● 経済好不況が半年、1年遅れて来る業界 |
1.5兆円市場 ― ブラジル建設業界 ―
林:非常に好調な部会の次で言いにくいのですけども、発表させていただきます。
建設不動産部会は建設・不動産関連の会社14社で構成されておりますが、常時ディスカッションに出てこられるのは7社ぐらいで、今日の報告もその7社の皆さんの発表が基本となっておりますので、お含みおき願いたいと思います。
はじめにブラジル全体の建設業界の概要をちょっとお話させていただきたいと思います。ブラジルの全建設業、土木、建築、設計、設備等の会社の年間総受注 額は、レアルプランに移行してから98年まで毎年少しずつ(5%から7%ぐらい)伸びておりました。そして98年にはレアルベースで約167億レアル。こ れ当時のレートでUS$にしますとUS$152億。ちなみに日本円にしますと約1.5兆円の業界でございました。
その当時、日本の業 界が大体7兆から8兆円ぐらいですから、日本の5分の1ぐらいの規模だったと記憶しております。ところが例の99年1月の為替切り下げ以降は減少に転じ、 残念ながら99年末には150億レアルまで落ちてしまいました。これはレアルベースでは前年比約10%減ですけれども、ドルベースにすると約45%の減に なってしまいました。そこで、今年の6月までの状況を、皆さんのアンケートで見ますと、昨年の同月と比べて余り伸びは出ておりません。ですから今年もこれ 以降、7月から12月まで期待しておりますが、まあ良くて昨年並みではないかと思います。で、これは前に少し述べたと思いますが、建設業というのは経済の 好不調が、半年から1年遅れぐらいで入ってくるものですから、その辺も影響しているのではないかと思われます。
日系企業ターゲットの業界は約27億レアル
この中でわれわれ日系建設業者がターゲットとしている民間企業からの受注額は総受注量の30%、約45億レアルぐらいです。また、われわれ日系建設業者 は大体サンパウロ周辺の仕事が多く、そのサンパウロ周辺の仕事というものがその60%ですので、われわれがターゲットとしている分野としては約27億レア ルの業界ではないかと思われます。
その中で99年の日系建設業者の総受注額、これはなかなかつかむのが大変なんですけれども、大体つ かんだところ約1億から1億5000万レアルぐらいですので、日系がターゲットとしている分野の約3.7%ぐらいとなります。この約1億から1億5000 万レアルというのは、はじめに言いましたブラジルの全建設業界からいくと約1%弱、これがわれわれ建設業界の状況でございます。このような小さなシェアな ので、今回の報告がブラジル全建設業の動向を適確につかんでいるとは言えないと思いますが、その傾向を垣間見ることは出来ると思います。
2000年の「上期の回顧」ですけれども、本年は昨年と比べ為替、金利、インフレとも安定しており、年前半から建築主の設備投資が増えるものと期待して いました。しかし、先ほど言いましたようにわれわれの業界では目立った受注の増加が見られず、各社の上期の数字をまとめますと、今年2000年の全体受注 計画の大体41%ぐらいとなっております。
ただし、この数字は昨年同時期と比べるとプラス7%になっており、本年は昨年より少しよく なっているのではないかと思います。また、一部建築資材、セメント、アルミ、鉄等の値上がりは相変わらず続いており、利益率は非常に低くなっております。 そのため各社とも、昨年より行っている経費削減をする必要がありますが、会社の組織、機能を考えますと、もうこれ以上出来ないようになっている会社もたく さんございます。
薄日さしている不動産業界
不動産業界に参りますと、こちらは建設業界に比べて多少好転してきたとの報告を受けております。事務所スペースの需要はその規模の大小、賃料の高低に よって差はありますが、根強いものがありパウリスタ、マージナル地区では空室率が約15%であるにもかかわらず、設備関連が充実したビルでは入居率 100%を達成しているところがたくさんあります。ただし、新規の新しい事務所ビルもどんどん出来ておりまして、それぞれのビルの建物ごとの物件力をお客 様のニーズに合ったものにしないと厳しい競争には勝てないようです。
供給過多のアパート
アパートの賃料とか売買の相場は、新旧併せて物件供給過多の傾向でどちらも相場は低下しております。特にアパート販売では、昨年まで好調だった高級ア パートが多少売れ行きが落ち込んでおり、販売業者においてはその手持ち未販売物件のコンドミニオの支払い等が出てまいりまして、その経費が経営を圧迫して いるという報告を受けております。
次に2000年下期の展望ですが、建設業界は各社の意見を総合しますと、下期に入っても上期と同様 の状況が続くのではないかと思われます。その要因としてはまず建築主の設備投資再開が予想以上に長引いており、大型工事の発注につながらない。次に財政責 任法が制定されたため、本来ならば選挙前に活発になる公共工事が出て来ません。そこで公共工事をメインとする大きな会社が下へ下りてくるため民間工事の競 争が一層厳しくなってきております。
また、石油価格の高騰による建設材料、輸送費の値上がりが、工事の採算を悪化させております。こ のような状況下で、各社の下期の受注予想は先ほどと同じように2000年全体計画に対して49%ですから、通期では90%ぐらいの受注になるのではないか と、予想しております。まあこの90%という数字は、ブラジルの経済好転を期待しているという、皆さんの願いも含まれている上向きの数字だと思います。
オフィスビル2極分化
次に不動産業界の「下期の展望」ですけれども、オフィスビルについては引続き需要は堅調に推移すると思われます。しかし、ビルの二極分化は確実に進行し ており、設備関連の充実したビル例えば情報通信、OA設備等の行き届いたものとそうでないものとの差がどんどん広がるような傾向があるようです。
アパートは交通環境のよいものが売れ始めて、昨年まで好調だった中間所得者用アパート、これは販売価格が4万5000から5万5000レアルぐらいです けれども、この売れ残りが目立ってきております。そのため今後はもうすこし下の層をターゲット、約月収3000レアルから4000レアルぐらいの方を対象 としたアパートの販売が検討されはじめているようでございます。以上で当部会の発表を終わらせて頂きます。
司会:どうもありがとうございました。それでは業種別部会報告の最後になります運輸サービス部会の萩野副部会長お願いします。