2002年上期業種別部会長懇談会-化学部会


新井部会長発表

ポイント

  1. 3センターのエチレン生産量236.2万トン
  2. 白物家電向け樹脂に節電たたる
  3. タイヤ需要下期に落ち込む
  4. 金属工作油、下期10―15%ダウン
  5. 写真フイルム前年並み
  6. 筆記用具、下期に売上増進
  7. 農薬は農業豊作で売上増

 

米同時テロ事件、石化業界に影響せず

新井:化学品部会の新井です。化学品部会の業界、業種別に簡単にご報告させていただきます。


石油化学業界

石 化の上流部門は、先ほどから出ています、「アメリカの同時テロ事件」は、当地の石化業界へはほとんど影響を与えなかった。昨年11月に、ドバイ原油価格が 一時15ドル/バーレルまで軟化し、エチレンセンターがナフサ価格の低下で、コスト低下の恩恵を受けたものの、誘導品の国内需要が前年比減少、輸出市場も 下期急速に後退した。国内3センターのエチレン生産量が236万2000トンと現有能力に対し83%の稼働率と前年を下回ったという状況です。

 

石化誘導品部門

主に合成樹脂になりますけれども、樹脂代表のポリエチレンは、レジ袋などの底堅い需要に支えられて前年並みの荷動き。ポリプロピレンも自動車向けコンパウ ンドや雑貨、包装容器向けは量的には順調だったが、節電対策の影響を受けた白物家電向けは他の樹脂も含めて大幅減退を余儀なくされた。ポリスチレンは最大 の需要業界のテレビが480万台程度まで落ち込んだことで、非常に低調なまま終わりました。エンプラの代表でありますPCも国内・輸出とも下期に入り、急 速にかげって、在庫調整からプラントを止める状況となっている。ペット樹脂は清涼飲料、ミネラルウォーター、食用向けに昨年来の好調を維持している。

 

樹脂加工及びタイヤ

樹脂加工は3月以降のレアル安のため、輸入原料価格大幅アップ。国内調達原料も大半がドル建て、コスト上昇を招き、これが製品価格へ転嫁できず採算悪化。 これに加えて6月以降の電力不足問題、節電が始まり、家電を中心に新規購入が停滞し、生産調整に入っていたときに米国のテロが重なり、かつ自動車・通信関 係が下期減速したことで、例年最盛期となるべき9月から11月の販売活動は過去最低となった。通期では前半の好調、後半の不調で、プラスチック加工業界 は、前年の95%の生産指標となった。

タイヤ業界は、1月から6月の生産量が前年比21%増の自動車に支えられて、新車、交換タイヤとも国 内需要は上期に拡大。下期は一転して自動車生産にブレーキがかかり、タイヤ需要も大きく落ち込んだ。さらにレアル安が昂進、コスト上昇を製品価格に転嫁で きず、採算も大幅に悪化。上期の貯えでなんとか赤字は避けられた状況でした。


接着剤、シール剤

瞬 間接着剤市場、大衆市場ですけれども、これは、中国からの安価なジエネリック品が税関での取締り強化で、下期には影響がほとんどなくなり、市場が正常化、 売上が回復と。 工業材料市場は、電気、自動車及びその関連企業が下期に入り生産が落ち込み、その影響でブランケットオーダーの繰り延べやオーダーキャン セルが相次ぎ、平年の50%以下に工業用接着剤、シール剤の売上が落ち込んだ。

自動車部品のねじに対するプレコートシール剤加工も前年比 50%落ち込んだ。化学品業界といいながらも、結局、自動車業界に集約されるような部分が多くて、自動車業界の数字に比例するようなかたちで業績が後半に 悪くなった。みなさん輸入コストの転嫁ができず、利益を圧迫。10%程度の値上げを実施したが追いつかなかった、と言うことでした。

 

金属工作油

こ れもまた自動車関係でして、上期は好調な自動車生産に支えられたが、下期は一転してという。それから鉄鋼では、米国の輸入制限による生産の10%近い落ち 込みが重なり、工作油も下期は上期比15から20%ダウン。前年同期比でも10から15%ぐらいダウンで、通期でも5%くらい下回ったのではないかと言 う。採算面でも同じように原料高、それから運賃、容器等の値上げに伴う経費の増、市場の狭隘化で競争が激化。優良メーカーも含めて採算は相当悪化というこ とでした。

 

筆記用具

自動車とはおよそ関係ない筆記用具。文具ですけれども、年間を通して 順調ということだった。上期こそ前年並みだったが、下期は今年に入って値上げが起こるんじゃないかと言うため仮需が起こって、売上が大幅に増進と。ただ、 一方でドル高、電力不足による操業低下などで共通部品の日本への発注を余儀なくされたり、一部成型品の外注化、電力使用超過に伴う罰金などがコストを押し 上げ採算が圧迫されたと、電力問題にからめてこういう報告がありました。

 

写真フィルム

前 半は若干前年同期を上回るペース。その後、電力不足、アルゼンチン問題、ドル高で製品価格アップなど不安材料が多かったけれども、結果としてはほぼ 2000年並みを維持する結果となった。米同時テロ事件で海外旅行は控えられたものの、国内のレジャーでフィルムの使用が増えたと。これが一つの大きな原 因ではないかと言うことでした。

 

農薬業界

先ほどから出ています、「農産物の好調が輸出 に」と言うことですが、農薬業界もそれに比例した通り、天候にも恵まれて作柄も良く、物量面では前年比増となっています。ただし、国際価格がどん底にある コーヒー向けで、代金の回収問題の顕在化。それから綿が自給を達成したと同時に、国際価格、国内価格の低迷で作付けの大幅減が始まっていて、今年のシーズ ンで、場所にもよるけれども25から30%の面積減と。減った面積が大豆栽培に向かっているので、大豆は10%以上の作付け増。

その他、柑 橘はシトラス・ジュースの在庫が一定レベル以下になって、非常に値段的にも好調。フェイジョン、ポテトも価格が大幅に復活してきて、これら向けの農薬の出 荷は多かった。ただ、一方で、輸入原料が殆どなわけで、4、5回に分けて値上げしたが、作物はインフレに直結すると言うこともあって、比較的価格が抑えら れており、農薬価格も押し上げできず、採算悪化が起こっています。

それから相変わらず合併、大手同士の合併、結婚が盛んで、いま我々の市 場では上位3社で市場の60%を占めると、こういう状況が出現しています。それから、年末にかけて雨が降り出したのはいいが、降り続きすぎたセラード、干 ばつになってしまったリオ・グランデ・ド・スル。これで収量がだいぶ落ちると言われていたのが、ここへきて、また少し通常に戻ってきて、これに伴ってシカ ゴの相場も上がったり下がったりしている状況です。

 

2002年の展望

2002 年の展望を、一つ一つではなく、まとめて言いますと、中間財及び消費財を生産販売している業界ですので、輸入原料比率が高いと言うこともあり、為替の動 向、それからブラジル経済の推移による、との前提ながらで、米国経済の復調、アルゼンチン情勢の波及が軽微で、関連する自動車業界、家電業界が復調し、為 替が前年に比べて落ち着いた動きであれば、2001年並みか、これをはるかに上回る実績を挙げられるのではないか、と言う期待をしております。

た だ一方で、価格競争激化などで、製品の付加価値をいかに高めるかがキーという言葉が複数の会社から出ていました。石化業界では、去年のCOPENEに続い て、今年はCOPESULの資本再編が予定されており、農薬業界と同じように業界再編が進むのではないか、と言うことでした。

2002年上期業種別部会長懇談会

 

 

当会議所総務委員会(村岡委員長)主催「2002年度上期の業種別部会長懇談会」は、1月31日に当所会議室で12 時30分から午後5時まで約4時間半にわたって行われた。第1部では、10部会長が「ブラジル経済2001年の回顧と2002年上期の展望」をテーマにそ れぞれの業界について述べた。司会は村岡総務委員長。第2部は会議所改革をメインテーマに10部会長はじめ、出席者全員が活発に建設的な意見をのべ合い、 午後5時に終了した。懇談会第1部はここに収録。第2部内容は後日、別途に会員、並びに読者皆様に送信の運び。

 

出席者名

総務委員会
コンサルタント部会
金融部会
貿易部会
化学部会
機械金属部会
繊維部会
食品部会
電気電子部会
建設不動産部会
運輸サービス部会

常任理事会





務委員会

オブザーバー
委員長(司会)
部会長
部会長
部会長
部会長
部会長
部会長代理
部会長
部会長
部会長
部会長

会頭
副会頭
専任理事
財務理事
財務理事
財務理事
副委員長
委員
監事会議長
総領事館
村岡真理(ブラジル三井住友銀行)
田中 信(リベルコン・ビジネス)
福岡米三(ブラジル東京海上保険)
柳田武三(ジエトロ・サンパウロ)
新井章夫(ブラジル北興化学)
杉村秀一郎(NSKブラジル)
林 彰一(ブラジル日清紡)
渡辺英明(東山農産加工)
北野孝明(ブラジル・ミノルタ)
鳥羽広明(HOSS建設)
横山幹雄(日本航空サンパウロ支店)

工藤 章(伯三菱商事)
鍵冨信三(味の素インテルアメリカーナ)
石川清治(YKKド・ブラジル)
宮地正人(ブラジル東京三菱銀行)
能澤信一(ブラジル丸紅)
金岡正洋(ブラジル伊藤忠)
赤嶺尚由(ソールナッセンテ人材銀行)
藤下温雄(ブラジル三井物産)
山田唯資(アイコン・コンサルタント)
池田総領事代理、玉川領事、花田副領事、内田専門調査員

 

司会の言葉

金融部会

化学部会

機械金属部会

繊維部会

食品部会

電気電子部会

建設不動産部会

運輸サービス部会

コンサルタント部会

質疑応答

2002年上期業種別部会長懇談会-司会の言葉

上期業種別部会長懇談会

主題:ブラジル経済2001年度の回顧と2002年上期の展望

副題:商工会議所の今後の将来像、魅力ある商工会議所づくりのために、今、何をなし得るか 

 

 

右から池田総領事代理、工藤会頭、村岡委員長(司会)、赤嶺副委員長、山田監事会議長

 

司会の言葉

2002 年度部会長懇談会を始めさせて頂きます。副題というのが主題と異質のものですので、第1部と第2部に分けさせて頂きます。第1部は時間的には12 時半から約2時間で休憩、そのあと第2部に移らさせて頂きたいと思います。主題は、第1部で「ブラジル経済2001年度の回顧と2002年上期の展望」、 第2部では「商工会議所の今後の将来像、魅力ある商工会議所づくりのために今、何をなし得るか」につき討議致したいと考えております。はじめに工藤会頭か らご挨拶頂き、そのあと10部会の部会長の方々からの発表、オブザーバーの方々のコメント、ご意見、及び質疑応答。最後に池田総領事代理にご感想を含めた ご挨拶を頂きたいと考えております。それでは工藤会頭お願いします。

