ロート製薬一行が訪問

今年6月に本社海外事業開発部顧問に就任するブラジルロート製薬の谷山泰朗社長並びに後任の金田けい社長、香川真賢CFOが2019年5月14日に商工会議所を訪問、谷山泰朗社長は応対した平田藤義事務局長に帰国挨拶、後任の金田けい社長は着任挨拶を行った。ブラジルロート製薬は2年前の大不況時に眼科手術用デバイス及び目薬を製造・販売するブラジル企業OPHTHALMOS社を買収して、ラテンアメリカ進出の拠点を築いて果敢にマーケットシェア拡大を進めている。

ブラジルでの白内障手術は日本の6割程度の実施数であり、OTC(一般用)目薬市場は日本の4割程度と小さいものの、生活レベルの改善に伴い市場が成長していること、また、ブラジルは人口が多く将来の老齢化に伴いアイケアの大きな潜在需要が見込めると判断した。ロート製薬は、今回の買収により医科向け目薬の拡充、OTC目薬市場への進出、及び周辺国や世界各地への製品輸出や眼科周辺分野への商品群の拡大も期待できると見込んでいる。

Masakata Kagawa, Kei Kaneda, Yasuro Taniyama e Fujiyoshi Hirata

Yasuro Taniyama, Fujiyoshi Hirata, Kei Kaneda e Masakata Kagawa

Fotos: Rubens Ito / CCIJB

サンパウロ州ツッパン市議会一行が訪問

サンパウロ州ツッパン市議会のEduardo Akira Edamitsu市議並びにNetto Alimentos社国際営業部のJúlio Cezar Carvalho氏、Oisca BrasilのDaniel Takaki,が2019年5月14日に商工会議所を訪問、Eduardo Akira Edamitsu市議は応対した平田藤義事務局長並びに日下野政治総務担当に同市の経済を牽引するピーナッツ加工並びにラテンアメリカ最大の鶏卵プロセス工業を紹介。また日本やヨーロッパの国際見本市でも紹介していることを説明した。

Daniel Takaki, Júlio Cezar Carvalho, Fujiyoshi Hirata e Eduardo Akira Edamitsu

Foto: Rubens Ito / CCIJB

昨年は将来のユニコーン企業発掘で50億レアル投資

2018年のブラジル国内のベンチャー企業やスタートアップ企業など高い成長が予想される未上場企業に対して、出資を行う投資会社ベンチャーキャピタルの投資総額は50億レアルに達している。

ベンチャーキャピタルは、創業間もないベンチャー企業やスタートアップ企業の将来の成長を見込んで資金を「融資」ではなく「出資」する形を取るため、資金を返済する必要はないが、企業が成長や上場したときに株式を売却することで資金を回収する。

しかし投資したスタートアップ企業が成長せずに上場しなかったり、事業に失敗したりすれば投資資金を回収できなくなるが、それを避けるために、ベンチャーキャピタルは投資先企業の成長支援を継続、自社の社員を投資先企業のメンバーとして参加や外部コンサルティングを使う場合もあり、時にはベンチャーキャピタルの投資担当者が投資先企業の社外取締役に就任して経営に参画している場合もある。

スタートアップ企業への投資は一攫千金的な要素が強いにも関わらず、評価額10億ドル以上の非上場で設立10年以内のベンチャー企業のユニコーン企業の化ける可能性が非常に高い一方で、大半のスタートアップ企業は日の目を見ないで消えている。

ブラジルのスタートアップ企業でユニコーン企業に化けたのは、Nubank社並びに Movile社、 Stone社、 99社、 Pag-Seguro社、 Gympass社でそれぞれ市場価格が10億ドルを突破している。

2018年のブラジルのスタートアップ企業向け投資総額は前年比51%増加の51億レアル(13億ドル相当)、ラテンアメリカ地域の65%を占めていると非営利団体で中南米の投資状況をまとめているラテンアメリカ・プライベートエクイティ&ベンチャーキャピタル協会(Latin American Private Equity and Venture Capital Association、LAVCA)では発表している。

