2019年の住宅購入向けクレジットは過熱か

2018年の住宅購入向けクレジットは前年比二桁増加の15.0%増加、2019年は更なる増加をブラジル貯蓄・不動産信用機関協会(Abecip)のジルベルト・デ・アブレウ・フィーリョ会長は楽観視している。

ジャイール・ボルソナロ新政権への期待並びに一般消費者の景況感改善、今年末までの継続が予想される6.5%の政策誘導金利(Selic)、昨年度の2倍以上のGDP伸び率予想などの要因で、今年の住宅向けクレジット部門の大幅増加が予想されている。

2018年の連邦貯蓄金庫(Caixa)を通したブラジル貯蓄貸付システム(SBPE)による住宅購入向けクレジット並びに金利が最も低い勤続期間保障基金(FGTS)の住宅購入向けクレジット総額は、前年比15.0%増加の1,170億レアルに達している。

昨年のブラジル貯蓄貸付システム(SBPE)の住宅購入向けクレジット総額は、前年比33.0%増加の570億レアルを記録した一方で、勤続期間保障基金(FGTS)の住宅購入向けクレジット総額は、前年比僅か2.0%増加の600億レアルに留まった。

また昨年12月のブラジル貯蓄貸付システム(SBPE)の住宅購入向けクレジット総額は60億5,000万レアルを記録、過去44カ月間では最高のクレジット金額に達している。

昨年のブラデスコ銀行の住宅購入向けクレジット総額は、前年比91.0%の151億2,100万レアルを記録、長年に亘ってトップを維持していた連邦貯蓄金庫を抜いて業界トップに飛び出して業界地図を塗り替えた。

住宅購入向けクレジットでは、長年に亘って首位を維持していた昨年の連邦貯蓄金庫のクレジット総額は、勤続期間保障基金(FGTS)のクレジットが低調に推移した要因で、前年比19.25%減少の132億6,400万ドルに留まって業界2位に後退した。

一方昨年のイタウー銀行の住宅購入向けクレジット総額は、前年比41.55%増加の120億9,700万レアル、サンタンデール銀行も63.93%増加の101億7,000万レアル、ブラジル銀行は前年比84.08%増加の50億8,600万レアルを記録している。

昨年のポウパンサ預金残高は、前年比10%増加の6,180億レアルと2014年以来4年ぶりに二桁増加を記録、今年のポウパンサ預金残高は、前年比11.0%増加の6,840億レアルが予想されている。

今年の住宅購入向けクレジット用資金源として、金利低下並びに失業率低下、実質賃金の上昇によるポウパンサ預金増加以外に、株式や債券の発行などによる事業資金の調達、債務の期限前の借り換え、短期債務の長期債務への借り換えなどのファンディングによるクレジット増加が見込まれている。

今年の住宅購入向けクレジット部門では、特に昨年11月から開始された保証付き不動産信用証券(LIG)の発行が期待されており、昨年最終2カ月間の保証付き不動産信用証券(LIG)による調達金額は20億レアルに達し、今後3年に不動産信用証券(LCI)を抑えてトップになるとアブレウ・フィーリョ会長は予想している。(2019年1月31日付けヴァロール紙)

2018年の名目対内債務残高はGDP比76.7%

中銀の発表によると、2018年の連邦政府(中央政府並びに地方政府)のインフレ指数を差引かない名目対内債務残高は、GDP比76.7%の5兆2,720億レアル前年のGDP比74.1%から2.0%以上増加して更に悪化した一方で、インフレ指数を差引いた実質対内債務残高はGDP比53.8%の3兆7,000億レアルであった。

2017年の連邦政府の名目対内債務残高はGDP比74.1%に相当する4兆8550億レアル、2016年はGDP比69.9%に相当する4兆3,780億レアル、昨年の連邦政府の財政プライマリー収支は1,083億レアルの赤字を計上したにも拘らず、赤字最大許容値の1,613億レアルを大幅に下回った。

また昨年の連邦政府の名目財政プライマリー収支はGDP比7.1%と前年のGDP比7.8%から減少、ピーク時の2015年のGDP比10.2%を大幅に下回っている。昨年12月の名目財政プライマリー収支は411億3,300万レアルの赤字を計上、そのうち中央政府の名目財政プライマリー収支赤字は327億5,500万レアル、地方政府は62億7,700万レアルの赤字を計上していた。

昨年の連邦政府の対内債務残高の利払い総額は、政策誘導金利(Selic)の低下に伴ってGDP比5.52%に相当する3,790億レアルまで低下、連邦公社を除いた中央政府の利払いはGDP比4.51%の3,103億レアル、地方政府はGDP比0.91%の629億レアル、公社の利払いはGDP比0.09%の60億レアルであった。

