2000年上期業種別部会長懇談会-金融部会(レポート)

部会長 : 山浦 秀雄

Ⅰ 銀行業界

1)1999年の回顧

(1)概況

1月の為替制度変更、その後の中銀総裁更迭は99年上期のブラジル経済・金融動向を見る上で最大の山場となった。

ドル相場が高騰し悲観論が強まったが、国内では新中銀総裁の下、指標金利Selic利率の大幅引上げ、預金準備率引上げ等の引締策が採られ、対外的には IMF及び国際民間銀行の対伯与信枠維持の支援を得て、為替のovershootingは比較的速やかに改善した。しかし、ドル高の跳ねでインフレが再び 台頭し、下期に入り再び外貨需要の増加によりドルレートが高騰した。

政府 は7月からインフレ目標制を導入、中銀が目標達成のための担当機関と定められた。99年通算のインフレ実績(IPCA)は8.94%で目標値内に収まっ た。 Selic利率は3月上旬設定時の45%から漸減されたが、中銀はインフレ動向を睨み9月下旬以降、同利率を19%で維持している。

下期に鉱工業生産は漸次回復、失業率も幾分低下し、経済は浮揚の兆候を見せているが、貿易収支は赤字基調で推移、99年通算では12億㌦の入超となった。経常収支は通年で244億㌦の赤字を出したものの、外国直接投資は史上最高の300億㌦を計上してこれを補填した。

中長期外貨借入の新規導入額は前年同期比36%減少したが、政府は4月、本年初の海外債(“Global Bonds”)30億㌦を起債、その後も連邦 及び国立経済社会開銀がユーロ建て債を発行、為替制度変更後困難となっていた民間部門の海外資金調達も徐々に復調した。

(2)業界環境

殆どの銀行が年初の為替切下げ前、為替調整国債で運用する等のヘッジを行い、与信よりも自己資金のtreasury運用に比重をかけ、相当の利益を計 上、ドル換算でも前年比10%~20%の増益と見る観測、あるいは107銀行平均の純資産対比利益率は通年で18%程度との予想がある。銀行の自己資本比 率は9月期で平均20.3%とのレポートもあり、銀行システムの体質は全般的に強化されたと見ることができよう。

しかし98年10月 の『財政安定プログラム』の増収措置で、従来非課税のCOFINS(社会保障分担金)が99年2月から3%の率で金融機関にも課税され、加えて99年に銀 行経営上の諸規制措置が発令された。これらは今後の銀行経営を一層厳しいものとする。即ち、(a)銀行貸金を9分類とし、それに応じて引当率を設 定、(b)経営者の任命に一段と厳しい条件を規定、(c)銀行がコントロールを持つ非金融部門の子会社、海外所在子会社を連結決算に含めることを義務 化、(d)銀行の恒久資産・非金融企業宛投資限度設定、等。

(3)他の特記事項

①  金融取引の緩和・自由化 ― 預金準備率漸減。②為替取引の自由化 ― 銀行の為替売持限度廃止。輸入ファイナンスの為替締結時期の規制撤廃など。③中銀の為替市場介入 ― 中銀 の純外貨準備高下限は20億㌦引下げることがIMFと合意され、為替市場に介入する資金量が増加、中銀は年末Y2K問題に伴う外貨需要に応じるため 2000年初買戻す条件付きでドルを売りレアルの下落防止に役立った。④州立銀行の民営化 ― BANESPAは全面的に国営化。⑤外国銀行の新規参入  ― 99年は大きな外銀の参入はなかった。中銀は今後海外信用枠の保証、買収する金融機関への増資、技術移転等を考慮し、また州立銀行の民営化プロセスが 完了するまで新規外銀の参入は認めない方針とした。

2) 2000年の展望

① インフレ

為替、公共料金、金利、国際原油価格,輸出用Commodities市況等の影響を免れないが、目標の上限(8%)内には収まるだろう。

② 為替

財政改革の成否は極めて重要だが、10月の地方選挙が近づくに従い政局の焦点が移り、改革案の審議は鈍ろう。米国内金利の引上げが予想されるが、一方で は外国直接投資が2000年も堅調との見通しにある。中銀は今後も為替市場への介入を続行しよう。2000年上期レアルは1.80~1.95、下期は 1.85~2.00で推移すると見られる。

③ 金利

中銀は金利政策に一層慎重になろう。2000年に予想される景気の浮揚が物価に反映することも考えられ、金利大幅引下げの余地は少なく、年末のSELIC利率は16%~17%とするのが妥当なところだろう。

④ 業界地図変更の可能性

5月予定のBANESPA民営化は外資の100%参加が認められた。国内では上位銀行数行のみ応札資格があると見られ、外資落札の場合、国内金融市場の 競争は益々激化、地場系銀行落札の場合も市場の集中度が増大、更に合併・吸収を招く等、業界地図変更の可能性は強まっている。

Ⅱ保険業界

1.1999年の回顧

(1)事業環境一般

保険事業、なかんずく損害保険事業は一般経済の景気循環のサイクルに四半期から半期のタイムラグを以って量質ともに業績が変動する性格を持っている。保 険業界では、国境を越えてのリスクの移転、売買が原則としてないため、99年1月のレアル貨の切り下げによる直接的影響はなかったものの、通貨切り下げ後 のブラジル経済停滞のため、企業分野においては物流の減少、設備増設の手控え、賃金の伸び悩みが発生し、夫々、運送保険・火災保険・生命保険保険料の伸び 悩みに直結した。また、家計分野にても個々の家計の支出抑制に伴い保険付保率が減少し、保険料が伸び悩むと同時に競争が激化した。

それに加え、99年2月には保険料売り上げの3%に当る社会保障分担金(COFINS)が適用され、同時に保険会社のソルベンシー維持強化の観点から IBNRと称する巨額の準備金を新たに積むことが義務づけられたため、事業環境は極めて厳しいものとなった。

更に、監督行政面では監督権の相当部分が国家再保険院(IRB)から、大蔵省民間保険監督局(SUSEP)へ移管され、監督の高度化、詳細化、強化が実施されたため、その対応に係わるシステム手当て等の業務増、社費増を余儀なくされた。

(2)量及び質

第3四半期末における業界保険料の、対前年比は+3.23%となっているが、同時点までの累積インフレ要素を勘案すると、実質はマイナス成長と判定され、この傾向は年度末まで継続した。

最大の種目構成比(31.19%)を占める自動車保険の伸び率は、第3四半期末で▲6.88%であり、付保率の低下と同時に上半期における節度を失った料率競争の結果が保険料の停滞に反映されていると云えよう。

質の面で特記すべきは、自動車の強奪(ROUBO)、盗難(FURTO)が未曾有の増加を示し、自動車保険の成績が全社一斉に悪化したことにある。 98年における全ブラジルの強奪、盗難車両数は約20万台であったが、99年は35万台となるものと推計されており、一国の自動車生産量に匹敵する驚くべ き数字であり、この結果、自動車保険の収益性は極めて悪い。

その他種目においても、健康保険の分野では引き受け成績が危機的に悪化しており(ロスレシオ95%)、また、一般的治安の悪化を反映して、トラック一台全体の盗難、事務所・工場への強盗の侵入が頻発しており、保険引受け成績の悪化に直結した。

一方、保険事業外損益については、資産のドルヘッジをした一部の会社を除き、一般的金利低下傾向で資産収益も伸び悩んだ。

以上、総括すれば、99年度は経済一般・行政・治安の3点において極めて地合いの悪い年であったと云えよう。

2.2000年の展望

行政面では国家再保険院の民営化(4月中旬)と再保険規則の公布が政治日程に組込まれており、予定通りゆけば世界的大手再保険会社(日本を含む)がブラジル市場に参入するのは確実である。

これに伴い業界における外資会社の比重が更に上昇すると共に、本格的自由競争が開始される見込みである。

自動車保険を中心とする保険料率競争は、上半期にはソフトマーケットからハードマーケットに転じようが、一方、商品・価格・顧客セグメンテーション・販 売チャネル面で、自由競争が激化し、情報システム面での投資と技術革新に取り残された保険会社は、行政の要求規準の高度化と相俟って、脱落を余儀なくされ る可能性が出てこよう。

以上

 

2001年上期業種別部会長懇談会-機械金属部会(レポート)

2000年回顧と2001年の展望

ブラジル経済の2000年は、とくに下期になり、やっと満遍なく広がった“青空”を連想させるに十分なほどの回復を示してくれたと言えよう。 もちろん、そ の大きな原動力となったのは、一般消費の回復であり、なんと言っても、国の経済運営に対しての国民の安心感の現れであり、再三の原油価格の上昇にも負けな い、インフレに打ち勝ったという強い信頼感の証でもあると言える。

インフレ、為替の安定、金利の低下により、今まで伸び悩んでいた高額の耐久消費財の急激な回復が、何よりもそれを物語っている。 確実に市場というパイが大きくなっているのが感じられるようになった。

それに伴い、生産能力Upのための設備投資意欲も高まっており、長い間苦労を強いられた生産財、重工、重電、重機、農機メーカーに活気が戻っている。

一方、自動車、自動車部品工業を中心としたブラジルを輸出基地にしようとする巨大企業グループにとっては、現状では過剰投資としか思えない生産能力をベースとして、国内市場の伸びを横目で見ながら、輸出に活路を見出すべくドライブをかけている段階にある。

