2001年上期業種別部会長懇談会-繊維部会(レポート)

1-概要(懇談会繊維部会から の発言参照)

2-業界別動向

綿花

99/00年の国内原綿生産量は70万トン、前年比34.61%増。新興綿花生産州マットグロッソの33%の増反による336千トン生産(前年比50% 増)が大きく寄与した。伝統的生産5州は計271千トン、バイア及び北東州は93千トン。各地の適切な種子導入等が増産要因。しかし、マットグロッソ州は 旧式収穫機多く夾雑物除去不充分で上級品が少ない。

00/01シーズンは、前期好成績に触発され、伝統的生産5州で5―10%、マットグソッソ州で30―40%の増反予想。CONABは00/01年度862千トンの生産予想(うちマットグロッソ州53%)。しかし、輸入綿必要量20万トン。

国内綿花相場は、99年末のポンドあたりR$1.00前後のベースが3月まで続き、4月に新綿出回り、R$0.90割れとなり、5、6月以降、各州のオ フアー増から横這い。7月に政府のPEP(原綿流通促進プログラム。買い手に補助金付与)開始により、相場上向き、12月末にR$1.00に、上級品は品 不足からR$1.05に上昇した。 今年は例年の売り圧力による11月までの相場低迷、以後上昇パダ-ンをそれ、国際マーケット・スライド移行予想。

一方、国際相場は、99年末を底に昨年ほぼ一貫して上昇、ニューヨーク定期はポンドあたり57.86セントで明け、12月に62.28セントに達した。 注目すべきは11月にINDEX A(世界綿花の実取引の指標)が従来とは逆転現象を起こし、ニューヨーク定期を上回ったこと。今年は米国経済後退懸念は あるものの、価格の上昇傾向は続くと思われる。

 

国内綿糸

2000 年は、冬物の仕掛け早く、1―3月はカード、コーマ糸共に相場は堅調に推移、裏毛用太番・ポリエステル綿混糸が品薄。4―6月は暖冬で小売は盛り上がりに 欠け、値下げ圧力あるも何とか同値でしのぐ。 7月中旬の寒波到来で店頭活気づき、裏毛やP/Aの冬物商材が10月まで動く。夏物の糸手当ては例年の動きに反し、値差のためコーマ糸にぶく、カード糸順 調に動く。こうした流れの中、日系紡各社は1―3月、7―9月にそれぞれ2-3%値上げを実施、市場値下げ局面でも踏ん張る。年間通じ、インフレ分程度値 上げに成功、まずまずのシーズンであったが、アジアからの合繊フイラメント・合繊織物輸入が急増、市場侵食の懸念高まる。

2001年は、フアンダメンタル良好だが、外的要因の懸念以外に原綿価格アップが避けられそうにない、原綿輸出成約及び先物契約増、農家の品質改良がなお ざりにされている中、メーカーは電力・労務費アップ吸収、更なるコストダウンと売値への転嫁、安値合成商品との競合が課題。マーケット・リードのためには 品質向上と対応力にますます磨きをかけて行かねばならない。

太番手  ― 原料・労務コストの売値転嫁はできなかったが、原綿価格の安定的水準推移でまあまあの年だった。トピックは新工場誕生によるOE糸供給量増大。 新工場:Tecmasa, Cifitex(Maranhao州),Reprotextil(Pernambuco州)Algoleste(Parana州),Santa Margarida(Minas Gerais州 )

● ニット関係の冬物用太番手は前期末在庫薄で11月に取引開始。輸入極少。冬物使用期(4月まで)は好市況継続予想。ニット工業は冬に期待し原料手当て模様。価格面は、マクロ経済好転とは裏腹に消費者購買力低下で大きな変化見込みなし。

● 織布関係 ― 販売良好なるもコストアップを売値に転嫁できず。ジーンズ用・工業用・縫製用織布も堅調に推移。輸出は亜國向け船積み延期を除き満足な状況。昨年第4四半期に引き続く好調期待。平織り布、工業用布(自動車業界好調に乗って)は前途楽観的。

綿糸輸出  ―  昨年1―11月実績は16,247t、US$45,689千で、99年1年間の輸出量を上回った。しかし、上半期までは米、亜、智、コロンビアを中心に 各社輸出成約を積み増したが、伯糸品質トラブルや印、パの安値攻勢で7月以降、環境悪化。前半の貯金がものを言い、昨対比輸出量はプラスなるも問題を内在 したままの越年となった。国内市況不透明下、伯の紡績は輸出に注力したいところだが、米経済減速、亜経済悪化など弱材料ばかりが目立つ。しかしながら、こ の3年間に伯糸の米・ EU・中南米市場定着、本年も昨年並み輸出期待。

 

化合繊

化 合繊(短)は昨年、繊維業界の総論的順調さとは異なり、コストアップに苦しんだ(ドルベース3%のポリエステル綿値上げが切り下げを加味したレアルでは 12%に近い値上げになった)。レーヨン綿は原料値上げを理由に20%強の値上げ。今年はさらに10%値上げ予想。原料は完全な売り手市場。販売価格転嫁 はままならず、一方で輸入糸の影響で値下げ競争に直面した時期もあった。

2001年はレーヨン綿、ポリ綿は値上げあるのみ。インフレ予想6%で同率切り下げが常識のところからレアル貨アップは必至。業界単独値上げは不可能。今年もしんどい年になりそうである。

 

薄地綿織物(グレー織物の部)

業界は当社(TSUZUKI)を筆頭にUnitextil、Deocleciano、Ribeiro Chaves、Coelho社と続き、この数年 間、需要の多様化は進むがマーケット拡大兆候はない。昨年はVicunha等の紡織一貫工場がプリント地の販売不振からグレーで國内外マーケットを荒らし まわった。上期低迷、夏物が始まる下期に活性化、99年並みの荷動きとなった。

当社 は輸出を優先、メルコスール向けは数量面で99年対比25.7%増。対米は若干ダウン、対EUはユーロ下落のため完全にストップ。 昨年のクリスマス商戦は最後に盛り上がり、売れ残り懸念で仕入れを手控えた衣料店は在庫ゼロで越年。まだ夏物を手がける縫製業者は1、2月に昨年同期以上 の取引予想。

国内では光熱費、労務費、原綿コストアップカバーのため8%程度の値上げ計画。 輸出は対亜を中心に20%増を目指す。ユーロ持ちなおしで対EU輸出増見込み。国内はガソリン値下げ報道、低インフレ、金利引下げ等が好材料。

 

薄地織物

1. 活況のニットに比べると多少鈍かったが、年初荷動きは一応順調。冬物は中だるみに心配したが、終盤で寒波到来、店頭在庫一掃。夏物は立ちあがり緩慢、シャ ツ・メーカー製品在庫増、卸屋の注文キャンセル増あるも、年末に急速に回復、最良のクリスマスとなり、メーカー在庫も一掃できた。通年での評価は、縫製業 界は昨年よりも良好、卸業界マイナス、織物メーカーは昨年並みあるいは若干のマイナス。価格的には、T/C混布は年初5-8%値上げ、綿100パはホボ横 這い。後半、綿厚地織物不振で在庫増による値下げに引きずられて一部で値引き実施。

 

2. 昨年の年末商戦好調から今年はじめは縫製メーカー、店頭の在庫補充に期待。昨年、耐久消費財は大きく伸びたが非耐久消費財の伸びはマイナス。その分、今年 は衣料、の伸びに期待。他方、電力・ガス・重油、労務費、染料代、原糸値上がりは計8―10%。そのコストの売値転嫁が今年の課題。昨年再び顕著化した布 地輸入増(対前年比量で2.5倍、単価で4割安)も問題。

 

厚地織物

1.昨年は1―3月好調なるも冬の到来遅く、冬物商戦盛り上がりに欠け下期まで不調原因となる。また、下記原因で厚地織物は大幅減産に追い込まれた。

1) 為替安定で織物製品輸入増

2)顧客ニーズ高度化に厚糸、染色整理の追従困難

3)輸入品が価格面で有利

4)背広需要減退

5)モード主流がニット。ニット増加分織物が食われる。

素材別概況

・ウール100パ、ウール混    カリベー1社のみ健闘

・リネン及びラミー混  流行はずれ

・ビスコース  同

・ポリエステル 100パ  婦人ものまずまず、男子もの不 調

・テンセル モダル  薄地好評 厚地いま一つ

・綿 - 最大手のサンチスタ、 レノウ大苦戦

2.自社ブランドを持つ大手小売店の製品輸入、あるいは生地買い縫製下請け方式に進み、流通ルートが大きく変化、ブラジルも先進国同様の道を歩んでおり、追随できないところは生き残れない。

