司会:皆さんから本日の原稿を頂いておりませんでしたので、まあ、今年の上期は、大幅切り下げでひどい目にあったけれども、下期は、かなり立ち直りそうだ、という元気があるお話がうかがえるかな、ということで副題を「経済回復に伴う産業の伸長を阻害するもの」にしましたけれども、どうも、皆さんのお話を伺いしていますと、段々下を向いていく業界がかなり多く、副題の通り、下期はかなりいけそうだ、というのは、今、加藤部会長とか、上原部会長とか、木嶋部会長とか非常に限られた部会かな、という感がします。
今までの皆さんのお話を簡単に、まとめ、それから、副題の切り口をさせていただきますので、忌憚のないところ、要するにこういうことが改善されれば回復は可能だとか、ここが問題だ、というようなことを、ざっくばらんに、残り30分弱ございますので、今日出席していただいた、全員の方にご発言いただきます。
まず第一は、政治の問題です。年初、ブラジルが危機的な状況にあった時は、ある程度、団結して事態に対処し、緊急財政改革法案の可決を実施、実現したわけですが、危機が去るとともに、次期大統領選挙や、来年の市長選挙、それから、利権の確保をにらんだ政争が再発し、税制改革や年金改革といった、抜本的な財政改革の討議・審議がなおざりにされている感があります。
第二に、金利の問題があります。公定歩合といえる、SELICは、7月28日の中銀の通貨改革委員会で、19.5%に引き下げられたわけですが、国際水準からいえば、まだまだ高い水準にあります。
また、ブラジルの現在の財政状態を見ると、今後の金利引下げ余地は、限られたものにならざるを得ないと思われます。更に金融機関に対する、様々な規制や税制等から、金融機関の貸し出し金利がSELICの引き下げに見合う程度、下がっていないこと、信用リスクマネージメントの未整備等から、消費者金利が高止まりしていることも見逃せないと思います。
第三に、アルゼンチンの情勢があげられます。アルゼンチンではレアル切り下げ以来、輸出不振、ブラジル産品の大量流入で、急速に景気後退しており、現在保護貿易主義的な動きが強まっています。さらに、景気後退による税収減や与党大統領候補の不穏当な発言により、ペソ切り下げの観測が流れるなど、同国の情勢は不安定なものになっております。アルゼンチンはブラジルにとって、メルコスールの第一のパートナーであり、輸出市場としては、米国に次ぐ第二を占めております。
さらに、海外の投資家は、ブラジル・アルゼンチンを、ラ米のエマージング・マーケットとして、ひとくくりに見る傾向があり、アルゼンチンが金融危機に陥るようなことになれば、ブラジルにその影響が波及するのは必至のことと思われます。
第4に、これは阻害要因というよりは不安要因なのですが、米国の情勢があげられます。7月末に発表された各種データにより、米国では再びインフレ懸念が強まり、利上げ観測がなされております。不安なのはこの利上げにより、ブラジルから大量の外貨が流出し、年初のような金融市場の混乱状態が再現しないかということです。
第5に、国際商品市場の低迷があります。ブラジルの輸出産品である一次産品や、基礎的な工業製品価格は低迷を続けており、ブラジルはデバリの効果を十分に享受できていないという面があります。貿易収支は、1-7月で、5億2500万ドルの赤字であり、IMFとの見直し後の合意であります約40億ドルの黒字の達成は不可能と思われます。
最後に、今更という感じですが、ブラジルコストの問題です。インフラの未整備や、不十分な民営化等により、港湾コスト、輸送コストは、国際水準に比べ、非常に高いものになっております。このため、輸出産品の競争力をかなり削いでいる部分があると思います。
また、非能率的な公共機関のサービス、相対的に低い水準にある労働の質、複雑で、度々変更される税金や諸負担を、言い古されたことでありますが、経済回復を、阻害するものといえましょう。
以上、問題提起をさせて戴きましたので、今宮さんから下半期における回復阻害要因について、貿易部会長として、一言お願いします。
欧米の勢いを実感