 

工藤会頭の開会あいさつ

工 藤:皆様にはまことに恐縮ですが、今回は時間が長くなります。また、部会長の方々には、今日の第2部のために準備部会を開いて頂き、従来に比べて手間ひま をかけて頂いたと言うことで、この場を借りてお礼申し上げます。第1部はいつも時間が短いということで、なにか駆け足になる様ですけれども、日頃の部会の 活動をぜひご紹介いただいて、できれば、討議の時間も有効に使いたいと思います。それから今日は総領事館の4人の方、ご参加ありがとうございます。第2部 のほうは、こちらもいろいろ議論したいこともありますので、ぜひ皆さんの忌憚のないご意見を拝聴したいと思います。よろしくお願いします。

 

 

懇談会 第1部

司 会:前回の懇談会から半年経ちました。その間に世界が大きく動き、9月の全米同時多発テロ、それに続くアフガン情勢、近辺のインド、パキスタンの紛争にも 火がつき、加えていつもの通りながらイスラエル、パレスチナ情勢も大きく動いております。その中で日本の経済情勢もますます混迷の度を深めておりまして、 改革が進めば失業率等も増大する、というジレンマに陥っているようです。その中にあって、一人ブラジルだけが気を吐いているという現状ではないかと思いま す。
もっとも、年初にバラ色の年は、年央から崩れる、逆に年初暗い年は年央から年末にかけて健闘するというのが、どうもブラジルにとって一つのパ ターンとして定説になっているようで、今年、年初が良いからといって油断はできないのではないかと思います。その辺のところを、10の部会でご議論いただ きました点をみなさまに発表して頂きます。ご案内の通り、1部会10分程度ということで、非常に時間が短いですけれども、よろしくお願いします。それで は、最初にトップバッター、コンサルタント部会の田中様お願いいたします。

2002年上期業種別部会長懇談会-質疑応答

右から藤下総務委員、金岡財務理事、能澤財務理事、宮地財務理事

右から石川専任理事、玉川領事、花田副領事、内田専門調査員

 

司会:これで10部会の発表を終了いたしました。発表内容につきまして、ご質問もしくはコメント等々いかがでしょうか。

能澤:さっき、北野社長の発表の中に、特定企業に対するインセンティブで、国産メーカーが困っているということ。それは具体的にはどんなセクションなんですか。

北 野:電子部品です。これは実は電子部品のムラタ。特定メーカーというのはカンピーナスにあるモトローラ。セルラー電話用の特殊な電子部品のようですが、そ れを対象にしたインセンティブの法令ができて、輸入したほうが安いと。ムラタさんのマナウス工場で作られている「なんとかコンデンサーとか」というのが売 れなくなった。モトローラに納入できなくなった、いう話のようです。それと、それはどうも、背景にはミクロ電子部品のITを利用した国際調達と抱き合わ せ、になっているみたいです。世界中の安いところから、輸送費のかからないものは一番安いところから買ってくる、いうような話と、そのロビイングといいま すか、が裏にあるようです。そういうものが、輸入関税とかいろんな事を押しのけるインセンティブの法令と抱き合わせになっとるみたいな事です。

山田:それは政府がモトローラだけに、そういうインセンティブを与えている。

北野:与えたというふうに、特定1社を対象にしたインセンティブ法が出来て、国産メーカーは苦労してます。という表現でしたが。

司会:他に如何でしょうか。

石川:建設不動産部会長の鳥羽さんに質問です。2002年正月からこちら、聞いている範囲内では選挙の年もあって、政府がカイシャ・エコノミカ・フエデラー ル(連邦貯蓄銀行)を通じて長期のユーザンスを打ち出しています。政府による住宅建築を増やし失業率を減らす政策が打ち出されているという事で、不動産業 界はちょっと景気が出ると聞いておりますが、その辺のコメントをなにか?

鳥羽:現在のところ、選挙の年だからと言って、今年についての カイシャ・エコノミカ・フェデラール(連邦貯蓄銀行)の特別な措置というのは聞いておりませんけれども、一般論としては、そちらの方を強化していると聞い ています。そういった資金を利用しての住宅建設は、もう少し大きな市場になるであろう、と云うことは推測されます。

司会:ほかにご質問、コメント等ございますでしょうか。

山田:もう一つありますけども。先ほど言われました、その横山さんのフォワーダ-の、割に好調であったというのは全世界に対するフォワーダーですか、それとも対日本だということですか。

横山:えーっと、これはあの複数社の方というよりも一社の方のご報告なんで、限定されたとこだと思いますが、具体的には山九さんの報告なんです。したがってここからの、あの全体的というよりも固定的なものであると思います。

司会:皆様のご協力で、ほぼ予定通りに進んでおりまして、最後、領事館の方々からご感想を含めてコメントございますでしょうか。玉川様、ちょっと口火を切って頂きまして

玉川:この懇談会出席はこれで6回目になりまして、レアルの切り下げ以来、浮き沈みといいますか、変化の激しいブラジル経済を、ずっと各業界の方からお話を 聞かせて頂きました。その中でも、田中部会長のご発言にもありました、「どうかな?」と思う時でもなかなか底割れしない、というその姿に非常な「強さ」と いうものを感じており、そうしたものを十分学んで、これからの活動に我々も参考にさせて頂きたいと思っております。

司会:続きまして花田様。

花田:私もこの振幅の激しいブラジル経済というのを改めて認識させて頂きました。昨年の11月以降、好材料が出て来たと言うお話も田中部会長からありました が、こうしたものが今年も続き、貿易黒字とか海外投資が好調に流入し、為替が安定して、また、米国を始めとする世界経済が回復する事が今年の大きなポイン トではないかと感じました。

司会:内田様いかがでございましょうか。

内田:私、この国に1年数カ月です けども、良い時も悪い時もブラジルには本当に驚かされると感じております。前回の部会長懇談会では国内では電力問題。こんな問題が本当にあるのか、と非常 に驚いたんですけれども、今回は第4四半期に、急激にそのブラジル経済に対する信用が回復しました。

昨年11月に金融部会さんのパネル・ディスカッションに参加させて頂いた時点では、まだ、これほどまでのレアル高は、予想されてなかったような記憶があるんですけれども、そういうわけで、本当にいい意味でも悪い意味でも驚きの多い国だなと感じました。

輸 出に関しては、前回の部会長懇談会の時、ちょうど商工開発相が今までの産業界に非常に密着した形のターピアス大臣から外交官出身のアマラル大臣に交代する ことで「どうなるかな」というようなことを、懸念を込めて申し上げたけれども、蓋を開けてみるとカルドーゾ大統領の発言にもあります「輸出か死か」という ことで、非常に次々に輸出振興策が打ち出されて、言って見れば、その昨年のいろいろな問題を受けて、ブラジルがいかに外国資本に依存しているかが、かなり 明らかになった形でかえって政策ドライブがかかったのかな、というような感想を持ちました。

貿易収支の改善は、実際には輸入が非常に減った と言う側面が大きかったことと、また、お話にもありましたように、レアル安に頼った部分と言うのもあったかと思うんですけれども、そういう意味では構造的 な改革として、ずっと宿題のままになっている税制改革、あるいはロジスティックスの改善ということが、今後も政府の動きで注目される所だと思います。ま た、ブラジル側の民間の方と機会がある時にお話している時、あるいはセミナーでお話を聞いている感じですと、先ほど柳田部会長からお話がありました、輸出 をしなければいけないという意識、これが非常に高まっていると感じます。同時に付加価値の付いたものの輸出をいかに増加するかと。それは、ブラジル・ブラ ンドと言うものを広めて行くという意味も含めて、それに対するその意識が強まって来ている兆候も感じます。それによって、今までは、外国資本に頼った二流 の国だったところを、なんとかプリメイロ・ムンド(先進国)に持って行きたいと、そういう発言が結構目立っていたように思います。すみません、長くなりま した。ありがとうございました。

司会:ありがとうございました。それでは最後に池田総領事代理にご感想含め一言ご挨拶を頂きまして、第一部の締めくくりと致したいと思います。お願いいたします。

池 田:本来であれば総領事が出席するところ、出張のため私が代わりにさせて頂きました。本日、10部会代表の方々のお話を伺いまして、企業の方々の自助努力 を超えるさまざまな要因、為替変動、テロ事件、アルゼンチンの経済危機等、に苦しめられながら、大変なご苦労をなさっておられることが非常によく分かりま した。

今年も引き続き、ブラジルのマクロ経済情勢は若干良くなって行くようですが、やはり、「また何が起きるか分からない」。そういった中 で、おそらくそれぞれの業界の中で、競争も激化して行くでしょうし、そうした中で、最大限の努力をなさって、乗り越えて行かれる皆様のご健闘を期待したい と思っております。

  領事館としましては、皆様方のお役に立つ領事館でありたいと思っております。昨年を思い出しますと、一つはやはり、 治安問題に対する対応が非常に重要だと思っております。そうしたことで、昨年は「安全対策レター」の発行、サンパウロの警察、誘拐担当警察の方々の講演、 あるいは直接、商工会議所の方々に領事館に集まって意見交換をさせて頂いたとか、ありましたけども、そうした問題につき、今年も引き続き重点的にやって行 きたいと思っております。

それから昨年11月、サンパウロにおいて行われた官民合同会議が、今年はリオ・デ・ジャネイロで行われると聞いて おります。そういった場等を通じて、官民一体的な戦略を構築し、お互いに助け合って、ブラジルにおける日伯の経済関係の緊密化に共に働ければいいな、と 思っております。3月のマルタ・スプリシー・サンパウロ市長の訪日について今準備中ですが、これはサンパウロ市との関係強化、サンパウロ市長の日本に対す る認識を深めてもらうためです。

我々としては、もしサンパウロ州政府、あるいはサンパウロ市に対して、何か皆様方、お仕事の上で問題がある 場合には、我々の方から取り次ぐことは出来ると思いますし、連邦政府に対して何らかの形で申し入れることがあれば、それは大使館の方から取り次ぐと、ある いは助力させて頂くことは出来ますので、ご遠慮なくおっしゃって頂きたいと思います。以上、簡単ですが、これで終わります。