 

1.ブ ラジル製糸の2000年は生糸・撚糸輸出数量(推定)1,496t(対前年-14%)、輸出額(推定)4,660万ドル(対前年比-1%)。世界的な異常 気象(低温、干ばつ、高温、多湿、集中豪雨)並びに微粒子病(蚕の病気)により原料繭が減少、輸出単価がアップして金額的に前年度とホボ同額を確保。

2.2001 年度は生産の7割輸出先である日本の市況改善いかんにかかる。日本では昨年呉服関係の倒産が多発、なかでも5月の「丸勝」、10月の「嶋河」といった大型 倒産の影響で信用不安がまだ払拭できない中、正月早々に西陣の機屋「2陣」倒産のニュースで始まった。 生糸相場も下記通り大幅に下落、 消費回復が望まれるところ。

他方、世界生糸生産の7割を占める中国が繭不足、同国内需要増(製品や生地輸出含め)、欧州市場良好で国際価格の一直線の下げでないことは救いだが、今年も不透明状況継続予想。

 

羊毛

 
1月
2月
3月
4月
5月
00/1/10
4.065
4.147
4.119
4.089
4.056
01/1/10
2.770
2.803
2.937
2.964
2.946

 

1) 00/01クリスマス前シーズン(7―12月)の豪州羊毛市況

a) 相場は底を打ち、回復基調の市況展開、今後当分は上昇基調

  • 今季前半の指標値の平均715C前期前半比27%アップ。
  • 豪州ドル最近の最安値(15%下落)も影響
  • 最大買い付け先の中国が積極的買い付け
  • 持ち越し在庫減少、需給バランス大幅改善
  • 18 mic 以下の細番は40-50%高騰

2) 00/01クリスマス後シーズン(1―1~6月1日)の豪州羊毛

  • 長期相場低迷で産毛量低水準、需給バランス改善
  • 中国の新規I/L発給
  • 西欧需要は旺盛、日本、韓国、台湾は元気なし。 羊毛相場は上昇するが、末端製品価格上がらず、川中部門は依然苦戦予想。

C)ブラジル・ウールの動き

産毛量の推移

99/00
14,000t
00/01
13,000t
01/02
13,000t

価格の推移(Merino G’y/kg)

Jan.00
Jun.00
Jan.01
1.50
1.80
1.50

3) ブラジル国内ウール混紡糸の概況 2000年の純毛糸売上は前年比横這い、混紡糸3割アップ。ウール混紡糸は売上の2―3%と絶対量少ない。ブラジルにおけるウール需要はオフイス、航空機のイス張り用販売程度。最近陸・海・空軍の訓練用にまとまった注文あり。

 

2001年上期業種別部会長懇談会-食品部会

  • 大手量販店間M&Aでコストアップ
  • 狂牛病騒動でトクしたブロイラー
  • 中国大量買付け特需の大豆
  • 輸出124万T.で新記録のオレンジ
  • ブラジル人の間で“日本酒ブーム”
  • 新製品投入で伸びた豆乳
  • 新製品投入が鍵の調味料

 

●M&A目立った年 業績は年央から回復

司会: ありがとうございました。つづきまして食品部会の上原部会長お願いします。

上原: 食品部会は繊維部会の様な艶っぽい話題はありませんけども、発表させて頂きます。皆様方の業界に遅れること半年以上、昨年の年央からやっと回復 期に入ったと、このように考えております。その中でもやはり業界における再編、これも継続しており、昨年度はアメリカのベストフード社がアリスコを買収し たり、ダノーネがパウリスタを買収したと、こういった大型買収が目立ちました。

それから食品業界共通の問題点ですけど、大手量販店間の吸収合併の流れが全然止まりませんで、私達メーカにとってコストアップ要因になっていると、こういうことであります。

食品部会、まず農畜産、第二番目に外食産業、第三番目に加工食品、この順序で説明させて頂きます。農産畜産、その中のブロイラー、2000年度の国内生 産量は590万トン、8%の増加になりました。増産要因としては、開発が進んでおります北部での生産増、それから狂牛病騒動で欧州向け輸出が増加したとい うことであります。2001年も引き続き好調が予想されており、600万トンの大台乗せが確実と言われております。

次に大豆は、 2000年の生産、中国からの大量買い付けがあったという事、大豆カスの需要増がありまして3300万トン、記録的な生産になった。 2001年も、中国の買い付けが継続するということから、3500万トンから3600万トンとこういった拡大基調が維持されると見ております。

次にオレンジ。昨年度の生産量は120万トンで、前年から持ち越した在庫が35万から40万トンありましたので、輸出量は124万トンと過去20年間で 新記録になった。ただし、一方では価格の下落が深刻になってきて、12月にはトンあたり750ドル、これは4月にくらべて4割以上の安値になった。今年度 は若干の減産が予想されていますけども、2月に底を打って、5月頃までに一年前の1300ドルぐらいに回復してほしいという願いがあるようです。

それから、砂糖生産。2000年度は1550万トン、20%のダウンになりました。輸出も504万トン、60%もの大幅な減少となりました。一方、国内の供給不足感から価格が急騰、それが輸出意欲を削いで、結果として輸出減を更に加速させると、こういう事です。

 

●効果薄の“コーヒー版OPEC”

コーヒーは、7月にブラジルでの降霜被害があって、価格は一旦持ち直したけども、世界的な豊作予想が背景にあり、ニューヨークの定期市場価格は120セ ントから70セントまで急落しました。今年度はブラジルの減産、中南米諸国の減産、こういった事で価格は一時的に回復する可能性はありますけども、コー ヒー生産国連盟(ACBC)が在庫留保策を取っているが、なかなか各国の足並みが揃わず、その効果がまだ出ていない。この在庫留保策を取るという事は、ブ ラジルの輸出低迷を意味するけども、相場を取るのか、数量で稼ぐのか、そういった岐路に立っております。

外食産業は、2000年のイン フレが低く抑えられよかったということです。 1999年はあまりよくありませんでしたけれども、レジャーですとか外食の機会は増えました。サンパウロではブラジル人の「日本酒ブーム」が起こったそう です。今年度は基本的には経済が予測通りに推移すれば、という前提で、外食産業にとっても追い風となるであろう。ただ一方では、消費者の価格感がシビアに なってきており、消費者ニーズをどのようにして捉えるかが勝負だと言う事です。

 

●食品メーカー 大手量販店に悩まされる

第三の加工食品には、3社ありまして、乳酸菌飲料、即席めん、調味料と三つの業界について説明いたします。まず乳酸菌飲料では、豆乳は新製品の投入を行っ たので、前年比大きく伸びた。しかし本命の乳酸菌飲料においては、競合他社の安売りによって前年度を割り込んだ。収益面では大手量販店の寡占化、この中で 値引き要求が厳しくなり、利益率が低下したという事であります。2001年の見通しは、ブラジル経済、明るい見通しなので、品質のグレードアップ、あるい は新製品の投入を積極的にやって前年比10%以上を目標としたい、という事です。

即席めんは99年度、久々に低迷したが、昨年の10月 以降、消費好転し、対前年比107%。以前は、二ケタはあたり前だったけど、ようやく7%の伸びになったという事です。何度も申し上げておりますが、我々 の食品業界の問題は、大手量販店の寡占化、これが販売及び収益面でものすごくメーカーを圧迫しております。なおかつ、これらの大手量販店はプライベートブ ランド、PBを持っていて、安くそれも積極的に売っており、われわれNBメーカーのシェアを奪う方向にあります。本年度は、成長軌道がこのまま続くのでは なかろうかと思っております。シェアー維持のためには、市場の継続的な活性化と新製品の投入、これが不可避であります。

調味料も昨年、3月までは前年比でマイナスでしたけど、それ以降プラスに転じ、前年をわずかに上回ったと言う事です。この業界でも新製品の投入を確実にこなした企業が大きく伸びております。今年度も、継続成長が期待されるという事であります。以上です。

2001年上期業種別部会長懇談会-食品部会(レポート)

I.2000年の回顧

前 年(99年)からの厳しさを引きずる事が懸念された中、結果的にはブラジル経済の強さを示した1年といえよう。経済成長率、インフレ等の指標もほぼ年初の 見込み通り推移した。年央から耐久消費財の販売が好調となり、その後、我々食品業界も回復基調に入り、やや明るい状態で幕を閉じた格好となった。食品業界 全体での成長率は99年度比で2%程度に留まったものの、総売上額で1千億R$の大台に乗せた。

