2020年のパルプ生産は2,100万トンと過去2番目の記録(2021年2月18日付けヴァロール紙)

ブラジル木材工業(Ibá)の発表によると、2020年第4四半期のブラジルのパルプ生産は、前年同四半期比7.8%増加の530万トン、2020年1年間では前年比6.4%増加の2,100万トンに達し、過去2番目の生産量を記録している。

また昨年第4四半期のブラジルのパルプ輸出は、前年同四半期比12.7%増加の400万トン、昨年1年間のパルプ輸出量は、前年比6.1%増加の1,560万トンを記録している。

昨年の中国向けパルプ輸出は、COVID-19パンデミックの影響によるパルプの国際コモディティ価格減少が反映して、前年比11.7%の二桁減少の29億ドルに留まっている。

2020年のブラジルの木材派生品輸出総額は80億ドルに達したが、内訳は輸出総額の大半の60億ドルは木材繊維パルプ、17億ドルは製紙、木材パネルは2億7,600万ドルであった。

昨年のブラジルの木材パネル輸出では、最大の顧客であるラテンアメリカ向け輸出は1億4,200万ドル、製紙輸出は9億7,600万ドルを記録している。

昨年のブラジルの紙・パルプ業界は、一早くCOVID-19パンデミック向け対策に対応した結果、昨年のパルプ生産は、2,100万トンに達して過去2番目の記録達成とブラジル木材工業(Ibá)のPaulo Hartung会長は説明している。

トイレットペーパーや段ボール箱生産は業界の根底を形成しているが、ホームオフィスやリモートワークなどの労働形態増加に伴って、快適なスペース確保で木材パネル需要が増加してきているとPaulo Hartung会長は説明している。

昨年第4四半期のブラジル国内向けのインクジェットプリンター向けプリンターやコピー用紙、一般用紙需要は、ホームオフィスやリモートワーク形態の増加に反比例して、減少傾向を示している。

昨年第4四半期の国内向け製紙・パルプ販売は2.2%減少の140万トン、特に印刷用や一般用紙販売が9.9%減少の38万1,000トン、トイレットペーパーは4.5%減少の31万9,000トンにそれぞれ落ち込んでいる。

2020年1年間の印刷用や一般用紙販売は、COVID-19パンデミックの影響で前年比20%減少の110万トンに留まった一方で、トイレットペーターやティッシュ販売は1.6%微増の130万トン、包装関連は0.3%微増の180万トンとなっている。

2020年1年間の製紙輸入は前年比19.4%減少の55万トン、一方用紙輸出は3.3%減少の210万トン、昨年第4四半期の木材パネルの国内販売は、建設業界の回復並びにCOVID-19パンデミック期間中の減産からの正常操業の回復で、23.4%増加の210万立方メートルを記録している。

 

教育系スタートアップ企業「Descomplica」はソフトバンクなどから8,400万ドルの資金調達(2021年2月18日付けヴァロール紙)

2020年創設のブラジル最大手の教育系スタートアップ企業Descomplica社は、ソフトバンクやInvus Opportunitiesファンドから総額8400万ドルに相当する4億5,000万レアルの資金調達に成功した。

Descomplica社への8,400万ドルの中にはソフトバンク以外にもDiniz一族のPenínsulaファンドやFacebookのChan Zuckerberg女史、U2ギタリストのザ・エッジ氏なども投資に参加している。

Descomplica社が調達した8,400万ドルは、テクノロジー部門や昨年設立され、1,200人の大学生や3万人の大学院生を擁するDescomplica大学に投資される。年内に10万人の大学院生を擁する大学への拡大を目指して、積極的に投資を行うとDescomplica社創設者で大株主のMarco Fisbhen CEOは説明している。 

今回の8,400万ドルのDescomplica社へのEdTechスタートアップ投資は、ラテンアメリカで最大の投資を記録、Descomplica社への大型投資は今回が3回目であり、前回の投資では3,000万ドルを調達していた。

Descomplica社は、通常の教室型予備校をオンライン化にした大学受験生を対象とした映像授業サービス会社であり、数十万単位の有料会員を擁しているブラジル酷なで最大級のEdTechスタートアップ企業に成長している。