司会:ありがとうございました。それではこれで第一部を終了致したいと思います。

2002年上期業種別部会長懇談会-運輸サービス部会


横山部会長発表

ポイント

  1. 米同時テロ事件の影響が直撃 ― 航空業界
  2. 生存競争時代から「共存競争時代」へ ― 海運業界
  3. 各種メーカー増産に期待
  4. ゼロ金利の特価販売 ― 自動車小売
  5. 昨年は「最悪の年」。今年は選挙による人の動きに期待、供給増も問題 ― ホテル
  6. 円安、ワールドサッカー、団体訪日等に期待 ― 旅行エージエント業界
  7. 昨年唯一好調だった業界 ― 宣伝広告
  8. アルゼンチン危機の行方懸念 ― クーリエ業界
  9. 製鉄所高炉改修作業終了 ― 好調のフオワ-ダ-業界

 

横山:私ども1月の16日に部会を開催しました。53社のメンバーですが、11社のご参加、ご報告を頂きましたので、かいつまんで報告します。

いろいろ各部会のご報告がありました中で、9月11日の米同時多発テロ事件の影響を多分、一番大きく受けたのが我々の業界ではないかと思います。つまり、 飛行機そのもの、航空旅行そのものに対する恐怖感から飛行機に乗って頂けないような状況が発生して、それが相当続いております。したがって、航空旅行と か、いわゆる観光とかに関わる業界の方は相変わらず非常にその影響を受けている、と言うのが現状だと思います。ただし、今ご紹介がありましたように、非常 に多数の会社が当部会に入っておられまして、各社それぞれ若干事情が違うと思われます。九つに分けて簡単にご報告します。

 

航空業界

まず航空業界。いま申し上げた通り、予想以上にその尾を引いており、まだ立ち直っていないと思われます。広く報道されていますが、相当数の会社が倒産、あるいは破産等々に追い込まれており、米系のキャリアも軒並み大赤字となっております。

ブラジル関係におきましては、大韓航空さんが長年続けていた路線をやめられました。

米 伯間は急激にお客様が減り、減便対応、それから廃止等々を行っている航空会社が多くなっております。その分、国内線のほうがある程度は好調、収益はそれほ ど良くないようですが、実績ベースでは相当数お客様が増えている、と報道されております。それから、バリグさんを始め、ブラジルの航空会社で決算上黒字の ところはないようです。あまり良くはないと言っても拡大基調をとっておりますTAM社は、最近の報道によりますと、副社長が解任されたとか、ちょっと人事 関係の政権争いが起こされているようです。

それから日本では、これもすでに報道されていますがJAL/JASの経営統合。これが今年の10月、持ち株会社の日本航空システムをつくってやって行く、ということが最近明らかになっております。

今 年上期の展望ですが、先ほど申し上げました通り、まだテロ事件の影響が長く続いていると言うことですが、一部には昨年11月あたりが底ではなかったかと言 うことで、実績から見ると確かにちょっと上昇傾向にありますが、まだ前年対比で20%ぐらいのダウンというのが現状です。

日伯間の航空需要は、過半数が出稼ぎの方の需要で、これに支えられて成り立っている部分があり、これはやはり日本の景気回復を待たないと。本格的な戻りはまだ遅れるんでないかと思われます。

 

旅行エイジエント業界

ここはモロに航空不況の影響を受けている。ツニブラさんのご報告ですと、下期に40%ダウン、通期、通年で25%ダウンと言うことでした。特に日系の出稼ぎの方を取り扱う旅行エイジェントさんは、大変な苦境下にあると言うご報告です。

最近の傾向として、特に年末に北米関係は、マイアミ/オーランド関係の観光客が増大し、現在も引き続いているようです。

2002年上期は、日韓ワールドサッカー、それから宗教関係でいろいろ大きな大会が開催されるようで、その辺を期待していると言うご報告がありました。

それから出稼ぎの関係は、先ほど報告したように、雇用機会が減って、「向こうにいても仕様がないから此方に帰ってくる」という事で、いわゆる特需ですか、日本発のフライトはかなり混み合っていると言う報告がされております。

それから国際観光振興会さんのご報告ですと、去年の訪日ブラジル人は22%ほど減っているようです。

2002年については、やはりそのサッカーに賭ける期待が大きく、ブラジルが勝って決勝に出ると、日本で開催されるので、とそれを期待していますが、予選で負けちゃうと、私ども困るなぁと思っているんですけど(笑い)。

 

海運業界

次に海運業界。輸出は増えたけれど輸入が減少した、となっています。数量ベースでは東南アジア向け、欧州向けが二ケタ増、北米向けも4%増となっていますが、輸入の方は各方面とも減っているようです。

2002 年上期の展望では、構造的な変貌がされつつある、という報告です。表現としましては、今までの生存競争時代から「共存共栄を図る」という方向への転換がな されているのではないか、と言うことです。2002年以降は、大型コンテナ船就航が見込まれており、供給過多になる懸念があります。

 

貨物業界

貨物業界は電力不足等々の影響もあり、生産調整で減産が余儀なくされ、全体的には30%減という報告となっております。

2002年については、その上期に減産分が一挙に増産、その分を取り返すための増産がされるであろう事を含めて、若干数増えるのではないとの期待になっております。

 

リテール業界

これは自動車販売の方からの報告です。先ほど杉村さんの方からもご報告ありましたので、詳細内容は割愛させて頂きます。

大 まかに言いますと、ゼロ金利販売など各メーカーさんの特価政策で、何とか落ち込みを最小限に止めたと。今まで伸びてた分がちょっと止まったと言う事かと思 います。メーカー販売実績では、これも先ほど説明ありましたが、42年間首位を守っていたフォルクスワーゲンのトップの座をフイアットが奪ったと言う事が 特記かと思われます。

2002年の展望ですが、全体的には年間で150万台程度の販売が見込まれてるようです。上期は厳しいけれど、下期に期待したいと言う事のようです。

 

広告宣伝業界

これは私どもの部会の中で唯一好調だったようです。今年も選挙があるんで、その関係で市場に活気が出て来るのではないかと言うご報告です。

 

ホテル業界

それからホテルですが、これはサンパウロの4つ星以上のホテル・データによりますと、2001年度下期は12.6%の減少。今年上期展望では10%増を期待、と言う数字的な報告がされております。

2001 年下期は、あまり大きなイベントもなく、海外からの投資によるビジネスマン動向も期待したほどではなかったと言うことで『泣きっ面に蜂』という表現をして いますが、最悪の年であったとなっております。以前から進めていた、いくつかの新しいホテルがオープンしたことから、サンパウロ市では2000室ほどの部 屋の増加という形になっております。したがって部屋の供給は増えたけれど、実際はお客さんが少ないと言うことで、それも減収効果となっているようです。

 

クーリェ業界

クーリェは輸入/輸出、エアーカーゴ物件とも2001年下期は相当増えています。報告では米同時テロ事件の前に、いろいろエアーで運んだのがラッキーだった、との報告になっております。

2002年も前半は楽観できるけども下期がちょっと危ないと。特にアルゼンチンの問題が影響を与えて来るのではないか、との報告です。

 

フォワーダー業界

これも私どもの業界の中では特殊な存在。非常に好調であったと言うことで、2002年も引き続き好調ではないかと言う報告になっております。

 

 

運輸サービス部会資料

1.航空業界

2001年下期の回顧

全体としては残念ながら上期の不調をそのまま継続した結果となってしまった。

9 月11日のテロの影響は予想以上に大きく、スイス航空の倒産やアルゼンチン航空の破産をはじめ、全世界的に航空会社の経営を圧迫した。ブラジルへの乗り入 れ会社も減便措置を講ずる会社が多く、米系の会社は乗り入れ便数を半減させて対応した。特に大韓航空のブラジル線休止は、ブラジル線の不振を物語ってい る。一時的に太平洋路線を避けて大西洋経由で日伯間を往来される企業が多かったのも、テロの影響として特筆される。日本ではJALとJASの経営統合が話 題となった。

米伯間は壊滅的な打撃を受けて旅客数は正確な統計数値はないが、一時は7割以上減少したものと見られ、まだ回復に至っていな い。一方国内線に転じると、堅調な観光需要に支えられ好調であった。1月から11月の統計では対前年比9%の伸びで、特にコンゴーニャス空港の利用者が 11.6%と大きく増えている。経営悪化が報じられているバリグ航空は、ボーイング社のリースバック方式による救済で一息ついた模様。拡大基調のTAM社 は、トランスブラジルの権益を継承し国際線の拡張を図っている。

 

2.旅行エイジェント業界

2001年下期の回顧

OUTBOUND(海 外旅行)は11SEP事件以降、取扱旅客数及び販売総額ともに対前年同期比約40%のDOWN。2,001年度通年で約25%減。INBOUND(地上手 配)部門はOUTBOUND同様11SEP以降、受注の60%がキャンセル、対前年度比通年で約30%減。

一方、対日出稼ぎ旅客の激減と相 俟って、日系の旅行エイジェントは大変な苦境下にある。11月以降の円安、レアル高など条件好転にも拘らず、年末の訪日機運は回復しなかった。但し年の暮 れ押し迫ってから,北米(マイアミ、オーランド等)への観光客が大幅に増大した。この傾向は2月いっぱい継続するものと考えられる。

2002年上期の展望

航 空便運行の正常化に伴い急速に回復するものと思われる。本年は日韓で行われるワールドサッカーや宗教関係では日蓮大士立教750年(日蓮宗派全体)、道元 禅師750回大遠忌(曹洞宗)などが控えており、相当数の訪日旅客が見込まれている。その他いくつかの県人会の団体訪日も企画されており、円安等の好条件 もあって訪日旅客は大幅に増加するものと予測している。一方、在日の出稼ぎ者は就労先のメインである各種下請企業が低迷しているため総体的に収入が減少。 円安レアル高によるデメリットの影響も非常に大きく,ブラジルへの帰国が次第に増えつつある。状況によっては、日本発の各便の予約が相当厳しくなる事も予 測される。INBOUND部門の急速な回復は見込み薄。円安傾向の影響も見逃せない。ただ本年10月にサンパウロで行われる西本願寺の世界佛婦大会には、 日本をはじめ北米その他から2,000名以上の参加が見込まれている。本年2月のリオのカーニバル向けの日本からの観光客は昨年の50%程度に落込んでい る。

 

国際観光振興会サンパウロ事務所の報告は以下の通り。(要点のみ)

2001年下期の回顧

1. 2001年訪日ブラジル人数 13,200人(対前年22.1%減)

(但し11月1日時点での予測)その動向に影響を与えた要因(マイナス要因)

