論評【国内で直面する危機は「ブラジル製」だ】

問題を生じさせるという点でブラジル経済はまさに自家発電状態である。

政府が政府として機能せず寄る辺となるロードマップも与えられずに2022年のブラジル経済は、世界経済が減速しようがしまいが成長はわずかな水準にとどまりそうだ。高インフレとサプライ問題、生産チェーンに関連する部門で失われた秩序は、中国とアメリカ、その他のブラジルの貿易相手国に影響を与える。先進諸国が物価を抑制するために利上げすれば、この状況はさらに悪化しかねない。そうなればジャイール・ボルソナロ大統領とパウロ・ゲデス経済大臣はもうひとつ、情けないブラジルのパフォーマンスについて弁解する余地を確保できる。だが、このような話を真に受けるのは無知蒙昧の徒か並外れたお人好しの市民だけだ。いくつかの問題は国際的なものだろうが、ブラジルは既に、常軌を逸脱したインフレと、その他の新興国と比較しても極めて高い失業率、停滞した活動など、世界に異相をさらす存在なのだ。

ブラジル工業だけでなく農業も、薬剤などの原料や投入財の不足により被害を被っている。肥料は一層高価になり、自動車産業などいくつかの産業では、輸入するコンポーネント不足から生産を削減している。だが、このような国外の問題が存在するにもかかわらず、貿易黒字は極めて堅調に推移している。中国経済は活力を失い、第1四半期に年率換算で18.3%、続いて第2四半期には7.9%の成長を記録した後、第3四半期は4.9%にとどまった。だが農業関連産業の輸出は9月、数量ベースでは前年同月比-5.1%となるも単価が+27.6%を記録したおかげで、101億ドルという過去最高額を計上した。

その9月に中国は、ブラジルの農業関連産業品目で最大の輸入国という地位を維持した。中国の輸入額は、業界の輸出のおよそ3分の1となる32億7,000万レアルで、前年同月を42.8%上回った。9月は、ブラジルにとり主要な20か国の輸出先も輸入を拡大しており、農業関連産業の貿易収支は、88億5,000万ドルの黒字を計上した。

今のところ、ブラジルの貿易は輸出を堅調に維持しており、貿易収支の見通しも満足のいくものになると確実視されている。世界経済にはある種の冷却の兆候が見られはするが、国外市場は引き続きブラジル資本にとって魅力的であり続けている。

この動きには、複数の要因が絡んでいる。金融市場の専門家がしばしば推奨する収益の見込みと分散投資は、通常の状況で、極めて分かりやすい要因だ。だがブラジルの場合、国外へ資金を移転させる動機付けはそれだけではなく、政治的緊張と公会計の前途に対する不安からくる国内の不確実性が要素として存在する。これらの不確実性と懸念には、共和国大統領の態度とリスクだらけの選挙イヤーになるという見通しが根本に存在するのだと特定するのは容易なことだ。

世界経済に予想される減速はブラジルにいくばくかの問題を及ぼすだろうが、ブラジル経済の見通しは基本的に国内要因で趨勢が決まる。金融機関を対象に中銀が実施している経済動向調査「Focus」がまとめたデータによると市場は、国内総生産の成長予測を継続的に下方修正している。最新の予測では、2021年が+5.01%、2022年が+1.5%、2023年が+2.1%だ。反対に、2021年と2022年の2か年のインフレ率に対する見通しは、継続的に引き上げられており、2021年は+8.69%、2022年は+4.18%だ。

高インフレはこれからも、失業率が依然として高い状況下で既に不足気味の世帯収入を侵食し続けるだろう。物価上昇への対策として今後も中銀が政策金利の引き上げで対処するため、消費量の着実な回復は予想できない。Focusによると市場は、現時点で年利6.25%のこの金利が、2021年12月までに8.25%に達し、さらに2022年末には8.75%に至ると予想している。

不安感が払拭されない状態が続くことで、ドルは、国内通貨に対して過大な価値を維持して物価の上昇を助長し続けるだろう。従って、ブラジルのインフレ状況と世界のその他の国々で発生しているインフレの違いは、ブラジリアで湧き上がる不安感に影響された為替相場によって、その大部分を説明できる。経済成長に対する障害と同様、物価の混乱においても、ブラジルという国は問題を自家発電しているのだ。(2021年10月19日付けエスタード紙)