Descomplica社は、インターネットで「選択した曜日・時間にライブ授業配信」「講師による質問対応」「録画後のライブ授業再生」などの教育サービス内容をスローガンしている。

 

今年のユニコーン企業入り候補は17社(2021年2月17日付けエスタード紙)

スタートアップ企業の中で、2021年中に「ユニコーン」と呼ばれる10億ドル以上の価値があるブラジル資本の非上場会社は、17社が候補に挙げられている。

2018年以降でブラジル資本のスタートアップ企業の中で「ユニコーン」入りしたのは14社に達しているが、2021年中にユニコーン候補として挙げられているのは、ContaAzul社, Dr. Consulta社, Neon社, Minuto Seguros社, PetLove社, CargoX社, Contabilizei社, Pipefy社, Olist社, Solinftec社, Superlógica社, Tembici社, Fazenda Futuro社, Zenvia社, Buser社, Take Blip社並びにCortex社の17社が予想されている。

COVID-19パンデミックで世界的に経済停滞を余儀なくされた2020年のブラジル資本のスタートアップ企業で、ユニコーン入りしたのは、Loft社, Vtex社並びにCreditas社の3社に留まった。

ブラジル資本のスタートアップ企業の中で、2018年並びに2019年にユニコーン入りしたのは、それぞれ5社とLiga Venturesっ社のDaniel Grossi共同経営者は説明している。

2021年にトップを切って1月にユニコーン入りしたのは、ソフトバンク社などから1億9,000万ドルの投資を受けた家具など住居一般製品を取扱うMadeiraMadeira社で、COVID-19パンデミック期間中にオンライン販売で業績が上昇していた。

またOlist社のケースは、マーケットプレイスシステムの MercadoLivre社, Amazon社並びにSubmarino社のサイトを活用して、昨年3桁台の販売量並びに取扱量を記録したと同社のTiago Dalvi社長は説明している。

Neon社はデジタルバンキングサービスを提供するフィンテック企業で、ユーザーの金融体験を簡素化することを目的に、ユーザーは、料金を支払うことなく、支払い、チケット発行、名刺を使用した購入可能なサービスを提供。昨年3億ドルの小切手を受けとり、現在の時価総額は4億2,600万ドルが見込まれている。 

CargoX社は貨物サービス並びに配送ブローカー。ブラジルの「トラック版ウーバー」と呼ばれており、緊急で貨物を配送したい場合、CargoXのアプリを使えば簡単にトラックを手配することができ、輸送業務に加え、リスクや保険にも対処、報酬として手数料を得ている。同社にはGoldman Sachs社やValor Capital社が投資している。

製造業部門は部品供給問題で生産に支障をきたしている(2021年2月17日付けヴァロール紙)

2021年初めの製造業部門の生産向け原材料・部品不足は、昨年第3四半期から継続しており、生産計画に支障をきたしているとジェツリオ・ヴァルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)の調査で判明している。

今年初めの製造業部門で原材料・部品不足で計画通りの生産ができていないのは、自動車部門、金属部門並びにプラスティック部門が顕著となっている。

今年初めの製造業部門の部品供給問題に加えて、連邦政府によるCOVID-19パンデミック対応の昨年上半期からの月額600レアルの緊急給付金(auxílio emergencial)支給、昨年9月から半額の300レアルの給付金支給は昨年12月をもって終了したが、不透明な給付金支給の再開などの要因で、製造業部門の企業経営者の今後数か月間の先行き景況感は悪化している。

ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)調査員のClaudia Perdigão氏及びViviane Seda Bittencourt氏は、調査対象の企業経営者の48.1%は増産は難しいと回答、そのうち20%は部品不足問題を指摘。 15.9%は部品サプライヤー問題、重税2.5%、運転資金不足2.4%、金利高は0.2%、その他の要因は6.1%となっている。

今年1月の製造業部門で、最も部品供給問題を抱えているのは自動車部門で49.6%、設備稼働率は過去平均のマイナス5.8%に留まっている。前期同様に金属部門45.6%、設備稼働率は過去平均よりもマイナス1.6%を記録している。

