2000年上期業種別部会長懇談会

主題 ’99年回顧と2000年展望

当所総務委員会(岡田委員長)主催の「部会長懇談会」は2月1日正午から3時間にわたって行われ、主題の回顧と展望に副題の委員会、部会今後のあり方について熱のこもった報告、質疑応答、討議が活発に行われた。

 

出席者

会頭 三好幸彦 (ブラジル東京三菱銀行)
司会:総務委員会 委員長 岡田茂男 (ブラジル三井物産)
コンサルタント部会 部会長 田中信 (リベルコンビジネスM&A)
金融部会 部会長 山浦秀雄 (日本興業銀行サンパウロ事務所)
貿易部会 部会長 能澤信一 (丸紅ブラジル)
化学部会 部会長 矢島章 (ブラジル出光ケミカルズ)
機械金属部会 部会長 宇治嘉造 (ブラジルトヨタ自動車)
運輸サービス部会 副部会長 萩野敏久 (大阪商船三井船舶)
建設不動産部会 部会長 林 恒清 (ブラジル戸田建設)
電気電子部会 部会長 江口信彦 (NEC・ド・ブラジル)
食品部会 部会長 上原清助 (日清味の素食品)
繊維部会 副部会長 室元明 (ラニフィシヨ・クラシキ・ド・ブラジル)
副委員長 後藤芳信、 赤嶺尚由
委員 出石峯敏、 渡辺英明
在サンパウロ総領事館 小島総領事、渡辺領事、玉川領事

 

副題「委員会・業種別部会の今後のあり方」

三好会頭講評:

● 国産化を念頭におく必要あり
● 日本勢は技術面の優位性を発揮せよ

 

部会長懇談会

コンサルタント部会

金融部会

貿易部会

化学部会

機械金属部会

繊維部会

食品部会

電気電子部会

建設不動産部会

運輸サービス部会

会頭講評

部会活性化案

レポート-コンサルタント部会

レポート-金融部会

レポート-貿易部会

レポート-化学部会

レポート-機械金属部会

レポート-繊維部会

レポート-食品部会

レポート-電気電子部会

レポート-建設不動産部会

レポート-運輸サービス部会

資料室の文献紹介

2000年上期業種別部会長懇談会-繊維部会

  • フォローの風となったチェックプライスと為替切り下げ
  • 中国が輸出国に転じて綿花市況軟化
  • 合繊原料は 一 挙に国際相場反転
  • インフレ文化と決別で価格転嫁困難
  • ようやく長期低落に歯止めがかかった 一 輸出
  • 縫製品輸入減る
  • 楽観的見方へ、2000年の展望

 

悲観去り漸次安堵感取り戻す

室:室 でございます。繊維部会長の木村さんが日本へご出張中ですので、私がピンチヒッターとして出席させていただきました。繊維部会のなかでも、使用する原料、 販売する商品によりまして、昨年の回顧と今年の展望につきまして、それぞれ各社の見解が微妙に異なりますので、総括するのは非常に難しいのですが、99年 につきましては、全体として、概ね好調だったということが出来るかと思います。昨年、年初の為替の調整で繊維業界も先行き非常に不透明な状態でのスタート でしたが、切り下げ直後のブラジル経済に対する、そういう悲観的な予測が時を経るに連れて好転し、業界全体としては、非常に安堵感がただよって参りまし た。

もともと繊維産業は、レアルプランによる市場開放政策と、強めの為替政策の最大の犠牲者ともなっていたわけですが、97年からの チェック・プライスによる、非関税障壁、とでもいうべき輸入規制と、今回の為替調整がフォローの風となったのは事実でございます。ただ、業種を問わず、各 社が使用する原材料の多くは、米ドル建て、あるいは米ドルにリンクしておりまして、為替の切り下げによる原材料のコスト・アップをいかに売値に転嫁するか が、最大の課題でございました。

綿花につきましては、基本的にニューヨークの綿花定期相場に連動しておりますので、2月には為替の切 り下げ分がレアル建てで、そのまま調整されました。しかしながら、国内の綿作が、前年比、26パーセント増となったこともあり、新綿の出回りとともに、4 月には軟化に転じ、10月末まで、安定的に推移しました。

一方、国際綿花価格の指標となりますニューヨーク綿花相場も、過去からの持 ち越し在庫が多かったこと、米国を始めとする綿作が順調だったこと、もともと輸入国である中国が綿花の輸出国に転じたことで、昨年半ばから下落に転じ、為 替調整による大幅な価格アップ分のいくらかは市況軟調で相殺された格好となりました。

しかしながら、11月に入り、順調な綿糸の販売状況から国内綿花相場は上げ基調に転じ、10月末に比べて10パーセント上昇しており、切り下げ前の水準に比べ、約24パーセントアップとなっております。

一方、合繊原料につきましては、原油相場の高騰、それから慢性的生産過剰から一転して、世界的に生産調整が進んだこと、東南アジアの景気回復などで、国 際相場は一挙に反転しました。もともと、国際水準に比べ割り高感があった国産原料も、ポリエステルで20パーセント、ビスコースで30パーセント、アクリ ルでは40パーセント強の値上がりとなり、引き続き、原油相場の堅調を理由として、もう一段の値上げが予想されます。

織布業界でも、使用する原資が値上がりしておりますので、事情は全く同じでございます。

 

たたった可処分所得減少

 

販売面をとりまく環境としましては、98年、99年、2年連続の景気の低迷、過去数年に渡り、一般大衆の可処分所得はむしろ減少している状況ですし、失 業者の増加傾向などということで、決して末端消費者が衣料品の値上げを受け入れてくれるような状況ではありませんでした。インフレ指数をご覧になっても分 かりますように、常に、物価の上昇を押さえているのに大きく貢献しておりますのが衣料品であります。他の業種においても同様に言えるとは思いますが、イン フレ文化から決別した現在、末端消費者までの各段階で、値上げに対する抵抗が非常に強く、先に述べました原材料アップを売値に転嫁することが非常に困難な 環境にありました。

われわれが販売している商品にも、価格抵抗力に非常に強いもの、あるいは弱いものもあり、一概にはいえませんが、 小売店頭での価格は基本的に上がっていないのが実情で、結局、生産から小売までの各段階での合理化努力、それと、マージンの圧縮で、なんとかうまくコス ト・アップを吸収した形になりました。量的に見ますと、従来からのチェック・プライスによる実質的な輸入規制、さらに今回の為替の切り下げによる国産品へ の回帰現象が起こりました。

為替切り下げメリットあるもマーケット再構築に大変な苦労

 

輸出につきましては、為替のメリットが生じたにも関わらず、いったん失ったマーケットを再構築するには時間が必要で、ようやく輸出の長期低落傾向に歯止めがかかったという程度で、量的に大幅に伸びたということはありません。

また、海外の顧客からは、為替切り下げ分を見込んだ厳しいビッドがくるといった状況で、決してうまみのある商売というわけでもありませんでした。しかし ながら、国産品への回帰による国内マーケットの活況、若干ながらも、輸出ビジネスの拡大で、操業面では、各社とも多忙を極め、そのことが、生産コストの低 減ともなり、採算面にも大きく貢献致しました。各社とも、大なり小なりの為替差損をこうむり、また売値へのコスト・アップ分の転嫁はまだ不十分な状況であ りましたが、チェック・プライス制による、実質的な輸入規制、為替切り下げによる国産品の優位性で、需給バランスが大幅に好転し、さらにそこへ昨年の寒波 による冬物衣料の売れ行きの好調が輪をかけ、総じて全体としては99年はよい年であったといえます。

 

織物、縫製品輸入減

 

ここ数年の間、輸入圧迫で、徹底的に痛めつけられていた繊維業界ですが、為替切り下げ以降、繊維の輸入の状況にどのような変化があったか、特に、顕著な 変化があった点を述べてみたいと思います。特に、切り下げの影響で著しく減少したと思われますのが織物と縫製品でした。トータルの、貿易収支バランスで は、98年には約7億8000万ドルの赤字が、去年は4億ドル程度になったんではないかと思われます。

織物につきまして、95年には、10万5000トンが、99年の11月までの数字ですが、4万トンに減っております。そのなかでも綿布が2万2000トンから3000トンに激減しているのが目をひきます。