今月初めにソフトバンクは、コロンビアのボゴタに本社を置くスタートアップ企業ラピ社(Rappi)に10億ドルの投資を発表、ソフトバンク社は、今年3月上旬に総額50億ドルに達するラテンアメリカ地域攻略する最先端テクノロジー向け投資ファンドを設立している。

またApple社やQualcomn社が出資しているイノヴェーション企業向けに最大1,000億ドルに達するVision Fund社もソフトバンク社と共同でラピ社に出資する。

過去数年間のベンチャーキャピタルの投資では、ブラジル国内で最も早くベンチャーキャピタル企業で創業2005年のモナシーズ(Monashees)は、投資先としてライドシェアのノビノビ社、クーポンサイトのペイシェ・ウルバノ社、オンラインマーケティングのブーボックス社などに投資している。

また創業2011年のカゼッキ・ベンチャーズ(KaszekVentures)社は、南米のECサイト最大手メルカド・リブレ社(MercadoLibre)の創業者であるニコラス・セカシ氏(Nicolás Szekasy)とエルナン・カザ氏(Hernán Kazah)が出資、採用サイトのラヴ・マンデイ(Love Monday)社、眼鏡のオンラインショップのエオチカ社(eOtica)などに投資している。

創業が2012年のヘッジポイント・イーベンチャーズ社(Redpointeventures)代表は、南アフリカのIT大手ナスパーズでラテンアメリカのM&A担当でもあったアンダーソン・シーズ(Anderson Thees)氏であり、 オンラインの不動産担保ローンを完結するクレジタス社、コロンビア発の物流プラットフォームのハッピ社(Rappi)、オンライン契約締結プラットフォームのクリックサイン社(CLICKSIGN)などに投資している。

中国の e タクシー大手 Didi Chuxing社(滴滴出行)は、2013年に設立されたサンパウロ拠点のブラジルの配車サービス大手 99 社を約10億ドルで買収、奏者に出資していた投資家にとっては投資額の60倍に相当する投資利益を上げている。

ヘッジポイント・イーベンチャーズ社(Redpointeventures)に投資したアンダーソン・シーズ氏は、スタートアップ企業のViajanet社並びにGympass社、Resultados Digitais社などにも幅広く投資をしている。

世界トップのベンチャー投資ファンド500 Startups社のBedy Yang氏は、毎年世界中で5000社のスタートアップ企業を投資対象として精査するにも関わらず、投資対象となる企業は調査対象の1.0%にも満たない。

投資ファンド500 Startups社はポートフォーリオ関連2000社に投資しているにも拘らず、ユニコーン企業まで成長したのは僅か10社に留まっている。ブラジル国内では40社のスタートアップ企業に投資しているにも拘らず、ユニコーン企業まで成長したのは皆無と説明している。(2019年5月12日付けエスタード紙

一般消費者並びに企業経営者の景況感が依然として停滞

2019年4月のサンパウロ州商業連盟(Fecomercio-SP)のパウリスターノ対象の一般消費者並びに小売販売部門の企業経営者対象の景況感調査によると、投資並びに新規雇用意欲の衰退で前月比マイナスを記録している。

今年4月の一般消費者並びに小売販売部門の企業経営者の景況感は、不透明な大統領選挙前の昨年8月の水準まで低下しており、サンパウロ州商業連盟では、製造業部門生産も停滞しているために、企業経営者に小売販売向け在庫調整を奨励している。

ジャイール・ボルソナロ新政権とメディアとの蜜月期間の100日が過ぎたにも拘らず、年金・恩給改革が足踏み状態で、政治や経済の膠着状態が継続しているとサンパウロ州商業連盟のGuilherme Dietze顧問は警鐘を鳴らしている。

サンパウロ州商業連盟(Fecomercio-SP)のパウリスターノ対象の一般消費者景況感調査によると、今年4月の一般消費者の景況感を計る消費者態度指数(ICC)は、前月の125.9ポイントから121.7ポイントと3.0ポイント減少して悪化している。