続いてプラスティック部門29.1%、設備稼働率は過去平均よりも3.6%増加、化学部門25.5%、3.6%増加、機械・電気材料部門25.4%、7.6%増加、食品部門23.4%、3.0%増加、紙パルプ部門15.3%、3.5%増加、その他は21.5%、0.4%増加となっている。

昨年11月の調査では、調査対象の18部門のうち14部門で部品不足を指摘していたが、今年1月は8部門で依然として部品供給不足がネックになっていると指摘している。

全国自動車工業会(Anfavea)は、今年1月の部品供給は昨年11月よりも改善されたが、世界的な半導体不足で、自動車メーカーは軒並み減産を余儀なくされている。

ブラジル鉄鋼協会(IABr)は、昨年の設備稼働率はCOVID-19パンデミック危機の影響で、国内需要が壊滅的な影響を受けて高炉の操業低などを余儀なくされ僅か45.0%に留まっていたが、今年1月は67.3%に回復している。

今年1月の段ボール箱関連生産は前年同月比4.9%増加で、7ヶ月連続で月間記録を更新しており、生産が正常化するのは、今年下半期になるととブラジル包装紙協会(Empapel)は予想している。

最終フォーカスレポートは今年のインフレ指数を6週連続で上方修正(2021年2月17日付けエスタード紙)

17日発表の中銀の最終フォーカスレポートによると、一般エコノミストは、今年のインフレ指数の広範囲消費者物価指数(IPCA)を、前回予想の3.60%から3.62%と6週連続で上方修正している。しかし2022年のIPCA指数は前回同様3.49%に据え置いた。また2023年のIPCA指数は3.25%、2024年のIPCA指数は3.25%を予想している。   

一般エコノミストは今年のIPCA指数の中央目標値は3.75%、2022年は3.50%、2023年は3.25%にそれぞれ設定、またIPCA指数の許容範囲は±1.50%に設定している。

2020年のIPCA指数は、4.52%と中央目標値の4.00%を上回ったにも拘らず、IPCA指数の許容範囲に収まったが、2016年以降では最大のインフレ指数に上昇していた。

フォーカスレポートの一般エコノミストは、今年のGDP伸び率は前回予想の3.47%から3.43%若干下方修正、2022年のGDP伸び率は、前回同様2.50%に据え置いた。

今年1月の中銀の通貨政策委員会(Copom)は、政策導入金利(Selic)を4回連続で2.00%に据置を決定、1996年6月から政策導入金利(Selic)制度を導入後では過去最低金利を継続している。

中銀の通貨政策委員会(Copom)は、Selic金利を引き上げないことを約束した条件を設定した昨年8月以降に採択された将来の金融政策の変更に関する情報を提供する「フォワードガイダンス」を撤回した。  

昨日のフォーカスレポートでは、今年末のSelic金利を前回予想の3.50%から3.75%に上方修正した一方で、2022年末のSelic金利は前回同様の5.00%に据え置いている。

協同組合金融機関(クレジットユニオン)は、商業銀行に反して実店舗拡大路線(2021年2月16日付けエスタード紙)

大手商業銀行はフィンテックの導入加速並びにインターネットバンキング拡大に伴って、コスト削減のために維持費の高い商業銀行の実店舗閉鎖を余儀なくされている。

一方250 万人を超える顧客を擁して、ブラジル最大のクレジット・ユニオンのCredit Unions System for Brazil (Sicoob) は、中銀の支持を得て、商業銀行と逆走する実店舗の支店網拡大を図っている。

過去1年間で大手の公立銀行並びに民間銀行は1000支店の閉鎖を余儀なくされ、今年も支店物閉鎖を余儀なくされている一方で、協同組合金融機関(クレジットユニオン)のSicoobは、今年は2億レアルを投資して、250カ所の支店開設で拡大路線に拍車をかける戦略を採っている。

昨年の協同組合金融機関のSicoob社は、前年比6.0%増加に相当する197支店の実店舗を開設して支店総数は3480店舗に拡大してブラジル銀行の4400支店に肉薄してきている。

中銀は国家ファイナンスシステムに沿って2022年までにクレジットユニオンのマーケットシェアを現在の10%から20%に引き上げを容認しており、クレジットユニオンのクレジット総額を全体の5.0%まで引き上げる。