欧州の工業部門が中国の影響力拡大を懸念しメルコスールとの貿易協定を要求

近年では珍しい対応であるが、経済団体が自由貿易協定案の迅速な批准を要求している。

フランスなど一部の国が抵抗していることからしばらく見ることのなかった珍事として、欧州連合(EU)の加盟国に対して欧州の産業団体13団体が連名により、メルコスールとの自由貿易協定(FTA)に関する合意を早急に批准するよう強く求めるという事態が発生した。

今回の共同声明で産業諸団体は、両経済圏が交渉した最大規模で最も意欲的な貿易協定を前進させ、ネックを解消させる時が来たと表明。さらに、両経済圏の企業に対する優遇措置を伴う協定が、現在の不況と健康危機からの回復を助けると主張した。

さらに協定批准に失敗すれば、「相互の信頼を構築し、かつ、現代のより大きな課題に対処する上で、その手段がより限定的なものになる」と警鐘を鳴らした。その上で、批准されないことでブラジルとアルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイは、環境規制と労働規制の基準が大幅に低い貿易パートナーとの関係を継続あるいは拡大することすら有り得ると例証した。

今回の意見表明は、有利な状況の中国によってEUでビジネスをさらに失うことへの欧州側の懸念の表明でもある。

アマゾン熱帯雨林の保護に対してメルコスール側に環境分野で追加のコミットメントを含めるよう強力な圧力がかかっている中、欧州の産業諸団体は、この協定には持続可能性に関する確固としたコミットメントが盛り込まれており、「ブラジルは長期的に協力関係となるパートナーであり孤立させるべき国ではない」と指摘した。

EUの行政を担う欧州委員会は、2021年の年初、環境に関する追加のコミットメントについてメルコスールと交渉するための提案をまとめると発表した。だが今のところ、いつ行われるのかだけでなく、本当にそれが提出されるのかも、何の兆候もない。実際のところ、加盟国間、欧州議会内で合意を批准する政治的条件が存在しないのだ。というのも欧州では、2022年4月に行われるフランスの大統領選挙前にメルコスールとの協定が前進することはないと受け止められている。

こうした事情から今回、欧州版全国工業連合会(CNI)であるビジネスヨーロッパと、建設機械の欧州建設機械委員会(CECE)、工作機械の欧州工作機械工業連盟(CECIMO)、自動車部品の欧州自動車部品工業会(CLEPA)、皮革品のヨーロッパ皮革産業連合会(COTANCE)、テクノロジー分野の欧州機械・電気・電子・金属加工産業連盟(ORGALIME)、乳製品の欧州酪農協会(EDA)、サービス業の欧州サービス会議(ESF)、蒸留酒産業のスピリッツヨーロッパ(Spirits Europe)、繊維・衣料品の欧州繊維産業連盟(EURATEX)、フットウェアの欧州靴工業協会(EFC)、小売及び卸売のユーロコマース(Eurocommerce)、玩具工業の欧州玩具工業協会(TIE)が共同で声明を発表したことは、驚きをもって受け止められた。

実際のところ、これらの団体は、基本合意から2周年を迎える6月、欧州の人々が時間とビジネスを無駄に失っていることを示す目的で、これを祝すことに決めた。協定によりメルコスールからの輸入が10.6%拡大すると同時に、EUは、ブラジルとアルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイに対する輸出を52%引き上げる可能性があると訴えている。欧州の工業にとっても、欧州が輸出した財にメルコスールが課徴する輸入税率が引き下げられることで、年間40億ユーロを節約できるという。

これらの欧州の産業諸団体は、財及びサービスに限らず、知的財産権の保護、そして「パートナーシップを発展させ気候変動の緩和を支援し、双方が効率的な形でパリ協定を推進するという持続的な開発に関する準備をさらに進めていく」ことを含めて、通商が改善するものだと主張している。

また森林伐採または木材貿易に対する既存の規定の見直しのようなEU内の一方的な立法府の取り組みは、「EUに対する輸出が現在の森林伐採または土壌の荒廃に対して貢献しないという状況を強め確実にしてしまう」と主張している。

これまでのところ、協定に反対する声のほうが大きかった。だが今回の産業諸団体が主張するのは、もはや、両経済圏による協定の批准とコミットメントの実行を断固として進めるべきということだ。

一方のブラジルではCNIが、ブラジルがメルコスール=EU貿易協定の義務だけでなく「同様に環境及び労働に関する置く最適な合意と協定に基づくコミットメントについても」実行するために参画と準備を整えているというビジョンを示すべく小冊子を作成した。(2021年6月30日付けバロール紙)