前記同様に企業経営者の景況感指数(ICEC)は、125.3ポイントから123.8ポイントと1.2ポイント悪化して、前月までの7カ月連続の改善から一転して悪化に転じている。

一般消費者は不安定な国内の経済状況や継続する高い失業率、ドル高の為替、食料品など特定品目のインフレ上昇などの要因で、景況感の改善する見込みがないと指摘している。

今年4月の一般消費者の6か月後の先行き景況感期待指数(IEC)は、前月の108.7ポイントから106.4ポイントと2.1%減少、前記同様に企業経営者の投資意欲は90.5ポイントから88.9ポイントと1.7ポイント減少している。

また企業経営者の新規雇用見通し指数は、126.9ポイントから123.9ポイントと2.4%減少した要因として、カーニバル終了して2カ月が経過しているにも関わらず、年金・恩給改革の足踏み状態で、一般消費者並びに企業経営者は構造改革の行方に懐疑的になっている。

今年4月の過去12カ月間のインフレ指数である広範囲消費者物価指数(IPCA)は4.94%に上昇、一方今年3月の製造業部門生産はマナス1.3%の落込みを記録、また四輪・二輪並びに建材部門を含まない小売販売は0.3%増加、広範囲小売販売は1.1%増加に留まって、国内の経済回復が大幅に遅れている。(2019年5月14日付けヴァロール紙)

ヴァーレ社は鉄鉱石乾燥プロセスに110億レアル投資

今年1月25日のヴァーレ社ミナス州ブルマジーニョ鉱山のフェイジョン1鉱滓用ダムの決壊事故発生で238人死亡、依然として32人が行方不明となる事故を未然に防げなかった。低品位の鉄鉱石の品位を挙げる方法として物理的分離方法を用いた選鉱プロセスの鉱滓用ダムが利用されている。

また2015年11月にサマルコ社のマリアーナ鉱山鉱滓用ダムの決壊事故発生で過去最悪規模の人身事故となり、有毒物質を含んだ濁流によるドーセ川流域一帯の環境破壊、漁業および農業への壊滅的被害が発生、19人が死亡した事故発生、ヴァーレ社は事故再発防止のための早急な対策に迫られている。

ヴァーレ社は今後5年間で、鉱山鉱滓用ダムを使用しない鉄鉱石乾燥プロセスに110億レアルの投資を発表、現在60%の鉄鉱石乾燥プロセス比率を5年間で70%に引き上げる。

過去10年間に鉱山鉱滓用ダムの決壊事故が発生しない高品質向けの鉄鉱石乾燥プロセスに660億レアルを投資したが、投資対象は含有率が64%に達するパラー州カラジャス鉱山が中心となっている。

しかしヴァーレ社が所有するミナス州の鉄鉱石の平均含有率は40%と低品質で鉱山鉱滓用ダムの使用廃止に伴って、早急な代替プロセス導入が不可欠となっている。

昨年パラー州子鉄鉱石生産は2億トンでそのうち80%に相当する1億6,000万トンは乾燥プロセス処理されている一方で、昨年のミナス州の乾燥プロセス処理は32%と2016年の20%から大幅に上昇している。(2019年5月14日付けエスタード紙)

ブラジルの銀行スプレッドはマダガスカルに次いで世界2位

ブラジルの銀行スプレッドは、特にクレジット契約履行環境が非常に悪いためクレジット回収率が飛びぬけて低いために、マダガスカルに次いで世界2位の銀行スプレッド金利を余儀なくされている。

LCA ConsultoresエコノミストのVitor Vidal氏並びにジェツリオ・ヴァルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)エコノミストのマルセル・バラシアーノ氏との共同調査によると、債権回収率が非常に悪いことがブラジルの銀行スプレッドを押上げる要因と指摘している。

ブラジルの銀行スプレッドが非常に高い要因として、非常に低い債権回収率以外に過去最低にも拘らず、1年2カ月以上維持している6.5%の政策誘導金利(Selic)、ブラジル国民の低貯蓄率、継続する連邦政府の財政プライマリー収支赤字、過去の高インフレや物価変動の大きさ、中央銀行の独立性など行政問題などが挙げられる。