現在のブラジル国内には5,000以上の金融ユニオンが存在、そのうちクレジットユニオンは827ユニオン、総資産は3,100億レアル、クレジット総額は1560億レアルに達しているとブラジルユニオン組織システム(OCB).は発表している。

2020年12月のブラジル銀行の支店数は4,400支店、Sicoobは3,500支店、ブラデスコ銀行3,400支店、連邦貯蓄金庫3,400支店、イタウー銀行2,800支店、サンタンデール銀行は2,700支店となっている。

大都市部の周辺を含めて、現金や小切手を含む取引が依然として重要である僻地での金融サービスとしては、協同組合機関のクレジットユニオンの開設は不可欠となっている。

「中央銀行が率いる即時支払いと電子手段のpix時代にも拘らず、農村部の住民にとって支払い手段なども含めて金融サービスのオンライン決済は困難であるが、実店舗での金融アクセスは容易」とSicoobのマルコ・アウレリオ・アルマダ社長は支店開設は不可欠と説明している。 

Sicoobの昨年11月~今年1月までの3か月間の小切手取扱量は800万枚以上に達しており、現金や小切手取引は不可欠であり、今年末のSicoobの支店総数は、前年比14.0%増加の2,144市町村に拡大する計画となっている。

今年初め40日間のB3のIPOやfollow-onsによる資金調達は、前年同期比21%増加(2021年2月16日付けエスタード紙)

2021年年初から2月12日迄のサンパウロ証券取引所(B3)での新規株式公開(IP0)並びに追加公募増資(フォローオン)による資金調達総額は、前年同期比21.0%増加の331億6,000万レアルを記録している。

資源大手ヴァーレ社は、昨年同期にサンパウロ証券取引所(B3)で追加公募増資(フォローオン)で273億レアルの資金を調達、またペトロブラス石油公社は、220億レアルの大型の資源調達をしていた経緯があった。

しかし今年初めB3での大型の資金調達は、ナショナル製鉄所(CSN)グループを率いる実業家ベンジャミン・ステインバック氏によるCSN Mineração社の新規株式公開による、52億レアルの資源調達に留まっている。

今年初めのサンパウロ証券取引所(B3)の新規株式公開(IP0)並びに追加公募増資(フォローオン)による資金調達では、多岐に亘る分野で資金調達を試みており、テクノロジー分野、農畜産分野、電力エネルギー分野並びにグリーンビジネス関連リテール分野などとなっている。

有価証券取引委員会(CVM)では、新規株式公開を申請している31企業に対して、正確な企業情報等が迅速かつ公平に市場に提供の義務、ディスクロージャー規制の違反行為を抑止することで証券監視委の使命である市場の公正性・透明性の確保と投資者の保護に資することを目的として開示検査を厳密に行っている。

新規株式公開(IP0)並びに追加公募増資(フォローオン)による資金調達を試みる企業は、COVID-19対応のワクチン接種開始に伴う経済回復、国会運営の迅速化による行政改革や税制改革などの構造改革着手への期待などの相乗効果で増加傾向を示している。

 

事務局便り JD-033/21 徳仁天皇陛下誕生日祝賀会

                                                                    JD-033/21
                                                                    2021年2月17 日
会員各位
                                                                    ブラジル日本商工会議所 事務局

この度、徳仁天皇陛下誕生日祝賀会がブラジル日系主要5団体(文協、援協、県連、アリアンサ、商工会議所)及び在ブラジル日本国大使館、在サンパウロ日本国総領事館共催で開催されます。イビラプエラ公園内の日本館で行われた式典の動画やクラッシックコンサートがYOUTUBEで放映されることになります。
以下の通り、文協よりご案内をいただきましたので転送申し上げます。

ご都合のつく方は是非ご参加ください。何卒よろしくお願い申し上げます。
ブラジル日本商工会議所 事務局

徳仁天皇陛下誕生日祝賀会
日 時: 2021年2月23日(火)19時
放送: www.youtube.com/bunkyodigital
詳細: 文協事務局       (11) 3208-1755
                                  evento@bunkyo.org.br