・米国同時多発テロ

・ 対ドル、レアルレートの低下

2. 2001年度マーケティング活動実績

・ポル語ホームページ・ページビュー件数の増大データベースの完成

・ 高所得者層を対象とした日本観光プリゼンテーション・パンフレット配布をパワーアップ

2002年上期の展望

1. 2002年訪日ブラジル人数予測

(プラス要因)ブラジルの2002W杯出場

(マイナス要因)アフガン周辺における軍

事行動の拡大

 

3.海運業界

2001年下期の回顧

8年振りの貿易黒字(約4億ドル)を示したブラジルは、8月以降の国内産業の生産調整により大幅に輸入が減少した。一方、輸出は年末に向かい北米向けが減少したものの、通年では欧州向けを中心に順調な伸びを示した。

 

数量ベースの前年比較

輸出        輸入

東南アジア向け118,150TEU(11%増) 137,270TEU(3%減)

欧州向け  362,300TEU(10%増) 285,430TEU(10%増)

北米向け  293,770TEU(4%増) 169,270TEU(7%減)

 

コンテナ以外の輸送では東南アジア向けにおいて、輸出および輸入共に10%減少となった。(輸出264万トン、輸入210万トン)

*     コンテナ個数TEUとはTwenty-Foot Equivalent Unitの略で20フィートコンテナ換算を意味する。

*     貿易黒字=26.5億ドルの12月の数値はGAZETAMERCANTIL紙では未発表のためFOLHA DESAO PAULO紙を使用した。

 

2002年上期の展望

長年にわたり深刻な赤字と厳しいトレードの状況に苦しみながら、撤退・合併などの統廃合を行ってきた船会社の近年の競争環境は、生存競争時代から共存競争を模索する時代へとその方向を大きく変化させている。

2002 年以降も北米・欧州航路に相次いで大型コンテナ船の竣工が見込まれており、全世界的な船腹需要関係は2003年まで供給が需要を上回ることが懸念されてい る。一方で、エネルギー輸送では従来の石油・石炭の他にLNGを始めとするクリーンエネルギー需要を背景に船腹需要は大幅に拡大する。

 

4.貨物業界

2001年下期の回顧

2001 年下期で予測した通り、電力不足により各種メーカーは軒並みに生産調整に入り、減産を余儀なくされたことが貨物輸送に大きく影響した。また同時テロ事件 は、貨物輸送に直接打撃を与え,日本発の航空貨物は対前年の30%減となったことは、発着の取扱いにおいて強烈なダメージを受け減収減益となる。並んでテ ロ事件により帰任・赴任者の移動も一旦中止され、引越貨物についても激減したが、11月後半頃から多少の動きが見られるようになってきた。

2002年上期の展望

テ ロ事件の反動も収まってきており、2001年末期からの伯国景気回復に伴い、下期の悪化部分を補填する意味では、各種メーカーは増産せざるを得ない状況に あると予測される。上期前半は、特にワールドカップサッカーに向けてTV、携帯電話などの増産及び、自動車などのモデル・チェンジや新機種生産による貨物 輸送の増加が期待できる。レアル高が輸出に与える影響が懸念されるが、伯国の農産物など輸出に貢献しており今後も期待できる。輸出入貨物の増加は伯国の景 気回復がポイントである。

 

5.リテール業界(自動車小売業界)

2001年下期の回顧

1)          国内卸売販売実績(単位:千台)

上期 前年同期比 下期 前年同期比

乗用車 694.4 +28.5%  582.8 +10.1%

商用車 113.9 +21.16%  87.5 –2.1%

トラック   38.4 +17.6%  35.5 +6.7%

バス他  868.5 +26.4%  721.1 +7.4%

下期はゼロ金利販売等の各メーカーの特価政策で何とか落込みを最小限にとめた。

2)          メーカー別販売実績の特徴(乗用車)

FIATが前年比+14.8%の373.7千台となり首位。VWは356.8千台に止まり、42年間の首位を明渡す。RENAULTが前年比+24.3%の68.1千台でFORDに迫る。大衆車のシェアーが75%程度にまで上昇。

2002年上期の展望

1)          国内販売台数は2001年度下期の実情からすると2002年の年間で139万台にまで落込むとの見方もあるが150万台程度と見るのが妥当

2)          上期は厳しく下期に期待

3)          アルゼンチンとの自動車貿易収支バランスから罰金支払い問題が浮上、先行き不透明

(10%の余剰枠を超える部分には75%のメルコスール共通関税が掛けられる)。

 

6.広告・宣伝業界

2001年下期の回顧

概して順調であった。前年比約20%の成長が見られた。顧客の中にはアルゼンチン危機による経済的見通しに不安感を持たれて、宣伝活動を控える企業もあった.

2002年上期の展望

本年は大統領選挙,州知事、州議員など一連の選挙の年であり、市場も活気が出てくるものと思われる。

 

7.ホテル業界

2001年下期の回顧

前年同期比 12.6%減(註)

日 系コロニアを含めサンパウロ市でのイベント予定は少なく,海外からの投資によるビジネスマンの動向増加に期待して10%増を見込み下期に期待した人の動き が9月の同時テロで一挙に崩壊した。まさに泣き面に蜂で最悪の年であった。アメリカ,日本からの宿泊客は特に減り、ヨーロッパ,ブラジル国内のマーケット を中心に営業を行った。またア

ルゼンチンの政治経済混乱も経営に影響。シーザーパークエアポート、ブルーツリーモルンビー、ラ ディソンなどのホテルがオープン。トランスアメリカホテルも大規模なコンベンションセンターを開業し、サンパウロ南地区のイベント誘致の活性化を試みて いる。合計2,000室位がサンパウロ市内に増加された。

2002年上期の展望

前年同期比10%増を期待。(註)同時テロ事 件の影響は今暫く継続すると考えられ期待薄。各ホテルは特別価格、パッケージ等を売り込み国内各地からの宿泊客を誘致しようとしている。下期の総選挙での 人の動きが期待できる。ホテル建設ラッシュは続き今年は特に4星ビジネスホテルがオープン、やや膨張気味のホテル業界にみえる。小規模なブラジル人経営の ホテルチェーン等は今後大規模な国際チェーン等に吸収されることも考えられる。

(註)上記の使用データはサンパウロ都市ホテルで4星以上の業界情報資料によります。

 

8.クーリエ業界

2001年下期の回顧

対前年同期比の実績

クーリエ輸入物件  5.4%増

クーリエ輸出物件 15.5%増

AIR CARGO物件 30%増

同時テロの前に米系企業の自動車など大型サンプルを中国にAIRできたのが幸運だった。

2002年上期の展望

選挙の年なので9月までは楽観できるが、その後は多少の調整があるものと思われる。アルゼンチンの貿易決済への影響で為替がどう動くか、特に労働からの圧力で給料のドルスライド賃上げにでもなるとインフレ再発の恐れが出てくる。

 

9.フォワーダー業界

2001年下期の回顧

COSIPA製鉄所No.2BFの改修工事が無事終了し、山九スコープで約12日間の工期短縮を達成、2001年事業計画達成。一般物流部門も高炉改修の特殊機材(Unit

Dolly・ Jack up Sys・Drill Machine)のハンドリング作業により増収・増益効果がある。構内物流部門は、客先(USM/Cosipa)の 国内販売増加(年間15%増)により計画達成、整備・保全部門はほぼ前年並み。港湾作業においても上期と同様。

全社として2001年計画達成。

2002年上期の展望

2002 年は大型工事が予定されていないため通年通りの常例作業(構内物流・保全整備作業)に支えられた動きとなろう。また高炉改修チームの温存のために、保全整 備常例作業のスパン拡大をCSN,COSIPA製鉄所内で交渉中。一般物流に関しては輸出作業量、国内物流作業量増加が予想されるが、プロジェクト作業が 現在のところ未決定で売上ベースでは前年並みを予想。

2001年上期業種別部会長懇談会-貿易部会

  • 昨年度輸出551億ドル、輸入558億ドル
  • 失敗に終わった“コーヒー版OPEC”構築
  • 01年貿易収支予測は10億ドルの黒字(中銀)
  • 懸念される米経済動向

 

●政府の予測はずれ 7億ドルの貿易赤字

司会 : ありがとうございました。それでは、貿易部会の能澤部会長お願いいたします。

能澤: それでは貿易部会から発表いたします。2000年度の輸出総額、551億ドル、輸入総額558億ドル。結果的に貿易収支は6億9100万ドルの 赤字という事になりました。伸び率は輸出14.7%増、輸入13.3%の増という事で、一言で申し上げますと、「輸出は約15%も伸びたが、輸入の伸びが 予想を遥かに上廻った為に貿易収支の赤字につながった」と言えると思います。2000年度貿易収支に対するブラジル政府当初の見通しは、50億ドル黒字で したが、年央には早くも疑問視されるようになった。9月以降年末にかけ、勢いを失った輸出に対し、旺盛な輸入がそれを凌駕し、一気に赤字基調に転じた。こ の間、黒字幅について政府見通しは当初の50億ドルから44億ドル、その後28億ドルと低減し、結局赤字が確定した年末に入り、やっと7億ドルの赤字との 発表がなされた。

しかし結果的には赤字で終わったものの、赤字幅としては95年以来の小幅なものにとどまった訳で、先ほど申し上げました通り、輸出の伸びよりも遥かに、輸入が大きく伸びてしまったという事が大方の見通しを覆す、赤字に終わった最大の原因だと思います。

貿易収支の予測と結果がここまで大きく乖離した主な理由として、次が考えられます。4つほどありますが、一番目は、なんと言っても国内景気が回復した事。 国内景気が回復しますと、企業はどうしても、国内市場を優先させ、余ったものを輸出にまわすという事で、どうしても輸出がおざなりになってしまう。それと 先ほど、田中先生が触れられましたけど、景気回復と共に、旺盛な原材料、中間材料を輸入しないと成り立たない産業構造ですから、そういうものの輸入が大き く伸びたという事です。

2番目は、一次産品で、国際商品相場の乱高下。まず原油価格、これが非常に高騰して、輸入価格を押し上げた。それから輸出の方では、農産物輸出、これが国際商品相場が低迷して、数量的には伸びても、金額的には低迷を強いられたという事です。

3番目は政府の政策に関係する事ですけども(後述)、稚拙な輸出政策。例えば主要輸出品のコーヒーでも失敗をしている、そういうこともございました。

それから最後に、天候不順による農産物の輸入増加です。去年の6月、7月、霜の害がありましてトウモロコシがかなりやられ、小麦も影響を受けたという事 で、金額的には大したインパクトはありませんでしたが、トウモロコシは99年比2%増えている。それから小麦は4%ですけども、金額的にはかなり大きく増 えてしまっているという事が重なりました。