一方、織物全体が減るなかで、合繊の織物につきましては、一定量輸入されておりまして、98年に比べ、99年はむしろ増加し、切り下げの影響を全く受けておりません。

次に目をひきますのは縫製品です。96年のピーク時には、6万トン輸入されておりましたが、99年11月までの数字では2万4000トンに減っておりま す。特に、繊維縫製品の輸入の減少というのは、私どもの業界にとっては非常にありがたい話であります。繊維全体のバランスがチェック・プライス制と為替切 り下げで好転しているなかで、全く逆の現象が起きているというアイテムがあります。

その一つは、合繊のフィラメント、長繊維でござい まして、98年と99年の11月までの同じ期間を見てみますと、98年の7万5000トンが、99年度では10万5000トンと、大幅に増加しておりま す。もう一つは、合繊の紡績糸、主にビスコースがらみの糸なんですが、同時期に1万1000トンが1万 7000トンに増加し、全く為替の切り下げの影響を受けておりません。いずれも、99年11月までの統計でありながら、史上最高の輸入額となっておりま す。

 

消費者ニーズに変化高感度 マスター努力

 

こういうことが、何を意味するのか、いろんな見方があるものと思いますが、あくまでも私の個人的な見解ですが、ブラジルの衣料分野におきまして、消費者のニーズが多様化し、需要の構造的な変革が起きつつあるのではないかという気がしております。

90年代初頭からの市場開放により、ブラジル国民の目の前には安くて非常に魅力的な服が一挙にあらわれ、それを手にすることが可能になりました。一度そ のような味をしめますと、なかなかその水準を落とすことは出来ないものです。その様な、消費者の志向の変化に対応すべく、ブラジルの繊維業界でも、なかで は淘汰されるところもあり、多くの犠牲を伴いましたが、織機、編み機など最新鋭の設備が導入され、合理化が図られると共に、より高感度のファッション情報 の収集に努力致しました。その結果、フィラメントのように、国産品では消費者のニーズに適応するものが少なく、輸入せざるを得ない状況となっているのだと 思います。当社も、合繊のフィラメントをかなり使用しますが、顧客のニーズに応じるためには、海外のメーカーの特殊なフィラメントに頼らざるを得ません。 最近のブラジルでは、衣料に対する感覚も高度化し、所得水準の高まりとともに、ますますその傾向は高まるものと思っております。われわれ業界としても、そ のような傾向に対応する努力を怠ると、たちまちにして淘汰されてしまう状況に追い込まれる危険性を感じざるを得ません。

 

外的要因なければ 今年も良好な年期待

 

次に、2000年の展望について、簡単に触れます。アメリカ経済の動向が唯一、気がかりですが、低迷していたアジア経済をはじめとして、世界的な景気回復傾向のもとで、ブラジル経済につきましても、非常に楽観的な見方が支配的となっております。

従いまして、内外での偶発的な異常事態が発生しない限り、繊維業界は昨年と同様に良好な年になるものと期待しております。

原料に関しましては、綿花相場は世界的に持ち越し在庫が依然高水準であり、需要の回復が見込まれたとしても、波乱場面は予測されず、安定した相場つきに なるものと予想されます。合繊原料につきましては、引き続き堅調維持の見通しで、一段高も予想されます。今年は、昨年積み残したコスト・アップが売値に転 嫁できるか、あるいは合理化努力で吸収出来るかどうかも課題として残っております。さらに、今年もチェック・プライスの運用が厳格に行われるかどうかも、 当業界にとりましては非常に重要な点となっております。

いずれにしましても、ブラジル経済の景気低迷からの脱出が予想される本年度 は、繊維製品の需要増加も期待でき、なんとか昨年以上の良い年となるように祈りたいと思っております。同時に、消費者ニーズに応じた商品開発、品質向上と コスト競争力のための経営努力が、いっそう求められる時でもあると思っております。以上です。

司会:あ りがとうございました。昨年の年初の座談会は、大幅為替切り下げ直後にやったわけですけれども、各部会長さんが下を向いているなかで、ただひとり、上を向 いて大笑いをされていたというのが繊維部会でありまして、たしか木嶋部会長で、そのあといろいろな所でその話が伝わりまして、大分修正されてましたけれど も、結果的には木嶋前部会長の予測通りに99年は繊維部会にとって非常にいい、好況の風が吹いたと。あの大幅切り下げのなかで、まず中国の安物が入って来 なくなっただけで、これで大勝利だといわれて、今日も室副部会長から報告があったように、99年は本当に繊維部会に良い風が吹いたと。で、引き続いて 2000年も吹きそうだと。さきほど化学部会の矢島さんから、話がありましたけれども、化学部会は農薬を除いてはいい、繊維の方は化繊・合繊がいいという ので、ちょうど両部会が合致しているのかなと思います。それでは引き続いて、去年、繊維部会ほどじゃないけれども、かなりニコニコされていた、食品部会の 上原部会長お願い致します。

 

2000年上期業種別部会長懇談会-繊維部会(レポート)

部会長 : 木村 武

1999年の回顧

1月半ばの為替切り下げ、変動相場制移行により、繊維業界も先行き見通し不透明な大混乱のスタートとなったが、為替切り下げによるコストアップ分は、川 上、川中、川下の各段階で負担吸収し、年末にはやや復調はしたものの、年間を通じて低調であった消費市場での商品価格への転嫁は出来なかった。

輸出は、11月までの実績を98年度と比較して見ると、当初想定された程には急伸せず、綿糸で言えば輸出の長期減少傾向に歯止めが掛かった年であった。

輸出の増加が望め輸入が抑えられること、ブラジル経済の予想を上回る早い落ち着きがインフレ等の先行きの見通しを楽観視させたこと、このマインド変化が 国内の繊維需給バランスを品種によりムラはあったものの概ね好調にさせ、押し並べて99年は98年より良い年となった。

2000年の展望

ブラジル経済に対する堅調予想、レアルおよび金利の安定見通し、インフレの落ち着き予想、輸入の低調・輸出の増大見通しから、内外にて偶発的な異常事態 が発生しない限り、今年は大きな落ち込みのない年になるであろうと期待している。一時的な需給環境の変化に気を抜くことなく、競争力強化のための経営努力 がより一層求められる年である。

1.綿紡

1)原綿

98/99 年度のブラジルの綿作は、前年度比26%増、2年前の31万トンから見ると68%増の52万トンの大幅な増産となったが、国内の年間原綿消費高は80万ト ンと言われており、不足分の約30万トンを輸入綿に頼ることになった。国際商品である綿花はNYに定期相場があり、国内綿も基本的にこの綿花相場に連動し ている。国内綿は2月中旬にはポンド当り120センターボまで上昇し、その後国内新綿の出回りに伴い相場は下降に転じ4月にはポンド当り90センターボ前 後の水準となり10月末まで安定的に推移した。これはNY綿花定期相場の低迷の影響も受けている。しかしながら、11月に入り紡績の順調な綿糸の販売状況 から相場は上げに転じ、ESALQ指数は10月末のボンド当り92.13センターボが12月末には101.35センターボと10%上昇した。

国際綿花相場は、米国を始めとする綿作国で生産が伸びたことに加え、輸入大国である中国の綿花輸出等から供給過剰感が強くなり弱含みで推移した。米綿は 13年ぶりの安値でNY綿花定期相場は、年初ポンド当り60セント近い相場が年央には50セント前後と大幅に下落した。98/99綿花年度は、米国農務省 発表の数値によれば世界生産高が1,840万トン、世界消費高が1,850万トン、季末世界在庫907万トンとなり、対消費季末在庫率は49%と高水準で あった。

99/2000年度の国内綿の見通しは、全体として植え付け面積は前年度並みで生産予想も50万トン程度と見込まれており、今年も30万トン程度の輸入が必要となる。

世界の99/2000年度の綿花需給予想は、米国農務省の昨年12月の発表によると生産高は1,900万トン、消費高1,910万トンと98/99年度 に比べ生産、消費共に増加しているものの、季末在庫は900万トン近い水準であり、対季末在庫率は47%の高水準を保ったままである。

相場については、大幅減産予想の中国の動向が国際相場に影響を与えるが、中国自体の在庫は未だ高水準であり(生産高414万トン、消費高446万トン、 季末在庫324万トン、在庫率73%)、季末在庫率40%が相場の分岐点との見方からすると、今年も相場は低水準に推移するものと思われる。