 

全社員を対象とした在宅勤務など企業が急進的にリモートワークを推進

不確実な時代における経費の削減を視野に企業が、完全なリモートワーク・モデルのテストを推進している。

 

税務コンサルティング会社のラクロウが新しい事務所に移転したのは、昨年の灰の水曜日、2020年2月26日のことだった。1月に賃貸契約をまとめて手早くリフォームを行い、同社の事務所は300㎡から570㎡に拡大した。その3週間後にロックダウンが実施され、リモートワークの経験もなく、またその計画もなかったラクロウは、在宅勤務のうねりに「放り込まれた」のだった。

 

新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックの中で連邦政府が租税の納付期日を変更したことを受け、同社は、需要に対応するため従業員数を引き上げる必要に迫られた。この結果、同社の従業員数は2020年3月の68人から、2021年1月には100人に達した。一方、サンパウロ市内ブリガデイロ・ファリア・リマ大通りの同社オフィスは、誰も出勤しない状況が続いていた。結局、「夢のオフィス」は放棄されることになった。

 

ラクロウの経営パートナー、フラーヴィオ・ロペス・デ・アルメイダ氏は、「当社は内部留保を確保するため、不動産を返却することに決めた」と話す。「賃貸料は当時、当社の支出の20%に相当した。そして現在、そのコストはゼロになった」という。同コンサルティング会社は、ワクチン接種が行われた後、将来的に新たな事務所を賃貸する可能性については否定しない。だがそれは、同社のニュー・リアリティー(新しい現実)に即して推進される。言い換えると、以前よりも非常に小規模になるということだ。

 

同じ道を選んだもうひとつの企業が、テクノロジー系スタートアップのブルーで、使用していた事務所を完全に解約して賃貸コストをゼロにした。ブルーの共同設立者、ルイス・マリーニョ氏は、「我々は自問した。果たして、このモデルで機能するだろうか?と。そして答えは、イエスだった。むしろ、その方が良い可能性すらあった」と話す。マリーニョ氏は事務所を閉鎖する判断、それも恒久的なものになると同氏が考える判断を下したことに対し、現在400人いる従業員の反応は、一時的にも2020年内に事務所業務を再開して欲しいとする「要求はゼロだった」という。

 

折衷対応の企業も

 

技術系企業のFSセキュリティーは、軸足を等分に置き続ける判断を下した。125人の従業員(2020年の年明け時点と同人数)を、より小さなスペースに収容可能なことに気づいたのだ。このため、事務所スペースは50%縮小した。同社のカルロス・アルベルト・ランディン社長は、「在宅勤務で会社の業務を回していることに困難はなかった。ただ、今のところは問題解決に向けたアイデアを煮詰める作業には物理的なスペースを確保していることが重要だと確信している。そのプロセスは、対面式で進めればより豊かな成果につながるのだ」という。(2021年2月15日付けエスタード紙)

 

事務所の賃貸解約の「波」が押し寄せサンパウロ市内の空きオフィスが50%増加

変化する企業の日常

 

在宅勤務に対して従業員から好評価を得ていることに勇気づけられ、企業は、事務所の規模を3分の1削減する、あるいは事務所そのものを閉鎖する判断を下している。その結果、2020年第1四半期に13.6%だった事務所用不動産の空室率が現在では20%以上に達している。

新型コロナウイルス(COVID-19)の国内感染が確認されるや国内の多くの企業が在宅勤務を導入したことで、2020年に事務所用不動産の世界では、オフィスビルの将来に関して新たな疑問が投げかけられるようになった。パンデミックから12か月が経過した2021年の年初、この疑問に対する答えが明確になりつつある。事務所の賃貸契約を解約する波が既に押し寄せており、不動産業界の複数の専門家が、年間を通じてこの状況が更に悪化すると指摘している。

 

企業側のこうした動きは、この市場のデータから直接的に見て取れる。法人向けの不動産を専門とするアメリカ企業、JLLによると、オフィスビルで即時賃貸可能な物件の比率が、2020年第1四半期から第4四半期にかけて、50%増加したという。つまり、パンデミックが発生する以前の1―3月には全体の13.6%だったオフィスビルの空室率が、第4四半期には20%以上に上昇したのだ。