過去4年間に稼動を始めた自動車9社の新工場の中には、すでに脱落を発表しているChryslerを含めて、その生産能力は年産60万台あり、その中で 100%近い稼動ができているのはHonda,Toyota,Renaultの3社のみで、平均でも半分の能力分しか売れてはいない。

今後、まさにグローバル時代の恩恵を受けられる所と、その非情さに泣く所と、まさに熾烈な戦いが始まっている。

2001年の展望としては、前半は引き続き好調を維持した拡大路線が続く見込みながら、後半からは、米国の降下具合とそれに関連した世界景気の動向、投 機マネーの動き、アルゼンチンが果たして立ち直れるかなどが焦点となるが、今のところ減速要因が多いことから、大いに懸念されるところである。

 

自動車

 
98年
99年
00年
01年(予)
生産
1586
1350
1671
1850
販売
1534
1252
1476
1600
輸出
400
274
367
400
輸入
346
178
175
175

(千台)

表のように、生産、国内販売、輸出ともに昨年ベースをそれぞれ24%、18%、34%上回り、輸入車販売のみが-2%と減少した。

国内販売の好調要因は1)に金利低下による支払い環境の好転が挙げられ、とくにオートローンの伸長が背景にあり、融資総額は前年比58%増しになった。  2)にインフレ、為替の安定化による経済不安の払拭という消費者心理の回復、 3)に新規参入各社を含めて新型投入および積極的な販売政策が挙げられ る。

この傾向は2001年の展望にもそのまま当てはまることが確実視され、さらなる金利の低下が進み、状況によってはブラジルでは前代未聞の1ケタ金利も可能なところまで来ており、国内市場のパイが急ピッチで拡大することが期待されている。

今では、世界でも類を見ない最先端の自動車先進国となったブラジルには既に11社の国産メーカーが存在し、2月にはプジョー-シトロエンが生産を開始す るが、すでに投資を終えている分だけで、生産能力は300万台/年を超えると言われている。品質的にもグローバルスタンダードで論じられており、現状の国 内市場の大きさだけでは、必然的にも輸出を増やさなくてはならない宿命にある。ブラジル工場の位置付けがこのグローバリゼイションの波の中で非常に重要に なってきており、各社ともあらゆる手を尽くしてコストダウンに取り組んでいる。 まず第一に品質を満足して、国産化率を高めることであり、部品メーカーと 組んだモジュール化が、さらに進むことになりそうである。

各社とも輸出拠点化を図っており、仕向地も従来のイタリア、アルゼンチンの他南米諸国、メキシコ、米国などに拡大している。

 

自動車部品

自動車生産の増大に伴い、15-60%の伸びを記録した。

量的には昨年の最悪期を脱したと言えるが、採算面では資材、コストUp分の値上げが出来ず、苦しい展開が続いている。各社とも国産化率Upを進めざるを得ず、自動車業界との合従連衝で技術面は当然のこととして、価格、サービス面での要求が一段と強まっていく。

欧米系の大手メーカーでは、ここ数年の大型投資で相当な力をつけており、グローバルソーシング基地としてすでに動き出しており、仕向国も多様化してきている。

補修市場の動きとしては、保有台数のうち経過年数が10年未満の車が60%近くなり、その市場の部品構成が変わってきている。

2001年度は業界として、10%Upは堅いとしており、更なる輸出ドライブが掛かることが予想され、日本勢では引き続き、量的な拡大とリストラを通じて、採算性の向上、国産化率Upが課題となる。

自動二輪車

 
99年
00年
01年(予)
生産
474
1350
730
販売
442
1252
660
輸出
33
60
70

(千台)

自 動車よりも早く回復が進み、市場も拡大したことにより、生産、販売、輸出とも新記録を達成し、それぞれ33.7%、29.7%、85.3%という伸び率を 示した。 金利の低下によるクレジット販売が大きく伸び、従来のコンソルシオを逆転、この国の所得水準にマッチしている事と、総需要の60%を占める 125 CCクラスに限っては業務使用が大きく寄与していると言える。 各社とも輸出にも力を入れており、価格競争力もあることから、中南米、北米を中心にまだま だ伸びる。

2001年は15%Upとさらに記録を更新することが確実視され、快調にマナウスへの投資は進む。

 

重工業、プラント

年間を通じて好調なパルプ業界、製鉄、電力、港湾、石化業界に案件は多く、久々に活況を呈した年と言える。しかしながら、日本勢にとって価格競争力、国 産化率60%と言う壁は高く、ヨーロッパ勢、アジア勢になかなか勝てない。したがって、差別化する意味でも、日本の得意な省エネ分野、熱エネルギーおよび 原料、副産物回収プラントに的を絞って受注活動を進めている。

2001年も好調に推移するとみられ、特に電力関連で火力発電プロジェクトが動き出すものと見られており、関連分野での案件に注力したい。

農業機械

PRONAF, FINAMEといった政府の農業融資資金の動向に市場が左右されてしまうのだが、昨年度は比較的順調に推移し、より資金が潤沢に出た大型トラクターの分野 では31%Upを記録し、小型分野でも17%Up,前半にPRONAFが出た耕運機では、7月に融資がストップしたために、通年では5%Upにとどまっ た。 汎用ジーゼルエンジンでは東北伯の多雨で、需要そのものが落ちたことと政府資金も出ずじまいで、20%ダウンとなった。

2001年はトウモロコシ以外の作物の増産計画と政府資金の順調な出具合により、更なる拡大が期待されるが、それでもトラクターでは大昔のピーク時の半分にも満たないのが現状である。

鉄鋼

国内経済の回復に伴い、自動車、部品、大径管向け〈厚板、熱延鋼板〉、建機、農機向けは好調に推移、鋼材見かけ消費量は1,582万トンとなり 12.4%Up、フラット鋼材の見かけ消費は17%Upとなった。表面処理鋼板〈めっき鋼板〉については自動車向けおよび家電分野において、冷圧鋼板から の変更の動きが出ている一方、建材向け需要が活発。粗鋼生産量は2,774万トンで11%Upとなり、97年に達成された記録を塗り替えた。

一方、国内需要が予想以上に旺盛だったこと、年央からの世界レベルの在庫調整などもあって、輸出はトータルで971万トンと3.2%減少した。逆に、輸入は93万トンと43%Upした。

2001年も好調な国内経済に引っ張られ、フラット鋼材については5.9%Upの見込みで輸出は減、輸入は増と去年と同じ傾向をたどる見込みである。

 

軸受

世界的にも品不足で終始した昨年度はブラジルでも全ての分野で2ケタ伸長が果たされ、とくに家電、自動車が牽引車となり、40%の伸びを記録した。輸入 も市場の拡大とユーロ安の影響でとくに欧州からが増えた。各社とも生産拡大の余地は少なく、そのため輸出はどんどん減る傾向にある。業界のフル生産もすで に4年目を迎える。

2001年は米国の減速により、世界的な品不足は一段落する見込みだが、国内需要はさらに各分野での国産化が進むことにより、軸受け需要はさらにタイトな状態が続くものと見られる。

電動工具、切削工具

電動工具では期待したほどの景気の回復は見られず,全般的な市場規模も1昨年並みまたはせいぜい1ケタ%Upに推移した模様で、とくに電動工具の主な顧 客先である住宅,土木建築、家具業界では出遅れているようだ。価格競争も激しく、値上げが難しいことから、現調化を進めることと、組み立て部品の輸入先を 中国工場からに変更するなどにより、より一層のコストダウンを計る必要に迫られている。

2001年は安定した伸びが期待できそうであり、市場規模も10%くらいは伸びると思われる。 販路拡大政策の一環として、販売拠点増,取り扱いモデル増を計り、一気にシェアUpを計りたい。輸出は北米向けからメルコスール向けにシフトしていく。

切削工具では一般向けは10%程度とあまり大きな伸びはなかったが、自動車,および部品向けに20-40%と大きく伸び、ここでも工具材質が高速度鋼か ら超硬合金製に変わってきており、それだけ高速切削が一般化してきていると言える。とくに新規に投資された工作機械で使用されるハイテク工具の需要は、こ れからもどんどん増える見込みであり、工具メーカーとしても、輸入品での対応も限界があり、材質の変化に合わせた設備投資に迫られている。ここでもやはり 国産化の必要と、取り扱い製品の拡大が生き残りの条件となっている。2001年は自動車部品の現調率Upが進み、さらに20%の伸長は期待できると考えて いる。 輸出比率がもともと高い業界であり、ドリルなどではずっと昔から輸出基地化しており、常に50%前後を全世界に輸出している。

以上

2000年上期業種別部会長懇談会-機械金属部会

  • 自動車は15%生産ダウン
  • 輸入車販売も大幅ダウン
  • 重工業も小口商談ばかり
  • 農機、カメラは今年に期待
  • 鉄鋼は微減ですんだ
  • 電動工具は国産化して好転

 

自工会は今年20%増期待

宇治:機 械金属部会は、全般的に一番ひどい目に会ったというような見通しです。デバリの影響によるコストアップで一年を通じて非常に苦しい年でありました。結局リ ストラ等のコスト削減により生き残れたところと、そうでないところとで自然淘汰されたわけです。逆にいえば今後の成長期の基盤が出来つつあるとも捉えられ ます。具体的な動きとしましては、各社が原価低減を猛烈に追求し始めたこと。それから、輸出もアルゼンチンのみならずメキシコとか、メルコスル以外へ輸出 しようという動きが非常に強くなってきたというのが見られます。2000年は、このままでいけば少しはよくなるんじゃないかと、みんな願望を込めて期待し ております。