2)綿糸

レ アルの大幅切り下げと言う波乱に満ちたスタートを切った99年であったが、終わってみれば次の点からまずまずのシーズンであったと言える。①原綿代のコス トアップ分を一応価格転嫁出来たこと。②繊維製品の輸入が減少し、逆に輸出が増加して国内の需給バランスが好転したこと。③50年振りと言われる寒くて長 い冬物商戦が好調であったこと。

2~3月にかけ20~25%の値上げを実施したが、最終消費者の購買力は失業、不景気、雇用不安から 弱いものであり小売り価格に転嫁できず、早くも4月には糸値の値下げ要求が厳しくなり4~6月にかけ5%程度値下げを行い、川上、川中、川下の各段階でコ ストアップ分を負担吸収した。

輸出は、レアル切り下げによる国際価格競争力の回復により、国内市況が一服気味であった4~8月にかけ て輸出成約を積み増ししたが、89年の56.4 千トンからすると11月までの集計ながら13.8千トン(98年同期9.9千トンで39%増)と、輸出の長期減少傾向に歯止めが掛かった年であった。

2000年度は為替の動向如何であるが、輸入の低レベルによる国内需給バランスの良好見通しから、輸出も含め順調に推移するものと思われる。

2.毛紡

イタリア、日本、韓国の高級品種細番羊毛の需要は旺盛で、中国、インド等の羊毛消費後進国でも細番志向が強くなり(製品の高級化現象)、中、太番手のいわゆる定番品は需要が低迷した。このため、無いもの高の余りもの安の相場展開となり、羊毛の消費の絶対量も減少している。

ブラジルの産毛量は、ピーク時の38千トンから98/99年度は12千トンに99/2000年度は11千トンの予想で、減少の一途を辿っている。国内のアバレル用市場は非常に小さいものであるが、椅子張り等の資材向けは安定している。

3.絹

99年度の生糸・撚糸の状況は予想数字で、生産量は1,500トン(対前年比20%減)、輸出量は1,773トン(対前年比6%増)、輸出金額はUS $4,825万(対前年比7%減)、輸出単価は前年比US$3.27/KGダウンのUS$27.23/KG(対前年比12%減)であった。

2000年は生糸の実需増というよりも供給減という観点から価格のアップが期待できそうだが、世界の7割の生糸生産国である中国の動向と「元」の切り下げ問題から、今年も不透明な状況が続くと思われる。

4.化合繊

原料は年間でポリエステルは約20%、レーヨンは30%弱の値上げとなり、これを糸値で約20%の値上げをしたが、中間段階で値上げ分を吸収し末端価格には余り波及していない。輸入の停滞もあり、数量的には98年度を上回った。

2000年度は、原料価格は上昇傾向にあり、為替による輸入抑制効果もいつまで続くかであり、99年度並みの販売量の期待感はあるものの、難しい年である。

5.織物

1)薄地織物

2~3月に19%、9月に3%、合計約23%の値上げを行ったが、数量的には98年比3.3%減少した。これは夏らしい気候が訪れず衣料の消費が 2000年に持ち越されたためである。輸出は数量的に前年比10%増となった。しかし、価格面では値下げを強いられ厳しいものであった。

2000年度は、希望的観測だが昨年の天候不順による夏物持ち越し分に、$1=1.8~1.85Rと想定し輸出と言うオプションが加わった分だけ期待感を強めている。

2)シャツ地織物

原材料費の上昇分を吸収すべく約25%の値上げを行ったが、期前半は順調な荷動きであった。期後半はこのため期待大であったが天候不順により低迷し、年 末になり荷動きは好転した。輸出は昨年比拡大はしなかった。総じて言えば、国内が比較的正常な状態であったことから良好な年であった。

2000年度は、為替の輸入抑制効果の持続期間と現行輸入規制(最低価格制度)の継続の可否によって需給バランスは大きく変わるため、また、コストアップの未転嫁分約5%の値上げを交渉する必要があることから、期待半分、厳しさ半分である。

3)厚地織物

輸入は大幅に減少し、寒い冬であったことから重衣料は在庫一掃された。しかしながら、原価上昇分は小売りの強い抵抗に遭い、川中、川下で吸収したため採算的には不満が残った。

2000年度はまずまずの滑り出しであり、大きな為替の変動がなければ、忙しい年になると予想される。

以上

2000年上期業種別部会長懇談会-食品部会

  • 購買力低下で伸び悩む
  • 小売業界寡占化進む
  • ブロイラー好調
  • コーヒーは天候が心配
  • 乳酸菌飲料は前年割れ
  • 調味料3%の伸び

上原: それでは、昨年まで『元気印』だった、食品部会から報告をさせていただきます。先ほど、宇治さんのほうから、大変貴重なお話をうかがいました。「人間、逆 境の中にあっても、常に泰然としておれ。そうすると良いことがある、今年に期待しよう」と。その姿勢、非常に参考にさせていただきたいと思います。それで は、食品部会の報告をさせていただきます。

大手スーパー寡占化で食品メーカー不利に

99年の回顧ですけれども、私共の食品業界も、為替切り下げの影響を受けました。私たちの食品業界は、部会としてはこじんまりとした部会ではないかと思 います。ヤクルトさんの乳酸菌飲料、それから味の素さんの調味料、コーヒーのイグアスコーヒーさん、それから清酒・ビール・味噌・しょうゆの東山さん、外 食産業のサントリーさん、それから、インスタントラーメンの日清味の素。 と、こういう構成です。

私どもの部会の場合は、もう「業種」と言ったらイコール各論、各企業論になってしまいます。そういうことで報告させていただきます。

食品業界も、大変な年でございました。国内市場全般では、おそらく中・低所得者層の購買力がなくなってしまい、売り上げが伸び悩んでおります。外食業界 におきましては、入店客数が減ったり、あるいは一人あたりの客単価が下っているということがございます。それから小売業界におきましては、カへフール、あ るいはポン・ジ・アスーカルに代表されます大手量販ですね、これの寡占化が、これがどんどん地場のスーパーまで買収をしておりまして、バイン・パワーを強 化していますので、メーカーがやはり不利な立場に置かれていると、こういう事でございます。

業界別の動向ですけれども、まず、農 産・畜産におきましてブロイラー、ブロイラーは99年度は国内生産量、昨年に対して16パーセントアップ、450 万トンから520万トンへのアップとなりました。それから輸出、これは25パーセントアップということで、国内生産・輸出ともに好調であったということで す。日本を始めとして、アジア、このへんの市場回復、それから、為替メリット、こういうことで競争力がついたという事になります。今年も同じような数量が 見込まれますけれども、価格については、過剰感から軟化傾向になるんではなかろうかと見ております。

次に、大豆の99年度の収穫量 は、3100万トンでございました。これは98年が史上最高でございましたけれども、98年に比べて5パーセントの減収。ただし、輸出は前年並みの950 万トンでした。2000年度の予想ですけれども、大豆に関しましては、南部のセッカ、旱魃ですね、これの収穫に与える影響が懸念されているということで、 悲観的な方は3000万トンを割るんじゃないか、という見方をされておられます。

大豆、砂糖減産、 生産調整-2000年

続きましてオレンジですけれども、濃縮オレンジジュースの生産量が110万トンということで、98年並みだった。で、この果汁生産は、大手5社に現在集 約されているそうです。そういうことで、生産調整が行われて、価格も弱含みとなった。2000年につきましても、世界的な消費の横ばいが予想されるという ことであります。

砂糖につきましては、アジアでの需要が伸び悩んだという事と、国際価格がダウン・トレンドとなったという事ですけれ ども、国内におきましては、砂糖アルコールを政府が買い上げた事で、若干持ち直したという事です。2000年度におきましては、砂糖農家が充分な収入を得 られなかったという事で、先ほど矢島さんの方からもお話がありました、肥料をですね、充分に与える事が出来ない状況にあるようです。砂糖につきましては、 今年はちょっと減ってくるんじゃないか。ということで、生産見込みは2000万トンと、そのうちの輸出は900万トンから950万トンであろうと、こう言 うことでございます。

コーヒーは、さきほど、お話が出ましたけれども、専門家の皆さんがいらっしゃいますので、簡単にさせていただき ます。今年は、消費国の在庫が低水準であるという事、これははっきりしておりますけれども、今年の収穫見通しがはっきりしないと。コーヒーの結実期は丁度 今頃で、1月末から2月初めですが、これがどうなるかという事で、特に上半期、波乱物価含みの展開が予想されます。

