第1回イノベーション研究会開催

企画戦略委員会(大久保敦委員長)主催の第1回イノベーション研究会は、2019年5月24日午後3時から4時30分過ぎまで40人以上が参加して開催、初めに大久保敦委員長はイノベーション研究会の発足要請や目的、今後の運営方法などについて説明、参加者全員が自己紹介を行った。

Latin America Consulting社の中山充代表は、テーマ「ブラジル・サンパウロに於けるスタートアップ・エコシステムの概要及びデスカッション」と題して、毎年1回のペースでBrazil Japan Startup Forumを開催、今年は9月27日に開催予定、ジェトロサンパウロ事務所は、昨年11月にサンパウロに於けるスタートアップ・エコシステム調査を開始して、ビジネス展開の現状を解説して興味深い調査で是非ダウンロードしてほしいと説明。

イノベーションとは何か、人によって解釈がバラバラであり、またなぜブラジルなのかを日本企業にブラジルのポテンシャルの大きな重要なマーケットを理解してもらうことが重要。今後のスタートアップでGDP並びに人口、一人当たりのGDPの比較で将来の各国の重要性が明らかになる。2030年の日本は世界6位のブラジルよりの上位の4位のポテンシャルを維持するが、2060年には中国、インド、米国、インドネシア、ブラジル、メキシコに次いで7位に後退すると予想されている。

アマゾンやグーグル、Uberは創業から10年‐20年で社会構造を大きく変えている。日本企業でスタートアップに注目しているのはソフトバンク社で、ラテンアメリカ向けに50億ドルの投資ファンドを設立、リスクは大きいが先行投資を積極的に行って大きなリターンを狙っていると説明した。

ソフトバンクのスタートアップ企業投資では、ブラジルは中国並びに米国、インドに次いで4位でLoggi社並びにGympass社、99社に投資、社会問題が多すぎるブラジルでもインターネットやスマートフォンの使用時間が非常に多く、スタートアップ企業にとって羨望の的であり、米国のテクノリジー企業はブラジル市場でマーケットシェアを拡大。ブラジル国内のスタートアップ・エコシステムに対するベンチャーキャピタル企業による投資は急成長している。2017年のブラジルのユニコーン企業は、8社に対して日本は僅かに2社に留まっているとブラジルの可能性を強調している。

グループデスカッションでは、4人一組に分かれて7グループを作って議論を展開、日本本社によるブラジル市場の理解促進するための必要な手段として、日本本社幹部による現場視察、現地法人からの定期的な情報発信、日本でのブラジル市場に関するイベントや情報発信が上位を占めた。また参加者に今後の研究会運営のためのアンケート調査を集計した。

イノベーション研究会幹事メンバーはジェトロの大久保敦所長、同二宮康史次長、同岩瀬恵一次長、同古木勇生ディレクター、同経済情報担当のナガミネ・タチアナ アナリスト、デロイトトーマツの池谷裕一 ブラジル統括パートナー、同熊谷圭介 ファイナンシャルアドバイザリー、KPMGの吉田幸司 Head of GJP Latin America、ラテンアメリカコンサルティングの中山充代表

左から講師のラテンアメリカコンサルティングの中山充代表/ジェトロの大久保敦所長/同二宮康史次長

左からジェトロの岩瀬恵一次長/デロイトトーマツの熊谷圭介 ファイナンシャルアドバイザリー/KPMGの吉田幸司 Head of GJP Latin America

米国は公式にブラジルのOECD加盟を支持

昨日パリで米国政府は、ブラジルの経済協力開発機構(OECD)への加盟を公式に推奨する支持声明を発表したが、今年3月に米国を初めて公式訪問しているブラジルのボルソナロ大統領とホワイトハウスで会談、北大西洋条約機構(NATO)や経済協力開発機構(OECD)など国際機関へのブラジルの加盟を後押しする姿勢を示した。

OECDのJose Angel Gurri事務総長は、米国の正式なブラジルのOECD加盟支持は非常にポディティブで重要とコメントした一方で、ジャイール・ボルソナロ大統領はツイッターで、3月の米国訪問時にトランプ大統領は支持確約をしてくれたが、正式なブラジルのOECD加盟支持を待っていた。

またエルネスト・アラウージョ外務相は、OECD加盟国入りにとっては非常に重要な支持であると諸手を挙げて歓迎しているが、ジャイール・ボルソナロ大統領の訪米に合わせて日本並びに米国、オーストラリア、カナダの4カ国に対してビザ免除発表、世界貿易機関(WTO)ブラジルの自動車政策及び情報通信分野の税制恩典措置関係の整合性が指摘されていた経緯があった。