昨年の連邦政府の対内債務残高の利払い総額は、月間平均Selic金利が6.43%で推移したためにGDP比5.52%まで減少、2017年の月間平均Selic金利9.94%で推移したためにGDP比6.12%であった。

昨年の中銀による為替スワップ介入では、レアル通貨に対するドル高の為替の影響で150億レアルの赤字を計上、2017年はレアル通貨に対するドル安の為替の影響で70億レアルの黒字を計上していた。(2019年12月1日付けヴァロール紙)

 

2018年の失業率は非正規雇用増加が牽引して低下

ブラジル地理統計院(IBGE)の全国家庭サンプル調査(Pnad)によると、2018年1月~3月の月間平均失業率は13.1%であったが、最終四半期の月間平均失業率は、緩やかな景気回復基調で正規雇用が僅かな増加に留まった一方で、労働手帳に記載されない非正規雇用増加が牽引して11.6%に減少していた。

2017年の月間平均失業率は12.7%であったが、2018年の月間平均失業率は、正規雇用並びに非正規雇用が120万人増加したために12.3%に低下、失業率総数は依然として1,283万6,000人を数えている。

2017年第4四半期の平均失業率は11.8%、平均サラリーは2,241レアル、前記同様に2018年第3四半期の平均失業率は11.9%%、2,237レアル、2018年第4四半期の平均失業率は11.6%、2,254レアルであった。

経済調査院(Fipe)エコノミストのEduardo Zylberstajn氏は、2004年の月間平均失業率は11.0%前後であったが、経済リセッション突入前の2014年の月間平均失業率は6.8%まで減少、3年以上続いた経済リセッションで2016年以降の月間平均失業率は二桁台で推移している。(2019年2月1日付けエスタード紙)

中央開発株式会社(CKC)海外事業部の山口達郎部長

中央開発株式会社(CKC)海外事業部の山口達郎部長が2019年1月31日に商工会議所を訪問、応対した平田藤義事務局長と年内開催予定の第4回日伯農業・食料対話へ向けて、ブラジル北部・北東部(マトピバ4州及びマットグロッソ州)における穀物輸送インフラ整備等で意見交換した。

Tatsuro Yamaguchi e Fujiyoshi Hirata

Foto: Rubens Ito / CCIJB

元外交官のLicks AdvogadosのRegis Arslanianパートナーが訪問

元外交官でメルコスール担当大使を務めたLicks Advogados(当所会員)のRegis Arslanianパートナー並びに在ブラジル日本国大使館の西川洋祐書記官が2019年1月31日に商工会議所を訪問、応対した平田藤義事務局長とボルソナロ新政権の経済政策や構造改革などについて広く意見交換を行った。

また、同大使は先般、在ブラジル日本国大使館を訪問、同社が4月初旬頃に新政府の要人招聘下で企画中のワークショップ構想について説明、テーマの選定や日本企業への参加呼び掛け等について当会議所に支援・協力を要請した。

マーリオ・ヴィラウヴァ外交官(元ドイツ大使)のAPEX総裁就任にも話が及び、平田事務局長は会議所が編者となり出版した2005年度版新現代ブラジル事典(ブラジルの全てが分る日本語による事典)をマーリオ氏の取り計らいで当時の大統領に贈呈した事を伝え、新政権下におけるさらなる日伯関係強化にあたって、新たな官民連携の必要性を訴えた。

Yohsuke Nishikawa, Regis Arslanian e Fujiyoshi Hirata

Fujiyoshi Hirata e Regis Arslanian

Fotos: Rubens Ito / CCIJB

国外就労者情報援護センター(CIATE )の永井康之専務理事が訪問

国外就労者情報援護センター(CIATE - Centro de Informação e Apoio ao Trabalhador no Exterior)の永井康之専務理事が2019年1月31日に商工会議所を訪問、応対した平田藤義事務局長とジャイール・ボルソナロ新政権の経済政策や治安対策の動向、早期実施が不可欠な年金改革や税制改革などの構造改革、ブラジルコスト削減などに多岐に亘って意見交換を行った。

Yasuyuki Nagai e Fujiyoshi Hirata

Fotos: Rubens Ito / CCIJB

サリン・マタール民営化長官はBB並びにCAIXA、ペトロブラス以外は全て民営化対象を示唆

実業界から昨年10月の地方統一選挙を前に、最も早くジャイール・ボルソナロ大統領候補の支持を表明した 大手レンタルカー会社Localiza社 会長の Salim Matter氏は、ボルソナロ新政権で民営化長官に就任している。