また、業界における再編も継続しており、00年はとくに米国BEST FOODS社のARISCO社買収(その後UNILEVERにBEST・ FOODS社が買収される)、DANONE社のPAULISTA社買収等々の大型買収が目立った。更に大手量販店による流通業界再編の動きも衰えず、メー カーにとってのコストアップ要因は増えるばかりである。

 

II.2001年の展望 ‐業界別動向‐

1.農産・畜産

ブロイラー

00年度の国内生産は590万トンと8%増となった。増産要因は開発の進む北部での生産増と狂牛病騒動の欧州向け輸出の増加。ただし、日本向け輸出は数 量は伸びず、価格は25%の下落となった。01年度も引き続き好調が予想され、600万トンの大台乗せが確実視されている。

大豆

00年度の生産は、中国からの大量買い付け、やはり欧州狂牛病騒動などの要因により、3300万トンと記録的な生産となった。  01年度も中国の業者による買いつけが継続することから3500万トン~3600万トンと拡大基調が維持されよう。

オレンジ

00/01クロップの生産量は120万トンであったが、輸出量は124万トンと過去20年の中での新記録となった。一方で価格の下落が深刻となり、12月には750US$/トン(FOB Santos)と4月に比べ4割以上の安値となった。

01/02は若干の減産予想の中、価格は2月に底を打ち、5月頃までに1年前の1.300US$程度までの回復が望まれる。

 

砂糖

00年度生産量は、00/01クロップで1550万トンと20%のダウンとなる見込み。輸出も504万トンと60%の大幅な減少となった。 一方で国内供給不足感から価格が急騰し、それが輸出意欲を削ぎ、結果として輸出減を更に加速した。

コーヒー

ブラジルの7月の降霜により価格面でいったん値を戻したものの、世界的な豊作予想を背景にNY定期市場価格は年初の120¢から年末には70¢まで急落した。コーヒー生産国連盟(ACPC)は、在庫留保による価格浮揚策に合意した。

しかし、いち早く6月より留保を開始したブラジルは、国内価格の相対高により国際競争力を失い、他の生産国にシェアを奪われる格好となった。

01年はブラジル及び中南米諸国の減産等により、価格は一時的には回復する可能性もあるが、一方でACPCの在庫留保策は各国の足並みが揃わず、その効果は今のところ出ていない。策の継続はブラジルの輸出低迷を意味し、相場を取るか数量を稼ぐかの岐路に立っている。

 

2.外食産業

00年度のインフレが比較的低く押さえられたことにより、消費の増加を促す結果となった。99年度までと異なり、明らかにレジャーや外食をする機会が増えている。また、サンパウロではブラジル人の「酒ブーム」が加速した。

 

3.加工食品

乳酸菌飲料

新製品投入を行った豆乳が前年比で大きく伸びたほかは、競合他社の安値販売攻勢にあい、主力の乳酸菌飲料は前年実績を割り込む厳しい結果となった。

収益面では、大手量販店の寡占化進展の中で値引き要求が厳しくなり、収益率の低下を余儀なくされると共に、今後の大きな懸念材料である。

01年度は、4~5%の成長と明るい見通しの中、品質のグレードアップや新製品の投入を積極的に行い、前年比10%以上を目標とする。同時に経費削減にも取り組まざるを得ない状況である。

 

即席麺

上半期は99年度に引き続き、厳しい状況となったものの、年央、とくに10月以降、消費環境が好転し、00年度の即席麺市場は前年比7%程度の伸びとなり、99年度に久しぶりに市場が縮小した流れを食い止めた。

この分野でも大手量販店の寡占化は、販売・収益面でメーカー負担を大きくしており、今後の動向からは目を離せない。さらに大手量販店では、プライベートブランドを廉価で積極的に販売しており、NBメーカーのシェア-を奪う傾向にある。

01年度は、明るい経済見通しの中、再び安定した成長軌道に乗ることが期待される。シエアー維持のためには、市場の活性化と新製品の継続投入が不可避である。

調味料

00年度は、3月までは前年比ベース(数量ベース)で推移したものの、それ以降はプラスに転じ、最終的には前年をわずかに上回った(101%、70,300トン)。

この業界でも新製品等を確実に投入した企業が大きな成長を達成した。

01年度も基本的には継続した成長が期待される。主力製品の拡販と新製品の発売等を確実に行う必要があり、これをできる企業とできない企業との間の格差が明確になるであろう。

以上

2001年上期業種別部会長懇談会-コンサルタント部会

  • 鉱工業、2千年は6%強成長
  • 貿易は50億黒字予想が7臆㌦赤字
  • 現在のドル相場は75%切下げになっている(99.1以来)
  • 原油が不安定要因
  • 輸出増、為替切り下げのイタチゴッコ
  • 2年後の大統領選向け動き出す年

 

「時間計測係奮闘記」

赤嶺副委員長時間制限を説明

懇談会に進む前に、今日始めてお越しになった方がおられますので、時間計測の件について説明します。超ご多忙中の方々ばかりですので、各部会長のご発言 の所要時間は各々10分間ということになっております。9分の時点で私がチンと一回ベルを鳴らし、10分の時点で2回鳴らします。コンサルタント部会長の 田中信先生の発言が終わると、私も肩の荷が下ります。まあ冗談はさておいて、各部会長よろしくお願いします。くれぐれも時間厳守で参りたいと思います。

△赤嶺副委員長の10分間時間厳守協力の呼びかけが奏効、“延長常習部会長”も今回は10分以内にまとめあげ、まずはメデタシ。 (編)

 

●先行きバラ色”観測には疑問

田中: それでは私の方から発表させて頂きます。昨年は、いまお話がありましたように非常に順調で、約4%の成長。特徴的な事は、今まで2年、工業がマイナス続き だったのが昨年は6%以上成長したということです。インフレも低かったし、財政収支も目標を達成した、金利も5回引き下げた。それから外資の流入も順調 で、一昨年を上回る300億ドル超の直接投資の流入があって、経常収支の赤字もカバーできた。問題点としましては、一つは貿易収支が不満足であったこと。 年初、政府は50億ドルプラスの予想をしたが、実績は7億ドルのマイナスだったという事。

二つ目は委員長からお話がありました海外の不 安定要因。とくにアメリカ経済とアルゼンチンの危機、それから原油価格の高騰が色々な面で影響したということです。要するに国内経済は順調、国内の政治情 勢も色々ありましたけれども、ほぼ安定していたが、海外要因は不満足で不安定だったという事じゃないかと思います。

2001年ですけど も、本年の経済も昨年並み、または昨年以上に順調に行くというバラ色の見通しが多いということです。ただ本年は昨年と同じ様な問題点を引きずって行く、対 外的な問題をひきずって行くと。まあ、それにプラス、国内の政治的な要因が加わるかなという風に考えております。

私個人としては、「大方が言うような昨年よりもバラ色という風な見方が果たして出来るかな」という点で疑問を持っております。むしろ昨年より若干厳しくなるのではないかという感じがしております。

 

●高度成長なら輸入増

困難な貿易収支改善

まず第一は貿易収支問題ですけど、99年1月に大幅切り下げをやりましたけど、現在のドル相場は75%切り下げぐらいの水準なのに貿易収支は改善しない という問題ですね。これはもっとキチンと詰めないといけない問題だと思います。私の感じとして申し上げますと、一つは輸入の増加が予想以上であったという 事です。それは一つに原油の輸入額が増加した。原油価格が2年間で3倍に上がり、それに伴って原油価格が上がったこと。本年は輸入量も輸入額も減る可能性 が非常に大きい。不安定要因のひとつですので、どうなるか分かりませんけど、一応減る可能性は強い。

それから2番目の問題は、景気上昇による原材料・部品など中間財輸入の増加であります。とくに本年は、政府が昨年の成長率約4%よりも更に高い

 

●世界の輸出の0.9% ブラジル輸出のシェア

4.5%と言っておりますので、それであれば、更に輸入が増加する。とくに中間財、原材料、部品などの中間財分野は増加する。中間財の分野はすでに、こ こ一年以上、設備がフル稼働状態なので、余計にその問題が出てきます。それから増設しようとしても機械の大部分が輸入に頼らなければならないという問題も あり輸入の増加が多く、輸出の増加が不十分だという事です。

確かにここ数年、輸出の伸びが低かった。去年は二ケタの伸びをしておりますけども、世界のシェアから見ると良くなっていない。ブラジルも80年代は世界の輸出額の1%を超えるシェアを持っていたのですけど、現在は0.8%から0.9%ぐらいで、改善していない。