ブラジルはOECD加盟に関する248項目のうち74項目を既にクリアしている一方で、200項目はクリアできるとマルセロ・グアラニース長官は見込んでいるが、2年前のOECD加盟申請時は僅か35項目をクリアしていたに過ぎない。

ボルソナロ大統領は、OECDに最大の拠出金を提供している米国の公式支持でOECD加盟に大きく前進すると楽観視しているにも拘らず、現在OECD加盟を申請しているのは、ブラジルのOECD加盟国申請以前にアルゼンチン並びにペルー、ルーマニア、クロアチア、ブルガリアがすでに申請している。(2019年5月24日付けエスタード紙)

 

今年4月の歳入総額は微増の1,390億レアル

2019年4月の経常的歳入は、前年同月比0.34%減少の1,280億レアルに留まった一方で、石油の国際コモディティ価格上昇並びにレアル通貨に対するドル高の為替が牽引して、ロイヤリティなどの臨時歳入が24.8%増加の110億レアル、国庫庁の4月の歳入総額は1.28%微増の1,390億レアルを記録している。

今年1月の国庫庁のインフレ指数を差引いた実質歳入総額は前年同期比2.12%減少、3月は0.60%減少、4月は0.34%減少していたが、唯一2月は前年同期比5.46%と大幅に増加していた。

今年初め4か月間の国庫庁の経常的歳入総額は、国内経済の回復の遅れで製造業部門生産やサービス部門の税収の伸び悩みに伴って前年同期比0.3%微増に留まった一方で、ロイヤリティなどの臨時歳入総額は21.12%と二桁台の大幅な歳入増加に繋がっている。

またトラック運転手の不満抑制のために燃料に対する社会統合基金/社会保険融資納付金(PIS/COFINS)並びに一般的に燃料税と呼ばれる経済支配介入納付金(Cide)の税率引下、企業側が税金を払えば利息と刑罰が軽減される制度である滞納税回収計画(Refis)の減収が経常的歳入に影響している。

一方今年初め4か月間の法人所得税(IRPJ)並びに純益に対する社会納付金(CSLL)による歳入は、7.25%増加の318億4,000万レアルに達している。

今年4月の社会保障院(INSS)関連歳入総額は前年同月比1.59%減少の340億レアル、所得税全般は3.77%増加の433億レアル、社会保険融資納付金(COFINS)は2.69%減少の208億レアル、社会統合基金(PIS)/公務員厚生年金(PASEP)は1.82%減少の56億レアル、純益に対する社会納付金(CSLL)は3.60%増加の80億レアルを記録している。

今週経済省では、今年の経常的歳入総額は前回予想の9,506億レアルから55億レアル引下の9,452億レアルに下方修正、今年の実質歳入総額は前年比1.0%~1.5%増加を予想している。

経済リセッション前の2014年4月の国庫庁の歳入総額は1,405億レアルであったが、経済リセッション突入の2015年4月は1,340億レアル、経済リセッション真っただ中の2016年4月は1,245億レアル、2017年4月は1,273億レアル、経済リセッションから脱け出した2018年4月は、1,373億レアルに上昇していた経緯があった。(2019年5月24日付けヴァロール紙)

連邦政府は優遇税制や保護政策の見直し財政赤字改善

連邦政府は財政赤字軽減の一環として、優遇税制や保護政策的な要素が強く、ベネフィットに見合わない総額が689億レアルの歳入減に繋がっている8プログラムの見直しを実施する。

経済省補助金監視・見直し委員会(CMAS)では、2020年末までに嫌疑の掛かっている8プログラムを精査して補助金総額を1/3まで削減するが、優遇税制や保護政策による減税は、歳入総額の20.9%に相当するGDP比4.3%に達している。

しかし経済省では、優遇税制や保護政策を受けている省庁に肩入れしている国会議員の強力な圧力や反対に対する抵抗に耐えるのは容易なことではないが、財政赤字軽減には不可欠となっている。

2020年~2024年の多年度計画(PPA)は今年8月に国会で審議され、連邦政府の歳出削減を図るが、連邦会計検査院(TCU)は補助金見直しスケジュールを監視する。

見直しが予定されているプログラムの中でも今年のマナウスフリーゾーン向け減税・補助金総額は、252億レアルに達する最大の恩恵を受けているにも拘らず、恩恵に対する見返りが非常に小さい。

ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)の調査によると、マナウスフリーゾーンの新規雇用一人当たりの補助金コストは25万レアルに相当する一方で、マナウスフリーゾーン域外の新規雇用の一人当たりコストは、5万6,000レアルに留まっていると指摘している。

マナウスフリーゾーンに次いで減税・補助金総額が大きいのは、一般家庭電力料金補助の201億レアル、教育関連非営利団体201億レアル、インフォメーション法(Lei da Informatica)58億レアル、学生ファイナンス基金(Fies)82億レアル、雇用・所得創出クレジット・ライン(Proger)40億レアルなどが対象となっている。(2019年5月24日付けエスタード紙)

オイスカ・ブラジル総局のオズワルド・タカキ コーディネーターが訪問

オイスカ・ブラジル総局のオズワルド・タカキ コーディネーターは2019年5月23日に商工会議所を訪問、応対した平田藤義事務局長にブラジル環境・再生可能天然資源院 (IBAMA)の環境省令165号/2017によるサンパウロ州並びにリオ州沿岸の漁業・養殖事業に携わる300人から400人の低所得者層対象の生活向上や環境保全に繋がる海藻養殖パイロットプロジェクトについて説明した。

Oswaldo Takaki e Fujiyoshi Hirata

Foto: Rubens Ito / CCIJB

ブラジル日本文化福祉協会の石川レナト会長一行が訪問

ブラジル日本文化福祉協会の石川レナト会長並びに山下ジョージ第一副会長、中島 エドアルド 剛事務局長が2019年5月23日に商工会議所を訪問、石川レナト会長は、応対した商工会議所の村田俊典会頭、安田篤副会頭、平田藤義事務局長に新組織構成や主な文協の事業、新しく取り込んでいる事業、次世代交代へのバトンタッチ、日本政府の日系人支援事業、今後の商工会議所とのタイアップなどについて、お互い忌憚のない意見交換を行った。またブラジル移民110周年記念祭典事業報告書数冊も贈呈された。

左から平田藤義事務局長/村田俊典会頭/安田篤副会頭/山下ジョージ第一副会長/石川レナト会長/中島 エドアルド 剛事務局長

 

Foto: Rubens Ito / CCIJB

ブラジル資本Natura社は Avon社買収で世界4位の化粧品会社誕生

ブラジル資本Natura社は、米国に本拠を置く化粧品メーカーAvon社の買収で世界4位の化粧品会社が誕生、ブラジル景気低迷で国内市場の拡大が遅れているが、Avon社買収で海外展開が容易となる。

世界の化粧品メーカーランキ比較では、Avon社買収でブラジル資本Natura社は、フランス資本ロレアル(Lóreal)社並びに米国資本エスティ・ローダー(Estee Lauder)、日本資本の資生堂に次いで世界シェア4位に上昇する。

ナチュラ社は2017年にフランス資本ロレアルから英ブランド「ザ・ボディショップ」を買収、スキンケアからヘアケア、ボディケア、フレグランスまで幅広く展開するオーストラリア資本イソップ(Aesop)社も買収している。

Natura社のAvon社買収のニュースで、昨日のサンパウロ証券取引所に上場している昨日のNatura社の株価の終値は、9.43%高騰の1株61.50レアルを記録している。

Natura社のAvon社買収によるホールディング会社Natura&Co社は、Natura社の株主が76%、Avon社の株主が24.0%で構成、売上は100億ドル(レアル換算で400億レアル)、従業員総数は4万人、世界100カ国で事業を展開する。

Natura社のAvon社買収で、大衆向け化粧品・衛生用品のマーケットシェア拡大が見込まれており、シナジー効果は1億5,000万ドル~2億5,000万ドルが見込まれている。

Natura社のAvon社買収でブラジル国内の化粧品マーケット市場では、競合化粧品会社のBoticario社並びに英国・オランダ資本のユニリバー社に引き離してダントツのリーダーになると予想されている。

Natura社のAvon社買収案件は、日本の公正取引委員会に相当する経済防衛行政審議会(Cade)の承認を得なければならないが、審査終了は2020年初めになると予想されている。

Natura社のAvon社買収案件の主幹事銀行はUBS銀行並びにMorgan Stanley銀行、Avon社側の主幹事銀行はGoldman Sachs銀行であった。またホールディング会社Natura&Co社経営審議会は13人のメンバーで構成されるが、Avon社から3人が参加する。(2019年5月23日付けエスタード紙)