Salim Matter民営化長官は、ペトロブラス石油公社並びにブラジル銀行、連邦貯蓄金庫以外の公社は全て民営化の対象であり、ペトロブラス石油公社のグループ公社も民営化の対象と強調している。

またSalim Matter民営化長官は、社会経済開発銀行(BNDES)の投資管理会社であるBNDES出資会社(BNDESPar)の民営化優先や郵便公社は非効率の典型で腐敗汚職の温床と指摘しており、優先的に民営化される可能性が高い。

世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席したジャイール・ボルソナロ大統領に同行したパウロ・ゲーデス財務相は、公社民営化で200億ドルの資金調達を発表していたが、Salim Matter民営化長官は、ゲーデス財務相の予想の公社民営化での200億ドルを25%~50%上回る民営化実施を試みると予想されている。

またSalim Matter民営化長官は、石油・天然ガス部門の民営化ではペトロブラス公社は経営効率や生産性がメジャーと比較して低いと指摘、グループ企業の民営化促進を余儀なくされる。

ラテンアメリカ最大級の電力エネルギー会社であるブラジル中央電力公社(Eletrobras)は、財政再建政策の一環として負債軽減やコストカットなどで早急な構造改革に迫られており、Salim Matter民営化長官は、初めにEletrobras公社傘下の水力発電所や電力エネルギー配電会社などの持株放出を示唆している。

ペトロブラス石油公社のロベルト・カステロ・ブランコ総裁は、初めにBR DISTRIBUIDORA社の民営化、石油化学部門では共同経営しているブラスケン社の持ち株放出を示唆している。

連邦政府では134公社の民営化が可能であり、ミッシェル・テーメル大統領は20の連邦公社を民営化したが、ルーラ大統領並びにジウマ大統領の労働者党(PT)政権時には新たに48公社を新規設立していた。

連邦政府は赤字財政から抜け出せない18連邦公社を抱えており、年間赤字額は150億レアルに達している。赤字公社として国庫庁の助成金の依存率が異常に高く、尚且つ従事する公務員給与を支給する収入のないブラジル鉄道施術建設公社(VALEC)、ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)、サンフランシスコ河流域開発公社(CODEVASF)などが存在するとSalim Matter民営化長官は指摘している。(2019年1月30日付けエスタード紙)

ペトロブラスはシェブロン社にパサデナ製油所を二束三文で売却

ペトロブラス石油公社は、完全買収までに天文学的な買収資金を投じた米国テキサス州のパサデナ製油所を二束三文に相当する僅か5億6,200万ドルで、米国石油メジャーのChevron社との売却交渉を完結した。

ペトロブラスがChevron社から受け取る売却総額5億6,200万ドルの内訳は、現金で2億1,200万ドル、残りの3億5,000万ドルは株式譲渡で支払われ、同社の売却終了で海外での石油精製事業から完全撤退する。

2005年1月にベルギー資本のトレーディング会社Astra/Transcor社がパサデナ製油所を4,250万ドルで買収、2006年9月にAstra社は、パサデナ製油所の50%を3億6,000万ドルでペトロブラスに譲渡した。

ペトロブラスは、2012年6月に残りの50%買収のために8億2,000万ドル支払、最終的に一般的には理解不能な総額12億4,900万ドルを投資して、パサデナ製油所を完全に買収していた。

またペトロブラスはパサデナ製油所の完全買収資金12億4,900万ドル以外に、2006年~2013年にかけて設備の近代化やメインテナンス、環境改善などに6億8,500万ドルの投資を余儀なくされていた。

しかし2006年のパサデナ製油所の買収後、2008年に減損処理として1億6,000万ドル、2009年に1億4,700万ドル、2012年に2億2,300万ドルを計上、総額5億3,000万ドルに達していた。

ペトロブラス石油公社の元取締役のパウロ・ロベルト・コスタ氏並びにネルソン・セルヴェロ氏は、パサデナ製油所買収時に1,500万ドルの賄賂をAstra Oil社に渡したと自白、買収価格は7億4,100万ドル上乗せされていた経緯があった。

パサデナ製油所は、ラヴァ・ジャット作戦の汚職問題に絡んでいる物件であり、2018年2月にペトロブラスによるバサデナ製油所の販売価格が低すぎるために、連邦会計検査院(TCU)の捜査対象になっていた。

有価証券取引委員会(CVM)は、2018年10月にジウマ・ロウセフ元経営審議会議長を含む12人に対して、パサデナ製油所の買収価格決定の不正を指摘していた。

パサデナ製油所の1日当たりのガソリン並びにディーゼルの精製能力は11万バレル、貯蓄能力は540万バレル、Pasadena地区は運河に接した物流拠点に最適のロケーションで、メキシコ湾への玄関口であるヒューストンシップチャネルに位置している。