それから3番目は為替の問題です。一年ぐらい前までは、政府関係者の中に、為替と関税ですね、ブラジルの輸入税との関係が理想的だと自画自賛する意見も 非常に多かった。というのは、去年は1.8から為替がスタートして3月頃は1.7ぐらいまで下がってかなり安定しておったけれども、最近は非常に上がって きておるという事で、構造改革とかブラジルコストの改善をしないで、輸出の増加をしようと思えば切り下げの繰り返しになる「イタチゴッコ」みたいになるの ではないか、という風な意見も出てきています。

それから2番目は対外収支の問題です。去年と違い、今年は直接投資で経常収支の赤字をカ バーするには若干不足する。直接投資が減るといっても、今後も高水準を続けるわけですけど、増加テンポは一段落するという事ですね。それほど、しばらくは 大きな増加はないのじゃないかと。その半面、利益配当の送金が増加する。そういうわけで対外依存度が高まります。

それから次は海外要因 ですね。米国の経済、これもハードランディングか、ソフトランディングかの問題。恐らく、ハードにはならないだろうという期待は強いわけですが、成長率の 低下というのは、ほぼ確実だという事で、すでにかなり急激に成長率が落ちてきており、それに伴って、世界の経済成長率も落ちるし、従って、ブラジル辺りの 輸出にも影響が出てくるという事だと思います。

 

●IMFの救済融資出たが、 対亜不信感は去らず

それからアルゼンチン。これはご承知の通り400億ドル近い巨額のIMFの救済融資を受けて、小康状態になりましたけども、依然として国際金融界の不信感は残っています。

それから原油価格。これはずっと上昇し去年の10月頃にピークを打ったのですけど、OPECの戦略としては、ただ安定した収入を得ようとの戦略に見える ので、おそらく25ドルから28ドルぐらいを目安にして“あまり上がらないようにするけど、あまり下がらないようにもする”という事で、さる1月のウィー ンでのOPEC会議では日量150万バレルの減産を決定しております。原油の需給関係だけではなくて、この過去2年間の上昇には、投機マネーが絡んでおる という説も有力であるので、もしそういう事であれば、依然としてまだ、大きな不安定な状態が続くということが考えられます。

それから最 後に国内の政治要因。来年大統領選挙があります。まだ2年近くありますけど、去年頃から色々な動きが出てきて、今年は更にそれを前提にした動きが続くだろ うと。とくに本年は、2月14日に行われる両院議長選挙を巡って、波乱含みのスタートとなりましたので、政治情勢がかなり今年はガタガタする可能性がある という事です(2月1日現在)。

2001年上期業種別部会長懇談会-コンサルタント部会(レポート)

2000年回顧

●工業主導の成長

99年後半より回復を始めたブラジル経済は、2000年に入ってから一段と上昇速度を速めた。99年の成長率0.82%に対し、2000年は、 3.89%成長(第3四半期まで累計前年度比)した。しかも内訳は、99年は+8.99%という農牧畜業に支えられ、工業は-1.66%とマイナス成長で あったのに対し、2000年は、農牧畜業も+3.36%成長したが、工業が+4.62%で主導的役割を果たした。

レアル・プラン以降で見ると、工業成長率は97年に次いで2番目に高く、GDP成長率でも、95年に次ぐ年であった。

(註)工業生産1~11月累計では前年同期比+6.4%(IBGE)。

 

●財政目標達成確実

IMF救済契約初年度の99年に引き続き、2000年も一次収支黒字目標367億レアルに対し、11月までの累計で、415億レアルの黒字と、すでに48億レアル突破している。

IMF関係救済融資殆ど返済

98年12月のブラジル危機にあたり、IMF、各国中銀(日銀を除きBIS経由)から320億ドル(これとは別に、世銀、米州開銀90億ドル計410億 ドル)の緊急融資を得、200億ドルを引き出したが、すでに182億ドルを返済、現在18.2億ドルを残すのみとなった。

 

●コントロールされたインフレ

99年1月のレアル切り下げにより、インフレ昂進が懸念されたが、IPCA(拡大消費者物価指数)は8.94%と、目標8%(上下2%ポイントのアロウアンス)に収まった。

2000年も、異常干ばつ、異常寒波による食料価格値上がり、国際原油価格高騰による燃料等、公共料金大幅値上げなどにより、インフレ再燃が懸念されたが、後半以降軌道に乗り、目標6%に対し5.97%で収まった。

 

●適切な金利政策

99年1月のレアル切り下げによる混乱回避のため、45%まで引き上げられた基礎金利Selicは、99年末には19%まで引き下げられていた。 2000年に入ってからも、原油価格上昇は継続、更に米国経済の先行きに対する不透明感、株価の変動、年後半のアルゼンチン危機の深刻化、トルコ危機の発 生など海外情勢の不安定要因のため、中銀は慎重な金利政策の運営を行った。しかし、国内経済の良好なパフオーマンスにより、2000年は年間5回の引き下 げを行い、15.75%と1986年クルザード・プランいらい最低の金利水準で越年した。

 

●不満足な貿易収支

2000年の輸出は551億ドルで、99年比14.7%とレアル・プランいらい最高の、しかも97年いらいはじめての2ケタ増加率となった。今日のレー トで75%に高止まりしている大幅なレアル切下率などによる、工業製品輸出好調がその主因である。一次産品輸出は、コモデイテイ価格引き続き低調のためも あり、伸び悩んだ。

輸出好調にもかかわらず、輸入も558億ドルと、前年比13.3%と大きく伸びたため、政府の黒字期待にもかかわらず、貿易収支は7億ドルの赤字となった。

輸入増加の主な理由は、原油輸入額増加と工業生産拡大による原材料、部品など中間財及び設備増強のための資本財輸入増加によるものである。

 

●引き続き順調だった直接投資

直接投資は306億ドル流入し、99年の300億ドルを上回った。

 

●海外不安定要因により上昇した ドル・レート、下落した株価

石油価格上昇、米国株価下落、アルゼンチン経済不安などの海外不安定要因は、ブラジルの実体経済には殆ど影響なかったが、ドル相場上昇、株価下落と金融市場にはインパクトを与えた。

2000年ドル・レートはR$1.802でスタート、3月はR$1.721まで下落した。その後上昇に転じ、R$1.951で越年した。

BOVESPA(サンパウロ株式)指数は99年末の17,091から2000年末は15,259へと10.7%下落した。

 

2001年展望

本年経済も昨年同様の好循環パターンが続くというバラ色の見方が多い。すなわち、インフレ低下、財政収支改善、金利低下などを前提として、農業生産も増加するが、工業主導で4―4.5%程度の成長がつづくものと見ている。

しかし、昨年の海外不安定要因は、殆ど未解決のまま本年に持ち越されている。とくに、米国経済の動向が不透明であるが、成長率が昨年より落ちる可能性が 高い。したがって、世界全体の経済も何らかの形でインパクトを受けることは避けがたい。 [註:IMFは本年の世界成長率見込みを4.2%(昨年9月プラハ年次総会時点)から3.5%(本年1月ダボス会議)に変更した]

 

ブラジルの場合、貿易収支改善の難しさ、経常収支赤字と直接投資流入逆転の可能性など、対外依存度の上昇が予想される。  いずれにしても昨年ほどの濃いバラ色は期待出来ない覚悟も必要であろう。

以上

2001年上期業種別部会長懇談会-建設不動産部会

  • 人員削減でしのいだ2000年 ― 建設業
  • 価格競争で苦戦―エレベーター・メーカー
  • 寡占的建材は価格上昇 ― 建設業

 

●受注競争激化の建設業

司会:ありがとうございます。皆様順調に消化しておりまして、これもやはり好調な年は順調にいくのかなという、いまの江口様のお話でございますけども。(笑い)

続きまして後二つ、建設不動産部会の鳥羽部会長よろしくお願いいたします。

鳥羽:建設不動産部会の鳥羽でございます。前任者、戸田建設の林さんの後を引き継ぎまして、私が受け持ちさせて頂きます。建設不動産部会、大きく分けて二つのグループがありまして、建設業とそれから不動産業と分けて報告させて頂きます。

 

●2000年の回顧、建設業

2000年前半は1999年の傾向が継続されていて期待したほど需要は回復しませんでした。後半から年末に向って需要の漸増、徐々に増加してきた傾向が ありましたが通年で見れば、1999年に比べて回復したというほどの状況ではありませんでした。また一方で、工事の規模が小さくなる傾向、簡単に言えば、 新規の建築がなくなっているという事です。それと受注競争の激化。つまり件数が減って、利益が低下しています。こういった状況下、職員削減で急場をしのい できたのが、昨年でございました。私ども建設業は三社あり、前年度に比べて実績を減らしたのが2社でございました。人数もやはり2社が大幅に削減して、何 とかしのいできたというのが、昨年でございました。

 

