2000年下期業種別部会長懇談会-建設不動産部会

● 経済好不況が半年、1年遅れて来る業界
● 受注減、資材価格高騰で苦しい
● アパート建売業界は物件供給過多
● オフイスビルは2極分化傾向

 

1.5兆円市場  ― ブラジル建設業界 ―

林:非常に好調な部会の次で言いにくいのですけども、発表させていただきます。

建設不動産部会は建設・不動産関連の会社14社で構成されておりますが、常時ディスカッションに出てこられるのは7社ぐらいで、今日の報告もその7社の皆さんの発表が基本となっておりますので、お含みおき願いたいと思います。

はじめにブラジル全体の建設業界の概要をちょっとお話させていただきたいと思います。ブラジルの全建設業、土木、建築、設計、設備等の会社の年間総受注 額は、レアルプランに移行してから98年まで毎年少しずつ(5%から7%ぐらい)伸びておりました。そして98年にはレアルベースで約167億レアル。こ れ当時のレートでUS$にしますとUS$152億。ちなみに日本円にしますと約1.5兆円の業界でございました。

その当時、日本の業 界が大体7兆から8兆円ぐらいですから、日本の5分の1ぐらいの規模だったと記憶しております。ところが例の99年1月の為替切り下げ以降は減少に転じ、 残念ながら99年末には150億レアルまで落ちてしまいました。これはレアルベースでは前年比約10%減ですけれども、ドルベースにすると約45%の減に なってしまいました。そこで、今年の6月までの状況を、皆さんのアンケートで見ますと、昨年の同月と比べて余り伸びは出ておりません。ですから今年もこれ 以降、7月から12月まで期待しておりますが、まあ良くて昨年並みではないかと思います。で、これは前に少し述べたと思いますが、建設業というのは経済の 好不調が、半年から1年遅れぐらいで入ってくるものですから、その辺も影響しているのではないかと思われます。


日系企業ターゲットの業界は約27億レアル

この中でわれわれ日系建設業者がターゲットとしている民間企業からの受注額は総受注量の30%、約45億レアルぐらいです。また、われわれ日系建設業者 は大体サンパウロ周辺の仕事が多く、そのサンパウロ周辺の仕事というものがその60%ですので、われわれがターゲットとしている分野としては約27億レア ルの業界ではないかと思われます。

その中で99年の日系建設業者の総受注額、これはなかなかつかむのが大変なんですけれども、大体つ かんだところ約1億から1億5000万レアルぐらいですので、日系がターゲットとしている分野の約3.7%ぐらいとなります。この約1億から1億5000 万レアルというのは、はじめに言いましたブラジルの全建設業界からいくと約1%弱、これがわれわれ建設業界の状況でございます。このような小さなシェアな ので、今回の報告がブラジル全建設業の動向を適確につかんでいるとは言えないと思いますが、その傾向を垣間見ることは出来ると思います。

2000年の「上期の回顧」ですけれども、本年は昨年と比べ為替、金利、インフレとも安定しており、年前半から建築主の設備投資が増えるものと期待して いました。しかし、先ほど言いましたようにわれわれの業界では目立った受注の増加が見られず、各社の上期の数字をまとめますと、今年2000年の全体受注 計画の大体41%ぐらいとなっております。

ただし、この数字は昨年同時期と比べるとプラス7%になっており、本年は昨年より少しよく なっているのではないかと思います。また、一部建築資材、セメント、アルミ、鉄等の値上がりは相変わらず続いており、利益率は非常に低くなっております。 そのため各社とも、昨年より行っている経費削減をする必要がありますが、会社の組織、機能を考えますと、もうこれ以上出来ないようになっている会社もたく さんございます。

 

薄日さしている不動産業界

不動産業界に参りますと、こちらは建設業界に比べて多少好転してきたとの報告を受けております。事務所スペースの需要はその規模の大小、賃料の高低に よって差はありますが、根強いものがありパウリスタ、マージナル地区では空室率が約15%であるにもかかわらず、設備関連が充実したビルでは入居率 100%を達成しているところがたくさんあります。ただし、新規の新しい事務所ビルもどんどん出来ておりまして、それぞれのビルの建物ごとの物件力をお客 様のニーズに合ったものにしないと厳しい競争には勝てないようです。

