーサビリティー情報」を提供するようなサ イトを立ち上げて、それをチリ政府が積極的にバックアップした例があるとの報告がありまして、それと似たような事を実現するための後押しが欲しい、という 希望がありました。

    伯国産と輸入日本酒、三井、三菱の競争?

    司会 すいません。私いま一寸、医者から禁酒を命ぜられているんですが、先ほどのご説明で、お酒の価格競争が厳しいって言うお話しがあったんですが、例えば東麒麟に対する対抗馬はあるんでしょうか?

    疋田 現在、市内の日本レストランにおいてあるのは東麒麟に代表される国内生産物、それと輸入のお酒ですね。輸入のお酒も日本から輸入された製品と、カリフォルニアから輸入されたお酒などがあります。それぞれに価格は違いますが、全体が、競合相手とおっしゃっています。

  • 食品部会(レポート)

    1. 2004年上期の回顧

    「総 論」

    輸 出農産品目は引き続き好調を持続しているが、それが故に、船腹不足、積出し港の処理能力不足、コンテナー不足などの問題が表面化している。一方、国内市場 は、停滞状況にあった市場にも回復の兆しが見られており、食品全般については生産量で前年同期比3%程度の伸びが伝えられる。しかし、一部の商品を除いて は国内消費市場での好況感はまだ実感されておらず、下期に期待がかかる状況となっている。

    「輸 出」

    主要輸出品目である大豆は、中国との品質問題が6月下旬に政府間で一応の決着を見たものの、今後も影響は懸念される状況であるが、2005年クロップは60百万トンを上回ると予想されており、輸出の主役であることは変わらない。

    ブロイラー輸出は1-6月で1,110千トンと前年比21.5%増。砂糖は上期6.3百万トン(前年比53%増)。オレンジ果汁1,351千トンと輸出の新記録達成。コーヒー(豆及びインスタント合計)数量では上期11.7百万袋と前年比92.8%なるも、金額は866百万ドルで前年比19.4%増。

    日本市場の末端消費が好転した結果、食品添加物、香料等の輸出も好調。一方、積出し時の問題が数多く報告された。船腹の不足、船の跋港による貨物の仕向け地未着問題、コンテナー不足による滞貨及びその保管倉庫費用の増大、積出し港の貨物処理能力不足等々。

    「国 内」

    即席麺は、総市場拡大の期待に反し、前年を僅かに上回る程度で、販売価格も幾分下がり気味、シェア、数量拡大を図るも厳しい上期となった。乳製品市場は競合激しく価格は特価販売を余儀なくされている。

    乳酸菌飲料類は特に競合厳しく、生産量で前年同期比13%減、ヨーグルト類が4.7%減、デザート類が18%と大幅な落ち込み。

    調味料市場は前年同期比数量102%、金額119%と伸長を見せ順調な推移。コーヒーは、国際相場が前年比約16%程度値上がりしたこと、ブラジル国内市場の成長が依然続いていることから、数量、金額共に前年比増加。国内市場の規模は、焙煎業者協会(ABIC)の発表では前年比5%程度の成長という。

    酒、醤油等の主要顧客である日本レストランは、以前サンパウロ地区で600軒と報道されたが、実際には300-350軒ほどである。新規開店のペースも昨年の半分程度に落ちて来ており、地域的にもサンパウロ市内はほぼ飽和状態、現在は地方都市の方が動きは良い。

    上期の酒の販売は、前年同期の水準は確保できたが、価格競争は激化している。

    1. 下期の展望

    輸出は引き続き好調持続の見通し。消費国からは、品質管理の要求は更に強まると思われ、トレーサビリティ体制の確立が必要。

    国内は、雇用の更なる改善等により景気回復が末端消費にまで及ぶことが期待される。既に6月には、大手スーパーの売上、前年同期比11%増とその一端が見られている。

    2. ブラジル政府への要望

    • トレーサビリティ体制の確立のための伯政府の積極的な関与
    • 輸出港の能力改善への設備投資、インフラ整備
    • 税金の簡素化、明確化
    • インフレ回避、通貨の安定

     

    以上

  • 電気電子部会 瀬山電気電子部会長


    瀬山電気電子部会長

     

    1-6月はきわめて好調だった家電業界

    カラーデレビは今年700万台を超えるいきおい

    瀬山  電気電子部会から、ご報告させて頂きます。パナソニックの瀬山でございます。われわれの部会は、事業している企業数、登録会員社、25社あります。それを 四つに分けまして、家電耐久消費財7社、電子部品産業6社、通信・電力・産業機器7社、精密事務機器5社という構成で、それ以外に個人とか、オブザーバー で部会を構成致しております。

    今日、あの、三つのポイントからご報告をしたいと思うんです が、一つは業界の全体の動きを代表すると言うことで、家電のこの上期全体の動き。二番目が会員企業のこの上期の実績並びに下期の見通し。それから、三番目 に、ルーラ政権の影響と課題、というポイントからご報告したいと思います。
    最初に業界の動きですが、これはいろんな統計資料等で発表されており、ご覧になられている方もおられると思いますが、一部推定を含みます。
    2004年の上期、1~6月ですね。これはメーカーとしての出荷台数を見て行きますと、カラーテレビが前年同期比160%、オーディオ機器が115%。そ れからDVDの再生機214%、倍以上ってことです。それから電子レンジ146%。車に備え付けられていない、市販されておりますカーステレオが117% と言うことで、浅賀さんのほうからもご紹介ありました通り、家電業界1~6月のメーカー出荷台数としては非常に好調です。

    で、これが前年同期比です。前期比、去年の7月~12月とを見ますと、カラーテレビが105、オーディオ機器で 69、DVDの再生機が100、電子レンジが117、カーステレオが100%で、傾向的にはカラーテレビ等の去年の7月以降、前年同期比で上回り始めた傾 向が今年の上期も続いていると言うことで、去年の1~6月がまた、前年、前々年比で悪かったいうことで、数字が非常に大きく見えると言うふうにご理解頂い たらいいと思いますが、おしなべて、家電のメーカー出荷台数は、申し上げた通り非常に好調というのが、実体であります。
    ちなみに代表的なカラー テレビの年間の見通し数字を見ますと、今年1~12月で700万台を超えるであろうと言われております。この台数は1997年にさかのぼり、その時に 800万台という数字があります。その前年96年が870万台で、それ以降は実は500万台前後をウロウロしておりまして、7年ぶりの大台700万と言う ことで、非常に活況と言えると思います。

    家電関係の価格は、工業材料値上げとは反対に値下がり

    一方、では単価は先ほど化学品部会とか、機械の部会のほうから、鉄の値段、鋼材の値段とか、工業材料が2割上がったとか、2ケタ値段を上げたとか、われわれは全部被害者であります(場内笑い)。
    そういう、値上げを受けながら、これは工業界の実際の数字ですが、じゃあ価格はどうなっておるかと言いますと、私共の一般消費家電関係、テレビは去年の同 じ6月に比べて9%値段が下がっております。今年の1月に比べて6月はマイナス1.5と値段が下がっております。おしなべてですね、大体8%、9%前後。 それから今年1~6月を見ましても、価格が、1.5~2%下がっている。もちろんヘアルベースですが、それが価格実態でありまして、インフレが抑えられな がら、1~6月で消費者物価指数3.5%だと思うんですが、それ以下、マイナスの単価下落が続いておる業界と言うことも一つの特徴だと思います。

    もう一つの特徴は、マナウスのデジタル機器の生産が活発に行われております。プラズマテレビ、デジタル・スチール・カメラ、それからDVDレコーダー等の現地生産が始まっておると言うのも特徴であります。
    では、なぜこれだけメーカー出荷台数が増えておるかですが、一つはやはり、大手量販、流通による「10カ月金利ゼロの割賦販売」という信用売りの拡大が、 このメーカー出荷台数増加の大きな要因ということで、それ以外は会員メンバーが集まって部会をやっても「なかなかいい要素ないね」と「でも売れているね」 と言うところです。

    二番目に、会員企業でずっと、毎年、年2回アンケートを採っております。上期の販売はどうであったか、その施策はどうであったか、業績はどうであったか、という観点であります。
    家電関係で行きますと、やはり、いま申し上げましたようにメーカー出荷の好調な数字を背景にして、少ないところで2割、多いところで、まあ、本格生産を始めた特殊要因から「2倍になりました」、というところを除きまして、やはり20%から30%以上は伸びています。

    部品、精密事務機器も増収、業績も「よかった」

    で、それのバックにあります、部品産業もやはり120%から130%伸びています。通信産業機器も100%から一部180%。精密事務機器で100から113%。と言うことで、上期は皆さん増収であったと言うことです。
    そのなかで企業業績はどうだったか、ですが「大変よかった」が3割。「よかった」が4割でですね、7割が「よかった、大変よかった」で、あとの3割も「計画通り」と言うことでした。
    昨年同じようななかで比較を一寸みますと、昨年、「よかった」というのが3割、「悪かった」というのが5割で、「計画通り」っていうのが2割ありました。で、昨年「計画通り」の2割はですね、「計画通り悪かった」と(笑い)。

    今年は「計画通り」の3割も「計画通りよかった」と言うことですので、「おかげ様で、二宮さんのところ程じゃあないかも知れませんが、まあまあ」という業界だと思います。
    下期につきましても、いまの流れのなかで、後ほど述べます不安要因がいくつかありますが、業績見通し、売り見通しとしては家電関係すべて、大体低いところで、「前年下期並み」。多いところで「120から130%の増収を見込んでおります」と言うことです。
    えー、 「よかった」のやはり、要因の大きなものは為替の安定。私共の業界、マナウス生産の比重が家電、部品、それから精密事務機器を含めて高こうございます。そ のなかで、やはり輸入比率が高いと言うなかでは、やはり為替の安定が業績の安定に非常に寄与をしたと言うことかと思います。

    リストラ、ソフト化後に通信産業機器は好調

    だが、今後大きくのしかかる税制恩典一部廃止のインパクト

    ま た、一つ特徴的なのは通信産業機器。従来、インフラ整備一巡、民営化一巡等で苦しんでおられ、リストラを行ったり、仕事の中身を大きくソフト化されたりと 言うことで、通信網の整備の進捗等からインフラ環境整備の投資増加と言うことで、通信産業機器の業界の皆さんも非常に好調というのが特徴だと思います。
    三点目の「ルーラ政権への影響と課題」という観点ですが、これは非常に大きな問題があります。マナウス生産での製造事業に対する恩典の変更です。非常にド ラスティックな変更が行われております。2004年の4月から中間材メーカー、まあ、特殊部品のメーカーと言うのをイメージして頂けるといいんですが、州 税のICMS(商品流通サービス税)の恩典がなくなりました。これで、部品価格が約15%、値上げ要素になっております。
    それから、実は今週か らといいますか、2004年8月からマナウス域内で調達する部材についてのPis/Cofinsの恩典が撤廃されました。 これは、あの、商品価格に対し てインパクトが5%から8%あります。これは今月からで、私、こんなところで悠長な話をしている場合じゃない。見てみますと、家電の皆さん、誰もここに来 られていないようです。

    下期は不安をいっぱい抱えて走っている業界

    そ れから10月から、アマゾナス州以外の12州が、州外調達品のPis/Cofinsの恩典を撤廃するとかですね、税制変更、恩典変更によりもろに悪影響、 コストアップ影響を受けております。これについては市場価格への反映と言うことなんですが、先ほどご紹介致しましたような市場価格の状況のなかで、これか ら、家電、精密事務機器等マナウス生産部分につき、これを市場価格にいかに反映できるのか、転嫁できるのか課題でありますが、過去マナウス製造事業につい ては、「輸入部材を入れ過ぎ、輸入でドルを遣い過ぎる」と。「マナウスでもっと物を買え」と。それから「ブラジル産品を使いなさい」と業界に対して非常に 大きな働きかけがありました。
    今回の税制変更、恩典の撤廃は、それを真面目にやったところがみんな割りをくらうと言う非常に腑に落ちないというか、一貫性のない方向性であります。
    実は一昨日もブラジリアのほうで、業界、それからアマゾナス州政府を含めた陳情を行っておりまして、私共からも人を派遣しましたが、その時の様子を聞いて おりますと、やはりパロッチ大臣の力が非常にこの面では強くて、増税、税収アップと言うところに対する、閣内の力が強くて、今回の恩典撤廃が非常に、いま のところ、ロビー活動を展開するなかでも不利な状況にあると言う実態でありまして、非常に危惧をしております。

    ということで、私共の電気電子部 会の各メーカーはご紹介しましたように非常に好調な、業界出荷ベースではありますが、この下期に向けては税金の、恩典廃止の問題、並びに為替動向等、非常 に不安をいっぱい抱えて、一生懸命走っていると言うことです。以上を、電気電子部会の報告とさせて頂きます。

  • 建設不動産部会 阿部建設不動産部会長


    阿部建設不動産部会長

     

    景気回復の実感がなかった上期

    阿部 7月から建設不動産部会の部会長をさせて頂いています、戸田建設、阿部と申します。よろしくお願い致します。
    われわれの部会のほうは、いままで、聞かせて頂いたみなさんの部会とは違って、あまり好景気な話はありません。今回の部会に参加して頂いた会員の方がアン ケート調査を含めて4社と、非常にその分母が少ないものですから、全体をまとめた形で発表させて頂くと、なんか一寸、えー、無理があるかなと言うことで、 大変恐縮ですが、箇条書き的に各社さんのポイントを述べさせて頂きたいと思います。
    急に話しが飛ぶような所もあるかと思いますが、ご容赦願いたいと思います。

    まず、2004年上期の回顧ですが、全体的に設備投資が低調で、昨年後半から期待されていたほど発注案件は増えなかったと。景気回復の実感はあまりない。
    二点目として、4月以降に資材の値上がりが顕著になり、収益を圧迫している。その影響もあり業績確保のため、人員削減を余儀なくされている。ブラジル国内 の主要建設資材の値段は、需給バランスによる市場価格というよりも、一部の寡占業者による価格操作により決められている面が強いため、先の見通しが立てに くい。

    三番目として建材販売は4月以降、回復傾向にあるが、価格的には非常に厳しい。
    四番目。昨年顕著に見られた工事進捗の遅れは、今年は少なくなっている。
    五番目。サンパウロ近郊のABC地区のアパート販売は低調で、成約ずみローンの、CEF(連邦貯蓄銀行)の資金不足で実行が遅れている、ということなどが、会員の方のお話であがっております。

    下期も企業設備投資は低調推移見込み

    次に、副題にもありますポイントに触れながら、下期の展望をのべて見ますと、まず一番目としまして、景気回復を期待はするが、現実には明るい見通しとはい えない。失業率が依然高く、また、ガソリン、交通、通信関連費値上がりの影響で、可処分所得も目減りしているため、国内向けの設備投資は、今後も低調に推 移し続けると思われる。とくにルーラ大統領が、まるで独裁政権をとったように外遊や専用機購入など景気回復とは無関係な行動をしている限り、景気回復はあ り得ない。この辺は、先程からの各部会の発表のですね、それらの流れとまるっきり逆の感想が出ているので、ちょっと面白い感じも致します。

    二番目は、市長、市議会選挙が間近に迫り、公共工事は停滞し市場の活気が失われる。この辺は逆に、そういう選挙目当てに公共事業の発注が増えるのでは、と 言う意見もあったのですが、そう言うことが起こるのは半年からそれ以前であると。ごく間近になると、発注業務はされないという傾向があるということです。

    サンパウロ市内の集合住宅物件は回復傾向

    三番目は、サンパウロ市内の集合住宅物件。これに関しては昨年のゾーニング変更の影響で、建築許可取得件数が、昨年は、一昨年に比べて20%減少しました が、今年は回復して一昨年程度、年間で600~650件。これはあくまでも正規に建築許可を取得した件数なので、まあ、取得しないで建設した物件も数多く あると言うことで、総数が一寸つかめないが、いずれにしましても、サンパウロ市内での集合住宅物件に関しては、非常に回復傾向にあると言われています。

    四番目。一部輸入に頼らざるを得ない資材に関しては、フレート等の上昇が大きなコストアップの要因となっている。

    五番目。中国の好景気によりアルミ地金が高騰し、しばらく継続する見通しである。為替の動き如何によっては更なる上昇も考えられる。
    六番目。社会的に厳しい状況が続くなかで、今年は社内改革、人材育成に努めているが、失業率が高いと優秀な人材は流出しがたいので、なかなか良い人材を市場で見つけ出すことができない。
    七番目。建設業界には最低賃金に近い職種が数多く含まれているので、賃金アップは政府の後押しもあって、確実に行われることになり業績を圧迫している。
    八番目。不動産業界では一部の高級集合住宅への投資が引き続き期待が持てる。九番目。FTA問題が業界に直接、影響を及ぼすことはないと思われる。
    と、以上のように、やはり先行きの見通しとしては、一部の不動産物件に関しては、上昇傾向があるのですが、それ以外は期待が持てない、という意見が多くありました。

    セメント販売量は上期に増加

    最後に、サンパウロ州建設業組合の最近の統計値から業界の動きを見ますと、われわれの大きな指標になっていますセメント販売量。これが過去4年間はずっと 減少し続けておりました。それが今年の1月から6月の上半期はですね、前年比でプラス5%と、久しぶりにプラスに転じております。と言うことで、建設工事 量そのものは昨年に比べて増えています。ちなみに昨年1年間のセメント販売量を前年比で比べますとマイナス11% ダウンしておりました。

    それから建設労働者、これも今年上半期の半年間で、昨年末の時点で比べると、人数で13,000人増、率で言いますと約1.1%の増加となっております。 と言うことで、まあ、無理やり最後に結論付けますと、建設業界では昨年に比べて若干上向きの傾向が見られるものの、はっきりとした業績回復には至っておら ず、また不動産業界でも一部の高級集合住宅を除いては、同様に厳しい状況にあると言うのが、結論です。一般的に申しまして、建設業というのは世間一般の経 済指標の約1年から1年半、長いときは2年遅れで同じぐらいの率の回復をすると言われていますので、これは希望的観測も含めてですが、今年後半、それも年 末から来年にかけて業界全体が業績アップ出来るのではないかと思っております。以上です。

    不動産投資が高級アパート建築増につながる

    司会 あ りがとうございました、ご質問ございませんか。ちょっと私の個人的興味というか、あの、私共ジャルジンスに住んでいる人間多いんですが、あの近辺でこの1 年半ぐらいですか、駐車場が3つ4つあるようなアパートが相当な勢いでバタバタと建って来ているような感じがするのですが、それはどう言う傾向の中でそう 言う現象が出ているんでしょうか。

    阿部  これは今回の部会で、直接お話しを伺えなかったのですが、別の機会に何人かの方から聞いている話しでは、やはり言われているように、お金の投資先の分散、 銀行ですとか、株式投資だけではなく、不動産という残るモノ、価値のあるモノに投資してそれを持つという考え方のお金持ちの方が投資をされていると。です から決して実の需要がそこまであるとは言いきれないと。これは、又聞きなので大変恐縮ですけど、そう言うふうに聞いたときもあります。

  • 建設不動産部会(レポート)

    建設不動産部会は、建物の建設 を主体とする建設業者(ゼネコン)と、アパート・住宅の販売、及び事務所ビルの賃貸・販売を含む不動産業者から成っている。今回初めて部会長という立場で 会員の方々のお話を伺ったが、業界全体の現状を表すには分母となる参加企業数が余りに少なく、全体像ではなく、特定個別企業の話しのまとめである。

    2004年上期の回顧

    ①全体的に設備投資は低調で、昨年後半から期待されていた程発注案件数は増えなかった。景気回復の実感はあまりない。

    ②4月以降資材の値上がりが顕著になり、収益を圧迫している。その影響もあり業績確保のため人員削減を余儀なくされている。ブラジル国内の主要建設資材の 値段は、需給バランスによる市場価格というよりも一部の寡占業者の価格操作によって決められているため、先の見通しが立ちにくい。

    ③建材販売は4月以降回復傾向にあるが、価格的には厳しい状況にある。

    ④昨年顕著に見られた工事進捗の遅れは、今年は少なくなっている。

    ⑤サンパウロ近郊のABC地区のアパート販売は低調で、成約済みのローンもCEFの資金不足で実行が遅れている。

    2004年下期の展望

    ①景気回復は、期待はするが現実には明るい見通しとは思えない。失業率が依然として高く、また、ガソリン・交通通信関連費が値上がりしたため可処分所得も目減りしている。国内向けの設備投資は今後も低調に推移すると思われる。

    ②市長、市議会選挙が間ぢかに迫り公共工事は停滞し、市場の活気が失われる。

    ③サンパウロ市内の集合住宅物件は、昨年のゾーニング変更の影響で建築許可取得件数が前年に比べ20%程度減少したが、今年は一昨年度程度(600~650件/年)まで回復するものと見られている。

    ④一部輸入に頼らざるを得ない資材に関しては、フレートの上昇が大きなコストアップの要因となっている。

    ⑤中国の好景気により一部資材(アルミ等)が、世界的高値安定状態に成っている。

    ⑥社外的に厳しい状況が続く中で、今年は社内改革・人材育成に努めているが、失業率が高いと良い人材は流出し難いので、なかなか市場で見つけ出すことができない。

    ⑦建設業界には最低賃金に近い職種も多数含まれているので、賃金アップは政府の後押しもあり確実に行なわれ業績を圧迫している。

    ⑧輸出を伸ばしている業種での設備投資には期待が持てる。

    ⑨不動産業界では、一部の高級集合住宅への投資が引き続き期待が持てる。

    以上

  • 運輸サービス部会 平野運輸サービス部会長


    平野運輸サービス部会長

    通過ビザたたり、米国経由路線は減便

    平野 華 麗なキャリアさんから「運び屋の私」、まあ、別に密輸やっている訳じゃないんですが、受け継ぎましたので今後とも一つよろしくお願いします(笑い)。ウチ の部会は「運輸サービス部会」と言うふうになっていまして、運輸のほうは、それなりにまとめられるんですが、サービスのほうが、全部で会員67社ですか、 その中を取りまとめるのは大変なんです。実は、「事前部会開きますよ」と号令掛けても、出席される方はなかなかいなくて、いつも見る顔ばかりで、その中で まとめた内容ですので、一つご了承願いたいと思います。
    まとめ方としまして、まず旅客関係、ついで貨物関係、それからサービス業界、それぞれの、「回顧と展望」という形で、要約的にまとめましたのでご了承願います。

    まず航空業界の回顧ですが、根本的にこれはテロから始まっていますが、前回も、発表されたと思いますが、米国通過のビザ取得の影響。この影響が非常に大き く、とくに日伯間の米国経由の部分が旅客も少なくなるので減便せざるを得ない。これは日本航空さん、及び VARIGさんは減便しています。その減便した流れは欧州経由のほうへ皆さんが回避している。で、このビザ取得のためのアメリカ領事館は二カ所に限られ て、取得料だけでも100ドルかかる。そこに行くまでの旅費を考えればとんでもないと。これが欧州経由のほうへ回避している事の原因です。

    二番目は、DAC(運輸省航空局)の運賃統制。運賃統制っていうか運賃の均一化という法令が出て、そのルールを遵守することは当然良いのですが、それが逆に外国キャリアにして見れば競争力に欠け、集客力が弱まる影響があると言うことです。

    三番目は、VARIGとTAMの統合。これは消滅して、今後は共同運行で経営の向上を図って行くと言うことになりました。
    下期の展望としても期待するところは多いが、日本経済の立ち直り及び国内為替の動向は安定してもらいたい。もう一つは、ブラジル・中国の親密化により、今後中国は脚光を浴びてくる。その中で人の往来増大に期待したいと言うことです。

    国内旅行者増えたが、原油高による航空運賃値上がりが心配

    それから旅行業界は、航空業界と同じようにビザ、運賃統制によって販売がやはり苦しい。特に国際間旅客の人数が鈍化した。 逆にその半面、ブラジル国内旅行に人気が出て、特にリゾート地には、ここに来てシーズンに向けての予約が急増していると言うことです。
    従いまして、展望はそう言うところに期待していますが、一寸心配なのが原油の問題でまた運賃が上がる事です。それからアメリカ通過によるビザ問題の継続及び検査の強化、これらが引き続き懸念されるところです。

    輸出好調でコンテナ定期船、自動車船に船腹不足

    次 に貨物関係です。まず、船社さん。いままでの皆様の発表のなかで、船腹が足らないと言うお話ですが、全くその通りの報告が来ていまして、とにかく荷動きが 好調で、バラ積中心の農産物の好調さが加担し、その影響としてコンテナ定期船の船腹不足、自動車関連の輸出急増が、今上期に波及している。またブラジル・ 極東間の荷動きが活発で、とくに中国を中心に往復路で急増している。

    ブラジル・欧米間はブラジルからの輸出が顕著ですが、輸入の伸び悩みが先ほどのお話しのコンテナ不足に影響しているような感じです。
    それから船舶の混雑。これは去年もそうだったのですが、例年の税官吏のストライキや港湾インフラの不整備等で、貨物滞貨が恒常化している。
    もう一つ運賃ですが、先ほどもおっしゃいましたが、運賃が上がったと言う事ではなくて、船舶需要の逼迫で、いまの運賃は2001年のレベルへ回復していると言うことです(笑い)。

    展望ですが、引き続き荷動きは好調であろうと。で、定期船社のサービスの増強を図り、自動車部品主体の輸入増に期待。またブラジルからの輸出は、日本向け の綿花や収穫後の農産物に期待。これらが下期に向けて増加すると予想され、船社さんとしては、更なるコンテナ、船腹の供給に努力したいが、コンテナの供給 不足の影響が下期に危惧されるという報告です。

    伸びているフォワーダー扱い貨物

    次にフォワーダー業界。私のところもそうですが、フォワーダーというのは、船も飛行機も持たずそれらを利用して物を運ぶいわゆる混載業者ですが、上期回顧 としては、船社さん同様にやはり貨物は全体的に伸びています。輸出入ともに増えているところは、やはりアジア発。日本発も含めて増加していますが、やはり 中心は中国発。その貨物の内容としては自動車の部品、部材、並びに電子機器、部品、部材です。
    また、ブラジルからの輸出もやはり同様に自動車部品、部材、それから農産物、海産物、切り花、健康食品等が出荷されています。
    なお、フォワーダーは、どちらかと言うと航空便を主体にした貨物取扱いですので、船荷の取扱い部分では若干違います。船便で動いている部分は皆さんも FCLですべて準備されますが、残りの少量貨物を取扱うという意味合いで、とくに航空貨物取扱いを念頭に入れて貰らえれば良いです。

    それから燃料の高騰とテロの影響で、輸出国から出荷する場合、ブラジルにとっては輸入ですが、その貨物輸送に対してセキュリティ-サーチャージとフュエー ルサーチャージと言う取扱料かかっています。当然アジア、日本もそうですが、アメリカ、ヨーロッパ、すべての輸送貨物にそれがかかっていますが、各キャリ アによって若干差はあります。
    セキュリティ-サーチャージは大体、10セントから15セントですね。それからフュエールサーチャージがやはり10セントから15セント。これらは運賃とは別にキロ当りの料金でかかっています。
    ブラジル発輸出の場合、このフュエールサーチャージだけがかかり、ヨーロッパ系の航空会社が25セント、VARIGは20セントです。ただし、セキュリティーサーチャージの方は、ブラジル側では取っていないです。

    船腹、航空機のスペース不足は慢性的

    下 期の展望ですが、輸出はやはり好調で、先ほどと同じようにコンテナ、船腹、航空機スペース共に供給不足が危惧されます。キャリアさんの対策としては、輸出 入両面において、増便並びに機材の大型化に期待したいですが、なかなかキャリアさんとしても難しくて、現在、アメリカ・ブラジル間を飛んでいる大きな、 ジャンボは別にしまして、普通アメリカ系は767ですね。 777であればジャンボ機より若干少ない重量まで積めますが、それら大型機材はやはり、アジア 方面へ持っていかれています。だから、こちらになかなか持って来る事が出来ない状況のようですね。たまたま昨日、 UAの人間と話していたら、そういう話しがありまして、ちょうど良い機会と思いご説明しました。

    アジア・日本間では貨物機が飛んでいますが、ブラジルに飛来する貨物機会社も数社しかなく、それも週に1便、2便ですので、やはり航空会社としても荷動き が大量で活発な地域へ大型機材を持って行く流れにあります。そういう意味合いでは、やはり船社さんも同様で船を大型化することを考えているが、なかなかこ ちらまで配船出来ないと、伺っています。
    次にサービス業界ですが、これはご報告を頂いたところだけの発表にさせて頂きます。

    固定電話の需要急落、日本の既存サービス導入に注力

    ま ず、通信サービス。KDDIさんの報告ですが、確か前回も同様でしたが、固定電話の需要が急落している。低所得者層はプリペイド方式の携帯電話へ移行して いる。固定通信業界としては、今後付加価値を付けたサービスの提供、通信先進国へのアプローチが進んでいく。そういう意味合いでは、今後は差別化する必要 があり高付加価値サービスの提供。要するに、現在の日本の既存サービスを今後導入していくと言うことですね。
    それからクーリェサービスですが、われわれフォワーダーと同じですが、やはり税官吏ストの影響によって、例えば新聞配送が遅れたとか、通関の簡素化・迅速化が過去から大きな問題になっている。
    それから市内のバイク便は、相変わらず会社設立が簡単なので、ずいぶんと会社も増えて来ている。

    脚光あびている中国観光 -インフラ整備不足が難

    最 後になりますが、個別テーマとして皆さんから頂いた意見ですが、まずは中国観光。問い合わせも結構入って来るのですが、要するに中国側の観光インフラの整 備。これが、北京・上海であれば良いのですが、地方の整備がまだできていない。要するにホテルとか、航空便だとか、そういう情報がなかなか取れないと言う 部分があるらしいですね。
    それから、中国関連としては、当然われわれ運送業、キャリアさんもそうですが、中国へは皆様メーカーさんと一緒に進出 していますが、ブラジルと中国間の物流においても、少なくともブラジル系の業者より我々日系業者のほうが情報を持っていますし、中国も広いですから輸送及 びロジスティック関連のことで何かございましたら、部会並びに所属している企業へ問い合わせて頂ければ良いと思います。
    もう一つは、日伯のFTAの件です。これも先ほどからお話しが出ていました燃料用アルコールには注目できますが、逆にそれを運ぶためのケミカル・タンカーの建造だとか、ブラジル・日本側のターミナル整備など、やはり投資がかなり必要ではないかと言う意見がありました。
    最後に先ほどの通関の問題ですが、ルーラ大統領にお願いしたい。税関通関体制の簡素化、何とかならないかと言う意見がありました。 一応、今回私初めてでしたので、ざっと要領だけまとめて発表させて頂きました。どうもありがとうございました。

    司会 どうもありがとうございました。ご質問お受けしたいと思いますが、はい、どうぞ。

    何時解消されるのか? コンテナ不足

    二宮 コンテナだけに絞って聞きたいんですが、コンテナ不足の問題いつごろ解消されますか? 見込みで。

    平野 そ うですね、かなり、先ほどのお話しから、貿易収支のなかで、ブラジルの輸出がやはり増えています。ということは、入ってくるよりも出る方がもっと多くなっ て、ホントは入ってきて出る、そう言うバランスが取れればいいんですが、まだそういう意味合いではインバランスで、出る方が多いと。
    しかもそう 言うコンテナは、もうすべてアジアのほうに行って、いまは、アメリカへの輸出もかなり日本から増えていますから、そちらに行って、どうしてもこちらに回っ てくるのが少ない。 要するに、物流の量が全然違いますので、どうしてもこちらが少ない状況になっているというお話しですね、船社さんの。
    どう でしょうね。ブラジルの景気がよくなれば、それなりにまた、上向いてくると思います。ただやはり、物流の量が違いますのと、農産物の普通のそう言うのと繊 維さんとか、家電さんのようなコンテナは別物ですし、ここはとくに農産物のほうで輸出が多いですよね。結局そういう意味合いで、コンテナ不足があるんじゃ ないないかと思います。

    佐原 あの中国とブラジ ルの間の貿易活発化で荷動きが激しくなる。中国からブラジルに運んでくるときにナショナルフラグという、そういう船のどういうんですか、船主、中国側の船 主ですね。そういう船腹の量いうのは彼らが出す以上に、自分たち潤沢に持っているんですか。ちょっとお尋ねしたいんですが。

    平野 い や、それはないと思いますね。中国側の船社って言うのもありますが、そんなに大手の会社はあまり聞かないですよね。まあ一寸、私の経験なんですが、香港に なりますとかなりの船社さんも入っていますし、今後はやはり上海、香港ですよね。ここを中心に動くと思いますし、香港より少し西北上に塩田港が中国にはあ りますし、そこが今ものすごく活発化しています。だから、華南地区よりそちらに持って行くと思われます。または、香港ですけどもね。

    佐原 料金はどうでしょうか、まあまあというか、あるいは、国際価格で、彼らディスカウントして安く、と言うようなのはないんでしょうか?

    平野 ど うでしょうねぇ。やはり、基本的に考えるのが、航空業務ですが、実はいまからものすごい荷物がアメリカ向けに動くんです。クリスマス用商品で、もうすでに 航空運賃のほうは値上がっています。で、当然、やはり 供給の方が少なくなりますので、それは、船のほうも同じだと思いますね。とくにこの時期から増えます。

  • 運輸サービス部会(レポート)

    「2004年度上期の回顧と下期の展望」

     

    【旅 客 関 係】

    航空業界

    『回顧』

    日伯間については、2003年8月から実施された米国のVISA強化策により南米国籍者はトランジットの場合でもVISA取得が義務付けらた為、今日に至るまでVISA取得の面倒さから、米国経由便が敬遠され、VISA不要な欧州経由並びにカナダ・メキシコ経由便を利用する方が増加傾向にある。この結果、ヴァリグの名古屋便の運休(3便減)、日本航空も1便減となっている。DAC(運輸省航空局)が運賃の統制(均一化)に乗り出し、ファイルしていない運賃を適用した航空会社に違反金の支払を義務付けられているが、全社のルール遵守は効果があるが、米系など多くの会社が反対しているために実効性は懐疑的である。

    ヴァリグとタム社の経営統合は実質的に消滅しており、コードシェアー(共同運行)により経営の向上を目指している。

    『展望』

    航空業界は景気の影響が他業界に比べて遅れがちで、日本経済の全体的立ち直りの効果が下期には実現化してほしいと期待する。また、昨年比較的に安定していたレアル通貨の為替レートが動きつつあるので要注意。ルーラ大統領の訪中以来、活気付いた伯中関係に注目。

    旅行業界

    『回顧』

    航空業界と同様に、VISA問題・運賃統制が販売上非常に厳しい環境となっており、全体的な国際間旅客の動きは鈍化している。反面、ブラジル国内旅客の動きはある程度活発で、特にリゾート地への人気が高く、ルゾートホテルのシーズン期予約が急増している。

    『展望』

    世界的な原油問題の背景を受けて、国内・国際路線の航空運賃の値上げが懸念される。

    継続されるか更に強化されるか米国VISAの取得は、ブラジル国籍を持つ旅行者にとっては非常な経済負担となり、下期も厳しい環境となることが予想される。

     

    【貨 物 関 係】

    船社業界

    『回顧』

    昨年下期に異常な船腹不足が現出したバラ積貨物船(鉱石・鋼材・穀物等を主とする船種)

    の市況は一服したが、今期はこの要因でコンテナ定期船や自動車船に波及し、特に輸出貨物へのスペース供給が困難な状況となった。伯国/極東間の荷動きが中国を中心に往復路で急増(前同比30%up)、伯国/米欧間は伯国からの輸出は顕著な伸びであるが、輸入は伸び悩みの状況。伯国主要港では船舶の混雑と、例年の税官吏のストもあり滞貨が恒常化しつつある。このようなコンテナ・船腹需要逼迫状況の中で、やっと運賃が2001年レベルまで回復した。

    『展望』

    荷動きの明るい見通しであり、各定期船社は主要トレードでのサービス増強を図る。

    (北米-南米東岸、北西欧州-南米東岸、亜-南米東岸、各航路:10~20%増供給)

    自動車生産部品のアジアからの輸入、伯国発日本向け綿花、伯国農産物収穫後の出荷等、輸出への期待は大きいが、反面、コンテナ・船腹の供給が大いに危惧される。

    フォワーダー業界

    『回顧』

    フォ ワーダー即ち利用運送業者であるが、航空会社・船会社を利用して輸送する業務であり、各キャリアーと同様に伯国における輸出入貨物を取扱う上で、輸出入貨 物共に増加傾向にある。輸入貨物は、量的には圧倒的にアジア・日本からが主流であるが米欧からも増加している。輸出貨物は、伯国の1次・2次産品の好調な 輸出に支えられ、自動車部品・部材の輸出が急増している。また農産物・切り花・健康食品も順調に伸びている。

    燃料の高騰・テロ対策に対する各サーチャージが輸出国より付加され、輸入貨物にとってトータル・コスト高となっている、また税官吏・検疫官ストも最終的コスト高を招いた。

    『展望』

    引 き続き好調な伯国の輸出増に期待できるが、キャリアー同様に貨物スペースの供給が大きく危惧される。各航空会社・船会社によるスペース、あるいはコンテ ナ・船腹確保による供給手段として、増便、機材・船舶の大型化が急務である。好調な輸出は輸入にも反映され、生産用部品・部材並びに消費財の輸入が増加す るものと期待する。

     

    【サービス業界関連】

    『回顧・展望』

    * 通信サービス:

    固定電話の需要は低下傾向にあり、購買力の減少によって月額33レアルの契約額でさえ敬遠する所得者層が、プリペイド方式の携帯電話へと移行する傾向が加速中。携帯電話業界の勢いが止まらない中で、固定通信業界ではデータ・音声の付加価値による差別化を図り、日本含む通信先進国へのアプローチを強化している。

    両業界共に、他社サービスとの差別化を模索中であり、既存ベーシックサービスから一歩踏出した高付加価値サービス提供へと脱却し、日本の既存サービスも近い将来に伯国へ導入される可能性を秘めている。

    * クーリエサービス:

    クーリエと言えども税官吏ストの影響が配送遅延を招く。通関の簡素化・迅速化が課題。

    市内バイク便会社は相変わらず増加中。会社設立が簡単過ぎる。

    「個別テーマ」

    * 中国観光:

    ルーラ大統領の訪中以降、ブラジル人の中国旅行の問合せが急増しているが、中国での観光インフラ(国内線便、ホテル、車輌、レストランなど)は、北京・上海大都市を除いて未整備であり、情報収集に留意が必要である。

    * 日伯FTA:

    仮に締結された場合、船社として注目できる燃料用アルコールであり対日輸出量にも因るが、ケミカルタンカーやターミナル整備が必要でかなりの投資を要する。

    * 伯中アジア間輸送関連

    輸送・ロジスティック関連については、運輸部会並びに所属企業へ問合せ願いたい。

    * ルーラ大統領へ:

    税関・通関体制の簡素化を望む。

  • 自動車部会 内山自動車副部会長


    内山自動車副部会長

    自動車好調、上期に103万8000台生産

    収益は素材値上がりや増税に圧迫された

    内山 内山でございます。部会長であるトヨタの岡部社長に代わりまして、今日はご報告させて頂きます。部会を大きく自動車、まぁ乗用車と二輪車、それから自動車部品という3つの大きなカテゴリーに分けてご報告させて頂きます。

    まず自動車。乗用車のところですが、ここは非常に好調に推移して、この上半期が103万8千台と、1997年に102万台だったんですが、それを上回る生産台数で記録をつくったと言うことです。
    内訳でみますと、国内が72万3千台、輸出が27万6千台で、生産、国内販売共に14%の前年比伸張。輸出は4%ですが。まぁ、生産、国内販売は非常に大きな伸張を得ることができました。
    で、これの背景、どんなことがあったかですが、国内景気そのものが安定して来たということは弁を待たないわけですが、それと共に、自動車メーカー各社さ ん、低金利、あるいは長期融資というような事で、非常に積極的に売って出られた。一方、週末の販売キャンペーン等と、この上半期は非常に積極的に売ってお りまして、これが大きな伸張をもたらした第一の原因じゃないかと思います。

    一方で、輸出については隣国であるアルゼンチンの景気がかなり回復しておりますので、この辺を中心に、貿易部会の中でもお話ありましたが、輸出がかなり伸びると言うような状態にありました。
    自動車、乗用車は、この下半期どうなるかですが、Anfaveaのいろいろな予測、統計の中では、下半期も順調に推移するだろう、同じような伸び率を維持するであろうと見ております。
    ただ一方で、収益面でいきますと、皆さん何度も言われた話しなんですが、鉄鋼、アルミ、あるいは原油を含めまして、素材値上げが非常にきつうございまし た。それに合わせてPIS、Cofinsの増税がありまして、これをすべて売値に転嫁できているかと言うと、自動車の場合は、非常に小刻みに値上げはして いるんですが、十分な価格転嫁はできておりません。ですから収益のほうを相当圧迫する要因になっています。まぁ、それを量の増大である程度カバーしている と言うところのようです。

    二輪は昨年末来の落ち込みから回復基調にあり

    次に二輪車のほうですが、昨年の下半期からちょっと低迷傾向にあり、それまではここ数年間、毎年10%、2ケタ成長を続けて来たんですが、昨年の下半期から鈍化傾向にあります。
    その鈍化傾向がこの、1月、2月のところで、いや3月ぐらいにやっと止まり、成長軌道に戻ってまいりました。結果としてこの上半期は、生産台数で3%増、国内販売で3.2%増となっております。
    輸出のほうは、国内と比べますと非常に量が少ないんで、変化指数だけ大きくなり、対前年比で53%増となっております。
    この輸出が大きく伸びた原因は、各社とも日本で生産していた北米向けモデルをブラジルに生産移管したんだと。昨年から、生産移管が各社とも一部ずつ始まっ ており、これが大きく影響しまして、要するに新規の市場ではなくて、日本が輸出していたものをこちらに生産移管して代替輸出と言うことになって、輸出は増 えております。

    わずかですが、3%伸びましたので、二輪としては、また新記録を一 応たてたと言うことにはなるが、多少先に向かって懸念があります。二輪業界の場合は生産拠点をすべてマナウスに持っております。日系の会社、あるいはブラ ジル系の会社がマナウスでやっとるんですが、昨年の末からこちら大きく3回ほど増税がありまして、1回目はPIS、Cofinsが上がったこと。2回目 は、瀬山さんからお話しありましたマナウスの商品流通税をはじめとした総合的な税制改革が行われまして、これが各社、それぞれの企業にとって影響度は違い ますけども、おおむね、以前の税制と比べますと3 割ぐらい増税になっているのではないかと思います。

    それ、会社さんによって差はありますから何んとも言えませんが、それをいろんな形で1本の減税措置、一律税率じゃなくて、マナウス、州政府との間の個別交 渉という形での減税、あの減税というか、暫定措置がとられましたんで、会社さんによってどこまで最終的に影響が出ているか、一寸ここでは分かりませんけど も、かなり大きな増税があります。
    それからまた、7月の末といいますか、この8月から発効されているPIS、Cofinsに対する免税措置の撤 廃と言うことで、二輪の場合、今年は3月に各社とも、3月を基準に各社とも2、3%から4%の値上げはしとるんですが素材値上げ、あるいは税制の変更、 まったくこれ、なんというか、価格の中に入れ込んでおられ、値上げできません。

    増税には価格転嫁しか対策はない

    今 回の8月からの増税に対して、どのように対応するか非常に苦労、苦慮しているところですが、いずれにしても増税には、これを価格転嫁しない限りやって行け ませんので、いずれかの段階で価格転嫁しますが、一方で、先ほどもお話ししましたように、日本からの生産移管を含めまして、輸出を非常に伸ばす、あるいは 全体の生産量を伸ばすと言うことで、各社大型の増産投資をここ数年繰り返してきました。現在も各社共まだ増産投資計画を持っておりますが、これの抜本的な 見直しに入らざるを得ないと。価格を上げれば当然相当量の需要減につながりますので。
    まぁ、このような状況で、現段階では、二輪について下期は見通せないと言ったところです。数量を伸ばして、欠損を膨らましても話にならないんで、相当な覚悟が必要ではないかと言うように思います。
    そんな中で、また後ほど言いますが、マナウスの公務員ストを含め、港湾荷役が1ヵ月以上にわたって止まるという状態もありまして、生産活動にも大きな支障を来たしておりました。

    部品も自動車に引っ張られて好調

    次 に自動車部品業界ですが、自動車部品業界は大きく自動車、乗用車の影響を受けます。 二輪車の影響は、二輪車そのものが数量的に少ない事もありますが、二 輪車に特化した部品業界がマナウスにありまして、すべてマナウスの商工会議所のほうに入っております。サンパウロ商工会議所には入っておりませんものです から、二輪専業部品メーカーはこの中におらず、自動車に大きく影響されると言うことを、まずお断りしておきます。

    自動車が、乗用車が非常によろしかったものですから、部品業界も非常に好調に推移しております。各社さんのお話では、設備稼働率も大幅に上がって、かなり ピークの状態にあると言うことですが、一方で、ここ3、4年間、自動車、乗用車そのものが一寸低迷期といいますか、1997年にピークをつけて以来減産傾 向にありましたので、かなり設備余力の分をその間に、顧客開拓ということで海外にシフトしておりました。
    で、販売先をかなり海外開拓に求めた結果、ここで乗用車が伸びると部品さん、あるいは、ある会社さんによっては十分それに対応できない。設備能力的に対応できないと言うところがチラホラ出始めております。
    それに対して増産設備、増産投資をするかどうかについては、いまの景気が持続するというのがまだ読み切れませんので、非常に慎重に構えざるを得ないと言うことで、部品業界も苦労しております。

    部品業界もその設備稼働率が最高の状態にありますので、非常にいいんですが、ここも、ご多聞にもれず、他社と同じように素材値上げ、あるいはPIS、Cofinsの問題を吸収しきれておらず、設備稼働率が上がったことを十分享受している状態ではないようです。
    下期は、四輪、乗用車業界が非常に下期もこうやって強気に読んでおりますので、自動車部品業界としても、「このまま下期は大丈夫だ」と言うふうに見ております。

    政府の朝令暮改の税制、解釈によって変わる税金などが不安材料

    個 別のテーマにつきましては、度々出てくる税金の問題、それもありますが、ルーラ政権、ま、部分的には非常に経済面うまくいっていて、安心して見ていられる が、個別の問題に行きますと、透明性がない、一貫性がないという言い方になるのか、税金も、解釈によってどんどん変わってくる。朝令暮改のように新しい税 制が出て来ると言うことで、非常に苦慮しているところです。これは皆さん一緒でしょうけども。
    それから、ま、支持率が昨今下がっておりますの で、もともと労働政党政権ということで、大衆迎合的な、いろんな政策が出てくるということを危惧はしております。このまま行って頂ければいいんですが、 どっかで、人気回復のために迎合的なことが出てきますと、われわれ企業側、企業の立場としては、それによって、かなり右往左往とうこともありますので。

    それから、FTAの問題は、個別の中国とのFTA、EUとのFTA、いろいろありましょうが、自動車部会の場合は、もともと生産拠点を世界展開している関 係で、日本からの部品調達というものは、日本との部品関係での部品調達というだけではなく、いろいろありますので、対応といいますか、時間がありさえすれ ば、多少の対応はできると思っております。
    ただ、一方で、そうは言っていますが、開発拠点が日本ですし、日本に依存するところは、将来とも中心 になると言うのは当然ですので、日伯の、あの、FTA が他国に遅れをとる事になりますと、非常に競争的には窮屈な状態になって行くだろうな、ということは懸念しております。

    中国とブラジルのFTAは脅威

    それで一方、完成品につきましては、これはニーズの問題ですが、中国、ブラジルのFTAが締結されると非常に脅威ですね。低品質、低価格のものが多量に入って来ると言うことになりますと、その、いわゆる市場の品質そのものを落としてしまうと言うことで懸念はしております。
    あと、業界内の課題ということで、皆さん、各社さんからいろんなご意見が出とるんですが、大きな意見としては、複雑な税制に悩まされている。あるいは、港 湾サービスが劣悪でコストが高いという問題。それから国内物流コストが非常に高額であると言う問題。さらにこの国は労働法が過度に労働者のほうに偏ってお り、その厳然としてある法律の運用がだんだん厳格になりつつあるんではないかと。

    ある会 社さんから出ましたのは、本業意外のところはなるべくコストダウンして行こうと言うことで、アウトソーシングなり、分社化なりしたんですが、実質、なんで すか、同企業であるとか、同一企業であると言うことで、まぁ、そこの面でもいろいろやられて結局は、せっかく分社化した会社をまた元に戻さざるを得なかっ たと言うようなことも出ておりまして、ま、これは一つの例ですけども、いろんな意味で、ルーラ政権がどの方向に行くのかって言うので心配な面はあります ね。以上でございます。

    司会 どうもありがとうございました。後半少しあの走りながらやって参りましたが、最後の自動車部会のほうにご質問がある方はどうぞ、挙手お願いいたします。はい、どうぞ。

    田中  2つお尋ねしたいのですが。1つはあの、この間ルーラ大統領が中国へ行った時に、マナウスに二輪車のメーカーをブラジルと中国の合弁でつくる話しを決めた と言う話しが出たが、それがどうなったのか。もう1つは、さっきおっしゃり、これは瀬山さんもおっしゃった、「かなり大きく変わった」と言う税金の問題で すね。 それに対して、個別の企業でいろいろコンタクトされておると言うお話しですが、たとえば、業界とかですね、あるいはまた、外国企業同士でまとまる とか、あるいは政府ベースで交渉するとか、そういったような動きはあるんでしょうか?