 

●摩擦はあったが、 亜伯貿易は好調

それ からブラジルの貿易を見るときに見落としてはいけない、メルコスールとの貿易収支。2000年度輸出は77億ドル、前年比14.1%伸びております。それ から輸入は、78億ドル、これも前年比16%伸びております。貿易収支は6400万ドルの赤字ですけども、これは94年以来赤字だったのが、昨年やっと 5600万ドル黒字化し、 2000年度再び赤字に転落してしまった。メルコスールの取引の中で9割方を占めるアルゼンチンとの貿易は、アルゼンチンがあれだけ動揺したのにも関わら ず、ブラジルからの輸出は16.2%伸びた、輸入は17.7%伸びたという事で、アルゼンチンとの貿易、メルコスールとの貿易に限って言えば、非常に好調 であったという事が言えると思います。

それから輸出と輸入を分けてご説明しますけども、輸出は対前年比14.7%増加し、全分野で伸び た。全分野と申しますのは、一次産品・工業製品(半製品、完成品)・その他と分けてございます。とくに顕著な伸びを示したのは、工業製品の完成品であり、 中でも携帯電話を中心とする通信機器115,2%増、航空機72.3%増、乗用車55.3%増など、比較的付加価値の高い商品の増加が目立ちます。中でも 航空機は単独で31億ドルの輸出を記録しました。

地域別には、東欧・中近東向けを除き、平均的に伸びているものの、中でも経済が好調で あった米国とALADI諸国向けの伸びが大きい。一方、ブラジルの代表的輸出品目の一つであるコーヒー豆は「コーヒー版のOPEC機構」の構築を狙うブラ ジル政府が世界の主要生産国に呼びかけ、国際カルテルを結んだ。しかし、結果的にこれを守ったのはブラジルだけ。ベトナム、インドネシアなどの新興生産国 に市場を奪われるだけの結果となった。このため、99年には22億ドルあった輸出が、2000年は15.6億ドルまで、実に6億4000万ドル、29%の 落ち込みを強いられた。その他農産物も国際商品相場の低迷により、苦戦を強いられたものが多いということです。

 

●伯の工業製品輸出伸び 一次産品は全体の22.8%

輸出における特徴的な事は、やはり工業製品、その中でも完成品が非常に伸びて99年の対比で見ますと実に19%伸びている。それから一次産品は、金額で 落ちたけども、量でカバーしたという事で、6.2%伸びております。それからブラジルというと、10年、15年前までは一次産品の輸出比率が高かったが、 昨年度は22.8%しかない。一方、工業製品は74.5%まで増えてきた。先ほど申し上げた完成品は、実に59.1%で、ブラジルの輸出の6割は完成品に 変ってきているという事がいえると思います。

仕向け地別に2000年度の前年対比伸びたところを申し上げますと、1番は米国向けで 23.2%の伸び。これを金額で言うと約134億ドル。2番目がALADI向け。ALADIの中でメルコスールは 14.1%伸びておりますが、メルコスールではないALADI、例えばベネズエラ、ボリビア、チリ、メキシコとその辺が36.6%、非常に大きな伸びを示 しています。

 

●米、EU、ALADI 3地域に各25%の輸出比率

それからブラジル の輸出の特徴ですけども、大きく3つのブロックに依存しており、1番はEU、これが26.8%。それから次は米国、24.3%それから ALADI向けですが23.4%。ですから一言で言って、25%ずつ3つの地域に依存しておりまして、残り25%の半分がアジアになります。そのアジアの 約半分弱が日本だというご理解をいただければ正しいかと思います。

それから輸入も全分野で拡大しましたが原油相場の高騰に伴い、とくに 原油・燃料・潤滑油等、いずれも前年対比約50%増となった。原油は数量面では対前年比約16.9%減少しているものの、金額面では99年の22億ドルに 対し、2000年は32億ドルと47.1%の高い伸びを示した。これは平均単価が 99年はトン辺り119ドルだったものが2000年には211ドル、実に77%の値上がりとなった結果であります。

 

●今年の貿易収支 プラス/マイナス10億ドル?

また、これはブラジル産業構造に負う物ですが、国内経済及び輸出が伸びるに伴い、いまだ輸入品に大きく依存しているそれらの原料、中間材料の輸入も大き く増えて、対前年比18.6%と大きく伸びております。以上の理由により、輸入は2000年通年で13.3%と前年に続き、高い伸び率を示した。輸入で一 つ特徴的なのは、ただ今申し上げました通り、原油関連が非常に大きく伸びたという事と、輸出、とくに国内経済が順調に伸びたために、原料・中間財が 18.6%も伸びてしまった。一方、今まで高い伸びを示していた資本財がここにきて一服感があり、0.3%しか伸びていない。という事で、大型の設備投資 は一段落したかと思われます。

それから輸入についてはやはり、ALADIからの輸入が23.3%と非常に高い。これは原油関連、エネルギー関連が主因でございます。

それから2001年の貿易予測ですが、引き続き楽観を許さない。その理由として、主要輸出相手国の経済成長率が2000年度対比軒並み低下し、輸出の伸 びが不透明であること。例えば米国については経済成長率が去年5.2%、それが今年3.9%ぐらいに落ちるだろう、EUも今年3,3%ぐらいに落ちるだろ うという事で、それぞれに依存している比率が先ほど申し上げた通り、約25%ずつですので、相当苦戦するであろう、という事です。

それからメルコスール向け輸出の最大の相手国アルゼンチンが長期かつ構造的不況にさらされており、同国の景気回復は予断を許さない状況です。

アジア諸国は再び景気減速に転じており、為替も下落し、輸出競争力が相対的に高まりつつあります。ブラジルはそういう状況におかれており、今年の貿易収支の見通しはブラジル政府、今は10億ドルの黒字を予想しております。

あと金融機関のバンコ・インターアメリカン・エクスプレス、これが9億ドルプラス、シティーバンク、ここは非常にネガティブで、本年度16.9億ドルの マイナス、住友銀行さん、これがゼロから10億ドルの間であろうと、それから東京三菱銀行さん、これがゼロと予想されております。

それ でわれわれ貿易部会の中で、いろいろ話をしたのですけども、恐らく今年は思ったほど楽観できないという事で、10億ドルのマイナスから10億ドルのプラス の間に入るだろう。輸出入とも、去年に比べて約10%前後、600億ドルには手が届くであろうというのが結論でした。

2001年上期業種別部会長懇談会-貿易部会(レポート)

2000年回顧

総 括

2000年度貿易収支に対するブラジル政府の当初の見通しは、50億ドルの黒字であったが、これは年央には早くも疑問視されるようになった。 9月以 降、年末にかけ勢いを失った輸出に対し旺盛な輸入がそれを凌駕し、一気に赤字基調に転じた。 この間、黒字幅について政府見通しは当初の 50億ドルから44億ドル、その後28億ドルと漸減し、結局、赤字が確定した年末になり、やっと▲7億ドルの発表がなされた。 しかし結果的には赤字で終 わったものの、赤字幅としては 1995年以来の小幅なものに留まった。貿易収支の予測と結果がここまで大きく乖離した主な理由として次ぎが考えられる。

① 国内景気の回復
企業が国内市場を優先 旺盛な原料・中間財の輸入
② 国際商品相場の乱高下
原油価格の高騰農産物輸出の低迷
③ 稚拙な輸出政策    
④ 天候異変による農産物の輸入増大    

 

(単位:百万ドル)
貿易収支(1‐12月)
 
2000年
1999年
増減
%
輸出
55.086
48.011
7.075
14.7
輸入
55.777
49.210
6.567
13.3
貿易収支
691
1.199
508
 

 

(単位:百万ドル)
メルコスールとの貿易収支
 
輸出
輸入
貿易収支
 
対メルコスール
対アルゼンチン
対メルコスール
対アルゼンチン
対メルコスール
対アルゼンチン
1999年
6.777
5.363
6.721
5.814
56
451
2000年
7.732
6.232
7.796
6.843
64
611
増減率
14.1%
16.2%
16.0%
17.7%
214.3%
35.5%

 

対メルコスール向け輸出は堅調に 14.1%増を記録したが、一方、輸入も 16.0%伸びた。貿易収支は再び赤字に転じ $64百万の赤字となった。 アルゼンチンとの貿易は同国の政治・経済の動揺を勘案すれば堅調に伸びたと言えよう。

 

輸出

(単位:百万ドル)
2000年の輸出構成(1‐12月)
 
2000年
1999年
増減率(%)
一次産品
12.559
22.8%
11.828
24.6%
6.2%
工業製品
41.029
74.5%
35.311
73.5%
16.2%
半製品
8.499
15.4%
7.982
16.6%
6.5%
完成品
32.530
59.1%
27.329
56.9%
19.0%
その他
1.498
2.7%
872
1.8%
71.8%
合計
55.086
100%
48.011
100%
14.7%

 

輸出は対前年比14.7% 増加し、全分野で伸びた。とくに顕著な伸びを示したのは工業製品の完成品であり、中でも携帯電話を中心とする通信機器(115.2%増)、航空機 (72.3%増)、乗用車(55.3%増)など比較的付加価値の高い商品の増加が目立つ。 中でも航空機は単独で 31億ドルの輸出を記録した。 地域別には東欧、中近東を除き平均的に伸びているものの、中でも経済が好調であった米国とALADI諸国向けの伸びが大き い。

一方、ブラジルの代表的輸出品目の一つであるコーヒー豆はコーヒー版OPEC機 構構築を狙うブラジル政府が世界の主要生産国に呼びかけ、国際カルテルを結んだ。しかし結果的にこれを守ったのはブラジルだけとなり、ベトナム、インドネ シアなどの新興生産国に市場を奪われるだけの結果となった。このため、 1999年は 22億あった輸出が2000年は 15.6億ドルまで 6.4億ドル(▲29%)の落ち込みとなった。その他の農産物も国際商品相場の低迷により、苦戦を強いられたものが多かった。

 

(単位:百万ドル)
主要地域・国別輸出(2000年1-12月)
 
2000年
1999年
増減率(%)
構成比率(%)
2000年
1999年
E.U.
14.784
13.736
7.6
26.8
28.6
ALADI
12.902
10.560
22.2
23.4
22.0
メルコスール
7.733
6.778
14.1
14.0
14.1
その他ALADI
5.169
3.783
36.6
9.4
7.9
米国
13.366
10.849
23.2
24.3
22.6
アジア
6.324
5.732
10.3
11.5
11.9
日本
2.472
2.193
12.8
4.5
4.6
東欧
972
1.175
▲17.3
1.8
2.4
アフリカ
1.347
1.336
0.8
2.4
2.8
中近東
1.338
1.496
▲10.6
2.4
3.1
その他地域
4.053
3.127
29.6
7.4
6.6
合計
55.086
48.011
14.7
100.0
100.0