 

供給過多のアパート

アパートの賃料とか売買の相場は、新旧併せて物件供給過多の傾向でどちらも相場は低下しております。特にアパート販売では、昨年まで好調だった高級ア パートが多少売れ行きが落ち込んでおり、販売業者においてはその手持ち未販売物件のコンドミニオの支払い等が出てまいりまして、その経費が経営を圧迫して いるという報告を受けております。

次に2000年下期の展望ですが、建設業界は各社の意見を総合しますと、下期に入っても上期と同様 の状況が続くのではないかと思われます。その要因としてはまず建築主の設備投資再開が予想以上に長引いており、大型工事の発注につながらない。次に財政責 任法が制定されたため、本来ならば選挙前に活発になる公共工事が出て来ません。そこで公共工事をメインとする大きな会社が下へ下りてくるため民間工事の競 争が一層厳しくなってきております。

また、石油価格の高騰による建設材料、輸送費の値上がりが、工事の採算を悪化させております。こ のような状況下で、各社の下期の受注予想は先ほどと同じように2000年全体計画に対して49%ですから、通期では90%ぐらいの受注になるのではないか と、予想しております。まあこの90%という数字は、ブラジルの経済好転を期待しているという、皆さんの願いも含まれている上向きの数字だと思います。

 

オフィスビル2極分化

次に不動産業界の「下期の展望」ですけれども、オフィスビルについては引続き需要は堅調に推移すると思われます。しかし、ビルの二極分化は確実に進行し ており、設備関連の充実したビル例えば情報通信、OA設備等の行き届いたものとそうでないものとの差がどんどん広がるような傾向があるようです。

アパートは交通環境のよいものが売れ始めて、昨年まで好調だった中間所得者用アパート、これは販売価格が4万5000から5万5000レアルぐらいです けれども、この売れ残りが目立ってきております。そのため今後はもうすこし下の層をターゲット、約月収3000レアルから4000レアルぐらいの方を対象 としたアパートの販売が検討されはじめているようでございます。以上で当部会の発表を終わらせて頂きます。

司会:どうもありがとうございました。それでは業種別部会報告の最後になります運輸サービス部会の萩野副部会長お願いします。

2000年下期業種別部会長懇談会-建設不動産部会(レポート)

1.2000年上期の回顧

〈建設業界〉

本年は昨年と比べると、為替、金利、インフレ共、安定しており、年前半から建築主の設備投資が増えるものと期待されていた。しかし、我々の業界では目立った受注の増加は見られず、各社の上期の数字をまとめてみると、2000年全体計画値の41% (7社平均)となっている。但し、この数字は、昨年同時期と比べて+7%となっており、本年が昨年よりは、良くなっていることを示している。

また、一部建築資機材(セメント、アルミ、鉄等)の値上りは続いており、厳しい受注競争と相俟って、低利益による受注を余儀なくされている。そのため各社共、昨年より行っているかなりドラステイックな経費削減をより一層進める必要に迫まられているが、会社の組織、機能を考えると実行出来ない部分もあり、そのジレンマに頭を悩ませている。

〈不動産業界〉

建設業界に比べると、こちらの業界には薄日が差して来たような傾向が見られる。事務所スペースの需要は、その規模の大小、賃料の高低によって差はあるものの、根強いものがあり、パウリスタ、マージナル地区の空室率が15%程度(2000年7月現在)であるにもかかわらず、設備関連の充実したビルでは入居率100%を達成しているところが多い。このため、昨年の同時期に比べると好調のようである。但し、新規物件の供給もかなり多くなってきており、各々のビルの物件力を正確に把握し、客層のニーズに合った物にしてゆかないと、厳しい競争には勝ち残れない。

アパートの賃料、売買の相場については、新旧あわせて、物件供給過多の傾向にあり、どちらもその相場は低下している。アパート販売では、昨年まで好調だった高級アパートの売れゆきが落ち込んできており、販売業者では手持未販売物件のコンドミニオの支払い等の経費がかさんで、その経営が圧迫されている。