●不動産業2000年の回顧

賃貸 の場合では、事務所、アパート等はほぼ良好に推移した年でした。事務所ではテナントの物件の選別が進んで、テナントの入れ替えも多くなってきたという事で ございました。またアパートの販売については、売り手市場から買い手市場になっている。つまり、それだけ需要が増えてきているという事ですが、これは低利 のローンを使う機会が増えて、むしろ、低い所得者層の方に需要が増えています。その他に、請負業から撤退してサンパウロにまだ駐在されている会社が一社、 それから、建設不動産部会に所属する昇降機、エレベーターのメーカーさんが一社ございます。この一社さんから価格競争でだいぶ苦戦したという報告を受けて おります。

2001年、今年の展望ですが、建設業グループとしては2000年に比べて少しは業績が良くなるであろうと思っています。毎年これは思っているのですけど も、なかなかそういう風に行かないのが現状であります。ただ、現在、2000年後半からそういった建設の引き合いが確かに増えております。

 

●2001年は外資系の工事に期待

2001年は日系企業からの需要というよりは、非日系、非日系というのは地元というよりは、外国資本なんですけども、そういった非日系の需要が見込めそ うであるという事です。ブラジル経済、まあ建設の市場自体が外国からの投資に頼っている部分があり、この部分が順調に投資が増えてくるという事が前提と なっております。

2000年の実績に比べまして2001年は、私ども3社とも受注が増加するであろう、と期待しているところです。不動 産業の2001年の見通しとしましては、順調にいくであろう。したがって売上も約10%から20%の増加を見込んでおり、社内の社員の増強等も考えている という事です。ただテナント側のそういった選別が進んでおり、賃貸の場合は改修ですとか、保守修理などの投資を継続してやって行く必要があるという事で、 この辺が業績計画を作るときに非常に重要なポイントになっているとの報告を受けました。

ブラジルのカントリーリスクに対して影響を与える外的要因、これについても報告を受けております。まず建設業において、外的要因が直接的に影響を与えるというリスクは比較的少ない。直接的な原因が少ないという意味です。

 

●外国景気の停滞による企業撤退を懸念 (不動産業)

ただし米国あるいはヨーロッパの景気という事ですけども、私ども日系建設業者は、日系企業または欧米企業を主な顧客にしております。したがって、日系企 業または欧米企業の投資意欲が、日系建設業者の市場に大きな影響を与えております。ですから、日本の景気の早い回復を現在望めない状況にいますと、欧米か らの建設需要を期待しているわけでして、欧米の景気動向が日系の建設業に大きな影響を与えるという結果になります。

日系進出企業からの投資金額というのは、大きな意味でほぼ固定されている状況ですので、やはりその他の外国からの投資に頼るというところが当然の成り行きかという風に思っています。

それから原油価格。これは私どもの産業の中のブラジル・カントリーリスクの一つとして建設材料の一部が寡占状態にあるわけです。例えば鉄ですとか、セメ ントですとか、アルミ資材。建設の価格が現在下がっている訳ですが、そういった市場に連動せず、逆にむしろ上がっているという状況です。これはもとをただ せば、原油価格であろうと一般的に思われているわけですが、そういったことで、原油価格が寡占状況にある建設材料の価格に影響してそれが、私どもの業績に 非常に大きな影響を与えているという事です。不動産業におきましては、外的要因に影響される事はまず少ないという事ですけど、一つこういう報告がございま した。間接的には、外国景気の停滞によって進出企業が撤退するケースが非常に多いと。従ってそういった時に不動産業側から見ると、業績に非常に影響を受け ると報告されておりました。以上でございます。

2001年上期業種別部会長懇談会-建設不動産部会(レポート)

2000年の回顧

建設業

2000年前半は1999年の傾向が継続され、期待していたほど需要は回復しなかった。後半から年末に向かって需要の漸増の傾向があった。しかし、通年で見れば、1999年に比べて微増であり回復したといいがたい状況であった。

また、工事規模が小さくなる傾向と、受注競争の激化により利益が低下してきている。この状況に対し職員数を削減すること等を余儀なくされた厳しい1年であった。具体的には、受注で2000年の計画に対して実績を減らしたのが3社中2社、計画どおりが他の1社であった。社員数も2000年計画に対して3社中2社が減らし、他の1社が計画どおりであった。

 

不動産業

賃貸の場合では、事務所・アパートともにほぼ良好に推移した年であった。事務所では、テナントの物件選別化が進み、テナントの入れ替えも多く発生した。アパートの販売については、売手市場から買手市場になってきている。その原因のひとつに、銀行ローンの金利が高いこと、中古住宅にはローンが利用できないこともあげられる。具体的には、2000年計画に対して実績で減らしているのが3社中1社で、他の2社がやや増であった。社員数では全3社が計画数を維持または達成している。

 

その他

請負業から撤退済みで建物賃貸のみの業務を行っているという報告が1社からと、輸入に依存しているので価格競争で苦戦したという昇降機メーカーの報告が1社からあった。前者では2000年計画に対して売り上げを伸ばしたが社員数を減らしている。後者では2000年計画に対して売り上げを減らしたが社員数は増やしている。

 

2001年の展望

建設業

2000年に比べ業績は少し良くなると思われる。2000年後半から建設の引き合いが増えてきている。2001年では日系企業からの需要は大きくないが、非日系での需要が見込めそうである。ただし、ブラジル経済が外国からの投資に依存している部分が大きいので、この部分の成長が安定していることが前提になる。

2000年の実績に対して、2001年では受注で3社中1社が10%増、他の2社が20%程度の増加を見込んでいる。また、社員数で、2000年実績に対し2001年計画で3社中1社は2000年維持であるが、他の2社は10-20%増を見込んでいる。計画を達成する手段として、非日系企業へのアプローチをあげており、1社は工事量増に対応する社員の補強が必要と考えている。

 

不動産業

2001年では順調に行くと予想している。したがって、売上げで2000年実績に対し3社中2社が10-20%増を見込んでいる。また、社員数では3社中2社が2000年実績を維持する計画であり、他の1社は増員を計画している。計画を達成する手段として、賃貸の場合では改修、保守修理などの投資を考えており、販売の場合では新たな建設を計画している。

 

その他

2000年実績に対し、1社は売上げ、社員数とも現状維持を見込んでおり、他の1社は低価格市場に参入し輸入依存から脱却することにより売上げ、社員数とも大幅増を見込んでいる。

 

足許のブラジルカントリーリスクに対し影響を与える外的要因

1) 建設業:

建設業において外的要因が直接的に影響を与えるリスクは少ないが次の要因は明らかと考えられる。

a.米国とヨーロッパの景気:日系建設業者は日系企業または欧米企業を主な顧客にしている。したがって日系企業または欧米企業の投資意欲が日系建設業者の市場に大きな影響を与える。日本の景気の早い回復を望めない状況で、欧米企業からの建設需要を期待しているので、今後の欧米の景気動向は日系建設業に大きな影響を与える。

b.原油価格:ブラジルのカントリーリスクのひとつに寡占状態の建設材料(鉄、セメント、アルミ資材、等)がある。建設価格が下がっても連動して材料価格が下がらずに、逆に上がることがある。原油価格も原因のひとつになっている。受注競争が激化して建設価格が下がっている中で材料原価があがり、その結果利益が低下することになる。

2) 不動産業:

不動産業においては外的要因により影響されることは少ない。間接的には、外国の景気の停滞による進出企業の撤退がマイナスの影響を与える、また、外資による不動産業の退潮によりローカルの物件が相対的に大きくなるというプラスの影響を与えること、などが考えられる。 以上。

2001年上期業種別部会長懇談会-金融部会

  • 政府は低金利水準誘導
  • 外貨準備高330億㌦へ
  • 為替レートは今年上期R$1.9~2.05、下期1.95~2.15予想
  • ガソリン値下げでオイルショック回避か
  • 損害率上昇、資産収益減の保険
  • IRB民営化おくれる

 

●予想を上回る景気回復示した年

司会: ありがとうございました。引き続きまして、金融部会の福岡部会長お願いします。

福岡: はじめまして。私、今回興銀の山浦さんの後任として金融部会を引き受ける事になりました福岡でございます。どうぞよろしくお願いします。

金融界の方は二つセクションがありまして、一つは保険業界、一つは銀行業界ということで、まず銀行業界の方からお話申し上げます。銀行業界の立場から見 た問題の一つ、2000年度の経済概況、回顧ですが、98年度以降の通貨危機、レアルの切り下げ以降、予想を上回る急速な景気回復を示したという事もあ り、2000年度も大変順調な軌道回復をたどってきました。年間のGDPの成長率を見ますと、99年度のプラス0.79%に対して2000年度が見込みで はプラス3.7%、加速した状況で終了しました。