 

輸入

(単位:百万ドル)
2000年の輸入構成(1‐12月)
 
2000年
1999年
増減率(%)
資本財
13.589
24.4%
13.555
27.5%
0.3
原料中間資材
28.521
51.1%
24.042
48.9%
18.6
ナフサ
1.859
3.3%
1.115
2.3%
66.7
消費財
7.305
13.1%
7.356
14.9%
▲0.7
非耐久財
3.931
7.0%
4.174
8.5%
▲5.8
耐久財
3.374
6.0%
3.182
6.5%
6.0
燃料、潤滑油
6.362
11.4%
4.257
8.6%
49.4
原油
3.191
5.7%
2.170
4.4%
47.1
関連製品
3.171
5.7%
2.087
4.2%
51.9
合計
55.777
100%
49.210
100%
13.3

 

輸入も全分野で拡大したが、原油相場の高騰に伴いとくに原油、燃料、潤滑油等いずれも前年対比約 50%増となった。原油は数量面では対前年比約▲16.9%減少しているものの、金額面では 1999年の 22億ドルに対し 2000年は 32億ドルと 47.1%もの高い伸びを示した。 これは平均単価が $119.2/t(1999年)だったものが 2000年には $211.0/tと 77%もの値上がりとなった結果である。またこれはブラジルの産業構造に負うものだが、国内経済および輸出が伸びるに伴い、いまだ輸入に大きく依存してい るそれらの原料・中間資材の輸入も大きく増える(対前年比 18.6%増)。 これらの理由により輸入は2000年通年で13.3%と前年に続き高い伸び率を示した。

(単位:百万ドル)
主要地域・国別輸入(2000年1-12月)
 
2000年
1999年
増減率(%)
構成比率(%)
2000年
1999年
E.U.
14.048
15.022
▲6.5
25.2
30.5
ALADI
11.660
9.460
23.3
20.9
19.2
メルコスール
7.796
6.721
16.0
14.0
13.7
その他ALADI
3.863
2.739
41.1
6.9
5.6
米国
13.002
11.880
9.5
23.3
24.1
アジア
8.593
6.477
32.3
15.4
13.2
日本
2.960
2.576
14.9
5.3
5.2
東欧
1.162
704
65.0
2.1
1.5
アフリカ
2.908
2.224
32.7
5.2
4.5
中近東
1.560
1.078
44.7
2.8
2.2
その他地域
2.856
2.365
20.8
5.1
4.8
合計
55.777
49.210
13.2
100
100

 

地域別輸入では ALADIが 23.3%増であるがこれは、原油及び、関連製品の価格上昇の結果である。 メルコスルからの輸入は 78億ドルに達し、この内の 68億ドルがアルゼンチンからであり原油(155.7%増)、トーモロコシ(149.3%増)、ナフサ(94.5%増)、貨物車両(18.7%増)などで ある。 “その他のALADI諸国”からは41.1%増であったが、ボリビアからの天然ガス輸入が高い伸び率(506%増)を示した。 また E.U からの輸入のみが落ち込んでいるが、これは Euro高に負うところが大きいとも思われる。

 


2001年の貿易収支予測

総括

2001年度の貿易収支は引き続き楽観を許さない。 その理由として先ず、主要輸出相手国の経済成長率が 2000年度対比軒並み低下し、輸出の伸びが不透明である。

とくに米国は輸出入とも20数パーセントを依存しており、景気減速がソフト・ランディング出来たとしても、対象が広範囲に及ぶだけにその影響は深刻である。

またメルコスール向け輸出も最大相手国であるアルゼンチンが長期かつ構造的不況に晒されており、同国の景気回復は予断を許さない。 一方、アジア諸国は 再び景気減速に転じており、これに伴い為替も下落している。 その結果、アジアの輸出競争力は高まりつつあり、相対的にブラジルの輸出競争力が弱まりつつ ある。

しかし、一方、原油価格は正常化しつつあり、量的にもペトロブラスの自給率も順調 に上がって来ている事から、昨年度のような突出した要因になる事はないと思われる。また米国あるいはアルゼンチンなど外的要因でブラジルの経済成長が影響 を受けた場合は、経済活動の低下に伴い原材料・中間材の輸入も同時に低下すると見られる。

ブラジル政府は$10億の黒字を予想しているが、民間金融機関では見方が分かれている。 収支トントンを挟み、農産物の収穫高、一次産品の国際相場、米 国・アルゼンチンなど主要貿易相手国の政治・経済動向及び国内景気などの要素が加わり、収支は ▲$10億~+$10億の範囲に留まると思われる。但しトレンドとしては引き続き輸出、輸入とも10%前後の伸びを示し、かつ双方の金額が大きく乖離する 事はないと思われる。

 
2000年度
 
2001年度
ブラジルの輸出依存比率
米国

5.2%

3.9%
24.3%
EU
3.6%
3.3%
26.8%

 

輸出

一次産品の中の農産物については余程の天候異変がない限り、大豆を中心にほとんどが昨年の収穫を上回る。ただし、国際相場は需要国である先進諸国の国内 景気に左右される面も多く予断を許さない。また、伝統的輸出商品の一つである鉄鉱石は、世界の粗鋼生産に比例するが、恐らく数量面では前年比微減、価格面 で微増。全体としては昨年並かと思われる。鉄鋼製品は製鉄所の高炉補修が集中する事から恐らく減少。その他の工業製品、とくに完成品の輸出比率は堅調に増 加して行くと思われるが、これも相手国の経済に大きく左右される。全体としては昨年同様10%前後の伸びを示し600億ドル前後に達するものと予想され る。

原油価格の動向が一番の決め手となろうが、国際相場は沈静化しつつあり、金額で昨年 を上回る事はないと思われる。原材料、中間財については国内景気が上向けばその分、輸入が増えるのは避けがたく、引き続き大幅な伸びを示すと思われる。し かし資本財については民営化後の設備更新も一段落し、大幅に伸びる事はないと思われる。輸入の増勢は避けがたいものの、輸出と輸入とが収斂する傾向にあり (添付-4参照)、2001年度の輸入は輸出同様10パーセント前後の伸びを示し、 600億ドルを超えるものと思われる。とくに穀物輸出が本格化する4月までは2000年度の輸入契約残の入着により、入超で推移するものと思われる。

 

予測機関
IPCA
GDP
SELIC(年末)
為替(年末)
貿易収支
ブラジル政府機関
4.0%
4.5%
実質金利で

$10億

 
BBV

4-5%

4-4.5%
14.0%
2.05
n.a.
Merrill Lynch
4.5%
3.7%
15.75%
2.05
n.a.
Banco Inter
         
American Express
4.3%
4.1%
14.5%
2.03

$9億

CitiBank
4.0%
4.0%
14.6%
2.0
▲$16.9億
東京三菱銀行
4.5%
3.5%
14.2%
2.05
$0億
住友銀行
4-5%
3.5-4%
13.5-14.5%%
1.9-2.0
$0-10億

 

 

主要品目別輸出実績(1月~12月)
(単位:百万ドル)
主要品目
輸出金額
 数量 増減率(%)

 数量 増減率(%)

 $/t平均単価 増減率(%)

2000年
1999年
飛行機
3.054
1.772
72.35
55.88
10.59
鉄鉱石
3.048
2.746
11.00
12.23
▲1.09
大豆
2.188
1.593
37.35
29.16
6.32
乗用者
1.768
1.139
55.22
46.56
5.97
大豆粕
1.651
1.504
9.77
▲10.12
22.13
送受信用機器
1.635
760
115.13
45.82
47.59
1.617
1.342
20.49
19.64
0.70
パルプ
1.601
1.243
28.80
▲3.17
33.06
コーヒー(豆)
1.559
2.230
▲30.09
▲23.97
▲8.05
金属(半製品)
1.360
1.096
24.09
▲2.59
27.41
自動車用部品
1.206
1.229
▲1.87
1.26
▲3.14
自動車用エンジン
1.064
1.043
2.01
2.70
▲0.65
オレンジ ジュース
1.019
1.235
▲17.49
4.82
▲21.27
アルミ
946
863
9.62
▲6.54
17.21
製鉄製品
859
796
7.91
▲12.30
23.01
タバコ(葉)
813
884
▲8.03
0.15
▲8.14
鶏肉
806
875
▲7.89
17.67
▲21.78
砂糖(粗)
761
1.162
▲34.51
▲44.50
18.04
革/皮革製品
756
595
27.06
1.04
25.87
ポンプ、コンプレッサー
725
679
6.77
13.26
▲5.71
貨物用車両
696
626
11.18
20.14
▲7.45
タイヤ
525
511
2.74
10.23
▲6.87
木材
520
497
4.63
14.14
▲8.48
紙製品
518
537
▲3.54
▲17.74
17.27
その他
24.391
21.055
15.84
n.a.
n.a.
総合計
55.086
48.011
14.74
   

 

主要品目別輸入実績(1月~12月)
(単位:百万ドル)
主要品目
輸入額
 数量 増減率(%)

 $/t平均単価 増減率(%)

2000年
1999年
増減率(%)
原油
3.191
2.169
47.12
34.28
21.60
送受信用機器
1.941
1.759
10.35
▲4.21
17.34
ナフサ
1.858
1.116
66.49
40.55
24.44
半導体電子部品
1.707
1.060
61.04
21.36
8.46
自動車用部品
1.580
1.423
11.03
17.39
▲7.68
通信用機器
1.349
866
55.77
69.94
34.48
燃料
1.271
692
83.67
▲9.12
59.24
人/獣用医薬品
1.253
1.311
▲4.42
16.51
0.20
乗用者(含むCKD)
1.211
1.214
▲0.25
21.88
0.19
電算処理機器
1.036
826
25.42
24.47
31.12
精密化学品
935
1.003
▲6.78
71.54
▲25.46
内燃エンジン/部品
897
973
▲7.81
▲15.17
▲32.51
小麦
865
832
3.97
15.80
9.71
検索用機器・器具
855
765
11.76
15.80
6.27
電気モーター・発電機
757
960
▲21.15
▲11.95
7.06
ターボ エンジン、部品
736
596
23.49
▲5.07
n.a.
飛行機、ヘリ用部品
634
521
21.69
41.31
▲5.58
ベアリング、歯車
621
502
23.71
36.71
▲11.12
肥料
580
433
33.95
▲10.26
0.61
化学品
550
557
▲1.26
▲11.93
41.75
ポンプ、コンプレッサー用部品
525
467
12.42
31.11
▲19.29
石炭
521
529
▲1.51
90.00
▲2.99
その他
30.910
28.698
7.71
n.a.
n.a.
合計
55.783
49.272
13.21
   