2.2000年下期の展望

〈建設業界〉

各社の意見を総合すると、下期に入っても上期と同様の状況が続くと予想される。その要因として下記の項目が考えられる。

1)建築主の設備投資再開が予想以上に長引いており、大型工事の発注につながらない。

2)財政責任法が制定されたため、本来ならば選挙前に活発になる公共工事が減少、そのため民間工事の競争が一層厳しくなっている。

3)石油価額の高騰による、建設材料、輸送費の値上りが工事の採算性を悪化させている。

このような状況下で各社の下期の受注予想は2000年全体計画の49%(昨年比+4%)、通期では90%(昨年比+6%)となっており、厳しいながらも昨年を少し上回っている。この背景にはブラジル経済の好転もあるが、それと同時にこの苦しい状況を何とか切り抜けたいという、切なる願いも含まれている。

〈不動産業界〉

オフイスビルについては、引き続き需要は堅調に推移すると思われる。しかし、ビルの二極分化は確実に進行しており、設備関連の充実したビル、例えば、情報通信設備、OA設備、セキュリテイ、電気・衛生・空調設備の行届いたものと、そうでないものとの差は広がる一方である。

アパートについては、交通、環境の良いものが売れ始め、昨年まで好調だった中間所得者用アパートは売れ残りが目立ってきている。そのため今後は、もう少し下の層をターゲット(月収R$3000程度)としたシステム、例えばアソシアチボ方式等を採用したアパートの販売が検討され始めている。

3.いま、対伯投資を伸張させるために何が必要か?

我々の業界には、対応の難しい問題である。現在の課題及び各社の意見をまとめると下記の通りである。

対伯投資は、国内貯蓄が不十分なブラジルでは、経済成長に欠かせないものである。近年、投資が増大傾向にあるものの、ブラジル政府には、明確な戦略がないため、投資を誘致できる潜在力が十分に活用されていない。

1)投資し易い環境の整備
税制、財務、法務、労務、為替制度、治安等の改善

2)南米各国の市場の活性化
メルコスールの強化 (生産、販売の効率化等)
メルコスール参加各国の相互理解と協調

3)ブラジル進出の有効性アピール
官民協力によるイベント開催

各社業績の推移(2000年)
(2000年期初計画を100とした場合の比較)

会社名 受注 従業員
期初
計画
上期 下期
(予想)
実績
(予想)
期初
計画
上期 下期
(予想)
実績
(予想)
A 100 40 50 90 100 95 95 95
B 100 50 50 100 100 120 80 100
C 100 20 50 70 100 100 90 90
D 100 40 60 100 100 100 100 100
E 100 50 50 100 100 100 100 100
F 100 50 50 100 100 100 95 95
G 100 35 35 70 100 100 100 100
7社
平均
  41 49 90   102 94 97

2000年下期業種別部会長懇談会-金融部会

● あのBOZANO銀行も身売り
● バネスパ民営化で業界地図変る
● 治安悪化が業績に影響 ― 保険
● 欧米企業成功例を参考に

 

昨年上回る利益の銀行も
中小銀行はきびしい環境下に

山浦:金 融部会の山浦でございます。当部会は主に銀行及び保険会社が会員となっております。従いまして銀行、保険2部門の「回顧と展望」につきご報告いたします。 最初に2000年上期の回顧ですが、銀行業界を見ますと混乱の1999年上期と比較しまして、国内経済、為替、金利など安定した経営環境下にあったわけ で、従いまして、今年については為替切り下げ、高金利等で潤った99年度のような高利益が享受できまいというのが大方の見方でした。

しかしながら最近の報道によりますと、本年上期中に前年を更に上回る利益額を確保している銀行も結構あるということのようです。これは即ち金利が低下して スプレッドも縮小するということによりまして、債権単位あたりの利益率が当然低下するわけですが、薄利多売ではございませんが、貸し出しのボリュームを膨 らませることにより、金利収入額の嵩上げを計るということと、手数料収入を積み上げること。その一方で、コスト削減に尽力するという経営方針に転換してい るようです。加えて景気が上向いていること、また昨年末に制定されました新貸倒引当基準、これが厳しくなったわけですが、これにより過去の問題債権につい ては、既に充分な引当金を積んだということで、本年は引き当てコストが大幅に軽減しているという点も利益額嵩上げに貢献しているようです。一方で、新貸倒 引当基準や金利リスクをカバーする所要資本金の新規設定ということで、競争力の劣る中小金融機関の中には経営がさらに厳しくなりつつある可能性がありま す。従いまして、場合によっては他行による買収の対象となる銀行が今後出てくるのではないかと思われます。