2017年の世界の銀行スプレッド比率比較では、マダガスカルが45.0%でトップ、次いでブラジル38.4%、タジギスタン26.0%、キルギスタン17.1%、コンゴ共和国が16.4%でワースト5を形成している。

一方銀行スプレッドが低いのは日本の0.7%で世界トップ、サン・マリノの1.1%、レバノン1.2%、ハンガリー1.4%、チリ1.6%、マレーシア及びオマンがそれぞれ1.7%、ジョージア並びに韓国、カタールそれぞれ1.8%となっている。

また2018年の銀行クレジットの平均回収率比較では、日本は92%でトップ、シンガポール89%、カナダ88%、韓国85%、オーストラリア83%、マレーシア81%、タイ及メキシコ68%、チェコ共和国67%、コロンビアは66%であった。

一方銀行クレジットの平均回収率のワースト10は、ヴェネズエラは僅か6%で世界最悪、スリナミ8%、ウクライナ9%、シエラレオネ共和国及びマダガスカルはそれぞれ11%、ブラジルは13%、ミヤンマー15%、モンゴル17%、ガイアナは18%となっている。(2019年5月12日のエスタード紙)

事務局便り JD-041/19     「大使館情報」第132号(2019年5月号)送付

                                          JD-041/19
                                          2019年5月13日
________________________________________
サンパウロ商工会議所会員の皆様へ

平素より大変お世話になっております。
在ブラジル日本国大使館の川橋です。

                    「大使館情報」第132号(2019年5月号)を送付いたします。
今月号のトピックスは、在ブラジル大使館の「山田大使とセルジオ・モーロ法務・治
安大臣との意見交換」,「第9回日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議の開催」
及び在リオデジャネイロ総領事館の「カンペストレ慈善病院への医療機器の供与」等
となっております。

送付致します情報は、日本政府の立場を代表したものではなく、公表された情報を中
心にとりまとめたものであり、皆様へのご参考として送付させていただくものです。
なお、転写、引用等を希望される場合には、あらかじめ当館にご相談下さるようお願
い致します。

また、今後、更に皆様のお役に立てるよう内容を充実させていきたいと思いますの
で、ご意見・ご要望等ございましたら、下記連絡先までご連絡いただければ幸いで
す。

※大使館情報の最近のバックナンバーを大使館ホームページに掲載しましたので、そ
ちらもご覧下さい。
在ブラジル日本国大使館 www.br.emb-japan.go.jp

【問い合わせ・連絡先】
在ブラジル日本国大使館
三等書記官(経済班) 川橋 天地
電話:(61)-3442-4215
FAX:(61)-3242-2539
Email:tenchi.kawahashi@mofa.go.jp

 

各州知事は投資誘致で中国詣

各州知事はジャイール・ボルソナロ新政権発足後の今年初めから州内のインフラ整備や天然資源向け開発プロジェクトを中心に、中国企業の膨大な資金力を目当てに、中国企業の投資誘致で中国詣を活性化させている。

昨年の大統領選挙キャンペーン中のボルソナロ候補は、「中国はブラジル国内の企業買収ではなく、中国はブラジルを買っている」と中国企業による基幹産業部門買収を警戒していた経緯があった。

しかしボルソナロ大統領は、大統領就任後に一転して中国企業に対して投資歓迎を謳っており、今年8月に中国を公式訪問するが、各州知事は既に先を争って中国企業の誘致合戦を展開している。

今年4月末にパラナ州政府のRatinho Jr州知事は、パラナ州とチリのアントファガスタ港を結ぶ鉄道建設プロジェクトに関して、上海を訪問してプロジェクト検討を開始している。

またバイア州政府のRui Costa州知事は、今日から中国企業との間で東西統合鉄道(Fiol)によるバイア州イリェウス港湾をつなぐプロジェクトに関する交渉開始を予定している。

今年2月にコスタ州知事は、投資総額が15億レアルに達するインフレ整備プロジェクト向け官民合同プロジェクト(PPPs)形式で、中国資本BYD社とバイア州サルヴァドール市に史上初の跨座式モノレール「BYDモノレール」建設で調印している。