2000年度の第4四半期に入り、皆さんご存知の通り、アメリカの株価下落問題、アル ゼンチン情勢の悪化等でレアルの為替相場が、軟化しましたけど、期中のインフレ率が安定的に推移してきた結果、2000年の12月以降、金利は 15.75、15.25レアルと政府が水準を低めに誘導してきております。ブラジルの経常収支につきましては、依然として253億ドルの赤字になっており ますが、予想されていたよりも大変好調です。その好調の原因というのは、海外直接投資。これが306億ドルに達しておりますが、これや、海外での起債環境 が好転したことにより、資本収支が大きく改善した結果でございます。ブラジルは昨年、IMF等による、国際支援融資の返済を積極的に実施しましたけれど も、以上のような状況から、2000年度末の外貨準備高は、昨年比マイナス26億ドル、結果330億ドルで収束しております。

これが 2000年度の経済概況回顧です。次に2001年度以降の経済見通しですが、2001年度に関しましては、GDPの成長率が4%以上、インフレ率はIMF の目標通りの4%程度と低インフレ率下での堅調な景気回復を予想している向きがほとんどであります。財政面はとくに問題はなく、プライマリー収支について は、政府の目標通り、GDP比3%程度になるであろうと予想されています。

 

●あまり大きくない米景気 スローダウンの対伯影響

次に為替相場ですけども、これは中銀の貿易収支赤字基調に歯止めをかける目的がありまして、対ドル、1ドル=1.95レアルのレベルで今年度に突入した 事は、皆さんご存知の通りであります。年央にかけても、構造的な経常赤字と外貨流入のペースの減速、アメリカ、ブラジル間のインフレ率等のファンダメンタ ルズ格差を理由として、引き続き穏やかなレアル安が継続するであろうというのが、大方の見方であります。

これは金融部会の中の各銀行さ んの中でも、若干この辺りは様々な意見がありましたけれども、大きな予想レンジで見ますと、まず為替は対ドル、上期は 1.9から2.05レアル、下期は同じく、1.95から2.15レアルと予想する向きが殆どであります。とくに3月まではアルゼンチンの、昨年12月アル ゼンチンに対してIMFが、実行した融資の問題の結果が、3月末でないと最初の結果が見えないそうです。

従って、3月末までは、現状の為替レートが継続されるであろうと。3月末の時点でアルゼンチンのIMF融資後の最初の環境が見えてくるという事で、ここが一つのターニングポイントだと、いう見方をされていらっしゃいます。

先ほど村岡さんからお話ありました、カントリーリスクに与える影響という意味において、先ほどご指摘がありました3点から見ますと、まず原油価格の問題 は、政府が国内の燃料価格を引き下げるという予想をしており、さしあたり大きな懸念材料にならないだろうという向きが多いようであります。

次に2番目にアメリカ経済の問題ですが、これは、例えばメキシコ等の様にアメリカとの貿易依存が高い国と違って、ブラジルは比較的、アメリカとの貿易依 存率が低いのでそれほど影響を受けないだろうというのが一つと、それからもう一つはブラジルの中央銀行が積極的な利下げ政策を推進して、景気テコ入れを図 ると予想されるところから、アメリカ経済のスローダウンは、それほど大きくブラジル経済に影響は与えないのではないか、と予想されております。

それから3点目に、アルゼンチンの経済問題ですが、これはアメリカの経済問題とは全く逆でありまして、海外から見た時に、南米、すなわちブラジルとアル ゼンチンというのは殆ど一体として見る傾向がある事から、アルゼンチンの経済環境がどう変化するかという事が、ブラジルの経済に相当大きな影響を与えるだ ろうと、こういう風に予想しております。以上が先ほどのご指摘にありました、3点から見たカントリーリスクに与える影響という事であります。


●好調だった保険業界

次に保険業界の方からお話申し上げますと、保険業界はご案内の様に、直接カントリーリスクに与える影響という要因は殆どありませんので、2000年度の回顧と、2001年度の展望、トピックスいう三つの項目に分けてご報告をしたいと思います。

まず、2000年度の回顧につきましては、業界のデータが本年1月初めの時点では、昨年8月末の統計しか取れておりませんので、ちょっとタイミングがずれていますが、8月末の業界のデータ、及びそれに基づく予測としてお話させて頂きます。

1月から8月までの昨年の保険会社の状況ですが、保険料、これは通常の業界におかれる売上高に匹敵するという風にお考えいただいて結構だと思いますが、 保険料は、8月末までで150億レアル。これは対前年同期でみますと、114.3%という成績を上げております。参考までに申し上げますと、99年度の保 険料総額が約203億レアルぐらいでしたので、(この203億というのがその前年98年度と比較して104.8%の実績をあげておりました)99年度と比 べますと2000年度8月までの傾向というのは大変好調に推移しているという事が言えると思います。この傾向は9月以降、12月までもほとんど同じ、ある いは若干、9月、12月の方が更に好調が増しているという事になると思います。従いまして、年間を通しては115%強の対前年比で収束していると考えてお ります。

 

●赤字決算会社増加の傾向

一方、保険業界の場合には、売上高と同時に、損害 率という重要な指標がございまして、これは簡単に申し上げますと、お客様からいただきました保険料を分母にして、分子に皆様にお支払した保険金、事故が起 こった時にお支払いする保険金を分子においたものを、損害率というのですが、これが8月末では 68.4%という高率に達しております。この68.4%というのは損害率だけですから、残りの32%で、ブラジルはご存知のとおりコヘトール制度、要する にブローカー制度がありますので、従って、ブローカーコミッションであるとか、あるいは各保険会社の社費、これらを払わなければならないという事になりま す。収支の予測は大変厳しいものがあります。これは今申し上げた損害率が高い事に加え、資産収益が減益している事(これは金利の低下が原因)によります。

2001年度の展望は、前年比保険料は115%から120%を予測されております。とくに、年金と生命保険の伸びが顕著だと思われております。収益は大 変厳しくなっており、損害率が更に高騰して、資産収益が減っておそらく2000年度比、2001年度は保険会社の赤字決算が多くなると、こういう風に予想 されております。

トピックスとしては、IRBという再保険公社が昨年の7月に民営化されることになっていましたが、野党が裁判所に提訴した事によって、憲法違反という事になっておりまして、この環境が今年度、いつ頃まで続くかまったく不明な状況です。以上です。

2001年上期業種別部会長懇談会-金融部会(レポート)

I.銀行業界

① 2000年度の経済概況

1998年以降の通貨危機、レアルの切り下げ等により、ブラジル経済は一時低速したものの、その後、予想を上回る急速な景気回復を示し、2000年度に おいても順調な回復軌道をたどっており、2000年4月の時点では、1998年12月に組成されたIMF等の国際金融支援パッケージ(総額414億ドル、 引出し総額累計201億ドル)の一部期限前返済を実施し、新規引出しは行わない旨を発表するに至った。

年間のGDP成長率で見ると、1999年度の+0.79%に対し、2000年度は+3.7%(見込み)と加速した。2000年度第4四半期に入り、米国 株価下落やアルゼンチン情勢の悪化の影響でレアル為替相場が軟化したが、こうした対外環境の悪化や原油価格の高止まりから、2000年のインフレターゲッ ト(6%±2%)への配慮も働き、ブラジルの政策金利は7月から12月まで16.5%で据え置かれた。

しかしながら、同期間中のインフレ率が安定的に推移したことから、2000年12月以降は15.75%、15,25%と政策金利の水準を低めに誘導している。

ブラジルの経常収支も依然として253億ドルの赤字となったものの、予想比好調であった海外直接投資(306億ドル)やソブリン価格上げ等に伴う海外起 債環境の好転により、資本収支が大きく改善。前述のIMF等による国際支援融資の返済を積極的に実施したにもかかわらず、2000年度末の外貨準備高は前 年末比26億ドル減少したに止まり、330億ドルを維持している。

また、2年連続でマイナスの伸びとなっていた鉱工業生産も大幅に回復、2000年2月には8.2%の直近ピークに達した全国失業率は6.0%まで低下するに至った。

 

② 2001年度以降の経済見通し

2001年度に関しては、GDP成長率4.0%以上、インフレ率はIMF目標通りの4.0%程度と、低インフレ下での堅調な景気回復を予想する。

財政面はとくに問題なく、プライマリー収支は政府目標通りGDP対比3.0%程度となろう。2000年10月の全国市長選挙では野党の躍進が目立ったが、低迷していたカルドーゾ政権の支持率は回復の動きを示しており、最近の政局は総じて落ち着いている。