なお、M&Aでは スペインのBanco SantanderがBanco Bozano Simonsen及び傘下のBanco Meridionalを買収し、国内民間第5位、外資系でもABN Amroに次ぐ第2位に躍進しましたが、この買収劇は新ナショナリズムの台頭を刺激することにもなりました。

また、かねてより予定されておりましたバネスパの民営化は、入札資格者の審査を終え9行が選定されましたが、労組からの訴訟もあり、現在プロセス自体が止っております。

続きまして保険業界上期の回顧です。保険業収入は経済回復とリンクして比較的順調に伸びました。また損害率も前年を下回る成績で結果として保険本業での 赤字は前年よりも改善しているということです。一方、運用益は金融環境が荒れている方が積みあがりやすいのですが、本年は昨年のようなボラタイルな為替や 高金利とは残念ながらほとんど縁がなかったため、充分な利益は確保しがたく、本業、運用トータルで見た上期損益はなかなか厳しい環境にあったと言えます。

次に2000年下期の展望です。こちらはまた田中先生のところと重なる部分もございますが、まず前回同様に部会会員13社を対象に経済動向予想アンケー トを実施しました。その平均値をご報告します。まず消費者物価。IPCAで取りましたが、こちらは上期累積の実績が1.6%で、下期で4.0%積み上がっ て、年間で5.6%になるだろうという結果になりました。それから卸し売り物価は上期実績3.3%に対して、下期5.8%、年間9.1%となっておりま す。下期に上期の倍近い物価上昇が見込まれるものの、IMFと合意している目標は充分達成できるという結果になっております。

 

実質金利下げ傾向にあるが、一ケタ達成は微妙
金融部会のアンケート予想

次に予想外に早く中銀基準金利が引き下げられた国内金利の見通しですが、銀行間金利(CDI)で下期平均16.6%、年末には16.1%とのアンケート 結果となっております。従いまして、実質金利は年末10.5%と先程先生がおっしゃっていた、フラガ中銀総裁が言うところの実質金利が年末には一ケタとい うことが達成されるか否か、金融部会の総意としては「微妙」だということとなっております。

最後の対ドル為替レートの予想ですが、下 期平均1.84レアル、年末で1.88レアルという結果となっております。今年1月に同じ様なアンケートを実施したわけですが、それと比べましてインフレ 率、金利とも1、2%下方修正しておりまして、為替も4~5%レアル高修正となっております。これはインフレコントロールが予想以上にうまく出来たという ことと、米国経済、アルゼンチン経済等の外的環境も危惧したほどのマイナス材料となっていない、ということなどが理由として挙げられると思われます。しか しながら、今後の懸念材料としまして、引続き統一地方選挙、財政構造改革の遅延、汚職疑惑などの国内政治動向と、加えましてアルゼンチン経済、米国経済、 国際石油動向などがアンケートでは挙げられております。

さて、銀行業界の2000年下期の展望に移りますが、やはり再三延期されてお りますバネスパの民営化がどうなるか、というのが業界最大の関心事であります。民営化がもし実施されれば、業界地図に大きな影響が出てくることは必至です し、先ほど申し上げた通り、中小銀行の経営環境の悪化とも呼応しまして、市場の競争激化、合併吸収が更に進展することが予想されます。

また、ファイナンスの環境と致しましては、国内金利の低下傾向からレアル建てのファイナンスの需要供給が増加し、加えまして海外からのブラジル向け与信 のニーズ増加もございまして、借り手有利の金融状況へと更に変化しまして、金利スプレッドが更に低下し、ファイナンス期間も長期化するというような以前よ り好条件での借り入れの選択肢が増えるものと思われます。