アマパ州政府のWaldez Goes州知事は、中国政府のインフラプロジェクト向け金利は非常に低金利であるが、社会経済開発銀行(BNDES)やブラジル銀行、連邦貯蓄金庫の金利は非常に高いと指摘している。

連邦政府の財政悪化で公的投資が百々凝っている現在、中国のファイナンシャルソルーションは非常に魅力的であり、今年7月に太陽光発電並びに上下水道、水力発電向け投資誘致を北京と上海でイベントを開催するとアラゴアス州政府経済開発担当のラファエル・ブリット局長は説明している。

ブラジル元総領事のマルコス カラムル氏を所長に迎えて、今年8月の上海にサンパウロ州政府の投資誘致事務所を開設するとサンパウロ州政府のジョアン・ドリア州知事は説明している。

各州知事は、廃棄物を利用したバイオマス発電並びに大都市向け夜間照明プロジェクト、都市治安システム、顔認証システムなどのプロジェクトに対する中国企業の投資誘致を予定しているとブラジル中国商工会議所(CCIBC)のCharles Tang会頭は説明している。

ブラジル中国商工会議所(CCIBC)では、今年下半期のパラー州政府のHelder Barbalho州知事一行の北京訪問を調整中であり、投資総額が3億ドルに達するヴァーレ社との共同プロジェクトのカラジャス鉱山の鉄鉱石を利用したマラバ市での圧延鋼生産プロジェクトを進める。

また今日マット・グロッソ州政府のCesar Miranda州知事は、先週からアジアを訪問している州農務局一行と合流して、中国政府関係者と食肉関連投資で会合を持つ。

今年4月のペルナンブーコ州政府は、スペイン資本Solatio Energia社が総額35億レアルの太陽光発電所建設を発表したが、ソーラーパネルは中国からの輸入に依存しており、ペルナンブーコ州政府は、来月に中国向けに経済ミッション団の派遣を発表している。

今年3月に中国資本BYD社代表団は、ゴイアス州ゴイアニア市を訪問して次世代型路面電車システム(LRT)導入で会合開催した。また今年4月のパライーバ州政府は、中国資本IMC Y Y社並びに米国資本McQuilling社と共同で州内ルセーナ市に投資総額が35億レアルに達する造船所建設で調印している。(2019年5月13日付けヴァロール紙)

コラム【玉磨かざれば光なし(不幸な事件とダークホース)】

ロベルト・ロドリゲス*

豚コレラが、中国における豚肉の生産と消費に対して甚大な被害を及ぼしており、これに伴って発生する中長期的な影響は完全に評価を終えていない状況だ。この恐ろしい病気(と言っても人類に対する直接的な感染の脅威はなく、豚にとっては死に至るものである)が抑え込まれ撲滅できるかにかかっている。この疫病は、既に欧州でも発生が確認されており、アジア地域にとどまらない、世界のすべての地域にとって潜在的な脅威なのだ。

仮に直ちに抑え込みに成功したとしても、既に何1,000頭もの親豚が殺処分され新規生産基盤が縮小しており、生産のサイクルが破綻したことで生産状況が正常化するのにはおよそ3年はかかる。

しかし、もし本当に今の時点で飼育頭数が大幅に減少したのであれば、同様に中国の生産者による大豆とトウモロコシの需要も減少するはずで、輸出の減少とこれらの製品の値下がりにつながる。すでにコーヒーと牛乳、サトウキビで記録されてきたような、我が国の農業輸出の落ち込みという状況が拡大するはずだ。ブラジルの農業輸出では大豆が全体を牽引していること、そしてはるか遠くの中国が最大の輸出先国であるという点に注意を払うだけの価値はあるだろう。

ブラジルは、わずか数か月で食肉生産を拡大できるし、この場合、輸出している穀物の大部分を通常の条件で国内市場に振り向けることになる。そして食肉輸出は、付加価値という点で追加のアドバンテージとなる。大豆とトウモロコシは、ここで生産された食肉に組み込まれることになる。