まず自動車から始めますと、レアルプラン以降、順調に伸びて きたんですが、昨年は一気にツケがまわってきた感じで、一番被害をこうむったと。各社とも品質改善に努めているんですけれども、逆に国産化のほうがお留守 になっていたところをデバリでやられたわけです。それでまた、国産化を慌てて始めています。輸入コストが一挙に上がって来たもんですから、値上げしたわけ ですが市場に受け入れられず、操業率は低下となりました。解雇の問題、特にABC地区の中核団体ですので労働組合の力も強く、政府も3月から9月は特別減 税措置で雇用維持を図りました。このため、その間は昨年並みの需要が出ていたんですけれども、残りの結果が悪かった。だから結局、1年を通じてみると、年 初の予想通りのオチになったということです。生産は134万4000台で、前年比15パーセントダウン。販売は125 万2000台で、前年比18パーセントダウン。

輸出は26万8000台で33パーセントダウン。全て、レアルプラン以降最低の数字と なっております。特に輸入車が昨年の約半分の17万9000台まで販売が落ちております。輸出については、さきほど申しましたようにアルゼンチンはもうあ てにならないと、いうので、フォルクスワーゲンが一番熱心にやっているんですが、メキシコへ輸出を始めております。2000年の展望については、自動車工 業界では、国産車だけで130万台販売したいと。だから、昨年比 20パーセントアップを予想しておるんですけれども、まあこれは、金利低下と経済安定と、それから多大な願望が入っておりまして、楽観的に予想していると いうふうに思われます。また、自動車の場合は労働組合が強い事、ブラジルは先進国型の企業構造なので、自動車が元気を失うと、失業が増えるというのが顕著 に出ます。政府も少しは援助してくれるかも知れないという希望的観測もあります。

新車代替 なるか

業界で今やっておりますのは、大気汚染の元凶である、古い車(10年、15年以上の車)を廃車するために新車代替を促すプログラムです。1,800レア ルのボーナスを、業界等がもってやろうということですが、政府の財政がまずゆるさんだろうから、なかなか進まないだろうというのが業界の予測でございま す。ブラジルのメーカーの生産能力は現在240万台、2005年には300万台になり、エンジンも2001年で400万台の生産能力があると言われていま す。多大な生産能力を持っているだけに、今後フォルクスワーゲンが、ブラジル生産の25パーセントを輸出に回したいといったように、グローバル拠点として 位置付けられて来る傾向にあります。

重工業プラントも昨年は不景気。小口商談を拾いまくっているということです。冷凍業界は、コンプ レッサーの大口需要があって、元気よくやっているようです。2000年は、発電プラントとか、石油化学プラント、それから民間レベルも輸出関連企業を中心 に、設備投資の動きがあり、受注増が期待されています。自動車部品は、自動車が落ち込み、自動的に同じように落ち込んでいます。ただし、一部部品メーカー で自動車の保有期間が長くなっているので、補修部品等が少し伸びているという事です。

輸出はアルゼンチンの景気後退によって、これも大幅に落ちています。同業界は、グローバル化の流れが早く進んでおり、今年は10パーセント増の売り上げを期待しているのですが、淘汰される企業もかなり出るだろうと予想しております。

自動二輪は、93年からずっと伸びてたんですけども、去年は始めてマイナス成長になったと。ただし、後半に持ち直して結局、44万2000台の国内市場で、3.2パーセントの落ちにとどまったわけです。

一方、輸出の方が好調で、前年比60パーセントの3万3000台ということで、国内の落ちを輸出でカバーして、マイナスの0.5パーセントの生産台数 で、47万4000台となっています。値上げが難しく、利益は落ちているという事ですが、2000年は、景気の回復と為替の安定で、10パーセント程度の 国内市場の伸びを予測している。まあ景気、販売店網が増えていることもあって、なんかきっかけがあれば一気に回復する可能性があると。わりと楽観的な感じ です。

それであと、農業機械、建設機械、このへんはもう、散々でございまして、全ては今年に期待すると。で、カメラも調子が悪く、今年に期待したいと。 
鉄鋼は0.5パーセントくらいの落ち込みで、昨年は終わったようです。今年はウジミナスで、自動車用の亜鉛メッキ鋼板の製造が、9月から始まるということで高付加価値製品が増える傾向にあります。また、為替安を利用して輸出に期待しているようです。

電動工具はマキタさんが中心なんだけれども、国産化により、結構うまく動いているようです。99年は、15から20パーセントの市場の伸びだったけれども、2000年は10パーセント売り上げ増を期待しています。

切削工具も各社国産化投資をしておりまして、日本から出ているところはかなりしんどい目にあっている。まあ、全般的に不景気のなかで、とにかく今年に期待しているというような、苦渋がにじみ出ている報告でございました。以上でございます。

司会:ありがとうございました。自動車の輸出が伸びてないというのは、アルゼンチンが悪いのは当然なんでしょうけども、やっぱりヨーロッパやアジアが、悪いということですか?。

宇治:まだ先進国に持っていけるほど品質がついていってないという事ではないかと思います。フィアットがずいぶんここから、本国に持っていってはいますが…。やっぱりアルゼンチンの影響が大きいですね。

司会:あの為替の切り下げで、メキシコでもつくっているのだけども、あそこまで持って行って戦えるわけですか?

宇治:よくわかりませんが、メキシコとの間で2国間関税協定が話し合われており、低関税輸出が出来れば面白いかもしれません。逆にメキシコ車が低価格で流れて来るという恐れもありますが…。

過剰設備自動車業界人員整理の成否がカギ

三好:販売実績からみて過剰設備と思いますが、今後の見込はどうですか?

宇治:まあ、自動車っていうのは、過剰設備の代表みたいな業種ですから・・。日本だって今でも、1200万台くらい作れるって言っておるんですから。

だから、人員整理がうまく出来るかどうかにキーがあります。インデクセーションていうんですか、ABC地区の金属労連は、消費者物価が上がると、自動的 に賃金を上げてくれと。上げないとストをすると。誰もが矢面に立ちたくないから、結局は全部受け入れているわけです。去年も8.9パーセントの賃上げが行 われた。だから、所得水準は落ちているのに、自動車業界に働いている人は、8.9パーセント上がっているということで、大変なギャップが出来ている。それ から売値の方は上がらないというので、新聞の決算を見ると、一台売るごとに、7万円から8万円、損しながら自動車各社は売っている。

一方、フォードは史上空前の利益を北米で出してる、これでわりと平気な顔してるんですね。ワーゲンだって、なんか2000年にくびを切るって、去年の 11月に言って、大問題になってたのに全然動かない。だから、よその国で儲かっていると、この業界って言うのは、わりと平気なんですね。

赤嶺:それはなんですか? 業界、たとえばANFAVEAとか、利益団体を中心とする交渉っていいますか……。それとこの前10%前後でしたでしょうか、なかなか車の売れない状況の中で値上げを強行したりしましたが。

宇治:ま あ、自工会は月に1回、定期的に会合をやっているという事は偉いですね。まあ、嘘はつかないけども、何をするか分からない。結局、GMも工場から直販制度 をやったし、定価があってなきようなものですからいまはもう、99年生産の2000年型っていうのはまだ9万台残っており、かなり乱売しているんです。こ うなると、売れないものは安くしても売れない、という品物格差が出ております。

赤嶺:ありがとうございます。

司会:ど うもありがとうございました。以前に、宇治部会長から聞いたお話しが、三好さんの質問の回答になるんじゃないかと思いますのでご披露します。トヨタにし ろ、ホンダにしろ、要するにマーケット以上のキャパを持った工場をつくって、需要増を狙って、そこを埋めるためにつくるのではなくて、品質で今あるマー ケットを狙っているんだと。例えば今、百何十万台あるうちの、10万台取る、というのは非常に簡単なことなんだと、それは品質がいいからだということをお 聞きしたんです。だから、実際のキャパがマーケット以上にあっても、品質がいいところは、あまり心配しないと。要するに、品質の悪い車を食べちゃおうとい うことで、各社とも、最新のモデルを投入しているというのが、今のブラジルの自動車業界だということを補足説明します。次に、繊維部会、室副部会長お願い します。

 

2000年上期業種別部会長懇談会-機械金属部会(レポート)

部会長 : 宇治嘉造

`99年の回顧と2000年の展望

レアルの大幅切下げで始動した昨年は、まさに混沌とした1年であったが、1年を振り返ると主要経済指標はIMF勧告どうりの数字を達成し、経済回復の兆しが見え始めている。

政府の対応策もある程度評価できるのだが、その原動力としてはまさに民間の底力を感じさせる。確かに多くの企業がレアル安、景気後退の影響を受け採算悪 化に陥り、機械金属部門では、その傾向が顕著で、全体として低迷状態となったが、注目すべきは昨年の困難を経験したことで体質強化に向け努力した企業が少 なくなかった。