海外が注目再保険院〔IRB〕の民営化

最後に保険業界の展望ですが、保険料収入は上期同様に増加するものと予想されますが、損害率のほうは治安悪化などに連動しますので、これ以上改善しにく いとの懸念がございます。また金融環境は、「残念ながら」という表現をしますが、安定化する見込みでありますので、運用収益もさらに圧縮されまして、厳し い経営環境が続きそうです。保険業界でもバネスパ同様にブラジル再保険院、IRBと称しますが、こちらの民営化が再三延期されております。IRBの民営化 と同時に海外再保険の一部自由化や外国再保険会社の国内営業認可、外貨建て取引に伴う外貨決済の制限の緩和などの自由化が進められることになっており、海 外からの注目も高いので、今後既定路線通りに進むことが望まれます。

以上で業界の「回顧と展望」は終りますが、副題の方につきましては、金融機関の対伯投資という観点からですとなかなか難しいのですが、やはりこれもアンケートを取りましたところ、総じてブラジル側に改善してもらえれば、というような内容が多かったわけでございます。

ブラジルコストを引下げて欲しいと言うことですが、ただ、ブラジルコストが下がれば投資が伸張されるのかというと、これは若干疑問な気がしましす。基本 的には儲かるのであれば、進出してくるだろうということで、ただ、一方で欧米の企業は進出してきているわけですから、おそらく儲かる仕組みが既にあると。 従いまして、一つの案としましては、公的資金等を使いまして、この儲かる仕組みをたとえばコンサルタントを雇用致しまして、欧米企業の成功例のスタディー だとか経営モデルの構築等をして、それをアピールしてはいかがかな、というふうに思います。以上でございます。

司会:どうもありがとうございました。では引続き行きたいと思います。貿易部会の能澤さんお願い致します。

2000年下期業種別部会長懇談会-金融部会(レポート)

Ⅰ.銀行業界

1)2000年上期の回顧

(1)経済概況

1999年は年初の為替制度変更後、予想に反し+1%の成長を達成、2000年第1Qも前年第4Q比1.2%、前年同期比3.1%夫々伸び、鉱工業生産 も順調に回復を続けている。しかし、全国失業率上期平均は7.8%と99年平均7.6%を上回って推移している。インフレは、12ヵ月累積IPCAで見る と、3月末6.9%(IMF合意による目標7.5%)、6月末6.5%(同7.0%)と、目標の範囲内に収まった。中銀の金利政策はインフレ目標達成のた め慎重に運営され、基本金利Selic利率は99年9月から6ヵ月間19.0%、以後3ヵ月間18.5%で維持されたが、一転6月20日以降1ヵ月で 16.5%まで引下げられた。

国際収支面で特記すべきは、98年12月、99年4月引出したIMF Stand-by Creditの元本残額及びBIS/日本からの対伯支援融資全額、計103億ドルを4月に期限前返済したことで、外貨準備も3月末の392億ドルから4月 末287億ドルへ下がったが、以後280億ドル台で安定している。

対ドル為替レートは、3月に中銀がレアル買い介入した程度で、落ち 着いた推移である。上期の経常収支赤字は113億ドル、一方、外国直接投資は128 億ドルで、経常赤字を補填するに十分であった。政府はIMFとStand-by取極めの第5次改訂を交渉、5月末IMF理事会の承認を得た。今回の改訂で 変更された主な経済指標は、①本年末の対ドル為替レートは1.98レアル→1.75レアル、②中銀の純外貨準備高の下限額は、2000年下期毎月250億 ドルへ引き下げ等。

公共財政一次収支は1~4月累計で173億レアルの黒字と、既に6月末のIMF合意目標を11億レアル上回る。政府提案の『財政責任法』は成立したが、いわゆる「ブラジル・コスト」削減に不可欠で、実業界の要望が強い税制改革は進展していない。

(2)業界環境

99年の銀行業界平均利益率は16.6%と98年の11.7%を大幅に上回った。特に外資系銀行の平均は24.0%と地場系民間を引き離したが、上期の為替切り下げと金利高騰が主として米銀に有利に作用したためで、本年は同様の状況を繰り返してはいない。

逆に99年12月発令の銀行貸金分類と引当率の新規定、本年2月発令された利率リスクのカバーに係る所要資本金の設定は、特に中小銀行の利益率を下げる 要因となろう。他に発令された重要な銀行関係規定としては、①中銀の流動性再割利用の規定を一段と厳格化、②一覧性預金支払準備率引下げ(65% →55%→45%)、③CPMF税率引下げ(0.38%→0.30%)、④BNDESの長期金利TJLP引下げ(11%→10.25%)等があり、全般的 に金融取引面では自由化される一方、銀行の運営管理については困難と厳しさが増している。