値頃感、サービス充実要求される外食産業

続きまして、外食産業、これはお店、業態、あるいは取り組みによりまして、ずいぶん明暗を分けたというすです。為替が約50パーセント切り下げられ、原 価率が総じて前年と比べ10パーセントから15パーセントアップし、これを客単価の方にしわ寄せがなかなか出来なかったという事が現状でございます。そう いう中で、皆さんも肌でお感じになっておられると思いますけれども、いわゆる高級レストラン、あるいは特色を出しているレストランは伸びている。逆に、庶 民層を対象にした、普通のお店、あるいは安いお店、この辺にやはり、経済ショックの影響があらわれたという事でございます。今年度は、値頃感の演出、ある いはサービスの充実と、こういったことが必要で、これが出来ないところは、どんどん淘汰されて行くんじゃないかとこういう事でございます。

続きまして、加工食品のうちの乳酸菌飲料、これはヤクルトさん一社しかございませんが、競合他社の安売り、それから、全体的な消費量の減少とかいうこと で、前年割れになったということであります。で、昨年8,9,10月にかけまして、全国的なテレビ宣伝で、さらに大々的なセールス・プロモーションを行っ たけれども、期待したほど効果は現れなかった、という事でございます。

リンゴ輸出にプラス-為替切り下げ

ただ、一方ではですね、通貨切り下げによってメリット分もありまして、これはリンゴですけれども、この通貨切り下げにより、アルゼンチン産のリンゴの輸 入が減り、それで国産価格も堅調に推移して輸出も好調な結果があったという事です。今年度につきましても、訪問販売体制の強化、その他、宣伝投下とかやっ て乗り切りたいという事です。

インスタントラーメンは、この10年ほど、二ケタ成長してきましたが、去年のこの部会長会の時でもそう いう気持ちでいたんですけれども、残念ながら昨年は低成長に終わってしまいました。前年比103%ということで、92年以降初めて厳しい体験をしたという 事です。小麦粉、あるいは包装紙材、こういうもの全部を輸入に頼っておりますので影響を受けました。今年も前年並み程度か、という見方をしておりますけ ど、我々としまして102から103パーセントの伸びという、低い伸びの予想をしております。

調味料の味の素さんですけれども、対前 年比家庭用の調味料市場は103%の伸びでありました。ただし、我々のほうもそうですけれども、低価格志向が非常に強まった年であったということで、これ は安いブランドも出ましたし、それから大手量販店のPBブランド、こういったのもかなり出て来ております。今年、2000年につきましても、堅調な拡大が 期待されるけれども、価格競争が一段と厳しくなるんじゃないかと、こういう見通しでございます。以上で、食品部会の報告を終わらせていただきます。

司会:食品部会の伸びと言うのは、他の産業と大分違いまして、「3%しか伸びなかった」と顔を伏せて報告される。他の部会長さんの顔が見にくいと・・。

上原:私 どもの業績で申し上げますと、数量ベースで103パーセント、それから3月から少し値上げをしましたので、売り上げベースでは一応105パーセントという 事ですけども、これはもう、ここ、92年からの一番最低の伸びですので、私の真価が問われていると、こういう事でございます。

司会:私 の発言に更に輪をかけた発言がありまして、5パーセントしか伸びてないと、非常にさびしい業界だそうです。渡辺さんから、去年お話いただいて記憶に残って いるのは、非常に、この切り下げで厳しい。だけれども、自分のところは、値上げをしないでがんばるんだ、と言われましたけれども、いかがでしたか、去年 は?

去年は値上げできなかった

渡辺委員(副部会長):値 上げはしませんでした。というか出来ませんでしたっていうのが実状ですね。結局、まあ何社か競合が値上げをしているのを見るとやはりもう、購買力のない消 費者があからさまに逃げて行くというのが、手に取るように分かりましたので、まあ実際値上げをしなかったというか、出来なかったというのが現状です。た だ、結果的に売り上げではですね、おかげさまでかなり伸びたんで、これはやっぱり値上げをしないで正解だったと、ついこの前まで思っていたんですよ。で、 今年、連結の関係で、ちょっと決算早目に閉めましてですね、数字を見ていると、やっぱり営業利益ベースでかなり予定を下回っちゃったと。これは輸入のキリ ンビールを無理して売ったとかですね、そういう理由もあるんですけれども、やはり原材料費の高騰っていうのが、かなりダメージとしてきているなあと。やっ ぱりこの国は、値上げしないといかんのかなあ、とちょっと迷ってる感じですね(笑い)。ですから、景気動向によっては、やはり、去年は全然値上げをするど ころじゃなかったんですが、今年実際、経済成長率がアップすれば、場合によってはデマンドインフレというのが、うちの業界にだけじゃなくて起こりうるん じゃないかと感じております。

司会:それから、上原部会長の今の発表で食品店が、高級店がいい と。我々の認識では、ポルキロとか、ああいう安いところが、いっぱい人がいて流行っているんじゃないかと。高級、高いレストランは、あんまり人がいないな と思っておったんですけれども、高級店が良くて、低級店が悪いということですか。

上原:これにつきましては、渡辺さんの方があの、材料を納入しておりますので、どうぞお願いします。

レストラン高くても美味、サービスよければ流行る

渡辺:あ の、食品部会では和食レストランを中心に話をしているんですけれども。これはもうブラジル全体として見ましてやはり、その和食に限らずですね、イタリアン レストランにしても、フランスレストランにしても、結局、高くてもおいしくて、サービスが良いというところはやっぱり何時も流行ってるですね、というのは 結局ブラジル人っていうのは、金持ってる連中っていうのは持っているんですよね。ですから、彼らが、行って満足できるレストランがあればやはり行くと。た だ結局、もうちょっと安いレストランに行くとやはり、まあいろんな、為替の切り下げの影響だとか、つまり、財布とにらめっこしながらということになってい るんじゃないかと思いますけれど。

司会:次は電気電子部会、江口部会長お願いします。

2000年上期業種別部会長懇談会-食品部会(レポート)

部会長 : 上原 清助

1)99年の回顧

1月13日の為替変動相場制への移行によってスタートした99年度は、様々な業界に影響を与え、まさに激動の1年となった。

食品業界も例外ではなく、輸出関連企業にとっては輸出競争力を向上させる結果となったものの、国内市場全般では、国民の可処分所得の伸び悩みによる消費 環境の低迷が顕著となり、各企業とも製造コストのアップを充分に価格に転嫁できず、かつてない厳しい経営環境を余儀なくされる結果となった。外食業界では 入店客数及び客単価の伸び悩みが経営を圧迫した。小売業界においては大手企業による買収がめざましい勢いで進展し、消費者の低価格志向と相俟って「価格競 争」が激しさを増した。

2)2000年の展望

【業界別動向】

1.農産・畜産

1)プロイラー

99年度は、国内生産量・輸出共に好調で、前年比それぞれ16%、25%増となった。日本を初めとするアジアの市況回復や為替DEVALUEによる輸出競争力のUPが主な要因。

2000年度も同程度の数量が見込まれるが、価格は供給過剰感からやや軟化傾向となろう。

2)大豆

99年の収穫量は3,087万トン、史上最高を記録した98年に比べて5%の減となった。輸出はほぼ前年並み。年初の伯南部における多雨、世界的な相場下落が原因。

2000年度予想は、南部における乾燥が収穫に与える影響が懸念されており、3,000万トン割れという悲観的な見方もある。

3)オレンジ

99年のクロップの濃縮オレンジジュース生産量は1,114千トンと前年並み。果汁生産が大手5社に集約されたため、生産調整が行なわれ、価格も弱含みとなった(US$1,300~1,000/トン FOB SANTOS)。

2000年度も世界的な消費の横這いが予想され、99年度並みの生産量に調整されよう。価格も1,200US$をはさんでの展開が見込まれる。

4)砂糖

昨年はアジアを初めとした需要の伸び悩みと、主要生産国の増産のため国際価格はダウントレンドとなった。国内では、砂糖アルコールが政府の買い付けにより若干好転したのと、供給タイト感から価格が12月に急騰した(9月R$8.50/50㎏→12月R$19.00)。

2000年度は、砂糖農家が昨年の軟調な価格による収入不足のため充分な肥料等の手当が出来ておらず生産減が予想される。ロシア向け輸出が減少しても、 国内向け需要が堅調なことから国際価格は底を打ち回復が見込まれる。生産見込みは20百万トン、内輸出9~9.5百万トン。