今宮:各社さん、いろんな、状況があると思うんですけど、やはりアジアの経済回復ということに伴って、ブラジルと日本、という関係で見るとね、残念ながら私どもはやはり、会社の方針としてまたアジアに戻っていく、ということが一つ、悩ましいな、ということ。
それから、ブラジルの、この地場産業の伸長、ということからいくと、ちょっと離れるんですけども、改めて、やはり、ヨーロッパとアメリカの勢いというか、こういったものを色んな所で感じるわけでね。ここの進出企業の厳しさってのは、時間とともに感じます。
それとやっぱりこの国の、いま岡田さんの、かなり中長期にも及ぶような、今後の見通しというご紹介の中で、日々の仕事を通じて一番感じることは、この国の経済ってものを考えた時に、どうもその、ボリビアからきたガス、非常にこれ不透明。要するにペトロプラスに言わせりゃ、今のこの、メガワット、30ドル前後の電力代金が安すぎるんだよ、と。私どもの家庭で使っているのが今17センターボですか。ドルに換算すれば10セントくらいですけれど。工業用ってのは3セントくらいで来てるわけですけれども、じゃあお前さんたち、一体いくらその、あれだけの金をかけて持ってくるガスを、電力いくらなら成り立つと思うのって聞いたら、やっぱりメガワット50ドル、60ドルだと。
だけどもまあ、さっきの話しに戻りますけれども、やっぱりこのブラジルの輸出だとか、経済ってものを伸ばす上で、その、電力というものが、まあ言い古されてはいますけど、かなりもうピークにきているという中で、やはり、どっかで、やはりガスの値段というものが下がってきてですね、火力発電というものが、延び延びになっているものがですね、どこまで実行されていくのかな、ということで、まあちょっと、今、副題からそれたかも知れませんけど、我々としてみると、この下期の足元というよりも、来年以降のことを考えると、そんなに明るい見通しっていうのは、やっぱり立てにくいなあっていう感じがします。
中国の国策がネックに―空調
司会:非常にいい指摘で、やっぱり、アジアの経済が、顕著になればですね、日本はやっぱりアジアにまた、軸足をおいていくと。アジア危機の後、今までアジアに出そうと思っていたけれども、出せなくなった、ブラジルに出したいとていって、押取刀で進出されたメーカーさんもいましたが、そういう方たちに「今更なんですか、今頃なんですか、」ということを申し上げましたけれども、ブラジルを攻めるなら、場当り的では駄目だと思います。
日立の出石さんは、「今年は暑くなって、クーラーがえらく売れるんじゃないか」という見通しを持ってられますか、日本では、熱夏でかなり売れているらしいですけれども。
出石:北半球はどこも、非常に暑くなっているみたいですね。アメリカ、ヨーロッパ、日本も暑くなっています。ブラジルはちょっと、これからお天気次第でどうなるか分からない、というところです。で、いままでお話しのあったようなことはすべて私共の商売に影響しています。
私共の関係としまして、ひとつはやはり金利と為替のレートが落ち着いてくれないと、うちの業界はどうしても様子見が起こります。末端金利が下がってくれないと、お客さんの資金調達も難しくなりますし。
それから政治の話も、政府関連の建物がいまは財政赤字なものですから、工事が全部とまっています。で、売ったものもその資金回集が難しいということで、政府のほうは全然訴えられないものですから、そこが一番金回りのネックになって、次のほうに波及して行くというところがあります。
それからアジアの関係で云いますと、たしかに為替レートが変わって、輸入品に対しては競争力がついたんですけれども、例えば中国は輸出奨励金が出ているみたいで、数がパッとまとまれば、昔とレアルベースでも同じ値段で入れてくる、というところがありますので、そう云う中国の国策みたいなところが非常にネックになっています。向こうのほうが圧倒的に数がありますので、ブラジルのようにこれから数を伸ばして行こうというところでは、投資をパッとするだけの数はないし、向こうが政府の補助みたいな形で数に対して奨励金などを出されると、非常に苦しいと、云うのがウチの状況です。
ネックはインフラ未整備、税制等
司会:一番苦しそうな化学品業界の話を、お願いします。よくなるという話ありますか?