 

最新のレポートでJLL自身が、2021年には在宅勤務の動きが更に拡大する上に国内不動産市場のバロメーターとされるサンパウロ市内でオフィスビルが新たにオープンすることから、2021年に法人向けに提供される不動産は20万㎡以上の増加となって、年間を通じて状況が悪化していくと警鐘を鳴らした。国内諸州の州都では、より深刻な状況に見舞われている都市も存在する。それがリオデジャネイロ市で、同市ではオフィスビルの空室率が40%に達している。

 

事務所の賃貸契約を解約する「波」は、広範囲に押し寄せている。伝統的に事務所を大規模に賃貸してきた企業、例えばラタン航空のような航空会社から、イタウ・ウニバンコ銀行とブラジル銀行のような銀行にとどまらず、中堅企業にまで連鎖している。そこには、ひとつの明確な局面が見て取れる。すなわち、ポスト・パンデミックにおける専門職の日常には、在宅勤務という要素が強力に組み込まれるということだ。

 

企業からの聞き取りに基づいてJLLのロベルト・パティーニョ、JLL取締役は、平均すると企業の法人としての労働力の3分の1が、在宅勤務に軸足を置いた労働形態になると話す。顧客の応接に強く依存しない業種では、縮小される物理的な事務所スペースはより徹底したものになる。過去数週間、エスタード紙は、事務所規模を40%、あるいは50%、中には100%削減した企業に取材を重ねてきた。

 

パティーニョ取締役によると企業は、事務所の賃貸契約を打ち切るだけでなく、規模の見直しも進めている。間もなく、有名企業の大規模な入居に営業を集中してきたオフィスビルのオーナーらは、戦略の転換を迫られることになる。その理由は、スタッフの多くが在宅勤務となり、事務所スペースに対する需要が次第に縮小し、より柔軟な労働スペースに対する需要が拡大すると見られるためだ。これは、ウィワーク(Wework)のような企業が提供する共有オフィス・モデルだけの話に限らないのだ。

 

事務所スペースの見直しに着手した企業の幾つかは、各労働者に作業スペースを割り当てるという旧来の事務所構造を改革し、共有スペースに変更している。例えば、1,100人の従業員を抱えるBMG銀行がこのケースに相当する。アレシャンドレ・ウィナンディ組織改革担当取締役によると、サンパウロ市内でも賃貸料が高額な地域、イタイン・ビビ区のプレジデンテ・ジュセリーノ・クビシェキ大通りの事務所では、賃貸面積を33%削減した。

 

同銀行は今、フロアのひとつを対面/オンラインのハイブリッド式会議室と、電話応対ブース、行員の私物保管ロッカーに改装した。ロッカーは個人に割り振らず、終業時に私物を全て持ち出す必要がある。ウィナンディ取締役によると事務所のリフォームは、在宅勤務に関して94%の行員が満足しているという調査結果を受けて断行されたもので、5月には完了する予定。

 

賃貸コストの削減

 

企業内教育のコンサルティング会社で350人の従業員を持つアフェロラボは、各地の事務所の大部分が過去のものとなった。リオデジャネイロ市とサンパウロ市、ジュイス・デ・フォーラ市(ミナス・ジェライス州)に事務所とスタッフを抱えていた同社は、パンデミックが発生する以前から週1日の在宅勤務を認め、相対的にホーム・オフィスへの取り組みが進んでいた。「ただ、『コマンド・コントロール』モードでスタッフを統括する管理職からは、一定の抵抗もあった」と同社のレオナルド・バル社長は言う。

 

しかしパンデミックにより企業の多くが企業内教育に対するコストを削減したことで取引が減少し、在宅勤務はアフェロラボにとって有意義な組織の在り方と位置付けられるようになっただけでなく、解雇を「思いとどまらせる」ためにコストを削減するオプションのひとつとして浮上した。結果として、リオデジャネイロ市のオフィスを閉鎖し、サンパウロ市のオフィスを半分の規模に縮小した。これによる経済効果は? 果たして、およそ120万レアルとなった。(2021年2月15日付けエスタード紙)