そういう意味でポジチブに捉えれば、今後の成長基盤を固めることができたとも言えるだろう。

具体的な動きとしては、各社ともコスト低減に向け、効率化を追求しはじめたこと。

現調率を高めると同時に、技術力アップにより高付加価値を付け、競争力向上を図っていること。輸出(アルゼンチン向け以外の販路)を積極的にはじめたこと等である。

ブラジルの工業を発展させるための基本動作が少しずつ身についてきた結果、昨年後半より経済指標が好転してきた。

2000年は、このままの調子で進めば、各社とも業績は好転すると予測される。

但し、外的要素がどのように変動するかがひとつのポイントとなろう。

世界景気の動向、キャビタルフライト等。特に後者は、ブラジル財政の方向性によって危惧される問題である。

経済のファンダメンタルズは整いかけているので、あとは政治からの邪魔が入らないことを祈りたい。

以下、業種別動向を間単にとりまとめた。

<自動車>

レアルプラン以降、見せかけの購買力に支えられ、常に順調に成長してきた自動車産業だったが、昨年は逆にこれまでのツケがまわって、産業界の中でも最もデバリの影響を被った業界であった。

レアルプラン以後は、それまでの“安かろう悪かろう”から脱却し、各社とも競って先進国で導入している商品を真似て品質改善に努め、国産化は掛け声だけで後回しになっていた。

そこに、デバリが起こり輸入部品のコストアップ圧力が掛かってきた。
各社とも、輸入コストアップはある程度吸収し、多少の採算悪化は覚悟したが、価格上昇に対する市場の反応は予想以上に敏感で、工場の操業率の低下、解雇の問題にまで発展した。

国の基幹産業である本業界の不振は、特に失業等の問題で経済全体に悪影響を及ぼすため、政府側も様々な減税措置、特例を実行したが、政府の財政状況も厳 しく、途中で打切りとなった。3~9月の特別減税措置は、単なる需要の先取りに過ぎず、打切りと同時に市場は再度縮小し、1年を終わってみると結局年初予 想レベルへの落ち込みとなった。

生産1,344千台(前年比▲15%)、販売1,252千台(同▲18%)、輸出268千台(同▲33%)はいずれもレアルプラン以降、最低の数字であった。

また、特に深刻だったのは輸入車業界で、輸入車(含むアルゼンチン製)の販売は昨年の約半分の179千台だった。

輸出については、最大輸出先国アルゼンチンにおける景気低迷と輸出入インバランスによる貿易摩擦が下落の主因であった。但し、VWのようにアルゼンチン以外(メキシコ等)への輸出を伸ばしているところもあり、年後半は徐々に輸出が増える傾向にある。

2000年の展望については、自動車業界でも昨年よりは良いだろうと希望的予想をしている。ANFAVEA(自動車工業会)では、輸入車を除く国産車だ けで130万台の販売、つまり昨年比+20%程度を予測しているが、金利低下と経済安定を前提としており、やや楽観的と思われる。

但し、自動車生産は失業を始め種々の社会的問題にまで発展するほどの影響力があるため、今年も政府から何らかの特別措置が出る可能性が高い。

現在、大気汚染の元凶である中古車の廃車と雇用維持を狙った、中古車代替法が協議されている。15年以上の中古車引取りに1800レアルのインセンティ ブを顧客に支払うシステムだが、まだ結論はでていない。もし、同法案が実行されるとポピュラーカーを中心に多少の市場の伸長が期待できるだろう。

国内での販売競争は今年に入りさらに熾烈さを極めるだろう。これまでのBIG4に加え仏メーカーがとくに積極的な量販志向に走っており、ベンツ、日本メーカーを加え価格競争が繰り広げられると見られる。

いかにコスト削減を図るかが、今後の生き残りを賭けたポイントとなるため各社とも、高国産化及び物流改善等原価低減を進めている。加えて輸出を含めた量 産効果を出すことも今後の傾向となりそう。流れにうまく乗れるかどうかで企業間格差も広がると思われる。日系メーカーも、進出はしたもののしっかりとした 対策を立てないと大規模メーカーに飲み込まれる恐れがある。

輸出については、レアル安のなか今後の伸びが期待できる。
但 し、メルコスールメンバーであるアルゼンチン向けは貿易摩擦によりなかなか難しい。現在も伯・亜間の自動車協定は両国の利害がかみ合わず、本年8月まで棚 上げの状況となる見込である。最悪の場合交渉が物別れとなり自動車が例外品目として両国で関税(35%)が課せられる可能性もあり、アルゼンチン輸出に過 度な期待をすることはできない。

一方、ブラジルメーカー全体の生産能力は現時点で240万台、2005年には300万台に達すると言われており、生産キャバを埋めるため、どうしても海外へ市場を求めざるを得ない。

VWもブラジル生産の25%を輸出にまわすと発表しており、グローバル拠点としてはっきり位置付けている。

また、エンジンの現地生産が増加、2001年には業界全体で400万基の規模となるが、これも輸出を見据えた各社のグローバル戦略である。今後は、他の ラテンアメリカ諸国、NAFTA、欧州も巻き込んだ車両・エンジン・ユニット部品の輸出が徐々に増加することになろうが、今年はそう言った傾向が数字とし てはっきり出てくるものと予想される。

<重工業・プラント>

`99 年は下半期より特に輸出企業(製鉄・食品等)が増産のための設備投資を開始した関係で関連の設備・プラントの受注が上昇となった。一方、発電プラント等の 大口案件は、計画はあるものの結局昨年中には実現せず、全体として小口案件のみ受注。価格競争では欧米勢が強く,日本勢は高付加価値設備を中心に応戦。

産業冷凍業界ではコンプレッサー等輸入部品が多いため国産化推進努力を進め競争力を維持している。

輸出については、日本勢も積極的に受注をはじめチリの紙パルプ会社、米国ガスタービン発電向けボイラー等の商談がまとまっている。

冷凍機械ではラテンアメリカ向け輸出を伸ばしたことも特筆できる。
2000年は懸案の発電プラントの実現と石油化学プラント等の大型投資が見込めるのに加え、民間レベルでは輸出関連企業を中心に設備投資の動きもあり、受注増が期待できる。

また、近隣諸国からの商談も増加傾向にあり、具体的にはソーダ回収ボイラー、冷凍プラント等の輸出が期待され、本業界も明るい兆しが見えてきた。

<自動車部品>

`99年は自動車業界の落ち込みの影響をまともに受け、業界売上は100億ドル(前年比▲32%)となった。また輸出31.5億ドル(▲24%)輸入31億ドル(▲25%)と言われている。

レアル安以降、特に輸入構成品の多い部品メーカーは苦しんだ。自動車業界からのプレッシャーにより、輸入コストの販価反映が難しく損益の悪化を招いた。一方、現調率の高いメーカーは自動車の高国産化の流れを受け、売上を伸ばしたところもあった。

また、中古車市場の伸長を反映し(サンパウロ州中古車販売64.5万台、前年比 42.9%)、自動車修理部門が成長、アフターマーケットでの売上が増加している。

輸出はアルゼンチンの景気後退により大幅に落ち込んだ。

今年は自動車メーカーの調子次第で売上増が期待できるが(部品工業会の予想は前年比+10%)、国産化率を上げコスト低減を図らないと商機を失う可能性があり、引き続き厳しい競争が繰り広げられると見られる。

また、グローバル化の流れの中で、自動車メーカーは国際的に競合できる車両を求めるようになり、部品に対し、各自動車メーカーからの仕様面の要望も厳し くなっている。単に安ければ良いというものではなく、今後は技術力の面でも激しい競争となることが予想され、技術力のないメーカーは脱落することになろ う。

<自動二輪車>

`93年以降右肩上がりに成長してきた自動二輪 市場は`99年になって初めてマイナス成長となった。特に年前半はレアル切下げによるリセッションが尾を引き停滞、前年比▲10%のレベルだったが、後半 になって、金利低下によるクレジット販売の回復、コンソルシオ販売による底支えにより市場は持ち直し `99年年間では442千台の国内市場で前年比▲3.4%の落ちに留まった。

輸出は為替メリットを利用し、各社積極的に実施、業界全体で33千台と前年比+60%を記録した。

従来のアルゼンチン等周辺国以外にもメキシコ、北米への輸出を進めたことが特筆される。

業界の生産台数は474千台と▲0.5%に留まり、レアル切下げの影響を最小限に抑えた。2000年は、景気の回復と為替の安定で業界として前年比+10%程度の国内市場の伸びを予測している。

自動二輪市場は、今後商品の多様化などで成長が期待されており、各社新商品の投入、工場拡張を計画しているのに加え、販売店投資をはじめ、全国に販売網が拡充される傾向にあり、市場伸長の下地が整えば、一気に回復する可能性は十分ある。

輸出についても引き続き販路拡大と現調率アップによる価格競争力向上により、中南米諸国向けを中心とした伸びが期待される。

<農業機械>

`99年は耕運機はPRONAF等政府の資金援助が結局下りず、停滞。

中・大型トラクターはコーヒー、大豆等の出荷好調に支えられ国内は伸長(前年比101%)、輸出はアルゼンチンの景気後退により不振(前年比43%)となり全体売上げでは前年比88%となった。

