日本資本のテクノロジー会社ソフトバンクのCOOでボリビア人のマルセーロ・クラウレ氏が、同社のポジショニングの強化に取り組みつつ、ラテンアメリカにおけるテクノロジー業界向けの50億ドルの投資ファンドの指揮を執る。
ソフトバンクが3月7日に発表したもので、同社は、米通信会社スプリントの元CEOでもあるクラウレ氏が責任者となる新しいファンドに対して20億ドルを拠出する。ほかに30億ドルを、社外から集める予定。
クラウレ氏が管理するファンドは、同じくソフトバンクが設立し、約1,000億ドルの資産を保有するソフトバンク・ビジョン・ファンドとは別に管理される。こちらの資金はドイツ銀行の元行員、ラジーブ・ミスラ氏が責任者である。
ミスラ氏は2014年にソフトバンク・グループに入社し、すぐに、影響力を持つ役員の1人になった。
ソフトバンクは、創業者で代表取締役会長の孫正義氏が社主であり経営者として投資の判断に大きな影響力を持つ。
だがクラウレ氏は、ミスラ氏の他に、元銀行家でゴールドマン・サックス出身で孫氏の後継者とみなされている佐護勝紀氏と共に3人いる副社長の1人である。
富豪で実業家のクラウレ氏は、ソフトバンクが2013年に買収したスプリントの事業刷新を推進するため、同氏が2013年に設立した米ブライトスターをソフトバンクが後に買収して呼び込んだことで同社入りした。
クラウレ氏はさらに、ソフトバンクがT-モバイルと進めているスプリントの売却交渉という、規制当局による複雑な分析を必要とする問題についても統括する立場にある。
ソフトバンク社内でクラウレ氏は、同社が抱える大規模な投資ポートフォリオの財務目標を確実に達成させるという責務を負っている。
その外にも同氏は、情報漏洩に孫氏が落胆する事態が発生したことを受け、同社のコミュニケーション戦略を強化するという役割も担った。
なお「ファイナンシャル・タイムズ」が行った以前のインタビューでクラウレ氏は、自身を孫氏の後継者とする見方を否定している。
ラテンアメリカにおけるスタートアップへの投資を目的に設定される今回のファンドは、サウジアラビア政府とアブダビ政府が投資を確約し600億ドルの支援を受けるソフトバンク・ビジョン・ファンドを同社が設立してわずか3年足らずというタイミング。このファンド設立以降、孫氏は、ファンドと投資の運用を同グループの戦略の柱のひとつとして強化するという野心を表明し続けてきた。
ラテンアメリカにおける同社の投資には、2017年の配車アプリのスタートアップである99に対する1億ドルの投資がある(同社は99の経営パートナーからは撤退済み)。ソフトバンク・ビジョン・ファンドも同様に、ブラジル国内で別のスタートアップ、ロギ(Loggi)に投資している。クラウス氏は声明の中で、「この地域には様々なイノベーションや変化が生まれており、ビジネス・チャンスは今後さらに大きくなると確信している」とコメントした。
ソフトバンクはさらに、第2のソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立するための資金の確保を試みている。ただしこの努力は、2018年10月に在イスタンブール・サウジアラビア大使館内でジャーナリストのジャマル・カショギ氏が殺害される事件を受けて世界的に同国への批判が拡大したことから足踏みしている。(2019年3月8日付けバロール紙)