魅力あるマーケットだが・・・
後藤:難しいですね。今宮さんおっしゃったように、ちょっとやそっとじゃ良くならない。とはいうものの、世界の中で、この1億6000万人のエマージングマーケットは人口があって潜在力でいえば間違いなく世界一な訳です。
まあ、中国、インドもあるがそれよりもう少し、現実化が期待できる潜在力があるという意味で。
それをめざして欧米の各社が、ここに進出して来ている。我々、東南アジアにかつて(いまでもそうですがね)軸足をおいてやってきた企業にとって、なかなかここのインサイダーになれない。どうしても東南アジアを向いてしまう。日系企業にとって、将来ともこのマーケットを伸ばす、発展させるためにはもう少しここに入り込むこと、と云いますか。
とくにわれわれ商社ですから、どちらかって云うと、その、アウトサイダー、セミインサイダーくらいで売買ってケースが多いんですけれども、メーカーさん、政府も含めてと云ってもいいですかね。今後、ブラジルとの関係をより深めて行く必要があるんではないか、と。
だが、それを阻害しているものがいろいろあって、例えばその、われわれ日本人、あまり動くの好きではなく、この変化に仲々ついて行けない。
それから、ここのインフラ全般の未整備、税制問題等々の解決。これは時間がかかるんでしょうが、基本的にマーケットがデカイ、土地も広いし、食糧安保の観点からも、やはり、この国と日本との関係っていうのは、今まで以上に強くして行く必要があると思いますけれども非常に時間がかかる、という気がしています。
司会:有難うございます。ちょっと、元気のいい業界のお話を・・。木嶋さんのところは後半は、ただ、量販店の与信問題だけだ、という事なんですけれども、さらに付け加えて、もっと、もっと良くなるとか、何か・・。
農政不在がネックとくに原綿輸入 ― 繊維
木嶋:あの、繊維業界から言いますと、原料調達が大きな問題になります。ブラジルの農業政策不在のため、従来から自給しておった原綿ですね、一昨年は世界最大の原綿輸入国になりました。即ち、従来90万トン生産していた原綿が30万トンに激減してしまった事です。今年は世界的な一次産品価格の下落により、大豆から、より有利な綿花への転換などにより、原綿生産は49~50万トンへ回復しますが、この辺の事情を考えてもっと綿花作付け振興のための農業政策をとって欲しい。
もともとブラジルは広大な土地、人的資源に恵まれており、農業は政府の政策次第で最も強い分野です。今まで、工業化政策の陰に隠れ冷遇されていたと思います。従って、ブラジルの将来の発展を考えて綿花に限らず、強い農業部門を更に強化すべく農業振興政策に注力してほしい。
それから、色々の観点から言いますと、ブラジル・コスト低減対策の一つにもなりますが、いわゆる、あの困った労働法、労働裁判所関係の無駄な費用が大変高くついている事ですね。何かの新聞を見ますと、ブラジルの司法関連費用が全体で60億レアルある中で、労働関連で32億ドルも使っているそうです。一件300レアルの労働裁判が、1600レアルのコストをかけているとの事、人的、物的費用のロスのみならず、時間のロスにもなり、更に沢山の弁護士がおり、それを利用する弁護士の活躍の場ともなっています。
この労働法の改正、労働裁判所の廃止などを考えてほしい。
それと、沢山の失業者がおり、治安悪化の要因にもなっていますが、この雇用対策として前から再々申しておりますが、労働集約的産業の育成、繊維産業もその一つになりますが、こう言う分野の産業にもっと雇用増大対策として注目してほしい。
正式に労働手帳を所持している労働者は、先進国以上の過保護を受けていますが、それ以外の全体で半数と称されているアングラ労働者は、何の保護もなく非常に冷遇されています。これが治安、社会不安の要因でもあります。また一方、このアングラ労働者の正式な活用を行えば、ブラジル全体の労働コスト低減、ひいては国際競争力の向上にもなります。いま一部で論議されている資産課税も、世界有数と言われているブラジルの貧富の格差を縮小し、社会正義の高揚、購買力の拡大、ブラジルの大発展につながると思われ、是非こう言った改革に進んで欲しい。こう言った改革は今年にどうのと期待出来ませんが、確実に少しでも前進して欲しいと思っております。以上です。
労働問題もブラジルコスト
上原:いまの労働裁判に関しまして、食品部会で、非常に多く問題を抱え、裁判が月平均20件ある、という会員会社がおられまして、この辺が何とかならないだろうか、というお話しが出ていましたので、ご報告させて頂きます。
三好:労働裁判だけで当行も100件以上あり、その引当金も相当額になっています。これは日系企業のみならず一種のブラジルコストであり機会ある毎にブラジルべきです。
司会:ありがとうございます。渡辺領事、何かございますか。
インフレ圧力の中心は公共料金