    内山 中国メーカーとの話しですが、これは以前からありますし具体的な会社名がどこで、どの時期にというところまで正確ではないが、噂は常にあります。今回の訪問によって、ある程度、真剣っていうか俎上にのぼって来たんではないかと。
    ただ、問題はなんというか、FTAの一環として、そのー、輸入自由化という観念へ持って行ってしまえば、影響は大きいですし、非常に分かりやすいんです が、企業誘致となりますと、ブラジルだと例えばマナウスでやる。二輪の場合はもうマナウスでやらざるを得ないという状態に追い込まれちまっていますが、マ ナウスでやる場合には、もう地域化率の問題だとか、ようするに地域調達率を何パーセント以上にしなければ、税金の恩典が得られないとか、国産化率をどこま でにしないとブラジル国内はいいけども、他国には売れないとか、いろいろあります。だからそういう意味で参入障壁が非常に大きい。

    それからもう1つ大きな参入障壁は、中国の二輪車メーカーはいまのところ、日系メーカーのコピー品を中心にやって来たところで、技術的な蓄積はまだそうあ りません。で、一方で、ブラジルはもう排ガス規制についても、2006年からEU2を実施するともう決まっておりますし、2008年には多分EU3まで行 くと言っております。
    エンジンのところで見ますと、今日現在ではEU3を達成できるエンジンは、世界中に二輪の場合はまだありません。 ですか ら、これからやって行くでしょうが。で、EU2を達成するには相当な設備投資と技術投資がかかります。果たして中国がいま持っている技術でそこまで出来る のかどうか。そのためにルーラさんが、特別にそれを曲げてしまえば別ですが、そこの面で非常に難しいのではないかと見ております。
    もう1つの難 しさが、自動車、二輪共にありますが、ブラジルは販売がぜんぶ専売店制度でして、販売の投資に莫大なお金がかかります。中国メーカーどこに行ってもそうで すが、彼らが販売も投資もやるってことはまずありません。それから部品供給、サービス、アフターサービス供給をやるって事もほぼありません。世界中で製品 の売りっぱなしですから。ですから、本当に彼らが出られるのか、出たとして消費者が受け入れるのかという問題は非常に難しいと思います。

    次に税金。在マナウス企業の一番の問題、PIS、Cofinsの免税撤廃、免税のなくなった問題ですが、これは各業界でやっておられると思うんですが、二輪はAbracicloというところがあり、そこでやろうと言う動きは出ております。
    ただ、先ほど瀬山さんのお話しにもありましたように、連邦政府がこれについては非常に強硬にものを考えておりますので、ブラガ州政府が昨日話しはしたんでしょうが、どこまで行けるかと言うと非常に悲観的です。

    で、その前のマナウスの地域全体に対する恩典につきましては、一応、連邦が2013年から2023年まで、10年間の免税措置を延長した際に、州政府とし ても10年間延長すると。ただ、言ってみればま、二輪の完成車、あるいは部品さん、電気の一部のところがこの恩典を持っていたわけですが、ある一定数量を 超えた分に関しては完全免税だったんです。ICMSゼロというような状態で。これはマナウスの地域発展にもつながらないと言うことで、これが廃止されると 言うのは、ある意味じゃ仕方がないと思うんですが、それの見返りとして、それを廃止する代わりに2023年まで連邦と同じように税制の恩典を続けましょう と、10年間の延長を約束しました。

    ただ一方で、その前の9年間も増税されますと、いま の状態では企業も立ち行かなくなりますので、州政府との間で各個別企業での交渉になったんですが、緩和措置をある一定期間もらっています。その緩和措置期 間の間に、州政府が、望んでいる方向に持って行けば、税金の負担は少なくなると。
    州政府が思っている方向とは何かと言いますと、要するに「マナ ウスに投資しなさい。マナウスから調達しなさい。そうすれば税金はかなり下がりますんで。そういう方法でやるために、数年間の緩和措置をとりましょう」と 言うことで。これはもうすでに決着ついておりますが、ま、PIS、Cofinsにつきましては、時間かけてやって行かなきゃいけないと思っていますが、難しいと思いますね。

     

  • 自動車部会(レポート)

    1.共通テーマ「2004年上期の回顧と2004年下期の展望」

    ■ 自動車

    2004年上期,自動車の生産・販売実績は以下の通り。単位:千台

      2003年合計 2003年上期 2004年上期 前年同時期比
    生産台数 1,827.7 904.2 1,038.2 +14.8%
    新車登録台数 1,428.6 649.0 723.0 +14.4%
    輸出台数 535.4 266.4 276.6 +3.8%

    2004年上期の自動車生産台数は104万台、前年同時期比にして14.8%増と、史上最高を記録した1997年の102万台を上回った。国内販売台数、輸出台数共に前年同時期を上回り、内外共に好調に推移する形となった。

    内訳で見ると、国内新車登録台数は72.3万台と前年同時期比で13.2%増を記録した。理由の一つは経済に対する消費者の信頼度の高まりによるものと見られている。また、大手自動車メーカーが低利子・長期融資などのメリットを購買者に提供し、週末などに在庫整理を目的とした大型販売キャンペーンを実施したことも販売台数を上向かせた。

    また、生産台数の約3割を担う輸出に関しては、アルゼンチンの景気回復等から上半期は27.6万台と、これも過去最高を記録する結果となった。ANFAVEAはすでに今年の予想輸出額を66億ドルから前年比25%増の69億ドルへと上方修正している。

    2004年下期も貿易収支黒字の継続、カントリーリスクの低位推移また国内経済の安定的成長などの好条件が期待されていることから、大手自動車会社またブラジル自動車工業会は、内外共に引き続き上期の好調が継続されていくだろうと予測している。

    ただ、生産・販売実績を見ると業界全体は好調に見えるが、鉄鋼製品などの部品コストの上昇や、PIS/COFINなどの増税が簡単に最終商品価格に転嫁されないことから、大手を始めとする自動車メーカーは厳しい収益内容を余儀なくされている。

     

    ■ 二輪車

    2003年、二輪車の生産・販売実績は以下の通り。単位:千台

      2003年合計 2003年上期 2004年上期 前年同時期比
    生産台数 954,620 508,925 510,452 +3.0%
    販売台数 848,377 449,523 450,962 +3.2%
    輸出台数 100,440 40,381 62,026 +53.6%

    過去数年間、平均約10%の成長を記録していた二輪車市場も、今年2004年上期は慎重な経済運営による金利引き下げの速度鈍化、高失業率の継続により、生産販売ともに前年比3%程度の成長に留まった。特に第一四半期は、主力商品のモデルチェンジがあり、前年同時期比5%マイナスと前年割れを呈したが、第二四半期は前年比12%増と、下期への期待をのぞかせた。輸出は販売地域の新規開拓、および需要の増大により、前年同時期比50%強の大幅伸長を記録している。ただ、世界的な素材価格・原油価格高騰の影響もあり、国内原材料の価格上昇が著しくなっている。

    下期の展望として、景気回復の速度・金利低下速度が二輪車需要回復の鍵と言える。足元6月の失業率が低下傾向ということもあり、今後の需要伸長に期待をしている。ただその一方、マナウス地区の税制恩典制度の変更により、最終商品価格に影響が出ることが予想され、市場回復の足かせになる可能性が懸念される。

     

    ■ 自動車部品

    2004年上期の部品メーカーにおいては国内自動車市場の好転、および輸出好調の継続により、稼動効率も大幅に上がり、損益も改善の方向に向かった。

    内 外の需要拡大により、一部供給が需要に対応しきれない業種も出てきている。特にエンジン、ギア、ブレーキ関連のコンポーネントが不足しており、その背景と して国内市場の低迷から海外市場開拓に注力してきたことが挙げられる。またさらには、原材料調達問題に直面している部品メーカーもあらわれている。自動車 部品業界でも同様に、鉄鋼などの原材料費および部品コストの上昇やPIS/COFINSなどの増税により、必ずしもマーケットの動向と平行して収益が改善されているとは言いがたいのが現状である。

    部品業界でも下期の自動車生産台数は上期の水準が維持されるものと予想されており、その結果、部品業界の生産も好調に推移することが見込まれている。ただ一方で、一部の部品メーカーでは国内供給不足の深刻化が懸念されている。

     

    2.部会別個別テーマ

    ■ ルーラ政権の政策方針による影響・課題

     

    • 初の労働党政権ということで、大きな政策変化が危惧されたが、政権発足から現在までの経済政策を見る限り、従来政権との大きな乖離は見られず、無難な 政権運営を続けている。今後は内需を拡大すべく、金利の引き下げ、租税負担の軽減、失業対策など国民主体の政策が望まれるところである。
    • 公約にもあるが、輸出拡大のため積極的に海外へ販売路を拡大していこうという外交政策は一応の評価に価する。
    • 但し、今後、支持率下落による人気取りのために大衆迎合的な政策に走り、経済混乱を招く事態に一抹の不安を感じる。

     

    ■ FTA関連問題・課題、中国・アジア関連

    • 「BRICs」と言いながらも、日本の関心は中国・アジアに偏っており、ブラジルに対する関心はきわめて薄いのが現状である。EU間およびFTAAが締結された後には、欧米競合メーカーとの輸入コストに差が発生することから、価格競争の面で在伯日系企業は不利な立場に立たされる。設備の輸入にしても同様のことが予想される。(部会全体)
    • メルコスールとEUまたFTAAの進展は不安定ながらも、条約締結へ向けて確実に向かっている。今後はFTA対象国によりメーカー競争力格差が広がっていくことが予想される。FTA増により当地の輸出拠点化が進んでいくだろうが、対象国により大きく戦略が変わっていく可能性がある。(自動車メーカー)
    • 当業界では中国とのFTAが締結されれば、中国からの輸入完成車が増加し、在ブラジル企業との競争激化が想定される。(二輪車メーカー)
    • 中国とのFTAがいつ、どういう形で成立するか、国内の自動車および部品産業がいかように扱われるか、注視していかなければならない。(部品メーカー)
    • メルコスールに関してはアルゼンチンの動向が気掛かりである。協約規定外である輸入制限を家電製品に対して実施し始めていることから、自動車業界にもその影響が降りかからないか懸念されている。(部会全体)

    ■ 業界内の問題・課題

    • ブラジルコストに関しては、相変わらず改善の方向へ向かっていない。PIS/COFINS、移転価格などの税制の複雑化、劣悪な港湾サービス、高額な物流コストなどが挙げられる。また、外注に関しても、労働法が過度に労働者を保護しているため、外注していたサービスを社内に取り込み直さなければならなくなった企業もある。
    • 好調な自動車生産を受けて、高い生産水準が続いている状況にあるものの、過去の自動車生産の変動の中で、大きな過剰設備を抱えた経験から、なかなか増産投資に踏み切れないジレンマがある。
    • マナウス地域での新税制恩典が4月から発行されたため、各社とも新税制に向けた社内システムの整備等々の対応が必要となった。なお、7月末にPIS/COFINSのマナウス地域での扱いについて、連邦税庁から出されることになっている。詳細は検討中なるも、在マナウス企業にとっては大きな税負担増になる模様である。

  • 講評 石田総領事

     


    石田総領事

    税金、労働、ブラジル・コスト問題解決メカニズム構築に官側も協力の必要あり

    本日は、各部会長の皆様方からのお話しを聞かせて頂いて、本当にどうもありがとうございました。大変参考になりました。
    印象ですが、第一番目に今年に入ってからいろいろ、エコノミストの人の話しを聞いたり、あるいは新聞の報道を見ていて、今年のブラジルの成長はかなり高い という印象を持っておりましたが、さきほど田中会頭のほうからも、「ブラジルはマクロ的には、30年来とも、あるいはレアル・プラン以来ともいわれる経済 成長の基礎が築かれた」というようなお話があり、印象が確認されたとの感を深くしました。
    さらに各部会長の方からは、それぞれの分野におけるパフォーマンスと展望をお聞きして、もちろん、各分野それぞれに濃淡はあるとは思いますが、総じて非常に高い前向きな経済成長ぶりが確認されたと思います。

    次に金融部会のほうから、政治面ではいろいろとルーラ政権もスキャンダルが出て、かなり人気が低下して、政策運営にも影響を与えていると言う話しがありま した。その関連では、さきほど一寸言及がありましたように、中銀、あるいはブラジル銀行総裁の脱税問題なども問題になっております。こういう問題が起こる のはもちろん、今年が市長・市議選の年である、政治的な季節であると言うことも影響があると思いますし、それと同時にルーラ政権が1年目を経て、1年目は まぁ、いろいろご祝儀的なご意見があったと思いますが、本格的にそのルーラ政権の公約なり、政策なりがチェックされている事も影響していると思います。こ の点に関しては、今年とくに3、4月ぐらいまではいろいろな人と話をしていて、「ルーラさんの再選は難しいのではないか」と言うような意見を、わたしは、 新聞記者とか、あるいは学者の人たちから聞いておりました。もちろん、たまたま私が会った人がそういう意見の持ち主だったと言うことかも知れませんが、そ ういう意見が多かったと思います。

    他方、最近の報道を見ていると、ほぼ連日たとえば投資が すごくいい、雇用も非常にいい、貿易も好調だとか、そして、経済の前向きな面の報道が連日見られます。私は、ルーラさんの再選があるかどうか、もちろん現 在の段階では何んとも言えませんが、経済がどうなって行くかに大いに依存すると考えています。今年の前半まで、3、4月までは、「ルーラさんの再選は一寸 ない」という意見が多かったが、最近は「そうでもないのかな」、という感じもしております。

    第3点としては、次にコンサルタント部会長の桜井さんのほうから、日伯関係は今年の後半から暮れに向けて強化の兆しが見られるとご指摘がありました。私も それに同意します。まさに今年だけをとっても、3月にはブラジルから外務大臣が訪問していますし、5月にはルーラさんの中国訪問の後に農務大臣と大蔵大臣 も訪問しております。それからFiespのミッションも訪問しました。今日からはアウキミン知事が10日までの予定で訪日中です。 従いまして、日伯関係 の特にブラジル側からの働きかけは、これまで同様に非常にあると思います。それに反して、日本からはどうかと言うことですが、ブラジル側に見合ったような 要人、閣僚級の訪問はいまだありません。しかしながら、この最近2、3ヵ月だけでも、非常にたくさんの国会議員の方が来ておられますし、先々週には、農水 政務官も訪問して、こちらの農水次官とも会談されていますし、今月には衆議院の議員運営委員会の一行、武部元農水大臣をヘッドとする議員らが、奥様を含め れば20人近くがブラジルを訪問されます。さらにODA調査団という参議院の議員6名の方も訪問されます。従いまして、日本からも、こういった議員団が多 く訪問するのは、私は、ブラジルに対する関心の高まりを、もちろん、それぞれの目的は別個ではあっても、ブラジルへの関心の高まりの反映だと思っていま す。従いまして、ぜひともこの流れを、さらに助長をして行きたいと考えておりますし、私どもも何か出来ることがあれば、ぜひやりたいと思っております。

    そしてこの点に関連して、桜井コンサルタント部会長のほうからは、商工会議所の活性化への提言がありました。一言に言えば、よりアクション・オリエン ティッドな商工会議所を目指すと言う事だったと思います。もちろん、日ブラジル関係の活発化を見越して、そう言うふうな形の組織にして行くことは必要です し、そうじゃなくても組織自体、常に自らのあり方、あるいは役割をリバイズする、そのその結果に基づいて方針を立てて行くのは不可欠なことだと思いますの で、私もこういった動きを、歓迎したいと思います。これは今後、常任理事会で検討されると言うことですので、そのご意見に期待したいと思います。

    それから最後に、FTAの話しで若干皆さんからの言及もありましたが、ブラジル、あるいはメルコス-ルとEUとのFTA、あるいはFTAAですね。これについては最近、一寸見通しが余りよく分からなくなって来たというのが実情であろうと思います。
    当初は、EUとメルコス-ルの協定は10月が目標とか言われ、FTAAも年末までぐらいにと言われていましたが、どうもそこら辺の見通しがだいぶ先になるという感じがします。
    それに伴って、では日本とブラジルの、あるいは日本とメルコス-ルとのFTAはどうなるかと言いますと、5月ですか、こちらの商工会議所の中にある研究会 で出された提言を元に、日本のほうで経団連から政府に対して、「日伯、日メルコス-ルFTA結ぶべし」という提言が出されております。従いまして、それに 基づいて今すぐどうこう言う話しにはならないと思いますが、政府としても当然それを考慮に入れて今後のFTA戦略を練っていくと思います。

    最後に、先ほどから税金、労働、ブラジル・コストの問題が出ておりました。そういった、当面する問題をどうやって解決して行くのか、商工会議所でもどう言 うメカニズムで、ブラジル側に改善を問い掛けて行くのか、と言うことを改めて考えていく必要があるんじゃないかなと言う感じがいたします。これらの問題の 解決については、FTA締結を待つことなく、商工会議所と大使館、総領事館が協力してメカニズムを構築する必要があると考えます。以上、わたしの感想でご ざいます。

  • 講評 笹本一等書記官

    なかなか難しそう、政府の目玉「PPP」の分野

    笹本一等書記官 大使館の笹本でございます。私いつもブラジリアに住んでおりますので、こういった機会に皆様の生の声を聞かせて頂くのは、非常に貴重な機会でして、有難うございました。

    報告を聞かせて頂いて、だいぶブラジル経済に回復の兆しがあると言うことを確認できまして、非常に喜ばしいことだと思っています。
    先ほど出ていましたが、BRICSという言葉を造ったゴールドマン・サックスの予想によると、2004年の後半、ブラジルは4%台成長するという仮定があ りました。一方で、この成長は本当に長期的に続くかという懐疑的な見方もありました。とくに投資に対して、十分な資金の投入がなされていないと言う指摘が ありました。とくにロジスティックスですとか、エネルギーといった分野に対して投資が不足しており、これが将来の成長の妨げになりかねないと言う指摘が、 私が聞いた限りでも多々ありました。

    もちろん、それはブラジル政府も重々承知しており、 最近、PPPと称する民間の活力を利用したロジスティックス、あるいはエネルギーといった分野でのプログラムへの投資を非常に積極的に呼びかけていまし て、さきごろルーラ大統領もニューヨーク訪問のさい、ぜひブラジルに投資して欲しいと呼びかけておりました。
    しかし、本当にブラジルに投資して収益があるのかと冷ややかな目もあったと言うこともあり、なかなかPPPの分野も、それほど簡単ではないと言うようにも思えます。

    ただ、先ほどお話が出ましたエタノールにしても、あるいはこういったインフラの投資にしましても、ある意味では、これをうまく活用すれば、日伯関係の強化 につながる。ブラジル経済の成長にもつながりますし、日系企業のビジネスチャンスも広がるという点では、今後いかにして日伯経済関係の強化につなげて行く かという工夫が必要ではないかと思っております。

    また、再三出ておりました税制、Cofinsの問題。これはブラジル全体の問題ですので、日系 企業、あるいは、日本だけが言ってどうにかなる問題ではないが、マナウスの税制の問題となると、これは非常に日系企業が大きな影響を受ける点では日本に とっても非常に関心の高い事項ですので、こういった点に関しては大使館のほうにご相談いただければと思っております。以上です。

  • 閉会の言葉 多田企画戦略委員長


    多田企画戦略委員長

     

    多田 今日は皆さん、3時間半以上にわたって、どうもご苦労さまでございました。今回、総務委員会と企画戦略委員会の共催と言うことですが、わたくし7月からこの 企画戦略委員会の委員長をおおせつかったと言うことで、実質なにもしておりませんで、浅賀さん、及び浅賀さんの下で副委員長をやっていらっしゃる秋山さん や皆さん、あと事務局長の平田さん、事務局の皆さんにお世話になったという状況でございます。

    今日は皆さん、3時間半以上にわたって、どうもご苦労さまでございました。今回、総務委員会と企画戦略委員会の共催と言うことですが、わたくし7月からこの 企画戦略委員会の委員長をおおせつかったと言うことで、実質なにもしておりませんで、浅賀さん、及び浅賀さんの下で副委員長をやっていらっしゃる秋山さん や皆さん、あと事務局長の平田さん、事務局の皆さんにお世話になったという状況でございます。

    前回、初めて出させて頂いて、今回これで2回目ですが、前回は日本企業の皆さん、かなり明暗が分かれていて、明のほうは輸出関連とか、一部、自動車関連とか だったと思うんですが、ここに来て、ま、半年経ったところで、相当明るい業界、ほとんどが明るい業界に変わって来たと。ま、一部、食品とかまだ苦しいとこ ろありますが、今後、明るくなっていく兆しも見えると言うことなので、ま、良かったんじゃないかと思います。

    今回いろいろ問題提起がされております、最初に桜井さんから商工会議所の活性化と言うことで相当大きな問題がドンと投げられたわけですが、これ以外にもマ ナウスでの問題、あるいは一般に言われるブラジルコスト、とくに最近ではインフラとか、そういった問題も指摘されておりますので、商工会議所として、どう 取り上げて何ができるかって言うのはまぁ、あるんですが、その辺はこれから常任理事会等で議論されていく問題だろうと言うふうに思います。

    最後 になりましたけれども、今回、石田総領事、それから笹本一等書記官、どうも出席ありがとうございます。それから今回、会場を提供いただきました南米安田保 険の遠藤さん、ありがとうございます。商工会議所の事務局の皆さん、それから副会長、とくに浅賀さんは、実はまだ病気でご療養中なんですが、この会議のた めだけに特別に出てきておられますので、どうもご苦労さまでした。

2004年上期業種別部会長懇談会

04年上期の部会長懇談会は、2月5日午後3時~6時30分まで安田保険講堂で開催された。

今回は総務委員会(浅賀健一委員長)と企画戦略委員会(坂野正典委員長)の共催で行われ、浅賀委員長が司会役。

11部会からそれぞれ部会長、あるいは副部会長が「ブラジル経済の03年下期回顧、04年上期展望」を主題に、各部会の活動計画、あるいは日伯FTA等の副題で発表をおこなった。

質疑応答の活発さが目立った(巻末に懇談会寸描)。

 

発表順:

司会  浅賀健一 総務委員長(日本スチール)

挨拶 田中 信 会頭(リベルコン・ビジネス)

コンサルタント部会 桜井悌司 部会長(ジエトロ・サンパウロ)

金融部会 村田俊典 副部会長(ブラデスコ銀行)

貿易部会 中村純一 部会長(ブラジル丸紅)

化学部会 板垣義実 部会長(スリーボンド)

機械金属 松永和彦 部会長(日立製作所)

繊維部会 福島良和 部会長(ブラジル鐘紡)

自動車部会 新沼正広 副部会長(ブリヂストーン)

運輸サービス部会 横山幹雄 部会長(JAL サンパウロ)

建設不動産部会 清水邦保 部会長(竹中工務店)

電気電子部会  盤若幸男 副部会長(NEC ド・ブラジル)

食品部会 渡辺英明 部会長(東山農産加工)

同席者 坂野企画戦略委員長(ブラジル住友商事)、赤嶺総務副委員長(ソール・ナセンテ人材銀行)、石田総領事。


浅賀司会


坂野企画戦略委員長


左から赤嶺総務副委員長、坂野企画戦略委員長、浅賀総務委員長(司会)


桜井部会長(コンサルタント)、村田副部会長(金融)、中村部会長(貿易)、板垣部会長(化学品)、松永部会長(機械金属)、福島部会長(繊維)


左から渡辺部会長(食品)、盤若副部会長(電気電子)、清水部会長(建設不動産)、横山部会長(運輸サービス)、新沼副部会長(自動車)


桜井部会長(コンサルタント)、村田副部会長(金融)、中村部会長(貿易)

 

  • 司会 浅賀健一 総務委員長(日本スチール)


    浅賀司会

    始めさせて頂きます。今日は皆様、お忙しいところをお集まり頂きましてまことに有難うございます。わたくし総務委員長の浅賀と申します。

    今回の部会長懇談会は、お隣りの坂野さんの企画戦略委員会と総務委員会共催でやらせて頂くことになりました。
    まぁ、今日の話し合いの中から共通のテーマなり、横断的な課題がうまく汲み取れれば、今後の我々の委員会活動、部会活動に生かしていきたいと二人で相談して、今回から共催とさせて頂きました。

    今日11部会の発表を頂きますが、部会の数が多いこと、前半ゆっくりですと、どうしても後半の方に押してきますので、いつも順番の遅い方が、なんとなく割 愛してポイントだけみたいな感じになりますので、今回は、持ち時間を少し厳しめにと、厳格な赤嶺副委員長を、時計係りにお願いしまして・・・(笑)。
    要領としましては、お一人当たり持ち時間10分。その後、その部会発表に関する質疑応答の時間5分、1部会当たり10分+5分の割り振りになっておりま す。10分の前の8分ぐらいに、注意を喚起するかねの音が"チ-ン"と来ますので、そろそろまとめる方向で話を進めて頂きたい。また、この調子では15分 たっても終わりそうもない時は、"伝家の宝刀"の「レッドカード」を用意していますので(笑)。レッドカードが出たら容赦なくその場で話を打ち切らせて頂 く。イエローカードはありませんのでくれぐれもご注意頂きたいという風に思います。

    それから、今回は発表者の方々に、年末年始の非常にタイトな 中で準備をして頂き、大変ご負担をかけたと思います。昨年2月の部会長懇談会は10日間ぐらい余裕があったが、今回は年明けすぐに部会を開いてまとめると 言うことで、各部会長さんは大変だったと思います。今回は非常にそういうタイトな中でやって頂くという事で、あまりいろいろお願いできなかったが次回、今 度の秋、秋というか8月にやる時は、パワーポイントぐらい用意したいと。で、話の目次というか、項目程度は聞く方に見て頂きながら話をする。そんなことも 考えておりますので、出来ましたら、お話されるポイントを、聞いておられる方が分かるような感じでですね、お話をして頂けたらという風に思います。

    それから、お話を進める順番は、コンサルタント、金融部会の方から繊維の福島さんの6組まで行ってコーヒーブレイクと。コーヒーブレイクの後は自動車から 始まって最後は"不況知らず"食品部会の渡辺さんのところで景気良く締めて頂きたいと(笑)。ま、こんな風に考えておりますので、よろしくお願いいたします。

    それでは、会頭のご挨拶を頂いてから発表会に入りたいと思います。会頭よろしくお願いします。

  • 挨拶 田中 信 会頭(リベルコン・ビジネス)

    快晴の空に一点の暗雲 - ブラジル経済 -


    田中会頭挨拶

     

    田中でございます。簡単にご挨拶をさせて頂きます。

    本 日は、当会議所のメインイベントの一つ部会長懇談会「2003年の回顧と2004年の展望」に多数ご出席頂き、まことに有難うございました。特に総領事館 からは、石田総領事以下関係者の方々、さらにブラジリアの日本大使館からもわざわざ、笹本一等書記官にご参加いただいております。

    この懇談会は 1970年代、日本企業のブラジル進出ブームの時代に開始され、年初と年央の2回、毎年実施され、すでに約30年の歴史を有しております。当初はコンサル タント部会主催で、その後、総務委員会主催となり、本年は今、ご紹介がありましたように、総務および企画戦略両委員会の主催となり、年々発展を続けており ます。

    当初からブラジルの日系企業はもちろん、日本企業本社、日本の大学や研究機関、関係官庁などから注目を集めてきました。ジェットコース ターのように変動が激しいといわれるブラジルの政治経済情勢において、指針とする正確な情報が少ないこともあり、懇談会における分析や見通しは信頼すべき ものの一つとして尊重されて来たと考えます。さらに、自分の業界以外、他業界の動向も分かり経営上大変参考になると思います。

    しかし、経済予測は難しいもの、ある意味では、極めて当然のことと言えましょう。見通しが100%的中すれば、予測の意味がなくなります。儲かる人ばかりになるわけですね。

    本年のブラジル経済も、昨年から本年1月までは、楽観的見通しが支配して参りましたが、つい先週、アメリカの金利引き上げ懸念やブラジルのインフレ再燃警戒などから株式が下落、ドルやカントリーリスク上昇などで、快晴の空に一点の暗雲が現れた感じです。

    大事なことは、結果自体の予測よりは、それにいたるプロセスにおける分析や問題点の認識などが重要ではないかと思います。

    ブラジル事典についてお願い

    次にこの場を借りて、近く日本で発刊予定の『ブラジル事典』についてお礼と若干のお願いをさせて頂きます。この事典は全員参加で、産業や法律部門などを会 員各位に分担、執筆頂き、一部コロニアの専門家のご協力も頂き、現在日本で校正、編集が進められております。前回、10年前にも『ブラジル経済事典』を出 しておりますが、この場合は、産業や法律だけではなく、全編を会員が担当して、編集もブラジルで行い、日本では印刷、出版だけを行いました。今回は日本側 一流のブラジル研究家の方々、例えば三田先生、西島先生、西沢先生、小池先生等々が、ボランティアでそれぞれの専門分野を執筆して下さり、校正、編集、全 般統括、出版元との接渉なども、小池洋一拓殖大学教授が非常な情熱を持って、全部引き受け下さっております。各自分担分のうち、校正が必要とされる分が皆 さんのところに送られております。ご多忙中とは存じますが、10年に1度の当会議所のイベントを成功させるため、追い込み段階に入った事典出版にさらなる ご協力をお願いします。 最後に、本日の懇談会のために例年同様、立派な会場を提供下さった安田保険の遠藤社長以下関係者の皆様に厚くお礼を申し上げて、 わたくしの挨拶を終わりたいと思います。

    司会: 皆さんの発表が終わった後は、最後の締めとしまして、石田総領事のほうからご講評を頂くことになっておりますので、よろしくお願いします。それではコンサルタント部会の桜井さん、よろしくお願いします。

  • コンサルタント部会 桜井悌司 部会長(ジエトロ・サンパウロ)

     

    大きく変わったブラジル - 輸出振興、見本市会場等

    桜井:
    コンサルタント部会長を命じられましたジェトロの桜井でございます。本日は3つのテーマについてお話させて頂きます。最初は「ブラジルは変わったか、ある いは変わりつつあるか」。2番目は「ルーラの2年目の課題」。それから3番目はそれを受けて、「コンサルタント部会が本年度どう言う展開をするのか」で す。

    最初の、「ブラジルが変わりつつあるのか、あるいは変わったか」。わたしは着任以来3カ月経ちますが、この3カ月の間にブラジルの 輸出振興政策はどういう感じになっているのか、あるいは、ブラジルの外資誘致政策はどういう形になっているのか、に関心を持ち、ブラジリアやリオに行って いろいろ調べ、その結果、「相当変わった」という印象を受けました。それを一つずつ説明させて頂きたいと思います。
    組織面からは例えば輸出振興 を取り上げますと、1998年にAPEXという輸出振興庁ができました。取材していて、非常によくがんばっているとの印象を受けました。2000年の11 月にはECT(郵便公社)が小額の輸出のため、輸出簡素化のExporta Facilを導入しております。2002年には、ブラジルも輸出保険が必要と あってSBCEというブラジル輸出保険会社を設立しております。
    外資誘致政策では2002年に、商工会議所とも関係が深い官民合同のInveste Brasilをつくっております。それから見本市の会場。見本市は輸出輸入振興に大きな役割を担っており、有効な手段ですが、わたくし見本市会場について調べました。
    従来は非常に大きな、面積66,800平米ぐらいの「アニェンビー」だけでした。- 東京ビッグサイトは80,000です -。それまで「アニェンビー」 だけだったのが、93年には「センターノルテ」ができ、驚くべきことに98年から2001年まで、「ITMエクスポ」、「トランスアメリカ」、それから 「イミグランテ」の拡張工事を含め、24,000から40,000平米の大きな展示場が続々できました。97年から98年は、世界的金融危機があったが、 我々はそれ以降の世界は、これは韓国、中国、どこでもそうですが、全く別物であると発想する事が必要という気がします。

    ルーラ大統領の海外訪問はミッション同行
    メルコスール・ミッションも4カ国共同歩調で

    それからポイントの2。仕事についても結構ブラジルは、組織立ってやっている。継続性が出てきたとか、あるいはコストパフォーマンスについて相当力を入れて きた、周到な準備もするようになった。具体例ですと、ルーラ大統領が海外訪問にミッションを同行させています。昨年は23回行いました。アフリカには 150名、中東は150名、インドは50名強一緒に財界人が行っている。従来であれば、ゾロゾロついて行くという感じでしたが、今は相当事前に準備してい る。APEXの総裁とのインタビューでは、インドについては5回、事前に調査団を出しているとの事でした。
    わたし、1月中旬にコロンビアの国際繊維見本市を見に行きましたが、そこではラジルがすごく大きな場所を占めている。カタログも事前にすごく立派なものを作っております。

    3 番目のポイントは連携業務がうまくなった。在日ブラジル大使館も昔と比べて相当働くようになっているし、驚くべきことは最近メルコス-ル4カ国の共同歩調 が見られる事です。例えば2000年12月に専門会議が設立され、2002年には南アフリカへ共同ミッションを出しています。ベルリンに初めて共同貿易促 進センターと言う、展示場付きの事務所を構えています。さらに2003年にはドイツの食品見本市参加、メキシコへの共同ミッション派遣。これは大成功を遂 げたとの事です。
    2004年、今年はルーラ大統領がインドを訪問し、その時はメルコス-ルの代表団も参加しています。さらにベルリンでの展示会、 韓国のソウルでのソウルフーズという食品の見本市、これにもジョイントで参加する計画です。それからルーラ大統領の中国行きの時には、大々的な4カ国のメ ルコス-ル・プレゼンテーションをします。これはまだ交渉中ですが、上海に、ベルリンに次ぐメルコス-ル共同貿易促進センター設立を計画していると言うこ とであります。

    日本にブラジルの新風を吹かせるには

    個人的に考えるのですが、次に日本にブラジルの新風を吹かせるにはどうすればいいかについての提案ですが、日本の企業は中国、東アジアへ一生懸命向いていて、ブラジルとか中南米にはあまり関心を払っていない。では我々はどうすべきかを考えたところ、いくつかあります。
    まずブラジルの変化を読み取る。2番目はブラジルの新しい側面を理解すること。これはすなわち「技術の国ブラジル」。これをしっかり我々は把握しなくては と思います。それから、ここが重要なのですが、駐在員あるいはコロニアの皆様全体が、日常的にしつこく計画的にブラジルの将来性、重要性を日本とか本社に 訴えること、情報発信をすること。従来は東京が悪いという話に終始するのですが、「本社、東京の責任にしない」というのが非常に重要かなと思います。
    さらに我々自身も少し変身しないとダメなのかなと思っていまして、あの〃ブラきち〃、ブラジルきちがいってよく言われますが、その〃ブラきちアンチーゴ(古い)〃から〃ブラ好きノーヴォ(新しい)〃に我々変身すべきというのがわたしの意見です。
    では〃ブラきちアンチーゴ〃とは一体どういう人かと言いますと、ブラジルが大好きで、まぁなんでもアバタもエクボになってしまう。それから昔のブラジルに固執する。そして人にバランス良くブラジルを紹介する努力を、理解してもらう努力をしない。自分だけで納得する。
    これはわたしが勝手に描いた〃ブラきちアンチーゴ〃ですが、では〃ブラ好きノーヴォ〃はどうかと言いますと、ブラジルをバランス良く見る。それから昔のブ ラジルに関わらず、最近の変化を読み取れると言うことです。それからダイナミックに変化するブラジルの新しい姿を正確に日本、本社、他人にねばり強く伝え ることができると、そういうことが必要です。
    古い進出方法を見ますと、とにかく進出して、「小さく生んで大きく育てる」。それで〃ブラきち〃を 送るというのが、昔の方針かなと思います。これに反して新しい進出方針は、世界とブラジル市場を十分にリサーチし、適切なスケールで、最適の人材を派遣す るというのが必要であります。

    ブラジル本年の課題は3.5%の経済成長

    ブラジルの本年の課題としては経済面では、やはり3.5%と言われている経済成長を遂げる。それから失業率の減少、飢餓ゼロ運動の本格的取組み、外国直接投資の増加、国内設備投資の拡大が必要です。
    政治面ではルーラ政権の支持率の維持、全国市長、市議選挙が10月にありますが、これにルーラが勝つかどうか。それからさらに重要法案の税制改革、司法改革、労働組合など目白押しにあるんですが、彼の支持率の高さを利用していろいろ頑張ってもらいたい。
    わたしは今年は、日本とブラジルの関係が面白くなりそうという意識を持っています。それはまず1つは要人の往来。ルーラ大統領が訪日するかは分かりません が、訪日の可能性もあると考えられます。それからアルキミン知事が4月に行きます。それからアモリン外相も日本に行く可能性が高い。それから小泉総理、川 口外務大臣が訪伯すると。まぁ、それによって、いろんな鶏肉とかアルコール等の現実の進展が出るかもしれないし、FTAも進展するかも知れない。

    セミナーなど会員に役立つイベントを

    最後に、じゃそれを受けて、コンサルタント部会は一体何をするかですが、3つのことをやりたいと思っています。
    1つは、基本的な認識としては商工会議所の会員のお役に立つということをやりたいと考えていまして、まず1つはセミナーの実施。年間6回から7回セミナー をやりたいと思います。第1回から第2回、第4回まではもう講師と大体の時期が決まっております。それで第1回は2月12日に「ブラジルにおける見本市ビ ジネスの動向」ということで、わたしがやるんですが、その他にはアーンストヤングの牧野さん、遠山コミュニケーションの遠山さん、それからヤコンの山下さ ん。この当たりがもう決まっており、それ以外にも後3、4回やりたいと言うことであります。
    最後に後2つ。コンサルタント部会の会員である調 査、PR会社、会計事務所等の「ダイレクトリー」を作製したいと考えています。これはサンパウロの日系、ブラジル系の調査、コンサルタント、PR会社等が コンサルタント部会に入っているが、一体どこの会社がどういう形でやっているのか分からないので、一応ダイレクトリーを作ろうかということであります。
    それから「進出企業現地化実態調査」というのをやらせて頂きたいと思っています。これは3年ごとに日本の進出企業がどの程度の現地化を図っているかを調査するということです。
    まぁ、こういうことをやりたいと思っておりますので、その予算配賦をよろしくお願いしたいと言うことと、それから今日お帰りに当方で作りました「ブラジル最新事情」を読んで頂いてコメント等ありましたら、いろいろ教えて頂きたいということであります。以上でございます。

    司会:
    非常に分かりやすい、具体的な数字、回数、人数が出てきました。我々も新聞をいつも流し読みしていて気に止めていなかったような事を、まとめてお話頂きましてありがとうございました。
    最初にいきなり「質問は?」と言われてもしにくいと思いますが、どなたかご質問がありましたら、桜井さんに。
    それでは、この後また金融部会のほうでマクロの話が出てくると思いますので、その時いっしょにご質問を受ける事にしたいと思いますので、金融部会の村田さん、よろしくお願い致します。

  • 金融部会 村田俊典 副部会長(ブラデスコ銀行)

    ルーラ政権、順調なスタートを切った1年

    村田:
    金融部会の副部会長をしております村田でございます。これから説明するものはエッセンスですので、基本的には商工会議所のホームページのほうに、その辺り 皆さん会社でお使いになられるように内容をきちんとしたものを貼り付けます。原稿もまとまっているものがございますので、後でそれをご覧頂ければと思いま す。
    それでは2003年の回顧から申し上げたいと思います。パート1はマクロ経済、パート2は保険業界について。それからパート3は、金融部会の出しています2004年度の為替・金利予測ということでお話したいと思います。
    まず2003年ですが、ルーラ政権は左翼政権の誕生という非常な不安から始まったんですが、順調なスタートを切った一年と言えると思います。最初にやったのはIMFの支援を継続させるためにオーソドックスな経済運営をして行くことを内外にアピールしたということ。
    為替相場はレアル高傾向で安定し、インフレも沈静化してきた。今後さらに低下の余地も生まれているということです。
    結果、株式市場も2003年は大きく上昇し、ブラジルのリスク指標となってるEMBIというのは470ポイント割れ。C-Bondも98%を超えると言うところまで行って、数字から見て非常な改善がなされた年だと思います。

    諸改革法案を成立させた03年
    04年は社会の要求がポイント

    政 治面では重要な課題であった社会年金改革それから税制改正、この辺になんとか目処をつけることができた年であると。特に社会年金改革は、大幅な年金財政の 改造、後は官民の不公平是正を目的としてなんとか12月に上院本会議を通過させていますし、税制改革はいろいろと利害関係が多域にわたることで難航もして おりますが、とりあえず2004年のプライマリー収支を達成するためと、税制改革を3段階に分けて、財政源必須の項目、えー、CPMFとかDRUを第1段 階として、ICMS等の改正は2005年以降とした改正案を12月土壇場で成立させています。
    こういうことで、ルーラ政権は安易なポピュリズミングに流されることなく、地道な構造改革を優先させてきております。
    一方では、過去のルーラを支えたPT党員の中での不満だとか、それから1年間、あの高金利で我慢した社会の要求あたりが2004年にどうやって出てくるかが今後のポイントだと思います。
    経済全般に関しては、先ほど簡単な指標も申し上げましたが、マーケットは非常に回復しています。
    2003年の特筆すべき事項としては記録的な貿易黒字が挙げられると思います。過去最高、通年では248億ドル。黒字額では世界でも10位以内ですし、経 常収支も1992年以来、初の黒字転換をしています。30億ドルと非常に小さいが、黒字になったと言うことで数字は改善しています。

    地場銀好調、外銀苦戦の03年
    経済は04年に金利低下で回復期待

    それから農作物も輸出が非常に進んだ年で、輸出総額730億ドルの貿易の中でも非常に成長の割合がすごかったのが農作物です。特に中国向け輸出が大きくなって、一方で日本向けは後退しています。
    銀行業界に関して言うと、利鞘を確保した地場大手銀行が非常に好業績を上げております。そろそろ決算が発表になると思いますが、恐らく15%、20%増の 収益が達成されている銀行が多いと思います。一方で外銀はレアル高による為替ヘッジ取引の損失やカントリーリスクの親銀行の慎重な見方もあり、苦戦を強い られており、2000年に占めていた外銀の28%のシェアもだんだん低下して来て、非常に外銀は苦戦していると言えると思います。
    2004年に 関しては、抑制的な財政運営の緩和にたぶん重点をおいて雇用回復、景気の浮揚を図って行くという風に考えられると思います。また、10月のいわゆる市長選 挙織り込みで、政府としては貧困問題、所得の再分配、土地制度改革、社会福祉問題をいろいろと既得権益層との駆け引きによって譲歩したりしながら行くと全 体的な運営を見ています。
    経済成長率は、金利低下により内需回復が景気を刺激して、2004年は3%台に回復すると見込まれています。

    今年末為替は3.2レアル辺り
    selic金利は13~14%見当

    それから皆さんがあの一番気に掛かると思いますレアルの対ドル相場動向は国内景気、それから貿易収支、外貨資金繰り、米国金利動向の4点がおそらく注目になってくると思います。
    ただ、2004年は、2003年がレアル高にぐっと進んだ反動もあり、緩やかなレアル安傾向になる向きが大きいと言うことで、市場関係者の大方は年末1ドル3.2レアル辺りを見込んでいると思います。
    金利はまぁ徐々に引き下げられ、Selic金利は大体13から14%という見通しが多い。
    貿易黒字は、内需が回復し輸入が増えて、去年よりも減少して200億ドルぐらいの着地となり、経常収支はまだ少し赤字に転落すると思いますが、対GDP比レベルでは問題のないところに着地すると思います。
    直投は民営化等いろいろとあった過去の300億ドルとかのピークを2003年度は100億ドル割れと言うとこまで落ち込んだが、2004年度はやや回復して120億ドル程度の直投が見込まれております。
    銀行業界は貸出しのポートフォリオを一斉に積み上げるぞと。それから金利が下がりますから、この部分の収益拡大を目指すことでかなり貸出運営に重きがおかれると思いますので、比較的そういう意味では、貸出競争も起こって来るのかなぁと思っております。
    マクロのおさらいをざっと、それから展望を申し上げました。

    昨年保険料収入は13%増

    保険業界を次に簡単に説明しますが、保険業界の収入保険料は対前年比で13%の増加。済成長率を大きく上回って市場は非常に拡大したと言えると思います。
    種目別には生命保険が64%増と突出増加しております。これは年金払い型商品で、VGBLというのがありまして、一括払い型のまぁ、税金を先延ばし出来るという商品ですが、これ67%の達成ということで、非常に貢献してます。
    あと、事業収益の中では損害率が上がって、保険業界の収入は金利が減少し運用益が減った事もあって、やや減少していると言うことです。
    2004年の展望は、保険業界では12%の増加を予測してます。それから内部監査体制って言うので、いろいろ昨今話題になってる自動車保険の全損処理辺り をですね、問題がありまして、臨店検査が入るということで、その辺り、非常に検査が厳しくなったらですね、業界大変に拍車がかかる可能性があるということ です。

    金利、為替予測 - 6月末と12月末

    最後にパート3として、わたしども4行、1コヘトーラ(ブローカー)が金利予測、為替予測をしておりまして、これも表にして後で貼り付けますのでざっと聞いて頂ければ。
    為替の6月末の予測は、一番低いところがレアル高のとこは2.6~2.9のゾーン、大体平均で2.75レアルぐらいですが、その予測をされてる銀行から、一番レアル安が3.25。後は3の近辺、3.0いくつと言う辺りです。
    12月末の予測は、一番レアル高が同じく2.75ぐらいのゾーンで、レアル安が3.45。平均でいくと3.1前後のところです。
    金利は6月末はほぼ15%台。ほとんどのところが大体15%の予測でして、12月末が13から14%の間となっています。
    この中でキーワードになるものに、やはりどこの銀行さんもドル、金利の上昇を挙げてらっしゃいます。ドル、金利が上昇するとこの前、FMCが一寸コメント 出して上がるかも知れないみたいな事を言っていますが、それによってかなりレアルが安くなる局面が来るであろうと言うことがポイントだと思います。
    後はインフレ目標を達成できるか、インフレが再燃するかどうか辺りが金利の動向に、関わって来ると言うことです。

    司会:
    どうもありがとうございました。村田さんからもご紹介ありましたように、カマラ(商工会議所)のホームページを見て頂きますと、前回の部会長懇談会、今回 も、いずれ整理できましたら、ホームページに載ります、まとまった資料で出ますので、是非ご利用頂きたいと思います。はい、どうぞ。

    中銀のドル買いの真意はどこに

    渡辺:
    中銀が年明け早々ドル買いで介入して来ましたが、表向きは外貨準備高増という理由を言っています。なんか非常に唐突な感じで、今ひとつ理解できないんですが、あの真意は何だったんでしょうね?
    村田:
    中銀の真意が分かれば非常に・・・・・・と思いますが、えー、ここはちょっと。
    渡辺:
    銀行としてはどういう見方をしたんですか? あのドル買いに関しては。
    村田:
    ド ル買いに関しては、まぁ貿易収支辺りの懸念がありますから、適正なレベルまで持って行きたいというのが多分マーケットの統一された見方だとは思いますけど も、足下、やっぱりこうレアルが弱くなって来ているのは、やはりそのインフレ懸念と。先ほど田中会頭おっしゃいましたがアメリカ連銀の金利を上げるオプ ションを持っていると言うような感じのコメント内容ですね。まぁ、レートに影響していると言うことで、エマージングそのものが売られていますから、そう言 うことで動いていると思いますけども。中銀が本当にどう動いたと言うところまでは、一寸わたしも存じ上げません。申し訳ないです。
    大手銀の利鞘ゆえ、多少の利下げでは内需回復は困難では
    坂野:
    金 利ついて質問があります。現在市場では基本金利Selicだけが騒がれていますが、現実の問題は国内大手銀行の中小企業及び個人に対するスプレッド(利 鞘)の幅が大きすぎるということではないですか? 多少のSelicの切り下げをやっても内需はそんなに回復しないのでは? それと国内大手銀行のスプ レッドはこれほど必要かどうか? 貸し倒れ比率が高いという理由はわかるが、現実に御行を含め大手銀行はかなりの利益を上げている。GDPが0.5%以下 の状況下で大手銀行が前年比15-20%アップの利益を上げている現状を見るに、やはり銀行の金利が高すぎるという気もしますがいかがですか?

    利鞘にデコボコあるが、セグメントでは適正
    以前もっと高い時期あり今低下 - 指標で景気回復見てとれよう

    村田:
    ご 希望にお答え出来るかどうか分かりませんが、説明したいと思います。最初のSelic金利だけ下げても内需が強くならないんじゃないかと言うことに関しま しては、我々そのCDIの先物金利ということで1つ指標 があるんですけど、これとマーケットでプラクティスされているリスクプレミアムを乗せた数字の比較があるのですが、それを見る限りは、いわゆるピーク時に はもっともっと高い、いわゆるスプレッドを、リスクプレミアムを乗せて銀行は貸出運営をしていましたし、当然あの、いわゆるリザーブ・リグアイアメントが 引き上げられた時期に関しては、流動預金から上がってくる収益を確保しなきゃいけないと言うことで、金利をさらに上げている時期も以前、03年にはござい ます。それから行くとですね、いま足下のその指標は大分下がっておりますので、その指標を見れば景気は緩やかに回復するだろうというロジックは見てとれる と思います。
    次のご質問の、何故そこまで貸出金スプレッドが引き上げられなければいけないかに関しましては、やはり先ほどおっしゃった引当率が非 常に高いと言うことが1つ大きな原因です。これはあの、いわゆる大型の、大手企業の貸出に関しては、ま、そこそこの数字や利鞘でやっておりますが個人のい わゆるシェッケ・エスペシアルとかいわれる部分、この辺り非常に高い。これは、あの、返せない人も多いマーケットでですね、それなりの確率、引当と利鞘を 確保するというのは仕方がない。だから全体でいくと非常に高いけども、セグメントをとって見ると適正なスプレッド運用がなされているのではないかと言う風 に考えております。例えば、消費者ローン、あの消費者のマーケットでも、例えば車のリースだとか、車購入のための貸出、この辺はぐっと利鞘も小さく運用し てますんで、この辺はその目的によって大分違うと言うことで。銀行サイドからいくと適正であるというのが(笑)お答えになろうかと思います。

    Selic便乗値上げ、玉突き現象が心配だが

    二宮社長(東洋紡ブラジル):
    あ の、以前のインフレの話ですけども、あの例のCofinsね。我々のとこで2月にすでにですね、買うものにはどんどん、4%から5%、ひどいとこは7%も 値上げして売ってきているんですよね。で、我々の方もそれではもう経営が成り立ちませんから、もうどんどん先に同じようなパーセンテージで、前にどんどん 押して行ってるんですよ。わたしのはまぁ、大変に小さい会社ですから、それ自体が与える影響なんて知れてるんだけども、各社全部が同じような方向へ走り始 めた時に2004年のインフレに対するインパクトは大変に大きいんじゃないかと思うんですよね。一応まぁ、仕事上必要なので、それが一体今後、玉突き現象 でどんな現象が起こって来るのかに関していま、一生懸命いろんな雑誌とか新聞とか読んで勉強する姿勢できてないんだけど、姿勢としては、そういう形でいま 見てるんですよ。で、それに対するご専門家のご意見を1つ、簡単に、わたしでも分かるように1つ教えてもらいたい。以上です。

    中銀は心得て利上げもあり得ると市場に警告

    村田:
    マー ケットでは、実は12月ぐらいから1月になったら、そのいわゆる税制改正のインパクトもあって、玉突きでその値上げが起こるんじゃないかと心配をしていま した。従いまして、非常にインフレに関する1月というのはビビットになっていたと。これは中銀も同じように感じていましたし、エコノミスト辺りもどんな風 に中銀が動いてくるのか、この影響をどう考えるのかを注目していました。従ってこの前ですね、トントンと下がってきたやつを下げませんでしたから、 Copomはですね。この辺りでやはり、危機感をマーケットに流して、「ちゃんとその辺は分かっておる」と言うことのメッセージ出したと言うことが、1つ はよかったのではないかと思っております。従ってその玉突きがどれぐらい、悪影響を及ぼすかというのは分かりませんけども、及ぼす前に逆に金利上げなきゃ いけなければ、中銀は金利を上げてくると。「いまは下がっているけども逆にしてもいいよ」というぐらいの覚悟がこの前のCopomの決議だったと思ってお ります。
    二宮:インフレが起これば金利を上げてくるということか?