これを実現するには、企業の財務状況がひっ迫している状況で生産拡大に向けた生産者の投資という与信供与に対する需要につながる問題は言うに及ばず、ブロイラーと豚の確保にとどまらない、より多くの食肉加工会社に対する輸出認可に向け最大限に迅速な政府の交渉が求められる諸条件のクリアが必要になる。

この道筋をつけるため、状況のより良い理解と必要とされる合意をまとめようと、テレーザ・クリスチーナ農務大臣が中国とアジア諸国を訪問している。

だが我々は、例えばアメリカと欧州連合(EU)も同様に、この機会をうかがい、同じ方向に駆け出していることを忘れてはならない。そして5月10日に中国から輸入する2,000億ドルの製品に対して関税を10%から25%に引き上げるとドナルド・トランプ大統領が発表したアメリカの場合、食肉のより大きな供給という提案が「貿易戦争」の休戦を決定づける可能性がある、ということだ。

そのため、収益という点からブラジルの農家には脅威であり、深刻な被害を回避するため、迅速に対応する必要がある。

そして、アグリビジネスの国際市場が持ついくつかの局面について、分析するだけの価値がある。この活力に満ちた業界の輸出で投機的な手法が発展してきたことは知られている。その作用もあって、2000年に200億ドルを輸出していたブラジルのアグリビジネスは、2018年には、20年足らずで5倍となる1,000億ドルを記録した。ただ、これがブラジルにあふれんばかりの誇りを与えてはくれるにしても、競合する国々も同様に成長したのだ。

主な食肉(牛肉及び鶏肉)の場合、シェアも失っている。農務省の最新データによると、鶏肉では、2010年に世界の鶏肉貿易の41%をブラジルが占めたが、2018年には31.2%に低下した。そして牛肉の場合、同じ期間に23.7%から16%に下落した。

言い換えると、ブラジルは著しい進展を記録したものの、強豪国も寝ていたわけではなく、むしろブラジル以上に成長したということだ。ブラジルは世界の食肉貿易で依然としてトップを走っているが、次第に、言葉の遊びではなく文字通り「痩せつつある」のだ。

迅速かつ適切に対応すればプラスに利用できる豚コレラは好機となるという意味で、連邦警察が立ち上げたカルネ・フラッカ汚職捜査とトラパッサ汚職捜査のような不幸な災難は「体制」を強化する。

それは、政府と民間部門がうまく調和し奏でる交響楽であり、別の生産チェーンにおいても同様の対応が可能だと実証できるだろう。農産物の世界貿易においてブラジルは極めて重要な存在だと認識するのは重要なことだが、そうした製品は半ダースしかないのだ。すなわち、大豆複合品、食肉、コーヒー、砂糖、オレンジジュース、トウモロコシだ。むしろ、同様の地位を確保するのに、フルーツと綿花、魚介類、カカオ、パーム油、紙パルプ、ゴム、花卉、その他の穀物、牛乳といった品目には、取り組むべき余地がまだ多く残されている。

そして、隊列は進む。我が国は食糧安全保障において、最大のパートナー候補となるべき国だが、疾走する原石のダークホースを数多く保有している。(2019年5月12日付けエスタード紙)

*元農務大臣でゼツリオ・バルガス財団のアグリビジネスセンター・コーディネーター。
 

 

【豚コレラでブラジル産豚肉の対中輸出が記録を更新】

対中輸出が4月に42%拡大した。過去には、2005年の鳥インフルエンザでブラジルは世界最大の鶏肉生産国になった経緯がある。

アフリカ豚コレラ(ASF)の発生に伴い中国では2018年8月から1億5,000万頭から2億頭の豚を殺処分しており、世界最大の豚肉生産国かつ消費国ある中国では35%の減産につながった可能性があり、ブラジル経済にもその影響が出始めている。2019年4月にブラジルは、中国に対して3,580万ドルの豚肉を輸出した。月間の輸出額としては、1997年に始まった統計史上最高額となる。またサンパウロ大学ルイス・デ・ケイロス農業高等専門学校応用経済先端研究センター(Cepea/Esalq)によると、2018年4月の水準と比較すると42%の増加。