小型トラクターは国内農業景気に支えられ前年比114%と伸長。

今年は農作物価格の安定等による農薬の活況に加え、政府の農作物輸出振興のための各種優遇策が期待されており、農業機械の需要は伸長が予想される。

また、市長選挙の年でもあることから汎用ディーゼルエンジン等への特需が期待できる。中・大型トラクターの輸出はアルゼンチン次第のためあまり期待できない。

<建設機械>

`99年は国内需要停滞、公共投資減少等の影響で総市場前年比▲36%の4,155台となった。また、レアル安による輸入コンポーネントコストの上昇を価格転嫁できず、損益的にも悪化した。

輸出も主要仕向国の米国の需要減が影響し、業界全体で前年比▲27%の1,980台に終わった。今年は国内市場では需要の回復により、15%アップの 4780台程度を予測している。特に、都市部での建築需要、農業景気を期待しホイール・ローグ、油圧ショベル、バックホーの増加を見込んでいる。但し、大 型公共投資はあまり当てにできず、大型工事に使用するブルドーザーは減少となろう。

各社採算改善の試みとしてデバリによるコストアップの価格未反映分を値上げでカバーしてくると予想される。加えて、新機種導入等により、採算の良い輸出にさらに力を入れる傾向となろう。

<カメラ>

`99年は為替切下げ、高金利によるコストアップから業界全体として大幅な値上げを余儀なくされた。その影響で消費者の購買意欲は減退し、年末商戦での加熱は見られたものの通年で国内市場は、前年比▲15~20%の下落を示した。

但し、国産カメラメーカーのなかには、価格競争力を発揮して年末の増販に成功、昨年に比べて売上を伸ばしたところもあった。

今年はそれほど大きな伸びは期待できないが、輸入カメラの低迷をカバーして国産カメラの販売は伸長すると思われる。

輸出については、南米周辺国向けを中心に市場開拓の動きがあるため、ブラジル国産品については拡販の可能性があると見られる。

<鉄鋼>

`99年の国内鋼材需要は、レアル安直後の景気停滞により、前半は自動車、家電、各種機具向け鋼板を中心に急落した。しかしながら、後半よりインフレ、 金利、為替の安定とともに、逆に輸入代替として国産鋼板需要は増加傾向となり、結局通年では鋼材全体で13,5百万トン、前年比▲0.5%の国内需要と なった。

特に、メッキ鋼板については、自動車を中心に脱冷延鋼板の動きが見られ、需要増。

鋼材輸出については、9.8百万トンと前年比11.4%増となった。

これは、北米での鋼板に対するダンピング問題等に対応し、 スラブ鋼の輸出を伸ばした(前年比+17%)ことが全体の輸出増に貢献した。

結果、生産実績では、鋼板が10.1百万トンで前年比▲2.9%となるも鋼材全体では23.7百万トン(前年比+2.1%)の微増となった。また、売上では輸出のレアル安効果が貢献し、業界全体で前年比+25.4%の148億レアルを記録した。

また、粗鋼生産は22.9百万トンで前年同期比▲4.2%となった。

2000年は国内経済回復に加え、全国市長選挙対応としての公共投資が期待され、国内の鋼材需要は昨年に比べ+6%程度の増加を予想している。

また、自動車用を主体とした溶融亜鉛メッキ鋼板の製造がUSIMINASで9月より開始される予定となっており高付加価値製品の需要増が期待されている。

輸出については、引き続き堅調に推移すると見られており数量では5.1%、また国際価格の上昇により金額では8.3%の伸びが予想されている。

業界全体でこの5年間に91億ドルの投資が行われたが、今年は更に160億ドル、来年以降230億ドルの追加投資が予定されており、今後、同業界では国際競争力向上、新製品の開発が期待できる。

<電動工具>

`99年は通貨切り下げの影響で各社とも輸入品のみならず国産品も含め値上げを実施、結果荷動きが止まった。以後販売キャンペーンを繰り広げるも通年で▲15~20%の市場縮小となった。但し、中国製輸入品は安価を武器に台数を伸ばした。

輸出については、為替安による価格競合性が増すも主要市場のUSA向けが伸びずに横ばい。各社ともデバリを価格転嫁できず、採算悪化を招いたが、同時に原価低減による収益改善努力を継続している。

2000年は市場の落ち着きから、10%程度の売上増を期待しているメーカーあり。

新機種の投入も予定されており、需要喚起の要素となろう。
輸出については、アメリカ、メキシコ向け完成機に期待がよせられている。アルゼンチン・チリ等はブラジル製に対する不信感があるので、それを払拭するための今後の地道な販売活動が市場開拓に必要。

<切削工具>

為替ショックの影響で`99年前半は市場が低迷するも、後半から徐々に上向き始めた。

市場の様相は一変し、従来の輸入品市場から国産品中心の市場となり、輸入ブランドは国産化投資を余儀なくされている。

輸出は日本、アジア、欧州の景気停滞により横ばいとなった。

2000年は年初より出足好調で、この調子でいくと市場の早期回復が期待できる。

輸出は世界の景気動向によるが、大市場である北米・ヨーロッパ向けを中心とした積極策がポイントとなろう。

2000年上期業種別部会長懇談会-化学部会

  • 上流部門でトラブル目立った石化業界
  • 遺伝子組換え作物に政府が「待った」
  • 大手の中小メーカー買収つづく水処理業界
  • 写真フィルムも売掛金回収問題に直面
  • 自動車分野向けダウン

 

司会:では次に、化学部会の矢島部会長お願いします。

矢島:出光の矢島でございます。私のところから製造業の報告になりますが、化学業界の99年の回顧及び2000年の展望について報告させていただきます。

化学業界は、いつも申し上げておりますように、間口が広く、奥行きも深い業界ですが、いつものように、川上・上流部門からの、順にご報告させていただき ます。まず、石油化学、合成樹脂部門ですが、カマサリのエチレンセンター、コペーネでは、年を通じまして、小規模ながら、プラントのトラブルが続き、一度 は運転が止まり、エチレン供給に支障をきたしました。このため、コペーネのエチレンの年間生産量は、能力の120万トンを割り込み、約10万トンはショー トしたのではないかと思われます。事実、コペーネのエチレンユーザーである誘導品メーカーの間では、原料エチレンの取り合いが起こりまして、ことに年末に は深刻な局面が発生致しました。

幸いにも、南のエチレンセンター、コペスールで、7月から新設になりました、年産45万トンのエチレ ンプラントが稼動開始したこともありまして、加えて、同コンビナート内のポリエチレンメーカーが、そのプラント事故で稼動停止中だったこともありまして、 その分のエチレンがコペーネの供給先の一つ、アラゴアスのトリケン社に移動し、そこでのPVC,(ポリ塩化ビニール)の生産停止をまぬがれたといった場面 もありました。

デバリで出荷増の国内合成樹脂メーカー

このほか、カマサリのポリプロピレンメーカー、ポリブラジル社でも事故がありまして、昨年は上流部門でのトラブルが目立ちました。合成樹脂メーカーで は、年間出荷数量は前年比、速報で、4パーセントの伸びを、金額ベースでは、1月の為替の大幅切り下げと、ナフサ価格の上昇を理由とした値上げで、30 パーセント強は増加したと見られます。

一方、デバリは、市場での輸入代替、すなわち、輸入品から国産品への切り替え需要を生むという新たな一面ももたらしました。このため、国内樹脂メーカーでは、数量で10パーセント伸びた部門もあり、輸出にまわる余力はなく、輸出は大きく後退いたしました。

カラーテレビ本格的回復に至らず

需要業界を、部門別・樹脂別にみますと、まず、家電分野では、年末へのクリスマス需要に向けて、オーディオ、テレビの新製品上市とあいまって、ポリスチ レンが年後半に値動きが活発化いたしましたものの、本格的回復とは言えず、たとえば、カラーテレビは一昨年が450万台、99年が400万台行ったか行か ないか、のレベルでとどまりまして、未だしの感があります。他方、前年から引き続き不振の自動車は、昨年は134万台が生産台数だと報告がありますが、こ れに向けるポリプロピレンも、未だ力強さが見られませんでした。

その他分野に目を転じますと、スーパーマーケットのポリ袋、キャッ シャーでのレジ袋に使用されますフィルムは、高密度ポリエチレンの代表分野ですが、これは、需要が大きければ競争も激しく、東アジアからの製品輸入、製品 輸入と言いますのは、もう袋、完成品の形での輸入で、これは大手スーパーが直接買い付けるという動きも常態化しております。

他方、食 品は景気動向に左右されない部門であるせいか、食油用のペットボトル、ビスケット、パスタ等の包装材に各種フィルム、これらは酸素バリアー性をもつ日本製 のフィルムが大量に輸入されております。また、化粧品やシャンプー用の各種ボトル、その他雑貨、玩具および通信ケーブル等は、好調に推移したとの報告があ ります。こうした、プラスチックス加工業界の一角にありまして、各需要分野と接点を持ちます着色メーカーによりますと、業界は年初の輸入原料、および国産 原料の便乗値上げによるコスト上昇で、採算悪化に悩みながらも輸入代替の進行に支えられまして、予想以上の業績だったとしております。以上が、上流部門の 石油化学・合成樹脂分野です。