    村田:
    そうですね。中銀はそれしかないというか、それをまず最初にやってくると思います。

    司 会:
    お金の話になると俄然盛り上がりまして(笑)、いい感じになって来たんですけども。この後、鶏肉の話も含めて貿易部会の中村さんのほうからお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

  • 貿易部会 中村純一 部会長(ブラジル丸紅)

     

    03年貿易黒字、国際収支好転に貢献

    中村:
    中村と申します。貿易部会より発表させて頂きます。貿易部会では「2003年の回顧と2004年の展望」というレポートと、それとジェトロさんの協力を頂 きまして3種類の統計資料を準備してあります。1つは、ブラジルの主要商品別輸出入統計、それから2つ目は、主要国別輸出入統計で、これは特にブラジルの 対中国貿易についてハイライトをしてあります。3つ目としては、対日の主要商品別輸出入統計を準備しておりますので、後ほどご参照頂ければと思います。
    ではまず、昨年の貿易の回顧についてですが、一言で言えば、昨年の貿易収支はルーラ政権と同様に当初の見通しと異なり、ポジティブ・サプライズとなって、 過去の最高記録である196億ドルを大幅に超えて248億ドルの史上最高の黒字を計上しました。結果的に、ブラジルの国際収支に大きく貢献したと言うこと がいえます。
    その要因としましては、旺盛な外需により輸出が大幅に増加したこと。それから国内の景気が停滞していることもあり、輸入があまり増えなかった結果であるということが言えると思います。

    航空機にとって代わった自動車輸出

    昨年の輸出につきましては、品目別には、大豆、鉄鉱石などの一次産品、それからパルプ、スラブなどの半製品が大幅に増えています。完成品では自動車の輸出が伸びており、一昨年1位であった航空機を抜いて自動車の輸出が第1位となっています。
    輸出相手国別では、アメリカ、アルゼンチン、中国となっています。特に注目すべきは、東欧、アフリカ、中東などへの輸出が軒並み増加している事であります。
    一方、輸入につきましては、資本財、消費財などの輸入が減っています。一部原材料、それから中間材料が、昨年より増えてはいるものの、輸入全体としては、微増に留まりました。
    対日貿易につきましては、輸出輸入ともに増加しておりますが、輸出で、第6位、輸入で第4位という風になっております。今後日本とブラジル間のさらなる経済交流の拡大が期待されるところであると思います。

    今年は196億ドルの貿易黒字予想

    2004 年度の展望では、中央銀行の見通しとしましては、750億ドルの輸出、560億ドルの輸入。貿易黒字が196億ドル程度という風になっております。これは 世界経済が回復基調にあるなかで、輸出は緩やかながら増加ペースにある事と、輸入については、国内経済の回復が見込まれること、それからルーラ政権が2年 目に入りまして、政権運営の基軸を「経済開発と雇用創出」に移しまして、GDPの3.5%成長を目指して、何らかの景気の刺激対策がとられるであろうと言 うところからでございます。
    対日貿易につきましては、特に昨年末の米国の、BSEの問題。それから今年の1月に始まりましたアジア各国での鳥インフルエンザの問題で、ブラジルが脚光を浴び初めております。

    鳥インフルエンザ騒ぎ、ブラジル国名がひんぱんに日本のTV、新聞に

    最 近のNHKのテレビ・ニュース、日本の新聞などでも、ブラジルの名前がひんぱんに出てくるようになりまして、わたしどもとしては、極めて喜ばしい限りであ るという風に思っております。ちなみに、内輪の話で恐縮ですが、昨年、1月から12月、1年間の鶏の対日輸出量は1200トン程度であったんですが、今年 の1月だけですでに2000トン程度を成約しておりまして、この2000トンというのは向こう3カ月間分の出荷量で、アジアの鳥インフルエンザ騒ぎが今年 いっぱい続くとも思われませんけれども、いまヒヨコにすると4月ごろには肉で売れるそうですから、今年の前半は、ブラジル産鶏肉の対日輸出が期待されると ころであろうと思っております。
    加えまして鉄鉱石、大豆、鶏肉など、値段が軒並み上がっており、金額的にも対日輸出額が大きくなるものと思われ ます。ただ1つ懸念材料と致しましては、昨年日本とメキシコとのFTAの交渉が難航したこともありまして、日本政府のFTAの交渉スタンスがどちらかと言 うと、フィリピン、ベトナム、マレーシアだとか、アジアにシフトしていること。それから昨今は船が足らなくて海上運賃がえらい高くなっていると言うような ことが、懸念材料として挙げられると思います。

    部会で今年4回のセミナー計画

    最 後に貿易部会としましては、今年は4回程度の、セミナーを開催しようと思っております。第1回はすでに1月末にNEXIの長谷川所長に来て頂きまして、貿 易保険について講演して頂きました。第2回目は3月~5月ごろ。第3回目、第4回と引き続きやる予定です。第2回目については、いわゆる「カーボン・デ ヴェロップメント・メカニズム」についての啓蒙活動も兼ねてセミナーを開催したいと思います。それから第3回目としては、その昨今、気に掛けなければいけ ない事であろうと思います「コーポレート・ソーシャル・レスポンサビリティー」についてセミナーを行いたいと考えています。それから最後、ブラジルおよび 中国の貿易についてもう少し詳しく知りたいということで、勉強会を開きたいと、こういう風に考えております。以上でございます。

    司会:
    ありがとうございました。それではご質問ございませんでしょうか?ないようでしたら、次回、あの次回の質疑の時に質問して頂いても結構ですので、化学部会 の板垣さんの方に参りたいと思います。化学部会は何と言っても業種、品種の数が多いんで、「10分間でしゃべれるか」って言うところあるかと思うんです が、よろしくお願いします。

  • 化学部会 板垣義実 部会長(スリーボンド)

    きびしかった消費財業界

    板垣:
    今年から務めさせて頂きます板垣と申します。いまお話ありましたように、化学、正式には「化学品部会」ということで、化学原材料をつくっている会社ではな く、そういう原材料を使っていろんなものに加工している、そういったものを輸入したり、ここで現地生産して販売しているという会社の集まりでございます。
    初めて今回、化学品部会で司会を務めまして会議を開きましたが、いろんな業種に分かれてどうまとめていいかよく分からない状態だったんですが、ざっくりと3つぐらいに分けてみました。
    部 会の中でも昨年厳しかった状況にあった業界から行きたいと思います。まずはコンスーモ(消費財)業界。この業界には写真のフィルム、化粧品、文房具、それ から家庭用の接着剤であるとか、一般大衆をターゲットにした商品を輸入したり、現地生産して売っている会社がございます。 昨年初めの部会で、ある社長さ んが「2003年は非常に厳しい年になるであろう。ベルトの穴を2つぐらい締め直して、気を引き締めて行かんといかん」とおっしゃってたんですが、結果的 にはその通りになりまして、コンスーモ業界と致しましては、非常にデリケートな業界でもあるんですが、昨年のルーラ政権がやって来られたいろんな政策、非 常に良かった面がクローズアップされておりますけれども、その反面、平均給与が減ったり失業率が前年比に比べますと若干アップしたりとか、そういった形 で、例えば接着剤なんていうのは1本、2レアルとか安いんですが、それですら買わない、買えない人たちがおりまして、わたしどもの会社の商品の場合、 2002年に比べて2003年は、生産本数で25%減っておりますし、売上でいきますと17%も落ちております。
    あるいは化粧品ですと、これはほとんど輸入品ですので、非常に高い。最近は非常に安いジェネリック品も出回っておりますし、化粧品もかなり苦戦しております。
    全体的には、写真フィルムもそうですね。競合メーカーさんが出て来られたり、価格競争が激化して、前年比減収・減益になった企業さんが多かったと思います。
    下 期に入り、金利の低下等が進み、あるいはドル安、レアル高に転じた傾向もありまして、輸入原材料等の価格が安定してきました。それに伴い、上期の落ち込み を下期で何とかカバーして帳尻を合わせると言うような企業さんが多かったと思います。ただ通年では前年比マイナスの結果になっていました。

    伸びている自動車、2輪向け工業材料売上

    次 に工業材料を生産している会社です。ターゲットは自動車会社さん、あるいは2輪メーカーさん、その他、電気メーカーさんもありますし、そういった工業向け の材料をつくっている会社です。どういった会社があるかというと、皆さんの車の中、家庭の電化製品の中にある、いろんなプラスチック類、それから繊維類が あると思うんですが、それに着色をする着色剤をつくっている会社、工業用の接着剤であるとかシール剤をつくっている会社、あるいは工業排水・水処理の会社 といったような業界がございます。
    この業界は去年、自動車に関して言えば、欧米系の自動車メーカーはかなり苦戦したと思うんですが、その一方 で、日系の自動車メーカーさんはかなり伸びています。2輪メーカーさんに至っては、日系企業さん独壇場ですし、先ほど申しましたけども、平均給与もあまり 伸びてないと言うこともあって、自動車には手が出ないけどもバイクには手が出る、と言うこともあるんだと思います。そういった関係で2輪の業界さんは非常 に伸びているということで、この業界に商品を供給している企業は、1年を通して比較的安定をした売上を伸ばしております。
    私どもの会社の統計で申し訳ないですが、自動車、電気、その他の工業製品で、大体どこも20%ぐらいの伸びを示しております。

    大豆、綿花豊作で農薬販売伸びる

    次に農薬業界。先ほどからブラジルの輸出が非常に伸びてるとのお話があります。その原動力の1つであります大豆であるとか綿、こう言ったものが非常に豊作で あったと。 大豆に関しましては、アメリカで減産がありましたし、アジアとかヨーロッパ諸国で需要が非常に増したこともあって、国際取引価格が高騰したこ と。作付面積がブラジルで初めて2000万ヘクタールの大台を突破したと言うことがあります。
    それから綿に関しましてはやはり、若干他力本願的で すけども、世界第3位の輸出国であるオーストラリアが干ばつで大幅な減産になっています。やはり国際価格が高騰しまして、それから一方でブラジル産の綿の 品質が向上したと。国際的に品質が認められたと事もあり、作付面積が24%前年比増という事もありまして、使用する農薬であるとか、殺菌剤であるとか、こ ういったものの量が非常に増えた。統計上、2002年に比べて56%の売上増、業界全体として56%の売上増を記録したそうです。化学部会の中で昨年一番 の勝ち組だと思います。
    ここに所属されております農薬メーカーさん、それから商社の担当の方々は、非常に顔色とかですね、非常にツヤもあって(笑)余裕の状況がありました。コンスーモ業界の皆さんとは全く対照的なことでした。

    3.5%の経済成長期待、だが一抹の不安もある

    続きまして、本年度の展望ですけれども、ルーラ政権が昨年実施した政策は段々実を結んで行くんではないかと思っています。
    それと、経済成長率が3.5%という、政府発表がありますけれども、これは非常に皆さん、期待しております。農薬業界は昨年良かったけれども、今年がいい かどうかは天候もありますし、サビ病呼ばれる病気があの最近広まっているということもあって若干の心配もあるようです。
    その3.5%ってのは非 常に期待はしているんですが、一抹の不安も持っております。金利は、先ほどもご紹介ありましたけども16.5%で止まっておりますし、ルーラ政権の目玉商 品であります税制改革とか年金制度改革は、我々の企業活動にあんまり恩恵が見込めないではないかと思いますし、後で渡辺さんが説明されると思いますけれど も、Cofins。これが今月から7.6%に上がっています。この影響がどのようになるかが非常に心配ですし、インフレの懸念であるとか、平均賃金がやは り低いと言うことで、全体的には警戒感を持って望んでいるというところです。できれば金利をさらに下げて行って、一ケタ台に乗せて頂きたいと思っております。
    それから個人的な観測なんですが、日系の自動車会社さんの業績は良かったと申し上げたけれども、ブラジル全体の自動車の生産台数はここ数年 あまり変わっていない。限界じゃないんでしょうけれど、一つの数字のところで止まっていると。シェアの奪い合いをしているというように思うんですが、自動 車ってのは、ご存知のようにいろんな業種のみなさんがつくった部品を集めてつくっておられますので、この業界が伸びて行かないと、ほかの業界も伸びないん じゃないかと言う風に思っております。

    FTA若干影響は農薬くらい

    それからFTA等に対する影響なんですけども、我々の業界の中でいろい ろ意見を聞いたんですが、FTAAとかFTAに若干影響を受けるであろうと言うところは農薬業界なんですが、ただ、農薬業界は、ほとんどが輸入品だそうで す。この輸入品の場合は、関税が免除になっているそうで、その影響はあまり大きくないであろうと言うことです。それよりも、中国とかインド、それからジェ ネリック品がもうかなり入ってきていると言うことで、こちらの対策のほうが興味があるという意見が多数出ております。

    今年は環境関係各社取り組み調査に努力

    最後ですが、化学品の独自テーマについてどうしようか、いろいろ話し合いましたが、化学品と言いますとやはり毒とか、危険だとか、危ないとかっていうイメー ジが非常に多い、大きいと思うんですね。ブラジルで、我々製造販売させて頂いてる限り、やはり環境に関する取組みって言うのは、非常に大事であろうという ことで、昨今非常にクローズアップされております環境ホルモンであるとか、環境負荷物質といったようなものを、極力配慮したような形での製品づくりをして 行こうではないかと。特に農薬は口に入るものに使っておりますので、全世界的に規制が厳しいそうなんですね。ヨーロッパにはGAPという規制があって、こ れに合致しない農薬は一切輸出入はできない。それから最近各企業さんが、独自の規定を持っておりまして、その独自の規定の中に含まれるその環境負荷物質等 が入っているような製品は一切、サンプルとしても持ち込めませんし、評価もして頂けない、もちろん使って頂けない。ということで、非常に我々の商品を使っ て頂くためのビジネスにも関わってくると言うこともあり、今年1年かけて、化学品部会としましては、このような環境負荷物質、あるいは環境ホルモンに対す る取組みを各会社が、どのように取り組んでいるかをまとめまして、次回の懇談会に発表させて頂きたいと思っております。以上です。

    司会:
    非常に幅広い内容をまとめて頂きまして、ありがとうございました。ご質問がございますか? はい。

     

    伸びた鶏肉輸出の価格は?

    赤嶺:
    すみません、時計のほうに気を取られていて先ほど、貿易部会の中村部会長にお伺いするのを忘れていたんですが、日本への鶏肉の輸出、今年1月は1カ月間で2000トンですか?

    中村:
    はい。

    赤嶺:
    2000トンに急上昇したということですが、値段の面はいかがでございますか? ブラジルから持っていって、日本国内で売るのにそのフレートとか、そのような問題点は指摘されていませんでしょうか?

    価格は6割くらい上昇

    中村:
    値段だけではですね、そのフレートを除いて、すでにもう約6割ぐらい値段上がってます。12月23日か24日だったと思うんですが、アメリカでBSEが起 きた時はえらい安かったんですよ。それが現在はすでに60%超えるぐらい高くなっていますね。で、フレートは入ってません。

    司会:
    で、中村さん、先ほどおっしゃられたのは、丸紅さんの取り扱いだけですか?

    中村:
    うちだけ、うちだけですよ。

    赤嶺:
    全体ではいくらになりますか?

    中村:
    それはちょっとね!各社のその何ていうんですか、あの、リスク・・・できない部分もありますしね。それと、各社によって占める割合が違うわけですね。だか ら、当初の場合なんかは鶏肉の占める割合って極めて少なかったんですね。で、元々取扱量そのものが少なかったということですね。従って、急に増えたという ことが言えると思いますが、別のところにとっては、そんなに増えてないかもしれないですね。量的には。

    赤嶺:
    ありがとうございます。

    司会:
    あと、化学品につきましてご質問ございますか?それでは、機械金属のほうに参りたいと思います。私自身も機械金属部会に所属しておるんですが、せんだって の機械金属部会では、鋼材値上げ問題で集中砲火を浴びまして(笑)。そんなに儲かってるのに何で値段上げる必要があるのかと言われて、「それはウジミナス の問題です」と答えたんですけども(笑)。松永さん、よろしくお願いいたします。

  • 機械金属 松永和彦 部会長(日立製作所)

     

    松永:
    製鉄、軸受け、切削工具は追い風。業容拡大には、為替の安定が、極めて重要。

    機械金属部会の部会長の拝命を賜りました、松永でございます。今日は、宜しくお願い致します。大きく3つに分けてご報告せて頂きます。

    業種が、複数有りますので、大きな1つ目は、全体の話。2つ目はその中で、個別に出てきた要望事項やFTAに関するコメント。3つ目の最後は、時間の許す範囲で各分野の当面の課題、背景、トピックスを、お話したいと思います。

    まず全体ですが、総じて2003年の業績は、予算の達成率は別としましても、2002年と比較して、良かった。2004年は更に良くなると言う見通しが多かったです。
    我々の業界は、一にもニにも、為替の安定が重要です。この点で、2003年は、非常にステーブルなビジネスが出来たと言うコメントが、ありました。

    ただ中身が、いろいろ分かれておりまして、これも3つ位に分けられます。1つ目は、一番厳しかった電力で、目標に対して七掛け位を達成したという所もございました。

    そんな中で、一部の会社ですが、モーター工場を稼動しておりましたが、諸般の事情により方針的に閉めた所も御座いました。

    2つ目は、何とか当初の目標に対してクリアしたと言う所。汎用エンジン、あるいは、ネジ関係、いわゆる産業の米粒としてのネジの部分です。

    3つ目は、ある分野に特化し、ビジネスを拡大して業績が非常に良かった所。製鉄、ポンプ、軸受け、切削工具。前年度比売上げ3割アップは、軸受と切削工具です。

    為替に関しましては、マチマチなんですが、本音を言うとやはり、3レアルを切ると厳しいと言う意見が有りました。出来れば3.1レアル位にして頂きたいと。あと、一応イメージとしてブラジルで作る全体の量の、2割を輸出したい。キーコンポーネントを輸入してますので、ドルヘッジをするような形で、輸入分相当を輸出し、北米に持って行きたいと言う所が幾つかありました。

    これが、大きな1つ目の全体の、マクロイメージでございます

    <要望事項>

    1. 鋼材の輸入税0運動の推進。
    2. 移転価格税制、研究開発費計上ルール変更に対する対応施策。
    3. GIE、欧米商工会議所との連携でブラジル政府に税制、行政改善の働きかけを推進。
    4. フォーメ・ゼロ(飢餓ゼロ計画)実現による、零細農業への政府支援。農業灌漑用水政府援助。

    大きい2つ目の要望事項です。これはバラバラと出てきたやつを4つほど拾いお話させて頂きます。

    1つ目は、かなり難しい話なんですが、「鋼材の輸入税を0にして頂きたい」。そういう切実な要求が御座いました。

    2つ目は、この開かれた商工会議所を、活用したいという観点からの話ですが、「移転価格の税制に関して各社の話を良く伺いたい」。我々は、昨年から何回かこの話をしておりますが、可能な範囲で、各社の対応を伺いたい。次に研究開発費引き当ての話しですが、日本からの支援無しで研究開発をしている会社がその費用を引き当てる際に、ルールが変わり、今後単年度で全額引き当てが可能になりました。その場合、その分、業績は下がります。その辺を、どうすべきかと言う話が御座いました。この辺のお話しを伺いたいと言う趣旨です。

    3つ目は、金岡さんがやられている仕事に繋がると思いますが、GIEと、欧米商工会議所と連携し、ブラジル政府に対して法制、行政の改善をお願いしたい。「是非来てくれ」と言う良い話を伺って来ている所もある訳ですが、一旦進出しますと、"継続は力なり"と言いますけども、続けて行くのが本来ですので、法制、行政の改善も継続して頂きたいと言う、お願いです。

    4つ目は、大統領が言われてる「フォーメ・ゼロ」(飢餓ゼロ計画)の実現をお願いしたい。飢餓に苦しんでる方々をゼロにしたいというのは当然の話なんですが、零細農業を政府の援助で支援して頂いて、リライアビリティーの高い物での生産性を上げて行きたいと思います。現状は、先立つものが限られているので、中国製が、レアル高に伴って、入って来ており、2003年は、苦戦を強いられた所もありました。あるいは農業灌漑用に関し、政府の援助をお願いしたいと言う声もありました。

    <FTA>

    FTAに関しても、まばらなのですが、1つ目として、既進出の重工業は、国内税に苦しんでいて、外国から入ってくる競合先と、関税で何とか凌いでいる。従って、もしFTAを進めるのであれば、国内税を削減して欲しい。放っておいても欧米とのFTAに入って行くのですが、まずは目先の話が、1つあるのかと思います。

    同じニュアンスなんですが、本音としては、体力が付くまで現状維持を、希望している所もありました。

    それから2つ目は、自分の所は、100%輸入しているので是非、決めて欲しいと言う所が、あります。具体的には民間ベースの話が詰って来たので、一日も早く政府間レベルに上げて頂き、ルーラ大統領が日本に行く時に、小泉首相に話をして頂きたいというお願いです。
    大きい3つ目、業界の課題に関しまして、一言ずつ申し上げます。
    製鉄は今、業界再編が水面下で進行しております。為替が3を越えるレアル高だと輸出が非常に厳しいので、6:4で国内のベースロードを確保したい。ただ、中国の景気が良いので、為替次第で、輸出にも振りたい。全体の約半分、1500万トン/年を、輸出にアロケートする力は持っています。
    電力は、水力へ政府がシフトして、電力料金を押さえ込むという流れがあり、大分、ディスカレッジしてるので、ならばその分、業績の良いパルプ、石油、製鉄、鉄鉱石へシフトしたいという流れが、ございます。
    ポンプは、FTA後に欧米メーカーが、入って来るのは時間の問題ですので、今から現地生産比率と品質を上げ準備を進めておこうと言う所もございます。
    汎用エンジンは、フォーメ・ゼロの話ですね。
    軸受、切削工具は、追い風の勢いに乗り、現地生産比率と輸出比率を上げて、為替の振れの影響をミニマムにしたいという所がございました。

    以上で、ご報告を終わります。

    司会:
    どうもご苦労さまでした。それではご質問をお受けしたいと思います。

    移転価格税制についての業界温度差は?

    坂野:
    先ほどの要望事項一つに移転価格税制と言う話がありましたが、業界でもかなり温度差があると思いまが、機械金属部会の中でも温度差はありますか?
    要は、移転価格税制に敏感なところとそうでないところの温度差はどうですか?

    松永:
    幾つかの会社から要望事項が出て来ており、去年8月に1回話をしたのですが、今回は、締切が1月末で、もう間に合わないと言う所が出てきました。その方は、1月28日の打ち合わせ後に個別相談をされておりました。
    各社が、実態としてどんな対応をされるのか、知りたいと言うのが、ポイントだと思います。
    そこの所を持っている方達を、坂野さんのお力をお借りて、ご紹介頂きたいと思いますので宜しくお願いします。

    司会:
    じゃあ、あの、福島さんの方からお願いしたいと思います。

  • 繊維部会 福島良和 部会長(ブラジル鐘紡)

     

    一人あたり年間繊維消費量9.5kg、 - 日本は22kg
    まだまだ買って頂ける余地あり

    福島:
    繊維業界、持ち回り部会長の福島でございます(笑)。繊維産業といいましても大変幅広く天然繊維、化学繊維、合成繊維ありで、最近では、トウモロコシ、バ ナナ、あるいは牛乳、タケ、こう言うものを原料とした繊維が開発され、ま、大変幅広い、多岐にわたっていると言うことであります。
    さらに、原料から製品までと、消費者の手に届くまでには多くの工程も経ておりますし、流通過程も大変複雑で、奥行きも非常に深い産業であります。
    日系企業がブラジルで、企業活動を行っておりますが、この繊維産業のごく一部を担っていると言うことですので、冒頭お話をさせて頂きたいと思います。
    7000年の歴史は天然繊維にあるわけですが、合成繊維、化合繊維、これらの歴史は150年程度だと言われております。
    さらにブラジルの年間1人あたり繊維消費量は、2001年の統計しかありませんが、1人あたり9.5キロの消費です。ちなみにアメリカ30キロ、日本では 22キロぐらいと言われており、比較的暖かい国であるということ、さらには経済が非常に不安定で個人収入の経済的な問題もあり、日本の半分以下というのが ブラジルにおける1人あたりの繊維消費量であります。
    日本ではもうタンスの肥やしになっていると言うことですが、ブラジルではまだまだ、買って頂ける余地はあるというのが、繊維の実態ではないかと思っております。

    日系は8社が紡績、織物、染色に進出、

    次に、素材ごとに部会の中でのまとめですので、綿関係、コットンですね。それと羊毛、シルク、それとファスナー関係と、この4素材といいますか、この4区分でお話をさせて頂きます。
    まず綿ですが、詳細な統計はないんですが、製造設備などから推定しますと、ブラジルのことですが、繊維生産量の8割程度が綿ではないかと言われております。
    この綿の業界の中に、日系企業は現在8社が進出をしてきており、紡績、織物、染色、ま、この分野で企業活動を行っております。さらに基本的には国内で原料を調達し、国内販売が中心になっている。国内での販売が中心です。

    世界に認められたブラジル綿
    だが価格高騰でわれわれは苦しい

    原綿は先ほど化学部会の方でお話がありました。昨年は85万トン。これは、対前年111%の生産です。これは世界の生産量の約15%がブラジルで生産されていると言うことです。72万トンほどが国内で消費をされる、18万トンが輸出されている状況です。
    この原綿市場が、先ほどもありましたが、一躍ブラジルの綿花が世界に認められてしまったと。我々にとっては非常に不幸なことですが、世界から買いが入って価格が急騰しているという状況です。
    昨年の10月から2カ月で、約35%原綿相場が上がっている。この大半は農薬あるいは肥料会社へ行ってるんだろうと思いますが(笑)、ま、"そちらが太れ ば我々は細る"という状況であります(笑)。原因は先ほどもありましたが、最大の生産国で、最大の消費国でもある中国の需給バランスが非常に崩れている、 あるいはオーストラリアの凶作がブラジル、世界の綿花相場を上げている。加えてブラジルの品質が非常に良くなったということで、海外からも買いが入ってい ると。ちなみに2003年度は18万トンが輸出されたと言うことですが、今年はすでに40万トン以上がもう輸出成約されているとも言われておりますので、 益々原綿市場は荒れる、一部の産業は儲かる、我々は苦しい、と言うことが続くと思います。
    この原綿を買って我々は、糸にして販売しているわけで すが、末端需要が非常に低調である。失業率も高い、実質所得も下がっている。末端需要が非常に低迷していると中で、原料代が上がると言うことがあり、値上 げに踏み切っておりますが、各社の足並みの乱れ等ありまして、原綿は35%上がったんですが、製品は7%から10%までの値上げに留まらざるを得なかった と言うことであります。

    原料高製品安つづく

    原 料は、我々としては現金買いが原則です。サイトをつければ当然金利を取られますが、これを加工して売る場合には、60日あるいは90日というサイトで決済 せざるを得ない。ここにも非常に苦しい部分があり、極めて厳しい環境であると前回も報告しましたが、「原料高の製品安」という状況は未だに変わっていない と言うことであります。
    本来、下期というのは、春夏物のシーズン、あるいはナタル(クリスマス)商戦等があり、市況回復は期待できるんですが、残念ながら2003年度、力強い回復にはならず低調に終わったと言うことであります。

    原料高で今年も厳しい環境予想

    綿の市場の2004年度につきましても、ブラジル経済は、非常に楽観的な予測が出ていると思います。ただし、繊維業界はさらに厳しい環境になるだろうと先ほども申し上げましたが、1つには、小売、店頭市場が非常にまだ回復していない。
    2点目には原料価格が下がらないと言いますか、高止まりをしており、まだまだ高くなる可能性がある。
    3 点目はレアル高で、輸出競争力がない。逆にレアル高で製品輸入が増えるであろうと。ま、こう言うこと。さらに、業界の整理淘汰が進みますので、当然信用不 安が益々増して行くだろう。こう言うことから、2004年度もまだまだ楽観を許さない、厳しい状況は続くという風に考えております。

    不公平な取引是正を要望 - 羊毛

    次に羊毛関係ですが、羊毛も昨年、原毛相場が非常に上がりました。一昨年から上がったんですが、昨年上期にようやくピークで、下期には緩やかな下がり相場となったと言う状況であります。
    国内市況の低迷により、一時、低価格乱売合戦が行われましたが、これは、お互いが体力を弱めるという結果になって、体力にあった適品適量への回帰が顕著に見られているのが現状であります。
    これは羊毛業界から出ておるんですが、中小企業相手の商売をする、そういう中で、セン・ノッタであるとか、あるいはメイア・ノッタというのが、ブラジルの 取引の中で行われていると。これは綿の業界でもあるんですが、何とかこういう不公正な取引を是正できるような対応をぜひお願いしたいという要望が出ており ます。

    日本の和装業界低迷でシルク不況

    それとシルク関係でありますが、これも同様に「原料高の製品安」の状況です。大半、80%以上が日本向けの、日本あるいはヨーロッパ向けの輸出という状況 でして、日本の和装業界が低迷している、あるいはレアル高ということで、製糸会社としては非常に苦しい状況が続いております。
    以上、天然素材、3素材を申し上げましたが、すべて「原料高の製品安」という状況に陥っております。

    フアスナーはすこぶる好調

    次 にファスナー関係ですが、ここは前回もそうでしたが、非常に好調という状況です。これは、1つにはファッション性の高いジーンズが非常に好調であること。 ジーンズもスタンダード品はちょっと落ち込んで来ているようですが、ファッション性の高い、要はファスナーをたくさん使うようなジーンズが売れていると言 うこと。
    あるいはジャケット分野でも、ファスナーは2倍以上の増販になっていると非常に好調です。2003年下期は、対前年同期比118%、2004年の見込みでも115%という成長を見込んでおられるのがファスナー業界であります。
    以上で繊維部会の報告を終わりますが、一点お願いであります。え-、 是非ですね、駐在員の皆様方、日本から衣類は持ち込まないで(爆笑)、ブラジルでお買い求めを頂きたいとお願い申し上げまして、終わりにさせて頂きます。

    司会:
    それでは前半一環含めましてご質問がありましたら、はい、どうぞ。

    中国で需給バランスが崩れた理由は?

    多田社長(伯国三菱商事):
    あのー、綿の説明でちょっとお聞きしたいんですが、実はさっき中村さんが説明されたところでもあります、鉄鉱石とか、鉄鋼製品、あるいは大豆ってのは、こ れ全部中国なんですよね。で、要するに中国がものすごい勢いで輸入しているせいでお値段も上がっているって事ですけども、綿のところで生産国かつ消費最大 国の中国で「需給のバランスが崩れた」というご説明がありましたが、「バランスが崩れた」ってのは具体的にはどう言うことなんですか? やっぱり中国の消 費が増えて、中国から出て来なくなったとか、あるいは別のところから輸入するようになったとか、そういうことですか?

    福島:
    えー、1つはですね・・・。

    多田:
    はい。

    福島:
    中国も綿花の不作というのがありました。で、それと、もう1つは生産が増えてるということですね。まぁほとんどが輸出に回ってる、あー、綿製品として輸出されてるんですが、綿の生産が増えたと言うことで、中国だけ見ると需給バランスが非常にタイトとなっていると。

    多田:
    まだ、中国の中でその消費が増えたということではない?

    福島:
    ではないです。はい。

    多田:
    ありがとうございました。

    司会:
    ほかにご質問ございますか?

    赤嶺:
    先ほどお話の中に「メイア・ノッタ」っていう言葉が出たんですけれども、それは何ですか? 半額、値段の半額だけノッタに記入するということですか?

    福島:
    あのー、わたしも詳しくはですね、知りませんが、あの例えば10トン出すと5トンのノッタ・フィスカルを切るというようなこととか、ま、値段を操作するとかですね、いうことだと思います。はい。詳しくは知らないんですが。

    赤嶺:
    はい、分かりました。ありがとうございます。

    司会:
    ほかにございますか?

    懐の深いところ、浅いところのある繊維業界

    坂野:
    さきほど説明のあった"原料高の製品安"ですが、例えば鉄鋼の場合は原料の鉄鉱石の値上げを製品に転嫁しています。原料の原綿が前年比38%値上がりし製品では7-8%しか上げられないということは、まだ繊維業界はそれを吸収できる懐があるということですか?

    福島:
    大体まぁ、これ高いんですけど、ま、5割か6割ということがありますね。ま、ということは、7%上げたということは14%上がったと、はい。ま、いうこと にはなりますが、はい。ま、それと、これは各社二宮社長おられますんで、あれですけど、各社体力差ありますんで、懐の深いところと浅いところと(笑)いろ いろあります。

    司会:

    それではあの、前半一環これでコーヒー・ブレイクに入り、15分後に再開したいと思いますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

    (コーヒ-・ブレーイク後)

    司会:
    皆さん、あの、ご休憩中ですが、ボチボチ後半戦に入りたいと思いますので、着席お願いいたします。
    あの本日は、前半の説明につきましては、各部会の部会長さんのご協力を頂きまして、極めてスムーズに時間通り運んで参りましたので、後半戦も引き続き、よ ろしくお願いいたします。それでは後半のトップバッター、恐れ入りますが自動車のほうから行きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

  • 自動車部会 新沼正広 副部会長(ブリヂストーン)

     

    自動車年間生産143万台

    新沼:
    ブリヂストンの新沼です。自動車部会のほうから報告させて頂きます。部会長であられますトヨタの岡部社長さん、それから副部会長のヤマハの内山社
    長さんが、海外出張中のため、私が代わりに説明させて頂きます。なお、私につきましては、1月中旬から副部会長ですので、なかなか慣れていない部分がありますが、よろしくお願いいたします。

    「2003年の回顧と2004年の展望」について、自動車、2輪、自動車部品と3つに分けて説明させて頂きます。

    まず「自動車」ですが、去年の上半期につきましては、「どしゃ降りの雨が降っている」という表現で、販売が非常に低調でしたが、下期からの、IPI税制措置の優遇、基準金利の低下、それから年末に向けました各自動車メ-カ-さんの積極的なセールスキャンペーンが奏効しまして、国内の販売台数が、年間で143万台、前年対比3.4%減になりました。

    年間を通して販売が落ち込んだ要因としましては、政府が推進してきた「インフレ再燃防止」優先の「高金利政策」、それから「完全失業率の上昇」、「実質所得の低下」などが、消費者の購買意欲をそぎ、販売減少になった原因とみられています。

    一方、輸出につきましては、ルーラ政権の中でも最も重要な優先課題であり、輸出の好条件により、輸出台数が51万台強と、過去最高となっております。自動車業界としては、輸出の伸びが国内の市場をカバーしたという形になっています。

    なお、輸入車の販売、ブラジルに入ってくる輸入車の販売につきましては、「国内市場の低迷」、「高関税」、「現地通貨安」により、約7万台と前年比マイナス36%の大幅減となっています。

    今年は199万台生産を予測

    2004年の展望としましては、政府から発表されています、「3.5%のGDP成長率の上昇」、それから、一層の金利引き下げの期待、インフレの沈静化、為替の安定傾向により、自動車工業会(Anfavea)としては、国内市場の成長率をプラス7%、生産レベルでは199万台と、前年比10%増の期待をしております。一方で、自動車の税制優遇措置が2月末までとなっております。3月以降の措置はまだ決まっておらず、販売に対して、先々不透明な部分が出て来るのではないか、と危惧しております。

    二輪は年産95万台強

    2輪につきましては、2003年、生産が年間で95万台強、販売が85万台弱となり、前年比10%近い伸びを示しています。輸出につきましても、北米の市場を中心に増やしており、輸出台数では10万台強ということで、前年比50%の大幅な伸びを記録しています。2004年の展望につきましては、引き続き2輪は、地方部を中心に潜在需要が、かなり見込まれており、一層の低金利の実施、そして金利引き締め策の緩和等によって、さらなる成長が見込まれております。

    一方で、懸念事項としましては、アマゾナス州政府の税制改革、恩典の変更が今後2輪業界に与える影響が大きいことから、各社さんともその対応に注意を払っている状況です。

    自動車部品には厳しい年だった

    自動車部品につきましては、2003年、自動車メーカーさんの生産販売に影響を受け、生産台数が直接、販売に関係する部品メーカーにとっては非常に厳しい年になりました。一方で、自動車メーカーさんとの直接関係を持たない、輸出に軸足を置いている部品メ-カ-にとっては、ビッグ・チャンスの年になったと考えております。自動車分野と同様に自動車部品業界全体としては46億ドル、過去最高の輸出高を記録しており、輸出に販路を持ったメーカーと国内に販路を築いてるメーカーとでは、業績にかなりの差が出て来ています。主要輸出国先としましては、米国、メキシコのほかに、中国向け自動車エンジンの輸出、それから、ユーロ高を背景に欧州向けの輸出も、かなり増えて来ております。部品業界全体の稼働率は、平均60から65%ですが、
    雇用人数はかなりの人数になっており、自動車業界の裾野の大きさを改めて感じております。

    為替条件の安定により、輸入部品、それからドルリンク原材料の価格急騰等の問題は軽減されておりますが、為替とは関係しない、国内での原材料費の値上げ、それから人件費のアップが、製造原価の上昇を引き起こし、経営を圧迫しており、引き続き厳しい経営環境になりつつあります。
    2004年全体につきましては、インフラ等さまざまな問題は短期で完結されないために、引き続き厳しい状況にはなっております。部品メ-カ-は、自動車業界の動向を見ながらの対応が求められています。

    FTA、FTAAに関して

    最後に自動車業界にかかわる課題ですが、まずFTA、FTAAに対し、ブラジル政府のFTA取組み姿勢はかなり積極的であり、米州だけではなく、アジア、アフリカ諸国との締結に向けた動きが活発化しております。このような中、日本政府の対応には、やはり苛立ちを感じている、といった状況です。対ブラジルとの関係において、北米やEUに後れをとりますと、対日取引が相対的に厳しくなる事は否定できませんし、それによって自動車メーカーさん、部品メーカーが不利益を受けるところがかなり出てくる、と予測されています。日本政府の今後の対応に期待したいところです。

    業界を取り巻く環境

    次に、自動車業界を取り巻く環境ですが、賃金、2003年の賃金交渉は業界平均で約20%弱のアップになり、大幅なアップとなっております。特にサンパウロ周辺の組合は非常に過激?な組合が多くなっており、各社ともその対応に頭を悩ましております。

    また、一方で労働法、労働裁判、賃金規定などが、ブラジルでは硬直化している、との指摘もあり、弾力的な対応をしようと思ってもなかなか踏み切れない状況です。

    2輪業界を取り巻く環境については、先ほどご説明しておりますが、マナウス地域の税制恩典の改正が検討されており、内容によっては、大きな影響を受けるのではないか、と各社ともに十分な注意を払っております。

    詳しい資料につきましては、インターネットをご覧頂きたくよろしくお願いします。以上です。

    司会:
    ありがとうございました。質問をお受けしたいと思います。どうぞ。

    田中会頭:
    よろしいですか?

    司会:
    はい、どうぞ。

    田中
    すみません、さっきあの部品を輸出するメーカーは、米国、メキシコ、中国向けが伸びたという風なご説明ありましたけれども、日本向けの部品輸出っちゅうのはどういう状況になってるんですか?

    新沼:

    手 元に資料はありませんが、一般的にブラジルで生産している部品は、第一が当地での販売、第2が輸出という形になっております。価格的な条件により、北米、 メキシコへはFTAもにらんだ輸出になっておりますが、輸送上の理由/仕様の違いもあり、日本への輸出はあまり聞いておりませんが。

    ソフトウエアでは伯企業が対日進出
    だが自動車部品はなかなか難しい

    山田議長:
    実はブラジルから自動車の部品が、外国に出るか出ないか、あるいは出ているのか、出ていないのかについて。私の理解では、ここ2、3年前に、ジェトロさん が積極的にブラジルの部品業界の人たちを日本に連れていった。いまジェトロさんがコンピューターのソフトウエアの業者を日本にいろいろお世話をして、その ソフトウエアをブラジルから日本に輸出させると言うようなことをやっているように。以前にその自動車部品の業者を日本に連れて行ったが、現在どういう風な 状況になっているのか、ちょっと、ジェトロの桜井さんにお話を聞きたいと言うことなんですが、よろしくどうぞ。

    桜井:
    わたし自身あんまり詳しいことは分からないんですが、1番最近やったのはITのソフトウエアでして、これはまぁ大体3年ぐらいでやったんですが、その関係 では、ある程度成果が出ています。数社ですか、もう日本に進出しています。その前の段階では自動車部品を取り上げました。一応もう3年ぐらい前に終わって いるんですが、その当時はまだブラジルの自動車部品はなかなか難しいだったと聞いています。日本の企業、とりわけ自動車メーカーは非常に品質に相当厳しい とこがありまして、その関係で3年間ぐらいやったんですが、なかなか苦戦したというのが実状です。これ以上のことはわたしも把握しておりません。

    山田:
    どうもありがとうございました。

    鉄鋼品も外から入るのは難しい -自動車メーカーのケース

    司会:
    それではちょっと。あの私、部品ではないんですけれども、鉄板の話をさせて頂きますと、実は昨年私どもの名古屋で、火災がありまして。結果的にその後、北 海道の地震に伴う苫小牧の火災とかで、名古屋の火災はイメージが薄らいでしまって身内としては大変助かったんですけども。実は、その時にウジミナスでつ くっている、我々の合弁事業でやっているウニガルの自動車用のまぁ、一番難しい板をですね、結果的には2万数千トンだったと思いますけど日本に持って行き ました。
    で、これがですね。ちょっと今日は自動車メーカーさんもおられないんで、実態を申し上げるとなかなか。"使い慣れ"とおっしゃるんです けども、品質はうちの名古屋でつくったものも、ウジミナスの工場でつくったものも、ゆぎ差はないと。テストをしても変わらないけども、「横に名古屋がある のに何でブラジルの板を使わなくちゃいけないのか」って言う。やっぱりずっと使い続けているって言うことで、新しいものにトライすることに対しては非常 に、まぁやっぱりメーカーさんは、その、品質にシビアだってことは勿論あるわけですけども、厳しいんですね。だから、物を変えるっていうことに対して抵抗 感があるんですね。そういうことがあります僕側の業界でも。だから、???でつくったものをトヨタさんに持ってってもですね、同じスペックでつくっても、 やっぱし名古屋のものの方が、馴染みがあっていいって言う。なんか酔っ払いみたいな感じなんですよね(笑)。やっぱり行きつけの店がいいってそういう感じ ですね。

    ほかにご質問がありませんでしょうか? それでは、次、運輸サービス部会は、実はもう65社の構成メンバーですね。65社を10分でやると言うのは非常に難しいと思うんですけども、ある程度幅がありますんで、すみません、よろしくお願いいたします。

  • 運輸サービス部会 横山幹雄 部会長(JAL サンパウロ)

     

    同時多発テロ、戦争、SARS影響から脱出しつつある - 航空、

    横山:
    運輸サービス部会の部会長を長い間続けております横山です。ほんとうは全体を把握されている平野さんとかが妥当だと思いますが・・・。
    部会のほうは23日に新年会を兼ねて開催しまして、いま65社というご報告があったんですが、10社に参加して頂いたと。それからレポートは11社から頂いております。従って、その参加された会社の方のレポートが中心となります。ご了承頂きたいと思います。
    わたしどもの部会、多岐にわたっているんですが、いま皆さんご報告されたような活動の成果として、最終的にその人とか、物の移動部分を担当しているわけで すから、大体まぁ、貿易を始めとして好調だったと言うことで、全体的には物流を始め好調だったと総括できるかと思います。
    まとめ方としましてと りあえず、運輸、運送部門をまとめて、航空、海運、フォワーダー、それからクーリエの一部を物の移動の部分から報告させて頂いて、その後でそれに関します サービス部門、例として、旅行エージェント、ホテル、観光、それから通信と、こういった順番で手短にご報告させて頂きたいと思います。
    まず、航空ですが、これは皆さんご承知の通り、最近の同時多発テロ、戦争、それからSARSに代表されます伝染病等々の影響、これがいかに公共交通機関に影響を与えるかと言うことを実証した最近の数年であります。
    保安検査とか、それから防疫の態勢の強化、これはいつでも快適なご旅行を求められるお客様に、サービスの観点では相反するものですが、やらざるを得ないと言うことで、今後は官民共同での対策が必要と思っております。
    全体としては、各社とも上期ひどかったのからは回復をしまして、業績も徐々に回復しつつあると。アメリカ系航空会社の最近の決算にしても、徐々に回復の傾向が見られております。
    ただし、日伯間の問題ですが、安定的な需要はあるものの、旅客動向の大きな変化が見られる。これは、路線の過半数を占めている出稼ぎのお客様ですが、アメ リカのビザ政策で、これが8月に変えたわけですが、この影響を受け、アメリカ経由便を懸念して、ほかのルートへの流出が顕著となっております。これは、 ヨーロッパ経由、バンクーバー経由、カナダ、メキシコ経由などですね。
    従ってこの傾向は、アメリカがビザ政策を続ける限りは長期化する可能性があります。
    これは後ほどご報告しますが、旅行業界、ホテル業界等々にも大きな影響を与えています。

    たたる米国のビザ政策

    ア メリカとブラジル間は、同様、ビザが厳しいという理由で、それから最近、報復ではありませんが、指紋の押捺等々の問題がありまして、これもやはり両国間の 運送に悪影響を与えると思います。一方、ヨーロッパとブラジル間、南米間はユーロが強いという影響もあり、絶好調ということになっております。
    それから航空機メーカーでは、エアバス社がボーイング社とずっと争っているんですが、初めて受注機数、それから引き渡し機数で抜きまして、世界一となって おります。これは次世代の航空機をめぐる争いで、超大型機エアバス社、それから中距離型のボーイング社とやっていますが、熾烈な戦いが繰り広げられており ます。
    上期ですが、全体的には安定的な上昇気流に乗ると思われますが、大統領選を控えておりますブッシュ政権のこのビザ政策、これによって動きが変わるという風なことがあります。
    それから国内の方はヴァリグ、TAM、この2社が経営統合するということを発表してから時間がかかっていますが、この行方について具体性が見えてくると思われます。

    船腹不足と好調の海運

    続きまして海運業界ですが、これはまぁ、貿易が活発化して来るということで、先ほど中村さんの方からも船が足りないと言うような報告もありましたが、定期船 分野については第4四半期には、船腹の不足が見られるほど好調であったと。ただし、その中でアジア、南米東岸航路のみが赤字ということです。
    それから不定期船のバラ積み貨物分野、これが絶好調ですが、中国が穀物とか鉄鉱石とかの資源輸入を急速に増大させたと言うこともありまして、傭船料が前年同期比で3倍以上に高騰したと言うことになっております。
    それで船が手当てできないで、ビジネスが成約できないというずれもあったと。この恩恵にあずかって航空貨物の方も好調が続いております。南米域内では、アルゼンチン経済の回復等で荷動きが堅調に推移したようです。
    ブラジル国内については、マナウス地区から各消費地に向けた工業製品の出荷が増加しており、これまでのトラック輸送から海上輸送へ移行する動きも出てきたようです。
    上期は、いま申し上げましたような船舶需要、それから傭船マーケットの高騰等々もありまして、船舶の不足傾向は続くと。業績としては絶好調と予想されています。
    南米東岸関連定期分野での問題としまして、40%ぐらい運賃が下がっているという報告です。これを運賃修復すると言われておりまして、まぁいい言葉だと思いますが、- 収支安定を計る必要がある - それがポイントのようです。
    それから、不定期船分野の異常ともいえる状況は今後も続くと言うことです。あと日本郵船さんの報告では、4月からサンパウロ近郊に国内物流用の倉庫を開かれると聞いています。
    それから新たな動きとしては、先ほどからいろいろ話題になっておりますが、牛とか鶏の問題で日本や極東地域への、まぁ、牛肉は口蹄疫の問題があるんですが、鶏肉の輸出強化によりまして、冷凍コンテナの伸びが大いに期待されると。

    フオワーダー業界も上期は好調

    フオワーダ-業界は上期は好調でした。輸入が下期は全体的に減少したと言うことですが、北米や中国向けの自動車用部品、部材等々、第三次品の輸出が増加傾向 にあったと。ただし、フオワーダ-業界さんでは各社とも顧客からのコストダウン要求、それから、マーケット・プライスの低下、これは特に通関業者さんが、 競争相手が増えたということもあって、手数料が相対的に低下したこともあって、経営上は非常に厳しいと言うことです。
    それから、引越荷物については、下期は増加傾向にあったようですが、残念ながら、ご家族の帯同者が少ないこともあって、全体としては、減少と言うことです。
    上 期の展望ですが、積極的なブラジルの外交政策を反映して貿易は活発になる。それはご報告の通りです。ただし、為替が安定すればという前提ですが、フオー ワーダー業界さんの話ですと、さきほどご報告がありました、だいたい3レアル内外ってことですが、これであれば儲かることのようです。

    上期増収増益予想の構内物流
    バイク便は過当競争になやむ

    それから、構内物流ですが、これはまあ再三、ご報告がある通り、鉄鋼業界の好調。山九さんの報告ですが、ウジミナス、コジッパ、CSNを担当されている山九さんは、鉄鋼業界の増産体制の影響で当初計画を達成すると。上期も増収増益の予定ということです。
    そ れから、国内バイク便、サンキュウ・プレスさんの報告ですが、"潜り業者"が増えているようですが、これは規制が緩く、正規業者が、担当行政に圧力をかけ ているようですが、効果があがらない。一つには、簡単に会社が創設できて、失業者の雇用対策となっている点もあり、行政が本格的に取り締まらないことが理 由のようです。
    ただし、上期につきましては、多くの労働問題を抱えつつも、道路整備等々の遅れでバイク便は依然増加していくだろうという見方です。

    ・ 依然苦境下の旅行エージエント
    ・ ホテル、観光業も依然低迷

    大 幅に遅れておりますが、次にサービス部門です。旅行エージェント業界ですが、これは先ほど、航空の方でご報告した影響が非常に顕著に現れているということ で、特にデカセギ業者さんのお世話にビザの取得方法、それから飛行機の予約等々の対応に追われる状態ですが、それが収益に結びつかない、つながらないと言 うことで、苦境に立たれている業者さんが多いと。
    2004年についても、ビザ問題がなるべく早く解決して欲しいと言うのが、切実な要求のようで す。欧州の航空会社もいろんな対応をしておりますが、やはり、太平洋線の方がいいと。これは乗り換えとか、荷物の個数とか重量のルールも含めてですが、私 の意見ではなく、代理店さんの意見でございます。
    それからホテル、観光業界。これは2002年に過去10年間で一番低かったようですが、稼働率が 50%。これが徐々に回復傾向にあります。多くのホテルは、セールスを強化、サービスを改善して、新しいマーケットを開拓しているようです。売上も徐々に 伸びていると。ここ数年続いておりました、ホテルの増加傾向、これも多くの地区で止まりまして、結果として、ホテルの稼働率があがって、収益も出ている現 状のようです。
    ただし、地区差がありまして、儲かっているところは省略しますが、ベロ・オリゾンテ、クリチ-バ、フォルタレーザ、サンパウロの高級ホテルが稼働率が下がっていると。逆にいいますと、他のフラッチとか、そう言うところは稼働率が大幅に向上しているようです。
    2004 年の問題点としては、オペレーション・コストが上がり過ぎているので、それを下げると。それから、国内線の航空業界の再編。これで飛行便数が減少している と。それに伴って料金を上げているようなこともあって、ご利用されるお客様が減って、イベントも減っており、ホテル業界としては、非常にダメージを受けて いると、そういう報告です。最後に通信業界のご報告です。― ここで時間切れ。赤嶺副委員長からレッドカード示される -

    横山:
    じゃあ、通信業界は一言で。携帯電話、これが爆発的に伸びて、固定電話は減っていると。この傾向は続くだろうと言うことです。すみません。早口で来たんですけど、駄目でした(笑い)。

    浅賀:
    どうもご苦労様でした。質問はございますか? はい、どうぞ。

    遠ざかるバリグ、TAMの合併
    金岡:
    バ リグとTAMの合併が解消したと言うことですけど、これからどうなるのか。我々使う方の立場としては、競争してもらった方がいいんですけど、バリグも相当 な負債を抱えていますから、BNDSあたりが、やっぱし、合併が救済というか、資本を入れる前提条件だと。こんなことを言ったように思うんですけど、これ から、どのようになるんでしょうか。

    横山:
    あくまで個人的な見解としてですが、たぶんないと思われます。というのは、経営統合をするという方向から、徐々に遠ざかりつつあるのが現状です。

  • 建設不動産部会 清水邦保 部会長(竹中工務店)

    司会:
    それではちょっと押しておりますので、次、建設不動産部会、清水さんお願い致します。

    労賃アップが収益阻害要因

    清水:
    建 設不動産部会の清水です。建設不動産部会は、建設業を主体とする建設業者とアパート・住宅販売を含む不動産業者の集まりでございます。1月の23日に 「2003年の回顧、2004年の展望」ということで、討議を行いまして、今日はその討議内容を総括して発表させて頂きます。
    まず、2003年の 回顧ですが、建設業については、建設投資が落ち込み、受注は各社とも厳しい状況でありました。売上、施工高については、工事利益の確保、繰越し工事によっ て目標に近い数字が確保できたという模様です。それから、労働賃金調整が5月に12%、8月に6.72%となり、収益面で大きな阻害要因となりました。そ れに税制、民法の変更による税務、法務対応に人手が増え、人件費が高騰しております。特にPT政権ということではないんですが、官庁申請の許認可期間の無 用な延長や費用の上昇が見られました。これは、サンパウロ市内のゾーニングの変更による駆け込み申請が多くあり、その辺で処理が出来ないことが影響してい ると思われますが、なかなか、建築許可、建築の使用許可が出ない状況となっております。

    高級アパートの販売堅調

    不動産業についてですが、ルーラ政権の経営、経済運営の先行きにもう一つ、安心感がないのか、新規の案件の話はあるが、客先がなかなか最後の決断に踏み込め ない引き合いが多かったと。それから、賃貸料の家賃調整は、従来使っていた指数が大きくなり過ぎて使えず、別の指数を使っての調整となった。ちなみに従来 の指数はIGPMで、これはジェトゥリオ・ヴァルガス財団の総合物価指数ですが、昨年は20数%になっていました。実際に家賃調整の時に使った指数はサン パウロ総合大学の消費者物価指数で、8%で調整になっております。それと、ルーラ政権で期待された雇用回復が思うように行かなかったため、住宅購入層の動 きが少なかった。6万から7万レアルの一般アパートの販売は落ちたが、高級アパートの販売は堅調でした。で、そのため、販売件数は前年割れしても、販売額 は前年を上回るという会社もありました。

    建設、不動産共に下期回復期待

    2004年の展望ですが、建設業については、上半期はまだ投資の案件が実体化してこないために緩やかな増が予想されると。実際の海外からの投資が建設業にくるのは下半期ではないかと言うふうに見ております。
    日系からの大型建設投資案件については、昨年同様低調と思われます。建材は、建設業が上向き始めた後に影響が出てくるので、アルミ建材については今年いっぱいは厳しいのではないかと予想しております。
    不 動産については、上半期は低調であろう。下半期から回復して来るのではないかと見ております。先ほどの家賃調整のIGPM、IPC、FIPE指数がほぼ同 じになりつつあって、金利がもう一段下がって来れば、不動産販売、投資も増加して来るのではないかと、アパートの販売も昨年同様、高級物件は堅調に推移す ると予想されるが、一般アパートは、政府の雇用政策に期待せざるを得ないと。で、銀行の預け利息が月1%を下回ってくれば、不動産に勢いがついて来るんで はないかと予想しております。
    その他ですが、サンパウロ市内の中古アパートの売買の動きは少ないんですが、家主の言い値は実勢価格よりも倍近い ケースが多いようです。それとサンパウロ都心部の不動産の値段は高止まりして、あまり変化はないんですが、それ以外の場所は高騰傾向にあります。ちなみに パウリスタに面した新しい事務所ビルの場合、売買価格は平米あたり7,000から7,500レアルとなっております。

    サンパウロ旧都心区で不動産価格急騰

    サ ンパウロ周辺の土地も値上がり傾向になっており、2、3年前から倍以上、値上がりしている地区もあります。特にロドアネル周辺については、10倍以上も値 が上がっているところもあります。サンパウロの旧セントロ地区では、州政府が5棟ビルを買い上げ、関係機関を移動させているため、不動産価格が急騰してお ります。それと、日系建設会社の減少により、特にラボ、薬品、食品の日系工場の案件に地元の建設会社が衛生局、厚生省がらみの対応に対しての技術対応力、 政治力を背景に食い込んで来ており、今後も厳しい競争が予想されます。
    それと、世界的にアルミ地金が15%以上値上がりしており、ブラジルにもそ の影響は今後出てくると予想されます。それと、アルミサッシのスペックの統一、規格の統一化は足並みが揃っておらず、また、ガラスも含めた統一規格の必要 性もいわれはじめ、混迷を深めております。以上です。

    司会:
    質問をお受けしたいと思います。いかがでございますか。

    渡辺:
    ちょっと、聞き逃したんですけど、賃上げは8月に12%…。

    清水:
    5月に12%で、8月に6.72%です。これは労務賃金になるんです。

    渡辺:
    これ、年に2回あがって来るんですか。

    清水:
    あの、1回の調整だったんですけど、1回にあげたら、ちょっと影響が大きいと言うことで、2回になりました。

    渡辺:
    ということは、合計18%強。

    清水:
    はい、そうです。

    清水:
    ちょっ と、言い忘れたんですけれども、2月4日付けの会議所からのブラジル経済情報で、Cofinsのアップについて、土木建設については平均22.3%アップ という風になっとりますけれども、実際の建設コストが22.3%アップするわけではなくてですね、税金、政府に対する税金に、今までの比率が、まーあ のー、どういう計算がしてあるか、ちょっとそのー、計算根拠、もう一度、精査しないといけないんですけれども、単純に計算していくと、22.3%ぐらい の、アップで税金分が増えて来ると言うことですね。それが直接、建設コストに影響してくるっていう意味ではないようです。

    司会:
    ありがとうございました。ご質問はございますか? え、よろしいですか? それでは続きまして、電気・電子の方に行きたいと思います。では、盤若さんよろしくお願いします。

  • 電気電子部会  盤若幸男 副部会長(NEC ド・ブラジル)

     

    業界全体の昨年売上12%増予測

    盤若:
    本日は部会長の瀬山さんがご出張のため、代理でNECの盤若から電気電子部会の報告をさせていただきます。
    報告は以下4点に分け説明いたします。最初に03年下期総括、2番目に下期の業界
    ごとの市場、業績分析、3番目にこの04年上期の展望総括、最後に部会としての
    共通課題につき報告いたします。

    最初に前期の総括ですが、まずブラジル全体のこの業界の状況を眺めてみたいと思い
    ます。Abineeの昨年度3Q後の予測で年間ベースでありますが、売上ベースでは、前年比12%増加の63BR,雇用数でマイナス2%、操業度で28%改善となっております。売上増加率の12%を下回った分野は、8分野中電力関連と電機関連の工事
    材料部門だけで、ブラジル全体でも概ね業績は回復していると言えます。また、Jobless recoveryの傾向も同時に見られます。
    ア ンケートの回収率が低くて当電気電子部会としての総括は難しいところはありますが部会としての総括をしたいと思います。売上ベースでは、前年同期比で家 電、電子部品では20~30%の増加、他分野はばらつきが大きく一概にはいえない状況です。業績は計画どおり及びよかったという評価と悪かったと言う二つ の評価にわけますと、ほぼ5分5分で03年上期よりは改善したといえます。また、今回よかったという企業も全体の30%も占めたことは前期との大きな違い です。

    昨年、家電は為替安定で収益改善
    2番目に、下期の分野ごとの市場、業績分析に移らせていただきます。
    最初に家電業界
    数量ベースでは前年同期比、TV43%増量、audioも21%アップ、ビデオ
    +DVD(読み取り機)では61%の増加がありました。金額ベースでは、前年同期比
    で 26%増加(但し白物は含みません)で回復が見られます。02年下期の大統領選挙に関連し発生した金融危機、景気後退から脱し、この下期はリバウンドした といえます。一方、数量ベースでは増えたものの、TV,ビデオ、オーデイオは約10%の価格ダウンがありますが、価格ダウンを越える増量効果、為替安定化 により収益は改善されたと伺っております。また、期初に通常発生する返品もなかったと聞いております。

    2番目に電子部品業界
    会社によりばらつきが大きいのですが、数量ベースでは携帯端末の需要が相変わらず
    旺盛で増量はあったものの、売価ダウンが激しく収益面では厳しかったというある企業、
    他では増量に対応するため、人員増加を余儀なくされ、売価ダウンもあり,収益が圧縮
    された企業もあり、結果としては、この業界でつきものの売価ダウンの激しさが直撃
    したと考えます。携帯端末ベンダー依存からの脱却が大きなテーマと聞いております。

    電力、通信、公共投資凍結たたるが
    携帯電話は競争激化で市場伸長

    3番目に電力及び通信業界
    この業界で共通するのは公共機関または順ずる機関で実質公共投資が凍結されたことから、売上に充分つながらなかった問題が発生しました。
    手前どもの通信業界についてご紹介いたします。まず通信オペレーターのインフラ
    投資は(携帯端末を含まず)約9BRで、民営化ピーク時の2000年の約6割減で
    あります。投資の中身が昨今大きく変わっており、固定系オペレーターはボイス
    からデーターネットワーク構築にシフト、モバイル系オペレーターはGSM技術を
    採用した新オペレーターである、TIM、Oiの参入により、競争が激化し需要
    が喚起され大きく伸長しています。それに伴い、携帯端末の需要は旺盛でありました。
    この結果、昨年8月に通信民営化後5年経過し、携帯加入者数が固定系を超え、年末の携帯加入者数は46百万に達しました。昨年度の加入者の純増は約11百万で,昨年度
    の純増は02年に比べ約倍増でした。
    うちしかアンケート結果がありませんので、全体をあらわすものではありませんが、
    売上は前年同期比63%でありますが、固定費削減と収益重視のプロジェクトの選択と
    集中が功を奏し、業績面では予算を上回ることができました。私どもの業界は通信と
    ITが含まれますが、シーメンスとアメリカのシスコの一人勝ちが相変わらず続いて
    いるということで、日本勢は苦戦しております。

    各業界、上期売上増期待

    3番目のテーマである04年上期の展望
    いずれの業界も売上は前年同期比、維持から20%アップの見通しをたてられております。為替の安定化を含む経済基本政策が今後も継続する前提というより、どちらかと
    言えば、それを期待し見通しを立てられている企業が多数ありました。一方、政府には期待しない大幅変動を見込んでも事業がなりたつよう運営する方針の企業も少数ながらありました。
    経営課題として一番数が多かったのは、コストダウン、2番は同数で営業力の
    強化、固定費維持努力または削減、運転資金の圧縮でありました。課題から判断すると
    市場の回復兆しはあるものの、決して、たずなを緩めないという各社の対応が伺えます。
    新Cofinsシステムの取り扱いについては売価に転嫁する企業が大多数でありました。新製品の投入については、家電の薄型TVがあります。

    FTAがらみ、マナウス税制恩典の前途を懸念

    最後にこの業界の共通課題を参考までに3点紹介します。これはこの上期に限らず
    中期的視野で検討すべきものであります。

    1点目はmake or buyの議論
    古くて新しい議論ですが、需要変動が激しい国で、国産優先、それに相反し部品調達率が低く、恩典が少ない事情がある。企業側では最先端技術を持ってくるにしても
    当地で加工技術のスキルがまだない。この状況下で新製品を国産するか輸入販売するかの議論。家電では液晶、プラズマTVがこれに該当します。

    2点面はマナオスの恩典
    恩典が2023年まで延長されたものの、FTAAでは域外扱いとなり、この恩典維持の先行き

    3点目に中国ベンダーの参入
    韓国勢の台頭は当然ですが、家電、通信、IT業界では中国ベンダーのアグレシッブ
    な対応が日増しに強くなっております。低価格は当然ですが、ファイナンス力、ロビー力は侮ることができず、中国勢参入への対応策をどうするか各社頭が痛いところ
    です。

    中国勢の脅威にさらされる日系家電、通信、IT業界
    そ れと、3点目に中国ベンダーの参入。この分野ではもちろん韓国勢、韓国メーカーさんの台頭は当然でございますが、特に家電、通信、IT業界さんでは中国ベ ンダーさんのアグレッシブな対応が日増しに強くなっております。価格は当然、低価格でアグレッシブなのは分かるんですけども、それ以外にファイナンス力、 ロビー力は侮ることができません。中国勢参入の対応をどうするか、各社、頭が痛いところでございます。以上で終わらせて頂きます。

    司会:
    ありがとうございます。ご質問の方はどうぞ。挙手をお願いします。

    松永:
    Make or Buyの議論について部会での結論はどうなりましたか?