渡辺:私が感じているのは政策の安定性です。例えば先日ブラジル政府の不法外国人労働者対策として、労働関係入国ビザ発給責任者が解任され、数ヵ月にわたり日本からの進出企業に赴任される方々のビザが降りませんでした。しかし私が知る限りでは、日本からのケースは労働者というより雇用する側の経営者に近い方々がこの問題で足止めされていたように感じました。また、物価について申しますと、政府が物価の安定を目指していうるにも拘わらず、このところのインフレ圧力の中心が公共料金であるところにブラジル経済政策の難しさを感じました。以上です。
税制はもっと単純化せねば
三好:阻害要因の一つに複雑な税制があります。税制をもっと単純化して、誰でも判る様な税制にした上で、キチンと徴収するという形をとるべきです。
現在、国会でも審議されている様ですが、これを早急にやるべきでしょう。
この議事録もポルトガル語に訳されて、ブラジル政府に行く訳ですから、日本商工会議所もこういう問題意識があるんだということを知らしめたい。
司会:いきますよ! 「日本商工会議所もこういう問題意識があるんだ」ということで政府機関のところへ行きますし、機会あうるごとに問題提起していきたいと思っています。お待たせしました。赤嶺副委員長、お願いします。
産業回復の阻害点は政治面にあり
赤嶺:しんがりを勤めさせて頂きます。ちょうど6ヵ月くらい前になりますか、今年第1回目の部会長懇談会で、私は今回のレアルの切り下げという大変な試練がブラジルに“災い転じて福となす”というような結果に是非なって欲しいというふうに申し上げたことを記憶しておりますが、皆様方の本日のお話しをお伺いしておりますと、まだすっかり災い転じて福となしていないような印象を強く受けました。
最も心配されていたインフレの爆発は、ひとまず回避され、また、予想されていた経済成長の落ち込みも左程ではなかったとは言うものの、もうひとつ懸案だった貿易収支と経常収支が容易に改善されていないので、めでたさも“半分程度かなあ”と、こんな感じを受けました。
産業の健全な回復を阻害している要因については当面問題として2つあると私は思うんですが、まずひとつは鳴物入りで実施された政府系企業の民営化後の公共料金たとえば道路、電力、電話それから燃料、そういった当然下がるべきはずの公共サービス料金の値上がりが逆に激しいこと。これはいままで諸先輩の方々から、問題意識として出されましたあの悪名高いブラジルコストの更なる押し上げにつながるのではないか、というふうに私は心配しております。
2番目に、しかし何といっても、この国で産業の健全な回復を阻害しているのは政治面にあると私は見ております。なかんずく、国会でFHC大統領を支える与党陣営の足並みが統一せず、三好会頭がついさっき指摘されました税制改革をはじめとする諸構造改革が棚上げにされたままにになっていること。それがすまない限り、健全な産業回復への道は開かないのではないかと、あるいはいくら希望的観測があっても仲々開けないのではないかと、こういうふうに思っております。以上です。
司会:ありがとうございました。あと、玉川領事にまだ、ご発言いただいてないので、領事にお話して頂いた後、池田首席領事から講評、並びに、三好会頭から講評いただいて、終りたいと思います。
税制・年金改革にもっと真剣に
玉川:玉川と申します。初めてこの場に出席させて頂いております。3月の中旬にやって参りまして、ちょうど、日本を発つ前、ブラジルが一番すごい状態にあったので、非常に恐ろしいイメージを抱えてきました。そういう意味では着任後、だんだん落ち着きを取り戻しているのかな、とここにいるからこそ、分かる状況ではありますけれども、逆に言いますと、東京にいる方たちというのは、その当時のイメージをまだ引きずっておられる方もいて、そうしたものがまだ、完全には抜けきれてない状態なのかな、と思っております。
一言、ということで、私事で恐縮なんですけれども、東京にいました時分、私は、内政関係、厚生省関係の仕事をやっておりまして、そうした立場からしますと、社会保険料なりなんなりが今、向こうでは企業での収益体制とかを考える時には、コストとして、まあ高齢化っていうのもあるのですけども、ものすごいセンシティブに、何とかしなきゃならない、という問題意識が非常に強いのに比べて、こちらのほうでは、これだけコストがかかっているにも拘わらず、非常におとなしいなあ、というのが正直な感想であります。
確かに、外資の流入とか、そういう所に関しては機敏な対応を見せたということでありますけれども、税制改革とか年金改革とか、そうした、長期的に本当に取り組まなきゃならないものはどれだけやれるか、本気でこの国がちゃんと栄えていく用意をしていくのかどうかが、試されているのだと思います。
これも私事で恐縮ですけども、戻ると、厚生労働省となってしまいまして、労働問題も勉強しなければならないと、思っておりまして、こちらの、世界でも非常にまれな労働関係とは思いますけれど、そうしたものについても十分勉強していきたいと思っております。そうした関係で、ブラジル側との間でも、いろいろと総領事館として出来ることを果たしていきたいと思いますので皆さんどうか宜しくお願いします。
亜国との関係が頭痛のタネ
司会:ありがとうございました。着任間もないのに非常に核心を突いた指摘を戴き、これから大いに玉川領事に期待していきたいと思います。宇治さん、何かご発言あるのですか?