2002年後半の大統領選挙の行方はまだ見通し難い状況であるが、経済状況の改善傾向が続く限り、当面政局は市場の大きな波乱要因とはならないものと思われる。

 

 

③ ブラジルマーケットに対 する外的要因の具体的な影響

(1)原油価格

● 2000年度に懸念された原油価格の上昇やレアル安等がもたらした物価上昇圧力は、卸売り段階で吸収され、消費者への波及が限定的だった事などから、インフレ率は、IMF目標通りの6.0%を達成した。

● 財政収支は累計で382億レアルの黒字に達し、2000年度のIMF目標367億レアルをクリアしているものの、2000年度貿易収支は原油価格高騰によ る輸入増や国際商品市況の低迷による農産物輸出の減少の影響により、▲6.91億ドルと、政府黒字目標の+40億ドルを大幅未達、6年連続の貿易赤字と なった。

● 2001年についても、引き続き原油価格の高止まりが貿易収支等に与える悪影響に留意する必要があるが、政府は国内燃料価格の引き下げを予想しており、国内経済に対する配慮もあることから、さしあたり大きな懸念材料とはならないと見る向きが強い。

(2)米国景気のスローダウン

● 懸念される、米国をはじめとする世界的な景気減速傾向は、引き続き景気の下押し圧力となろうが、ブラジルに関しては、貿易の米国依存度がメキシコ等に比べそれほど大きくない上、ブラジル中央銀行は積極的な利下げ政策により景気テコ入れを図るものと考えられる。

● 米国サイドでも、2001年に入ってから実施された緊急大幅利下げ等に見られるように、積極的な景気対策が取られることも予想され、急激なリセッションやそれに伴うブラジル経済への大きな悪影響は考えにくい状況にある。

 

(3)アルゼンチン経済

● 2000年度は、ブラジル・メキシコ経済好調の反面、アルゼンチン経済の低迷が鮮明となったが、アルゼンチンへのIMF等からの国際金融支援は市場の不安 心理解消しのための一時的な処方箋に過ぎないとみるべきで、今後のアルゼンチン情勢については慎重に見て行く必要がある。

● 今後アルゼンチンが早期に経済を回復軌道に乗せることが出来なければ市場心理は再度悪化に向かい、信任低下と景気低迷の悪環境に陥る事になり、とくに南米 経済はアルゼンチンとブラジル一体と見られる傾向も強いことから、直接的な経済的影響に加え、心理的にもブラジルへの投資等に影響を与えることになろう。

(4)ユーロ不安

● G7協調介入の後、2000年第4四半期以降も欧州中央銀行(ECB)が単独でユーロ安に歯止めをかけるべく買支えを実施したが、ユーロの投資環境は、 ユーロ圏の景気がすでに頭打ちの様相を示しており、IMFからユーロゾーンの構造改革を勧告される等、先行きに不安を残している。

● 仮に今後もユーロ安が進行した場合、ブラジル経済に対しても対欧輸出のブレーキとなる危険をはらんでおり、注意を要するものの、米国の景況感との格差や金 利格差が縮小することへの期待感、ECBの具体的な介入により、ユーロ安阻止の姿勢を明確にしていることから、投資家の安心感が次第に醸造され、中長期的 には回復局面と予想される。

 

④ 2000年度の銀行業界の トピックス・特記事項

(1) Y2K問題

金融業界の2000年は、2年間近く対応に頭を悩ませてきたコンピュータの誤作動懸念、いわゆるY2K問題について、とくに大きなトラブル・混乱もなく、オフイスに泊り込みで新年を迎えた経営者の安堵感と共に幕を明けた。

(2)Banespa民営化

ブラジル政府が全株式を保有して経営再建を進めていたサンパウロ州立銀行(Banespa)の民営化計画は、2000年5月以降、民営化に反対する労働 組合が差し止め請求を行うなどして遅れていたが、11月20日に行われた入札では、Santander, Bradesco, Itau, Unibanco の4行が参加、スペイン系の Santander 銀行が70億5千万レアルで落札した。これにより、同行はブラジル民間銀行として総預金量で3位の規模となった。このほか、同じスペイン系のBilbao Viscaya 銀行も支店網の拡大計画を発表、スペイン系銀行の活動が目立っている。

(3)中銀決済システムのRTGS化

(Sistema de Pagamento Brasileiro)

ブラジル中央銀行は、従来より指摘されていた金融決済におけるシステミックリスクを軽減させる目的で、2001年10月を期限として、決済システムの RTGS化(即時グロス決済)を導入することを決定した。  民間銀行はその導入期間の短さや、新規発生するシステム投資負担にやや戸惑いを感じつつも、10月の正式稼働に向け着々と準備を進めている。

 

(4)2001年の相場見通し

2001年に入り、米国の緊急大幅利下げやS&Pによるブラジル格上げ、政府による順調な海外起債、アルゼンチン危機の一服等、レアルに対する 好材料が目立っているが、中銀は貿易収支の赤字基調への配慮からレアル安容認姿勢をとっており、為替相場は1ドル=1.95レアルのレベルで21世紀をス タートさせた。年央にかけても、構造的な経常赤字と外貨流入ペースの減速、米伯インフレ率等のフアンダメンタルズ格差、国内大幅利下げに伴う内外金利差の 縮小等を理由として、引き続き穏やかなレアル安が継続すると予想される。

しかしなが ら、良好なフアンダメンタルズや格上げに伴う国際市場での信任回復に加え、例年上半期は農産物の収穫期となり、輸出が顕著となるため、国内でレアルが大き く売り込まれる材料はとくに見当たらず、為替相場は当面安定した動きを示すと予想される。ただし、外貨フアイナンスを海外投資家に大きく依存している構造 上、当地市場は国際市場の環境変化に敏感な反応を示しやすいのも事実であり、米景気や世界的な株価動向、アルゼンチンをはじめとする新興国市場の動き、原 油・中東情勢には引き続き注意を払う必要があり、リスクシナリオはレアル下振れと見ておく必要がある。

(予想レンジ)

 
上期
下期
為替(レアル=1ドル)
1.90-2.05
1.95-2.15
レアル政策金利
14.75
14.50-13.50

 

II.保険業界

ブラジル保険業界の2000年度振り返り

まずはじめに、2000年度のブラジル保険業界の動向についてお伝えしたい。現時点では、SUSEP(保険監督庁)の公式統計データは8月末が最新となっているので、本データを基に振り返る事とする。

上記データによれば、1―8月の業界全体の収入保険料は150億レアル(約9,470億円)を計上し、前年対比約14.3%と順調な伸びを示した。この傾向は昨年来つづいており、ブラジル経済の安定した成長を反映していると言える。

一方、保険会社の収支を決定する最も重要な指標である損害率は、業界全体で68.4%とほぼ横這いで高止まりしている。とくに収入保険料の32%を占め る自動車保険の損害率は74.6%と非常に高く、前年を3.1ポイント上回った。ブラジルの保険市場においては、自動車保険の構成比が全保険種目中で最も 大きいため、保険会社の収益を悪化させる大きな要因となっている。ブラジル全国レベルでは、1999年に市場最悪の35万台という車両盗難が発生した。こ うした車両盗難多発の原因は、自動車窃盗のスペシャリストの横行と、盗取した自動車をさばく解体屋のブラックマーケットが出来あがっていることが原因であ るが、これまで政府・警察当局も有効な防止対策を打ち出せず、状況は改善していない。

1999年度も損害率は高かったが、それでもレアル切り下げの影響による高金利の恩恵を受け、各保険会社とも資産運用益で事業損を埋め合わせることが十分可能であった。

2000年度はインフレ率の低下、為替レートの安定に伴って金利が引き下げられたため、前年度のような資産収益は望めない。

なお、ブラジルにおける唯一の再保険独占会社であるIRB(ブラジル再保険株式会社)の民営化動向であるが、昨年10月の競売延期に始まり、本年度も4 月25日、7月25日と3度、競売が延期される異常事態となっている。現状では次回の競売実施時期について全く目途が立たない状況であり、当面混乱が続く ものと予想される。

 

2001年度の展望

当年度は好調なブラジル経済の基調に沿って、経済成長率も4~5%と予想されているが、収入保険料についても前年対比15~20%程度の好調な伸びが見 込まれている。 主要な保険種目の収入保険料が堅調に伸びている中で、個人保険の分野における年金・生命保険の延びがとくに顕著となっている。これは、イ ンフレの沈静化に伴い、消費者が計画的に家計を営むことが出来るようになったことで年金・生命保険への加入指向が高まった結果と言える。2000年には業 界大手の Maritima Segurosが年金・生命保険部門を切り離し、米国のNationwideとの共同出資により、同種目に特化した新会社を設立した。この動きは業界でも 大きな話題となったが、それだけこの分野の成長性が期待されるということであろう。