    盤若:
    結論は出ておりません。別の小部会でを招集したいと思います。生産されているメーカーさんは基本的に家電と電子さんで、ほとんどがマナウスでございます。と言うことは、マナウスの恩典も絡めての議論となり、複雑な問題であります。

    ファイナンス面でも中国に負けておれない
    司会:
    どうぞ。はい。

    村田:
    最後のほうで、中国系企業が侮れないと言うお話あったと思うんですが、やはり、やり方としてはお金を「ドン」と持って来て、なんか、もう、めちゃくちゃやるみたいな、そういうところが多いんですか。ファイナンス力っていう意味でもあれなんですけれども。

    盤若:
    ま あ、単純に言えば、ここのオペレーターさんに、バンク・オブ・チャイナからファイナンスを持って来ています。そういう意味では、もちろん日本からは弊社が 非常にお世話になっているJBICさんからのファイナンスを持って来ておりますけれども、条件面でも、若干悪いそうですけれども遜色ない。と言うことは、 やっぱり、今後も我々としては、通信の業界としては、そういう魅力があるファイナンスを、相手さんにもよりますが、継続的に持って来れなければ、やっぱ り、競争が非常に厳しくなると。中国勢の場合、基本的に、まだまだブランドが定着していない、サポート力があるのかという疑問、もちろんありますが、もっ と単純にいいますと、製品そのものが、非常にいいんですね。いいという意味は、例えば、データ関連の機器ですと、アメリカのシスコのコピーなんです。だか ら、悪いはずないんです。要は同じなんです。名前だけが違う製品で、決して悪くないという意味でも侮れないのがこの業界で中国勢の、強さになって来ており ます。はい。

    村田:
    うーん! ありがとうございました。

    司会:
    ご質問ございますか。はい、どうぞ。

    「マナウス協議会」活用の検討を
    田中:
    さっ きの、Make or Buyの問題、マナウスの恩典地区の問題ですけれども、ご承知かどうか、過去に「マナウス協議会」ってのを会議所でつくって、マナ ウスに進出しているところがいろいろ検討して、政府に対して陳情に行ったり、そう言うことをやった実績があるわけですね。いま、それはほとんど活動ありま せんけれども、坂野さんの企画戦略委員会にまだ、「マナウス協議会」の担当が残っておりますんで、もし何かそう言うことを検討して政府と交渉して行く必要 があるんであれば、それを復活させ、活用されたらどうかと思います。

    横山:
    えっ と、先ほど、通信の報告をしようと思ってまして、丁度、今、やって頂きまして、本当にありがとうございました(笑)。 それで、あのー、ご質問するのがちょっと、適当かどうか分かりませんが、いま、我々も困っているんですが、携帯電話のクローンってのがありますよね。で、 この辺の対策っていうのは、何か具体的に進んでいるんでしょうかね。

    携帯電話のクローン化対策

    盤若:
    実 は私も2回やられているんです。結局、クローン化された場合ですね。 例えば私はVIVOの契約なので、VIVO側で番号をアイデンチファイして、えー、 基地局というんですけれども、ラジオの無線機の基地局側でその番号が次は盗まれないようなソフトを組み込むと言うプロテクトはやっております。そういう意 味では、対策は施していつつあります。そういう意味では、クローン化は少なくなると思います。それと、たまたま私が去年の11月に持っていたのは、モト ローラーの端末だったんですけど、古いやつで、いまは別のに変えました。新しいやつでは盗みにくいと言うこともありますから。そういう意味でも、2、3年 前のモデルを持っていらっしゃるなら、最新のやつに変えたほうが盗まれにくいんじゃないかと。まー、ウチは儲からないけれども、他社さんは儲かると思いま すんで(笑)。
    それと、これはTPOの問題ですけれども、いずれにしても、空港側で、機内で切っていたやつを空港のターミナルに着いて車から出て1キロ以内では、やっぱり、パワーオンすると盗まれるケースが多いです。

    XXX:
    空港は多いらしいですね。

    盤若:
    機内で切って、空港到着後、運転手さんにかける場合は注意してください。

  • 食品部会 渡辺英明 部会長(東山農産加工)

    きびしかった03年 - 売上げ軒並み減

    司会:
    お待たせしました。食品部会のほうから、最後、締めて頂きたいと思います。よろしくお願い致します。

    渡辺:
    食 品部会から報告します。まず、昨年の簡単な振り返りをして、2004年の展望。一つ目は景気がどうなって行くんだろうか。しして二つ目は食品の安全の問題 についてお話した後に、食品部会では、特に決まったテーマがなかったもんですから、「2004年、2年目のルーラ政権への期待と要望」を、副題にさせて頂 きました。
    まず、昨年の振り返りですが、前回、去年の7月、ここで報告させて頂いた時、「食品業界が久々に厳しい年になった」というご報告をさせ て頂きましたが、その後、8月になって更に悪くなり、8月は"どしゃ降り"状態で、9月の後半にようやく雨が止んで、日が射すのかなーと思っていたんです が、そのまま12月になり、12月に入っても最初の1週目あたりは全然盛り上がらない。結局、このまま年を越すのかなーと思ったら、最後の最後になって薄 日が射し始めたということで、希望を残して新年を迎えたというのが全体の概況だと思います。
    で、いかに悪かったかを数字的に申し上げますと、まず 食品全体の消費量は4%ダウン。それからスーパー全体の売上ですが、もちろん、これは食品だけではないんですが、IPCAを差し引いた実質売上でやはり 4.5%ダウン。それから、発酵乳を含む乳製品の製造量も7%ダウン、即席麺の総消費量は10年振りに前年を下回る、レストランに至っては来客数で2、3 割のダウン。長年レストランを営んでいるオーナーたちは、創業以来最悪の年と口々に愚痴をこぼしていたという報告です。マクロの数字だけを見ますと、1年 目のルーラ政権は合格点と言えるかもしれませんけれども、景気低迷という大きな課題を残しての1年だっといえます。

    明るさに水さすSelic据えおきとCofins引き上げ
    そ れで、2004年ですが、まず、景気がどうなるかでは、若干、明るさが見えて迎えた新年ですが、年初から非常に水を注されることが起きています。一つは Selic金利の据え置き。二つ目はこれと関連しますが、Cofinsの税率アップであります。特に二つ目のCofinsの税率アップについては、インフ レに相当大きなインパクトを与える可能性が強いと判断しています。毎年この時期、年が変わると各社、昨年のコストアップ分を値上げで吸収しようという時期 に入ります。で、例えば昨年、どういうコストアップがあったかと言いますと、為替が安定していたために輸入、例えば輸入原料で加工している食品メーカーな どは、比較的コストアップなかったんですが、例えば大豆とか輸出競争力のある原料を使って加工している食品メーカーは引き続きコストアップが続いている。 例えば大豆の業者は、去年の12月から今年の1月にかけて、また、値上げを通告していますが、いいところで30%、ひどいところになると、100%と。丁 度、端境期ということもあるんですが、それぐらい、この1月に値上げを通告してきている。

    輸出競争力持つ大豆、ブロイラー、エビ
    で、 大豆の状況をちょっとお話しますが、輸出量は2003年が2,070万トン、前年比で33%増。2004年見込みが2,600万トン、前年比で24%増。 この勢いで来ているために、先ほど中村さんからもお話がありましたけれども、産地から積み出し港への輸送手段とかインフラがやっぱり追いついてこない状況 ですね。それから港湾での設備、倉庫がもう追いつかない状況になっています。加えて、コーヒーの安値が続いたためにコーヒー畑を大豆畑に変える農家も結構 出て来ていると言うことです。
    ついでに輸出競争力のある商品をもうちょっと話しますと、ブロイラーについては、いま、神風が吹いていますが、その 他に養殖エビ。これは2003年が6万2,000トン生産で、前年比で60%増ですが、この95%が輸出に回っています。で、2004年に至っては12万 トン、倍増する予定と言うことです。
    大豆に話を戻しますと、大豆を原料とする加工食品、例えば味噌とか醤油ですけれども、いくら値上げをしても追 いつかない。例えば、手前どもの味噌ですが、去年の1月に15%値上げして、何とかなるかなと思ったら、ドンドン大豆値が上がって、結果的に赤字になって います。で、今年の2月にまた15%あげるんですが、どうも、この勢いだとまた赤字になって終わりそうだと。こんな状況です。
    人件費のアップ。こ れもコストアップなんですが、先ほど建設業界もすごいなと思いましたけれども、当社関連、食品加工業界では、サンパウロでは12.5%ですが、工場のある カンピーナスでは17.5%という賃上げになっております。これはどういうことかと申しますと、9月にカンピーナスは毎年賃上げしてます。2002年の9 月から年末にかけての超インフレがまるまる乗っかった。それで、去年の2003年にそれがまるまる反映して賃上げが17.5になった、と言うことです。
    極端な例かも知れませんが、まあ、この諸々のコストアップを各社、この時期に値上げで吸収したいと考えておるわけですが、このCofinsの税率アップが、こうした値上げをしたい企業に「絶好の口実」を与えたと言えると思いますね。
    Cofins 税率アップについて部会で、どう処理するかって聞きましたところ、全てのメーカーが価格に転嫁するという答えでした。すでに、この税率アップを見越して、 12月に値上げをした会社が1社、1月に値上げをした会社が1社。2月から値上げをするというのが残りの会社ですけれども、こうやって、値上げを発表しま すと。最後まで抵抗して、なかなか手強いのは大手スーパーですが、今回の場合は既に1月の後半から値上げの攻防戦が始まっているんですが、Cofinsの 税率アップという大義名分がありますので、比較的スーパー側もですね、早く小売価格に転嫁するんじゃないかと、いう予測もできるわけです。

    諸コストのアップ、3月のインフレ指数に跳ね返る?
    じゃ あ、どうなるのかという事ですが、1月のインフレ指数のIPCが0.65%と発表されております。いままでお話した流れに沿いますと、いま、スーパーと価 格攻防戦をやっていますが、これが大体片付いてスーパーが小売価格に転嫁する2月末から3月ぐらいに、インフレ指数に跳ね返って来るんじゃないかと予想し ております。従いまして、一応、政府のインフレ目標のIPCAで5.5%ですか、これはひょっとすると軽く超えちゃうんじゃないかな、と心配しておりま す。そうすると、どういうことが起きるかというと、中銀は金利を下げないでひょっとすると上げるかも知れない。ということは景気が回復しない悪循環にな り、去年と同じ事になるかも知れないというのが心配です。まあ、我々、企業経営側からすると、多少のインフレはあって仕方のないことで、むしろ、金利が高 止まって、消費が伸び悩む、売上が伸びないって言う方が、よっぽど、企業経営としては厳しいことなので、このCofinsの税率アップがかなりインパクト をもって、インフレに跳ね返るとまた、景気が低迷するんではないかと心配しております。

    食品安全
    ブラジルもしっかりした品質管理体制が必要
    食 品の安全についてお話しますが、ブラジルの農産物は非常に輸出競争力がついたけれども、これは単純にレアルが切り下がっただけではなくて、やはり、品質が 良くなって来ている点も見逃せないと思います。しかしながら、昨年、コーヒーの農薬問題が日本への輸出時に発生するなど、依然として問題も多いわけです。 他国の例ですが、タイの政府は2004年を「食品安全年」としてキャンペーンを展開中というが、ま、現在、鳥インフルエンザが出ているので、例としてはあ まり、タイミング良くないですが、国内5ヵ所に年間40万件の検査を行える体制を取ったりして、実現できれば、品質管理体制に対しての国際的な信頼が高ま ることを期待していると言うことです。ブラジルも世界における大きな食糧原料供給国としてしっかりした管理体制を敷いて行けるかどうかが、今後の輸出拡大 のポイントになっていくと思います。

    為替安定、税制明瞭化と簡素化を希望
    「2004年、2年目のルーラ政権への期待と展望」ですが、景気の回復は共通の課題として今日は話しませんが、一つ目はやはり為替のことです。
    1 年目、為替が安定して非常に良かった。まあ、相場自体が悪かったところもあるでしょうが、じゃあ、適性な相場がいくらかと申しましても、これは立場によっ て全然違うわけで、輸入原料を加工している食品メーカーは、まあ、2.7ぐらいで十分だと。輸出を中心としているメーカーは、3から3.3は欲しいと。た だ、いずれにしても、乱高下のない安定した為替が望ましいというのが共通した意見でした。
    最後にもう一つですが、税制の明瞭化、簡素化を何とかしてくれないかと、いうのがありますね。景気回復策の一環として、一部の工業税、IPIの税率を下げるかと思うと、今回のようにCofinsの税率を上げてくると、非常に矛盾したことが起きている。
    で、 今回のCofinsについても、例えば、2,400万レアル以下の売上で、売上から利益を推定して法人税を納めている会社には特例として税率は3%のまま とか、それから仕入れが輸入品を原材料としている大手企業とかサービス業とかは、もともとCofinsがないですから、もろに上乗せ分が跳ね返って来ると いうようなことで、非常に複雑であります。しかし、複雑であるが故に、結局、何%かっていうのは、相手側には分からないわけで、絶好の便乗値上げの材料に もなってしまうと言うことです。以上、食品業界、食品部会からの発表です。
    最後に私も3年間、この部会長懇談会、出席させてもらいましたが、今回を持ちましてめでたく引退する事となりました。3年間、どうもありがとうございました。

    司会:
    ありがとうございました。とともに、ご苦労様でございました。それではご質問を受けたいと思います。

    金融機関だけでなく、下々の国民も幸せにしてよ

    赤嶺:
    引 退じゃなくて真に残念なる勇退をなさる、渡辺食品部長のお話を伺いしながら、ずっと考えてきたことがあります。後で中村金融部会長にもお答え頂きたいと思 うのですが、ルーラ政権が今までやって来ていることは、「高金利で銀行だけを、金融機関だけを幸せにしているじゃないか。私ども、下々の国民もどうか幸せ にしてよと」と、こういうことを申し上げたいのですが、国民を幸せにするにはまず懸案の持続性のある長続きのする経済成長、それから、雇用促進、さらには 貧困対策、最後に美味しいごはんを国民に食べさせる。渡辺部会長の目指してきた事だと思うんですが、その辺り、渡辺さん、勇退なさる間際に、肝心の一番懸 案である持続性のある経済成長、そして、国民に美味しいごはんを食べさせると言うような、見通しは実現するのでしょうか。一つ、忌憚のないご意見をお願い したいと思います。

    渡辺:
    まあ、あの、1年目の ルーラ政権を振り返ってみて、やはり、一番、そのー、問題だと思ったのは、インフレに異常に固執しているという点でありまして、経済成長が出てくれば、イ ンフレが出てくるのは、多少、やむを得ないということなんですけれども、インフレばかりを気にして結果的に経済成長が損なわれたと言うことです。従って、 もし、今年も同じ考え方で行くのであれば、残念ながら、また、去年のような不景気が続く可能性が強いと。ですから、ある程度割り切って5.5%を突破して もですね、まあ、10%ぐらいになってもいいじゃないかと、その代わり、景気が良くなったと言うような政策を私としては、個人的には望んでおります。

    銀行は経営努力で儲かっているのです
    村田:
    私、 あのー、金融部会の副会長で、部会長は今日、所用で来れなくて代理でございます。えー、貸し出し金利の高金利政策っていうのは、やはり、我々の業界として も、下がるべきだと思っています。実質金利が高いのがこの国の経済成長を阻害している一番大きな、ものの一つですから、これは、全員の努力で下げて行くも のだと認識しております。その過程のなかで銀行、金融業界としても出来るだけのお手伝いをして行こうと思っておりますが、銀行だけが儲かっていると言うこ とに関しては、まー あのー、どうかなと。経営努力をしながらやっておりますので、その辺は、誤解のないように。あの、下がっていくみんなの気持ちは一緒 だと、言うことですので、よろしくお願いします。

    赤嶺:
    大変失礼致しました。中村金融部会長と冒頭申し上げましたけれども、村田副部会長の誤りでした。平に訂正の上、お詫び申し上げます。

    赤嶺:
    大変失礼致しました。中村金融部会長と冒頭申し上げましたけれども、村田副部会長の誤りでした。平に訂正、お詫び申し上げます。

    司会:
    ほかにございますか。

    渡辺:
    先ほどちょっと、二宮さんの質問を遮っちゃったんですけれども、こんなとこで何か参考になりましたでしょうか。Cofinsの。

    司会:
    今 日はこれまでお話を伺って、いくつか共通のテーマ、我々の直面する課題が出てきたと思います。ただ、いまのような政金の話になると商工会議所が束になって ブラジル政府に文句を言ってもですね、何か、すぐ、改善されることはない。でも、ない中で、何かやっぱし、どういう風にしのいでいくか、工夫していくかと 言うところは、何か余地があるのかなと言うことで、今日、いろいろ聞かせて頂いた話はまた後ほど、ホームページに掲載する形で皆さんにもお目に掛けます し、また、坂野さんともいろいろと相談して、どういう格好で、この後、我々の活動につなげて行くかと言うことを考えて行きたいと思います。
    それでは、最後に総領事にコメントを頂く前に、ブラジリアのほうから、ブラジリアの大使館から笹本様がお見えでございますので、何か、お気づきの点なり、感想などありましたら、一言、お話を頂きたいと思います。

    米利上げでも途上国への資金流入がパタツと止まる事はなかろう

    笹本一等書記官:
    笹本でございます。私、いつもブラジリアにおりまして、なかなか、あの民間の方々からのご意見を伺うことがありません。今日は本当に参考になりました。ありがとうございました。
    それで今年の成長の話なんですが、まあ、国内の要因っていうのは、特に問題になることはないと。あと、先進国の場合はですね、久しぶりに日米欧がそろって今年成長するだろうと言われていまして、で、非常にブラジルにとってはフォローの風が吹いている年だと思うんですよね。
    た だ、2点、皆さんもおっしゃられた通り懸案があって、アメリカが利上げ局面に入ることによって、途上国への資金が細るんではないかと言われているのが一 つ。もう一つは、まあ、最後にお議論になりましたインフレの話なんですが、そのー、アメリカの利上げについては、確かにこれから引き締めの局面に入って行 くのでしょうが、しかし、それほど急激ないわゆる、途上国への資金の流入がぱたっと止まる事はまずないだろうと、いうのが大方の見方です。
    問題な のはインフレで、これはいろんな見方があって、中銀サイドとか一部のエコノミストは、いまのインフレの圧力はあくまで一時的であると。むしろブラジルは長 年、景気低迷が続いたので、生産余力というのは相当あるはずだと。従ってインフレの圧力はそんなに強まらないと言うのが一つの説ですね。
    ところ が、一方で今日、皆さんからご意見を伺ったところ、例えば賃金の圧力ですとか、Cofinsという要因があって非常にその価格面に転嫁が行われていると。 一昨日だったと思うんですが、ジルセウ官房文官長が企業に対して、安易な値上げをしないように警告した。で、きょう皆さんからお伺いしたところだと、どう もその、インフレの圧力は一時的なものではなくて大分、長く続くんではないかと言うことですね。実はこの、インフレに対して皆さんからいろんなご意見が あったんですが、むしろある程度のインフレは許容してもですね、成長すべきだと。これは一つの意見なんですね。ところが一方でインフレっていうは弱者に対 して非常に苛酷ものであると。例えば、昨年、そのインフレが10%から20%になったにも関わらず、賃金はほとんど上がっていないですね。ですから、実質 の所得っていうのは大幅なマイナスになっていると。これが去年の急激なリセッションになった大きな要因の一つだと思うんですね。だから、その5.5%とい う数字に拘る必要はないと。これは確かにその通りだと思うんですね。で、実際、そのインフレも上下2.5までは許されていると。ですから、8%までは、ま あ、許されるんですね。ただ、皆さんがおっしゃるように、ブラジルでは非常に安易に価格に転嫁する傾向があるので、中銀としては非常に悩ましい局面であ るって言うことは確かですね。ただ、非常にそのインフレの圧力が強く、利下げの幅が限られるとなると、成長も中途半端なものに終わってしまう。いま難しい 局面に向かっているところです。すみません、何か、まとまりのないことを申し上げまして、以上です。

    石田総領事の講評

    司会:
    ありがとうございました。それでは、最後に、総領事の方から、講評を頂きたいと思います。

    石田総領事:
    講評というような大それたことが出来るかどうかは別として、印象を述べさせて頂きたいと思います。
    今日は本当に、商工会議所の11もある部会からそれぞれ詳細なご報告を承って、私も、そう言うことを初めて聞く機会をもって、非常に参考になりました。本当にありがとうございました。
    も ちろん、ルーラ政権が就任以来とってきたいろいろな経済政策は、各部会によって、それぞれ受け止め方は違うと思いますし、また、各業界に与えている影響も それぞれ、違うと言うことはよく分かりましたけれども、全般的な評価としては最初に桜井コンサルタント部会長が、「当初の懸念を払拭して堅実な経済運営を 行ってきた。1年目は相当、前政権の政策を引き継いで経済安定のほうに力を入れて、そのために経済成長をある程度犠牲にしてきた面がありますが、そのため もあって、今年はかなりな高成長が望めると。そういう基盤を築いたということで、私は一般的に評価できるのではないかと」、いう風に言っておられたことに 私は賛同したいと思います。同時に桜井部会長が「ブラジルは非常に変化をしている。いい方向に変化している」と言われましたけれども、この点についても、 私は、同意致ししたいと思っております。
    それから、何人かの方が、FTAのことについて若干、懸念を表明されておりましたけど、中村貿易部会長 が、「まあ、日墨のFTAの状況もあって、日本のFTA政策がアジアシフトになるのではないか」と言ったようなご意見がありましたし、それから、自動車副 部会長からも「ブラジルがFTAに熱心なのにも関わらず、日本の対応に苛立ちを感じる」という風な意見がありましが、なかなかこの点については、クリアー な角度のお返事ができないけれども、別に日メキシコのFTAが若干、頓挫していると言うことで、その影響でアジアシフトになっている事はないと思います。 最初からですね、順序からいうと、メキシコの次はアジアだと言うことになっていますから、これは誤解のないようにして頂きたいという風に思います。
    さ らにこの問題については、金岡FTA委員長にきちんとした報告書を作って頂き、それに基づいて、今年の春には、政府に提言を出して頂くことになっている と、理解しています。さらに日本政府に対して現地の声、それから、現地の元となる親会社の声を、経済界の声を政府にドンドン反映して頂いて、圧力をかけて 頂ければという風に、考えております。
    それから、皆さんのご報告を聞いておりまして、やっぱり、いろんなところで、中国の進出、中国の存在感、影 がかなり大きくなっているなと言う風な感じが致しました。貿易部会からも中国に対する去年のブラジルの輸出が2倍以上に伸びているような話もありました し、化学品部会、機械金属部会から、中国の攻勢に対する懸念が述べられておりましたが、私どもも近来の中国の積極的な攻勢は非常に注目に値すると。だから そのう、対抗してどうこうって言うのではないんですけれども、事実として、やはり中国が非常に、対ブラジルシフトを強めているのは、私どもも強く感じると ころです。
    それから、最後になりますけれども、これも桜井コンサルタント部会長が「今年は日伯関係にとっておもしろい年、期待できる年になる」と 言っておられまして、私どもも、是非、そうなったらいいと思っておりますが、まだ具体的に決まっているというのは、そんなにありません。ま、アルキミン知 事が日本に行かれるのは、日本政府が招待をするということで4月の後半、確実にこれは決まっております。それから、おそらくアモリン外務大臣が3月ぐらい に日本に行くじゃないかと言う期待を持っております。しかしながら、それ以外の、ルーラ大統領が日本に行く話であるとか、あるいは、日本から小泉総理が来 られるという話は、もちろん、可能性はかなりありますが、それは今の段階で、確かに決まったと言えないのが非常に残念なところでございます。是非ですね、 そういうチャンスがありますし、そこのところは、もちろん、我々も東京サイドには、プッシュをして行きたいと思いますので、実現することを期待しつつ、私 も努力したいと思います。私のほうからは以上です。本当に今日は皆さんの、あの、各部会の率直な見解を聞かせて頂きまして、大変参考になりました。本当に ありがとうございました。

    司会:
    どうも、ありがとうございました。

    「部会長懇談会」をいま一歩発展させたい

    司会:
    では、閉会にあたりまして、坂野企画戦略委員長から、あいさつさせて頂きます。

    「部会長懇談会」をいま一歩発展させたい

    坂野:
    今 日は長時間にわたり、ありがとうございました。当初、出席数が足らず心配していましたが、これだけの人数の方々に参加いただき本当にありがとうございまし た。今回、私も総務委員長の浅賀さんと並列になっていますが、ほとんどの準備は総務委員会と商工会議所の事務局の皆さんに準備していただき、私はほとんど 何もやっていません。私が今回(主催者として)入っている理由を一つだけ説明し私の挨拶を終わらさせて頂きます。
    従来、"部会長懇談会"は前年度 の回顧及び本年度の展望について、皆さんで情報を交換し、それぞれの業界・部会がおかれている立場を確認することが主体でしたが、その後のフオローが商工 会議所として不足しているのではないかとの反省もあり、今回の形式を取ったものです。先ほど浅賀さんからも説明がありましたとおり、中身によって会議所だ けで出来るのもありますが、会議所だけではなく、本日ご出席いただいた総領事館、大使館および他国の商工会議所との連携でやれることが多々あるのではと 思っています。本日の皆さんの発表で会議所、日本政府に対する要望がありましたが、まず行動することで本日のサマリーをして、会頭とも相談しながら優先順 位をつけてやっていきたい思っております。既にFTAなどはスタートしていますが、これ以外にどのようなことが行動に移せるのかを考えて生きたいと思って います。本日はどうもありがとうございました。

    司会:
    どうも、長時間、ありがとうございました。

    -終わり-

    部会長懇談会寸描
    浅賀名司会。会議所の更なる活動活性化に結びつけるための材料を求めて坂野委員長の的確な質問。時間係の赤嶺副委員長は時計とニラメッコで、質問を忘れるほ ど。各部会長は「我が部会」のためにと、発表内容を濃くし懸命の奮闘だが、殆どに「チーンチーン」と制限時間接近を警告するかねの音。時間オーバーで遂に レッドカードを出され、無念の発表中断やむなきに到るケースも見られた。

2003年下期業種別部会長懇談会

当所恒例の総務委員会(遠藤委員長)主催「業種別部会長懇談会」は、7月31日午 後3時~6時、安田保険講堂で開催された。テーマは、「ブラジル経済2003年上期回顧と下期展望」。経済地域間、あるいは2国間の自由貿易協定締結が世 界の趨勢である事から、日本が南米市場から疎外されるのを未然に阻止するための日伯間、あるいは日、メルコスールFTA問題がクローズアップしており、同 問題について、日伯経済交流促進委員会の金岡委員長(ブラジル伊藤忠)が説明した。

今回は訪伯中の後藤博子参議院議員(大分県、自民党、女性局 次長)を迎えて各部会長の発表に一段と熱がこもった。田中会頭(リベルコン・ビジネス)が日系進出企業の今日までの進出の経緯、現状をのべた。司会は遠藤 委員長(安田保険)。当日の部会発表は下記部会長、副部会長、部会長代理の11名。

 

・ コンサルタント部会長 西川悦治(個人)

・ 金融部会長代理    小原修司(ブラデスコ銀行)

・ 貿易部会長      柳田武三(ジエトロ・サンパウロ)

・ 化学部会長      新井章夫(ブラジル北興化学)

・ 機械金属副部会長   浅賀健一(日本スチール)

・ 繊維部会長      福島良和(ブラジル鐘紡)

・ 食品部会長      渡辺英明(東山農産加工)

・ 電気電子部会長    瀬山雅博(パナソニック・ド・ブラジル)

・ 建設不動産部会長   清水邦保(ブラジル竹中工務店)

・ 運輸サービス部会長  横山幹雄(日本航空サンパウロ支店)

・ 自動車部会副部会長  伊藤一廣(NGKド・ブラジル)

 

左から赤阪総領事、後藤参議院議員、遠藤総務委員長(司会)、田中会頭

 

  • 田中会頭、日系進出企業略史をのべる

     

    司会 総務委員長の遠藤でございます。議事進行面でよろしくご協力をお願いします。
    開会に先立ちまして田中会頭より、本日のゲストの方々の紹介も含めごあいさつ頂きたいと思います。よろしくお願いします。

    田中 本日は特別ゲストとして常連の赤阪総領事がOECD(OCDE=経済開発協力機構)事務局次長にご栄転、赴任前のご多忙中にも関わらずご出席いただいてお り、さらに日本からご来伯中の参議院議員、後藤博子先生にも超タイトなスケジュールをやりくりしてご出席いただきました。
    後藤先生は1982年から85年まで技術者のご主人とともに、JICAの支援によりマナウスに工業移住、マナウス日伯文化協会の日本語学校で日本語や日本文化につき指導された経験のあるブラジル通であられます。
    2001年、自民党に招かれて参議院議員に大分選挙区より立候補され、新人ながら二人の強力な反対候補を大きく引き離して、約60%の得票率で当選された新しい時代にふさわしい政治家であられます。

    さて、本日は当ブラジル日本商工会議所の最大行事である「業種別部会長によるブラジル経済の回顧と展望の懇談会」。年2回実施となっており、今回は2003年上期を回顧し下期を展望するもので、この機会に簡単にこの懇談会の歴史を紹介させて頂きます。
    現在のみなさんには想像が難しいと思いますが、1970年代初め、ブラジル経済の奇跡と言われた時代、欧米企業に伍して日本企業もブラジルへ怒涛のように 進出しました。当会議所もそれに対応して組織改革を行い、業種別に10部会がつくられ、会員会社は必ずいずれかの部会に所属することになりました。昨年、 機械金属部会から自動車部会が独立して現在は11部会になっております。

    70年代のブラジル・ブーム時代

    日本の対伯直接投資は各国中3位だった

    私事にわたり恐縮ですが、その時、ここに今日もおられる山田監事会議長と私がコンサルタント部会創立に参画し、私が初代部会長に就任しました。部会長懇談 会はそれから間もなく開始されたので、30年の歴史をもつ行事ですが、当初はコンサルタント部会の行事としてコンサルタント部会長が司会役をしました。そ の後、会議所の組織に総務委員会が新設され、同委員長が司会する会議所全体の行事となり今日に至っております。
    1970年代のブラジルブーム時 代、各業界の名のある企業ばかりでなく、中堅、中小企業も含め数百社進出しました。その後、かなり撤退したが、現存する日本企業の半数以上は70年代に進 出しております。日伯間には80年代、90年代と20年にわたる不幸な失われた時代が続きました。80年代はラテンアメリカの債務危機によるブラジル経済 の停滞。90年代は日本企業のバブルの崩壊であります。とくに90年代、ブラジルは開放経済への転換、積年のハイパーインフレの克服に成功したことなどに より、欧米企業が積極的に進出したのに対し、日本企業は立ち遅れました。 日本企業のブラジル向け直接投資は、国別順位で1995年まではアメリカ、ドイ ツ、スイスなどに伍して常に3位ないし4位を占めておりましたが、最近は10位ないしは10位以下に転落しております。

    最近10年間の 日伯貿易、とくにブラジルから日本向けの輸出は年23億ドルベースから21億ドルと絶対額でも減少しており、ブラジルからその他の地域向けは、米国向けは 倍増、ヨーロッパ連合(EU)向けは50%増、日本を除くアジア地域向けは2.3倍増と増加しております。当会議所会員会社数でみますと、70年代から 80年代のピーク時には総数約350社、そのうち日本企業は約220社でありましたが、今日総数が280社のうち日本企業約160社となっております。会 員数が減少しているのは日本だけで、米国会議所会員数は増加を続けて現在約5000社、ドイツは1000社と言われております。
    かつて日伯経済 協力の代表的存在であった石川島播磨重工のイシブラスは南米最大の造船所でしたが、現地資本に売却、撤退しました。ナショナルプロジェクトの代表、ウジミ ナス製鉄はその後民営化の際、期待された日本勢が参加せず、日本の出資シェアはかつての40%から現在18%に低下しました。日本が6億ドルの資金を投入 し、今や世界第2の大豆生産国となったブラジルの年間4200万トンのうち60%を生産する「セラード開発」も最近継続が断念されました。

    日本の投資は中国中心にアジア集中

    伯では明るい話題出てきたがFTA懸念

    日系現地企業でも日本人が設立し日系人が経営してきたブラジル最大のコチア農業協同組合も経営不振に陥り清算されました。コロニアの象徴的存在であった南 米銀行も身売りされました。かつては日本人街といわれたリベルダーデ地区も今やチャイナタウン化しつつある様相を見せ始めております。
    悲観的な 話しばかりですが、明るい話しも最近若干は出始めております。1つは、トヨタ、ホンダの乗用車生産開始。まだ年産規模は4~5万台と少ないが、将来を見越 して関連企業も徐々に進出しつつあります。2番目は日伯合弁のナショナルプロジェクトであったパルプのセニブラを、日本の製紙メーカー連合が100%取得 したこと。3つ目は川崎重工のエンブラエル社の飛行機翼生産への参加です。4番目は、三井物産による鉄鉱石のカエミ、及びリオドーセへの参加などです。し かし全体的に、日本の目は中国を中心としたアジアに集中しております。欧米企業と比較して、日本に最も欠けているのは戦略的な見方です。とくにグローバル 化時代の、しかも広大なブラジルに対してはそれが必要です。現在、早急に着手すべき具体的な問題はブラジルとのFTA、自由貿易地域交渉です。日本は世界 貿易機関(WTO)を通じる多国間協定を方針として来たが、最近世界の傾向は複雑化するWTOよりも2国間FTA交渉が主流になっております。ブラジル関 係でもキューバを除く米州34カ国を包含するFTAA、すなわちAlcaが2005年成立を目標に進んでおり、これに対抗して欧州連合(EU)がメルコ スールとのFTAを1年早い2004年成立を目指して交渉を進めております。
    これらがスタートすれば、日本企業はメキシコでと同じようなダメー ジを受ける可能性があります。当会議所は日伯経済交流促進委員会が中心となり、メキシコの事例研究、電気電子業界及び自動車業界の事情研究などをすでに行 い、これから日本、ブラジル間のケーススタディや政府に対する具体的提案に入っていく予定であります。

    新しい日伯経済関係構築

    ナシプロ終り民間企業主役

    私はブラジルは戦略大国という読み方をしております。1つは21世紀に確実に予想される食糧不足を控え、供給力のあるのは米国とブラジルなどごく限られた 国々であります。2番目は石油ショック時代、ブラジルの石油自給率は10%台にすぎなかったが、開発に努めた結果、現在は約80%に達しており、今後数年 で完全自給でき、さらに輸出可能となる見込みです。3番目は石油ショック当時、燃料代替としてアルコール燃料を開発、80年代は生産する自動車の90%が アルコール車だったという経験と技術を持っております。最近、環境問題から再びアルコール燃料が注目されていることはご高承の通りであります。4番目はブ ラジルはIT大国で、これはあまり知られていませんが、すでに10年前から電子選挙を導入、今では完全に定着しました。とくに、全国5500の市長及び市 議会員選挙を一斉に整然と実施し、同じ時期に米国大統領選挙の2カ月以上のもたつきに比べて2時間で結果が確定対照的でした。その他、税務申告、納税、免 許証登録など殆どの行政事務がインターネットで可能となっています。5番目は銀行の不良債権処理、金融システムのリストラをすでに95年に済ませており、 日本の遅々たる動きに比べて対照的であります。

    70年代と異なり、今日はナショナルプロジェクトの時代ではありません。日伯経済関係親 密化の主役は民間企業であることは言うまでもありません。日本のブラジルにおけるプレゼンスのじり貧状態が続けばどうなるかは、日本企業ばかりでなく、日 本の政、官、財、マスコミなど関係者すべてに認識してもらうことが必要であります。すなわち、戦略的な認識が不可欠であります。ブラジルをよくご存じの後 藤先生に、そのための橋渡しをお願いできればこれに過ぎるものはありません。

    最後に、ご多忙中ご出席されました後藤先生、赤阪総領事以下 総領事館のみなさま、会員及び一般の方々、またこの準備のため努力された遠藤委員長をはじめとする総務委員会のメンバー、会議所事務局のみなさん、また素 晴らしい会場を提供して下さった安田保険会社の方々、それから申し忘れましたが大使館から笹本書記官もおみえ頂いております。皆様方に対して厚くお礼申し 上げます。以上で私の挨拶を長くなりましたが終わらせて頂きます。ありがとうございました。

  • 後藤参議院議員あいさつ

    日伯経済交流促進に尽力したい

    司会 後藤議員並びに赤阪総領事には発表後の、そのご講評をお願いしたいと考えてましたけれどもご両名とも、夕刻以降のスケジュールの都合があるということなので、先にご挨拶いただきたいと思います。後藤議員、よろしくお願いします。

    後藤 みなさまこんにちは。ご紹介いただきました、参議院議員の後藤でございます。本日、日本商工会議所の部会長懇談会に出席させていただき、ご挨拶の機会をいただきましたことを重ねてお礼を申し上げます。ありがとうございます。

    本日集まった方々は、ブラジルの経済を引っ張っていくというか、代表される方々ばかりだと聞いており、私と致しましても本日、このようなチャンスに恵まれたことを、本当に嬉しく思っております。

    私、13年度、2年前に、国会議員になったばっかしで、まだほやほやの駆け出しでございますので、本日はあの、皆様方のお話をお伺いしながら、いろんな勉 強が出来れば、これに勝る、感謝の喜びは私としてはありません。私は今回、こちらに先ほどご紹介いただきましたように、「戦後移住50周年記念」の式典参 加のために、やって参りました。いま田中会頭からお話がありましたように、私はマナウスに3年間ほど住んでおりまして、その時は主人が技術者だったもんで すから工業移住をさせていただき、私はその家族の一人として、マナウスに3年間住んでおりました。まさか19年ぶりに、国会議員としてブラジルの地を訪れ るということは、本当に予想もしていなかった状況でございます。私と致しましても、非常にありがたく嬉しく思っておりまして、みなさま方の今日のいろんな お話を聞きながら、何かお役に立てることがあるのではなかろうかと、そういうことも考えてやって参りました。

    現在ブラジルは、アメリカや EUなどと自由貿易協定の締結に向けて交渉中です。また、中国との貿易も急増中と聞いております。こうした状況の中で、今年の春でしたか、サンパウロで開 催されました「日伯の経済合同委員会」では日本とブラジルの自由貿易協定について検討すべきという、提言がなされたことも伺っております。私も日伯議員連 盟に所属する議員の一人と致しまして、日本とブラジルの経済交流促進に微力ですけれども、尽力するつもりですので商工会議所のみなさまとは今後も連絡を密 に致したいと考えております。ご相談とかご要望がございましたら、このような私でよろしければお気軽にご連絡いただければ幸いだと思っております。私もま だまだ慣れないことがたくさんございますので、皆様方のご指導を賜ればありがたいと思っております。最後になりましたが、ブラジル日本商工会議所の益々の ご発展と、ご当地日系社会のご活躍を願いまして、簡単ですけれども私のご挨拶とさせて頂きます。本日は本当にありがとうございます。よろしくお願い致します。

    司会 ありがとうございました。後ほどFTA問題について、日伯経済交流促進委員会の金岡委員長の方からご報告があるかと思いますので場合によっては、きつい要求が出るかも分かりませんのでよろしくお願いします。赤阪総領事、お願いします。

  • 司会の言葉

     

    部会長、副部会長並びに部会長代理発表

    テーマ:「2003年上期回顧と同下期展望」 


    司会:遠藤総務委員長

     

    30%のインフレを収束傾向

    金利引き下げで下期期待か

    本日の議題、「ブラジル経済2003年上期の回顧と下期の展望」では、各部会で集約された意見を発表して頂きますが、発表の時間はお一人10分程度でお願 いしたいと思います。皆さん非常に雄弁な方ばかりですが、発表内容は後日、商工会議所のホームページにも掲載されますので、本日はエッセンスの部分だけ集 中して頂ければと言うふうに考えています。途中、コーヒーブレイクを挟み全部会の発表が終わりましたあと「自由討論の時間」も設けたいと思います。最後に FTA問題の検討状況について金岡委員長の報告も予定しております。

    それでは本題に入ります。まず2003年 上期の展望は、年初の第一回部会長懇談会で、討議され総じて史上初めての労働政権への不透明さがあり、慎重論が大半を占めていたと思います。現実開けてみ てどうだったかって言うと、年初1月~3月まで12カ月累計で30%を超えるという大きなインフレがありまして、このインフレ抑制に経済政策の主眼がおか れて来たと思います。その結果、高金利、高失業率、所得低下といった経済環境の悪化という事態に陥っており、まあ、部会でも同様の部門、金融部門を除きま しては、非常に苦しい6カ月であったというのが実情ではないかと思います。

    そうは言いながら、最近になりイン フレも収束傾向を見せ、金利の引き下げもあり「下期に期待する」ところが大きいのかな、と推測しております。それでは各部会の発表に移ります。まずコンサ ルタント部会から順番に行きたいと思います。マクロの状況をコンサルタント部会の西川さん、よろしくお願いします。

     

  • コンサルタント部会 西川部会長


    西川部会長

    西川 コンサルタント部会の方ではマクロ的な面を説明するようにという事ですが、数値的な面は金融部会の小原さんにお願いしまして、大きな流れといいますか、イ ベントとして特筆すべきことを中心に、我々のみたところを説明したいと思います。 大体上半期、下半期ともに政治と経済の2つの面に分けて説明させて頂き ます。

    皆様ご承知のように、今年の1月に政権を執りましたルーラ政権、ほとんどの人がかなりの危惧をもって成り行きを待った、見つめたと思います。ところが結果は予想以上の好評を受けた。とくに外交面においてルーラ大統領の働きぶりが非常に立派だったと思います。
    国内面では2つの出来事が非常に重要だったと思います。第一は去年、政権を執る前に連立政権に取り込もうとしてうまく行かなかったPMDBを時宜的に取り込んだ。これはかなり大きな政治的効果があったとして、大統領の政治力を評価すべきだと思います。
    第二には特に、全州知事をまとめて、社会保障制度改革実現のために自分の陣営に引き込んだ。この二つが特筆すべき国内的な政治面での動きじゃなかったかと思います。

    財政1次収支黒字目標引き上げ

    国際金融マーケットが伯に好感

    経済面では、上半期は去年の不安、去年はルーラ大統領候補の人気がどんどん強くなっていく選挙戦のなかで、非常にドルが高騰した事に象徴されるように、非 常に不安定な経済の動きでした。それを引きずって上半期は非常に苦しい余り効果のない半期だったと思います。ところが1月の確か20日前後と思いますが、 財政プライマリ-収支の黒字をIMFとの間でそれまで3.75%で前政権がアグリメントしていたのを4.25%に上げると声明した。これを契機に国際金融 マーケットのブラジルに対する見方が大きく転換したと思います。ですから私は、今年上半期の一番大きなファクター、評価すべき点はこういう決定をした事だ と思います。
    その結果、それまで殆どボンド発行が出来なかったブラジルが、どんどん発行出来るようになり、第1四半期に50億ドルぐらいの借入れが出来た。それによって、国際収支面の当面の不安が消え、明るい見通しが立ったという事です。
    その間、例のイラク戦争に象徴される国際経済面での不安定要素がありながらもブラジル国内では、ドル相場がどんどん下がってきた。ブラジルのリスク指数、それとインフレ指数も徐々に下がりだした。
    株価の方も3月頃から少しずつ回復し、ブラジル債務も格上げされる様になってきた。これは先ほど申し上げた財政プライマリ-収支の黒字面を自発的に上げる約束が大きなファクターだと思います。
    しかし、世界的に景気は一向に改善せず、ブラジルの失業率は益々増大する。消費は上半期全体を通じてかなり落ちた。ですから経済全般の成長率は期待するほどではなかった。

    次に下半期ですが、政治面では殆どの人がそう考えられると思いますが、国会における構造改革、とくに社会保険制度、それから税制改革。この2つが下半期の 1番大きな関心事になると思います。この結果によってはブラジルの経済・社会の将来に対して、非常に大きな影響をもたらすという事でしよう。第2番目に は、土地なし農民(MST)の動き、あるいはホームレスですね。このMSTのこの動きが益々活発化しておりますし、これからも先鋭化する可能性は非常に高 いと思います。これはルーラ政権としては難しいでしょうが何としてでも解決せざるを得ない。これを来年まで持ち込むと解決はますます難しくなると思いま す。この下半期では、なんとか目処をつけて解決策、解決の方向にもって行けるように期待したいと思ってます。そのほか、国際的には上半期の成果を引き継い で、かなり積極的な対応をすると思いますが、むしろ下半期は国内問題に集中してもらいたいと期待しております。

    米景気回復頼みの伯経済

    経済の方は世界的にみて、大きく好転するという期待は難しいだろうと思っております。先進国ではデフレの方がむしろ心配で、低金利政策とかいろいろやって おりますが、簡単には解決しにくいと思います。アメリカも財政収支、それから経常国際収支赤字が未曽有の大きさになると言った問題もありますが、ブッシュ 政権がとった大幅減税の効果もぼつぼつ顕在化しているようで、アメリカの景気が立ち直ればブラジルの景気も少しは良くなると期待しております。
    また、国内的にはブラジルもデフレ的な要素、数字を出しており、インフレが収まって行き、それに応じて金利のカット、それから強制預託金率の引き下げ、そういった金融緩和政策を中央銀行がとっていくので、少しは景気が良くなると期待しております。
    輸出面では、農産物の輸出が端境期で落ちますので、下半期に大きな黒字、貿易収支の黒字は期待できないでしょうが、黒字基調はあまり変わらないと思っております。
    為替相場も現在のように外貨の調達が難しくなければ、それほど大きな高騰はないと思いますが、ブラジルは国際収支面がアキレス腱で、何かがあれば敏感に反応する部分ですので、為替相場の動きはやはり注目して行かなければと考えております。
    簡単に申しますと下半期は、来年はもう少し景気はいろんなものを含めて良くなると思いますが、それまでのまあウォーミングップ、そういう時期じゃないか と。「直接景気の動向が良くなった」と言うところまでは難しいかも知れませんが、成長率も上半期よりは少し増えて行くのではないか、年率2%まで行くか行 かないか、の水準ではないかと思っております。以上で説明にかえさせて頂きます。

  • コンサルタント部会(レポート)

    2003年上期の回顧と下期の展望

    1- 上半期の回顧

    政治
    大きな危惧の念を抱かせてスタートしたルーラ政権であったが、予想以上の好評裡に最初の6ヵ月を終えた。アントニオ パロッシ財務相を始め、セルソ アモ リン外相、ルイス フェルナンド フルラン商工貿易開発相、エンリッケ メイレレス中銀総裁等手堅い運営振りで内外の信認を高めた。
    ルーラ大統 領の行動力、決断力、とくに戦略的なヴィジョンについては、目を瞠らせるものがあった。 メルコスールのみならず、南米諸国のリーダーとしてのブラジルの 地位確立、FTAA(ALCA)推進のコーヂネーターとしての認証、EUとメルコスール協定促進化への働き、中国、インドを巻き込んでの発展途上国サミッ ト形成の始動等、とくに外交面において顕著であった。
    国内的には、昨年末不成功に終わったPMDBの取り込みに漕ぎつけ、社会保障制度改革、税 制改革、その他の重要な構造改革に必要とされる、議会による現行憲法改正の目処をつけることが出来た。更に、社会保障制度改革の実現に向け、27人の全州 知事の説得工作に成功したことは特筆に値する。