宇治:現在の関心事は、とにかく1%強のシェアで、どう生きて行くか。トヨタの実力を知ってもらって、いかに販売店に出資してもろうか、というところに埋没しております。
当初の販売網の原型が、ベンツとの併売店であったために、現在、販売店強化上で、ディーラー保護法など面倒くさい関係があるんですよね。
それとアルゼンチンとの関係が本当に悩みの種で、輸入価格を下げようとすると、ブラジル当局が行政指導に入り止めてしまう。アルゼンチンのほうへ高く売ろうとすると、あっちが止める、というのがカローラとハイラックスで見事に起こっております。
それから日本製の輸入車については、日本の通産省に日本車の輸入を年末までに23%関税で入らないか、と頑張って頂いているんですけども、もういまや為替レートがR$1.8とかになったのでは入っても売れない、という状況です。
ペソ切り下げあるのか?
司会:ありがとうございます。最後に一言、田中部会長、山浦部会長、どちらでも、それからお二人、どちらでもいいんですが、アルゼンチンのペソの切り下げはあるんですか?
田中:これは、あの、山浦さんのほうがご専門です。
山浦:なんとも言い難いところがあるのですが、個人的には、選挙までは、ですから10月まで、揺れに揺れてそういう話題が出てくるだろうけれども、最終的には今の1対1をそのまま維持、という方向でいくのかなあと思ってはおります。
ただ、最近のブラジルとアルゼンチン間の貿易戦争とかですね、色々、アルゼンチン側も疲弊しているのは確かなので、場合によっては新しい政権ができてほとぼりが冷めた頃に、何かをやる可能性もあるかなあとは思っております。
司会:それから、為替はさっき年末1,78、といわれましたけれども、9月、10月に緩むという、今年の初めに9月にモラトリアムがあるだろうって云った方がいられたくらいなんですが、田中さん、いかがですか、その、為替が一時的に緩むとか、いう動きはあるんですか。
予想に反してドル高
田中:8月は、本来であればもっと安くならないといかんと思うんですね。というのは、外債の返済が非常に少ないわけです。今ちょっとはっきりした数字を覚えてないんですけども、3,4億か4,5億ドルくらいしかない。多い時は2,30億ありますからね。ただ、そういう意味ではもっと安くならんといかんわけですけれども、ご承知のように、昨日も上がったしですね、非常に高くなっていると。というのは、やっぱり他の要因だと思うんですね。1.80から1.85だから・・。
司会:高くならなきゃいけないのが安くなっていると。そういうことですね。レアルのサイドから考えるとね。
田中:そうそう。ドルがもっと下がらないといけないということですね。だから、そういう意味で、じゃあその原因が何かと言いますと、色々あると思うんですけれども、アメリカの情勢が非常に不安定だということもありますけれども、むしろ、あのブラジルの中の問題が、非常に大きいんではないかという感じがするわけですね。だから、そういう意味で、年末の為替の相場を見る場合はですね、非常に、まあ難しいということじゃないかと思いますね。
司会:どうもありがとうございました。あと、何か言い忘れたとか、この際、議事録に残しておこうという方、いらっしゃいますか?
ビザ問題で当局との接渉必要
加藤:一つだけ申し上げたいのですが。運輸サービス部会でこの副題について話し合った時出された件です。
経済が回復しますと雇用が拡大したり、事業が拡大されたりしますよね。そのため日本から技術者とか指導者を呼び寄せる必要が出てきまして、将来はこれらの人が貴重なブラジル人材となるわけです。ところが最近ブラジル外務省が発給する「研修ビザ」が廃止されてしまいましたので、我々企業側としては大変困っているところなんです.外務省のビザに変わって労働省が発給する「職業訓練ビザ」と言うものが出ているわけなんですが、実態としては、労働大臣は自国の雇用を確保するためになかなかこのビザを発給しようとはしないんですね。そのために各社とも、若手で、短期に研修にこようとする人材を呼ぶ事が出来なくなってしまったんです.