M&A面では、Santander がBozano Simonsen /Meridionalを買収し、国内民間第5位、外資系でABN Amro に次ぐ第2位となった。他にも地場系UnibancoのCredibanco、Bandeirantes両銀行買収に加え、Bradescoの Boavista買収が報じられたが、これらは銀行順位の変更に繋がるものではない。但しBanespa民営化は金融市場に大きな影響を与えることは必至 である。資格審査には9銀行(地場系4行、外資系5行)がパスしたが、入札停止を狙う各種訴訟により民営化プロセスは手詰まりの状況が続いている。

2)2000年下期の展望

①GDP
中銀基本金利が6月から7月に2.0%引下げられたことは、一覧性預金準備率・長期金利の引下げと相俟って、景気の浮揚に好影響を与え、通年で3.5%前後の成長をもたらすと予想される。

② インフレ
為替、公共料金、金利、国際原油価格などの影響を免れないが、IPCAは目標(年末6%+2%の許容度)内に収まるであろう。

③ 為替
民営化プロセスの停滞もあり、外国直接投資の流入は前年水準を下回るが依然堅調の上、本年の中長期債務返済額が前年の500億ドルから300億ドルに減 ることから、国際収支は改善しよう。外準最低額引下げでIMFと合意したことから、中銀の弾力的な市場介入が可能となり、為替レートは 1.75%~1.90レアルで推移すると予想される。

④ 金利
未だ大幅切り下げの余地は少なく、年末のSelic利率は16%前後と思われる。

⑤ 業界トピック
当初、5月に予定されたBanespa民営化入札は再三延期されている。実施された場合、外資・地場何れの銀行が落札しても国内金融市場の地図は大きく変わり、市場の競争激化、集中度増大、合併・吸収の誘い水となる可能性が強まるだろう。

Ⅱ 保険業界

1)2000年上期の回顧

第1Qの保険料収入は業界全体で約55億レアルと、前年同期比で19.3%の増加となっている。民間で運営されている健康保険を除いたベースでも 19%と高い伸び率を示している。4~5%の伸び率であった前年と比べると、本年は国内経済成長基調に沿った順調な伸びを示していると言える。
第2Qもほぼ同様に推移しており、上期全体として比較的順調な伸びにある。主要な保険種目の構成は自動車30%、健康保険25%、生命保険17%となっている。

一方、第1Qの損害率は、前年を僅かに下回る67.2%となった。これに手数料率、経費率を加えた合算比率(保険収支の指標)は、3月末の業界値で104.3%と前年の105.7%に比しやや改善している。

前年上期は、レアル切下げ及び高金利策などが奏効し、保険本業とは別の資産収支面では大きな収益を計上した。これに反し本年は、年初来為替は概ね安定的 な推移を示し、また金利水準も低下傾向を続ける中で資産収益は前年を大きく下回る状況にある。従って、保険収支を示す合算比率がやや改善傾向にあるもの の、絶対水準は決して良好な水準になく、資産収益を含めた保険会社の上期損益はなかなか厳しい環境にあると評価される。


2)2000年下期の展望

金利低下、経済成長などに支えられ、保険料収入は上期同様の増加傾向を示すものと想定される。一方、損害率の動向については引き続き慎重な見方をせざる を得ない。これは自由化の進展による競争激化に加え、自動車の盗難、輸送貨物の強奪など治安や社会状況に連動した事故も減少傾向を見せていないことによ る。加えて、資産収益源となる金利水準も更に低下の可能性が伺えるなど、当業界にとって下期も収益面で厳しい環境が継続するものと認識される。

3)IRB民営化

今年度ブラジル保険業界における大きなトピックとして、従来再保険を通じて独占的な影響力を行使していたIRB(ブラジル再保険院)の民営化が挙げられ る。当初競売は4月25日に実施される予定であったが直前に3ヵ月延期され、更に連邦最高裁が野党から提出されていた競売の違憲差止め請求を認めたため、 再び行方が不透明となってきた。政府側は最高裁判断があっても競売は可能との立場を取っているが、今後の動向が注目される。