    経済
    財政プライマリ-収支黒字をGDPの3.75%から4.25%へ引き上げるこ とを新政権発足後間もない時期に発表、市場に新政権の経済政策が極めてオ―ソドックスであることを強く印象付けた。同時にこの目標を達成するために、本年 予算を141億レアルカットすることを決めた。
    この結果、IMFよりの借入金引き出し(本年240億ドル)も早急に認められ、イラク戦争等の大きな不確定要因にも拘わらず、ブラジルリスク指数、インフレ指数、ドル相場が大きく下降し、反面、株価上昇、ブラジル債務の格上げ等がみられた。
    財政プライマリ-収支は4.25%を上回る黒字、国際収支も順調な
    ローンやボンドによる外貨調達で大きな改善が見られた。
    併しながら、世界的な景気低迷と昨年後半から今年度初めにみられた物価高騰による可処分所得の減退、中央銀行による高金利政策の維持により、失業率の改善はみられず、著しく消費が落ち込んだ。

    2- 下半期の展望

    政治

    国 会における社会保障制度、税制改革承認をめぐっての攻防が最大 の関心事となろう。この帰趨によってブラジルの経済、社会の将来は 大きな影響をうけることになる。 またMSTの土地占拠も激しさを増す可能性大で、この問題をどの  ように処理するかルーラ政権の政治力が試されている。   
    国際的にはメルコスール、南米のリーダーとして、ALCA問題、EUとの交渉など、ブラジルのみならず、近隣諸国の将来もきめるよ  うな選澤を迫られるようにもなろう。   
    10年、20年後のブラジルのあるべき姿を示し、それに至る道程の方向性、必要な主たる方策などを提示してほしいものである。それ  も今後急速に伸びるであろう他の発展途上諸国を視野に入れて。

    経済
    世界の経済動向をみれば、近いうちに経済情勢が大きく好転し、成長路線に乗る可能性は少ないと思われる。 殆どの先進国ではデフレに陥らないように低金利政策が続き、米国  では、未曾有の財政と国際経常収支の赤字という問題を抱えているが ブッシュ政権によってとられた大幅減税の効果も顕在化し、消費の拡大が期待される。   
    国内的には、インフレ収束が明確になるにつれて中銀は徐 々に金利 カットと強制預託率の引き下げによる金融緩和策をとり、新規投資や消費の拡大を図ろう。その効果が顕われるのは先になろうが、景気の 好転期待感は見られよう。好調だった農産物の輸出は、端境期のため減少するが、農産加工品や工業製品の輸出は維持されよう。この輸出 主導型から徐々に国内景気型に移行すると期待される。   
    為替相場については、外貨借り入れが今のように続く限り、現行水準で推移するであろう が、ブラジル経済のアキレス腱が国際収支問題にあるという体質は何ら変わっていないので、国際金融市場で何かが起これば、ブラジルの為替相場に直接大きな 影響を与えるということ  を常に考慮しておく必要がある。   
    景気好転への期待感は増大するとはいえ、下半期の経済成長率は上半期のそれを多少上回る程度であろう。景気の好転を実感できるのは来年と思われ、そのためのウオーミングアップが今年の下半期と考えられる。     

    コンサルタント部会会員の業務にみられる変化、新需要

    1. 人材リクルート業

    失業した重役級を含むエゼクチ-ボたちの再就職までの期間が昨年は、平均で3ヵ月くらいだったのが今年は、平均で7ヵ月 から8ヵ月まで伸びている。
    そ れだけ再就職の難しさが表面化 して来たといえる。IBGEの調査によると、今年5月の失業率は、12.8% で史上最悪を記録し、さらに、同6月には13%の大台に乗った。 また、日系進出企業の場合、国内の不況色というよりも、むしろ、 経済政策を中心に、ルーラ新政権の行方を見守りたいと言う理由 で、新規の人員採用を手控えている。従って、増員のための採用 は、ほとんどなく、社員の誰かが辞めたときの補充にとどまって いる。

    2. 法律弁護士事務所

    A)FGTS - 88年 から91年の間の価値修正不足分はCaixa Economica Federalが払ってくれるが、その間人員整理の対象 となった元従業員はムルタ(罰)として元雇用主より支払われた 40%の価値修正を元雇用主に要求するケースが見られる。         
    B)Arbitragem - 96年制定の法律に基づき契約当事者間で、係争を裁判所の代わりに Arbitragem で処理するという条項を いれた契約書がふえてきている。

    C)新民法   - 有限会社(Sociedade Limitada)のContrato Socialを新民法の規定にあわせるべく2004 年1月12日までに変更しなければならない。

    3. 旅行代理店業ブラジル側のビザ手続きは、前政権と比較して、かなり迅速化 してきている。

  • 金融部会 小原部会長代理


    小原部会長代理

    金融部会レポート

    司会  この高金利の影響を十分に享受されたのではと思われる、金融部会の小原さんお願いします。金融部会の方ではレジメを2部ほど用意されているようですから。

    政府の着実な議会工作成果に期待

    小原   本来、金融部会の方は部会長の村田、もしくは副部会長の山田さんの方から発表させて貰うところですが、あいにく、私にとっては不幸というか、ごめんなさ い(笑い)。お二人は出張がフィックスして、動かせないと言うことで、私ごときで大変恐縮ですが、頑張らせて頂きたいと思いますので是非よろしくお願いし ます。

    金融部会のレジメを二つ用意してまして、一つは金融部会目次と書いてある方と、あとはデータ中心の方の2部になっています。
    最初が目次の方に「マクロ経済政治動向」というところで、今コンサルタント部会の西川部会長の方からご発表いただいた内容と重複するところがありますが、 まあ幸いにも、今お伺いしてまして特に事前の打ち合わせはないですが、トーンは全く一緒ですので,ここは簡単に聞き流して頂ければと思います。

    まず国内政治、議会運営ですが、上半期を総括し,短く言いますと、ルーラ政権が国内政治を安定させて政策遂行に必要な議会での支持基盤を確保していった。 お話しありましたが連立を形成していく過程にある。それが今後の政策遂行上の安定基盤をほぼ築けたのかなぁと、楽観的な見方ですが、このように捉えられる と思います。今後、大きな憲法改正案、足元で進んでいますけれども、上下両院でそれぞれ五分の三以上の票数獲得が必要な訳ですが、これも楽観的すぎるかも 知れませんが目処が立ってきている事が、後に述べます経済の方もしくはマーケット、投資家サイドの好感を得ていると言うことだと思います。

    憲法改正は2004年上期予想

    大統領支持率も安定している

    通期の展望ですが、まさに年金制度改革を中心とする社会保障制度改革。それから、昨日か今日の新聞に、税制改革の方は審議を先送りすると出ていたが、そも そも内容がどのように変わって行くのか、いつ議会で承認されるのかがまさにポイントになってくると思います。通常、最短でも憲法改正には6カ月が必要だと 言われており、早ければ年内と政府は目論んでいるようですが、実際に外からの見方としては年が明けて2004年の上期になるのではと見ています。ただ、 2004年の下期に地方選挙を控えていますので、政府としては、それまでに何とか承認にこぎつけたいと考えていると思われます。

    大統領の 支持率は、ご存じの通り、貧困層出身ということで多くの国民の期待が集まって、就任当初76%を記録するに至っています。現在も依然として70%代の高支 持率と、国民の支持も安定しており、通期の見通しとしても俗にハネムーン期間1年といわれますが、これは若干1年半とか2年とか、もう少し長い様子見期間 であってよいのではと言う見方をしています。いろいろと不安要素はあると思います。PT内での、足並みの乱れとか、センテーハ(土地なし農民)、センテッ ト(ホームレス)とシンジケートの要求、動きが強くなってくること、公務員のストライキ、まさに今いろんな所で火種として起こっており、州知事の反対とか いろいろあると思いますが、ベースは着実に出来ていると言うような、好感的な見方をしています。

    経済動向。GDPと経済動向ですが、上半 期を短く総括しますと、昨年から続く高金利政策の影響を受けて内需は低迷。レアル相場が高止まりで、現在まだ高止まっているにも関わらず輸出産業は好調 と、こういえると思います。ご存じのように金融が非常に、高金利政策とボリューム面での準備率の引き上げ等で収縮しており、国内市場向け非鉄金属や住宅投 資関連産業は大きく落ち込んでいて、足元っていうか、これも年初以来ずっとですが自動車などの耐久消費財、それから一般消費財も去年の年末の買いだめとい う影響もあって、まだ減少している状況です。

    金利はこの前1.5%下げたが、実業界からは1.5%は期待はずれという声も多かったが、政府としては1.5%も下げたと。そのプレッシャーの一つとして、失業率が年初以来ずっと悪化していよいよ13%に近づいたという背景もあったと思います。
    通期の金利見通しは、段階的に2段階下げたが、今後も段階的な利下げを、行っていくと見ております。ただ対策面で金利は引き下げて行くでしょうが、実態経 済に影響、個人消費とかその辺に及んで実際に数値として及んでくるのは来年以降になるという見方が強いようで、従がって、GDPの成長率の見通しも 1.5%にポイントを下方修正しております。

    外準ネット145億ドルが気になるが、貿易は楽観

    財政。公的債務ですが、上半 期はプライマリ-収支を4.25上方修正して、非常に好感を呼んでおります。レアル高の影響もあり、公的債務残高のGDPに占める比率は、昨年9月のレア ル安がピークだった頃の63.6%から比較すると大きく低下し、5月には53.6%まで落ちています。この4.25%という目標は、大半の外部機関とか は、ほぼ達成見込みと見ているようです。政府の財政面、調達面での方向性としては、まず短期。今日も新聞に載っていたが、まず短期債務の削減。いま短期債 務額でなく比率では4割位あるけれども、それを少しでも、長期化し、キャッシュフローを安定させると。それから、ドルリンク債もレアル安の影響によって、 まさに公的債務残高のGDP比率を、上げたりするので、極力ドルに左右されない格好にしたいとドルリンク債はいま約4割弱あるが、これの削減という方向性 で進んで来ているようです。

    貿易収支は、昨年来のレアル安を受けて一次産品、とくに食品輸出が大幅に増加しています。上期の貿易黒字が 104億ドルと前年同期の4倍を計上しております。前年同期は25億ドル位で、前年通期で約130億ドル位だった。ですから前年7月から12月までとほぼ 同じ水準で、まだこのレアル高の水準でも貿易収支は足元を黒字に推移していると言うことです。
    通期の見通しは、これも大きく見方が分かれると思いますが、ベースは貿易収支は楽観と言えると思います。通期では150億から170億ドル位ですから、更に50億ドル、60億ドル位の積み増しが残り6ヵ月で出来る見込みでいます。

    外貨準備。外貨準備は足元480億ドルですから危機の頃の350億ドルと比べて、だいぶ高くなっていますが、その中に実際にはIMFの方の残高が335億 ドルありネットでは145億ドル。この水準は去年の大統領選挙のタービュランスが始まる前の水準よりも低い。一般に3カ月分の輸入を下回って来ると危険水 準という見方があり、もうそれにネットでは近づいています。とはいえ、グロスでの判断では、なんていうかベースは安定的と思うんですが。

    為替は上半期を総括しますと、グラフでもはっきり分かるように一貫したレアル高でした。これは当初様子見であった市場の方からも、ルーラ政権が実際の公約 通り、基本的な経済政策はカルドーゾ前政権時から変更しないとはっきり明言、かつ強調していて、その通りの行動を示す運営である事から好感されています。 政治不安、政権不安はいろんな要素があって一気に高まったが、高まりすぎた不安がまあ急速に払拭されたと言う事で、グラフをつけておりますが、ブラジルの リスクですか、これも、去年の9月をピークに、右肩下がりで下がって来ています。現在の為替高止まり要因として考えられるのは、いま申しましたブラジルリ スクの低下、それから貿易収支が足元いぜん黒字であること、それから財政構造改革への期待感、このあたりがベースになっていると思います。
    今後 の為替動向ですが、インフレ率に連動する形でSelic金利が徐々に、もうデスィンフレを2カ月連続で示してますので、今後もSelic金利を段階的に下 げて行き、結果として緩やかにレアル安が進行していく。緩やかにという事ですから、まあ限定的という事で、各行の予想を下に書いてますが、約R$2.8か ら3.23。このあたりまでのデバリユというか、レアル安を想定していると言うことです。

    徹底した高金利政策でインフレからデフレへ

    金利動向。金利について総括しますと、高金利政策の継続と。とにかく、もうインフレ撲滅のための、執拗なまでの高金利政策の継続という事がいえると思いま す。その徹底した態度があって、6月に初めて前月比でマイナス0.15%というデフレを記録した。このデフレは、これもグラフをつけていますが、4年半ぶ りのデフレです。今日IPA、卸売物価指数が出ていましたが、これもマイナスで、消費者物価の方もほぼ間違いなく、2カ月連続マイナスになると思います。 前後しますが、インフレが下落した主な要因は、中銀の一貫した高金利政策の維持、イラク戦争が早期終結し石油価格が安定した、それからブラジルリスクの低 下。このあたりが主な要因だと思われます。
    今後の動向は繰り返しになりますが、デフレを示していく。ただ、電話、ガス、電気代の値上げをもう8月に見込んでいるようで、このあたりが消費者物価の引き上げに影響します。これが約0.5%の影響といわれ、再びインフレを記録するという格好になると思います。
    それと、特筆するとしたら、IPCAという消費者物価全体の指数ですが、ここにIPCAから農業関連、工業製品関連とか季節的な要因に左右されやすいも の、商品を除いたものの数値がありますが、これで行くと実はまだそのインフレ数値は示しておりませんで、そう言うところからも、政府が慎重姿勢をなかなか 崩さないと言えるかと思います。

    最後に金融情勢のトピックスをつけておりますが、金融収縮面では、資金供給面において、預金準備率を45 から60%に引き上げております。それから、輸出前貸し、これも短期の資金な訳で、短期の外からの資金な訳ですが、これが年初以来大幅に回復していると聞 いております。取引量としては、去年の2、3月ですから、大統領選挙戦のタビュランスの景気の影響を受ける前の水準にまで戻ってきています。金利も戻って きています。
    金融政策面ではいま、色んな構想が出てるのがマイクロバンクというか、小さい個人消費者向けの小型ローンの構想。まあ消費者の購買 意欲を上げるためのそれですとか、倒産法の整備。 銀行がもう少しリスク取りやすくするため、もしくは金利を引き下げやすくするため、こんな方策が検討さ れています。すみません、長くなりましたが以上で終わらせて頂きます。

    ぼう大なファイルのため、金融部会レポートは以下よりダウンロードしてご覧下さい。

    Word File econonia.doc
    Excel econonia.xls

  • 貿易部会 柳田部会長


    柳田部会長

    司会  次は貿易部会ですが、ただいまの話にも出てきました上期の貿易黒字というのは104億ドルですか、史上最高とこういう明るい話題もあるかと思いますけれど、柳田さんよろしくお願いします。

    上期貿易黒字104億ドル

    目立つ対中国輸出増加

    柳田   お手元の資料に基づき、ご説明申し上げます。いま、金融部会の方からもあsりましたように、今年上期の貿易黒字は104億ドル。この同期間では過去最大 を記録しました。このように黒字が拡大した要因は輸出が非常に増えたことです。まず、輸出は31.7%増、一方、輸入はほとんど伸びておりません。2番目 にこの期間の特徴として対中貿易、中国向けの輸出あるいは輸入が非常に増えたことで、とくに輸出先としてブラジルにとって第2の市場になったことです。対 中輸出はとくに大豆、鉄鉱石、鉄鋼製品が中心で200%以上の増加になっています。 一方、輸入はブラジル全体で低迷しました。全体では0.6%しか伸び なかった訳ですが、対中輸入は40%以上の伸びとなっています。この辺は最後のページに統計、国別の統計を出しておりますのでご覧いだだければと思いま す。もう一つ、下期の貿易見通しとなりますと、為替と国内金利の動向が鍵となるでしょう。これはコンサルタント部会、あるいは金融部会のご説明の通りだと 思います。金融部会の貿易黒字見通しはもうちょっと、少なかったと思いますが現在、政府あるいは政府系の予測機関等によりますと、大体170億ドルぐらい を予測しております。

    簡単に以下、ご説明申し上げますと、輸出動向については何故、輸出が大幅に増えたかは、まず1点目としてレアル安の 影響。昨年後半から今年3月にかけてのレアル安。2点目は、中国等の旺盛な外需があって輸出量が増えました。3点目としてブラジルの主要産品の国際価格が 長年低迷しておったのが、ようやく回復し始めたという3点ございます。具体的な品目で見ますと、輸出に非常に大きく貢献したのは、いま申し上げた大豆、鉄 鉱石、鉄鋼半製品、原油、パルプといったところです。とくに大豆は、国際価格が上がってきただけでなく、数量的にも大きな伸びを示しております。大豆の輸 出は、対前年同期比で約150%増。数量ベースでも100%以上の増加を示しております。輸出先は中国が最大です。鉄鉱石は前年同期比で約40%の増加、 鉄鋼半製品も60%ぐらいの増加となっております。これらの増加を牽引しましたのは、やはり中国向けの輸出で、中国の旺盛な需要がブラジルの輸出増加に大 きく貢献していることが分かるかと思います。原油は、前年同期比100%近い増加となっております。主な輸出先は、米国、インド、チリです。
    パルプも対前年同期比で100%以上の増加となっております。対米輸出は100%以上の伸び、対日輸出も落ち込んでおりましたが、ようやく今年上期に50%近い伸び、昨年が落ちた事もあるのですが増加をしております。

    輸出相手国トップは依然米国、中国第2位

    輸 出相手国別にみますと、米国が依然としてブラジルにとっての最大の輸出先です。米国向けは石油燃料等を中心に増加した訳ですが、トータルで18%の増加で 約81億ドルを記録しております。中国向けは何と220%増で、今やブラジルにとって第2の輸出先。従来から重要な貿易相手だったアルゼンチンですが、よ うやく経済の回復傾向ということで、今年上期に90%増と相当な伸びを示しております。
    米国向けは、ディーゼル油等の燃料油が大きく伸びて230%増、原油に至っては300%以上の増加になっております。
    ブラジルから米国への最大の輸出品目である航空機、エンブラエルですが、これもテロ以降かなり落ち込んでおった訳ですが、今年上期には対前年同期比でようやく11%強の増加と回復傾向を示しています。
    中国ですが、先ほど申し上げたように中国向け最大の輸出品目は、今や大豆で、2002年の上期が1億ドルだったものが今年の上期には何と8億ドルと急増をしております。
    鉄鉱石も、50%以上の増加。とりわけ対中輸出で増加が顕著なのは鉄鋼関連製品で、昨年の上期はわずか700万ドル弱だったものが、今年上期には1億 6000万ドルまで急増。鉄鋼半製品は何と500%増。こうした鋼材の需要はご承知の通り、中国の最近の発展ぶりが背景になっています。アルゼンチン、先 ほど申し上げましたように特に自動車、鉄鉱石、こういったところの回復が著しいところです。それから、新しい輸出先として注目されておりますのはロシア、 イラン、インドです。
    なお、イラク戦争の影響は、貿易部会でも先日議論しましたが、ブラジルにとっては輸出先における在庫積み増しというような 形でプラスに働いたのではないかと言うのが一般的な見方です。SARSにつきましては、直接ブラジルの貿易に影響は見られませんが、やはり中国における展 示会・商談会、こういったものへの人の往来で影響が少し出ていると言う意見が多かったと思います。

    上期輸入はわずか0.6%増

    次 に輸入ですが、先ほど申し上げましたように、わずか0.6%の増加です。どうして昨年並みに留まったかは、先ほどの金融部会のご説明にあった通りですが、 やはり今年3月までのレアル安、それから政府の財政引き締めによる公共投資、公共事業等の需要がなかったこと。それから高金利による国内経済の停滞という 3点です。金利(Selic)は先ほどご説明ありましたように24.5まで下がりましたが、依然この高金利が景気回復の足かせになっている事は今ご説明 あった通りですが、1~5月の鉱工業生産でみますと前年同期比で0.6%増と、やはり低迷しています。生産ですが、中間財を除き、資本財、耐久消費財、非 耐久消費財ともにやはり生産が減少しており、こう言ったことがやはり輸入にも影響して、資本財、消費財の輸入が減少していると言うことです。
    資 本財の輸入は、対前年同期比で15%減、消費財も8%減という形になっております。唯一、一次産品、中間財の輸入は約7%、対前年同期比で増えておりま す。資本財の中でも特に減少が顕著であったものは、設備・機械、それから事務機器。この辺は20%近い減少で企業がやはり設備投資を控えている事がはっき り分かるかと思います。消費財につきましても食料品・家具の輸入が大幅に減少して、やはり消費者の購買意欲低下を反映してるのではないかと思います。
    輸入相手先ですが、米国、アルゼンチン、それからヨーロッパ各国、この辺が主な輸入先ですが、軒並み減少しています。
    ただ、中国からの輸入だけは目立つということです。米国はブラジルにとって輸入でも第一位の国ですが、今年上期は12%減少しております。とくに輸入減少 が大きかったものはモーター、発電機、変圧器、以下ここに書いてあるような品目で30%前後の減少となっている。一方、中国は41%強の増加になっていま す。とくに輸入が大きい品目はコークスで、前年同期比で200%以上の増加になっています。セルラー関係の部品も65%ぐらい増加しています。あとは石炭 というようなところです。

    対日輸出10%増、輸入は4%減

    次に対日貿易ですが、対日輸出は前年同期比で約10%増 加。輸入は逆に4%減で、対日貿易は輸出入の合計で前年同期比2.3%増となっています。主要な対日輸出品目の鉄鉱石は25%増、アルミは60%近い増加 です。鶏肉は数字の上では25%近い減になっていますが、数量的には増えております。これは輸出単価が減少していると言うことです。対日輸入主要品目で言 いますと、自動車部品は相変わらずブラジル国内の日系企業等の生産が好調で、50%以上の増加を示しています。

    これから効いて来るレアル高の影響

    そ れから今後の貿易見通しは、先ほどの金融部会等の話の通りで、くり返しになって恐縮ですが、やはり為替と国内金利の動向が大きな鍵を握るだろうと言うこと で、最近のレアル高の影響はこれから効いてくるのだろうと思います。年前半におきましては、レアル高になってもこの3月時点までの契約には影響がほとんど 見られなかったと言うことと、それ以降でも輸出企業は価格を据え置いて来たことが大きいと思います。ただ、今後さらにレアル高が続けば、輸出価格の値上げ に踏み切らざるを得ないと言うことで輸出に影響が出て来ることも考えられます。もうすでに6月、7月の1日当たりの輸出額というものは減少を示しておりま す。
    一方、輸入ですが、これも国内の消費が回復するかどうか、金利がどこまで下がるのかがポイントになろうかと思います。先ほど、冒頭に申し上 げましたように、予算企画省の傘下でありますIPEAの予測では、今年の貿易収支は172億ドルとなっておりますが、中銀もほぼ同じ数字を発表しておりま す。最後にブラジルを取り巻くFTAの交渉状況、これは後ほど金岡委員長の方からお話がございますので、その時に追加でご説明させて頂ければと思います。 以上です。

  • 貿易部会(レポート)

    2003年上期貿易動向と今後の見通し

    2003年1月~5月における貿易収支黒字は、80億4,100万ドルと同期間では過去の統計史上最も大きな黒字額となった。黒字増加の要因は、大幅な輸 出増加によるもので、同期間における輸出額は前年同期比29.3%増の271億2,800万ドルであった。一方、輸入額は同0.1%増の190億 8,700万ドルであった。

    1.大幅に増加した輸出

    輸出額が大幅に増加した背景には、2002年後半から今年3月にかけてのレアル安の影響と、旺盛な外需により輸出量が伸びたことに加えて、大豆、原油、コーヒーなどブラジルの主要輸出産品の国際価格が、低迷していた昨年に比べ上昇したことが挙げられる。

    <品目別分析>
    輸 出増加に大きく寄与した品目は、大豆、鉄鉱石・鉄鋼半製品、原油である。大豆は国際価格の上昇だけでなく数量の伸びも大きい。03年1月~5月における大 豆輸出は、金額ベースで前年同期比149.9%増の16億4,300万ドル、数量ベースで同105.7%増の791万2,800トンとなっている。輸出先 としては中国が最大で、中国向けの増加だけで大豆輸出増加分の半分以上を占める。

    ま た、鉄鉱石は前年同期比26.8%増の14億1,100万ドル、鉄鋼半製品については同40.9%増の6億 6,200万ドルであった。いずれも増加を牽引したのは中国向けの輸出で、中国向けの鉄鉱石は前年同期比46.4%増の2億9,900万ドル、鉄鋼半製品 は同692.4%増の1億1,300万ドルとなった。工業化の進展する中国の旺盛な需要が、ブラジルの輸出増加に大きく貢献していることがわかる。

    原 油については前年同期比89.4%増の8億6,600万ドルであった。主な輸出先としては米国が前年同期比 326.0%増の2億3,100万ドル、インドが同247.4%増の1億7,100万ドル、チリが同174.0%増の9,500万ドルとなっている。メル コスールとインドは、FTAの締結に向けた枠組み協定を今年6月に締結しており、今後エネルギー分野を中心に関係がより深まると見られる。

    なお、国際価格の上昇について貿易統計から輸出単価を試算すると、大豆は前年が170.9ドル/トンであったのに対し、今年は207.6ドル/トンに上昇 している。同様に原油とコーヒーについては、原油が前年同期比48.5%増の172.9ドル/トン、コーヒーが同 17.0%増の898.5ドル/トンとなっている。これらの主要産品は近年国際価格が低迷してきたこともあり、最近の価格上昇で漸く持ち直しつつある。こ のように、ブラジルの主要品目における国際価格が回復しつつあることが輸出額増加の一因として挙げられる。

    <輸出相手国別分析>
    輸 出相手国別では、最大の輸出先である米国向けは燃料を中心に輸出額が増加し、前年同期比18.8%増の68億1,500万ドルとなった。また、中国向けは 前年同期比229.8%増の17億7,400万ドルと今やブラジルにとって第2位の輸出先となっている。そして、隣国のアルゼンチン向け輸出額も、同国国 内経済の回復傾向により、前年同期比83.2%増の14億7,100万ドルと大幅に増加した。また、ブラジル政府の輸出振興策の成果もあって、新たな輸出 先が開拓されているのも2003年前半の特徴として挙げられる。

    まず、米国向けでは、燃料油(ディーゼル油等)の輸出額が前年同期比299.7%増の4億200万ドル、原油が同326.0%増の2億3,100万ドルとなった。最大の輸出品目である航空機の輸出額は前年同期比14.5%増と、2年前の米国テロ事件以来の回復を見せた。

    中 国は今や米国に次ぐ輸出相手国となっている。中国向け輸出品目でもっとも大きいのは大豆である。大豆の中国向け輸出額は前年同期に4,200万ドルであっ たものが、今年は6億ドルにまで増加している。さらに、輸出増加に大きく貢献したのは鉄鋼関連製品である。鋼板は前年同期に450万ドルの輸出実績であっ たが、03年1月~5月には1億5,300万ドルまで増加し、鉄鋼半製品は前年同期比692.4%増の1億 1,300万ドルとなっている。この旺盛な鋼材需要は、世界中から外国企業が中国に進出し製造拠点としての活動をしていることに加えて、中国国内における 大規模なインフラ整備に支えられていると見られる。

    アルゼンチン向け輸出額は、前年同期比83.2%増の14億7,100万ドルと輸出相手国別では4位となっている。輸出増加が顕著な品目は、乗用車、鉄鉱 石で乗用車は同212.5%増の8,900万ドル、鉄鉱石は同66.9%増の7,000万ドルとなっている。乗用車の輸出については、地元紙の報道による と、フォルクスワーゲン、GMが輸出を活発化させている。なお、鉄鉱石の輸出増加については、アルゼンチンが米国の鉄鋼製品輸入制限の対象国に入っていな いことで、アルゼンチンから米国向け鉄鋼製品輸出が増加していることが要因と見られている。

    なお、新たな輸出先として注目を集めているのは、ロシア(前年同期比39.1%増、輸出相手国14位)、イラン(同167.4%増、17位)、インド(同 92.5%増、19位)などで、ロシアについては鶏肉、イランは大豆油、インドは原油などそれぞれ一次産品の輸出が中心となっている。

    イラク戦争の影響については、輸出先における在庫積み増しなどにより、ブラジルの輸出にプラスとなったとの見方が一般的である。中東地域はブラジルにとっ て鶏肉の主要輸出先であるが、03年第1四半期における中東向け鶏肉輸出は、金額で前年同期比36.9%増の1億 2,526万ドル、数量で同47.6%増の16万6,242トンとなっている。02年の鶏肉輸出額に占める中東地域のシェアは26.9%であったが、03 年第1四半期では33.7%に増加した。なお、イラク戦争との因果関係は定かではないが、イラン向け大豆油の輸出が大幅に増加しており、03年1~5月に は前年同期比309.9%増の2億1,581万ドルとなっている。

    なお、SARSについては、ブラジルの貿易には殆ど影響は見られないものの、中国における展示会・商談に伴う訪中が延期されるなど、人の往来延期や商談キャンセルなどの影響が指摘されている。

    2.国内経済の停滞でほぼ前年並みに留まった輸入

    2003 年1月~5月における輸入は、前年同期比0.1%増の190億8,700万ドルとなった。輸入が前年並みに留まった要因は、今年3月までのレアル安に加え て、政府の緊縮財政、高金利等による国内経済の停滞が挙げられる。ブラジルの基準金利に当たるSELIC金利は、昨年後半よりインフレ抑制を念頭に高水準 に維持されている。最近のインフレ低下傾向を受けて中央銀行は6月の通貨審議会(COPOM)で、金利を 0.5ポイント引き下げ26.0%に設定したが、産業界では引き下げ幅が不十分であるとしている。ブラジル地理統計院(IBGE)のデータでは、03年1 月~5月の工業生産指数は前年同期比で0.6%増と低成長を記録している。なお、同生産指数を財別に見ると、中間財が2.2%増となる一方で、資本財が 1.3%減、耐久消費財が4.9%減、非耐久消費財が3.8%減となっている。

    <品目別分析>
    輸入を財別に見ると、工業生産指数に連動して資本財と消費財の輸入が減少した一方、輸入全体の約半分を占める一次産品および中間財の輸入が増加した。

    資 本財の輸入額は前年同期比16.6%減の41億3,100万ドル、消費財は同8.9%減の21億9,900万ドルと減少し、一次産品および中間財の輸入は 前年同期比7.1%増の100億3,100万ドルと増加した。資本財の中でも減少が顕著であったのは主要品目である工業機械(前年同期比19.4%減)、 事務用機器(同14.4%減)で、企業が設備投資を控えている様子が伺える。また、消費財については食料品(前年同期比21.8%減)、家具など室内設備 (同20.7%減)、乗用車(同11.8%減)などが減少しており、景気低迷により消費者による購買意欲も低下している。ちなみに、失業率は今年に入って 5ヵ月連続で悪化しており、5月時点の失業率は12.8%となっている。一方、輸入額全体の52.6%を占める一次産品および中間財については、鉱物品が 前年同期比10.2%増となっているほか、食料(加工原料等)が同25.9%増、農業向けその他一次産品が同 30.5%増となっている。

    <輸入相手国別分析>
    国 別に見ると、米国、アルゼンチン、欧州各国からの輸入額が減少しているのに対し、中国からの輸入額が増加している。米国はブラジルにとって第1の輸入相手 国であるが、前年同期比13.5%減の37億2,100万ドルとなった。輸入減少が大きかった品目は、モーター・発電・変圧器・同部品(前年同期比 14.6%減)、航空機用モーター・タービン(同33.9%減)、集積回路(同 35.4%減)となっている。

    主 要国の中でも顕著に輸入が増加した中国からの輸入額は前年同期比39.0%増の7億3,600万ドルとなった。最も大きな輸入品目はコークスで、前年同期 比261.6%増の6,800万ドルであった。次に送信・受信機器部品で、同79.6%増の6,600万ドル、石炭が同55.3%増の4,800万ドルと 続く。そのほかにも繊維製品(布)(同192.8%増)、液晶ディスプレイ(同107.1%増)、集積回路(同 278.9%増)の輸入増加が顕著であった。これは中国に拠点を持つ多国籍企業が輸入の主体となっている。

    3.ほぼ前年並みとなった対日貿易

    2003年1月~5月における対日輸出額は、前年同期比6.7%増の8億1,700万ドル、輸入額は同5.9%減の9億4,600万ドルとなり、対日貿易 額は前年同期比0.4%減の17億6,300万ドルとなった。なお、同期間における国別順位は、輸出で前年(6 位)より順位を下げ8位、輸入で前年と同じ4位であった。

    輸出をみると、主要品目である鉄鉱石が前年同期比14.7%増の1億7,800万ドルとなった他、アルミニウムも同57.1%増の1億5,400万ドルと 増加した。一方、鶏肉については同33.4%減の6,400万ドルとなっているが、これは輸出単価の減少に伴うもので、輸出量は13.6%増となってい る。なお鶏肉については、今年5月に日本が中国の鳥インフルエンザによる家禽肉輸入禁止措置をとったことで、年後半にかけてブラジルからの輸出額が増加す ることが期待されている。なお、同期間に大幅な輸出増加となった品目は、炭化水素のハロゲン誘導体(主にジクロロエタン、ポリ塩化ビニル原料)があげら れ、前年同期比196.3%増の1,400万ドルとなった。この輸出増加は数量よりも価格上昇によるものである。

    輸入は主要品目では増加しているが、その他の品目での減少率が大きかった。主要品目では自動車部品が前年同期比 58.5%増の8,100万ドル、ベアリング、歯車および同部品が同23.8%増の5,000万ドル、集積回路が同9.9%増の4,900万ドルとなって いる。一方で完成車については同33.8%減の2,600万ドルとなった。

    4.FTAに関する交渉状況

    ブラジルは米州自由貿易協定(FTAA)、メルコスール-EUにおけるFTAについて活発な交渉を展開している。まず、FTAAに関しては05年1月まで の交渉完了を目指しており、共同議長となっているブラジル、米国ともに期限内の交渉完了に向けた調整を現在行っている。

    FTAA 交渉では、ブラジルが米国に対する農産物の市場アクセス(砂糖、オレンジジュース等)、農業補助金、アンチダンピング、セーフガード適用などの問題を取り 上げている一方で、米国もブラジルにとってセンシティブな投資規則、サービス分野の自由化、政府調達、知的財産所有権の問題などを取り上げ、有利な条件を 互いに引き出そうとしている。

    ブラジル側は今年 5月末に、テーマによって、メルコスール-米国による4対1、FTAA枠内、WTOの3つの方法による交渉を米国に提案した。ブラジルは自国にとってセン シティブな問題を、FTAAとは切り離してWTO交渉の場に委ね、FTAAの交渉を進めたい意向であるが、今のところ米国はブラジル側の提案に否定的な態 度を取っている。なお、WTOについては第5回閣僚会合が今年9月10日~14日にメキシコのカンクンで、FTAAについては閣僚会合が今年11月17 日~21日に米国マイアミで開催される予定である。11月のマイアミ会合がFTAA交渉の期限内終結を図る上で両国の利害を調整するデッドラインと見られ ており、両国とも同会合までに、互いのセンシティブな分野について譲歩し合うべく交渉をするのではと見られている。

    一方、メルコスール-EUのFTA交渉は、06年1月を目処とした協定発効に向けた話合いが進められている。現在、メルコスール、EU双方が提示した関税 撤廃スケジュールおよび品目リストを検証し、改善要望事項を互いに出しあっている段階。新聞報道によれば、EU はメルコスールが提示した案に対して、メルコスール側の関税撤廃スケジュールが非常に遅い点、政府調達自由化リストが提示されなかった点、サービス、投資 に関する提案が最小限に留められている点を指摘し改善を要求している。

    な お、EU側は、メルコスール側の政府調達自由化リストの提出を促すために、EU側の政府調達自由化案を提示し交渉進捗を促そうとしている。一方のメルコ スール側は、欧州側が提示している関税撤廃品目のリストは、現行の税率が既に低い品目が中心である点を指摘し、砂糖、牛肉、タバコ、小麦などをリストに追 加するよう求めている他、繊維製品分野でもさらに自由化を進めるよう要求しているという。なお、EUとの間では自動車分野に関する自由化交渉も始めようと しており、今年6月にアスンシオンで開催された第10回2地域交渉委員会(CNB)で、ブラジル自動車工業会(Anfavea)と欧州の自動車メーカーが 貿易自由化に向けた会合を持っている。

    5.今後の貿易見通し

    2003年後半の貿易見通しは、為替と国内金利の動向が大きな鍵となるだろう。為替については03年2月に1ドル =3.67レアルを記録して以降、米国のイラク攻撃開始を契機として6月末には2.9レアルを割り込むまでにレアル高が進んでいる。政府は3.0レアル前 後の為替水準であれば輸出に大きな影響はないとみているが、レアル高の影響は年後半にかけて出てくると見られる。それというのも年前半においてはレアル高 になっても3月時点までの輸出契約には影響が見られなかったことと、それ以降でも輸出企業は顧客を失わないようにするため価格を据え置いてきたところが多 い。そのため、今後さらにレアル高が続けば輸出価格の値上げに踏み切るものと見られ、輸出にブレーキをかける要因となりうる。政府も年後半にかけて輸出が 減速することを認めており、6月、7月の1日あたり輸出額からも減速傾向が明らかとなっている。

    一 方、輸入に関しては、国内の高金利が年後半にかけてどの程度引き下げられるかが鍵と見られる。ブラジル国内の製造業は、03年前半は輸出により支えられて きた。第1四半期における実質GDP成長率は前年同期比2.0%増となったが、需要要素別に見ると、GDP成長を牽引したのは財、サービスの輸出で、前年 同期比20.2%増の成長を記録している。その点今後の輸出については、レアル高の状況が続いていることに加えて、現状以上の輸出増加余地は少ないと見ら れる。その場合、国内における消費回復が輸入を大きく左右することになる。03年前半を見る限り資本財、消費財の輸入が減少しており国内における景気低迷 を反映しているが、今後大幅な金利引下げが行われれば国内景気も上向くことが予想され、さらにレアル高の状況が続けば資本財、消費財の輸入も回復するもの と見られる。なお、パロッシ財務相は7月8日に今後の金利に関して年末までに20%~21%の水準まで下がるとの見通しを示している。

    03年1月に発足したルーラ政権は、当初抱かれていた経済政策面での不安を払拭し、前政権からの経済政策を踏襲することでマクロ経済指標を改善している。 03年1月~5月における公的セクターのプライマリー収支黒字(いわゆる政府の財政収支、金利支払い分を除く)は 369億8,000万レアル(132億714万ドル、1ドル=2.8レアル換算)と大幅な黒字を記録し、政府は昨年末IMFに約束した03年上半期の目標 黒字額345億レアルを既に達成した。この財政状況を好感してカントリーリスクも前年に比べて大幅に低下している。ただし、財政支出は年後半にかけて増加 する傾向にあり、むしろ年後半における財政状況を注視する必要がある。

    なお、予算企画省傘下の研究機関であるIPEAでは、2003年の貿易額について、輸出が662億ドル、輸入が490億ドルと予想(6月時点)しており、貿易収支は172億ドルの黒字と前年よりさらに貿易黒字が拡大するとしている。

    以上

    表1   ブラジルの主要商品別輸出入 (単位:100万ドル、%)

      2002年(1-6) 2003年(1-6) 2003年(1-6) 2003年(1-6)
      金額 金額 構成比 伸び率
    輸出総額(その他含む) 25,052 33,002 100.0 31.7
    一次産品 6,251 9,620 29.2 53.9
    大豆 874 2,171 6.6 148.1
    鉄鉱石 1,173 1,628 4.9 38.8
    大豆かす 687 1,072 3.3 56.2
    原油 511 989 3.0 93.6
    鶏肉 566 742 2.3 31.0
    半製品 3,426 4,967 15.1 45.0
    パルプ 412 840 2.5 103.6
    鉄鋼半製品 494 779 2.4 57.9
    436 507 1.5 16.3
    完成品 14,513 17,720 53.7 21.1
    乗用車 816 1,129 3.4 38.4
    航空機 1,019 925 2.8 △9.3
    自動車エンジン・部品 574 834 2.5 45.4
    742 771 2.3 3.9
    通信用機器・部品 844 766 2.3 △9.2
    自動車部品 553 678 2.1 22.5
    輸入総額 22,465 22,606 100.0 0.6

    資本財

    5,750 4,853 21.5 △15.6
    工業用設備機械 2,057 1,640 7.3 △20.3
    事務用機器 1,141 984 4.4 △13.8
    原材料・中間財 11,174 11,948 52.9 6.9
    化学薬品 3,583 3,617 16.0 1.0
    中間製品(部品) 1,791 1,952 8.6 9.0
    輸送機器部品 1,746 1,749 7.7 0.2
    鉱産品 1,523 1,683 7.5 10.6
    食料(原料等) 808 1,041 4.6 28.9
    消費財 2,852 2,614 11.6 △8.3
    非耐久消費財 1,663 1,461 6.5 △12.2
    医薬品 579 584 2.6 0.9
    食料品 575 451 2.0 △21.6
    耐久消費財 1,189 1,154 5.1 △3.0
    乗用車 428 357 1.6 △16.6
    燃料及び潤滑油 2,688 3,191 14.1 18.7

    出所:開発商工省貿易局

    表2  ブラジルの主要国・地域別輸出入(単位:100万ドル、%)

      2002年(1-6) 2003年(1-6) 2003年(1-6) 2003年(1-6)
      金額 金額 構成比 伸び率
    輸出総額 25,052 33,002 100.0 31.7
    米国 6,864 8,100 24.5 18.0
    中国 662 2,161 6.6 226.2
    オランダ 1,254 1,866 5.7 48.8
    アルゼンチン 969 1,843 5.6 90.2
    ドイツ 1,006 1,495 4.5 48.6
    メキシコ 1,000 1,210 3.7 21.0
    イタリア 785 1,054 3.2 34.3
    日本 945 1,039 3.2 10.0
    ベルギー・ルクセンブルグ 836 878 2.7 5.1
    チリ 660 857 2.6 30.0
    英国 757 829 2.5 9.6
    フランス 612 784 2.4 28.0
    輸入総額 22,465 22,606 100.0 0.6
    米国 4,992 4,390 19.4 △12.1
    アルゼンチン 2,451 2,344 10.4 △4.4
    ドイツ 2,109 2,095 9.3 △0.7
    日本 1,158 1,112 4.9 △3.9
    中国 639 902 4.0 41.1
    イタリア 873 875 3.9 0.2
    フランス 902 856 3.8 △5.1
    ナイジエリア 641 669 3.0 4.3
    英国 605 605 2.7 0.1
    韓国 544 553 2.5 1.7
    アルジエリア 337 509 2.3 51.0
    スペイン 492 472 2.1 △4.2

    出所:開発商工省貿易局

    表3  ブラジルの対日主要品目別貿易(単位:100万ドル、%)

    輸出 2002年(1-6) 2003年(1-6) 2003年(1-6) 2003年(1-6)
      金額 金額 構成比 伸び率
    鉄鉱石 170 212 20.4 24.7
    アルミニウム 127 200 19.2 57.8
    鶏肉 108 81 7.8 △24.4
    パルプ 38 57 5.5 49.4
    鉄合金 54 56 5.4 4.0
    コーヒー豆 38 52 5.0 36.0
    大豆 32 47 4.5 47.2
    オレンジジュース(冷凍) 40 36 3.5 △ 9.1
    タバコ・同くず 32 22 2.1 △31.5
    薪材 19 21 2.0 7.6
    その他 287 255 24.5 11.2
    合計 945 1,039 100.0 10.0
    輸入 2002年(1-6) 2003年(1-6) 2003年(1-6) 2003年(1-6)
      金額 金額 構成比 伸び率
    自動車部品 61 94 8.5 53.0
    集積回路 53 60 5.4 11.4
    ベアリング及び歯車・同部品 47 59 5.3 25.3
    自動車用エンジン及び同部品 44 52 4.7 17.5
    ポンプ、コンプレッサー、換気装置、同部品 37 36 3.2 △4.7
    測定及び点検機器・装置 27 35 3.1 29.3
    送信・受信用機器・部品 29 32 2.9 9.0
    2輪用部品 23 32 2.9 36.3
    乗用車 47 31 2.8 △34.7
    自動データ-処理機部品 30 24 2.2 △19.8
    その他 757 658 59.2 △13.1
    合計 1,158 1,112 100.0 △3.9

    出所:開発商工貿易局

  • 化学部会 


    新井部会長

     

    司会 次は化学品部会ですが、化学品部会は品目が多いので非常にばらつきがあるのではないかと思います。新井さんお願いします。

    イラク戦争、SARSが大きく影響した化学品貿易

    新井 いま金融、コンサルタント、貿易の3部会ともマクロな話が中心でしたが、私ども化学部会は内需型、国内消費型の産業ということで、委員長の方から今ご説明ありましたように、いろいろ問題が業界毎にでています。
    概況はイラク戦争、SARS問題が、全体的にはあまり大きい影響ではないと言うのですが、基礎化学、石化製品、有機化学品の輸出量に個別的に見ますと、化 学品業界では輸出入に大きく影響を与えた。インフレ抑制策に伴う高金利政策による消費の落ち込みで、消費関連の製品、樹脂加工、製靴、自動車産業の稼働率 低下となり、化学業界に影響を与えた。イラク戦争はベネズエラのゼネストと重なって、2月末に12年ぶりの約40ドル/バレルの原油価格の高騰を招き、米 国の石化市況が先高感という事で、ブラジル向けは、どちらかというと低価格地帯な訳ですが、価格が折り合わず輸入が停滞。これに当国の消費の後退、不況が 重なり、プラスチック、ゴムなどの需要減、輸入基礎原料の需要も減退と。

    アジア向け輸出は、割と相場で動くところもあって、SARS問題 から主要輸出市場である中国での需要の冷え込み、買い控え、先安感もあって輸入側の模様眺めとなり、輸送期間の長いブラジル品は臨機に価格に対応が出来な いと言うことで、大幅な落ち込みとなった。この意味では全体的には中国が伸びているようですが化学部会的に見ますと、中国向けは落ち込んだ。一方で、輸出 を引っ張った大豆は、こんな中にあって国際相場、レアル安に支えられて輸出好調が続き、農業関連の農薬、肥料の出荷は順調に推移した。

    1-樹脂加工業界は自動車、文房具向け好調

    2-写真フイルム低調

    3-接着剤、シール剤値上げたたる

    4-水処理は今後の集中購買制を懸念

    5-化粧品、スペイン、ポルトガルへ輸出

    6-飼料添加剤・農薬はドルベースで売上げ増

    7-家庭用殺虫剤は低調

    個別業界的に見ますと、●樹脂加工業界では輸出を積極的に展開した自動車向けメーカーは好調だった。それから事務・文房具関係は好調、一方で通信・家電・ 製薬業界は低調。また、過去順調に拡大してきた包装材・建築資材・日用雑貨などは、一般的な消費の減退をうけて低調だった。

    ●写真フィルム は1月こそ前年並みの小売販売量だったが、予想通りに全般的な消費の低迷を受けて、連続10%下回る状況が5月まで続いた。需要減による価格競合の激化、 レアル高に伴う値下げプレッシャー、新規参入メーカーの低価格による市場拡大策に最大手が過剰反応するなど重なって、上半期は前年比大幅なマイナスとなっ た。

    ●筆記用具業界ですね、高金利政策に伴う停滞を受けて国内小売部門は、前年比マイナス。プラスチック・薬品等の資材関連は原料価格の高止まりで、値上げが追い付かず採算を圧迫。輸入原料についてはレアル高でコスト低減には効果が若干あった。

    ● 一方、接着剤、シール剤業界は、国内調達・輸入原材料価格のレアル安などを要因とした高騰、コスト増を市場に転嫁できず、付加価値率減少の傾向が昨年後半 から続いている。で、また需要家である自動車業界の販売低迷でこれも落ち込み、大衆市場でも値上げしたことなどが影響して大幅な売り上げのマイナスが続い た。で、値上げしたにも関わらず、売り上げ的には前年並みを確保するのがやっと。

    ●それから水処理業界。これは、産業の設備投資に伴う業界 で、新規設備投資が抑制されていることもあり、新規客先の出現がほとんどなく、既存客先への販売攻勢で競争が激化。さらに日本、欧米で見られるような集中 購買制を大手グループが取り始めて、まあ、オール・オア・ナッシングに近い買い付け方法になってしまった。これが全体的な価格の圧力になっていますと。特 にいいましたのはこれが将来、他のグループに、いま言いましたのはブラスケムですけれども、ブラスケムのような所に続くグループが出てこないか危惧される ため。

    ●次ぎは化粧品業界。為替が安定している事は輸入業者にプラスであったが、ショッピングセンターなどを中心とした店頭販売は苦戦。と くにメモリアルデーの母の日、恋人の日の業界全体の売上げが振るわなかったのが、例年にない特徴だった。経済停滞を反映し、高級ブランド品から中級価格帯 商品へのシフトが進んだのと、進んだ一方で、輸出がブラジルからスペイン、ポルトガルが多いようですが、輸出は引き続き好調だった。おもしろいことに失業 者の増加で訪問販売従事者が増加、訪問販売での売り上げは伸びている。 それから一方で、いま問題になっています空港、港での税関スト等の影響で通関に支 障を生じて、製品輸入している高額品、ブランド品で販売機会損失が起こっていると言うことです。

    ●飼料添加剤・農薬その他ですが、農薬は昨 年、為替、経済変動が激しかった訳ですが、業界を挙げて流通在庫の調整を行ったこと、昨年後半のレアル安場面で大幅な値上げを実施し、そのレベルを未だ維 持している事もあってドルベースでみれば大幅なアップ。さらに冬、二期作目の冬作のとうもろこしも含め、大豆などの大型作物が輸出好調に支えられて順調で あったなどを反映して、上期は前年同期比のドルベースで業界売り上げは21%強のプラスになっています。ただし、消費不況もあって価格低迷の続く国内型の ジャガイモとか、トマトとかブドウなどを相手にしている果樹・園芸分野は在庫調整が進んでなく低迷が続いています。

    飼料添加剤は、コモディティー商品で、供給量により価格の上下があるものの、為替安に準じた高値で上期はそれなりの業績を上げられた。

    それから家庭用殺虫剤ですね。これは輸入原料の高騰を消費の低迷で価格に転嫁できず、なおかつ天候不順による不快害虫、蚊とかゴキブリの発生が少なくて売 り上げは低調だった。これにデングなんか突発的な発生も少なかったということで、これらの分野はちょっと低調だったと言うことです。

    農薬・肥料・飼料添加剤が下期好調期待

    下期の展望としては、好調なところから行きますと、やっぱり国際相場の堅調並びに輸出型の大豆を中心とした農業関連の農薬・肥料・飼料添加物は為替が安定 している状況では採算面も含め、前年を上回る予想です。ただ、化学業界全般としては、輸入原料を主体に国内販売型である事もあって、関係業界の業績回復、 金利低下、インフレ高進の抑制などによる消費刺激・拡大で為替安定による原料価格の低下がないと、下期も苦戦が続き前年比厳しいと予想する会社が大半でし た。ということで多分、時間内ですね(笑い)。

  • 化学部会(レポート)

    2003年上期回顧と下期展望

    部会長 新井 章夫
    2003年7月28日

    (1) 03年上期回顧

    概況:一般概況としては、イラク戦争・SARS問題が基礎石化製品・有機化学品の輸出入に大きく影響を与えた。また、インフレ抑制策に伴う高金利政策による消費の落ち込みで、消費関連の製品、樹脂加工・製靴・自動車産業の稼働率低下となり、化学業界に影響した。
    イ ラク戦争はベネズエラのゼネストと相まって原油価格高騰を招来し、2月末にはUS$39.99/Bblをつけ、米国石化市況が先高感となり、ブラジル向け は価格が折り合わず輸入が停滞、これに当国の消費の後退・不況が重なりプラスチック・ゴムなどの需要減、輸入基礎原料の需要も減退。
    アジア向け輸出は、SARS問題から主要輸出市場である中国での需要が冷え込み、買い控え、先安感もあり輸入側の模様眺めとなり、輸送期間の長いブラジル品は、対応に機動性がなく大幅な落ち込みとなった。
    こんな中にあって、大豆など国際相場、レアル安に支えられた輸出の好調が続く農業関連の農薬・肥料出荷は順調に推移した。

    1) 樹脂加工業界:輸出を積極的に展開した自動車向け、事務・文房具関係は好調だったが、通信・家電・製薬業界は低調。 また過去、順調に拡大してきた包装材・建築資材・日用雑貨などは、一般的な消費の減退を受け低調だった。

    2) フィルム業界:1月こそ前年並みの小売販売量だったが、期首に予想した通り、その後は、全般的な消費の減退を受け5月まで連続前年比を10%下回る状況が 続いた。 これに需要減による価格競合激化、レアル高に伴う値下げプレッシャー、新規参入メーカーの低価格による市場拡大策に最大手が過剰反応するなどが 重なり、6月は若干回復したものの、上半期は前年比大幅マイナスとなった。