Cepeaのアナリスト、マリステラ・デ・メロ・マルチンス氏は、「豚コレラにより供給が縮小しているため、中国は、豚肉と鶏肉の輸入を急激に引き上げている」という。2月以降、中国は、サウジアラビアを追い抜きブラジル産鶏肉の最大の輸入国になっている。4月に中国の豚肉輸入と鶏肉輸入は、ブラジルの豚肉輸出全体の28%、鶏肉輸出全体の11.5%を占め、主要輸出先国としての地位をより強固なものにした。

鶏肉と豚肉の生産チェーンをまとめるブラジル動物蛋白協会(ABPA)によると、この2品目の輸出拡大の影響について、どの程度の規模になるのか現時点では予測は出ていないという。同協会のフランシスコ・トゥラ会長によると、鶏肉は生産サイクルが短いため、需要には迅速に対応しやすいという。一方、中国人1人当たりの年間豚肉消費量は40kgだ。

2018年にブラジルが輸出した鶏肉は64万6,000トンで、EUとアメリカ、カナダに次ぐ第4位の輸出国だった。2019年には輸出量が90万トンに達すると期待されている。だが、ブラジルには輸出急増を妨げるいくつかの要因がある。

肥育

 最初の要因は、豚の生産サイクルそのものが長いこと。種付けから生まれた子ブタが最初に屠畜可能になるまでに、ほぼ1年を要する。第2の要因は、中国が調達するのは輸出資格のある食肉会社が生産した製品に限られるということだ。現時点で中国への輸出が認可されている食肉処理場は、わずか9か所である。

「この問題は、ブラジルにとっては大きなチャンスになる。なぜなら、中国では豚肉生産が従来の水準に回復するまでに2年から3年を要すると見られるからだ」と、トゥラ会長は言う。同会長によると、2005年の鳥インフルエンザでは、ブラジルが世界最大の鶏肉輸出国へと変貌した。トゥラ会長は、豚肉においてもブラジルは、コスト面で競争力を備えており、過去の歴史を繰り返す可能性があるという。

豚コレラが中国とその他のアジアの国々で猛威を振るっている間、国内最大の生産地帯であり輸出地帯であるサンタ・カタリーナ州の養豚業者は、高値を存分に謳歌することになる。2月以降、食肉会社の系列外の独立系生産者に対する報酬は、33%も増加している。一方、サンタ・カタリーナ州豚肉生産者協会のロジヴァニオ・ルイスデ・ロレンジ会長によると、食肉会社の系列の生産者は、価格をおよそ20%引き上げた。

「中国で発生しているこの問題の影響を我々は享受しており、今後数か月で価格が高騰すると確信している」とロレンジ会長は言う。同協会は、州内で8,000人の養豚業者をまとめる。サンタ・カタリーナ州コンコルジア市で生産者に対して親豚を供給するスルヴィ農場のオーナー、クライル・ルザ氏は、過去2年間は需要の落ち込みと業界の低迷で老齢の親豚を利用していたこともあり親豚の半数を屠畜に回した時もあると話す。「生産者らは親豚グループを刷新させなかった」と、同氏は言う。

だが今、豚の販売拡大に農場は親豚の屠畜を見合わせている。過去60日で、問い合わせは30%から40%拡大しており、親豚の価格も20%から30%増加した。「誰かの不幸は別の誰かの幸運なのだ」と、中国における豚コレラで生産者が確保している利益についてルザ氏は言う。

もうひとつの側面

同じく、この問題はインフレにも影響している。ゼツリオ・バルガス財団(FGV)によると、豚肉の卸売価格、は2019年5月に入ってからだけで、17.09%も値上がりした。

中国で危機に陥っている豚肉生産のもうひとつの側面が、豚の飼料に使われるブラジル産大豆(粒)輸出の縮小だ。大豆業者をまとめるブラジル植物油脂工業会(Abiove)によると、業界は2019年に大豆輸出額が21億ドル減少すると予想しているという。(2019年5月12日付けエスタード紙)