 

 

 

2001年上期業種別部会長懇談会-電気電子部会

  • カラーTV販売530万台
  • 部品メーカー大躍進
  • 通信関連メーカー、空前の受注
  • デジタル複写機が急進展

 

●家電製品 為替、金利安定で需用増

司会:ありがとうございます。 続きまして、電気電子部会の江口部会長お願いいたします。

江口:それでは電気電子部会の方から、2000年度回顧と、2001年展望についてご報告いたします。わたしどもの部会、4つの分会からなっており、そ れぞれの分会からの報告をさせて頂きますが、その前に、皆様方この報告をききますと、いろいろ好調なのですが、電気電子部会も非常に2000年度は、好調 に推移しまして、「回顧と展望」をまとめて頂きましたが、98年・99年の頃は非常に悪い業績が続いておりましたので、各社、綿密な分析と次の年の対策を 報告されたのですが、好調な年は、殆ど反省はなく、すべて良かったということですので、今回の報告は簡単になっています。(笑い)

まず、家電と耐久消費財の分会ですが、2000年に入り、為替の安定、それから金利の引き下げがあり、需要が非常に大きく伸びて参りまして、カラーテレビは99年比31%増え530万台、オーディオが60%増えて300万台。

ただビデオデッキが99年と比べて4%減って110万台となったのですが、新しい製品のDVD、これが約20万台増えており、合わせますと前年度比では増えているという状況になっております。

一方、商品も品揃えを豊富にしまして、売上が増えたとか,あるいは99年度非常に苦境の中から脱しきれず、メーカーの中で自然淘汰がおきて、その分だ け、シェア-が伸びた。さらには2000年度前半、レアル高で推移したので、非常に業績が好調であったということで、第一分会の各社の売上平均、99年の 約34%増となっております。

2001年の展望ですが、2000年度、給料があまり上がっていない事から、個人消費はまだまだ弱いと見 られていますが、2001年も堅調に推移するであろうという予測をしており、2001年度は2000年比更に20%伸びて、過去の最も好調であった時代に 近づくのではないかと予測しております。最近の消費者の動向は、インターネットが非常に進歩して、先進国での新製品、あるいはその価格を皆さんよく知って おり、このブラジルで少し古くなった製品を高く売ろうとしても、もう売れなくなってしまったという事で、インターネットの弊害や利点がここにも表れていま す。もうひとつは、このブラジルで家電製品を売る場合、EXTRAやCarrefourといった雑貨大手が売っておりまして、日本のように、専門店で専門 知識を得た人が、消費者に詳しく紹介をする場がありませんので、消費者にとってなかなか理解がしにくい商品は、ここでは売れにくいという現象が起きている ようです。

 

●政府の部品産業育成策期待

続きまして部品分会の方から報告します。 2000年の回顧ですが、オーディオ、家電、自動車、通信、いずれも好調で非常に大きく伸び、99年比約39% 売上が伸びております。一般に部品メーカーは、ブラジルで現地生産するよりも、輸入するほうが圧倒的に多いという事が、貿易収支悪化の一因として政府に取 り上げられました。この事でブラジル政府に部品産業の育成に目をつけて頂ければ、部品産業にとってもこれから明るい展望が開けるのではないかという事に なっておりまして、ブラジル政府の部品産業に対する考え方を今、注目しております。

2001年の展望ですが、引き続き、オーディオ、ビ デオ、家電、自動車、通信、いずれも2000年比約19%ほど伸びると予測しております。先ほど、部品産業への政策のやり方が変って、もっと部品産業寄り の制度が取り入れられると、更に伸びるのではないかと予測しております。

続きまして、通信、電力、産業の第三分会の方から報告いたしま す。2000年回顧ですが、通信関連、非常に大きな伸びを示しました。これはブラジルの電話会社が、2001年末までに民営化された電話網整備の目標達成 の最後の年となっており、各電話会社とも多少の焦りがあり、予想以上の投資となっております。何社かは空前の受注を抱え、設備の増強をしたり、同業他社を 買収したりしておりますが、一方では、部品不足があったりして生産が止まり、思うように売上が伸ばせなかったところもありました。

通信関係のプロバイダー。こちらのほうも非常に大きな伸びをもっておりますが、ただ、電力関係は少し低迷したという事です。第三分会の各社の売上平均が2000年比で約28%増となっております。

2001年の展望は、先ほど申し上げましたように、電話会社の民営化整備が最後の年になりますので、この上期中に各社とも目標を達成するという風に予測 されており、年後半から投資が減ってくるのではないかとの恐れがありますが、上期は下期からの前倒しがあって、更に大きな伸びが期待できるとしており、第 三分会の各社の売上は2000年比更に20%伸びると予測しております。

 

●ゼロックス不調、 日本勢好調の複写機

最後に精密事務機、輸入販売の第四分会の2000年の回顧。主としてこの分野は事務機とミシンなんですが、非常に絶好調に推移したという事です。とくに 複写機が、皆さんご存知のように、ゼロックス本社が少しおかしくなったという事で、これまでゼロックス社の方針でブラジルで古い機械を安く売ってきたの が、ここへきて、複写機の普及に伴い、この古い機械が売れなくなったという事で、日本勢のデジタル複写機の売上が非常に伸びております。ただ、これまで複 写機というのは事務機だったのですが、デジタル複写機になりますと、今度はパソコンのネットワークにつながれてパソコンの端末と言う位置付けになり、競争 相手がゼロックスからプリンターの強豪でありますヒューレットパッカードに変わりつつあります。

この第四分会の各社売上平均が、 2000年比約14%増となっております。 2001年の展望ですが、デジタル複写機、あるいはミシンもコンピュータ化され商品説明が非常に難しく、売りにくい商品になっておりますが、ここへきて、 デジタル化という波に乗りまして、2001年も堅調に伸びる、2000年比で約19%伸びるであろうと予測されております。

最後に足元 のブラジル・カントリーリスクに対し影響を与える外的要因につき簡単に述べます。これらの外的要因が非常に敏感に、レアル安に動いてしまいます。各社体質 強化でいろいろ努力している事が、「あっ」という間に吹き飛んでしまいます。これらの要因が企業の足を引っ張る事になるので、「ブラジルの体質強化が今後 望まれる」というのが結論でした。以上でございます。

2001年上期業種別部会長懇談会-電気電子部会(レポート)

主題:「ブラジル経済2000年の 回顧と2001年の展望」

副題:足許のブラジル・カントリー リスクに対し影響を与える 外的要因」

 

電気電子部会は次ぎの4つの分会から構成されています。

  • 第一分会「家電及び耐久消費財」(パナソニック・ド・ブラジル 喜多川雅彦)
  • 第二分会「部品」(東光 ・ド・ブラジル 谷口真平)
  • 第三分会「通信・電力・産業」 (Industrias Hitachi 天羽 義一)
  • 第四分会「精密・事務機器・輸入販売」(ミノルタ・コピアドーラ・ド・アマゾーナス 北野孝明)。 ()内は分会長

 

本レポートは各分会の「回顧と展望」及び副題について報告します。

I.第一分会「家電及び耐久消費財」

2000年の回顧

2000年に入り為替の安定、金利の引き下げなど経済が安定に推移すると共に需要が大きく伸びた。カラーTVは99年比31%増の528万台、オーデイ オは60%増の約300万台と市場が回復した。ビデオデッキは99年比4%減の110万台と減少したが、DVDが20万台と伸びた。

市場回復傾向の中でTVの品揃えを増やした事が好評であった。また、オーデイオ商品も順調な伸びを示 した。

さらに、メーカーの自然淘汰現象が見られたが競争は依然きびしい。また、2000年前半はレアル高もあり、業績を大きく伸ばせた。 第一分会の各社の売り上げは99年比34%の増となった。

 

2001年の展望

2001年も堅調に推移すると予測している。しかし、給料が上がっていない事もあり、個人消費はまだ弱いと見ている。

最近はインターネットで先進国の新製品や価格を知っており、旧製品で高い商品は売れなくなった。新しく安い商品でなければ買ってくれない時代がきた。

ブラジルでは、エストラやカレフールなどの雑貨大手が強く、専門店が弱いので、販売に説明を要する商品が売りにくい市場である。

2001年はカラーTV、オーデイオ共に10%の伸びが期待でき、過去の販売ピークに戻るのではないかと予想している。

第一分会では、2001年の売上は2000年比で約20%の増を予測している。

 

II.第二分会「部品」

2000年の回顧

AV・家電・自動車の回復、通信の好調持続に支えられ、非常に活況のあった年であった。

現地生産よりも輸入品が多く、貿易収支悪化の一因とも言われている。逆にこの事でブラジル政府が部品産業の育成に目を向け始めるきっかけになり、今後の展開に注目している。

第二分会の販売実績は99年比で平均39%増となった。

 

2001年の展望

政治・経済の安定が続けば、AV・家電・自動車や通信も依然好調に伸びて行くので、部品業界にとっても好調が持続すると予測している。

部品産業への政府の取り組みが行われ、制度改善があればさらに業績を伸ばせると考えている。いずれにしても需要は順調に伸びるという見方で一致している。

第二分会の2001年の平均売上は2000年比19%増と予測している。

 

III.第三分会「通信・電力・産業」

2000年の回顧

通信関連も非常に大きい伸びとなった。電話会社は2001年末までに、それぞれの電話網整備の目標値を達成しなければならず、多少のあせりもあり予想以 上の投資になった。空前の受注を抱え、設備の増強、同業他社の買収などにより生産増を図った。しかし、部品不足で生産が止まり、思うように売上が伸ばせな かった企業もあった。 電力関係では、発電、送電は低迷した。プロバイダーなど通信サービスも大きく伸びた。

第三分会の売上は2000年比で28%増となった。。

 

2001年の展望

通信関連では、電話会社が年前半で民営化の目標を達成し、他地域に進出しようと、年間計画を前倒しして発注が行われているので、年後半は投資が減ってくると予測している。上期はさらに大きな伸びが期待できるが、下期は減少傾向に入ると予測している。

第三分会の2001年売上は2000年比20%増と予測している。

 