IRB民営化と共に海外再保険の一部自由化、外国再保険会社の国内営業認可、外貨建て取引に伴う外貨決済制限の緩和など自由化に向けた一連の措置も実施される予定であったが、今後いかなる影響を受けるか、当業界最大の関心事となっている。

保険監督行政面ではIRBに替わる保険監督当局(SUSEP)による監督手法の整備が進められる一方で、上記自由化措置が採られ、徐々にではあるが、当国保険行政も欧米型の体制に変化しつつあると考えられているだけに、既定の方向で自由化が進むことが望まれる。

当国保険市場については、再保険の自由化など方向性においては評価できる部分もあるが、当面まだ制限的な取扱い(外貨建て契約に対する制限、輸入貨物に 対する付保規制など)、課題も多く残されており、より開かれた市場へ変化していく必要がある。世界中に周知ずみのIRB民営化という政府方針が裁判所判断 で影響を受けることも、海外からの対伯投資を阻害する大きな要因の一つと考えられる。

2000年下期業種別部会長懇談会-機械金属部会

● 輸出競争力強化 ― 伯は質の競争に入った
● ワーゲン、フイアットは世界市場指向になった
● GM新工場みて感じる業界の変化
● 鉄鋼、2輪、部品好転、

 

自動車がブラジル輸出増の原動力

宇治:そ れでは機械金属部会から発表します。昨年上半期の為替切り下げによる苦い経験がウソのように、今年の上半期、機械金属部門全体としては順調に推移してきて おります。インフレ、金利の安定を背景に国内の消費マインドが上向いたことが回復の大きな原因ですが、本部門において特筆すべきは輸出の直接的、間接的貢 献が大きくなっているということです。

ブラジルの上期の輸出総額261億ドルは上期としては1948年以来の過去最高で、前年同期比 16%増となっていますが、その原動力が加工品、特にセルラー、飛行機、そしてここに、自動車の伸びが入って来ております。直接的な輸出金額だけで言え ば、機械金属部門としては大きな金額ではありませんが、確実に輸出ドライブが進行してきており、各企業が輸出のための設備投資を開始していることが、間接 的に国内景気に波及しているとも言えます。

昨年の経済危機がある意味では、現在のブラジルの姿をこの業界では変えておりまして、輸出 価格競争力、それから質の競争ということに本格的に入っていったと。ですから、輸出を常に視野に入れながら国内の投資も進めていく、という姿勢に変わって 来ております。それで品質改良、コスト削減、このへんが非常に競争のポイントになっております。

それから下半期については、上半期の流れが基本的には続くと思われます。このまま低金利傾向が続けば国内需要も安定してくるため、ますます売り上げ増は期待できます。

10月に予定されております中央選挙も公共投資に少しはプラスに働くと思われます。ただし、競争が激化しておりますので、利益の確保というのがなかなか 容易ではありません。ですから、商品力・価格競争力アップ、それからコスト低減でどうして売っていくかということがヤマになっております。

それから自動車ですけれども、去年の12月頃は、いくら落ちるのか分からないと言っていましたが、今から考えると去年の11月頃が底で、底を打って跳ね 上がり始めました。今年、国内市場での卸し売りは1月-6月で64万9000台と、前年度比9.4%増。内、輸入車の販売は7万4700台で前年度比 27%減。国産車は16.6%増ということになっております。

ところが、国産メーカー11社がどんどん投資して激しく競争してますので、名目上は随分値上げしているメーカーも値幅がなかなか取りにくいということになっております。

それから販促費も相当かけてやっております。鉄鋼、石油等事業費の値上がりもありまして、どうしても下から値が上がってくる。ここは、そういったメー カーが強いですから、すぐ「売らないよ」と高姿勢に出る。われわれも「まあ、仕方がないな」と購買の担当者がちょっと弱気になっとります。自動車メーカー がごり押しを通そうとする日本のようには行かないようです。

 

ブラジルは輸出基地
各メーカーの共通方針

さきほどから話が出ておりますように、ブラジルを輸出基地として位置づける、というのが各メーカーの共通方針になっております。メルコスールは先ほど言 われたように貿易量が増えているんですけれども、これは結局、規制がなかったから自然に物が流れていた。しかし、8月1日から規制に入ります。細目が決ま らず、ずるずる延ばされていれば、我々にとっては実にいい状況なんですが、細目なしにブラジル、アルゼンチンの大統領2人が握手したという事で、難しい状 況も今後出てくるんじゃないかと思われます。