農薬出荷20億㌦へ減

次は、農薬部門です。農薬業界は、国内メーカー17社がシェア90パーセントを押さえておりますが、前年の22億ドル近くあった出荷額が、昨年99年 は、20億ドルへダウン、約8パーセントの減少をみました。作物別に見ますと、農薬需要の約半分を占めます大豆が、4月5月に旱魃に見舞われまして、背丈 が伸びず減産。加えて国際相場が低迷致しまして、減収のダブルパンチ。ミカンに代表されます柑橘類も通年で30パーセント収量ダウン、価格は上昇いたしま したが、農家の収入は増えず、彼らへの農薬の売掛回収不安から、具体的に不良売掛に転じ、業界全体での不良売掛率は5、6パーセントになったと見られてお ります。その他の作物では、綿を除いて、コーヒー、とうもろこし等代表的作物は不振、期待の星の「遺伝子組替え作物」も2003年まで、政府から「待っ た」がかかり、メーカーは、戦略見直しに加えて合併などを含む、事業統廃合を進めている模様です。

3番目に、金属・工作油関係ですが、ドルベースで見ますと、上期が前年対比92パーセント、下期が同じく104パーセント、通年合計では、前年とほぼ同じ100 パーセント弱でありました。

輸送機器分野は、優良部品メーカー向けが通年で15パーセントの伸びを示しましたものの、自動車分野が足を引っ張り、全体では、10から15パーセント のダウン、機械関係を併せてようやく対前年、微増となりましたが、これは、機械、精密機器関係で、通年で20パーセント強アップしたおかげだと言われてい ます.。鉄鋼関係は、上期の後退が大きく、下期でこれを取り返しましたものの、通年では前年対比99パーセントにとどまりました。

年初の為替切り下げ、これによる原料値上げ、実質35パーセント強あがりましたが、これもどうやら吸収出来、若干ながらの利益を出せたという報告です。

次に、水処理剤分野ですが、1月の為替切り下げは、購入原料の80乃至85パーセントが、輸入乃至ドル建てだったため、これは、痛かったとしておりま す。まあこれにより、20から25パーセントの売価修正を実施しましたが、客先の半分を占める石油・石油化学、同じく2割を占めます鉄鋼分野は、対応がス ムーズにいきましたが、残りの3割、これには自動車・機械がふくまれますが、ここでの価格修正は、苦労しました。

業界は、大・中メーカー50社が、しのぎを削っておりまして、トップ2社がアメリカ系、M&Aが進捗中で、大手が中小メーカーを次々に買収中。なかでも、フランス系メーカーが、対ブラジル攻勢に出てきております。

次に、接着剤・シール剤分野ですが、ここは、工業用とコンシューマー用に、ブラジル全土で販売展開していますが、昨年は、両分野併せて数量・金額とも3 割増えました。ただし、為替切り下げで、輸入原料だけでなく、国産原料も値上げとなり、コスト上昇で収益圧迫、昨年は製品値上げ10パーセントしたもの の、これらのコスト上昇をカバーしておりませんので、再値上げを推進する一方、コストダウンを図っております。

フィルム需要大きく競争も激しい

次に、写真・フィルム分野ですが、為替切り下げで始まった昨年初め、99年はフィルム印画紙等、対前年20パーセント減くらいを観測しておりましたが、 結果的にはそれほどには悪くありませんでした.。理由は、これら消費財製品が、対前年横ばい乃至せいぜい1割減ですんだことにあります。この分野も、原材 料の50 パーセントは、輸入に頼っておりまして、昨年は、製品価格をレアルベースでおおむね4割乃至5割あげましたので、これについて来れない販売店もあると見え てまして、売掛回収での問題も出てきております。

文具メーカー業界見本市で稼いだ

最後に文具分野ですが、ボールペン、サインペン等の原材料にプラスチック、染料、インキ等を使用しておりまして、化学業界では川下の代表分野です。ブラ ジル全土に、大はスーパー、小は文具店を相手に取り引き件数約五千件、次第に量販店が台頭して来ておりますが、為替切り下げで2割一挙にコスト・アップに なりまして、製品価格を10パーセント上げましたものの、こうした上昇分も当然ながらカバー出来ておりません。しかしながら、下期は業界見本市がありまし て、4日間のここでの会期中の商談で上期を上回る売り上げを収めました。通年で、数量ベースで対前年比10パーセント、金額ベースで30パーセント増、採 算ベースで20パーセント増の結果を得ております。

以上が、ややトピックス的ではありましたけれども、化学業界の動向です。川下に行けばいくほど、購入原料の値上げと、これによるコスト上昇に苦労したというのが共通の現象でしたが、それぞれの自助努力でこれを乗り切ったと言えます。

2000年の動向について簡単に触れますと、全体に国内経済は安定、順調に推移すると思われますものの、外的要因に弱いブラジル経済の性質から、主にアメリカの経済変化次第では影響も予想されます。

注意すべきは、昨年1年間で2割強の値上がりを見せた原油価格の動向ですが、新年明けましてのち、弱含みで推移しておりまして、関係者は、1バレル20ドル前後で落ち着いて欲しいと期待しております。

石化原料、ナフサは今年7月から完全自由化になる予定でして、国際価格にスライドとなりまして、下期の動向に注意が必要と思われます。

プラスチック業界は、10パーセントの伸びを期待しておりますが、輸入品から国産品への切り替えも今年以上に強まるとみております。このため、輸入品に 負けない高品質品の提供と、昨年来のコスト上昇分の吸収、製品への転嫁をもって採算向上をはかる、これが今年の課題です。

その他業界 も昨年以上を期待しておりますが、農薬業界のようにラニーニャ現象で、南米は多雨が続きまして、年前半は厳しいとするところや、水処理業界のように市場パ イは大きくならず、とったりとられたりの中で、企業間優位がはっきりする年、と見る分野もあります。需要業界では、自動車と家電分野の動向がキー、これは 今年も変わらないと思います。時間超過しましたが以上です。

司会:どうもありがとうございました。昨年の懇談会と違って、化学部会は一部農薬、それから水処理業界は別としまして、おおむね99年はよかったということですね。大体10パーセントから20パーセントの収益アップが出来たと。次に機械金属部会の宇治部会長お願いします。

 

2000年上期業種別部会長懇談会-化学部会(レポート)

部会長 : 矢島 章

[1999年の回顧]
(1)石油化学・合成樹脂

カ マサリのエチレンセンター COPENEでは通年で小規模ながらプラントのトラブルが続き、一度は運転を停止し、エチレン供給に支障を来した。このためエ チレンの年合計生産量は能力の120万㌧を割り込み、約10万㌧(速報)はショートした。その結果COPENEのエチレンユーザーである誘導品メーカー間 では原料エチレンの取り合いが起こり、殊に年末には深刻な局面が発生した。幸いにも南のCOPESULで7月から新設なった年産45万㌧エチレンプラント が稼働開始、同コンビナート内PEメーカー(TRIUNFO PETROQUIMICA社)がそのプラント事故で稼働停止中であったこともあり、その分の エチレンをCOPENEの供給先の一つアラゴアスのTRIKEM社に移送し、そのPVCの生産停止を免れた。

この他、カマサリのPPメーカーPOLIBRASIL社でも事故があり、上流部門でのトラブルが目立った。

合成樹脂メーカーでは、年間出荷数量は前年比4%(速報)の伸び、金額ベースでは1月の為替の大幅切下げとナフサ価格の上昇を理由とした値上げで 30%強は増加したと見られる一方、デバリは市場での輸入代替、即ち、輸入品から国産品への切替え需要を生むという新たな一面をもたらした。このため国内 樹脂メーカーでは数量で10%伸びた部門もあり、輸出余力は大きく後退した。

需要業界を部門別・樹脂別に見るとまず家電分野ではオー ディオ・TVの新製品上市とあいまってPS(ポリスチレン)が年後半に荷動きが活発化したものの、本格的回復とは言えず、前年から引き続き不振の自動車 (国内販売は輸入車を除き10.2%減)向けPP(ポリプロピレン)は未だ力強さを欠いた。レジ袋に代表されるフィルムはHDPE(高密度ポリエチレン) の代表分野で、需要も大きければ競争も激しく、東アジアからの製品輸入(大手スーパーが直接買い付け)も常態化した。食品は景気動向に左右されない部門で あるからか、食油用ボトル(PET)、ビスケット・パスタ等の包装材に各種フィルム、化粧品・シャンプーボトル(PET、PP、HDPE)、その他雑貨・ 玩具(ガーデンファニチャー、アウトドア用品)、通信ケーブル等は好調に推移した。

これらプラスチック加工業界の一角に在り、各需要分野と接点をもつ着色メーカーによれば、業界は年初の輸入と便乗国産原料の値上げによるコスト上昇で採算悪化に悩みながらも、輸入代替の進行に支えられ、予想以上の業績であったとしている。

(2)農薬

農薬業界は国内メーカー17社がシェア90%を抑えるが、前年に21.8億US㌦あった出荷高が99年は20億㌦へダウン(8.2%減)。作物別に見る と、農薬需要の40~50%を占める大豆が4、5月に干ばつに見舞われ背丈が伸びず減産、加えて国際相場が低迷し減収のダブルパンチ。ミカンに代表される 柑橘類も通年で30%収量ダウンで、価格は上昇するも農家の収入は増えず、彼らへの農薬の売掛回収不安が具体的に不良売掛に転じた(業界全体平均不良売掛 率5~6%)。その他は綿を除いてコーヒー、とうもろこし等代表的作物も不振、期待の星の遺伝子組み換え作物も2003年まで政府から「待った」がかか り、メーカーは戦略見直しに加え、合併を含む事業統廃合を進めている。