5)コーヒー

99年度の相場は、年初の大豊作予想、9月以降の干魃懸念により大荒れとなった。

2000年は消費国在庫が低水準であり、00/01年クロップの減産程度が明かでないため、特に上半期は波乱含みの展開が予想される。

2.外食産業

各 店の業態・取組により更に明暗を分けた年となった。通貨下落に伴う輸入食材のコスト・アップが経営を直撃し売り上げ原価率が前年比10~15%程度アッ プ。また、来客数も総じて伸び悩み、あるいは減少傾向にある中で、高級店健闘、庶民層をターゲットとした店は総じて苦戦という特色が見られた。

2000年度は、各店とも値頃感の演出やサービスの充実等を一層推進することが急務であり、これが出来ないところは淘汰されるという厳しい1年となろう。

1)乳酸菌飲料

競合の激化と消費の低迷から前年割れの結果となった。需要喚起のためTV広告を全国規模で行ったものの、期待したほどの効果は得られなかった。一方で通 貨切り下げにより、アルゼンチン産リンゴの輸入が減少し国産価格が堅調に推移したため、輸出も含めて好調な結果となった。

2000年度は、引き続きTV広告の投入と訪問販売体制の一段の強化、人材育成にも注力していく。

2)即席麺

99年度の即席麺トータルマーケットはほぼゼロ成長となり、92年以降、体験したことのない極めて厳しい1年となった。通貨下落による製造コストアップを吸収せんとする各メーカーの値上げが消費者の購買意欲に水を差した格好となった。

2000年度も業界全体の大きな伸びは期待できない中で、価格競争を中心とした競合の激化と参入企業の増加が予想される。

3)調味料

家庭用調味料市場は対前年103%となったものの、その牽引役となったのは「安価ブランド」によるところが大きく、可処分所得が増えていない中での消費者心理を反映する格好となった。大手量販店のPBブランド戦略の進展等もあり、大手メーカーがシェアを失った。

2000年度も市場は堅調な拡大が期待される一方で、価格競争も激しさを増すものと思われる。また、流通業界の再編が一層加速し、これに如何に対応するかも大きな課題となろう。

以上

 

2000年上期業種別部会長懇談会-コンサルタント部会

  • 今後の国際収支動向に注意
  • 外準はIMF合意の最低線にかなり近い
  • 為替は「管理相場制」になっている
  • 米金利、原油価格の行方注視
  • メルコスルも懸念要因

 

楽観ムードをもたらした8つのポイント

田中: それでは、ご指名によりまして、私のほうからお話をさせていただきます。
岡田さんからいまお話がありましたので、出来るだけ重複しないようにしたいと思います。

また、去年の実績は最小限に、今年の問題点と見通しにウエイトをおいて話を進めたいと思います。

まず一つはさきほど岡田委員長が申されたように、去年は非常に暗い見通しからスタートしたけれども、結果的にみてブラジルの対応は大体うまくいった。そ の条件的なものとしては、インフレが抑制されたということですが、これはまだブラジル経済全体の消費及び投資水準が低く、失業が高水準だったことから卸売 物価は約20パーセント上昇したけれども、それが小売物価へ転嫁できず、消費者物価が9パーセントしか上がらなかったということです。

「失われた80年代」と言いますけれども、80年代でも経済成長率は年平均3%。ところが90年代は1.7%くらいしかなかった。まあ、そういうことで、まだ経済にゆとりがあって小売価格への転嫁が難しかったということです。

2番目はリセッション回避。当初、経済成長は3~4%のマイナスを見込んでいたわけですけれども、実際にはトントン乃至若干のプラス見込みと。
これはドルレートの暴騰が回避できたこと、それから金利を急ピッチで下げたことの効果による。金利は9月以降は下げてはいませんが。

まあ、10月後半くらいまではかなり悲観ムードが強かったんですけれども、10月から11月にかけて一転して楽観ムードになった。その要因を列挙します と、 ① 中銀が介入幅を拡大し為替レートが安定した。 ② 財政の一時収支の目標達成が確実になった。 ③ 格付け会社による「ブラジルの格付」けが上がった。 ④ 心配された米国の経済が一応インフレのないコントロールされた上昇を続けた。 ⑤ 心配されたアルゼンチンでは予想通り野党連合のデラルーアが大統領に当選し、財政調整パッケージを出し、為替パリティーの維持ということで一応為替切り下 げが遠のいた。 ⑥ ブラジルの輸出に回復の兆しが見えてきた。 ⑦直接投資も順調で前年より多い約300億ドル入った。

⑧全般的に世界経済に上昇気運が感じられるようになってサンパウロの株式指数は、去年の暮れには17,091ポイントと、98年末の6,784ポイントに比べて152%の上昇。ドルベースで69%の上昇で、ブラジルだけでなく世界も全体的に明るいムードになった。

今後もつづくか楽観ムード

外準 それじゃあ、この楽観ムードが今後続くのかどうかですけれども、ブラジル経済の一番大きな問題点、警戒を要する点は国際収支ですね。
昨年は国際投資が300億ドルと多額に入ったわけですが、ブラジル企業の外債返済における新しい借り換え額が返済額に追いつかなくなった。返済額590億ドルに対して新規借入れは439億ドルでした。

短期資本もブラジル危機のありました98年ほどではなかったが、依然として流出が続き、ネットで60億ドルのマイナスになった、ということです。
したがって、外貨準備高を見ますと、99年末は363億ドル。98年末が446億ドルですから昨年は減少しております。IMF関係の借り入れがあり、これらを除くと98年末は393億ドルで、それが去年の末は240億ドルとなっております。
IMFとの合意による外準最低線(IMF借款を除いた)は203億ドルですから、その線にかなり近付いておるということですね。

ご承知のように去年1月の為替切り下げ前まではレアルプラン以降、ずっと変動幅制、いわゆるバンダ制度をとり、これをアンコラカンビアル(為替いかり)ということで為替の安定を維持する事によって経済安定、発展をめざしてきました。

当時は高金利と国債の増発により金融財政上のかなりの犠牲を払うことによって、輸入の十数ヵ月分という巨額の外貨準備高を維持してきたわけです。これによって、アジア危機、ブラジル危機にさいしてかなりアタックされたけれども一応は耐えられたといえます。

為替と外準 現在はご承知のように変動相場制となっております。為替相場が市場で調整されるんですね。

外貨準備は輸入の数ヵ月分で十分だといわれております。しかし、現在のブラジルを見ますと、さきほども触れました変動相場制が建前と違いまして、中銀がIMFとの合意の下にかなり為替市場への介入幅を広げており、いまや「管理相場制度」ですね。

ですからそういう意味では「バンダ制」と実質的に変わらない。当時と違う点は金融財政上の負担は減らして、そのかわりに外貨準備は最低線になってる、と いうことです。そういう意味では為替、外貨準備という点では無防備状態になっており、これが一番大きな問題点じゃないかといえます。

今年の外的要因 - 欧米金利、 原油価格、メルコスル

今年の動きを見る上で海外の動向が大きな要因になりますが、そのひとつが米金利です。明日(2月2日)発表になるが、上げ幅が0.25か0.5%か、さらに3月も上げるか、といったその辺に焦点が絞られております。

昨日のダウ平均はもうすでにそれを織り込みずみで上がったけれども、サンパウロの平均株価は下げております。これはやはり、エマージング・カントリーに対する資金の流れが減るという事を見越しているようです。

それで世界的に金利引き上げの傾向が強まっています。ヨーロッパもこの前、イングランド銀行が上げましたけれども、あとヨーロッパの中央銀行が上げるかどうか。

それから原油価格が上昇気味でこれがひとつ。2番目はメルコスル。さきほど申し上げましたようにアルゼンチンの為替切り下げの懸念は一応遠のいた、とい いますけれどもアルゼンチンが非常にブラジルの為替切り下げについて根強い不信感を持っており、今後のメルコスルの動向というのが貿易面も含めて注目され ます。

アルゼンチンでは予想通り野党候補が当選しました。彼はメルコスルの推進論者であり、通貨パリティーの維持者、財政改革の推進 者でもあるわけで、すでに「財政調整法案」も議会を通ったということです。また、外債をこの間ブラジルよりも前に出しましたけれどもスプレッドはブラジル が650、それに対してアルゼンチンは500いくらということでアルゼンチンよりもスプレッドが出ております。