短期的には大幅な資産収益が見込めない中、各保険会社が収支改善のために取り組むべき最大のポイントは損害率の引き下げであるが、各保険会社間のはげしい 契約獲得競争による料率低下に加えて、止まるところを知らぬ自動車盗難事故や輸送貨物の強奪事故等による保険金支払いにより、損害率の改善は非常に困難と なっている。したがって、業界全体の収入保険料の伸びは期待できるが、収益性の面では決して楽観的見方はできない。

 

2001年上期業種別部会長懇談会-機械金属部会

  • 新記録 ― 2輪車と鉄鋼
  • 4年連続フル操業の軸受
  • グロバリゼーション突入
  • 自動車、国内販売増にあの手この手

 

●重工、プラント重電、建機、農機に活気戻る

司会 : ありがとうございます。扱い商品が非常に多岐に渡っている中、まとめて頂きまして有り難うございました。続きまして、機械・金属部会の大沢副部会長お願いいたします。

大沢:機械金属部会の大沢です。突然の宇治社長のご帰国、ただいま部会長不在という事で、副部会長として発表させて頂きます。2000年はおしなべて我 々の業界でも二ケタ成長と、ほとんどの所から聞かれた。大きいところでは60%ぐらいまで伸びたところもあるという事です。いままで長い間非常に苦労され ていた重工さん、プラント関係、生産財、重電、建機、農機メーカーといった業種に活気が戻った年だという事で、「本来の国としての経済成長が見込める時代 に入ってきたんじゃないか」というのが、我々一般的な意見です。それについては、当然、政府が非常にうまくインフレのコントロールをやっている、金利が下 がってきて、これからも下がるだろうという事があります。

アメリカの状況にもかなり左右されるわけだが、我々ブラジルにとってはい ま非常にいい順風が吹いているという事で、今まで景気の戻りが遅れていた、重工関係も良くなったし、当然、自動車、二輪、家電、そこらの高額な耐久消費 財、そういったものが非常に大きく伸びた。逆に今もおっしゃっていましたけど、大衆消費財、一般的な安い商品に伸びが少なかった。実際そこらの品物は2年 も前から、かなり伸びていたものだから、それがたまたま2ケタ、10%ぐらいの伸びだと「少ないな」という感じのところもあったと言えると思います。

我々の業界でも、色分けがついてきたと言いますか、とくに自動車・自動車部品関係で、グローバル企業、グローバル組と申しますか、要するにブラジル国内 だけの市場を当てにせず、世界のグローバル戦略の中のブラジル工場の位置付けという形で、もう過去4年、5年にわたってものすごい高額の投資を行ってき た、主として欧米系のメーカーが加わっているグローバル組とブラジル国内市場を目安に考えている国内組、そういうところで色分けがはっきりして来ていま す。国内組では今国内市場がすごくいい状態になって生産能力が不足している、という事で、逆にいうと、輸出の余力がなくなってしまった。今までは、輸出も まあまあやっていたんだけど、今はとてもじゃないけど輸出に回す余力がない。そういった関係で輸出が減っている。


●自動車生産能力 新設9工場60万台、全体で300万台

逆に車中心の部品、そういった所のグローバル組では、もう輸出危機となっています。実際に自動車の事について申し上げますと、この間そういった所が新聞 に出ていたわけなんですけども、過去3年間でもって、新しく工場をつくった9社、というか9工場の生産能力だけで60万台を見込むと。実際に動き出して2 年、3年、あるいはまだ動き出したばかりのところもありますが、そういった所で100%近い稼動をしているのは3社しかない。トヨタ・ホンダ・ルノーの3 工場だけで後は3割から半分にも満たない状況が続いていて、そこらはかなり切羽詰った選択に迫られるというような状態になっています。

というのは、輸出で数を稼ぐか、逆にクライスラーの様に世界的な戦略からすると、「ブラジルでは造れば造るだけ赤字なんだから、とてもじゃないけど続けら れない」という事で、生産中止を発表しましたね。動き出したのは一年ちょっと前で、もう生産中止というのは、グローバリゼーションというものの功罪であ り、採算的にあわない所は、容赦なく切り捨てる。生き残れるところ乃至は、メリットが出せる所で対外的にやろうという事で、今後とくに自動車業界では淘汰 が始まりますし、もう、実際に始まっていると思います。


●ブラジル式車販売

去年の車の売れ行き、生産状況は皆さんご存知の様に、24%生産がアップし、国内販売は18%の伸び、輸出が34%の伸び、これは台数ベースでの34%、さっき能澤さんがおっしゃった50数%というのは金額ベースです。

輸入車は逆に、為替が弱含みで推移してかなり高額なため、逆に2%減になりました。なんで車の国内マーケットが広がったかと申しますと、やはり一番の原 因は金利の低下と 売らんがための各メーカーのセールスプロモーションです。今日たまたま新聞を見て初めて知ったのですけど、ブラジルではTroca com trocoという、車を下取りに出してなおかつお釣りをもらうという販売方法が以前からあったようですね。新車か中古車のどちらかが要るのですけども、自 分の車の査定価格が買いたい車の50%なら、その50%までの金額なら自分でファイナンスするときに、30%までは頭金として残しましょう、そのかわり、 あとの20%はお金としてくれませんか?という形でくれるような販売方法がブラジルでは出来ると、今まではそんな事はとてもじゃないけど考えられない、た だ借金として後ろに残るだけの話だから、実際にあれなんですけども、面白いやり方だなと、その事によって、自分が持っている借金も払う事ができる訳で、そ れがたまたま去年の12月、1月すごく大きく伸びた原因だったそうです。

 

●今年は185万台生産か

今年もすごくいい具合に進んでおり、とくに出だしは好調で、Anfavea(自動車工業会)の予測ですと、180万台と15%の伸びを予測しているが、 金利がもっと低下して、場合によって、実際ブラジルで年間一ケタ台の金利は考えられないのですけども、実際その近くまでやって来たという事で、金利動向に よっては、益々パイが広がるという事から、実際生産も185万台の予測を立てているわけで、国内販売は160万台、輸出は40万台で200万台。恐らく 200万台は出せるであろうという事を予測しています。その200万台は、97年に初めて達成しておりますけど、来年は上手くすれば200万台まで行ける のじゃないかと言っており ます。

とくに車ないしオートバイがよく売れる原因は、金利の低下、政府のインフレ対策、為替の安定度合、雇 用の安定、そういったものが全て総合しまして消費者マインドと申しますが、そういったものが不安の解消というのが二番目にあげられる。三番目には、現在国 産メーカー11社がしのぎを削っているんですけども、そのしのぎが、新車のラインアップ、積極的な販売政策、先ほどのTroca com trocoではないけども、そういった積極的な販売政策という事も寄与して、今後もまだまだ、ブラジルでは車を買いたい人が沢山いるので、広がるのではな いかと思います。ただその広がり具合は、先ほど申し上げました各社の能力からすると現在、もうすでに300万台、年産の能力がございます。で実際185万 台、20万台、という事は、やはり3割から4割の輸出比率、場合によっては50%近い輸出比率をキープしないと満足な稼働率は得られないという結果になっ ており、当然各社とも輸出にドライブがかかるという事はあります。

 

●粗鋼生産2,774万トン

時間がなくなったので端折りますと、我々の業界で新記録をつくったというのが2カ所ございまして、自動車はまだ新記録に達していません。オートバイが非 常に大きく伸びまして、記録を更新して、更に今年もまだ伸びるだろうと言われています。その主な原因としては、オートバイは車よりも安いし、ブラジルの所 得水準に非常にマッチしている。それプラスの主力の125ccというのが、業務使用、モトボーイ、ああいったものは市場で重宝され非常に良く売れるという 事で、この機種に対しては価格競争力もあるだろうというような事で、輸出もこの機種に関してはやれるだろうという事で、オートバイ業界さん、非常にホクホ クの状況が続いております。

それから鉄鋼の分野で粗鋼の生産量が97年の記録を更新しまして、2774万トンというような事で、好調に 推移しました。ただしこれも鉄鋼業界も国内需要が旺盛になった事があって輸出はどんどん落ちる傾向、輸出が落ちて輸入が増えてしまうという状況になってい ます。それから軸受けさん、NSKさんなんですけども、過去4年間フル生産を続けていて、さらに40%も伸びたと。もうこれ以上伸ばし様もない状況にきて いるそうです。一応そんなところです。以上です。