(3)金属工作油

数量ベースで見ると、上期が前年対比92%、下期は同104%、通年で100%弱。

輸送機器分野は、優良部品メーカー向けが通年で15%の伸びを示したが、自動車が足を引っ張り、全体では10~15%ダウン、機械関係を合わせてようや く対前年微増となった。これは機械・精密関係で通年で20%強アップしたおかげ。鉄鋼関係は上期の後退が大きく、下期でこれを取り返したものの通年では前 年対比99%に止まった。

売上高で見れば、上期は98年対比で99%と伸びず苦労したが、下期は遡及値上げ分も手伝って30%弱ながら前年を上回り、通年では114%増で、まずまずの成果を示した。

結果、年初の為替切下げ→原料値上げ(実質35%強)もどうやら吸収出来、若干ながら利益を出せた。

(4)水処理剤

1月の為替切下げは、購入原料の80~85%が輸入乃至ドル建てなので、痛かった。20~25%の売価修正を実施したが、客先の半分を占める石油・石油 化学、同2割の鉄鋼分野は対応がスムーズに行ったが、下期になり円高に推移、「日本産輸入原料が上がったから値上げしたい」とは言えず、下期為替変動(日 本産輸入原料は円建て。レアルも1ドル1.9~2.0へ推移)の対応は未だしである。

業界は大、中メーカー50社がしのぎを削り、 トップ2社が米系。M&Aが進捗中で、大手が中小メーカーを次々に買収中、中でも仏系メーカーが対ブラジル攻勢に出て来ている。彼らは「水処理のトータル 企業」を標榜、「エンジニアリング+設備貸与+運転+製品納入」を打ち出している。

(5)接着剤・シール剤

インダストリアル、コンシューマー両分野向けに販売展開するも、昨年は両分野合わせて数量、金額とも30%増。但し、為替切下げで輸入原料だけでなく、 国内産原材料も値上げとなり、コスト上昇で収益圧迫。昨年は製品値上げ10%したものの、これではコスト上昇をカバーしきれず、再値上げを推進する一方、 コストダウンを図っている。

業界全体でも前年比30%の伸長を示した。

(6)写真フィルム

為替切下げで始まった昨年初め、99年はフィルム、印画紙等で対前年20%減(数量ベース)を予想していたが、それ程には悪くなかった。理由はこれら消 費財製品が対前年横這いないしせいぜい1割減で済んだこと。但し、「ミレニアム」需要増を期待するも、空振りに終わった。

原材料の50%は輸入に頼る現在、昨年は製品価格(R$)を概ね40~50%上げたが、これについて来れない販売店もあると見え、売掛回収での問題先も出てきている。回収には4段階あるが、カルトリオからの通知で相手は大体支払いに応ずる。

(7)文具

ボールペン、サインペン等の原材料にプラスチック、染料、インキ等を使用、化学業界川下代表。

ブラジル全土に大はスーパー、小は文具店を相手に取引件数約5千件、次第に量販店が台頭中。

為替切下げで一挙に20%コストアップ、3月に製品価格を10%上げたが、コスト上昇分カバー出来ず。下期は業界見本市があり、4日間で下期の新学期分需要をかき集め、上期を上回る売上げ。

通年で、数量ベースで対前年10%増、金額(R$)で同30%増、採算ベースで20%増。

広告宣伝費を3~5%削るなど、コストダウンにも注力した。

[2000年の展望]

経済成長率は3~4%、為替1ドル(1.9~2.0)、インフレも昨年のような大きな変動はないと見る。

全体に国内経済は安定、順調に推移すると思われるものの、外的要因に弱いブラジル経済体質から主にアメリカの経済変化次第では影響も予想される。注意す べきは、昨年1年間で2倍強の値上がりを見せた原油価格の動向だが、新年明け後弱含みで推移、関係者は1バレル20ドル前後で落ち着いて欲しいと期待。一 方、石化原料のナフサは今年7月から完全自由化されて(レポート執筆時点での動き)国際価格にスライドとなり、下期の動向に注視が必要。

プラスチック業界は10%程度の伸びを期待、輸入品から国産品への切替えも今年以上に強まると見る。このため輸入品に負けない高品質品の提供と、昨年来のコスト上昇分の吸収または転嫁をもって採算向上を図る、これが今年の課題。

その他業界も昨年と同様以上を期待するも、農薬業界のように「ラニーニャ」で南米は多雨が続く年前半は厳しいとするところや、水処理業界のように市場パイは大きくならず、取ったり取られたりの中で企業間優位がはっきりする年と見る分野もある。

需要業界では自動車と家電の動きがキー、これは今年も変わらない。

以上

 

2000年上期業種別部会長懇談会-部会長懇談会

懇談会

司会の言葉:本日は、お忙しいところをご参集いただきまして、大変有難うございます。ただいまから当ブラジル日本商工会議所の業種別部会長懇談会を始めたいと思います。
本日は小島総領事が初めてのご参加なので、一言ごあいさついただいたあと、私のほうから司会を努めさせていただきます。では総領事、一言お願いいたします。

小島総領事: 今日は初めての業種別部会長懇談会に参加させていただきまして有難うございます。
今年は「具体的アクションの年」ということで、「官側」として何が出来るか、あるいは「官と民」と協力して、何が出来るか、ということを今後考えて行く上で、基本的には、皆様の議論を拝聴させていただきたいと思います。

岡田司会(以下司会): 有難うございました。
本日は、各部会長さんより業種別の「99年の回顧と2000年の展望」について、お一人10分程度ご報告をいただいた後、自由討議に移りたいと思います。
その後、すでにご連絡しましたように、部会活動の今後の在り方について、率直に議論する予定です。

三好会頭からは、後で講評をいただく事にしまして、まず、最初に私のほうから、共通部分について簡単に触れさせていただきます。

共通部分
● 99年の為替レートの動き
● 99年のインフレ
● 99年のGDP
● 海外からの資金調達・直接投資
● 財政責任法
● 今後の経済予測

(1)まず、99年のブラジル経済ですが、年初に為替変動相場制への移行を余儀なくされ、その後ブラジルリスクに対する過敏な反応により、為替が一時1 ドル2.2レアルまで行く等、不安定な局面となり、インフレ再燃、為替相場の続落、景気大幅後退といった悲観的なシナリオを描くエコノミストも多かった訳 ですが、一年が終わって振り返って見ると、GDP成長率が1%程度のプラス成長を達成したと見られるなど、ブラジル経済は予想外の回復を見せたと言えると 思います。

(2)主な指標を見ても、インフレは、中銀がインフレ抑制の指標として使用しているIPCAベースで年率8.94%の上昇と、目標を達成したのを始め、金利も9月以降、引下げが見送られているものの、3月初旬の45%に対し、19%まで引下げられています。
また、IMFとの融資の基本合意条件である公共機関のプライマリー黒字も、11月現在で、約328億レアル、GDP比3.6%を達成するなど、暫定的な増税措置によるところが大きいという恨みはあるものの、99年年間の目標達成は確実視されています。

(3)こうした情勢を受け、海外金融市場でのブラジルに対する評価は回復しつつあり、連邦政府の相次ぐグローバル債起債による資金調達は成功しており、 調達条件も、アジア危機やロシア危機以前の水準までは回復していないものの、最近実施されましたユーロ市場及び、ドル市場での資金調達では、スプレッド 650ポイントと言う水準になるまでとなっております。
また、海外の直接投資も、99年は300億ドルを若干切る水準に達するなど、好調に推移しました。

(4)2000年に関してですが、概ね楽観論が支配しています。GDP成長率に関しましては、政府とIMFの合意である4%成長は難しいとしても、2% 後半から3%後半という見方が大勢を占めていますし、インフレに関しても6±2%の年間目標の達成は可能との見方が強くなっています。また、昨年は期待外 れに終わった貿易収支の改善も、一次産品の国際市況の回復もあり、今年は30~40億ドルの黒字に転換するとの予想が多い様です。

(5)プライマリー黒字の達成に関しましては、10月に市長選挙が予定されており、不安視されておりますが、先日連邦・州・市政府に対し、歳入に見合った 歳出を義務付ける「財政責任法」が下院で可決され、上院に送られました。この法律の施行が現在の法案通り、可決後即時発効となれば、財政支出コントロール の強力な武器になると期待されます。

(6)本年も、外貨に対する高い依存率、税制改革・公務員年金制度改革等の財政改革のための未解 決事項による公共機関の赤字体質、といった構造的な問題は完全には解決出来ないと思われ、従い、ブラジルの内外の金融情勢の変化に脆い体質は継続する訳で すが、少なくとも「昨年よりは良くなる」というのがコンセンサスではないかと思います。

それでは、各部会長さんのほうから各業界毎の、「99年回顧及び2000年の展望」をお聞かせいただきたいと思います。
まずは、田中コンサルタント部会長から、ブラジルの政治経済につきまして、更に詳細な99年回顧及び2000年展望をお話いただきたいと思います。

 

2000年上期業種別部会長懇談会-会頭講評

 

2000年は経済徐々に回復アクションプラン実行の年

三好会頭:三好でございます。お忙しい中、本日は貴重なレポート有難うございました。

皆様共通して言えることは、良きにつけ悪しきにつけ99年は為替切下げの影響を大きく受けたということ、2000年はそれ程大きな変動がなく、経済も徐々に回復するという事ではないでしょうか。