    3) 筆記用具業界:高金利政策に伴う国内経済の停滞を受け、国内小売部門は前年比マイナスとなった。 またプラスチック・薬品等の資材関連は原料価格の高止まりとなっており、値上げが追いつかず採算を圧迫。但し上期のレアル高は、輸入原料コスト低減には効果があった。

    4) 接着剤・シール剤業界:国内調達・輸入原材料価格のレアル安などを要因とした高騰、コスト増を市場に価格転嫁出来ず付加価値率減少傾向が昨年後半から続い ている。 また主要需要家である自動車業界の販売停滞で生産台数が落ち込み、大衆市場でも、値上げしたことなども影響し、前年比月平均40%マイナスが続 いたため、値上げしたにも拘わらず、売上は前年比並み確保に留まった。

    5) 水処理業界:新規設備投資が抑制されていることもあり、新規客先の出現は殆どなく、既存客先への販売攻勢で競争が激化。 更に日本・欧米にみられるよう な、水処理薬品とプロセス薬品の集中購買をBraskenグループが傘下の4地域12工場を対象に入札方式で実施することを計画しており、商内確保のため 大幅な値下げ対応が余儀なくされている。 この傾向は他の国内グループにも波及することが危惧される。

    6) 化粧品業界:為替が安定していることは輸入業者にとりプラスであったが、ショッピングセンターなどを中心とした店頭販売は苦戦。 とくにメモリアルデーの 母の日、恋人の日の売上が業界全体で振るわなかったのが、例年にない特徴だった。 経済停滞を反映し高級ブランド品から中低価格帯商品へのシフトが進み、 また輸出も引き続き好調だった。 失業者の増加で、訪問販売従事者が増加し、訪問販売での売上は伸びている。 なお、空港・港での税関ストなどの影響で通 関に支障が生じ、製品輸入している高額品・ブランド品で販売機会損失が起こっている。

    7) 飼料添加剤・農薬その他:

    ①農薬:昨年業界を挙げて流通在庫調整を行ったこと、昨年後半のレアル安場面で大幅な値上げを実施しそのレベルを維持できたこ と、冬作コーンも含め大豆などの大型作物が輸出好調に支えられ順調であったことなどを反映し、上期は前年同期比ドルベースの業界売上は21%のプラスと なった。 但し消費不況などもあり、価格の低迷する果樹園芸分野は在庫調整が進んでいない。

    ②飼料添加剤:4社競合のコモディティー商品で、供給量により価格の上下はあるものの、上期は為替安に準じ高値で推移した

    ③家庭用殺虫剤:輸入原料の高騰を、消費の低迷で価格に転嫁できず、天候不順による不快害虫の発生が少なく、売上は低調だった。

    2) 03年下期の展望 :

    国際相場の堅調さ並びに輸出型の大豆を中心とした農業関連である農薬・肥料・飼
    料 添加物などは、為替が安定している状況では、採算面も含め前年を上回る予想。化学業界全般としては、輸入原料を主体に国内販売型であることもあり、関係業 界の業績回復、金利低下、インフレ昂進の抑制などによる、消費刺激・拡大ならびに為替安定による原料価格の低下がないと、下期も苦戦が続き、前年比厳しい 年になると予想する会社が大半となっている。

    以上

  • 機械金属部会 浅賀副部会長


    浅賀副部会長

     

    司会 次に機械金属部会。機械金属部会は、為替の影響も非常に大きかったのではないかと推測しておりますが、浅賀さんよろしくお願いします。

    ドルレートはR$3.2~3.5がのぞましい

    浅賀   今日は杉村部会長の代わりで、浅賀がやらせて頂きます。全体を3つに分けまして。一つ目は私ども7月の17日に、部会を開き意見交換をしました。その時 の模様、2つ目としては、皆さんからまとめて頂いたレポートを、ざっと大ぐくりで、どんなパターンに分かれてるかと言う風なパターン別の紹介。三つ目はた またま杉村さんの代役で出させて頂いたので、今回、鉄のことを少しお話しさせて頂きたいと思います。

    1番目ですが、我々の部会でも今ご 紹介ありましたような為替の問題、金利の問題、それから失業問題、これもう3点セットで、それぞれ話題が出ました。とくに為替につきましては特殊なもの、 高級なものを輸入している、そういう業態の方ですね。それから中国品とモロにわたりあっていると言う、そういう非常に低価格のものと勝負しているところ。 それから、設備をブラジルに移して、ブラジルを輸出基地にしようと言う、輸出依存型の戦略をとっておられるところは、今回の為替の変動に非常に皆さん厳し いやりくりをしていると。その中で、じゃあどのくらいのレートだったらいいのかと言うことで、みなさんの話しを聞きましたら、「ドル当たりR$2.85で も十分競争力がある」という会社も1社ございましたが、大体はやっぱりR$3.2から3.5ぐらいのところで落ち着いてくれないかなと、こう言うのが、我 々の部会のみなさんの感触でした。

    金利につきましては、いまご紹介あったように、耐久消費財の需要が低迷している事で、とくに車、家電 に関連業種、そういう部品を作っておられる企業さん、それから工具、測定機器、特にそういう組み立て産業に対していろいろ機械から部品とかサービス機器を 供給しているご商売はやはり需要の低迷で影響を受けている。

    失業問題については、直接ではないのですが、金利と同様に購買力の足を引っ 張っている事と、もう一つの失業対策がいまいち、具体的に出て来ないと言うことで、分かりやすい例で言えば、公共投資に伴う建設機械、こう言うものがやっ ぱりいま一つ弱いと言うことで余り明るい話しはなかったけれども、総じて言えば、「心配して始まったルーラ政権の腕前をもうちょっと見ようか。ここまでは 大きい破綻もなくよくやってくれてるんじゃないかな」と言う印象だと思います。

    業績では好調のパルプ、ポンプ業界

    2番 目、我々の業種を1、2、3と大体4分類して、「上期の実績と下期の展望」ですね。1番多いタイプは、上期に比較的強気の計画を立てて、まずまず計画通り 滑り出したが、下期は若干暗いと。やっぱり落ち込むと。これが1とします。2番目はちょっと、足元も苦しいけど下期もずっと苦しいと、こういう業界。3番 目は、実は上期下期ともに好調であると、あんまり多くないがこう言う業界もありました。4番目はあまりその下期、上期という、その短期で見るのではなくて 中期的に見れば、ほぼほぼ堅調に行くんじゃないか。まあ、このような4つに分類して、「まずまずだったけども下期はやっぱりちょっと厳しいな」と。これが 一番多かったけれども業種でいいますと、ベアリング、切削工具、測定機器、それから工業用のネジであるとかですね。私どもがウジミナスでやってる自動車用 鋼板の事業とか。これが「大体ほぼ順調にスタートしたけど下期はやっぱり厳しいな」という感じです。
    それから「足元もこの先も年内は厳しい な」、というのは重電関係、建設機械、電動工具。この辺がちょっと厳しいと。それで今あの、プラント屋さんの方で、「上期下期とも好調」と言ってるのはや はり、今までご紹介あった製紙パルプ、非常に設備投資意欲が強い。それからあと農業分野にくっついている、例えば我々のところで言うとポンプ、潅漑用のポ ンプ。こういう農業分野にリンクしている分野、製紙パルプ、この辺のところが、「実は上期も下期も意外といいんですよ」と言ってますから相当いいんだと思 います。

    設備投資意欲強い石油、製鉄プラント

    プラントで、少し息が長いもので言うと、上期下期というふうなバイオリズムで なくて、もうちょっと2、3年というスパンで見ていくとこでは3つほどありまして、将来的には電力不足問題は必ずあるだろうと言うことから、いずれ電力不 足を解消するための投資が出てくると言う、その分野に関係した電力関係のプラント。
    それから石油から石油化学。とくに100%自給率を目指して頑張ろうと言っている石油関連で、これも設備投資の意欲は強いということで、まあまあ堅調に推移してるんではないかと。
    それから比較的我々に近い鉱山、製鉄関連のプラント。これも世界的に言うと、中国が非常にブラックホール状態で、どんどん、鉱石も鋼材も輸入すると。ちょ うど規模的に言うと、私どもの君津製鉄所2、3個分の需要が毎年増えるという勢いで来ている。これが本当に2008年、2010年まで行くのかなという不 安はありながら、そういう勢いに引っ張られるかたちでブラジルも、リオ・ドーセ、それから製鉄会社にしても、設備投資が非常に活発であると。

    借金多いが輸出競争力強い鉄鋼各社

    それでは鉄の方の話しをさせて頂きます。ブラジルの鉄鋼業は非常に特徴がございまして、一言で言えば、世界の一流の下ぐらいの鉄鋼先進国といえると思いま す。規模は年間3000万トン、これはなかなかイメージ湧かないけれども、3000万トンと言うのは、ちょうど新日鉄1社と、ブラジル全体が同じぐらいな んですが、3000万トンの鋼材を作って国内は1700万、これ国民一人当たり大体100kgです。この100kgをブラジルはなかなか突破できないけれ ども。で、輸出が1300万から1400万トン。これ40数%の輸出比率で非常に競争力があって、なおかつ貿易志向型、輸出志向型の体質をもっている。
    それからもう一つの特徴は、借金が多いことですね。大手5社の借金の総額が約9000億円です。9000億円のうち80%が主にドル、外貨による借金で す。ですからレアルが安くなった時には、得意の輸出でガンガン稼ぐわけですが、背中にしょっている借金の負担がものすごく重たくなる。今度は逆になった場 合は、輸出がなかなかきつい。その代わり借金はその分軽くなると。そういう構造のなかで、為替が振れると非常にこうふれ幅が激しくて、なおかつ、この間み たいに頼みの輸出が、中国あたりが好調ですと最高なんですけれど、「それ輸出に行くぞ」といった時に、輸出の相手側が調子が悪かったりすると、゛これ往復 ビンタみたいになるわけで、借金も重たくなって輸出もできない、とそういう状態になる。

    ツバロンにおけるアセロールの戦略見習え

    ただし、先ほど、田中会頭からもお話がありましたように、ブラジルはとにかくツバロンにしても、ウジミナスにしても、ここまでなんとか世界の一流の下くら いまでは来ています。私もこの間ざっと見たところ、ウジミナスだけで今まで1500億円ぐらいの投資融資をして来ているんですね。やっと1500億円注ぎ 込んで、そこまで育てておいて、「ここから先」、というところで今もう一つ元気がないわけですね。だから本当はその、まさにツバロンにアセロールが入って 来たかのごとく、かなりいいところまで出来上がったところでパクッと食べちゃうっていうのが戦略的には非常にいいんですね。

    ちょうどセ ラードでやったと同じような事を、鉄鋼でいまやっている。一生懸命あるところまで、一人前まで行って、これからしっかり稼いで貰うという時に、もうこれ以 上ついて行けないって言う状況に今なりかかっています。ですから、私がここで言ってもなかなか社長は耳を傾けてくれません。先週も中国で投資するとかを 言ってましたけれども、どうしても大勢はそっちに行ってますので、なんとかこっちに目を向かせる方法を考えたいと言う風に思っております。以上です。

  • 機械金属部会(レポート)

    2003年上期の回顧と下期の展望

    全体

    2003年1月、ブラジルで初めてのPT主導によるルーラ政権がスタートした。
    機械金属部会の多くが本年度予算を作成するにあたり新政権による政治経済の混乱を不安要素として考慮した模様である。
    しかしながら新政権はポピュリズムに走ることなく予想以上に手堅い政治運営をした事で予想された混乱は起こらず、結果として昨年後半の行き過ぎたレアル安は是正された。
    レアル安の是正が余りに急激であった為に部会所属企業の中には少なからず戸惑いが感じられる。
    部会には中国品などとの厳しい価格競争にさらされている所や、レアル安を利用して先進国の生産設備を移管してブラジルを輸出基地化する所などあり、為替が成否を握る重要なファクターになっている。
    一部に為替がドル=2,85レアルでも競争力を維持できる企業はあるが望むべき為替レートは3,20レアル~3,50レアルが大方の意見であった。
    自社製品の競争力とは関係なく鉄鋼、紙パルプや畜農産物など為替の恩恵を受けて輸出拡大している産業にビジネスを展開している部会所属企業とっても為替は大きなファクターになっている。

    もう一つのファクターは金利である。特に耐久消費財の販売が高金利の為に低迷しており、新政権や中銀に対しては高金利維持政策への不満が多く見られた。自動車や家電産業を主要な顧客としている部品、工具、測定器メーカーでは不満が特に大きい。

    失業問題も一つのファクターとしての指摘があった。失業の増加は金利同様に購買力を落としている点で問題であるが、失業対策としての公共投資などが不十分で建設機械などの需要が低迷している事も問題である。

    同様に政権交代時によく起きる問題として今回も政府関係の投資や融資が停滞しているとの指摘もあった。

    しかしながら部会全体としては初めての左翼政権であるルーラ政府が大きな混乱もなく最初の半年を運営した事を評価している声が多いようである。

    鉄鋼

    鉄鋼業界全体の本年度計画は鋼材生産8,3%、販売で6%の伸びを前提にスタートした。とりわけ輸出(+9,3%)への期待が大きかった。
    し かしながら上期の実績では生産はほぼ計画通りであったものの販売は国内0,6%減、輸出も6,7%増にとどまった。主な要因としては国内建材向け需要低迷 と自動車向けの不振が大きい。特に第2四半期からの落ち込みが顕著であった。輸出に関しては世界経済の低迷による半製品の大幅な落ち込みの影響が大であっ た。
    従って業界全体では上期は在庫積み増しとなった。
    下期については国内販売が完全に調整局面入りすると考えられている。特に建築向けの長物の落ち込みが加速しそうである。全体的には年初計画を1~2%下方修正すると思われる。主力の鋼板は自動車生産の低迷もあり対上期6%程度の減は避けられない見込みとなっている。

    単位:千トン 2001年実績 2002年実績 2003年計画 2003年1-5
    粗鋼生産 26,717 29,604 31,023 12,736
    鋼材生産 25,790 27,873 29,330 11,924
    半製品 7,717 8,841 7,898 3,432
    製品 18,073 19,032 21,432 8,492
             

    国内販売

    15,692 15,832 16,400 6,281
    輸出 9,291 11,686 12,770 4,635
    半製品 6,365 7,779   2,902
    製品 2,926 3,907   1,733

     

    プラント

    プラント関係は電力業界向けのように1年前からは様変わりして落ち込んだ需要もあるが全体的には依然として好調を維持している。
    主要業界別には以下のとおり。

    製紙パルプ業界

    レアル安による輸出競争力up、パルプ市況の回復などで依然として各メーカーの増産意欲旺盛。BAHIA州の紙パルプ新工場計画や各メーカーの容量up、ボイラー新設などの案件が下期にも継続。

    電力業界

    2001 年の電力危機でスタートしたPPT発電プロジェクトは一部2002年で実施に移されたものがあるがその後は全くの凍結状態になり本年上期での進展はほぼゼ ロであった。巨大なドルベースでの設備投資金額をレアルベースでの電力料金では回収することが出来ない事と電力問題の危機感が薄れてきた為である。電力企 業の経営状態も深刻化している。
    しかしながら長期的にみれば電力不足問題は確実の再発すると考えられブラジル政府は何らかの対策を事前に打つ必要がある。そういう意味で少しづつではあるが必要な投資は再開されると期待している。

    石油化学業界

    新油田やガス田の発見があり自給率100%目指しての投資案件は堅調に推移している。ペトロブラスは十分な資金を持っていることから海上プラットフォームや石油精製設備などの案件は当分続くと考えられる。

    鉱山、製鉄業界

    昨年で大型案件は一巡したと考えられたが、中国が引っ張る形で世界的な鉄鋼需要は拡大しており、CVRDや鉄鋼各社は更なる設備増強計画を推進中。輸送、港湾設備なども堅調に動くと考えられる

    重電機器

    上 期は主な客先である電力業界の設備投資抑制が続いており大型のモーターや発電機の需要は低迷している。世界的な生産再編の動きがあり、その余波で日系メー カーのモーター工場の閉鎖が決まった。電力プラント案件は止まったままであるが送電所、変電所関係の案件には若干の動きが出始めた。従って変圧器などの需 要は堅調。
    政権交代時には政府資金ベースの新規案件は停滞する傾向にあるが今回も同様で本年上期は動かなかった。民間の電力会社は資金難に喘いでおり当面期待できない。
    一方石油関係はペトロブラスが極めて活発に拡大投資を行っておりガスタービンやコンプレッサーなどの案件が出ている。
    この業界は需要の低迷や為替の変動で競争が激化しておりビジネス環境は極めて厳しい。下期も大きな期待は出来ない見通し。

    尚、この業界からは日伯FTAの早期推進を望む意見が出された。

    建設機械

    主 要4建機(ブルドーザー、パワーショベル、ホイールローダー、モーターグレーダー)の2003年需要予測は対前年比で21%減でスタートした。政権の交替 年度は道路工事stopによる入札の中止などがあり選挙前に比べ大きく落ち込む事やルーラ新政権がどのような運営をするかの不安要素を織り込んだ上での予 測であった。
    上期の実績見通しは対前年では落ち込んだものの計画に対しては若干上回る事が出来た。新政権発足後の経済混乱が予想以下であった事がいい結果になったと見ている。しかしながら大胆な失業対策などの方針が見えない事から下期も需要の伸びは期待できない。
    輸出はイラク戦争や欧米経済の不透明感から上期は大幅減、下期は回復と見ていたが北米市場が予想以上の回復を見せており通年で販売台数は5%増となる見通しとなってきた。
    第2四半期からレアル高に振れている為、輸出の採算が悪化しており下期の採算は更に厳しい見込み。

    電動工具

    もともとホビー用の電動工具は8月の父の日と12月のクリスマスが販売のピークとなり上期は低調であるが、今上期はそれに加えて金利が高止まりしたことで販売は不調であった。量販店では長期の分割払いで売り込みを計るものの大きな成果は出ていない模様。
    一方プロフェッショナル用も民間の建設投資が落ち込んでいることや政権交代で公共投資も凍結状態にあるため上期の販売は低調であった。

    下 期は金利がどのように下がるか、公共投資がどのように復活するかなどがkeyとなる。ホビー用は父の日には間に合わないがクリスマスには消費の回復がある のではと期待している。プロフェッショナル用電動工具は大手の需要家である自動車産業が5月以降明らかに落ち込んでいる事も下期の見通しを悲観的にしてい る。
    また現地生産品は輸入品との価格競争になっており、第2四半期からのドル安傾向は現地生産品にとってはより厳しい市場条件となっている。

    汎用エンジン

    上 期は農業関係向けファイナンスが完全に停止してしまい汎用デイ―ゼルの需要は大きく落ち込んだ。又レアル安にも係わらず中国製の輸入は拡大し市場環境は悪 化した。上期後半のドル安への変化は更に中国製との価格差がつくことになり下期は大変厳しいと見ている。下期については顧客向けファイナンスの早期再開を 切望している。
    南米向け輸出はODA案件が激減し民間ベースの案件のみで需要は落ちている。

    市場規模は小さいがヨット用デイーゼル、パワーボート用デイーゼルも市場は横ばいか若干の落ち込みであった。これらの市場は景気の回復次第で拡大するものと期待している。

    ポンプ

    上 期のポンプ業界は昨年から続いている農業需要に支えられて繁忙であった。上期のポンプ需要は昨年同期比で10~15%増となった。ブラジル経済そのものは 下降気味で農業向け以外の需要は落ち込んでいる。上期の輸出向け受注は好調を維持し、下期の販売に寄与するが為替2,90レアル以下が続くようだと損益的 に苦しくなる。ブラジルでの生産能力を拡大し輸出を伸ばす方針を取っており、その為にも国産化率の向上を計っていく必要がある。
    下期は新政権による景気上昇は期待出来ないと見ているが、井戸ポンプは農業分野の成長継続や恒常的干ばつが背景にあり高い需要レベルを維持すると考えている。

    切削工具

    景 気全体は落ち込んだ感じがするが主要客先である自動車産業が上期は対前年同期で若干のプラスになったことや農業関係が堅調に推移したことで工具類の上期販 売は前年並みか若干下回る程度となった。金利の動向に左右されそうであるが自動車販売の回復が期待できないことから下期は上期より悪化しそうである。
    鉱山開発に依存する特殊鉱山工具は前年並み、鉄鋼線材や棒鋼の圧延用超硬ロールは前年比8%のマイナスとなった。
    日系メーカーでは為替による輸出競争力が増大した事で北米からの生産移管を実施し輸出による事業の拡大を進めているところもある。

    精密測定機器

    2003年の計画は政治などの不安定要素を加味して低めに設定したが上期は予想以上に良い結果となった。自動車をはじめ各産業での現調化の流れが続いている事とマナウス地区への新たな日系進出企業の進出による販売増が寄与している。
    今 年のFEIMAFI展示会でも昨年より具体的な引合いが増えており需要は拡大していると感じられる。しかしながら欧米系の競合メーカーの進出も盛んで競争 は激化してきている。アルゼンチン向け輸出は倍増したが、輸出全体ではレアル高に振れた事でレアルベースでの計画は未達成であった。
    下期は国内自動車関連の生産調整が避けられない状況にあり上期よりも厳しいとみている。
    輸出は欧州向け、北米向けとも回復が見られ、南米市場も昨年よりは確実に回復しているので下期の輸出には期待している。

    工業用ネジ

    今 年1月の計画では労働党政権が順調にすべり出したことからネジ需要の大手業界である自動車、家電が増産体制に入るものと考えていた。実際自動車、二輪は5 月頃までは対前年で上回っていたものの6月で急落した。家電は更にひどく、主要アイテムであるカラーTV、オーデイオ、電子レンジ、冷蔵庫などの1~4月 販売は対前年で15~25%落ち込んでいる。その結果、家電向けのネジの受注は月によっては前年比50%まで落ち込んでいる。失業の増大による先行不安感 や実質収入減などが原因として挙げられる。結果的に上期のネジ販売量は昨年同期比で約12%減であった。
    下期は自動車関係も減速傾向にあることや家電関係も大きくは改善されない事から上期より更に悪化すると見ている。クリスマス需要までに例えば金利が大幅に下がるなどの需要回復があることを期待している。

    軸受

    軸 受需要の4割を占める補修市場での在庫調整が昨年末で終了している事から本年上期の補修市場向け販売は回復すると見ていたがほぼ予想どおりであった。本年 上期の軸受の輸入統計も昨年同期比で10%以上の伸びとなっている。補修需要の重要な産業である鉄鋼、紙パルプ、農業、鉱山などが現在最も活発な生産を 行っている事も補修需要を押し上げている。但し補修用軸受は輸入品が主であるため、第1四半期と第2四半期で為替が大きく変動した事で市場は若干混乱し た。
    OEM市場も概ね好調なすべり出しであったが第2四半期から状況は明らかに悪化した。最も重要な自動車向けが自動車の国内販売の落ち込みが明 確になり取り入れ減につながった。絶好調であった二輪も伸び率の下方修正を行った。洗濯機や掃除機などの軸受を使用する家電も販売は低迷、モーターはメー カー間で格差があるが輸出で好調なメーカーも急激なレアル高で取り入れの調整があった。
    下期は補修市場を支えた上記の輸出好調産業もレアル高で勢いが弱まる可能性があり需要の拡大は期待できない。
    OEM関係は上期より更に悪化する傾向にある。
    し かしながら各企業は輸出促進や現調化を積極的に進めている為、ブラジル生産品に対しては新規の引合いが急増している。すぐに実需となってくるものばかりで はないがOEMの需要は潜在的に拡大傾向にあることは確かである。高金利の是正や失業率の改善などあれば第4四半期でも市場の回復はありえると期待してい る。

    以上

  • 繊維部会 福島部会長


    福島部会長

     

    司会  前半の最後に、繊維部会にお願いしたいと思いますが、繊維部会のほうは、原綿の先物輸出が非常に好調だっていう話しもあるようですが福島さん、よろしくお願いします(笑い)。

     

    気まぐれ天候に悩まされる繊維業界

    福島   先ほど赤阪総領事がおっしゃいましたように、気まぐれな天候にまさに影響を受ける繊維業界です(笑い)。上期、まあ下期も、そう予測ですが一言で申し上 げますと、繊維と言いましても幅が広いわけですが、おしなべて「原料高の製品安」。末端商品、小売りが非常に停滞、低迷して25%程度落ち込んでいると言 うこともあり、大変、苦悩の1年になるであろうと思っております。
    それと信用不安が大きく出ており、サイトも非常に長いのですが、信用不安、信 用問題が大きな課題になっております。この中で1社、1業種のみ、非常に好調であったと。これはファスナー関係で数量的には落ち込んだが、非常に高付加価 値商品の売れ行きが良くて、上期も2割程度の増収増益です。下期も2割程度の増収になるだろうと。

    原綿値上がり、玉不足のダブルパンチ

    素材別に申し上げたいと思いますが、まずブラジルで1番多く使われております綿糸の業界なんですが、昨年は、この原綿が85万トンの生産だったと言う事で す。これを全部糸にして織物にする、200gの例えばTシャツを作るとすれば、38億万枚ができると。全部Tシャツにするわけではありませんが、その程度 の生産原綿、綿の生産がありました。1番大きいのはマットグロット州で約5割が生産されております。
    値段は昨年の8月くらいから、この原綿価格 が非常に上がってきた。これレアル安とほぼ連動しておりまして、原綿価格が上がって参りました。今年の5月ぐらいまで、昨年の上期と比較して約2倍の原綿 相場になったと言う事です。レアル安で綿花農家あるいは綿商が、かなりの量を輸出に回した事も国内原綿不足の大きな原因です。
    我々、この原綿を買って糸にする業界ですが、糸代が2割上がった。糸代に転嫁したのが約4割程度で、おのずと会社は非常に厳しい状況になっております。

    寒中はセーター姿でゴルフして下さい

    更に、はやばやと冬物等の生産調整の実施をしたあと、7月中旬にかなり寒くなり、期待したんですが気まぐれ天候に災いされて、売れ行きが非常に悪かった。 PL(ゴルフ場)に行きますと、半袖、半ズボンでゴルフされる方がおられ、「見るとぞっとする」。なんとか少なくとも長袖、出来ればセーターぐらい着て頂 ければいいんではないかと思っております(笑い)。この糸関係は紡績糸の、糸関係は今申し上げたような事で、大変厳しい状況になっております。織物も同様 で、昨年後半から高インフレ、所得減少、高金利による月賦販売大幅減少が売れ行きを大きく落ち込ましておりまして、昨年と同様に裏切られる結果になったと 言う状況であります。
    関連します染色繊維、縫製業界も同様、売れ行き悪化に伴う落ち込みで大変悪い状況であります。

    次に羊毛関係。これはブラジルでは非常に少ないんですが、「原料高の製品安」という状況です。これは特に、オーストラリアの干ばつ、あるいは政治的な減産があり、原毛の高騰が続いたという状況であります。

    シルクの関係は、これも大半が日本向けの輸出、日本、あるいはヨーロッパ向けの輸出産業で、これも日本の不況、特に和装離れ、あるいは中国の進出を受けて 大変厳しい状況になっております。ブラジル国内では、9800トン程度の原料繭が出来てると。これは昨年対比9%減とみておりますが、原料は減少しており ます。ただ価格的には他の作物に、特に大豆等への作付け変更とがありまして、15%程度原料繭は上がっています。

    化合繊も同様、まあイラク問題等あり、石油相場の高騰を受けて、4月後半が最高値になっている。そういう状況のなかで、売れ行きは先ほど申し上げたような状況であります。

    信用不安で慎重な商売を - 下期

    2003年下期ですが、これもまず綿の関係は、先ほど申し上げたように店頭売りが非常に低調であること。更には、ブラジルの国内景気、国内経済が不安定要 素が多いと言うこと。このような状況のなかでの消費の好転は見込みにくいこと。あるいは、国内需要の大幅な回復が見込めないなかで、レアル高による輸出競 争力の大幅低下という環境を考えますと、国内での供給過剰は避けられないのではないかと考えております。
    更に、先ほど申し上げましたが、信用不安が大変多くなっており、これに伴う慎重な商売が求められる中で厳しい下期を迎えると考えております。
    羊毛、絹関係、化合繊も同様です。先ほど申し上げましたファスナー以外はすべて、「原料高の製品安」という状況のなかで、この残り5カ月を暮らして行かなければならない状況ですので、ぜひ長袖、セーターでよろしくお願いしたいと思います(笑い)。以上であります。

    司会  ここでコーヒーブレイクと行きたいと思います。後の方にコーヒーの用意が出来ております。5時から再開したいと思いますのでよろしくお願いします。

  • 繊維部会(レポート) 

    2003年上期の回顧と下期の展望

    (繊維及び衣料)

    《2003年上期の回顧》

    1.綿 糸

    1)原綿の動向
    2003年6月発表資料によれば、2002/03年の原綿生産量は、850,900㌧となり、昨年対111%の増産となった。
    綿作はMato Grosso が全体の50%を占め、ブラジル綿花の主産地の地位を不動のものとしているが、本年度は、Bahia州の伸長率が大きく(159%)、Goias州と並んで綿作の中心地を形成している。
    作柄については、成長期の降雨日数多く日照不足による成長不良気味の傾向に加え、摘取時期降雨が続いたためタイプは下落し上級品が非常に少なくなった。
    相場について指標となるEsalq指数の推移は次の通りである。
    2002年 12月 183.03
    2003年 1月 190.00
    2月 172.16
    3月 188.33
    4月 188.63
    5月 159.10
    6月 150.01

    今 年の相場動向は昨年度綿作の減反と生産性低下により大幅減収となったほか海外相場上昇と、レアル安による原綿輸出が増えたことにより原綿不足状態となって 年末には原綿相場が年初の2倍に跳ね上った後、今年に入ってからも原綿不足状態が続き相場は5月初めまで高値のまま推移した。
    原綿相場の国際的指標となるニューヨーク定期は、本年前半はイラク戦争、SARS問題などが大きな要因となり、2月のUS¢47を底に3月の最高値US¢60.02まで振幅の大きい展開となった。

    2)綿糸の動向

    昨 年後半の綿糸需給の堅調な推移を受け、本年上期の国内綿糸市況は、年初より各社値上げを模索するなど比較的順調なスタートであった。ところが2月に入る と、昨年、一昨年と続いた冬物商戦の不調から大手アパレル、ニッターは早々に冬物の生産調整を実施、綿糸の需要は一気に落ち込み始めた。特に本年上期は カード糸需要の落ち込みがひどく、3月後半になると、カード糸の需給バランスの失調は顕著になった。
    価格については年初より5-7%程度下落し、上期を通じて各社ともカード糸の販売に苦戦したといえる。一方コーマー糸についても大手伯紡績の生産調整と高水準な輸出成約にもかかわらず需給は引き締まらず、価格もカード糸につられる形で低水準であった.
    綿糸の太番手市場も同様の市況であり、公共料金の値上げや携帯電話の購入拡大等で、ブラ
    ジル国民の購買力が低下することは織り込み済みであったが、消費はそれ以上に大きな停滞を
    見せ、各社の在庫は積み上がってしまった。
    以上のように2003年上期の国内綿糸市況は不調に終わった昨年以上に、需要は低かったといえる。また、原料コストのアップを受けて採算的にも厳しい中で、相場の下落を受けるという極めて厳しいシーズンであった。
    一方、綿糸の輸出実績は以下のとおりである。
    2002年(1-05月) 8,891t(100) 18,843千ドル(100)
    2003年(1-05月)19,432t(219) 41,485千ドル(220)
    今 上期の綿糸輸出は、国内市況の不振と3月迄のレアル安を受け、各社共昨年後半と同様に輸出ドライブを掛けた事により、昨年同期比(1~5月)倍増となっ た。然しながら、4月以降は急速なるレアル高の為、原綿高と相俟って輸出採算は大幅に低下し、先物の輸出商談には慎重に成らざるを得ず、一時の勢いは失わ れた。

    3)綿織物の動向

    昨年末の小売販売は好調で店頭在庫は薄く年を越したので、年初から在庫補充の商いが活発に成る事を期待したが、昨年後半の高インフレによる所得減少、高金利による月賦販売減少の効果著しく小売の動きが急速に悪くなり、昨年と同様に裏切られる結果となった。
    また冬物の商いも気候にも味方されず引き続き景気が悪化した。唯一この状況を助けたのは為替レートの効果があった3月まで輸出が活発であった事であり、このお陰で何とか操短を免れたといえる。
    売値は昨年の著しいコストアップ分を20~25%の調整を後半で試みたが全部は出来ず一部残りを今年前半に達成した企業もあった。

    4)染色整理及び縫製業界
    染 色整理業界は織布業界と同様の市況と思われる。一方、縫製業界はハイクラスのCONFECCAO(既製服)は前年比横バイと健闘しているが、低価格の縫製 業者は過当競争でますます苦境に追い込まれ、支払延滞は続出、期日通りに払うのは僅少である。CAMISA(シャツ)の最大手のGUARARAPESも年 初より3回値下げしても好転せず生産調整中といわれる。

    5)小売業界
    冬物商戦も期待はずれで5、6月は前年比5%~10%ダウン、7月に入って到来した寒さにも売れ行きは一向に伸びず早々のLIQUIDACAOを実施中

    2.羊 毛
    ウー ルはオーストラリアの政治的減産と旱魃から大幅な供給不足となって高騰、かつレアル安と重なり、ブラジルにおける原毛価格は、一時咋対200%近くに達し た。しかし、3月からのレアル反騰は、業界のムードを一気に冷やし、機屋・ニッタ-は高値原糸在庫の処理に苦しみだし、打って変わったデフレムードと不景 気感の中、物流は低調となり上期は期待はずれの状態に終わった。 この間ウールの世界相場は、中国のSARS問題が終焉を迎えたことから、再び強含み気配 となり、ウールに愛着の薄いブラジルでは、価格をめぐって原糸メーカーと製織業界のにらみ合いが続いており商談は停滞している。

    3. 絹
    02/03農年期の製糸各社の原料繭取り入れは、6月でほヾ終了する。本農年期は、春先に主産地パラナ州で旱魃や霜害、夏には一部作柄不良などで、前年対比9%減の9,800t前後で終了の見込みである。
    繭価格は、レアル安要因で本農年期開始時から現在まで15%の上昇となっているが、生産者の養蚕意欲は他作物価格の値上がりのため、ここに来てやゝ低下気味である。
    このような状況の中で、製糸各社は、引き続く世界的な消費減退並びにデフレ傾向の中、ブラジル生糸・撚糸の輸出価格下落に歯止めが掛からない上、レアル高も相俟って、販売数量の80%以上を輸出に依存している製糸各社は、相変わらず苦しい製糸経営を余儀なくされている。
    平均輸出単価は、2003年1-3月実績で前年対比81%、4-6月見込みでも82%と、2001年以来続いている輸出価格の下落傾向に歯止めが掛かる気配は見られない。

    4.化合繊
    本 年1月までの半年間の世界相場は、あまり変化せずに推移してきた。しかし、イラク問題に端を発し、石油相場が世界的に高騰し、特に4月後半が上期としては 最も高値になった。参考までに、アジア相場の推移は下記の通り(1.4/1.5 dn staple Fiber C&F)
    2002年第3四半期   ¢77~85/kg
    2002年第4四半期   ¢78~85/kg
    2003年第1四半期   ¢82~112/kg
    2003年6月      ¢83~93/kg
    販売状況は、1月、2月はポリ原綿の値上げを見越しての需要家の買い先行が影響したのか販売量としては、好調となった。ルーラ新大統領就任間際ということもあり、明るさがあった。
    しかし、当国の常識から言うと、その反動は必ずあると言えるわけで、4月頃からは、今までの勢いは影をひそめ買い控え傾向に陥り、それが今も続いている。

    5.ファスナー
    2002年後半の原材料アップの影響とイラク戦争による欧米向衣料・靴の輸出の低迷、顧客の生産活動がスローに推移したことにより、低調に推移した。
    分野ごとに見ていくと、主力であるジーンズ分野は、年初、依然としてジーンズファッションが続くとの楽観的な見方であったが、一部予想以上の国内消費の低迷による顧客の在庫消化が遅れていることで前半は数量ベースでは低調に終わった。
    しかしながら、高級品として付加価値のあるニッケル色使いやアンティークゴールド色が大幅に伸び、金額面では数量をカバーする形となる。
    ジャケット分野は、冬の訪れと共に販売増となり、メタルファスナーが好調に推移。
    婦人子供服分野では、昨年来の通貨大幅切り下げにもかかわらず、安価輸入品の勢いは衰えず、依然厳しい状態が続く。

    《2003年下期の展望》
    1.綿 糸
    2003年の原綿需給についてConabは6月度次の様に予測発表した。
    (千トン)
    期首在庫 95.2 (政府在庫綿48.9千トンを含む)
    国内生産 850.8
    輸入 130.0
    供給合計 1,076.0
    消費 720.0
    輸出 185.0
    期末在庫 171.0
    綿糸の市況については、例年、下半期は綿紡業界にとってシーズンインを迎え、市況の回復を期待するものである。低調な上半期であった昨年も8月に入る と、春夏物の需要期待と綿糸先高観から、綿糸需要は一転して好転に向かった。昨年下期は原綿価格のアップもあり綿糸価格の水準は40%以上も上昇した。し かしながら、本年における国内綿糸市況については昨年とは違い、厳しくなる可能性が強い。すなわち、

    1)店頭での冬物衣料商戦は本年についても低調である。
    2)、ブラジル国内経済は不安定要因を多く抱え、消費の大幅な好転は見込みにくい。
    3)国内需要の大幅な回復が見込めない中、レアル高により輸出競争力は大幅に低下している。輸出の停滞と、一方で輸入品の流入懸念もあり、国内への供給量は過剰になるものと思われる。

    このように、不透明感の強い国内経済の中で、2003年下期の繊維業界は、各流通段階における信用不安が高まり、また同時に需給バランスの失調を招く可能性が強い。したがって、綿糸市況についても楽観的な予想はきわめて難しく、近年にない厳しいシーズンになると思われる。
    綿 織物及び衣料品も冬物の商い不調で店頭では既にセールが始まっているが、一般消費者の懐は寂しく販売が活発とは言えない。従って縫製メーカーは春夏物の原 料手当てを先延ばしにしており、立ち上がりが遅くなる気配が濃くなっている。いずれにしても業界の期待は金利の下降による景気回復に掛かっておりその動向 に神経を尖らせている。

    2.羊毛
    下期は在庫調整が一段落することから状態は好転するものと思われる。しかしながら市場規模の小さ梳毛紡績業界は為替動向が大きなポイントである。
    横編みセーターは、ブラジル人固有のファッション感覚にマッチした商品であることから、景気に浮揚感が出れば回復は早いと思われる。

    3.絹
    2003年下期に向けては、世界の絹業界をリードし価格決定権を持つ中国の動向が注目されるが、スタートした春蚕期の蚕作状況も豊作模様で、繭価格は昨年 比大幅安で取引されており、今年中の絹糸価格相場の回復は困難と予測され、ブラジル製糸は繭代の見直しを含めてコスト削減対策が急がれている。

    4.化合繊
    化合繊業界(短)も同じで、下期は政府主導による景気回復施策いかんにかかっている。
    こ こに来て、寒さが本格化したことは、プラス材料と言えるが、やはり不況脱出が基本である。為替については、輸出好調を背景にレアル高が進み、ドル建ての原 綿価格にとってはコスト引き下げ材料ながら、需要家からの販売価格調整要求も強く、更にアジア低価格商品の輸入も回復しており、いちがいにプラス要因とは 言えない。いずれにせよ、当業界は、下期も引き続き厳しい情勢が続くと思われる。

    5.ファスナー
    ブラジル政府のインフレ抑制による金利の高止まり政策は予想以上に消費の冷え込みをもたらしていると思われ、下半期政府が国内景気回復へどこまで力を注ぐか注目される。
    下 半期は、ジーンズ分野の如何によるが、そのジーンズは、昨年以上のジーンズファッションが到来するというのも考えづらく、一部輸出による販売増が期待でき る感もあるが、国内は政府の景気回復策が功を奏し消費動向の上向きがあったとしても、顧客の在庫過大を考えるとあまり販売増は見込めない厳しい市況と予想 する

    以上

  • 食品部会 渡辺部会長


    渡辺部会長

     

    司会 食品部会はインフレの収束によりデフレ懸念も出てきているかと思いますが、渡辺さんお願いします。

    ついに不況の波に襲われた食品業界

    渡辺  私もうこの部会長懇談会、これで多分2年半になりますので5回目ぐらい、多分一番古くなったのではないかと思います。
    2001年、2002年と「景気はよくない、よくない」と言われてきて、各部会長さんが「悪い悪い」というご報告をされているのを横目に、食品部会だけは 非常に堅調な売り上げを保っていたんですが、ついにといいますか、消費者の可処分所得の低下が顕著になりまして、ついに食品部会にまで不況の波が襲って来 た、というのが、今年上期の状況です。
    大豆などの輸出中心の農産物とか飼料用リジンとか、一部好調なものを除きますと、食品工業それからレスト ラン、完全に景気は停滞しており、去年まではコスト高はあったんですが、食品はとにかく売れてたわけです。これはご存じの通り、大きな耐久財に消費者が金 を使わなくなれば、その分デイリーの食品に金が流れて来たわけですが、今年は上期に売り上げ、つまりボリュームで前年比マイナスになっているところが結構 出ている。具体的には、冷凍食品とか乳製品は 15%程度の減少と記録されています。

    また、今お話しに出ました6月の生活必需品セットで すが、価格は2.86%の下落。要するにデフレにもう突入しているわけですが、内訳をみても食料品が3.59%の下落。去年の秋口は食料品が先頭を切って インフレを押し上げていたのが、今度は逆に食料品がデフレに走って来たというような状況になっております。

    98年に似てきた不景気

    私、98年の3月に赴任して来まして、あの年も経済成長率がマイナスになって非常に景気の悪い年だったわけですが、あの年は毎月のその月次の予定を達成す るのを“ひいひい”言いながら、「達成するかな」、25日頃になると「達成するかな」と悩んでおりました。この 2、3年は楽に達成したわけですが、その時を今思い出しながら、毎月の目標を見ているというような状況です。
    で、この「景気が悪い」という話し をもう少しさせて頂きますと、Hipermercadoと呼ばれる大型スーパー、この辺が非常に売り上げが低迷している。これはどういうことかと言います と、ブラジルの消費者は、ああいう所に行って、大きな買い物かごにポンボン品物をほうり込んで車で帰るという消費、購買形態を主流としていたのが、結局、 可処分所得の低下により、当用買いをするようになってきた。要するに、今日、明日必要な物だけを近くのスーパーに買いに行くという傾向が出てきておりま す。従って、中小スーパーはそれほど悪くないが、大型スーパーはいま非常に苦戦をしているという現状があります。また具体的には、我々進出企業共通のライ バルでありますNestle社とかが、空前絶後の大消費者キャンペーンを実施していると言う情報がありますが、にも関わらず、売り上げは前年比で減になっ ているという情報であります。

    お酒の若干増税でも仮需発生

    具体的に当社の状況ですが、お酒、この国はお酒に酒税はありませ んが、その代わり工業税(IPI)がかかります。これは大した金額ではないが、この7月15日に税務署の「ジアーリオ・オフィシアル」(官報)に出まし て、自動車関係は下がるかも知れないとのお話しですが、逆に我々のところは上がりました。出てすぐ「上げろ」という。これはブラジルのやり方ですが、具体 的には今までお酒1本当たり18センターボだったのが、56センターボに上がると。まあ、3倍にあたりますが、出荷価格にすると、4%程度の値上げで大勢 に影響はないだろうと見ておったんですが、今週に入り大きな仮需が発生しております。要するに、これぐらいの値上げでも消費者は、少しでも安い物を求め る、卸しや流通は買いだめに走ると言う状況で、やっぱり相当状況は悪いと判断しております。
    思い出しますのは、日本も相当不景気と言われており、5月1日に発泡酒の増税、たったの10円でしたが、やはり大きな仮需が発生して、その後5月、6月と全く低迷して1~6月で前年を割ったというのを一寸思い出しながら、いやな予感がしている今日このごろです。

    高くても売れる有機食品

    景気が悪い、売り上げが悪いと言うお話しをしましたが、もう一つ。ブラジル特有というか、一旦上がったコストが下がらないという状況があります。これは例 えば去年の9月とか10月、年末にかけて為替が理由で値上げを通告してきた原料資材の業者ですが、その後、為替がこれだけ安定して、レアル高になっている にも関わらず値下げはしません。特に価格が急騰している大豆とか小麦を原料として加工している食品業界は、かなり深刻なものがあります。先ほど新井さんの お話しでレアル高による値下げプレッシャーというのがありましたが、どうやらブラジルでは黙っていると絶対下げない。その代わりプレッシャーをかけると、 要するに「為替はもう安定しているんだから値段を少しでも下げないとおかしい」ということで、かなりプレッシャーをかけると、例えば「10%下げろ」とい うと3%ぐらいは下げて来る会社もあるようですので、どうもブラジルでは黙ってたら絶対にダメだな、というのが実感でございます。
    話しは飛びま すが、食品の流れとして、最近の傾向としては、有機食品が若干売れ始めている。みなさんご存じのようにヨーロッパではもうすごいブームで、有機食品、これ は高くてもガンガン売れているようですが、ブラジルでも最近有機に対する興味が出て来ているという情報が一つあります。まだ、その通常価格に2割程度増し において、売れ始めているとの話しですので、あんまり価格差があると、まだもう一つなのかなと言う気がしております。

    下期は我慢の食品業界

    下期の展望ですが、長期の金利とか食品にはあまり関係ないが、それでもやはり金利が今のペースのダウンですと、今年の下期もあまり期待は出来ないと見てお ります。工業界からあれだけ突き上げをくっているにも関わらず、中銀が金利を早いペースで下げて来ないのは一寸理解に苦しみますが、場合によってはブラジ ル経済への不安感から、また、ドル高へと言うふうに向かいますと、売れない、しかもまたコストが上がると言うことで悪いスパイラルに入ってくる、いやな予 想もしております。と言うことで下期もあまりいい見通しがなくて「我慢の食品業界、久々の我慢の年」という感じがしております。

    最後にルーラ政権の、政策の目玉でもありました、FOME ZERO政策(飢餓をゼロにする)。これは食品部会として何かいい話しがあるかなと若干期待はしておったんですが、全く期待はずれでして今のところ何のメリットもなし。ということで久々に暗い食品部会でした。

  • 食品部会(レポート) 

    2003年上期の回顧と同下期の展望

    ≪業界全体≫
    2003 年上期は、2002年度の下期とはうってかわり、金融市場は概ね堅調に推移した。米ドル為替はR$2.8~3.0前後、株価も13,000ポイントまで回 復、カントリーリスクは800~900ポイントのレンジで推移している。一方、Selic金利はインフレ抑制という大命題のもと、6月に0.5%下がった ものの、依然26%という高い水準にあり、景気の本格回復までには、まだまだ時間がかかりそうである。特に、ここ数ヶ月は消費者の可処分所得低下の影響が はっきりと現れてきており、比較的不況に強いと言われる食品業界も大きな影響を受けている。
    2003年下期も金融市場は引続き安定的に推移するも のと思われる。特に、インフレは強い沈静化のシグナル(一部インフレ指数ではデフレ状態)を発しており、基本的にはSelic金利は低下の方向に向うもの と思われる。但し、金利低下のスピードが鈍れば2003年下期中に、景況感の回復及び可処分所得の上昇が反映されるのは難しいと思わる。食品業界にとって も、厳しい下期となるであろう。

     

    ≪業界別動向≫

    【加工食品業界】

    1) 飲料

    2003年上期の醗 酵乳分野は、売上の鈍化を最小限に食いとめるべく、各社ともセールスキャンペーンなどを実施しているが、安売り攻勢の影響は大きく引続き厳しい状態が続い ている。また、栄養補助食飲料も同様厳しい状態となった。一方、ヨーグルト・デザート分野、及び豆乳分野は堅調に推移し、厳しい状況の中での明るい材料と なった。
    飲食材の販売においては、対米ドル為替が戻ってきたにも関わらず、原材料価格は高止まりを見せ、結果、国内中小食品加工メーカーも値上に 踏み切らざるを得ない状態となった。金額ベースで見れば、順調に推移していても、数量ベースでは各社とも予定達成が苦しい状況にあるようだ。
    2003 年下期は、中央銀行の金利引締め政策の緩和が、段階的にかつ早急に行われることを前提に、後半の景気回復に期待するところが大。金利を下げて可処分所得を 増やし、金の流れをよくしないと何も改善されない。一方、原材料価格の高止まりは暫くは続くものと思われ、このコスト高をいかに吸収するかが大きな課題と なる。コスト削減につとめることは当然のことながら、商品特性のアピールや消費の裾野拡大の為、きめの細かい顧客対応をおこなうことが重要となろう。

    2) 即席麺

    2003 年上期の総市場は、堅調な拡大を期待していたものの、各社の値上による店頭価格がUPしたこともあり、前年を僅かに上回った程度であった。心配された対米 ドル為替が4月以降ドル安基調に変わり、小麦粉の大半を輸入に頼っている各メーカーにとって、追い風が吹くものと思われたが一度上がったコストはすんなり と戻らないというブラジルの実態に悩まされている。
    2003年下期も、主要量販店の売上低迷や現在の経済環境を見る限り、従来のような堅調な拡大は期待できそうになく、苦しい局面となろう。この下期は、我慢と堅実な企業経営、また為替が読めない中でのコストダウンの取組を加速させる必要があろう。

    3)調味料

    国 内調味料市場は、2003年上期 41,500t、対前年比102%の微増となった。これは昨年10月頃からのインフレが食品分野にも影響を及ぼしてきていることを象徴している。一方、非 調味料分野では粉末ジュースが急成長を続けている。国内加工用途調味料市場は、対前年比106%と堅調に推移した。また、輸出市場はアルゼンチン、ベネズ エラの景気低迷の影響を受け、苦戦が続いているがアルゼンチンはようやく景気回復の兆しが見え始めている。飼料用アミノ酸(リジン)市場は、世界的な供給 タイト状況にあることから、高値で推移し順調な伸長を維持している。
    2003年下期においては、比較的厳しい事業環境が続くことが予想されるが、国内家庭用市場は堅調な成長を継続する見込みである。また、飼料用リジンに関しても、堅調な需要に支えられ、拡大基調を持続する見込みである。

     

    【農産・畜産】

    1)大豆・大豆粕

    2003 年の大豆生産数量は、前年生産量を20%強上回ると予想されており、5,000万トンを上回ることが確実視されている。一方、港湾サイロ・積込施設の CAPACITYが足りず、パラナグア港をはじめ、港での滞船問題が深刻となっている。また、伯国生産第一位のマットグロッソ州(約1,000万トン)で は収穫時に多量の雨が降り品質問題となっている。
    ブラジル国内、特に南部地域のGMO(遺伝子組替)大豆の混入問題は、本年に限り一時的に国内で の販売が認められることになった。しかし来年以降、GMO 大豆を扱う農家に対して、ペナルティーを課すという限定的な方針が政府より発表されており、9月以降の農家の植付けに注目が集まる。セラード地域では、更 なる開墾が進められており2003-2004年クロップは、今年を更に上回る生産予想となっている。

    2) ブロイラー

    2003 年当初のブラジル産ブロイラー予想生産量は7.9百万トン(前年7.4百万トン)であった。しかし、世界的な市況低迷により雛の生産を抑える傾向がでて、 上半期は年間予想の半分にも満たない3.7百万トン程度にとどまる見込み。一方、輸出は1~5月で757千トン(前年529千トン)と順調に推移してい る。これは、ロシアが5月輸入分から輸入Quotaを設定すること、EUが8月15日輸入分から輸入税を変更すること(塩分2%以上:15%、塩分2%未 満:75%、現行はいずれも15%)による駆け込み輸出も一因と考えられる。
    中国で鶏インフルエンザが発生したことにより、本年6月初めから中国 産ブロイラーの対日輸出が禁止となっており、2003年下期は、ブラジルからの輸出にドライブがかかることが予想される。東欧への輸出も引続き順調である こと、ブラジル国内需要も堅調の見込み等から、雛の生産量が増加傾向にあり、通年の生産量は年初予想の7.9百万トンに達すると見られている。

    3)コーヒー

    2003 年上期のコーヒー生豆輸出量は、2002~2003年クロップ(2002年7月~2003年6月)の歴史的な豊作や昨年来のレアル安による価格競争力等に より、11.83百万袋と前年同期比10%増の伸びを見せた。金額面ではUS$541百万と前年同期比30%増となった。国際相場は引続き低迷が続いてい るが、国内原料相場は急回復し、レアルベースで前年の2~2.5倍となっている。2003~2004年産クロップは裏作の年度にあたることから、生産量は 前年度比35%減の 3,360万袋に減少すると見られている。従って、輸出量も2003年下期は、前年を下回ることが予想され、通年では昨年度過去最高を記録した25.45 百万袋をやや下回るものと見られている。一方、このような減産予想にもかかわらずニューヨーク定期市場の指標価格(先物)は、世界的な供給過剰感が依然と して拭えないこと、またブラジルの2004~2005年クロップが昨年(2002~2003年)を越える大豊作になる可能性があることから、回復の兆しを 見せておらず、上値の重い展開となっている。

    以上

  • 電気電子部会 瀬山部会長


    瀬山部会長

     