ペトロブラスはプレソルト鉱区の石油・天然ガスのコア事業に資金を集中するために、2015年から海外資産売却で46億ドルを調達、海外での石油精製事業では日本並びにアルゼンチンから撤退、今回のパサデナ製油所売却で、海外での石油精製事業から完全に撤退する。

また石油配給事業では、パラグアイ国内での石油配給事業から撤廃、南米地域ではアルゼンチンやパラグアイ、チリでの自社資産売却進めている一方で、ウルグアイのガス供給事業、ボリヴィアでの天然ガス生産は継続。

海外での石油開発事業では積極的な自社資産売却を進めており、最近ではペトロアフリカ社の50%の株式を売却、米国のメキシコ湾でMurphy社とジョイントベンチャーを立ち上げて米国での石油事業を縮小した。

現在のペトロブラスの海外での原油生産は、米国のメキシコ湾を中心に1日当たり2万バレルとピーク時の16万8,000バレルの僅か12.0%まで減少、ウルグアイのガス供給事業、ボリヴィアでの天然ガス生産、アルゼンチンでの僅かな石油開発・生産は継続している。(2019年1月31日付けヴァロール紙)

2018年のブラジルパルプ生産は2,100万トン突破か

ブラジル木材協会(Iba)の調査によると、2018年のブラジル国内のパルプ・製紙生産は、パルプの国際コモディティ価格が牽引して前年比7.5%増加の2,100万トンに達し記録更新すると予想している。

2018年1月にFeffer一族が所有するブラジル製紙業界2位のSuzano Papel社は、業界トップのFibria社を278億レアルの株式交換で吸収合併に成功、時価総額で世界最大の短繊維パルプメーカーが誕生した。

新Suzano Papel社はパルプの年間生産が1,100万トン、製紙生産は140万トンの生産能力を擁して、世界最大のパルプ・製紙会社が誕生、ブラジル国内に11工場を擁し直接・間接従業員総数は3万7,000人に達する。

昨年1月~11月のブラジル国内のパルプ・製紙生産は前年同期比9.6%増加の1,930万トン、月間平均生産は170万トンに達し、昨年1年間では2,100万トンに達したと予想されている。

世界のパルプ需要は年間平均150万トン~200万トン増加、今年のパルプ需要は前年比2.5%~3.0%増加をSuzano Papel社のWalter Schalka会長は予想している。

昨年初め11カ月間のブラジルのパルプ輸出は前年同期比9.7%増加の1,323万トンを記録、FOB輸出価格は75億ドル、中国向け輸出は全体の42%で輸出金額は31億ドル、前年同期比では42.1%と大幅増加している。

昨年初め11カ月間の1トン当たりの平均パルプ価格は前年同期比25%増加の818ドルに達していたが、昨年12月には中国の過剰ストックで642.89ドルまで下落していたと格付け会社Fitch Ratings社では説明している。

格付け会社Moodys社では、2019年のパルプの国際コモディティ価格は前年並みで推移すると予想、チリ資本のArauco社の新規パルプ工場は、生産能力が年間210万トンで2021年までの操業開始予定、現在の生産能力127万トンを大幅に上回る。

ブラジル国内では昨年業界2位のSuzano Papel社が業界トップのFibria社を吸収合併して世界最大の短繊維パルプメーカーが誕生、同社の年間生産能力は1,100万トンが見込まれている。(2019年1月29日付けヴァロール紙)

今年初めての労働問題研究会に50人が参加

今年初めての企業経営・地場企業推進委員会(ワグネル 鈴木委員長)の労働問題研究会は、2019年1月30日午後4時から6時まで50人が参加して開催、初めにMattos Filho (Mattos Filho, Veiga Filho, Marrey Jr. e Quiroga Advogados)のVILMA TOSHIE KUTOMIパートナーは、講演テーマ『2019年の新労働法の傾向について』、続いてTrench, Rossi e Watanabe AdvogadosのCLARISSA LEHMENパートナーは、講演テーマ 『海外支店勤務への移転に伴う労働法のリスク軽減について』それぞれ講演した。

1. "Tendências trabalhistas para 2019" 
2. "Expatriação de empregados – aspectos trabalhistas" 

Roberto Yanagizawa (Toyota do Brasil), Vilma Kutomi (Mattos Filho Advogados), Clarissa Lehmen (Trench, Rossi e Watanabe Advogados) e Wagner Suzuki (Construtora Hoss) (Fotos: Rubens Ito / CCIJB)

RI / CCIJB – 30/01/2019