国内の貨物輸送の82%はトラック輸送に依存

連邦政府は長年にわたって鉄道網のインフラ整備投資を怠って、穀物並びに鉱物以外はトラック輸送に依存してきてために、トラック運転手が一旦ストライキを起こせば製造業部門や小売部門で原材料や製品の供給問題が発生するとドン・カブラル財団のパウロ・レゼンデ教授は指摘している。

昨年5月下旬から11日間継続したディーゼル燃料価格値下げ要請を発端とした、全国規模のトラック運転手の国道封鎖の抗議デモに続いて、今年初めの国際石油価格上昇に伴って石油精製所の15.6%値上げ、ガソリンポストの3.6%の値上げに対するディーゼル燃料価格値上げ反対デモに繋がった。

プラナルト宮では、ディーゼル燃料価格調整問題でトラック運転手による抗議デモ発生を避けるため、早急にトラック運転手向け優遇政策や国道インフラ改善政策発表を余儀なくされている。

ドン・カブラル財団の調査によると、スーパーマーケットの平均在庫は営業日換算で10日間、ガソリンポストは5日間、食肉生産部門は7日間、機械・装置部門は5日間となっているために、それ以上のトラック運転手のストライキが発生すれば甚大な影響を蒙る。

都市部のガソリンポストの平均備蓄能力は、1万リットル~1万5,000リットルで数日間のストライキですぐに影響を受けるとサンパウロ州石油派生品小売販売組合(Sincopetro)のジョゼ・アルベルト・ゴウヴェイア会長は説明している。

ブラジル・インフラ基幹産業協会(Abdib)の調査によると、過去15年間の輸送関連の平均投資はGDP比0.5%に留まっており、国内輸送改善をするには今後10年間に年間平均の投資額はGDP比2.26%に引上げなければならない。

現在のブラジル国内の道路で舗装されているのは、総延長距離170万キロメートルの12.0%に相当する21万3,400キロメートル、過去14年間では僅か1.0%増加に留まっている。

総延長距離が12万500キロメートルの国道のうち舗装されているのは6,560キロメートル、未舗装は1万800キロメートル、4万4,100キロメートルが舗装計画を擁している。

総延長距離が16億キロメートルの州道並びに市道のうち舗装されているのは1億4,780キロメートル、未舗装は13億3,910万キロメートル、1億1,340万キロメートルが舗装計画を擁している。

全国輸送連合(CNT)の調査によると、米国の1,000キロ平方メートル当たりの道路網の総延長距離は431キロメートル、中国は359キロメートル、ロシア54.3キロメートル、ブラジルは僅か24.8キロメートルとなっている。

ブラジルのトラック輸送の依存を減らすためには、河川の水上輸送や鉄道輸送、海岸沿いの海上輸送などポートフォーリオ油症への投資拡大で短期的な効果が得られるが、中長期的には鉄道輸送への投資が不可欠であると全国輸送連合(CNT)のヴァンデール・コスタ会長は指摘している。

1キロメートル当たりの輸送量比較では、道路輸送が61.1%を占めてトップ、鉄道輸送は20.7%、水上輸送は13.6%、パイプライン輸送は4.2%、航空輸送は僅か0.4%を占めているに過ぎない。(2019年5月22日付けエスタード紙)

CSNは中国資本とストリーミング契約締結検討

実業家のベンジャミン・スタインバック社長が率いるナショナル製鉄所(CSN)は、China International Trust and Investment (CITIC)若しくは五矿集团公司(China Minmetals Corporation)との間でストリーミング契約締結で話し合っている。

大きな負債を抱えているナショナル製鉄所(CSN)は、産出前に資源を事前売却し資金調達する「ストリーミング契約」と呼ばれる新たな資金調達手法で、5億ドルの資金調達を計画している。

China Minmetals Corporationは鉄鉱石を輸入する商社、一方CITICは中華人民共和国の政府系の大手コングロマリットで、主な業務は金融業およびその他のサービス業、中央政府と密接な関係を持つと共に、中国全土に幅広いネットワークを持ち、香港や米国、カナダ、オーストラリアなどを含む国内外に子会社を持つほか、東京やニューヨーク、カザフスタンなどに代表事務所を設けている。

ナショナル製鉄所(CSN)は、今年2月の今年の同社のEBITDA有利子負債倍率を3.0倍まで下げる計画を立てているが、今年第1四半期末のEBITDA有利子負債倍率は4.07倍と前年同期の6.0倍から大幅に減少している。

ナショナル製鉄所(CSN)の純負債総額は257億7,000万レアル、今年2月にスイス資本の資源大手グレンコア社と2億5,000万ドルの鉄鉱石長期供給で契約している。(2019年5月22日付けヴァロール紙)