    司会  次に電気電子部会ですが、電気電子業界は2001年のような電力危機の再現か、と言われる内需不振の話しもありますが瀬山さん、よろしくお願いします。

    上期はなべて20%前後の減

    瀬山   いま渡辺さんの話しをお伺いして、前回ここへ座って渡辺さんところがものすごく良くて、で、家計のお金がだいぶ食品にまわって電気にまわって来ない、と ひがんだ記憶があるんですが、同じ穴の方へ入って来られたようで、喜んでいい筈がなくて、「同業相哀れむの状況」かな、と。

    電気電子部会 の報告としては「家電業界の実需の動き」、会員各社の「上期の実績並びに下期の展望」アンケートまとめのご報告、それから3点目は「業界の上期の特記事 項」と三つの観点から報告させて頂きます。家電業界の動きは新聞その他に報道され、ご承知とは思いますが、いま遠藤さんの方からお話ありました通り、 2001年の電力危機と同じレベルの実需のダウンがあります。前年同期比という見方をしますと台数でカラーテレビで80%、音響機器で90%、あとは電子 レンジ84%。それから冷蔵庫、洗濯機、これは日系会員企業はありませんが、やはり78%、84%、軒並み前年同期比では台数で20%前後、業界自体が シュリンクをしているというのがこの上期であります。ちなみに電力問題、2001年6月に起こったと思いますが、その以前の1-6月と比べても、やはり同 じように20%前後落ちており、非常に厳しい市場環境といえると思います。

    販売伸びるDVDと携帯電話

    その中で一つ特筆す べきは、デジタルビデオディスクという映像をディスクで見るDVDという機器。これがビデオからDVDの機器と言うことで、中南米並びにその他の市場と比 べても非常に早くビデオからDVDに展開をしているのが一つ、ブラジルの電子機器市場の特徴です。これは何故かと言いますと、元々ブラジルは我々にとって 寂しいんですが、録画文化が残念ながら非常に少ない市場です。映画ソフトを再生で見るのはDVDで見た方がきれい、またDVDの映画タイトルが豊富。新着 の上期のタイトル数を見ましても、完全にDVDで出るタイトル数が多かったり、レンタルされるものも、6対4でDVD。ビデオが減ってDVDが増え、いま 7対3でDVDの市場になっているのが、一つ家電業界の特徴です。

    もう一つ。家電という切り口ではないが、携帯電話の生産がブラジルで非 常に伸びております。これは台数で前年比3割から5割。国内市場はご覧のような状況で、そんなに伸びている訳ではなくて、輸出向けで非常に携帯端末機器の 生産メーカーさん好調です。主な輸出先は米国です。これが非常に厳しい我々の業界状況と言うことです。

    そのような業界の中で、私どもの商 工会議所会員日系各社の動向ですが、我々の部会の中も四つのグループに分けられるかと思います。家電耐久消費財、二番目が電子部品関係、三番目が通信・電 力・産業機器、四番目が精密事務機器とグループ分けが出来るかと思うんですが、その各社の上期の実績を見て参りますと、やはり市場が非常に悪い、それから 価格ダウン。競争が激しい中で価格ダウンを迫られると言う中で、前年同期比USドルベース販売で見ますと、家電関係でほぼ横ばいからドルで見ると少し上 回っているかなと。電子部品は80%から110%。通信・電力産業は、業界の通信キャリアの投資抑制とか、非常に業界特性があり一概に言えないが、前年同 期比ドルベースで4割から8割と非常に厳しい状況です。また精密事務機器もほぼ100%前後で、これは企業投資がない中で市場は非常に厳しい状況でありま す。

    「よかった」は皆無 - アンケート結果

    それぞれの企業が業績を、自ら上期をどう評価したかですが、「よかった」とか 「大変よかった」は残念ながら今回ゼロです。50%が「悪かった」。50%が「計画通り」ということで、私ちょっと引っかかったもんですから、「計画通 り」とお答え頂いたところにヒアリングしましたら、「計画通り悪かった」(笑い)と言う事でありまして、おしなべて言いますと、やはり七三(ひちさん)ぐ らいで「悪かった」というのが、残念ながら電気電子機器会員企業の状況であります。

    下期ですが、やはり経営努力をして売りの確保、市場が 悪い中で何とか売りを確保したいと言うこと。その中で新しい商品、モデルの導入、それから売り先の拡大、それで各社共通していますのが、やはりこの時期で すので在庫圧縮。要は少ない資金で事業が運営できるようにと言うところで動かしておられる。上期申し遅れましたが、どこも投資は合理化投資のみで、積極的 な投資は残念ながら出来ておらないと。下期の販売も前年同期比でドルで見ますと家電でほぼ横ばいを目指すと。電子部品さんでは6割から一番良くて100% 前年並み。通信・電力・産業機器さんにおいては5割から6割。それから精密事務機器さんにおいてはほぼ横ばいを目指しますと言うことです。

    それから一部会員企業の中で、複数企業ですが、この機会に根本的な事業のあり方の見直し、またブラジル・ビジネス・モデルの転換を迫られて非常に深刻な状 況と言うところも伺えるかと思います。政治経済動向に関する皆さんの見解は共通しています。上期、国家経営としては予想以上の安定国家経営がなされた、景 気が犠牲になったと。我々の業界は犠牲になっておると言う見解です。

    下期は、景気の回復を期待するが金利引き下げだけではやや弱い。景気 刺激策が何か出ないのかと。政治不安、いろんな要素が拡大してきて国内でのもろもろのスト、それから海外でのネガティブ評価などを危惧しておられると言う ことです。これが会員各社の上期の業績状況並びに下期への展望であります。

    • マナウスに注意を払ってくれる新政府
    • 気になる独自のデジタルテレビ放送方式
      採用運動と欧州勢の攻勢
    • エザメ誌の企業評価でトップの日系企業もある

    三つ目に我々業界の上期の特記事項をご報告します。

    ルーラ政権が発足したわけで、我々の業界とフルラン商工開発大臣との接点など通じて感じます事は、もちろん、大臣自体も企業家、実務家で、現場・現物、要 は非常に実務的である。それから企業の活動に対する理解は非常にある。この1~6月を見ますと、非常に精力的に、我々の工場、また我々の実情視察には動い て貰らえたかなと。それと同じような私ども会員企業の生産基地がございますアマゾナス州マナウスにも、ブラガさんという新知事さんが発足し、企画関係では 民間企業の経験者が採用されてます。マナウスは恩典地域ということで、我々進出しておるわけですが、過去の政権におきまして、同じ内容の事業をしておりま しても7つも8つも恩典のレベル差がありました。その辺を会員企業も含めて、業界としてその辺の是正を声を掛けたところ、やはり公正・公平な恩典という競 争条件の正常化と言うことについて非常に積極的に動いており、成果も具体的に出てきておると思います。

    二つ目の新政権の特徴は、部品産 業、中間財産業、我々の電子電気機器につきましても、この辺のところの恩典を増やして、要は業界内での付加価値増についての取り組みを強化したいと言うこ とで、連邦ならびに州政府の方で、恩典の公平化並びに今申し上げたような分野での恩典強化の取り組みが進み、期待されておるところです。
    それから、マナウス、アマゾンと言うことで行きますと、2013年まで実は恩典期限がございますが、具体的に今、2023年まで恩典延長の動きがスタートしております。

    二つ目の関連特記事項として、話題となっている「デジタルテレビの放送方式」の決定が、前政権から今政権に先送りされました。前政権時代2001年の後半 ならびに2002年の前半あたりに、日本の総務省ならびにNHK、また我々民間も一体となり、日本方式についてブラジル政府、ならびに放送局側へ技術的な 特性報告等行われましたが、新政権になってローカルメーカー、これあのグラジエンテという会社なんですが、これが通信省等へ働きかけて、ブラジル独自方式 という動きをかけております。これにつきまして私ども業界のなかでも、実はブラジルはカラーテレビの送信方式もPAL-Mで、世界で唯一の送信方式。これ が業界ならびに国内一般消費者にどれだけメリットがあったのかですが、結論はなかったと言う事がはっきりしているにも関わらず、またデジタル放送方式でブ ラジル独自かと言う事で、一つ大きなクエスチョンマークがついております。これに関連しして、オランダのフィリップスが、アマゾン、マナウス大学等に技術 開発資金援助をして、これはもう明らかにヨーロッパ方式のデジタル放送方式を導入、宣伝するための投資を行っております。

    それから三番目 の関連特記事項は、我々の業界、不正輸入がいろんな形であります。これをなくそう、取り締まりを強化しようと、これも当然な事ですが、今まであまり大きな 動きにはなっておりませんでしたが、新政権になってまともな方向へ動き始めておると言うのが、三つ目の特記事項です。

    それから四番目 は、ご覧になられた方がたくさんいると思いますが、ここの経済誌の「EXAME」が毎年やっておりますMelhores e Maiores という2002年度の業績に対する全分野の企業評価のなかで、電気電子メーカー・グループで日本の東芝さんが出資をされておりますセンピ 東芝さんが第1位。総合評価、経営力総合評価第1位となっておりますのを我々電気電子部会のトピックスとして付け加えさせて頂きます。
    集約いた しますと、この下期の展望には、総領事の最初のお話にありましたような天候で例えますならば、非常に厳しい冬の中にいる電子電気業界。急に良くなることは 反動が怖いと言う事もありますので、穏やかな長い春が来ることを期待しながら、福島さんのお話もあったので、冬支度も忘れずに下期に備えたいなあ、が電気 電子部会と言う事でご報告にかえさせて頂きます。

  • 建設不動産部会 清水部会長


    清水部会長

     

    司会 次は建設不動産部会。日本企業からの受注は期待できない状況は変わらないと思いますが、清水さんお願いします。

    人件費アップ、人員削減に迫られる

    清水  建設不動産部会の清水です。建設不動産部会は建設請負を主体とする建設業者、建設資材メーカー、それからアパート・住宅販売を含む不動産業者の集まりです。「2003年上期の回顧」を建設部門と不動産部門に分けて報告させて頂きます。
    建設部門は、昨年からの案件が具体化し、大型ではないが順調に業績が伸びた会社、4月以降、若干の業績が回復基調になった会社、政権交代によるCAIXA  ECONOMICA FEDERALの住宅ローンの貸し出しストップによる影響で業績が低い水準で推移した会社、それから折り込み済みの不況がそのまま 業績に反映した会社等、各社それぞれの回顧となりました。

    しかし、アルミサッシについては見積案件が昨年比で15%程度増えており、今後 が期待できるとなっております。しかし、各社とも5月の労働シンジケートの賃金調整での率、6月に12%の調整、プラス8月に6%調整と数値が予想を大き く上回って人員削減等、経費削減を余儀なくされております。その影響で、市内で事務所ビルを建設中の地元のゼネコンでは、労務賃金の上昇対策として少人数 での施行に切り替え工期を大幅に延長するところも出ております。

    家賃値上げ率はインフレ以下

    不動産部門の賃貸物件は業績が伸びております。しかし、契約更新時の賃貸料調整用の指数は従来使用してきた指数でなく、選択できる最低の指数の条件でしかまとまらず、インフレ指数を下回っております。
    その他と致しましては、ドル運用していた投資家が、ドル弱含みの市場から不動産投資に切り替えた影響もあり、高級アパートは立地条件が良いところは堅調に推移しております。商業ビルは供給過剰でとくにマルジナルの新興ビル地区は、約3割程度の稼働率となっております。
    マルジナル地区では日系自動二輪車の工場の拡張に伴う部品メーカーの進出、増築が継続して発生しております。

    採算面きびしい下期 ー 建設

    2003年下期の展望ですが、建設部門については、民間設備投資の縮小の影響で、引き続き楽観視できない状況が予想されております。それと建設資材、労務 賃金の高止まりで採算面で厳しいという見方と、インフレの沈静化により、受注時利益の確保に見通しが出てくると言う見方の会社もあります。アルミサッシに ついては大幅な受注増は期待できませんが、不当安値で営業展開を行っていた同業他社の和議申請があったり、政府の品質基準を満たさない製品の市場からの締 め出し気運も高まっており、今後の動向が注目されます。
    下期については、各社業績の回復に明るい材料は見出せておらず、通年でも今年度の計画目標を下回る予想、上回る予想はありません。一方、工事の小型化に伴い、社員数が逆に増加する会社もあります。

    下期に明るい材料なし - 不動産

    不動産部門ですが、下期に期待できる明るい情報はありません。住宅販売については、建築確認申請の許可が遅れた影響もあり、大幅に販売予定が狂う会社が出 ております。その他としましては、大豆輸出の好景気の影響とアメリカ農産物企業の買い付けにより、地方の農地の価格は急騰して2倍になることも珍しくない 状態となっております。農産物の輸出がこのまま好調であれば、この傾向は、継続することが予想されております。
    高金利政策は建設投資に対しては悪影響を及ぼして好影響にはならないと。それと税制変更の度に、特に建設業は複雑な平均の計算がありまして、経理・税務対応に人員配置が必要となり、人件費の抑制が思ったように出来ないという影響が出ております。

    トピックスと致しましては、土地なしではなくて「家なし住民」によるサンパウロ市内の、これはダヌビオ・ホテルですが、それの不法占拠が発生しました。古 いアパートの稼働率の悪いところが狙われるのではないかと。古いホテルについてはアパートに改装して売り出していく、と言うような傾向も見られておりま す。以上が建設不動産部会からの報告です。

  • 建設不動産部会(レポート)

    2003年上期の回顧と同下期の展望

    7月23日に開催された建設不動産部会での討議、発表内容を下記のように纏めましたので報告致します。

    1、 2003年上期の回顧

    * 建設部門

    昨 年からの案件が具体化し、大型ではないが、順調に業績に結びついた会社と、4月以降若干の業績の回復基調になった会社、政権交代による会社エコノミカフェ デラルの住宅ローンの貸し出しストップによる影響で、業績が低い水準で推移した会社、折り込み済みの不況がそのまま業績に反映した会社等、4者4様の回顧 となった。
    アルミサッシュについては、見積もり案件が昨年比で15%程度増えてきている。
    しかし、各社とも5月のシンジケートの賃金調整の率(6月に12%、8月に6%調整)の数値が予想を大きく上回った為、人員削減等経費削減を余儀なくされている。
    市内で事務所ビルを建設中の地元ゼネコンでは、労務賃金の上昇対策として、小人数での施工に切り替えて、工期を大幅に延長する所も出てきている。

    * 不動産部門

    賃貸物件については、業績が伸びている。しかし、契約更新時の賃貸料調整用の指数は、従来採用してきた指数では無く、選択できる最低の指数の条件でしまとまらず、インフレ指数を下回る結果となる場合が多かった。

    *全般

    ドルで運用していた投資家が、ドルの弱含みの市場から不動産投資に切り替えた影響もあり、高級アパートは立地条件がよければ、堅調に推移している。商業ビルについては供給過剰であり、マルジナルの新興ビル地域については約3割程度の稼動率である。
    マナウス地区では、ホンダ、ヤマハの両自動2輪車の工場の拡張に伴う、部品メーカーの進出、増築が継続して発生している。

    2、 2003年下期の展望

    * 建設部門

    民間設備投資縮小の影響で、引き続き楽観歯できない状況が予想される。
    建設資材、労務賃金の高止りで採算面で厳しいという見方と、インフレの沈静化に
    より、受注時利益の確保に見通しが出てくるという見方の会社もある。
    アルミサッシュについても、大幅な受注増は期待できないが、不当安値での営業展開を行っていた同業他社の和議申請があったり、政府の品質基準を満たさない製品の市場からの締め出しの気運も高まってきており、今後の動向が注目される。
    下期については、各社共業績の回復に明るい材料は見出せておらず、通年でも03年度の計画目標を上回る予想はない、一方工事の小型化に伴い社員数が逆に増加する会社もある。

    *不動産部門

    期待出来る明るい情報はない。
    住宅販売については、建築確認申請の認可が遅れた影響もあり、販売予定が大幅に変更になったため、自社ビル兼事務所ビルの工事計画の変更も発生してきた。

    *その他

    大豆輸出の好景気の影響と、アメリカ農産物企業の買い付けにより、地方の農地の単価が急騰し、2倍になることも珍しく無い状態となっており、農産物の輸出がこのまま好調であれば、この傾向は継続することが予想される。
    高金利政策は建設投資に対しては、好影響は出ない。
    税制の変更のたびに、経理、税務対応に人員配置が必要となり、人件費の抑制が思っ
    たようにできない。

    しかし、ブラジルコストと言われるものの、削減政策が早急に実施されていかなけれ
    ば、投資・開発案件の鈍化につながり、建設、不動産業界にとっては影響が大きい。
    家無し住民による、サンパウロ市内(ダヌビオホテル)無法占拠が発生し、新しいホテル、フラットに押され、稼働率の悪い古いホテルは、再発を警戒し、アパートに改装する動きに出ているものもある。(パークレーンホテル等)

    以上

  • 運輸サービス部会 横山部会長


    横山部会長

     

    出稼ぎで日伯路線需要は安定的

    バリグ、TAMの合併は下期具体化予想

    司会  続きまして運輸サービス部会さんですが、特に今年度イラク戦争とかSARSの影響もあったかと思いますけれども、横山さんよろしくお願いします。

    横山   みなさん大体時間通り、おひと方20分って言うのがあったようですが、大体10分で(笑い)。私どもの業界ちょっと多いので、なるべく時間内で終わるよ うにご報告したいと思います。食品の渡辺さん、ついに最後まで手をつけたくない食品にまで、財布の紐がきつくなっているとなりますと、私どものいわゆる、 どちらかと言うと、仕事の部分もありますが、遊びを中心とした部分は土砂降りです。簡単に総括しますと“土砂降り”になったと言うような事かと思います。 現在メンバー65社ですが、7月の22日に部会を開いて報告を頂きました。それを簡単にまとめます。

    人の動き、それから物の動き、物流を担当する運輸部門、それに付随するサービス部門、この順番で報告をしたいと思います。
    まず一番得意分野の航空業界から行きますと、先ほど遠藤さんからもありましたイラク戦争。それに続くSARS、肺炎です、“新型肺炎"。この影響を本当に 直接受けました。やっと同時多発テロの影響から、戻りかけたところに、こういうダブルパンチがあり、非常に不況に陥っております。とくに東南アジア線を運 行される航空会社、日本航空もそうなんですが大幅減便、収入ガタ落ちとなりました。お客様の方に関しては、各空港で今までなかった検疫の体制です。ブラジ ル、サンパウロにおきましても検疫で質問票というのが導入されましたが、ご不便をおかけしたと思います。しかしこの質問票は昨日から中止されました。中止 というか一時中断というかたちになって、とくに到着の場合の列の並びは解消されると思っております。
    それから日伯間における供給はほぼ同じだったが、この路線は出稼ぎの需要に支えられており、新規の出稼ぎ等々はあまりなかったがリピーターご利用のおかげで、比較的他の路線に比べて安定した結果となっております。
    ご承知の通り、国内においては、VARIGとTAMの経営統合が話題になっています。方向は決まっているが、まだ具体的にはなってないようです。今朝の情 報ですとアルカイダの動きが、具体的になって、米国検査体制が昨日から、今朝から厳しくなってます。TWOV(ビザなしでの通過)でご旅行されるお客様に ついては申し訳ないが、出発の空港で開披検査を義務づけられる。日本のパスポートをお持ちのお客様は適応外です。残念ながらブラジルのパスポート、トラン ジットビザ、これで旅行されるお客様は開披検査をすることになっております。

    下期の展望ですが、SARS騒ぎが一段落したので当 初計画に戻しつつあると言う事もあり、何とか元に戻って欲しいと思います。アメリカの航空大手の4月から6月期の決算ですと、2001年のテロ事件以降初 めて3社が黒字になった。もちろん政府補助金に支えられての結果ですが、明るい兆候かと思います。それからVARIGとTAMの統合、これも下期には具体 化されると思います。

    大型船投入で荷不足の海運

    次に海運です。前期までの1年半は為替の影響で輸入が減少し、輸出貨物用 コンテナ不足状態が続いていたが、今期に為替レートが安定したこともあり、コンテナ不足状況は解消しました。ただし、荷動きの量と対船腹量のインバラン ス、これが依然として拡大傾向にある。これは投入される船が大型化されたのが大きな原因と言われています。従って、取り合いということになり、運賃レベル が非常に低レベルになっている、すなわち収入が低くなっていると。とくにブラジルに関係がありますアジア・南米東岸航路は、存続の可能性も問われるほどの 苦しい状況になっています。大型化と申し上げましたが、コンテナ数でちなみに比較しますと、数年前は1500個から2000個が主流だったのが、2500 個から3000個が主流となっている。従って、そのスペースに貨物の量が追い付かない状況になっており、下期もこの状況が続くと予想されております。

    貨物量減、税関ストたたる - フオワーダー

    続きましてフォワーダー業界です。再三言われていますように、輸出が急増し上期もそれが継続した。ただし、高金利政策に端を発したブラジルの景気低迷の影 響もあり、各社が減産方向の調整を始めたために落ち込みが激しく、貨物量は当初の見込みに対しては大幅減となった。それから、イラク戦争が開始され輸送機 材(貨物機)等々が支援活動に振り分けられたのでスペース不足、機材の縮小、キャンセル便等々となり輸出輸入に影響が出ました。SARSにつきまして、具 体的な影響ではありませんが、いろいろ心理的な面等も含め輸送全体のという影響を出しているようです。これも先ほど、ご報告ありましたが6月から税関スト ライキ。例年の事柄、輸出入業務の遅滞となっている。高級化粧品もこの影響でなかなか手に入らないと言うことだと思います。それから2002年の12月に 発令された、ちょっと細かいことですがIN252というのが導入されました。これは Tax Heaven Country、通常課税対象となる物品に対 して課税をしない国のことを言いますが、現在世界で51カ国あるようです。そこに対する運賃送金に対する課税。これがなされるのではないか、もし課税され ますと送金税が25%、トータルで実質の33%がかかると言うことで、この業界に対しては非常に大きな圧迫となっております。

    これは日通 さんがやられている海外引っ越し荷物は、昨年の末から第1四半期は帰国者による活発な移動、第2四半期より赴任者の移動が活発になったりもしたが、前に比 べますと全体的には減少傾向が相変わらず続いている。それからビザ関係で、テンポラリービザのサスペンドに伴って、長期の出張者が激減する傾向になってい る。

    下期については、例年、消費財生産に向けて各メーカーの生産も活発になる時期ですが、今年は自動車関連、家電関連の量の伸びが期待で きないため、現状の消費マーケットの低迷を打開する見込みは少ないようです。金利政策、失業問題、各種税制の改革が重要になってきた。為替がやや安定して きたとは言うものの、景気低迷を打破するまでは行っていない。それから先ほど申し上げましたストの早期解決が切望されます。

    古きよき時代去った ー 構内物流

    製鉄については、浅賀さんの方からご連絡ありましたが、そこの構内物流を山九さんからのレポートですが、新政権下で客先の設備投資抑制の影響が大きく、作 業収入は当初計画を達成したが、作業利益確保の段階では苦戦していると言う事のようです。それから金利収入、預金利率低下による金利収入の落ち込みもあっ て営業外収支もよくない。下期についてもほぼ同様の状況が続くだろう。中長期的に見ますと大型工事である客先の高炉新設・改修工事の延期の影響をもろに受 ける形となって、ブラジルでの収益確保面では、”古き良き時代”は完全に過ぎ去り、長期的にも厳しい状況が続くと予想され、事業構造の改革を中心に抜本的 な対策を講じる必要に迫られていると、浅賀さんの説明とは一寸、違うかも知れませんがそう言う風なご報告です。

    競争激化のバイク便 - クーリエ

    クーリエ業界。海外の方のレポートはありませんが、ご参考までに国内のバイク便をやられているところからの報告です。車社会のブラジルで道路整備が遅れて いる事に伴って、必然的に発生したバイク便(業者、モトボーイの)、今サンパウロ市内で3000社(そのうち100社が大手のようです)に膨れているよう です。モグリの業者が多くて、値崩れ現象を起こしている。雇用者の90%が1年で変わると言う人の入れ替わりが激しく、人材管理が難しいようです。下期に ついてはますますバイク便は増加して行くだろうと言われています。

    海外旅行減り、趣味に走る傾ー旅行エージエント

    観光業関係各業種もなべて不振

    次にサービス部門の旅行・エージェント業界。先ほど申し上げましたように戦争の影響を、肺炎の影響を受けたと。簡単に言いますと、お金を持っている層、観 光を老後の楽しみにしていた方たちが、為替で運賃が高くなった、危ない海外旅行を控え、国内旅行にシフトした。さらには国内旅行も止め、近くでゴルフや ゲートボール。さらにもっと近くで盆栽いじりぐらいになったと。そういう楽しみの変化、習慣が定着するとなかなか元に戻らない。旅行まで行って頂けないと 言う事かと思います。この影響で旅行エージェントさん、それから観光業に携わるタクシー、バス、ホテル、ガイド、土産物店等々は非常に不振となりましたと 言うことです。為替の影響ですが、エージェントさんから言うと、レアルが1月から7月の間に20%ダウン、即、収入のダウンに結びついたとのご報告になっ ております。これは業界によって一寸違うと思いますが、代理店さんの方はそう言う事になります。

    供給過多で競争激化のホテル

    それからホテル・観光ですが、フラッチ(フラット・ホテル)の大幅な増加によって供給過多となったため競争は益々、激化しております。ホテルの等級による 違いはあるものの、全体で見ますと稼働率は43%と言われています。とくに五つ星ホテルについては昨年52%あった占有率が40%に下降している。これに 競争激化による安売りが加わって経営を圧迫している。下期の展望ですが、ルーラ新政権が観光に力を入れている事もあり、見通しは明るいとされています。 2003年から2007年の「国家観光プラン」が具体化してくるでしょうし、ルーラ大統領が各国歴訪に観光大臣を同行、ブラジルをPRさせていることもあ り、これが好結果をもたらすだろう。メルコスールにおいても官民合同で観光強化策を検討中と聞いております。

    体力消耗各社、生き残りを賭けた道を模索 - 通信

    最後に通信業界です。新政権が物価安定を最高命題の一つに挙げ、これまでの通信会社の料金調整方法の見直し、使用していた物価指数を変更する等々を進めて おります。また、低所得層への格安電話の提供義務化などもあり、通信企業の利益の再配分という新政権の意図により、インターネットも含めた通信全体の料金 の低廉化が進むものと思われます。すでに競争、および不況の影響で体力が落ちている各通信会社は生き残りをかけた合併・資本提携の道を引き続き探って行く ものと思われます。一方で、企業の通信需要はERPなどに対応する高度なネットワーク、とハッカーやビールス対策も含めた危機管理の必要から、より高速か つ安全なネットワーク作りが進むものと思われます。

    下期は、固定電話通信各社が厳しい経営環境に直面しているのに対し、既に利用者数が 約3,700万人にも達した携帯電話の市場では、テレコムアメリカズが本年下期の営業開始に向け1億5000万ドルの投資を表明するなど、激しいシェア争 いが続きます。競争の構図としては、現利用者数の約半分のシェアを持つVIVOに対して、TIMとテレコムアメリカズの挑戦が激化し、BCPは何らかの方 法で生き残りの道を模索するという形になると思われます。この競争の結果、本年の9月頃には携帯電話の加入者数が固定電話の加入者数を上回るものと予想さ れています。
    すみません、駆け足で。以上、ご報告します。

  • 運輸サービス部会(レポート)

    2003年上期の回顧と同下期の展望

    (新政権下での各種政策―税制,年金改革,高金利政策等―による具体的な影響、また 今後予想される問題等も盛り込んで)

    (運輸部門)

    航空業界

    2003年上期の回顧

    同 時多発テロの影響から回復基調に乗りかけた当業界であったが、3月下旬のイラク戦争突入とそれが終わるころに発生したSARS(新種の肺炎)騒ぎで、大き な影響を受けるに至った。ホンコン,中国線を中心としたアジア線に多くの航空会社が定期便の減便に追いこまれ、大きく収支を圧迫した。世界的にも各社とも 記録的な赤字が報道されている。各空港では新たな防疫体制が敷かれ利用客の不便は増加した。幸いブラジルは汚染地区にならなかったが、検疫の質問表が導入 された。(7月下旬から1時中止中)
    日伯間においては大きな供給の変化はみられなかったが、需要の面では新規の出稼ぎ旅客の回復は見られないもののリピーターの利用で他の路線に比べて安定的な成績である。
    ブラジル国内においては、バリグとTAMの経営統合が話題になっているが、方向性は見えてきたもののまだ具体的な段階には至っていない。

    2003年下期の展望

    大きく騒がれたSARS騒ぎも一段落し、各社とも定期便を当初計画に戻しつつある。落着きを取り戻し安定軌道に乗ることが期待される。
    米航空大手の4-6月期決算で,2001年のテロ事件後初めて3社が黒字になった。政府補助金に支えられての結果とはいうものの、明るい兆候と見られる。
    国内での2社の経営統合も具体案が見えてくると思われるが、経営の安定には時間がかかると推察される。
    ルーラ政権の政策の中で具体的に影響があるものは特にない。全体的な景気回復,為替安定が望まれる。

    海運業界

    2003年上期の回顧

    前期までの1年半は為替の影響による輸入の減少により、輸出貨物用コンテナが不足する事態が続いていたが、今期に入り為替レートもそれなりの安定を見せた為か輸入の量的増加が顕著でコンテナ不足の状況は解消した。
    但し、荷動き量と対船腹量のバランスは依然として拡大傾向にあり(投入船型の大型化が主因)運賃レベルの回復には程遠い状況であり、特にアジアー南米東岸航路は存続可能性が問われるほどの苦しい収支状況が続いている。

    2003年下期の展望

    前述のインバランス状況が更に悪化するだろう。

    フォワーダー業界

    2003年上期の回顧
    2002年末よりレアル安で輸出が急増したが、上期に於いても好調は継続した。但し
    高金利政策等に端を発したブラジルの景気低迷の影響もあり各社が生産調査を始めている。減産方向での調整となっているために、落ち込みが激しく貨物量は当初の見込みに対して大幅減となっている
    またイラク戦争開始により輸送機材(貨物機等)が支援活動に振向けられた為に、スペース不足、機材縮小、キャンセル便などとなり、輸入・輸出に少なからず影響がでた。それに中国を中心としたSARS発生が追討ちをかけ、輸送リードタイムに遅延影響がでた。
    6月下旬より税関ストライキが行われており、例年のことながら輸出入業務の延滞が作業収入の伸びに影響しているのは遺憾である。
    また IN252(Dec,03,2003発令)の導入により、 Tax Heaven Country(現在51カ国)に対する運賃送金に関する課税(送金税25% 実質33%)問題が発生し経営を圧迫している。

    海外引越については、昨年末から第一四半期には帰国者による活発な異動、第二四半期より赴任者の異動が活発になったが、全体的には減少傾向が継続している。また、テンポラリーヴィザのサスペンドに伴い長期出張者が激減すると思われる。
    新政権下での各種政策の影響は、特に輸出・輸入に関する取扱いの中では、貿易従事者の登録制度の見直しによる簡素化・輸出奨励政策に期待出来ると思われる。
    税制・金利政策も平準化することが望ましいが、国内各州の思惑が懸念材料である。

    2003年下期の展望

    例 年下期には消費財生産へ向けて各メーカーの生産も活発になるが今年は自動車関連、家電関連の量の伸びが期待できない為、現状の消費マーケットの低迷を打開 する見込みは少ない。やはり金利政策、失業問題、各種税制の改革が非常に重要になる。反面貿易収支は改善されてきているので輸出力を強化すべく諸手続きの 規制緩和、輸出支援の政策を推進することが必要である。対ドル通貨が安定してきたことは明るい兆しであるが、残念なガら景気低迷は下期も同様の状態が続く ものと予想される
    当然のことながら税関ストの早期解決が切望される。

    (構内物流サービス)

    2003年上期の回顧

    新政権下での客先設備投資抑制の影響が大きく、作業収入は当初計画を達成しているものの、作業利益確保の段階では苦戦している。また預金利率低下による金 利収入の落ち込みもあり、営業外収支も当初計画の達成は不可能な状態になっており、通期での経営計画達成はかなり厳しい状況

    下期も同じような状況が続くと思われ見通しは厳しい、さらに預金利率の更なる低下も予想され、今期は苦戦が続く。
    また、中長期的には、大型工事である、客先の高炉新設・改修工事の延期の影響をもろに受ける形となり、ブラジルでの収益確保という面では、古き良き時代は 完全に過ぎ去り、長期的にも厳しい状況が続くと予想され、事業構造の改革を中心に抜本的な対策を講じる必要に迫られている。

    クーリエ業界
    国内(バイク便)

    2003年上期の回顧

    車社会のブラジルで道路整備の遅れに伴い必然的に派生したバイク便(モトボーイ)であるが、サンパウロ市内で3000社(内100社が大手)に膨れている。
    もぐる業者が多く、値崩れ現象を起こしている。取締りも厳しい。
    雇用者の90%が変わるなど、人の入れ替わりが激しい。怪我人が多く保険の問題も多い。

    2003年下期の展望
    道路整備の遅れは、ますますバイク便を増加させることになろう。

    (サービス部門)

    旅行エージェント業界

    2003年上期の回顧
    ブラジル国外の影響として、イラク戦争と新型肺炎が旅客の移動に大きな影響を与えた。特に新型肺炎は今だ撲滅に至っておらず今後も影響は続くと考えられる。
    ブラジル国内では新政権下、国際航空券の発券ドルレートが大幅に下がり(ドル安)旅行代理業の収益に大きな問題を与えている。
    本年度のDAC発表の発券レート(毎日発表)を見比べてみると下記のような推移になり年頭に比べると約20%のダウンとなっている。
    2003年01月02日 3.5290
    2003年02月03日 3.5230
    2003年03月05日 3.5630
    2003年04月01日 3.3660
    2003年05月02日 2.8900
    2003年06月02日 2.9630
    2003年07月01日 2.8720

    すなわち年頭と同じ販売額を維持したとしても為替差損として約20%の減収となる。

    2003年下期の展望
    とにかく、旅客の動向と発券ドルレートの回復が期待される。

    ホテル・観光業界

    2003年上期の回顧

    基本的に旅行業界と同じ状況である。フラットの大幅な増加により供給過多となったため競争は益々激化している。ホテルの等級による違いはあるが、全体でみると稼働率は43%
    といわれる。(5つ星ホテルでは昨年同期の52%から40%に下降した)
    インバウンドの旅客の減少は続いている.
    一方国内旅行はさかんでありノルデステ方面は特に活況である。

    2003年下期の展望

    新政権が観光に力を入れていることもあり、見通しは明るい。2003‐2007年の国家観光プランが具体化してくるだろうし、ルーラ大統領が各国歴訪に観光大臣を同行させて観光のPRに努めていることもいずれ好結果をもたらすであろう。
    メルコスールにおいても官民合同で観光強化策を検討中である。

    通信業界

    2003年上期の回顧
    新 政権は物価安定を最高命題の一つにあげ、これまでの通信会社の料金調整方法の見直し(これまで使用していた物価指数を変更するなど)を進めている。また低 所得者層への格安電話の提供義務化などもあり、通信企業の利益の再配分という新政権の意図により、インターネットも含めた通信全体の料金の低廉化が進むも のと思われる。またこの状況に対し既に競争および不況の影響で体力の落ちている各通信会社は生き残りをかけた合併・資本提携の道を引き続き探っていくもの と思われる。
    一方で、企業の通信需要はERPなどに対応する高度なネットワークとハッカーやヴィールス対策も含めた危機管理の必要から、より高速かつ安全なシステム作りが進むものと思われる。

    2003年下期の展望

    上 記①のように固定電話通信各社が厳しい経営環境に直面しているのに対し、既に利用社数が約3,700万人にも達した携帯電話の市場では、テレコムアメリカ ズが本年下期の営業開始に向け1億5千万ドルの投資を表明するなど、激しいシェア争いが続きそうだ。競争の構図としては、現利用者数の約半分のシェアを持 つVIVOに対し、TIMとテレコムアメリカズの挑戦が激化し、BCPは何らかの方法で生き残りの道を模索するという形になるものと思われる。この競争の 結果本年9月ころには携帯電話加入者数が固定電話加入者数を上回るものと予想されている。

  • 自動車部会 伊藤副部会長


    伊藤副部会長

     

    司会 残念ながらここで後藤議員、赤阪総領事ご退席でございます。ありがとうございました。
    発表の方は続けさせて頂きます。部会最後になります自動車部会、国内市場不振の中で新しいモデルを投入した日系メーカーの好調さが目立っているようですが、伊藤さんよろしくお願いします。

    4輪に“土砂降りの雨”

    伊藤  部会長であるトヨタの岡部社長が日本出張中で代わりに報告いたします。自動車部会を三つのカテゴリーに自動車、二輪、それから自動車部品と分けて発表します。

    自動車、四輪は総じて言うと、昨今の新聞に載っていますが、“土砂降りの雨”が降っている。まあ、部会長の会社だけは別のようですけれども(笑い)。二輪は日本のメーカーさんですが、非常に絶好調と言う事ですね。自動車部品は総じてまだら模様。これが大体の結論です。

    まず四輪ですが、今年上半期の自動車生産台数は輸出の増加から89万9000台と昨年を2.7%上回りましたが、各社による値上げ、それから金利高が消費 者の購買意欲を減退させて、国内新車登録台数は前年同期比8.3%減と昨年をさらに下回り、99年以来の低レベルとなっております。Anfavea(ブラ ジル自動車工業会)は、今年の国内販売予測を150万台から140万台に下方修正しておりますが、今年の6月現在のメーカー在庫数は16万台程度と予想さ れ、この140万台の修正販売予測達成も危ない状況になっております。このため、各社とも一斉休暇、希望退職の募集など稼働の落ち込み対応に追われている 状況にあります。GMは生産調整を理由に一斉休暇を実施、かつ500名の解雇発表、フォルクスワーゲンも4000人の従業員を新会社に転籍させて、アウト ソーシングすると発表していますが、いずれも労働組合の反対にあって難航しております。

    国内市場の回復に活路を見出すべく、政府による市 場活性化緊急策、これは大衆車のIPI(工業製品税)、それからIPVA(車両税)1年目の免税などが近日中に発表されると思いますが、市場の回復には時 間がかかるであろうと思われます。このような国内需要低迷の中、生産はもっぱら輸出頼みとなっていますが、生産の落ち込みを支えるには不十分であり、生産 設備の稼働率も6割程度となっています。輸出は金額累計で24億ドル、前年同期比38.7%増。台数では25万3000台、これも前年同期比で42.3% の増加。また6月は5万5,000台と過去最高を記録しております。現在、輸出は生産の28.2%となっており、その率は増加しております。

    下期も依然として国内需要低迷の状況は変わらず、アルゼンチンの回復や各社による新規輸出国の開拓により、輸出は依然として増加傾向が続くと思われます。

    一方、輸入の方ですが、38,400台と前年同期比37.3%のマイナス。Abeiva(ブラジル自動車輸入協会)は4月、フルラン開発相に対して、新車輸入の関税引き下げ- 現行の35%から22.5% -を要請しております。

    1~6月の生産ですが、乗・軽商用車これは84万7000台、前年同期比2.5%増、トラックは3万8000台、7.9%増、バスは1万3000台で 0.4%増、合計89万8500台で2.7%増となっております。輸出は、乗・軽商用車が24万5000台で41.9%増、トラックは4000台で80% 増、バスも4000台で36%増、計25万3400台で42.3%増となっております。で、国内販売状況は乗・軽商用車57万1800台、マイナス 5.5%、トラックが3万400台、マイナス2.7%、バスが7000台、13.5%マイナス、合計60万9200台でマイナス5.5%。輸入車に関しま しては38,400台でマイナス37.3%となっております。

    好調の2輪にも販売鈍化の兆し

    それから2輪ですが、昨年来の新車投入効果により、各社とも主力の125ccクラスを中心に販売を伸ばしました。ただし、高金利政策による景気低迷およびクレジット不渡り等もあり、5月以降販売伸長に陰りも見えて参りました。

    下期は高金利政策の是正、景気浮揚策および新年度モデルの投入で、9月以降に伸びが期待されるものと思われております。国内販売の好調を受け生産も順調に 伸長しておりますが昨年来のインフレ高進による国内購入材の価格高止まり、通貨下落による輸入品コスト上昇が懸念されております。また、税制恩典の見直し 気運が一部にあり今後多少環境が厳しいものと思われます。
    輸出はレアル安による価格競争力アップを背景に不調なアルゼンチンに代わる輸出先を開 拓し、昨年比大幅増加しました。しかし、昨今の輸出増加はレアル安を背景としているため、レアルの動きを注視する必要があります。1~6月の生産は、49 万5700台、昨年同期比22%増、国内販売が43万6900台で12.7%増、輸出が5万8800台で3.2倍になっております。

    通期で8%の売上げ減か ー 自動車部品

    それから、自動車部品ですが、今年度上半期はカーメーカーの業績が落ち込み、カーメーカーの生産台数に直接関係を持つ部品メーカーにとっても、厳しい上半 期となりました。Sindipecas(自動車部品工業会)によると、同期間中受注が約25%減少しており、まだリストラ等の極端な対応策は採用されてお りませんが一斉集団休暇、就業時間短縮等を行なっております。上期前半は為替レアル安継続で輸入部品、それからドルリンク原材料のコスト上昇、後半はレア ル相場回復による輸入原材料の圧迫要因は軽減されましたが、販売が低迷し、輸入原材料の在庫の積み上がりもあり、業績回復の妨げとなりました。

    業界総売り上げの33%を占める上位部品製造会社48社を対象に比較した売り上げは1~5月の累計で対前年同期比が3.5%とアップしておりますが、カー メーカーの低迷の影響で本年度のトータルの部品業界の売り上げは昨年比マイナス8%程度になるものと思われております。部品の補修小売り市場では、今年上 半期の売り上げが昨年同期比20.5%のアップ率を示しました。しかし、これは昨年度の業績がよくなかったことにより伸び率が大幅に上昇していることと、 現在、新車購入が先送りされており、自動車を修理する傾向が業界の小売り市場の売り上げアップに影響しているものと思われます。

    現在、部品業界 は稼働率が生産能力の65%、推定従業員数がおよそ17万人ですが、この数字の維持・向上は今後のブラジル経済にかかっていると言えます。政府の消極的な 経済回復政策、インフレ下降率、基本金利の切り下げ等の要素は下半期の景気上昇には不十分との見解でして、厳しい状況の継続が懸念されております。やはり カーメーカー同様、積極的に輸出等の対応でカバーしていく必要があると思っております。以上です。

  • 自動車部会(レポート)

    2003年上期の回顧と同下期展望

    自動車部会長:岡部 裕之

    2003年7月31日

     

    ■ 自動車

    今 年上半期の自動車生産台数は輸出の増加から898.5千台と昨年を2.7%上回ったものの、各社による値上げと金利高が消費者の購買意欲を減退させてお り、国内新車登録台数は前年比8.3%減と02年を更に下回り99年以来の低レベルとなった。ANFAVEA(ブラジル自動車工業会)は、今年の国内販売 予測を1.5百万台から1.4百万台へ下方修正した。さらに、03年6月現在のメーカーの在庫数は160千台と予想され、修正販売予測の達成も危うい状況 である。このため、各社とも一斉休暇、希望退職の募集など、稼動の落ち込み対応に追われている状況である。GMは生産調整を理由に一斉休暇を実施、かつ 500名の解雇を発表、VWも4,000人の従業員を新会社に転籍させてアウトソーシングすると発表している(いずれも労働組合の反対にあっており難 航)。国内市場の回復に活路を見出すべく、政府による市場活性化緊急策(大衆車のIPI見直し、IPVAの1年目免税等)が近日中に発表されると思われる が、市場の回復には時間がかかるであろう。

    このような国内需要低迷の中、生産はもっぱら輸出頼みとなっているが、生産の落ち込みを支える には不十分であり、生産設備の稼働率も6割程度である。輸出は、累計24億ドル(前年同時期比38.7%増)、253.4千台(同42.3%の増加)ま た、6月は50.5千台と過去最高を記録している。現在、輸出は生産の28.2%となっており、その率は増加している。下期も依然として国内需要低迷の状 況は変わらず、アルゼンチンの回復や各社による新規輸出国の開拓等により、輸出は依然として増加傾向が続くと思われる。
    一方輸入は38.4千台と前年同期比37.3%のマイナス。ABEIVA(ブラジル自動車輸入協会)は、4月Furlan開発相に対し新車輸入の関税引き下げ(現行の35%から22.5%へ)を要請した。

    【生産・輸出状況】

     
    生産
    輸出
    乗・軽商用車 トラック バス 乗・軽商用車 トラック バス
    03年1-6月 (千台) 847.1 38.3 13.1 898.5 245.4 4.0 4.0 253.4
    前年比(%) 2.5 7.9 0.4 2.7 41.9 80.4 36.2 42.3

     

    【販売(新車登録)状況】

      国産車 輸入車
      乗・軽商用車 トラック バス  
    03年1-6月 (千台) 571.8 30.4 7.0 609.2 38.4
    前年比(%) -5.5 -2.7 -13.5 -5.5 -37.3

     

    ■ 二輪

    昨年来の新車投入効果により、各社とも主力の125ccクラスを中心に販売を伸ばした。ただし、高金利政策による景気低迷及びクレジット不渡りもあり、5月 以降販売伸長に陰りも見える。下期は高金利政策の是正、景気浮揚策及び新年度モデルの投入で、9月以降の伸びが期待される。国内販売の好調を受け、生産も 順調に伸長しているが、昨年来のインフレ高進による国内購入材の価格高止まり、通貨下落による輸入品コスト上昇が懸念される。また、税制恩典の見直し機運 が一部にあり環境は厳しい。
    輸出は、レアル安による価格競争力アップを背景に、不調なアルゼンチンに代わる輸出先を開拓し、昨年比大幅増加した。しかし、昨今の輸出増加はレアル安を背景としているため、レアルの動きを注視する必要がある。

    【生産・販売・輸出状況】

      生産 販売 輸出
    03年1-6月 (千台) 495.7 436.9 58.8
    前年比(%) 22.0 12.7 3.2倍

     

    ■ 自動車部品

    2003 年上半期はカーメーカーの業績が落ち込み、カーメーカーの生産台数に直接関係を持つ部品メーカーにとっても厳しい上半期となった。 SINDIPECAS(自動車部品製造工業会)によると、当期間中、受注が約25%減少しており、まだリストラ等の極端な対応は採用していないが、一斉集 団休暇、就業時間短縮等を行っている。
    上期前半は為替レアル安継続で輸入部品、ドルリンク原材料のコスト上昇、後半はレアル相場回復による輸入原材料の圧迫要因は軽減されたが、販売が低迷し輸入原材料の在庫の積みあがりもあり、業績回復の妨げとなった。
    業 界総売上げの33%を占める上位部品製造会社48社を対象に比較した売上げは1月~5月の累計で 対前年同期比売上げが 3.5%とアップしているが、カーメーカーの低迷の影響で本年度の部品業界売上は`02年度比▲8%となる予想。部品の補修小売市場では`03年上半期の カーパーツ売り上げが昨年同期比20.5%のアップ率を示した。しかし、これは昨年度の業績が良くなかった事により伸び率が大幅に上昇している事と、現在 新車購入が先送りされており、自動車を修理する傾向が業界の小売市場の売上アップに影響している。

    現在、部品業界は稼働率が生産能力の65%、推 定従業員数はおよそ170千人であるが、この数字の維持・向上は今後のブラジル経済回復にかかっているといえる。政府の消極的な経済回復政策、インフレ下 降率、基本金利の切下げ等の要素は下半期の景気向上には不十分との見解で、厳しい状況の継続が懸念されている。 やはり、カーメーカー同様、積極的に輸出 等の対応でカバーしていく必要がある。

  • 質疑応答

    司会  以上で11部会の発表が終わったわけで、この辺で会場の皆さんのご意見、ご批判、ご質問、何なり受け付けたいと思いますが、どなたかいらっしゃったら。赤嶺さんいかがですか。

    新政府とのハネムーンは今後も続くのか

    赤嶺   遠藤委員長のもとで当総務委員会の副委員長を務めております赤嶺でございます。大変興味を持って皆様のご発表を拝聴させて頂きました。その中で、金融部 会の小原代表にお伺いします。先月の会議所のコンサルタント部会でもだいぶ活発に意見が交換されましたが、金融部会では、政治の通期の見通しとして、ルー ラ政権と国民(市場)のハネムーン(蜜月関係)が今までのどの政権よりも長く、これから1、2年は続くだろう。それから高い支持率も今のまま推移していく だろうと、いう風に非常に楽観的にご覧になっているようです。私はどうも心配性のせいなのか、この蜜月関係は、まさにいま急速に冷えつつあるのではない か。例えば、肝心の社会保障制度、税制改革などの構造改革にしても、次第に小骨から大骨まで抜かれつつあるような感じがしてなりません。もう一度、やはり 楽観的なままでいいのかどうか、小原代表の率直なご意見をお伺いしたいと思います。お願いいたします。

    海外の投資家は「暖かく見守ってくれている」感じ

    小原   一夜漬けで勉強してきた私には難しすぎる質問ですが、皆さんの失笑を覚悟で頑張ってみたいと思います。確かにこのあたり、私の専門じゃないとは言え、経 済のベース、とくに政治の動向が経済もしくはその後の数値に大きく左右する国と言うことで、よく見て行く必要があるんですが、「下期の展望の結論」のとこ ろで皆さんもおっしゃっていた社会保障制度改革、それから税制改革。これを何のようにうまく切り抜けて行くか、スタートを上手く切ったルーラが、これから いよいよ現実の問題に直面して行くところだと思うんですね。聞いているところではルーラ自身、もしくは側近の与党議員が実際に、党人間というか個別交渉と いう格好で根回しをかなり行っていると聞いて、これがうまく行けば、今お手元に渡っている一番最初の表でほぼほぼ、66%を今取りつつある状況です。これ も日々変化しているのでしょうが、それが地道なルーラ本人の交渉によって、一つ、二つ確実なものにして行ければ、いま申したシナリオは描けるんじゃないか と。おっしゃる通り、骨抜きになって来ると言うところは、実際に最初の案が出されて、大分、日々変更して、一番最後のペーパーに付けているのからして大分 変わっていますし、どの辺りで「これは骨抜きじゃないか、意味をなさないじゃないか」と言うような議論が出てくるか非常に不安な要素として見ていますが、 金融機関というか、外の投資家サイドの目からすれば、今のところは「暖かく見守ってくれている」という感じを受けているのが正直なところです。私もここは 非常にナーバスなところで、2回も「ちょっと楽観過ぎるかも知れませんが」と言葉を使わせて頂きましたが、そういう言葉も入れて、期待感も込めての通期予 想と言うことで述べさせて頂きました。

    司会  時間の関係でもうひと方。大使館の笹本書記官がいらっしゃっていますので、ご感想なり頂ければと思いますけれども。

    方向性は正しい現政府

    外資流入が途絶えるとは考えにくい

    笹本   午前中にサンパウロ大学の先生に会って、「ブラジルの経済の先行きについてどう考えますか」、と聞いたら、「確かに改革のペースは遅いが方向性は正し い。従って、今年、来年の成長の見通しは皆さんすでにお話しされているように1.5ですとか、来年3%ですとか言うレベルでしょうが(経済成長)、再来年 以降は4%ないし5%が見込めるのではないか」という楽観的な見方をされていました。私も、その意見には賛成でして。なぜかと言うと、確かに年金改革がこ こに来て、公務員が年金を全部もらえるようになってしまったとか、巻き返しの動きもあるんですが、ただ方向性が正しい限りは国際的な金融機関、あるいは国 際金融機関もブラジルを支持するだろうと。従って、ブラジルにお金が入って来なくなって、また経済危機が起こると言う事態は今後は一寸考えにくいだろう と、私自身は楽観的な見方をしています。

    ただ、いま批判もありました金融政策に関しては、中銀の金利をもっと早く下げるべきではないか と。一番理想的なのは、年末までに基準金利が20%ぐらいまでに下げれば、うまく成長路線に戻って行くでしょうが、もう少しスピードが遅くなると成長、回 復は遅くなるのではと言う見方もあります。

    これから金岡さんの方からFTAの話しもあると思うのですが、実は最近まで、大使館の方では FTAに関してはスケジュール通り行かないのでは、という見方をしていました。しかしながら、実はルーラが訪米した際に、ブッシュ大統領と2005年1 月には交渉をまとめるんだと言う約束をして、ブラジル当局も、もうどうもこれはデッドラインだから絶対何が何でもやるんだ、と言うような事を考えているら しい。ご存じの通り、EUともFTAの交渉を行っており、一方でWTO(世界貿易機関)の交渉は皆さんもマスコミ等でご存じと思いますが、なかなか難航し ていて、日本の当局も何とかまとめようと頑張っているのですが、最悪のケースも考えられる。

    でそのFTAA、あるいはFTAと言う言葉が 本当は正しいのかよく分からないが、これはその単に通商だけでなくて、投資、知的所有権、あるいは政府調達の分野も交渉の対象となっている事を考えると、 仮に日本だけが全くそういった交渉を行っていないとなると、例えば仮にブラジルの経済が回復しているにも関わらず、日系企業だけが“ババを引く”と言う可 能性もなきにしもあらず、という暗い面があるのも事実で、ぜひこの点に関して今後日系企業の皆さんから、我々の方に色んなご要望を出して頂ければ、と考え ています。以上です。