問題はある程度長期的に見た場合、前述のようなわけでメルコスルの将来が注目されるということです。

ロシアの動向

3番目はロシアの動向です。3月の大統領選挙をひかえ経済は依然として不透明、不安定です。チェチェン紛争もあり、そういった海外の動向にかなり左右されます。

国内要因

国内要因は10月の市長選挙による財政の支出増、それから国会の審議のおくれが懸念されます。

数字的なことは、情勢によって左右されるので言っても余り意味がありませんが、一応目安としてジェトウリオ・バルガス財団(FGV)発表の数字をあげますと

▲IPC(インフレ率)
・楽観的見方  年8%
・保守的見方  同9.2%
・平均     同8.6%

▲経済成長率
・楽観的見方  年3.4%
・保守的見方  同2.8%
・平均     同3.12%

▲金利
・楽観的見方  年18.75%
・保守的見方  同19%、19.25%
・平均     同19%

▲ドル・レート(12月末)R$1.90と 1.95

▲貿易収支
・楽観的見方  44億ドル
・保守的見方  36億ドル
・平均     28億ドル

以上はFGVがここの金融機関の数字を集めて弾き出したものです。

明るいムードで明けた年はよくない

私のいままでの経験から言いますと、年末の見通しが非常に明るい時は大体、1年過ぎてみると「余りよくなかった」。それから暗いということでスタートし たときは「よかった」と。殆ど例外なくそういうふうになってますので、今年はわりあい明るいスタートになりますので、そのジンクスがくずれることを期待し て私の話を終わりにします。

司会:どうもありがとうございました。年末の見通しが明るいと、その年はよくないと。年始の見通しが暗いと良いと。ということは99年10月以降、楽観論が大分出てきたということですから、2000年は良くないという事ですね?。

田中:そうならないように期待したい。私のいままでの経験がはずれる事を期待しております。

司会:次ぎは山浦金融部会長にお話をお伺いして、その後若干の討論をしたいと思います。

2000年上期業種別部会長懇談会-コンサルタント部会(レポート)

部会長 : 田中 信

1.1999年の回顧

1999年は年明け早々の1月13日、為替バンダ(為替変動幅)を従来の1.12~1.22レアルから1.20~1.32レアルに引き上げるとともに、 その中で1週間毎に変更していたミニ・バンダを廃止した。そのためドル相場は前日の1.21レアルから1.32レアルの天床に張りつき激しいドル流出に見 舞われた。

中銀は15日、バンダ制を廃してフローティングに移行した。

当時は、1999年経済動向に対し悲観的観測が支配的であったが、年を終えてみると結果的にブラジルの対応はほぼ成功であったと言うことが出来ると思われる。

(1)切下げによる最も大きなネガティブ効果としては、インフレ昂進で、中には30~50%に達するという見込みも多かった。政府がIMFと合意した目 標は17%であったが、実績は卸売物価のウエイトの高いIGP-DIは20%となった。しかし、政府が採用したインフレーション・ターゲッティング・シス テムで定めた目標はIPCA8%(上下2ポイントのアローアンス)であったが、実績は9%と許容範囲内に留まった。

(2)切下げにより予想されたもう一つの大きな影響は景気の大きな落込みであった。3~4%のマイナス成長という見通しが最も多かったが、実績はトントン乃至は若干のプラスとなった見込みである。

(3)切下げにより最も期待されたのは輸出増加による貿易収支の改善であった。
政府は当初、110億ドル黒字の目標を掲げたが実績は12億ドル赤字で終った。前年98年の65億ドル赤字に比較すれば大幅改善であるが、輸出は前年比6%減で、15%という輸入の大幅落込みにょる貿易収支の改善である。

(4)サービス収支も、支払金利は増加したが、海外旅行、利益送金などの減少により、改善したため、経常収支も98年の336億ドル赤字から、99年は 244億ドルの赤字へと改善した。但し、切下げによるドル建GDPの減少により、経常収支の対GDP比率は98年の4.33%に対し99年は4.39%と ほぼ横這いであった。

(5)外国企業の直接投資は98年の259億ドルから99年は300億ドルに増加し、余裕をもって経常収支赤字をカバーした。
しかし、ブラジル企業の外債返済は98年の336億ドルから99年は519億ドルと大幅に増加、これに対し中長期借入は98年の620億ドルに対し99年は439億ドルと返済額をカバーするに至らなかった。
短期資本も98年の273億ドル程ではないが、99年は60億ドルと依然流出は続いている。
その結果、99年末外貨準備は363億ドルで、IMF関係借入を除くと240億ドルと、最低ラインの203億ドル近くまで落込んだ。

2.2000年見通し

99年は年初の切下げ以来混乱が続き、年央には小康状態となったが、その後インフレ昂進の気配、外債返済のためのドル需要、政治的不安定などの国内要因に加え、米国の利上げ懸念などの海外要因も重なり、10月後半まで企業や市場には悲観色が強かった。

しかし、10月末から11月初めにかけ、ドル相場の落着き、IMFの支援条件である財政一次収支達成見込、ブラジル格付上昇、米国経済のインフレ無き成 長継続確認などにより、一転して楽観ムードに変わった。BOVESPA(サンパウロ株式)指数は98年末の6,784から99年末は17,091と 152%(ドル・ベースでも69%)上昇した。 

本年のブラジル経済は、海外要因に大きく左右される可能性が強い。その主なものは、

● 米国経済、特にインフレと金利。
● ロシア大統領選挙やチェチェン紛争に関連する経済動向。
● 原油価格の動向。
などである。

国内要因としては、
● 市長選挙に関連した財政動向、諸改革の国会審議の動向。
● 景気回復に伴うインフレと輸出入の動向
などが考えられる。

2000年上期業種別部会長懇談会-建設不動産部会

  • 財政責任法は建設業界に影響大
  • 主要建設資材値上がりが収益圧迫
  • 商業ビルは入居率確保に苦労
  • インテリジェントビルに人気集まる
  • 建築は中高級アパートに今後注力

 

今年のブラジルの建設業の行方に大きく作用する要因と致しまして、先ほど岡田委員長が話されました財政責任法(LEI DA RESPONSABILIDADE FISCAL)という法令が下院を通りまして、これが制定されるか否かということが非常に建設業界でも興味深く取り上げられております。というのはこの法 令の中に「国、州、市の代表者つまり大統領、州知事、市長の在位期間が1年を切った場合、この代表者が大きな事業を遂行するための資金の借り入れ、計画を 行ってはならない」という事項が入っています。

これ対して今年の10月に予定されている市長選に立候補している特に現職の市長たちが 大変反発しています。もしこの法令が実施されますと現職の市長たちが選挙運動の一環として大きな公約を立てられなくなります。そうしますと、非常に選挙活 動がしにくくなり、ひいては公共工事の減少につながります。公共事業が減ると、ブラジルの大きな建設会社が普通の民間の仕事に下りて来ますので、やはり我 々にも影響してくるわけです。

セメント、砂、鉄筋、鉄骨、アルミ 昨年20~30%の価格アップ

次に昨年来続いている建築資材の値上がりでございますけれども、SINDUSCONという建設組合の調べは、主要建設資材、例えばセメント、砂、鉄筋、 鉄骨、アルミ等ですね、これらの去年1年間の値上げ率が約20%から30%となっており、建設業者の採算性に大きく影響しております。この値上げの要因と しましてはペトロブラスのオイルを始めとする公共料金、輸送費等の値上げが挙げられます。また、この中のセメントにつきましてはそれだけではなくて、大手 業者が中小業社を吸収合併することによって、数社の大手業者によって価格の吊り上げを行っているという噂もあります。この件につきましては、我々建設業社 もSINDUSCONを通じまして申し立てを行っておりますけれども、なかなか事態は好転しておりません。

以上の2点は今年の建設業の行方に大きく影響いたしますので、今後も注意深く見守っていきたいと思っております。

次に1999年の回顧に移らせていただきます。まず、建設業界ですけれども1月早々の通貨切り下げの影響はやはり大きく、その結果として建築主の設備投 資計画の見直し、延期、中止が相次ぎ建設工事の受注は延びませんでした。その上、先ほど申しました公共料金、ガソリン、一部建築資材の異常な値上がりは、 採算面を圧迫し、受注、利益ともに大変苦しい1年でした。