それから、お話を伺っていて、共通のテーマはやはり国産化ということを常に念頭に置く必要があるという事だと感じました。日本は技術面では優位にあり、やりようによってはブラジルで十分上手くやって行けるのではないでしょうか。

もう一つ当商工会議所としての大きなテーマは、昨年合意された「21世紀に向けた日伯関係強化」のためのアクションプラン策定であります。

従来の延長線での各部会・各委員会の活動も必要ではありますが、今年は今一つ踏み込んで全員参加のもと、各部会・各委員会の活動をより活発にしていく必要があると思います。

今年は前述アクションプラン実行の年でもあり、各部会長の皆様のご提言・ご提案を伺いたいと思います。

司会:あ りがとうございました。それでは時間が非常に押して来ましたので、従来のこういう部会の活動では非常にあきたらないとか、もっとこういう活動を自分の代に やって行きたいとか、もっと活発にやりたいとか、もうちょっと少なくやりたいというような事、ありましたら、まず貿易部会長の方からお願いします。

 

2000年上期業種別部会長懇談会-部会活性化案

目に見える商工会議所、貿易部会にしたい

能澤:貿 易部会長になってまだ1カ月少々で、大したことは考えてないし言えないんですけれども、今までの貿易部会、お話し伺ってますと、単に統計委員会って言うん ですか、先ほどご報告いたしました輸出入の「回顧と展望」を少し申し述べると、ということで単に統計資料、まあ、SECEXにこういう資料ありまして、こ れを単に文章化しているだけなんです。それじゃあまり意味がないという事でこのあいだ部会を招集させていただき、岡田さん、後藤さんにもご出席いただきま して、せっかく商工会議所の貿易部会と言うセミオフィシャルなタイトルがあるわけですから、もう一寸これを活用しようと。ありがたいことに大使館、総領事 館の方でも日伯関係をもう一寸拡大して行くというベクトルの方ですから、せっかく官にそう言って頂いてるんですから、民にとってはとても有り難いことで、 それに乗っかろうと。

ということで、在サンパウロ日本商工会議所貿易部会という名前をもう少し有効活用すべきじゃないかと、申し上げ 皆さんのご賛同を頂きました。で具体的に何をやるか、行動計画のスケジュールもまだ作っておりませんけれども、例えばさきほど出ましたブラジルコストの問 題提起ですとか、それを具体的に相手側にぶつけ行く。向こうからも日本コストの問題が出てくると思いますけれど、ぶつけ合ってそれがすぐ解決できるとは思 いませんけれども、法律ですとか、制度ですとか、あるいは常に文化の問題までいきますんで解決はできないんですけれども、そういう行動をすることによっ て、我々の存在もアピール出来るでしょうし、ひいては日伯関係がもう一回徐々に体温を取り戻してくるかなと、そういう事なんで、せっかく部会長を1年間や らせていただくわけですからその期間にできるだけ行動する、目に見える日本商工会議所、貿易部会、というのにして行きたいと思います。

会頭の方にもご相談したんですけれども、その方向でいいだろうという事ですから、これから部会員29社の皆さんにお図りしてですね、大したことは出来ないかも知れませんけども、何かやって行きたいな、と思っております。

部会長懇談会に積極的に参加

司会:ありがとうございました。矢島部会長お願いします。

矢島:化 学部会は会員22社中、常時活動しているといいますか、化学部会そのものに出て来られている方が7社、多くて10社ぐらい。これは本社がここにない、リオ だとかミナスだとか、という地理的事情もありまして、参加社は常に3分の1がいいところです。でこの3分の1で我々になにが出来るかと皆さんに意見を出し てもらったんですけれども、まぁ私のレポートにもございました通り業種業界が非常にばらけておりまして、非常に共通項が見つけにくい。ちょっと皆さんで一 緒に集まって何かをするというのはなかなかイメージしづらかったんですね。結果、年に二回の、化学部会とこの懇談会を充実させていこうと、積極的に参加さ せていただこうと、こういう結論になりました。

司会:上原部会長お願いします。

年2回の懇談会で十分

原:私 どもも化学部会と同じで少人数でやっております。先ほど申し上げました6社に加えまして、三菱商事さんの食品担当の方を加えて全部で7社。それぞれ全部 やってる事が違いますので、共通テーマがないんですね。多分、しょっちゅう集まってもやる事ないんじゃないかと。ということは年に2回のこれで充分だと思 いますけれども。渡辺さん、どうでしょう?

渡辺:多分難しいですね。あまりにもやってることが違いますからね。

司会:ありがとうございました。江口部会長お願いします。

江口:部会を開きまして、魅力ある商工会議所にするために、部会の活性化について皆様に問い合わせました。

まず部会の活性化の前に意見が出まして、電気・電子部会メンバー約45社ありますが。毎年アンケートをとりまして返ってくるのが約半分。そのアンケート をもとにして部会、各分会を開いていただくんですが、合計でも15社くらいしか出て来ない。それで中を見ますと、例えば翻訳業とかリース業が入っている。 なぜ入ってるかといいますと、家電製品のマニュアルを作るために翻訳さんがいるんでこれのセールスに来ているんですね(笑)。で、私ども製造業に色んな機 器をリースして頂きます、やっぱりセールスに来ているわけなんです。こういう仲間を入れて電気・電子部会で何かやろうって言うのはやはり難しいんじゃない ですか、という意見がありました。

やはり部会、分会のメンバーさんをもう一度見直した方がいいんじゃないかと。共通の話題の取れる会 員にすればですね、活性化が図れるだろうと思います。それで私どもは生産をしておりますので、これは提案なんですが、いろいろ生産活動をやっておりますの で皮切りにですね、私どもの工場を見て頂いて参考になれば参考にして頂く、またはそういう機会を各社つくって頂いて、お互い切磋琢磨しながら生産力の向上 を図るというのもひとつの目標になるんじゃないかと考えます。部会に参加して意味があったなと言えると思います。まぁひとつそういった提案をさせて頂きま した。以上です。

司会:時間がもうないので、渡辺領事が転勤されるので、一言感想を頂いて、一番最後に今日ご来賓の総領事から一言頂いて終了したいと思います。若干不手際で10分くらいオーバーして申し訳ありません。

従来ない積極的さを感じた新しい流れのはじまりの秋

渡辺:皆 様長い間大変お世話になりました。この業種別部会長懇談会に3年間にわたり出席させていただき、大変勉強になりました。今年の部会長懇談会は2000年と いう節目を迎えたこともあって、例年とは違った印象を受けました。特に今後の部会のあり方について見直そうというアクション・オリエンテッドな意見が出て 来たことには、これまでの商工会議所にない積極的なものを感じました。

先ほど三好会頭がおっしゃられた通り、私も日伯両国の経済関係 強化に向けた大きな流れがいま始まろうとしているのを感じます。具体的にはCNIと経団連間や両国政府ハイレベルにおける関係強化に向けた枠組みづくりが 始まろうとしています。この流れはCNIのあるリオとブラジル政府のあるブラジリア、そして経団連の日本といった3極を中心に動き出しているかに見えます が、この流れが成功するかどうかはここサンパウロで実際にビジネスに携わっていらっしゃる皆様方にかかっていると思います。商工会議所でも「ブラジル・コ スト」改善に関するブラジル連邦政府への申し入れ等、日伯経済関係強化のための様々な議論をお願いしたいと思う次第です。ありがとうございました。

司会:渡辺領事には本当にながい間ご指導いただいて有難うございました。それでは最後に小島総領事から一言お言葉をいただいて閉会としたいと思います。

日伯関係を上向きに   ― 小島総領事 ― 

小島:本 日はありがとうございました。商工会議所をどういうふうに運営して行くかということはもとより、商工会議所が判断されるべきものであり、総領事館がとやか く言う立場にはありません。各企業としては、業績を上げるということが目的であり、官が余計な関与をするなというご意見もあろうかと思います。

ただ、共通項がこの商工会議所内全体レベルであるという場合等、官がお手伝い出来ることもあろうかと思います。全体的な環境づくりとしましては、先ほど 三好会頭がおっしゃいました通り、まさに日伯の経済関係を上向きに持って行かなければいけないという認識は東京でも当地でも持っております。そういう意味 で一緒にやって行ける部分がかなりあるんじゃないかと考えます。官にこういう事をやってくれ、あるいは手を出すなという事を率直にいろいろなチャンネルを 通じて言っていただけたらと思います。

司会:ではどうもありがとうございました。終わります。

2000年上期業種別部会長懇談会-資料室の文献紹介

大逆転 = コンチネンタル航空

当商工会議所へさきごろ入会された米コンチネンタル航空会社から「大逆転 ― コンチネンタル航空奇跡の復活」(ゴードン・ベスーン、スコット・ヒューラー共著、仁平和夫訳をご寄贈頂きました。

また、同社紹介記事掲載の「日経ビジネス」12月6日号、米ヒューストン案内も併せて頂き当所資料室におさめてございますので、お知らせします。

ブラジル日本移民の1900年代

サンパウロ新聞社社会部発行。日系コロニアにおける主な時代のトピックスを簡潔に、笠戸丸から日系団体連合会までの動きを収録。

また日系企業、日系女性群像、中隅哲郎氏の日系コロニアの将来も併記。
一部R$10.00
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