自国の雇用を守るために「職業訓練ビザ」を出さないと言うのは、一時的には雇用を侵害されないと言う状況を作る事は出来るかもしれませんが、長い目でみたらブラジルの産業発展を阻害する要因になりますよと、言いたいんです。
つまり、ブラジルを良く知る「ブラジル人材の確保」と言う観点からは明らかにマイナスなんです。アメリカの在伯商業会議所もこの点について同じ問題意識を持っていまして、「研修ビザの復活」を当局に対して、商業会議所として提起したと聞いています。出来れば日本商工会議所でも関係する会員のみなさんの意見を聞いて、それなりの措置をとって頂きたいと言うのが、運輸サービス部会からのお願いです。
司会:当商工会議所の今月の常任理事会で、このビザの問題は取り上げて、アクション・プランを作る予定でございます。それでは池田首席領事から、講評を5分くらい頂いて、それから、三好会頭から同じく5分頂いて終りにしたいと思います。
講評
コロニア、進出企業、政府機関を3本の矢として
池田: 講評という程のことではありませんが、皆様のお話しを伺っておりまして、私自身も、いろいろ感ずることがあり、今日は本当に勉強になりました。
私の個人的な事を申し上げれば、今回、日本において、最後のポストは外務省の技術協力課で、JICAの事業を担当しておりました。そんな関係で、特にアジアのほうに出張する機会が多かったわけです。アジア危機が発生し、日本政府としては、アジアを支援していくのは、日本の経済にとっても重要なことであることから、非常に厳しい財政状況下、補正予算まで組んで経済協力、技術協力を実施してきました。
そういうことをやってきた中で、自分が感じたのは、日本にとって、アジアというのは人種的・文化的に極めて近いといったことから、アジアにまた戻っていくというのは、自然の流れである旨の発言が先ほどあったとは思うんですけれども、私自身、個人的にアジアのほうとコンタクトをとってみて、実感としてそれが感じられるのは、今まで自分がやってきたことを思い比べて、残念ですが、まあ仕方がないのかな、という思いが致します。
しかし、ブラジルという国は日本と地理的に遠い国ですが、やはり今までの歴史を考えれば日本の移住者の方々が、たくさん来られているということもございますし、これだけたくさんの企業の方もいらっしゃってる、あるいは、日本政府としてもですね、対ブラジルの経済協力は中南米ではやっぱりナンバーワンだと、それだけのものをやって来ているわけです。
それから、ブラジルの天然資源であるとか、食糧とか、そういった事を考えますと、まだまだこの日伯関係というのは、本来のもてる潜在能力には達していないんではないかと。まだまだ、やり得ることが、あるのではないかというふうに、思うわけです。
そこで今後、日伯経済関係を活性化させるためには、どうしたらいいかです。難しいことでございますが、今ご提言のあったビザの問題、労働裁判の問題、そういった課題を一つ一つ、然るべき場において取り上げていって、ブラジル側に対して改善を要望していくという地道な努力というのが必要なのではないかと、いうふうに思います。
皆様方の経済活動を日本政府として、側面的に支援していくということは非常に重要だと思いますから、そうした皆様方のご要望を踏まえてですね、ブラジル側にしかるべく提言をしていく事が大切であると思います。
それから、堀村前総領事の受け売りですが、&127;ブラジルにある日系のコロニア、進出企業、それから、我々政府、あるいは政府関係機関、これをいわば3本の矢としますと、この3本の矢が、もっと団結をするということがブラジルにおける日本の力を高めることになると思いますし、ひいては日伯関係の増進にもつながるというふうに思います。
日系社会にはすぐれた人材、能力を持っている方々、たくさんいらっしゃると思います。そういった方々の活用といったことも今後さらに重要となるというふうに思います。
まあ、以上が今日、いろいろお話を伺わせて頂いた中で感じたことであり、自分自身の、大きな課題としてですね、今認識しているところでございます。
講評
阻害要因、今後もいい続ける事
三好:各産業部会の皆様には、お忙しい中、上手くまとめていただき有難うございました。前回の会合は2月に行ないましたが、為替の切り下げ直後ということもあり、ほとんど暗いニュースばかりでしたが、今回は多少落着いて来たこともあり、下期に向い回復に向かう分野が増えて来たという感じを受けました。
各企業が今後発展していくためにはやはり、ブラジル経済が安定しなくてはなりませんが、当面は政治面の安定が必要と思います。
さき程からお話の出た阻害要因については当商工会議所として、機会あるごとにブラジル側に言い続けることが大事と思います。
本日は総領事館の皆様にもご参加いただき本当に有難うございました。
司会:それではこれで終ります。どうもありがとうございました。お疲れ様でした。