受注は日系、通信関連が激減不足分をローカルで補った

次に建築主を、日系、通信関連、ローカルの三つに大きく大別し、総受注金額に対するそれぞれの割合を98年と99年で比べて見ました。

この問題を見ますと、日系と通信関連が激減し、その不足分をローカルで補っているという状況になっております。その結果、各社ともローカル物件に注目い たしまして、その競争は大変熾烈なものとなりました。次に、不動産業界ですが、商業ビルに関しては99年前半は前年からの不調が続き企業のリストラの一環 として、スペースの縮小、本社と工場の一体化等が相次ぎ入居率の確保に苦労を強いられておりました。しかし後半に入って多少の景気回復の期待感が出てきま すと、入居希望の引合も増えて参りまして、全体としては商業ビルに関しては前年並みの実績を売上ベースで残すことが出来ました。

ア パート販売につきましてはポピュラーアパート、1つの物件の売り値が5万から6万レアルくらいのアパートですが、これが一番良く売れてた時にはひと月に 15件から20件成約があったそうなんです。それが、去年の10月以降、月一件にまで落ち込んでしまいました。その半面、中高級アパート、これは売り値が 35万から40万レアルくらいですけども、これがある程度好調な売れ行きを見せまして、まあ何とか全体としては売上で前年比の30%減くらいですんだとい う事です。

次に2000年の展望をお話させていただきます。まず建設業界、2000年に入っても特に前半は大幅な受注増は見込めそう にありません。これは建設業の性格上、市場の景気動向が良くなっても半年から1年以上建設業にはそれが遅れて来るためです。しかし、後半にはある程度の受 注増が期待できると思っております。その要因としまして昨年まで控えていた建築主の設備投資の再開、公共工事の増加、通信関連分野での低価格競争から品質 重視入札への見直し等が考えられております。以上のような状況から各社の2000年の受注予想は8社平均で99年当初計画値の102%となっております。

不動産業界につきましては、商業ビルに関しては、99年後半よりテナント希望の情報量が増えてきており、本年のブラジル経済回復とともに、順調な伸びを 示すと予想されております。また、現在の金利状況が続けば、投資家の不動産投資も回復し商業ビル、アパートの新築も増えそれに伴った仲介業も多くなるだろ うと言われております。オフィスビルにおきましては2極分化が進み、立地条件が良く、通信インフラ、OA化、セキュリティ、といわゆるインテリジェント化 の進んだ物件は高い家賃設定にも関らず入居率を維持すると思いますが、古い建物に関してはその反対になるということで、家賃の値引き合戦に巻き込まれ厳し い局面を迎えると予想されます。ですから特に建築年数が経過したビルについては、これに対応すべく大規模改修等必要になって来ると思われます。

今年は各社とも受注増を期待

アパート販売につきましては昨年に引き続き、ポピュラーアパートには期待ができない状況のため、中高級アパートに注力する事になると思われます。そのた め市内の立地条件の良い地下鉄の駅に近い場所であるとか、そういうものを購入し品質の高いアパートを建設・販売していく事になると思います。以上の通りで すが当部会のまとめとしまして、99年は受注年初計画値を実質達成できたのは8社中3社、残りの5社は達成率30から90%と大変苦しい年でした。今年は ブラジル全体の経済も上向きに推進している状況から各社の受注予想も積極的で8社中5社が99年受注年初計画値の100%から130%と、かなり積極的な 数字を掲げていますので昨年よりは良い年になるだろうと期待しております。以上でございます。

司会:ど うもありがとうございました。不動産建設業界全体的に非常に苦しいと。しかも今年の選挙をあてにしてたら、ああいう法律が通りそうだというので、我々もあ あいう法律が通ると受注している工事がどういうふうになるかなと思って心配してるんですけれども。ここで、前年・99年度比で計画値30%の会社が今年は 130%アップと今年は非常に前向きな計画を立てられて業界全体としては2000年に期待を持っておられると。丸紅の能澤さんも子会社に不動産会社を持っ ておられるけども、いかがですか?この業界の動きで何か?コメントとか質問とかありますか?。

能澤:デベロップメントでなくて賃貸なもんですからね、ちょっと業種が違うかと思うんですが。引き続き根強いといいますか、領事館さんはじめテナントさんの方も引続き居て頂けるということなんで、収入面ではさほど影響はないと思われますね。不動産一般には…(笑い)

司会:お待たせいたしました。一番最後になりましたけども、運輸サービス部会、萩野副部会長お願いします。

 

2000年上期業種別部会長懇談会-建設不動産部会(レポート)

部会長 : 林 恒清

(1)1999年の回顧   (建設業界)

1999年、1月早々の通貨切り下げの影響は大変大きく、その結果として建築主の設備投資計画の見直し、延期、中止が相次ぎ、建設工事受注は延びなかっ た。その上、公共料金、ガソリン、一部建築資材(セメント、生コンクリート等)の異常な値上りは採算面を圧迫し、受注、利益共に大変厳しい1年だった。次 に建築主を日系、通信関連、ローカルに大別して、総受注金額に対する各々の割合を98年と99年で較べてみると、日系:40%→26%、通信関連:26% →14%、ローカル:34%→60%と変化しており、日系と通信関連が激減し、その不足分をローカルで補っている状況となっている。その結果、各社共ロー カル物件に集中し、その競争は熾烈なものとなった。各社の99年の業績は8社平均で受注が当初計画値の76%、従業員数も92%となっており、こちらから も厳しい状況が窺える。(表 ―1参考)

<不動産業界>

商業ビルに 関しては、99年前半は、前年からの不調が続き、企業リストラの一環として、スペースの縮小、本社と工場の一体化等が相次ぎ入居率の確保に苦労を強いられ た。しかし、後半に入って多少の景気回復期待感に支えられ、入居希望の引合いが多くなり、全体としては前年並みの実績を残すことができた。しかし、新たな 問題として物件の立地条件に加え、ビルそのものが持つ設備機能の優劣による物件の人気度に大きな格差がみられてきた。

アパート販売に おいては、ポピュラーアパート(R$50.000~60.000)の売り上げが好調時には15件/月だったのが、1件/月まで落ち込んだ。その反面、中・ 高級アパート(R$350.000~400.000)が好調な売れ行きを見せたものの、全体としては、前年比30%程度の売り上げとなった。

(2)2000年の展望

<建設業界>

2000年に入っても、特に前半は大幅な受注増は見込めそうもない。それは、建設業はその性質上、市場の景気動向が半年から1年位遅れて影響してくるた めである。しかし、後半に入ればある程度の受注増は期待出来ると思われる。その要因として、昨年まで控えていた建築主の設備投資の再開、公共工事の増加、 通信関連分野での低価格競争から品質重視入札への見直し等が考えられる。以上のような状況から各社の2000年の受注予想は8社平均で99年当初計画値の 102%となっており、各社の意気込みが感じられる。(表 ― 1参考)

一方、採算面では引き続き厳しい状況が続くので、組織のスリム化、コスト削減、技術力のアップ、営業体制の強化等、一層の努力が必要となってくる。

<不動産業界>

商業ビルに関しては、99年後半よりテナント希望の情報量が増えてきており、本年のブラジル経済回復と共に順調に伸びるものと予想される。また現在の金 利状況が続けば、投資家の不動産投資も回復し、商業ビル、アパートの新築も増え、それに伴った仲介業務も多くなるだろう。オフィスビルにおいては、二極分 化が進むと思われる。立地条件が良く、通信インフラ、OA化、セキュリテイ等、いわゆるインテリジェント化が進んだ物件は、高い家賃設定にもかかわらず高 入居率を維持するが、老朽化した設備面での条件が劣る物件は立地の善し悪しにかかわらず、家賃の値引合戦にまきこまれ、厳しい局面を迎えよう。特に建築年 数が経過したビルについては、これに対応すべく、大規模改修、設備投資の実施が必要不可欠となってくる。

アパート販売においては、昨年に引き続きポピュラーアパートには期待が出来ない状況のため、中・高級アパートに注力することになる。そのため、市内の立地条件の良い場所に土地を購入し、品質の高いアパートを建設販売してゆくことになるだろう。

表 ― 1 各社業績 (1999年計画を100とした場合の比較)

  受 注 従 業 員
会 社 名 1999年計画 1999年実績 2000年計画 1999年計画 1999年実績 2000年計画
100 67 85 100 85 80
100 100 90 100   90
100 100 109 100   100
100 105 110 100   85
100 30 130 100   90
100 50 75 100   80
100 65 100 100   85
100 90 120 100   130
8社平均 100 76 102 100   93