IV.第四分会「精密・事務機・輸入販売」

2000年の回顧

事務機器も大きく伸びた。ミシンも絶好調に推移した年であった。

複写機はこれまでXEROXが古い機械を安く売ってきたが、ここにきてXEROX本社がおかしくなった事とデジタル複写機の良さが認められてブラジルで も浸透し始めた。デジタル複写機は複写機というよりもPCのネットワークにつながれて利用されるので、プリンターと競合するようになった。競争相手は XEROXからHP社に移っている。  第四分会の各社の売上は昨年比で平均14%増となっている。

 

2001年の展望

デジタル複写機やミシンもコンピュータ化され、商品説明が難しくなり、売りにくい商品になっている。高級ミシンは輸入通関に時間がかかり、また税率も高く他国に比べ輸入しにくい商品である。

しかし、デジタル化の波に乗り、2001年も堅調に延びると予測している。

2001年の売上は2000年比で平均19%増と予測している

 

V.「足許のブラジル・カントリー・リスクに対して影響を与える外的要因」

上記について、アンケートの中でコメントを頂いた。  要点を下記に記す。 アメリカのソフトランディング、アルゼンチン情勢や原油価格の動きがいずれもブラジルの通貨や株価に大きく影響する。これは依然と してブラジルの経済基盤が脆弱であると見られている事による、で意見が一致した。 これらの外的要因がとくに為替に敏感に反応し、レアル安に動く事が各企 業の業績の足を引っ張る事になっている。ブラジルの体質強化が望まれる。

以上

2001年上期業種別部会長懇談会-繊維部会

  • FTAA(米州自由貿易圏)
    a)発足で米市場がのぞめる
    b)化合繊維独占供給に断
  • 課題は原綿の品質改良
  • 為替面でも伯繊維業界有利
  • 米景気悪化すれば東南アに攻められる

 

●予想を上回る景気回復示した年

司会: 非常に景気のいい業界という事で、ありがとうございます。続きまして繊維部会の名取部会長お願い致します。

名取:繊維部会には11人の委員がおりまして、綿糸とか生糸、あるいは布と各分野で詳しいレポートがございますが、これは後で事務局に提出いたします。 今日は大掴みなお話の中で、去年から今年あるいは来年、近年の動き、外的要因が与えるリスクに、それに伴う、しなければならない事、そういう事を申し上げ たいと思います。

まず、ブラジルの繊維産業ですが、これは日本と異なりまして、日本は10大紡を中心とした原糸・紡績糸の供給メー カー、戦後は東レ、帝人など化合繊の巨大メーカーが頂点となって、その下にそれを縫製する、あるいは仕上げる、製品につくる、そういうピラミッド型の構成 になっておりますが、このブラジルは繊維業界全体を大きく、サンチスタ、ビクーニャのような一貫メーカー、原綿糸から製品まで一貫につくるメーカーと我々 紡績産業のような紡績・織布・マリヤリア、網ですね、それから仕上げ製品、そういう分業体制の、大きく市場を分けておりまして、およそ半分、折半してい る。その半分の分業体制の中の市販糸市場、ここに日系紡はその約25%を占めている、こういう位置付けでご理解頂いたらいいと思います。

このブラジルの繊維産業全体が、私は去年も申し上げたと思いますが、4つの理由によって、今後世界の、いま世界の繊維の3大中心地は、中国と東南アジ ア、そしてインド、トルコ、パキスタンという中東ですが、これに加えてメキシコあるいはブラジルを中心としたこの南米がですね、四大供給市場のひとつに発 展する可能性があるとそういう風に私は思っております。

上記の四つの原因というのは、一つは堅調な内需です。ブラジルの人口は1億 6000万人ですが、2020年には2億3000万人になると予測されています。紡績業界による需要予測では1997年を100として、1997年をとる のは、後から申し上げますが、これは色々な意味でこの製造業におけるエポックの年だったのですが、これを100といたしますと、2005年にはこれは色々 な分野別に分れるのですが、我々の原糸供給市場においては39%、それから、それを布地にしたり、ニットに織るその業界では41%、それを製品につくるコ ンフェクソンの業界では38%。およそ40%増と、つまり年々4%,5%の堅実な増加が見込まれている訳です。

これがメルコスール及び中米、更に2005年に発足が予定されておりますALCA(FTAA)、これの中に入りますと、比較相対的に東南アジアよりも有利になりますので、巨大なアメリカ市場も視野に入ってくる。


●2005年に110万トン生産 綿花輸出国になる可能性大

そういう意味でブラジルの繊維産業は需要の面でまず有望である。第二に原綿の動きです。この原綿が近年、非常に顕著な動きをしております。かつてブラジ ルは、80年代、大体、年間国内で消費する80万トンあるいは90万トンの綿花を生産しておりましたが、90年代に入り、国内の諸産業が発達したせいだと 思いますが、その時点では手摘みによっていた訳です。手摘みの労働者が不足しあるいは賃金が上がって、手摘みを主体としているサンパウロ、パラナ州の綿作 が衰退して行きまして、その底が1997年です。これが実に年間30万トンまで落ちました。

ところが、パラナ、サンパウロでいわゆる大 学を修めた学士の経営者が、お金を持って、マットグロッソ、南マットグロッソ、バイアの方へ進出いたしまして、巨大なプランテーションを展開しておりま す。これはかつては土地が痩せていて天候が乾燥しすぎているために、適していなかったのですが、かえってそれが機械化に適しており、1997年を底に一昨 年が52万トン、昨年が70万トン、そして今年の見込みは82万6000トンと、年々25%から30%の伸びを示しておりまして、いずれ2005年には 110万トンになり、これまで綿の輸入国だったのが輸出国になるという動きをしております。

問題点はあり、また後で申し上げますが、国 内原綿の増加というのは非常に、繊維産業にとっては有利なファクターです。先ほど申し上げました世界の3大産地、中国もインド、パキスタン、トルコも自国 の中に綿花を持っているために、例えば日本の繊維産業はパキスタンの綿糸に非常に苦戦を強いられた記憶がありますが、これはブラジルの将来にとって非常に よい。

それから東南アジアは、東レ・帝人などが非常に優秀な工場を向こうに進出させまして、原綿と原料を折半している化合繊の分野で非 常に有利で、東南アジアが強いのですが、綿というのは皆さん戦後、東レテトロンとか帝人テトロンとかで化合繊に追いまくられたという風にご記憶かと思いま すが、昭和40年代後半をピークに50%の線を前後して、そこから完全に化合繊と役割分担をしております。つまり今後やはり綿糸は伸びる、更に50年ぐら いの長いスパンで見ますと石油が枯渇して参りますので、原綿供給というのは非常に大切なファクター、そのファクターというのが、近年ブラジルにおいて非常 に力強い動きをしているのは、特筆すべき事だと思います。

なお、機械化により、生産性も例えばマットグロッソなどは、植付け面積は 60% 伸び、生産性は150%伸びたと、そういう動きをしております。第三の要因は為替と通商政策の問題。日本の繊維産業は、かつての繊維王国から現在は、その 5分の一から6分の一になったと言って過言でないと思います。これは何が原因かといろいろいわれておりますが、産業が決してさぼっていた訳でなくて、やは り一にかかって、為替レート360円が110円になった。ハンディ10くらいの人が集まってゴルフをする時に、あなたはご兄弟が皆シングルだから、あなた も10でやりなさい、とさせられているようなもので、これはもう勝負にならない。逆にブラジルの為替は今後ドルに対してR$1.9が1に逆戻りするという のは、相当先でないと無いと思います。それから通商政策も非常に機敏に対応してくれている。そういう面で、繊維産業には有利な面があります。繊維産業とう いうのは、昔からある産業でして、為替と政策によって左右されます。


●東京についで世界第5の ファッション発信基地

第四はファッションです。現在このモルンビー、私の工場のある目の前に、モルンビーショッピングというのがあって、そこで発信されるファッションが、 ニューヨーク、ミラノ、パリ、東京に次いで、世界第5のファッション発信基地という風に、近頃もてはやされており、ラテン民族特有の豊かな色彩感覚なり、 あるいは斬新なアイディア、更にこれは余談めいた話かもしれませんが、本当ににびっくりするようなモデルが沢山います。(笑い)

そうい う事でいろんな意味で繊維産業というのは有望であると思っています。輸入の浸透率を申し上げますと、輸入は去年一年間で、輸出の方が数量で 28%、金額で26%伸びたのですが、輸入が数量で36%伸び、金額で16%伸びた。これはどういう事かというと、安い品物が沢山入って来たということに なるのですが、輸出・輸入ともに伸びております。しかし、国内産業における輸入浸透率、先ほどの為替あるいは通商政策の関連もありまして、まだ輸入浸透率 は現在において10%程度、2005年においても15から20%程度に収まるものと見られています。

欠点がありまして、ネックは入口と 出口にあります。まず、入口の原料の段階なのですが、原綿はそういう形で非常に伸びているのですが、品質がイマひとつ。これは今後の課題です。これは政府 と業界の努力が今後必要だと思います。もうひとつは化合繊。先ほど東南アジアの化合繊が非常にいいと言いましたけど、ブラジルはロージアという会社が一社 独占でありまして、輸入最低価格を設けたり、非常に我々はその点で苦労している。で、品質でクレームをつけても、日本だったら担当者が青くなってすっ飛ん でくるような事を、鷹揚に構えて、「おまえらが悪いと、つくり方が悪い」というような事で、やはり大変残念なのですが、1970年代に東レ、帝人が進出し ようとして挫折した。あるいは仄聞ですが、私の会社東洋紡もロージアが一緒にやろうと言った時に、できなかった。そういう面がありまして、これは、これか ら化合繊が進出するのは大変ですから、ALCA(FTAA)が出来上がって、まだメキシコとかアメリカに化合繊のいい供給があります。それを期待したいと 思います。

出口の事はですね、繊維というのは、アカバメントと、この仕上げが非常に大事でして、詳しくは申し上げられる時間がなくて残 念なのですが、1990年のコーロルの全面的な輸入開放政策と1.2ぐらいに保ってきたレアル高のために、仕上げの所の業者がたくさんつぶれてしまったの ですね。これは非常に大きな痛手でして、今後その辺の再建が繊維業界にとって重要かと思います。

カントリーリスクで言えば、やはり我々 にとって1番大きいのはアメリカの景気です。アメリカが悪くなると、それまでアメリカに行っていた東南アジアがこっちに攻めてくる。それからアメリカに輸 出していた中南米がヘタってきて、その中南米に供給している我々がちょっとそこに輸出しにくくなる。こういう事がありまして、これもある程度、ALCAの 発足の待たれる所であります。