     

  • FTA問題について 金岡委員長


    金岡委員長

     

    司会 最後になりますが、笹本さんからのお話にもありましたFTA問題。これがかなり当会議所でも切実な問題として取り上げられているので、現状を金岡委員長の方からご報告頂ければと思います。

    EUとブラジルのFTAは2004年実現が可能

    金岡 FTA問題について簡単に状況を説明したいと思います。FTAといいましても、広義に使っており実はRTA、地域貿易協定、あるいは関税同盟といろいろ あり、幅広く言えばいま日本とメキシコが交渉しているEPAという経済協力協定、そういうのもあり、要するにひとくくりにしてFTA、こう言うことでお話 しをします。

    まず、ブラジルを巡る自由貿易協定の動きですが、既にご承知の通り、南北米州34カ国を対象としたFTAA締結の話がいま進 んでおります。米国とブラジルがご承知の通り共同議長国で2005年創設を目処に話し合いが進んでおります。米国における農産物の市場アクセスの問題、あ るいは農業補助金の問題また南の方の国ブラジルではサービス分野の自由化、知的所有権などいろいろ解決しなければならない問題もあり、互いに政治的な思惑 もあって今後いろいろ、紆余曲折はあるかと思いますが、最終的にはやはり締結に向けて話が収束して行くのではないかなと、こういう風に思う次第です。

    一方、対EUですが、メルコスールをベースに2006年協定発効を目処とした交渉が開始されており、現在、関税撤廃スケジュール、それから対象品目リスト が交換され、話し合いが始まったところです。EU(欧州連合)とはブラジルの場合、かなり文化的、歴史的、経済的につながりが多くて、ブラジルに進出して いる企業にもEUをベースにしたところがあり、思いの外早く進む。2004年とか言われていますが、こういう可能性もあるかと思います。特に自動車につい ては貿易自由化に向けて、業界ベースでの会合が持たれていると。こう言うことです。
    そんな中でブラジルは個別にメキシコ、チリとも貿易協定を締 結している。それから中国、インドとの交渉も視野に入って交流が始まっており、いわゆるラテンアメリカ諸国のFTA先進国のメキシコ、チリに続いて、新た な自由貿易協定締結の動きがブラジル国としても加速しているという状況です。一般にそのブラジル、かつてのアメリカなど自国に巨大市場を抱えかつ、それな りに産業が育っている大陸国は経済の海外依存度が低く、自由貿易協定締結に対し消極的といった見方が出来るわけですが、このようにグローバル化が進む世界 経済の中で、単独で生きていくというのは難しい。あるいは、うまくやればビジネスのチャンスがさらに増えると思われます。そういうことでブラジルについて も各市場ごとの通商政策に沿った自由貿易協定の動きが加速されているといった感じであります。

    日伯合同委員会でもFTAにつき調査・検討を決定

    このような情勢の中で、日伯の経済関係の再構築の必要が叫ばれている訳ですが、FTA問題についても「このまま何もせずに放置しておいてよいのか」と言っ た疑問が会員企業からも出され、昨年秋に開催された官民合同会議でも日伯FTAの必要性につき、討議され、とりあえず商工会議所において民間ベースの勉強 会を立ち上げようと、こういうことになった次第です。本年3月に開催された「第 10回日伯ブラジル経済合同委員会」の結論として、日伯FTAによるビジネスの影響につき、スタディグループを設置し、調査、検討、意見交換していくと言 うことが確認されました。経団連では本件のフォローアップを企画部会を中心にフォローしていく、とこういう体制が確認されております。
    ご承知の ように、メキシコと日本の間のFTA交渉は現在、最終段階に入っており、未だ双方のセンシティブセクター、これは日本でいいますと農水産品とか皮革製品、 それから豚肉など。それからメキシコでは鉄鋼、化学品などが挙がっている訳ですが、このセンシティブセクター品の調整を巡りまだ課題が残っている。しかし ながら、本年10月のFOX大統領訪日のさいに、何らかの形で協定書にサインがされることになると思われます。そもそも日墨FTAにおいて、なんでこう言 うことが出てきたかというのはNAFTA(北米自由貿易協定)の発効によって競争力を失い、撤退を余儀なくされた日本側民間企業の強い要請により、交渉が 始まったという背景があります。また、その後EUともメキシコは協定を結び、さらに調査を進めていく中でメキシコ市場における日本製品の輸入比率の低下、 それから政府調達における日本企業の差別、具体的に言うと入札に入れて貰えない、あるいは入札で差をつけられると言ったことが起こって、具体的な経済損失 につながると言うことで、民間から政府を動かして今日の交渉に至っていると、こう言うことです。

    メキシコのケースを”他山の石”に

    今後、メキシコ、日墨の話し合いは中南米における初めての日本としてのFTAの交渉で、今後の推移を注意して見て行かなければならない。我々ブラジルにい る日本の企業としては、そのメキシコで起こったことを“他山の石”と、こう言うことで今からFTA締結の必要性を検討し、その準備を始めようと言うことで 研究会が立ち上がった。こういう次第です。

    以上のようなことで、ブラジル日本商工会議所の中に、「日伯経済交流促進委員会」があ りまして、私が委員長ですが、その中でFTA研究会を立ち上げまして、今年の1月から今までに5回の研究会を開催しました。第1回目はJETRO・ブエノ スアイレスの稲葉所長を招き、「南米を巡るFTAの動きについて」と題してFTAそのものの仕組み、あるいは世界の状況につき勉強しました。第2回目は JETRO・メキシコの近藤所長にお越しいただき、まさに先ほど申しました日墨FTA交渉開始にいたる経緯およびその内容について講演して頂きました。そ の後4回、5回と当会議所の部会である第4回目では電機・電子部会、それから第5回は自動車部会の代表にお越し頂いてそれぞれの状況をヒアリングして、ど ういう風な問題が出てきているかをお話ししました。

    以上の研究会を通じて私の持った印象ですが、まず一番としてグローバル化が進んだ企 業、これはそんなにたくさんあるわけではないんですが、世界各地でのFTAの動きに対して柔軟な対応が可能である。例えば、日本からの原材料、部品の輸出 が不利になると、米国の工場に切り替えることも可能である。それから二番目はFTAの促進により、マイナスの面だけでは無く、上手くやれば国の産業構造を 変えて行くことも可能という事で、例えばブラジル進出で生産基盤を固めた。こういう日本企業であれば、今度はブラジルがFTAを結べば、例えばFTAAの 対象国とは自由に貿易が出来ると、こういうプラスの面もある。こう言うことで、メキシコはその辺を非常に強調して、今やすでに31カ国とFTAを結んでい ると。そう言う印象を持ちました。

    今後FTAにつきCNIやFiespとも意見交換

    今後の活動ですが、引き続き各業界の状況を調査すると共に、企業単位でアンケートを実施し、日伯FTAの与える影響につき具体的なプラス、マイナスのインパクトを取り上げて、これをもとに対日本の関係省庁に提案を出して行こうかと、こういう風に考えています。
    日伯FTAの課題ですが、今後更に会員企業を対象にして行うアンケートの調査実施、あるいは輸出入統計の調査、CNI、FIESP等ブラジル側カウンター パートとの意見交換。こういったことにより、提案をまとめて絞って行きたいと思っていますが、今のところ私の印象としては、三つ有ります。

    1 番は、FTA締結国との関税格差の問題。先ほど挙げましたFTAA(米州地域)、それからEUあるいはひょっとしたら中国・韓国などとブラジルが先にやる んではないか。こう言ったところとの関税格差の問題。ちなみに言いますと、ブラジルの平均関税は12.29%。そこそこ高い訳ですから、これが先に出来 ちゃうと、かなり日本としてはハンディキャップを背負う事になるわけです。対象は特に自動車部品、電機・電子部品、化学品の一部こういったところが主たる 対象になると思います。

    2番目にマナウス・フリーゾーンの問題。これは現在、家電、二輪、複写機、電子部品、こういった企業が日本から 進出しておりますが、個々について、かつてメキシコ特に米国とのボーダーにありましたマキラドーラ、個々に進出していた企業ですが、結局、NAFTA成立 によって相対的な優位性を失ない、こういうことで撤退を余儀なくされた。そういうメキシコと似たような問題の発生が考えられる恐れありと、こういうことで マナウス・フリーゾーンをどういう風に位置づけるか。これが2つ目の問題。

    3番目として、進出企業が直面しているビジネス環境上の問題 点の改善。これは税制、労働法、それからインフラの不備、ロージスティックも含めたインフラの不備。それから治安問題、いわゆるブラジルコストの解消が課 題となります。この点は海外から進出している、日本に限らず進出企業全般にわたる問題でもあり、場合によっては他国商工会議所、あるいはGIE(外国投資 家グループ)などとも連携して、ブラジル政府に呼び掛けて行かねばならない。ただしこの中で日伯固有のものがあれば、広義の意味でFTAのテーマとして取 り上げて行けばよいかと思います。

    以上が今のところ考えられる訳ですが、スケジュールとしては、経団連スタディグループとも連絡を取 り、9月頃にアンケート調査を実施。年内に調査結果並びに何らかの提案を取りまとめたいと思います。明日、第6回目のFTA研究会をやるんですが、その場 においてどういったことをアンケートでまとめて行くか等をもう少し具体的につめて行きたいと思っています。
    それから最後ですが、在アルゼンチン 日本商工会議所からも連絡がありまして、メルコスールと言うことでFTA促進に向けて意見交換、情報交換を進めて行きたいという申し出がありました。自動 車、電機・電子、石油、化学品などは今や両国の産業で不可分な関係で有機的につながっていますので、この申し出も前向きに進めたいと思っていますが、ただ ブラジル政府が、日伯FTAを考える場合にメルコスールを一緒に巻き込んだ方がいいのかどうか。特にアルゼンチンの場合、経済、金融混乱が大分収まってき ましたが、ブラジルとは同じペースではない。それからアルゼンチンの場合、農業問題がブラジル以上に対日本としてありますから、その辺のブラジル政府の考 え方もあるかとは思いますが、いずれにせよ、先方と情報交換をやりながら、メルコスールとして課題を考えていく。それはそれでよろしいんじゃないかと思っ ています。そういった事で、なかなか焦点が絞りきれないと言う事ではありますが、以上述べましたような形でこれから提案をまとめて行きたいと思っていま す。以上です。

    司会 柳田さん何かコメントありますか。

    日伯FTAはビジネス環境の整備

    柳田 FTAのお話につきましては、先ほどの大使館の笹本書記官と金岡委員長がお話になられたことがほぼ全てであるかと思います。一つだけコメントというか、 付け加えさせて頂きますと、日伯FTAを考える場合にメキシコの場合は、いま金岡委員長からありましたが、やはり実害論というのがあって来たわけですが、 日伯を考える場合、実害論というのは、まあ若干二番煎じ的なことになって来て、それもあり得るとは思うんですが、多分そうではなくてFTAとは何ぞやと。 あるいはEPAでもいいですが、これはあくまでビジネス環境の整備だという事から考えて、日本企業がブラジルに対してどう言ったビジネスを今後展開してい く必要があるのか、という一つの日本側にとっては戦略論をきちっと考えて、と言うことから日伯FTAを位置づけて行く必要があるかと思います。以上です。

    司会 ありがとうございます。それでは時間も過ぎていますので、そろそろ本日の懇談会は終わりにしたいと思いますが、各部会の発表をお聞きしていますと、 2003年度も、昨年よりも厳しいというのが共通の理解かと思います。しかしながら、ルーラ大統領がおっしゃった下半期からは「奇跡的な経済成長を期待で きる」。これはやや誇大かも分かりませんが、インフレ抑制から景気回復へのその経済政策の転換ですか、これを我々は期待する事として、本日の懇談会を終わ りたいと思います。長時間ありがとうございました。

     

    -第I、II、III部 完 -

2003年上期業種別部会長懇談会-貿易部会


柳田部会長

 

司 会  ありがとうございました。引き続きまして、貿易部会の柳田部会長よろしくお願いします。

2002年概況

貿易収支は昨年131億ドルの黒字

柳 田 JETROの柳田でございます。「2002年貿易回顧と2003年の展望」をご説明いたします。
まず2002年概況ですけれども、輸出は堅調に推移し、輸入の方はかなり大幅に減少したということかと思います。具体的な数字で申し上げますと、2002 年の貿易、輸出は603億6200万ドル、対前年比で3・7%の増、輸入は582億2300万ドル、同じく15%の減ということで、貿易収支は131億 1300万ドルの黒字でした。この黒字は、93年に記録しました132億9900万ドル以来の大幅なものです。皆様ご存じかと思いますが、ブラジルの貿易 といいますのは、年前半に大豆、あるいはコーヒーなどの一次産品の輸出が増加しまして、年後半に年末商戦に向けた国内生産が拡大をして、あるいは、消費財 の輸入が増加するということで、年後半は貿易収支が赤字に転落するというのが従来のパターンです。

しかしながら、2002年は先ほど金融部会からご説明がありましたように、ブラジルの政治経済情勢、これは大統領選挙、あるいは米軍のイラク攻撃の可能性 が年末に向かって高まって来た、為替がレアル安に推移して来たことを受けて、このパターンが変化したと言うことです。為替が一貫して下落、金利の上昇を招 いて国内消費を抑制したことの他に、先ほど申し上げた輸出ですが、大豆などの主要な産物生産者が売り惜しみをするという形になり、通常、大豆輸出は年前半 に終わるわけですけれども、年央以降も増加するというパターンで昨年は違ったパターンを生みました。一方、輸入の半分を占める中間財の輸入は先ほど申し上 げたように、9月以降も前年比で減少傾向を見せた。このように、輸入が減少した結果が先ほど申し上げました131億ドルという大幅な黒字を生んだ訳です。
輸出は、わずかに増加しているけれども、これは米国経済、あるいは世界経済、あるいはアルゼンチンの状況を考えますと、比較的健闘したといえようかと思います。

それでは、この輸出が比較的堅調だった背景として、もちろん通貨の切下げということが一般的に言われますが、その通貨の切下げによって競争力が高まったと いうことの他に、ブラジルは98年、この切下げ前の98年には直接投資額の工業部門に占める比率は11・9%しかなかったのが徐々に増えて2002年、こ れ1~11月までの数字ですけれども38・6%まで増えている。つまり、外国からのグリーンフィールド投資がかなり増えていることが、ブラジルの工業品輸 出を支えてきたと言えるかと思います。
特に自動車、あるいは金属、機械、化学、電気電子こういった分野で生産の拡張が積極的に行われて来たと言うことです。
それから、もう一つ付け加えますと、工業分野の輸出増加の背景として為替の切下げ、直接投資の増加、それに加えて、特に2002年に行われたメルコスールとメキシコの関税引下げ協定、こういった特恵関税協定がかなり大きく作用していると、この3点が理由かと思います。

一方、輸入減少の背景でが、これは一言で言いますと、「レアルの切下げと金利上昇による国内景気の落ち込み」によります。先ほど金融部会が説明されましたので省略させていただきます。
為 替が下落して、インフレ警戒から金利を上げた結果、売上指数そのものも11月以降になっても落ち込みが続いていた。同時にそれに合わせて製造業の稼働率も 下落したことで、やはり景気の落込みが、輸入全体の5割を占めるといわれる中間財・原料の輸入を大幅に抑えた。これは消費財も一部入りますが、その結果、 この輸入が15%という非常に大きな落込みになりました。

アジア市場台頭、輸出はALADI向け並み

次 は輸出について国別、地域別に見ますと一つの特徴として、ブラジルからの輸出がアジアに向かい出した。アジアが非常に台頭してきたといえます。 従来、米 国向けが25%、EU向けが25%、ALADI向けが大体16%。2002年アジア向けは14・6%まで上がってきて、ほぼALADI向けとアジア向けが 同水準に達したということが一つ大きな特徴かと思います。
米国向けは、同時多発テロ以降の影響を受けて、エンブラエールのジエット機の輸出が前 年比で7・1%減少したのが響いております。一方、端末、携帯端末ですが、モトローラ、ノキア等が非常に輸出ドライブをかけましたので、対前年比で対米 13・1%の増が目立ったところです。

ALADI向けは、特にメルコスール向けはアルゼンチンの危機ということで、前年比トータルでブラジルからは48%の減少。メルコスール以外のALADI向けとなりますと、対前年比で10・9%の増と、いかにアルゼンチンが足を引っ張っているかが分かるかと思います。
それから、アジア向けは先ほど申し上げました中国が非常に伸びており、国別輸出全体の順位で4位に躍進したのが目立った所です。中国向けの輸出は、昨年1 年間で25億2000万ドル、これは対前年比で32・5%の増加になっております。中国向けは主に大豆、鉄鉱石等が輸出品目ですが、こういった一次産品に 加えて、昨年は自動車部品、エンジンといった付加価値の高い分野も含まれるようになって来ております。対日につきましては後ほど申し上げたいと思います。

アルゼンチン向け輸出急減 ― 国別は2位が6位に転落

製 品カテゴリー別の輸出動向をみますと、まず一次産品ですが、その輸出もアジアなどの新市場向けが大きく伸びていることが輸出全体を支えた一つの要因にも なっております。ご存じかとは思いますが、原油ですけれども、ブラジルは昨年、対前年比でなんと134・6%増の輸出を果たしております。

次に大きなものとして豚肉、これは35・5%増、エビが35・2%、大豆まめが11・2%増と、こういったところが一次産品で伸びの大きいところです。
ブラジルの一次産品で最大の輸出品目というのは鉄鉱石ですが、これは対前年比で4%増に留まっております。ただ、中国向けが対前年比で23・7%と大幅な増になっております。これは、港湾インフラ等が整って価格競争力の面で有利になったということが背景にあります。
それからやはり、大豆につきましても中国向けが国別でトップになって53・5%と大幅な増加になっております。
半製品はアジア向けが25・7%と全体の比率ではトップで、ついでアメリカ、EU、大体同じような25%近い数字で、アジア向けが一番大きいと言うことです。
それから鉄鋼半製品は前年比で30%増、アルミ、これは地金で20・3%増。 鉄鋼半製品は、アメリカでITCの貿易制限措置が採られたが、実際には、米 鉄鋼産業の構造的な問題があり、ブラジルからの輸出は、ブラジル製品を買わざるを得ないので増えたと言うことです。最近は、台湾、韓国向けの鉄鋼半製品輸 出も増えております。
アルミは、2001年の節電計画が終了して、国内生産が増え輸出も増加していると言うことです。

加工品は、アルゼンチン向けの輸出減が大きく影響しております。この加工品の輸出のメインは、大体ALADIが中心です。トータルですとALADIは 2000年に全体の36%を加工品で占めていたが、アルゼンチンの経済低迷の影響から大幅に低下しており、2002年は26・4%となっております。た だ、そのうちメルコスールの占める割合は、10%を切り8・7%まで下がっていると言うことです。
2000年のブラジルからアルゼンチン向けの 輸出は一次産品、加工品全部含めて全体で約62億ドルあって、輸出総額の11・3%を占めていたが、2002年にはそれが23億まで急減をしている。輸出 全体に占める比率も3・9%まで下がり、従来ブラジルの第2位の輸出先であったアルゼンチンは国別では6位まで後退しております。

次は輸入動向の主なところですが、これは輸入はEUが全体の比率で27・7%と一番大きな位置を占めており、続いて米国が22・1%、ALADIが17・ 4%、アジアが16・9%。輸入に関してもアジアからが急激に増えて来ていることが言えると思います。全体的に、財別でいいますと、全体の輸入の5割を占 めています、この中間財、あるいは原料の輸入が、14・2%対前年比で減少しております。特に、中間財の中で輸入の額が大きい化学製品の原材料輸入が8・ 2%減というのが一つ大きな数字として影響を与えております。
もちろん、工業製品の部品類も18・7%減で、全体に大きな影響を与えた要因です。
資本財の輸入額全体に占める割合は25%くらいしかないが、貿易金融がしめられたこと、あるいは、国内の設備投資が控えられたことで、比較的好調であった アグリビジネス関係の農業関係機械等を除きますと輸入は減少している。消費財もやはり減少しております。ただ、唯一前年比で伸びているのは薬品です。

対中輸出が対日を追い抜く

続 きまして、ちょっとはしょらせて頂きますが、対日貿易についてふれさせて頂きます。先ほど中国向けの輸出が25億ドルと申し上げましたが、日本向けの輸出 が昨年は20億9800万ドル、明らかに中国の方が、中国向けの方が上回っている。日本向けの輸出は、昨年は前年比で5・6%増加ですが、輸入は23億 4700万ドルで23・4%の減となっております。ブラジル側が2億4500万ドルの入超ということです。

対日輸出は鉱産物、農産物その他加工品が中心ですが、特に目を引きますのは、鶏肉の輸出増加です。これは、レアルの下落で相対的な価格競争力がついたと同時に、ブラジルの生産者が日本向けに付加価値を付けて輸出するようになって来ていると言うことです。
一方、輸入につきましては、ブラジルに進出しておられるアセンブラーの新機種導入に伴い、自動車の部品、エンジンの輸入がやはり増えているのが目立ったところです。
一方、通信関連機器は、固定電話でテレフォニカなどがANATELの課している設置目標をすでに終えたということ、あるいは、携帯端末のユーザーの数が増 えている割には、その7割が前払い方式ということで、ハードの需要があまり盛り上がらず輸入が減少しており、通信機器全体では日本からの輸入は36・6% の減となっております。

最大のリスク要因は米国のイラク攻撃

ちょっ と長くなりましたが、間もなく終わります。2003年の見通しの所ですが、やはり最大のリスク要因は米国によるイラク攻撃かと思います。これが長期化する か短期で終わるかで、かなりシナリオが変わってくる訳ですが、長期化する場合には為替の切下げが進む一方、石油価格が引き上げられ国内経済に相当の悪い影 響を与える。この石油価格の上昇は貿易収支でのリスクと言うよりも先ほど金融部会からご説明ありましたけれども、やはりインフレの及ぼす懸念の方が大きい のではないかと思います。インフレ昂進がありますと、政治経済混乱も予想され、結果的にはそれが貿易面にも影響してくると言うことがあろうかと思います。

ただ、今の全体の予想、あるいは貿易部会の中での議論の中でも、貿易全体にこのイラク攻撃が直接的な影響を与えることはあまりないのではないか、というのがございます。
特に、原油につきましては、イラクから輸入していますが、全体がスポット契約です。それから、大体輸入先の確保に問題がないと言うことで直接影響は少ない のではないかと。あるいは、その輸出はですね、今後堅調に推移をして行くだろうということから、為替でレアル安になって輸入が抑えられると、引き続き黒字 が維持され、これが結果的にはブラジルのファンダメンタルズのアンカーになるということで、むしろプラス評価というのも一部にはある。

ただ、攻撃が短期間で終わった場合ですが、リスクはかなり軽減されて為替市場も安定して行く、あるいは金利も引き下げられることで安定的成長につながると なりますと、これは逆に国内景気が上昇することによって、中間財の輸入が増えて貿易収支が悪化をするというシナリオも考えられるところです。
た だ、貿易部会の中での議論で、ブラジル国内の生産者に果たして本当に国際競争力があるのか、なんですが、これについては、中間財の製造業者がまだ十分に国 際競争力を確保してないのではないか、これはちょっと時間がないので詳しいところは省略いたしますが、引き続き中間財の輸入は景気が回復すると増えると言 うのが一般的な見方かと思います。

今後、中国向けの輸出が引き続き増えると言うのが一つ の見方です。特に、アルコール、あるいは牛肉等の輸出が増えるのではないか。これは中国においてガソリンにアルコールを10ないし15%混ぜるという計画 もありますし、あとは検疫の問題とかを解決すれば牛肉等の増加が考えられると言うことです。
あと、2003年上半期については、やはり米国の景 気、あるいはイラク攻撃ということを考えますと、先ほど言いました航空機の輸出等、あまり期待は出来ない、対米輸出がそれほど大きく伸びないのではない か。EU向けはイラク攻撃の有無によってやはり少し影響が出てくる。これは前回の湾岸戦争の時にもかなり影響が出たという実績があります。ちょっと時間が 超過して恐縮です。以上です。

(詳細は末尾の部会資料)

2003年上期業種別部会長懇談会-貿易部会(資料)

1.概況

<堅調に推移した輸出、大幅に落ち込んだ輸入>

ブラジルの2002年の貿易は、輸出が603億6,200万ドル(前年比3.7%増)、輸入が582億2,300万ドル(同15%減)で貿易収支は131億1,300万ドルの黒字。この黒字幅は1993年に記録した132億9,900万ドル以来の大幅なもの。

ブラジルの貿易は、年前半に大豆やコーヒーなど一次産品輸出が増加し、年後半には年末商戦に向けた国内生産の拡大や消費財の輸入増加で貿易収支が赤字に転 落するパターンが一般的。しかし、2002年の場合、ブラジルの政治経済状況がこうしたパターンに変化をもたらした。2002年4月以降、10月の大統領 選挙で野党が政権をとるという観測が強まり、従来の改革路線を変更するのではないかとの懸念が金融市場で広がったことや、米国によるイラク攻撃の可能性が 年末に向けて高まったことを受け、4月以降為替はレアル安で推移し、大豆などの先物市場でも先高感が高まった。

為 替の一貫した下落は金利の上昇を招き、国内消費を抑制した他、大豆など主要農産物生産者に売り惜しみをさせる結果となった。そのため、輸入のほぼ半分を占 める中間財輸入が9月以降も昨年比で減少傾向をみせた一方、大豆輸出は通常輸出が終了する年央以降に増加するという例年とは異なるパターンを生んだ。

こ の輸入の減少が大幅な貿易黒字を生む結果となったが、輸出については「米国経済をはじめとする世界経済の状況や主要輸出先であるアルゼンチン国内の市場状 況を勘案すれば良い結果(FUNCEX-貿易研究所)」と言える。同時多発テロ事件以降続く米国の航空産業の低迷がブラジルからの小型ジェット機の輸出減 少となって現れているのをはじめ、米国市場の消費鈍化がブラジルの主要輸出産品である靴の輸出減少に結びついたが、もともと比較優位を持つ農畜産資源加工 産業をはじめ、工業分野でもジェット機や靴以外の製品は健闘した。

<輸出が堅調に推移した背景 - 直接投資の継続的拡大>

工 業部門健闘の理由の一つに、通貨切下げによる競争力向上に加え、生産拡張を目的とした直接投資が近年継続的に行われていたことが挙げられる。直接投資額の 工業部門に占める比率は、切り下げ前の1998年には11.9%に過ぎなかったが、2000年には23.8%、 2001年には33.3%とその比率は上昇。2002年についても、1~11月で同比率は38.6%。金額そのものも、2001年1~11月の工業分野の 直接投資額が52億5,700万ドルであったのに対し、2002年1~11月は64億4,700万ドルと唯一直接投資額が増加した部門となっている。

特 に、自動車、二輪など輸送用機械、金属、食品、機械、化学、電気電子及び通信機器分野で生産拡張のために積極的な投資がなされているのが目を引く。これら の分野は、2001年時点でブラジル全体の輸出額の54%を占めており、また工業部門の輸出の76%を占めている。同分野の直接投資額をみると、通貨切り 下げの前後でグリーンフィールドでの直接投資額が大きく変化。切り下げ以前の98年には同分野の直接投資受入額は全体の9%にしか過ぎなかったが、切り下 げのあった99年には19.2%と急増し、2000年には15.4%、2001年には27.9%に達した。これはドルによる投資のアベイラビリティー増加 に起因するもの。
工業分野の輸出増加の背景としては、このような直接投資のほかに特恵関税協定が作用していることも無視できない。例えば、2002年にメルコスール・メキシコ、ブラジル・チリの間で締結された関税引下げ協定など。

<輸入減少の背景 - レアル切下げと金利上昇による景気の落ち込み>

輸 入減少の背景には為替の減価がある。2002年1月2日に1ドル2.31レアルであった対ドルレートは10月22 日には3.96レアルに達した。さらに、実質為替レート(対ドル)で比較すると2001年9~12月の平均値(1994年8月を100とした場合)が 144.5であるのに対し、2002年9~12月の平均値は160.7となっており、輸入抑制の一因となった。

また、こうした為替の下落により、政府・中銀はインフレ警戒のための金利引上げ措置を講ぜざるを得なくなり、 2002年10月のCOPOM(国家通貨審議会)でSELIC金利はそれまでの18%から21%に、さらに12月には25%まで引上げられた。そのため、 CNI(全国工業連盟)の実質売上指数(1992年=100)は、通常であれば年末景気に向かって上昇していく時期にもかかわらず、11月になって前月比 で大きく落ち込むという現象が起こった。また、それに伴い製造業の稼働率も下落。こうした景気の落ち込みにより、輸入額全体の約5割を占める中間財・原料 の輸入ならびに消費財輸入が抑制された。

 

2.輸出動向

●国別・地域別輸出動向

<台頭するアジア向け輸出 - 対中輸出、対日を上回る>
国別・地域別貿易動向では、まず、輸出におけるアジアの台頭が目につく。2002年のブラジルの輸出額割合をみると、米国向けが153億5,400万ドル で全体の25.4%、EU向けが151億1,300万ドルで同25%、メルコスールを含むALADI向けが98億6,600万ドルで同16.4%、アジア 向けが87億9,100万ドルで同14.6%。従来、米国、EU、ALADI向けがブラジルからの輸出先の8割近くを占めてきたが、アジア向けが ALADIと同水準に達した。

米国向け輸出は、同時多発テロ事件以後米国系航空会社の業績 悪化の影響を受け、ジェット旅客機の減少(前年比 7.1%減)が響いている。また、靴についても、米国内消費低迷の影響を受け前年比7.3%減。しかし、携帯端末については、モトローラに加え、マナウス で組み立てを行っているノキアが輸出ドライブをかけたことで前年比13.1%増の12億8,500万ドルを記録。

欧州向けについては、オランダが国別で2位、ドイツが同3位。欧州向け輸出の特徴は、大豆、鉄鉱石、コーヒーなど伝統的なブラジルの輸出産品に加えて、ブ ラジルに進出している自動車および自動車部品メーカーによる企業内貿易で付加価値の高い製品も含まれていること。また、農産品は鶏肉、牛肉など欧州におけ る狂牛病発生と輸出促進プロモーションが奏効して市場を掴んだ他、養殖エビなど97年以降に国内業者が輸出を始めたばかりの産品がフランス向けに前年比 50%程度伸びるなど新しい品目も見受けられる。なお、オランダ向け輸出が大きい理由は、同国がEU諸国の一部向けの再輸出基地となっているため。

一 方、対ALADI向け輸出は、メルコスール向け輸出の急減(前年比48%減)が足を引っ張る結果となった。メルコスール向け輸出額の全体比は前年の 10.9%から5.5%に急減。メキシコ向け輸出産品は、特恵関税協定の影響もあり、自動車、自動車関連部品の比率が急増しており、アルゼンチンの代替輸 出先となった。ちなみにメルコスール以外のALADI向け輸出は前年比10.9%増。

一 方、アジア向け輸出は中国が最も多く、国別輸出額全体順位で4位となるなど躍進が目立つ。中国向け輸出は25億 2,000万ドルと前年比32.5%増となっているが、輸出の多い品目をみると、大豆、鉄鉱石、大豆油、鉄鋼、皮革、タバコ、木材などの一次産品や半加工 品に加え、自動車部品・エンジンなど付加価値の高い製品も含まれている。大豆輸出増加の背景としては、非遺伝子組み換えであるブラジル産大豆が、遺伝子組 み換え大豆より、中国側での輸入手続が簡便になったことが挙げられる。また、鉄鉱石については、中国側のインフラ改善が輸出増加に寄与。中国向け輸出につ いては、カーギル、GM、リオドセ、ソウザクルスといったブラジル国内の大企業が主体。

対 日輸出については、輸出額が前年比5.6%増の20億9,800万ドル。輸出額の増加には、米国のオレンジ不作に伴う国際価格上昇の恩恵を受けたオレンジ ジュース(7,700万ドル:前年比21.7%増)の増加と、中国で発生した家禽ペストの代替品として需要が急増した鶏肉の輸出増加(2億1,500万ド ル:同29.4%増)が寄与要因。ブラジルの鶏肉の輸出先としては、日本向け輸出額がサウジアラビア向け輸出を抑えてトップ。

●製品カテゴリー別輸出動向

加 工度別で輸出動向をみると、一次産品の輸出額が169億5,200万ドルと前年比で10.5%伸び、半加工品輸出が89億6,300万ドルで同8.7% 増、加工品輸出が330億ドルで同0.3%増。輸出全体額の約5割を占める加工品輸出は、小型ジェット機や靴の輸出減少分を他の加工品の輸出増加が補って いる状況。

<一次産品輸出はアジアなどの新市場開拓が伸びに貢献>

一 次産品輸出額で前年比伸び率が高くかつ金額の大きい品目をみると、原油が前年比134.6%増、豚肉が同35.5%増、エビが同35.2%増、大豆豆が同 11.2%増など。原油はアラブ首長国連邦、インド、サンタルシア、米国向け主要輸出国として登録されているが、実際は、ペトロブラスがアラブ首長国連邦 から原油を輸入した帰りの船を利用してブラジル産の原油をアラブ首長国連邦に運び、そこでアジアやインド洋湾岸諸国に再輸出。サンタルシアは、米国向け輸 出ロジとしてサンタルシア経由のものが仕向け地として登録されている。

2002年のブラジル 最大の輸出品目となったのは鉄鉱石で前年比4%増。国別では日本、ドイツ、イタリア向けが減少した一方、中国向けが前年比23.7%増となり同国が最大の 輸出先。これは、中国側で港湾インフラが整い、直接ブラジルから大型船で輸出できるようになったことが運賃面でオーストラリア産鉄鉱石に対し価格競争力が ついたことが大きい。これまでは、中国側で大型船接岸が困難であったことから、ブラジルからフィリピン、日本を経由し、小型運搬船で分けた上で中国に輸 出。また、リオドセが中国企業と資本関係を締結したことも輸出増加に寄与。

全体の品目で輸出 額2位の大豆は中国向けが国別でトップとなり、前年比53.5%増の8億2,600万ドル。オランダやスペインなどへの輸出減少分を中国向け輸出でカ バー。一方、同輸出額4位の大豆粕はオランダ向けが前年比11.3%増となってフランス、イタリア、ドイツ向け減少分をカバー。大豆粕は、昨年輸出実績の なかったインドネシア向けが国別で9位、輸出実績はあったものの輸出額が少なかったタイ向けが国別8位(前年比80%増)となっており、新市場の開拓努力 の成果がみられる。このほか、一次産品では、全体の品目でも11位の輸出産品となっている鶏肉において、日本向けが国別輸出でトップとなり、しかも前年比 29%増と大幅な伸びを示しているのが注目。

なお、一次産品輸出先としては、EUが全体の約4割、アジアが全体の4分の1となっているが、EUが昨年比で1.4%増にとどまっているのに対し、アジア向けは同21%増。

<半加工品は例年の水準に回復>

半 加工品輸出先は大豆および派生製品や鉄鋼半製品が伸びたアジア(2002年の半加工品輸出全体額の25.7%)が最も多く、次いで米国(同24.9%)、 EU(同24.7%)。鉄鋼半製品の輸出額は14億1,000万ドルで前年比30%増、アルミニウム(地金)が 8億1,300万ドルで同20.3%増の伸び。

鉄鋼半製品については、2002年に米国が ITC201条を発動し貿易制限措置を受けたが、発動前から予想されたとおり、米国における鉄鋼産業の構造的な問題が顕在化したことで、結局ブラジル製品 を輸入せざるを得なくなったことが同製品の輸出増の理由。すなわち、川下分野は強いものの、川上分野が脆弱なため供給不足となり、結局、高関税を覚悟で米 国のバイヤーがブラジルから半製品を買うはめとなった。また、2002 年のレアルの切下げで外貨債務の多いブラジルの鉄鋼メーカーが財務体質強化のために輸出ドライブをかけざるを得なかったことも鉄鋼半製品増加の背景。輸出 先として台湾や韓国向けの増加も目立ってきたが、双方とも下工程(圧延など)のみが強化されたため、川上分野における輸入需要、すなわちブラジル産の鉄鋼 半製品の需要が増大。

アルミニウムは、2001年の降雨不足に伴う節電計画の実施により減産していたものが、同計画の終了により回復したことに伴って輸出も増加。

<アルゼンチン向け輸出減が響いた加工品輸出>

加工品の輸出については、従来メルコスールを含めたALADIが主な輸出先。加工品のみに限定した場合、2000年は全体の36%がALADI向け(うちメ ルコスール21.7%)。しかし、この割合は減少しており、2001年の同割合は33.2%(うちメルコスール 17.3%)、2002年は米国向けに抜かれ、国別・地域別で2位の26.4%(うちメルコスール8.7%)。この原因はアルゼンチン経済の低迷。自動車 および自動車部品、携帯端末などを主体としていたアルゼンチン向け輸出は、同国経済の低迷、預金封鎖措置により消費者の購買力が大きく削がれ、ブラジルで それら製品を製造するメーカーはメキシコなど他の国に輸出先を求めた。2000年のブラジルからアルゼンチン向け輸出額は一次産品や半加工品も含め、全体 で62億3,300万ドル、輸出額全体の11.3%を占め、国別では米国に次いで2位の輸出先となっていたが、2002年には23億4,200万ドルに急 減し、輸出額全体比はわずか3.9%、国別でも6位に後退。

加工品の主要品目をみると、輸出 品目全体で3位のジェット旅客機の需要が2002年は後退した(前年比17.8%減)のをはじめ、同5位の乗用車も前述のアルゼンチン向け輸出の減少(同 52.2%減)が響いて前年比2.8%増にとどまっている。輸出品目全体で6位となっている通信機器およびその部品については、前年まで米国に次いで2番 目の輸出先であったアルゼンチンが前年比88.2%と大幅な減少を示したものの、他のALADI向け輸出がカバー。同品目の輸出先としては米国が圧倒的に 多い(12億8,600万ドル)ものの、それ以外はメキシコ、チリ、ベネズエラ、パナマ、コロンビア、ペルーとラ米諸国が続いている。

ま た、輸出品目全体で8位の靴は、通信機器同様に米国に次いで多かったアルゼンチン向け輸出が前年比87.6%減となっているものの、数年前から業界および 政府が代替輸出先の開拓に取り組んできた成果が出て英国、ドイツ、オランダなど欧州向けが増加しているのをはじめ、メキシコ、カナダなどNAFTA地域向 けも伸びてきたことで何とかカバー。しかし、全体としては米国での売上が伸び悩んだのが響き前年比9.8%減となった。

 

3.輸入動向

●国別・地域別輸入動向

2002 年の国別地域別輸入動向をみると、EUが全体比27.7%、続いて米国が同22.1%、ALADIが同17.4%、アジアがALADIと並ぶ16.9%。 1位から6位までは順位が変わらず、中国が9位から7位に、英国が10位から8位となった他はあまり動きがないが、輸出同様ALADIの輸入額全体比が減 少する一方、アジアからの輸入割合が上昇傾向。

全般的に2002年を通じて進んだレアル安により輸入額は減少しているが、例外はブラジル国内で供給が追いつかない薬品類。これについては、連邦政府保健省が直接輸入者となっており、為替動向にかかわらず一定の輸入を行っている。

●財別輸入動向

2002 年の輸入動向を財別でみると、全体の約5割(49.7%)を占める中間財・原料の輸入額が前年比14.2%減。中間財・原料の中で最も輸入額の大きい化学 製品の原材料輸入が同8.2%減となっているほか、2番目に額の大きい工業製品の部品類も同18.7%減少していることなどが大きく影響。化学製品の輸入 は、最も輸入割合の大きい有機化合物の輸入が前年比14.6%減となったことや塗装材が工業部門の需要低迷を背景に前年比10.4%減となったこと、香水 の原料などがレアル安のため同13.3%減となったことが効いているが、肥料部門(同0.7%増)など国内需要が高い分野においては昨年の輸入水準を維 持。薬品分野は欧米から増加し、米国、フランス、英国、イタリアなどからの輸入に増加傾向。

一方、資本財(輸入額全体の約4分の1)は、年央からのカントリーリスクポイントの上昇に伴って貿易金融が締められ、また、新たな設備投資も手控えられたことからアグリビジネス部門が好調だった恩恵を受けた農業関連機械を除き軒並み輸入は減少。

消費財分野(輸入額全体の1割程度)では、半耐久消費財のうち、薬品のみが唯一前年比で輸入が増加(2.2%増)した他はほぼ全ての分野で為替下落を受け輸入が減少。

●製品カテゴリー別輸入動向

加工度別で輸入動向をみると、一次産品輸入がほとんど動きがなかったのに対し、半加工製品が11.2%減、加工製品が17.6%減と輸入全体額を押し下げ。

<一次産品の輸入動向 - 多角化する輸入先>

一次産品輸入額のうち、最大の輸入品目である原油の輸入額が5割近くを占め、2位の小麦、3位の石炭と併せて一次産品輸入の約7割を構成。このうち、原油 は重量ベースで5%増加しているものの、金額ベースでは3.4%増。原油輸入先は依然ナイジェリアがトップであるが、原油輸入額に占めるその割合は大幅に 減少(2001年38.5%→2002年29.5%)、アルジェリア、イラクなどからの輸入が増加。小麦は、アルゼンチンからの輸入が減少する一方、米国 やウクライナ、ポーランドなど新たな輸入先を開拓していることから、アルゼンチンにおける貿易金融面での問題ならびに関税率の引下げが結果的に輸入先の多 角化となって現れている。石炭は、2002年は金額ベースで11.6%増となっているが、これは、リオドセが鉄鉱石輸出の帰りの船に積載し、ブラジルの鋳 物業者用に販売することでフレートを削減し、ロジ事業でも顧客をひきつける事業戦略を採っていることが背景。

<工業製品の輸入動向 ― 増加目立つ発電機>

工業製品で最も輸入額の大きい発電機は、2001年には節電計画の実施で大幅に伸びたが、2002年は2001年をさらに上回る伸び(前年比14.3% 増)を示しているのが注目。大型発電機はブラジルでの製造実績がなく輸入に依存。2001年の電力供給不足を踏まえ、今後、同様の事態が発生することに備 えガスタービンや小型ディーゼル機関の緊急輸入に附帯する発電機の大量輸入が行われている。また、ペトロブラスによる複合火力発電設備のガスタービンに附 帯する発電機輸入も寄与。

 

4.対日貿易動向

<輸出は堅調に推移、輸入は通信関連部品の減少で大幅減>

2002年のブラジルから日本への輸出額は20億9,800万ドル(前年比5.6%増)、輸入額は23億4,700万ドル(同23.4%減)で2億4,900万ドルの入超。

ブラジルの対日輸出品目は鉱産物、農産品およびその加工品が中心であるが、2002年は前述のとおり、鶏肉の輸出増加が目を引く。ブラジル産ブロイラー は、レアル下落で相対的に価格競争力がついてきている他、メーカーの努力により製品に付加価値もついてきていることなど業界が積極的に取り組んでいること が奏効。日本向け鶏肉輸出メーカーとしてはBUNGEグループの傘下でサンタカタリーナ州で起業されたSEARA社が最大の輸出企業。同社は、鶏の飼料も 植物性のものを自社で生産し、また、仮に病気が発生した場合でも、追跡調査ができるよう厳密な製品の品質管理を実施。また、日本の卸業者の注文に応じ部位 ごとに鶏を加工するなど付加価値を高めて日本の顧客を確保。

一方、輸入については、日系アセンブラーの新機種導入に伴い、自動車部品、エンジンなどの輸入が増加。一方、為替の影響で完成車輸入は激減(前年比43.3%減)。

そ の他製品の輸入では、コンピュータの増加が目立つ程度。一方、通信関連機器では固定電話でテレフォニカなどが ANATELの課している設置目標をすでに終えていること、また、携帯端末部門でもユーザー数が増加している割にその7割が前払い方式のものであるため ハードの部品需要がそれほど盛り上がらなかったことで輸入激減(同36.6%減)。

 

5.2003年のブラジルの貿易見通しについて

中銀のFOCUS(市場の予測の平均)によると(1月31日時点)、2003年はGDP2%、貿易収支155億ドルの黒字、経常収支56億ドルの赤字、直 接投資流入額130億ドル、2003年末時点の為替レート1ドル=3.61レアル(年平均3.51レアル)、 SELIC金利平均22.92%。

<リスク要因は米国によるイラク攻撃>

貿易全体の変動要因として考慮すべきは米国によるイラク攻撃が実際に行われた際の影響。攻撃が行われた場合は、それが短期間に終結するのか、あるいは長期化するのかでもシナリオが大きく異なる。

長 期化する場合は、為替の切下げが進む一方、石油価格は引上げられ、国内経済にも悪影響を及ぼす。為替の切下げは、公的債務のファイナンス手段がドルイン デックス債、為替インデックス債等に拠っている部分が多いため、内外のマイナス要素が顕在化するたびに債務額が増加し、リスクポイントが上がって為替市場 におけるドル買いが進むというメカニズムになっていることが背景。

石 油価格の上昇は貿易収支でのリスクというよりはインフレに及ぼす影響の方が懸念される。昨年10月以降、公共料金の改定と急激なレアル安によりそれまで抑 制されていた値上げが多方面に広がっている。米国によるイラク攻撃で石油価格がさらに上昇し、それが長期化する場合は、国内の石油価格も連動して上昇する ため、さらなるインフレ圧力の増加につながる恐れ。こうした為替下落とインフレ圧力の増加は現在も高水準にある金利の引下げを困難にし、国内消費を冷え込 ませるとともに国内企業の海外資金依存度を高めることになる。

<インフレ高進による政治経済混乱も>

ブ ラジルの信用が維持されている間は海外資金依存度が高くてもある程度許容されるが、それはブラジルの経済基盤をより脆弱にさせることになる。また、こうし た高金利、高インフレの状況が長期化すれば、与党労働党内の左派グループが勢いづき、ルーラ政権が現在の中道路線を維持するために従来以上の調整努力が必 要となる。調整がうまくいかず、現路線維持が困難となれば、ブラジルに対する海外金融市場の信頼は揺らぎ、海外からの資金供給が絞り込まれ、ブラジル経済 はより深刻な状況に陥る恐れ。

ただ、貿易面ではイラク戦争の直接的な影響はさほどないもの と思われる。原油はイラクからも多く輸入しているがスポット契約によるものであり、代替輸入先確保に問題はない。また、ブラジルに進出している多国籍企業 は輸出重視戦略を鮮明にしているため、輸出が堅調に増加する一方、為替の影響で輸入が抑制されるため貿易黒字は維持され、これがブラジルの良好なファンダ メンタルズ維持の錨(アンカー)となろう。

米国によるイラク攻撃が短期で終了した場合は、 上記のようなリスクはかなり軽減され、為替市場も投機の影響を受けることなく安定して推移しよう。為替の安定は金利引下げ余地につながり、安定した成長に つなげることができよう。また、イラク攻撃が終了したのち、就任直後のルーラ大統領の人気が維持でき、国会対策も乗り切り構造改革が緒についたことを海外 投資家にアピールできれば、海外からの資金流入にもはずみがつき、ブラジル経済は良い方向に循環していこう。

た だ、この場合は国内の景気上昇により中間財の輸入が増加して貿易収支は悪化することが見込まれる。ブラジルの中間財製造企業が本当の製品競争力を備えてい れば輸入代替は定着するであろうが、専門家の見方は必ずしもそうではない。2002年の貿易動向についても、 FUNCEXでは、為替下落にもかかわらず明確な輸入代替つまり製造業における国内中間財企業への購入先の変化は統計に影響を及ぼすほど大きなものではな かったとみている。つまり、景気が回復すればそれまで生産を抑えていた製造業が中間財の調達を海外に求めはじめ、輸入は再び増加する可能性が高い。

<開拓に成功した新輸出市場の維持、さらなる対中輸出増>

FUNCEX のリカルド・マルクワルド所長は、2003年の貿易について、輸出は継続的に伸びていくとコメント。その理由として、2002年に掴んだ新市場を維持する ために各企業が必要な投資を継続していくことが予想されることを挙げている。新市場の中でも輸出先として急激にその重要性を高めている中国については、在 伯中国商工会議所のチャールズ・タン氏が、「フォルクスワーゲン、GM、フィアットを中心に対中輸出は 2003年も増加し、また、食品部門でも従来の品目に加えて長期保存用の牛乳が伸びる可能性もある」と指摘。また、同氏は、「中国においてガソリンにアル コールを10~15%混入する計画があることや、検疫問題が解決することを前提にアルコールや牛肉についても輸出が期待できる」と指摘。
対中輸出 増加に唯一マイナス要因があるとすれば、ブラジルが中国に適用しているセーフガード措置の取り扱い。具体的には、2001年12月~2006年 12月まで効力のある中国製にんにくについてのセーフガードをブラジルが撤廃しない場合は、中国側が貿易面で何らかの制裁措置をとる可能性がある。

<上半期期待薄な対米輸出>

米 国向け輸出は、同時多発テロ事件のダメージで苦しい経営を続けている米国航空会社などが新規ジェット機の購入を現在にも増して手控えることでエンブラエル 社の対米輸出増加の可能性は少なくとも今年上半期は低い。同様に、自動車や靴などは米国の消費市場動向次第。ただし、携帯端末については、米国でセキュリ ティ上も重要(緊急時の居所把握など)とみなされるなど、テロ事件後、逆に市場が拡大している段階であり、引き続きブラジルからの輸出が増加することが期 待できよう。

対EU輸出についても、イラク攻撃の有無によって輸出にある程度の影響は出る。 単純には比較できないが、90年8月から約7ヶ月続いた湾岸危機・戦争時には、当時のECの経済成長率はドイツの統一需要があったにもかかわらず、内需不 振の影響で急減(GDP成長率は、 89年3.5%、90年2.9%、91年0.8%)。ブラジルからの同地域への輸出も90年には89年比6.5%減。

<拡大見込める自動車関連>

ALADI 向け輸出は、基本的にはアルゼンチン経済の回復度合いが大きく影響。同国との貿易を考える上で最も影響力のある自動車は減少一方であったが、2国間自動車 貿易に復活の兆し。まず、フォードが同国での生産を増加させ、輸出入相殺実現により関税フリーでの2国間貿易を復活させる他、PSA (プジョー・シトローエン)が同国での生産を決定したことにより、リオデジャネイロ州ポルトヘアル工場との間でツインプラントを生かしてフォード同様にメ ルコスール自動車協定のメリットを享受しようとしている。フォルクスワーゲンは、上記2社と異なり生産をブラジルに集約する動きがみられるが、アルゼンチ ンにおけるGOLの生産を取りやめる替わりにその分をブラジル工場から輸出することで、完成車輸出は増加(今年は5,000台予定)することを予想。

一方、メキシコ向けも今まで遅れをとっていたフィアットが同国向け輸出を本格化させるとも言われており、同国向けは引き続き自動車および部品を中心に増加を予想。

アジア向けは前述のとおり、中国が牽引し、インド、マレーシア、インドネシア、シンガポール向けも増加予想。日本向けは一次産品の国際価格動向に左右され るであろうが、劇的な伸びを示すのは現時点では考えにくい。中東向けについては、米国がイラク攻撃に踏み切った場合は、輸出ルートの確保をしない限り鶏肉 を中心に輸出は減少の可能性。

以上

 

2003.2.6
ジェトロ・サンパウロ

FTA締結の現状について

(世界のFTA締結の現状)

・FTAとは、2以上の複数国、地域間で関税やサービス貿易の障壁等を撤廃して、物、サービス貿易の自由化を定めた協定。
・2003年1月20日現在、GATT/WTOに通報・発効しているFTAは147件。その6割以上が90年代に発効(NAFTA、AFTA、メルコスールなど)。
・FTA締結活発化の背景にはWTOによる多国間交渉の難しさ。
・FTA締結の意義として、WTO交渉促進の補完、進出企業の競争力強化、貿易投資の確実性確保など。

(中南米のFTA)

・中南米地域は歴史的にブラジルを例外としてFTAに熱心。ALADI(ラテンアメリカ統合連合)、中米共同市場、アンデス共同体、カリブ共同体、メルコスールなど。大半は関税同盟。
・中南米におけるFTA締結は構造改革、自由化を進展させ、広域経済圏の形成で貿易量を飛躍的に拡大。対立回避、対外交渉力強化など政治的意義大。
・中でもメキシコはNAFTA、EUなど現在31カ国と締結、貿易額が急増、投資、雇用など経済発展を支え。その他、貿易依存度の高いチリも積極的で、カナダ、メキシコ、EU、米国、韓国などと締結ないしは締結合意。
・2005年末交渉集結を目指し現在、北米、南米、カリブ34カ国(キューバを除く)から構成される米州自由貿易地域(FTAA)交渉中。約8億人、GDP約13兆ドル(世界の約4割)の巨大経済圏が出現。
・FTAA交渉は構成国全員一致による一括合意方式を採用、域内格差が大きいことから交渉難航予想。

(日本の現状)

・WTOを中心とする多角的貿易体制の維持強化を基本政策。各地域でFTA締結進展を受けて、貿易自由化、経済活性化を図る上で多角的貿易体制を補完する1つの柱としてFTAなど地域貿易協定を位置付け。
・今後、わが国の産業界からのニーズ、相手国市場の規模などの要素を勘案して交渉相手国を判断。
・昨年締結されたシンガポールとの経済連携協定(EPA)を皮切りに、今年中の合意を目指してメキシコと交渉中。今後、アセアン等アジア諸国との交渉を予定。

以上