2000年上期業種別部会長懇談会-金融部会

  • 為替差益、高金利益享受
    ― 内資銀行
  • 自己資本為替ヘッジが奏効
    ― 外銀
  • 連結決算義務化で経営負担増
  • 金利は年間2%程度低下の見通し
  • 外資調達環境は昨年より好転
  • 世界の大手再保険がブラジル市場に参入見込み

 

取引規制緩和が進んだ年

山浦:金融部会の山浦でございます。金融部会は主に、銀行及び保険会社が部会員となっております。性格の異なる銀行・保険、2部門の回顧と展望につき、以下概観させていただきます。
最初に99年の回顧です。銀行業界を見ますと、ブラジル地場銀行は海外投資で大幅な為替差益をあげたイタウー銀行を始め、殆どの銀行が貸出よりも国債運用の比率を上げまして、高金利を享受しました。その結果、好調な仕上がりとなっているようです。

一方、外資系銀行につきましては、特に自己資本の為替ヘッジ等をしておりまして、これが功を奏したということでございます。同様に大幅な利益を上げ、銀 行業界全般で見ますと、ドル換算でも前年比で10パーセントから20パーセントの増益になるのでは、という予想まで出ております。

ま た、純資産利益率、いわゆる、ROEですが、平均では、通年で18パーセント程度という予想もございますし、また、自己資本比率も平均でこれは9月末の時 点ですが、20.3パーセントとのレポートもございまして、銀行システムの体質が全般的に1年間で強化されたと見ることが出来るかと思います。ただ、従来 金融機関には非課税でありましたCOFINSが、99年2月から、収入に対し3パーセント課税され、加えまして貸出金の分類化、及びそれに応じた引当金の 積み増しや、非金融子会社を含む連結決算の義務化など、銀行経営上の諸規制措置も制定され、今後に渡り、銀行経営上の負担は増加するものとみられます。

因みに99年中に起こりました特記事項と致しましては、預金準備率の引き下げなどの金融取引規制の緩和・自由化の進展、それから銀行の為替売持制限の廃止などの為替取引の規制緩和、これに加えまして外資銀行の新規参入規制方法の変更などが挙げられます。

強奪・盗難車35万台-保険

次に、保険業界ですが、クロスボーダーのリスク移転が現状ございませんので、99年年初に起こりました為替切り下げの直接的な影響はありませんでした が、経済停滞により、保険料が実質マイナス成長とパイが小さくなったこともありまして、競争も激化致しました。加えて、銀行と同様に99年2月より COFINSが保険料売上に3パーセント課税され、同時にIBNRと呼ばれる巨額の準備金積立てが義務付けられましたので、事業環境は極めて厳しい1年で あったと言えます。

なお、98年のブラジル全土での強奪、盗難されました車両数は約20万台であったものが99年、昨年は推計で35 万台と、同年中に隣国アルゼンチンで生産された車両数、これは前年よりも少なかったようですが、それが30万台でございましたので、これをも超える驚くべ き数字となっております。従いまして、自動車保険の収益性は極めて悪いものとなっております。また、一般治安の悪化を反映しまして、トラック一台全体、丸 ごとの盗難とか、事務所・工場への強盗等が頻発しまして、日系工場の殆どが被災したものと聞いております。

CDI金利平均17.7%予想

次に、2000年の展望について申し上げます。まず、金融環境について触れさせて頂きます。これは、田中部会長とちょっとダブルところがございますが、 99年下期の展望の際には、外資系金融機関、地場金融機関によるインフレ・金利・為替の予想値を平均して引用させて頂きましたが、今回は当金融部会の銀 行・保険会社10社にアンケートを実施致しました。「予想結果に責任を持つ」ということは、決して申し上げられませんが、参考になればと思います。まず、 インフレ率ですが、消費者物価指数で7.7パーセント、卸売物価指数で11.4パーセントとなっております。消費者物価指数につきましては、中銀の目標上 限である8パーセントまでには収まるということですが、引き続き卸売物価と消費者物価に乖離があるという結果になっております。

次に 金利ですが、指標としては銀行間金利、えー、CDIと言いますが ― を予想して貰いましたが、年間平均で17.7パーセント、年末時点で16.6パーセントとの結果ですので、年末にかけて低下傾向との見通しです。ただ、現 時点で銀行間金利は18.7パーセント程度でございますので、年間で2パーセント程しか下がらないとの見方です。また、消費者物価指数で算出した実質金利 に置き換えてみますと、大体7パーセントから10パーセント位という結果となっております。

バネスパ民営化が焦点

最後に為替ですが、年間の平均で1ドル1.82レアルから2.1レアルの範囲に落ちまして、平均で1.88レアルとなっております。ちなみに年末値の方 は、平均で1.96レアルとなっておりまして、従いましてレアルはジワジワと切り下がっていくというシナリオです。なお、以上の予想に関わる撹乱要因とし て注意すべきこと、ということで皆さんにお伺いしましたところ、財政構造改革の遅延、それから米国経済の動向、メルコスル経済、特にアルゼンチンペソの動 向、との意見が太宗でございました。

次に、業界の展望でございますが、まず銀行業界につきましては、5月に予定されております、資産 規模6位のバネスパの民営化。こちらには地場大手および100パーセント出資を認められました外資系がしのぎを削って応札するものと予想されますが、誰が 落札しましても、業界地図の変化、市場の競争激化など大きな影響が出るものと考えられます。因みに、残念ながら邦銀で民営化に手を挙げるところはなさそう です。銀行界の世界的な流れでもございますが、ブラジルでも年間を通しまして合併や吸収などによる規模拡大競争が引き続き繰り広げられるものと思われま す。ここで、ブラジル国内での資金調達への環境につきまして若干付言させて頂きますと、先ほどの予想通り、レアルの基準金利は穏やかな低下となる見込みで すが、国内経済の回復傾向が明確になってくれば、中銀による最終貸出金利引き下げ誘導策も効果を見せ、また銀行サイドも貸し出しに昨年より重心を移すこと になろうかと思われます。 

カントリーリスク落ち着きスプレッド更に低下予想

一方、外貨につきましても、1月のユーロ建てボンド、及び20年のグローバルボンドの起債成功に見られますように、ブラジルのカントリーリスクが落ち着 くに従い、スプレッドはさらに低下するものと見られまして、調達環境は昨年に比べれば大幅な改善を示すことになるだろうと思います。

次に、保険業界の展望ですが、IRBと称する国家再保険院の民営化、加えまして再保険規則の公布が予定通りに実施されますと、世界的な大手再保険会社がブ ラジル市場に参入し、資本額で既に3割弱ある外資保険会社の比重がさらに上昇すると共に、本格的な自由競争が開始されるものと見込まれます。

一方で、保険監督行政の相当部分が、既に先程のIRBからSUSEPという大蔵省監督局に移管され、併せて監督の高度化、詳細化、強化が実施されており ます。従いまして、競争激化に対応した情報システム面での投資と、技術革新に取り残された会社は、行政の要求規準の高度化と相俟って、脱落を余儀なくされ る可能性があります。以上で、金融部会からの報告を終わります。

司会:あ りがとうございました。田中部会長、それから山浦部会長のお話を総合しますと、今年は金融、経済環境はかなり期待できると。さきほど、田中部会長があまり 明るい見通しの時はよくないと言われました。それが一番不安ですけれども、いま山浦さんの報告にもあるように、アンケートでは、かなりいい数字が出ている と思います。私、個人的には、こんなにうまくいくのかなあとは思っておりますけれども。

それから、金利も、年末で16.6%と、いう ことになりますと、インフレから逆算すると、ドル金利で9パーセント弱という金利、低金利ですね。今のブラジルからみると、低金利だと思いますけれども、 予想されるということで、山浦さんの話をずっと延長すると、かなり今年は期待できる。ただ、田中部会長の話だと、年初にいいという時は、「必ずなにかある よ」ということなので、楽観はできないだろうという、非常に分かりにくい、いや分かりやすいご説明でした。もうちょっと各産業界のお話を、具体的に聞いて いく中で、みなさんのご感想なり、自分の業界の見通しはこうだよと、色々、意見を言っていただきたいと思います。それでは、能澤貿易部会長お願いします。