輸出ではワーゲンがメキシコに出している。フィアットもヨーロッパ向け以外に全世界へやはり目を向けている。それで、上半期には合計17万1500台出して前年度比50.4%増と、大変な輸出増加になっております。

 

金利安定で、下期も伸びる予想

それから、生産台数は輸出に引っ張られて1月-6月で80万1000台。前年同期比124.5%ということで、メーカーはどこも、今まで人数を抱え過ぎていたというのが、今度は「ストライキをされては困る」という方向になっております。

下期も金利が安定しているから伸びるだろう、ということで年間では生産が160万台、前年比119%。国内市場向け137万台、109.6%。輸出が35万台、30.6%の予想を立てております。

損益のほうはまあ、自動車は台数ものですから、売れれば絶対儲かるということはみんな経験的に知っていますから、とにかく造ろうとします。欧米メーカー はコスト削減に関して、ここを実験工場にしております。先月、グラバタイーというポルト・アレグレの近くにGMが小型車の最新鋭工場をつくり、私も見に 行ってきましたが、ロボットをたくさん入れ、一応、年産12万台規模だが、コルサの小型モデルだから、まあ5万台ぐらいしかいかないーと言うことのようで す。その間どうするのかというと、彼らよく考えていて ー補助金を貰い、それからモジュール方式と言っておりますが、サプライヤーを同じ敷地の中へ持って きて彼らに投資させ、彼らのリスクに負ぶさって、それでラインは自分で守るー というような形式に変化してきております。

 

部品、2輪、重工業、農業、鉄鋼、工具の動き

重工業プラントでは、あんまり我々の会員は活躍していなくて、日本からの取組みを主としてやっているが、どうもうまく取れないと、日本の勢力が弱いからという事でした。

自動車部品は大変好調になってきて在庫不足。特にベアリングなんかはもの凄く足りないというような状況だそうです。

自動二輪が、これは大変販売が好調で前年同期比124%の27万6000台ということで非常に好調になっております。それから生産台数も30万7000 台で130%と。それから自動車メーカーのプジョーもパラナでスクーター生産に乗り出すとかですね。だからまあ、ここに近藤さんはいませんけれども、ホン ダの独占的なところへ少し挑戦してみようかなという気運が出てきていると。

農業機械は規模が小さいんですけれども、頑張っておりまして、今年は6から10%ぐらいの販売増を見込んでいると。

鉄鋼のほうは、なかなか好調であります。日本の新日鉄さんも、ウジミナスで自動車用薄板生産の投資もはじめるそうですし、業界として投資気運が高まっているようです。

電動工具は、為替の切り下げのため非常に厳しかったんですけれども、付加価値を付ける国産化で頑張っています。

まあ全般的にですね、去年に底を打って、そこそこ元気になって来たという事です。

 

ブラジルが米国型と認識してもらうには

それから副題の、むずかしいこの「対伯投資を伸張させるために何が必要か」。われわれ、本社を理解させるのはなかなか苦難な行事でございまして、先月、 張社長が2日間ほど、現地を見るというので初めて来られたんですけれども、私が日本にいくら ーここはアメリカ型の市場であるー と言っても理解されな かったんですが、ショッピングセンターに行って見たら、―ああ、これはアメリカだ!ー ということをやっと理解してくれたというようなことです。

われわれのところに役員がいっぱい来るんですけれども、なかなか、皆さんに理解して頂けない。それと国が大きすぎるので、サンパウロとリオを見ただけではこの広いブラジルがよく分からないところもあります。

司会:どうもありがとうございました。それでは、コーヒー・ブレイクと1時45分まで休憩します。45分から始めますので宜しくお願いします。

休 憩

司会:それでは後半の部分に入りたいと思います。繊維部会の名取さん、発表お願いします。

2000年下期業種別部会長懇談会-機械金属部会(レポート)

2000年上半期の回顧と下半期の展望

昨年上半期の為替切下げによる苦い経験が嘘のように、今年の上半期は機械・金属部門全体としては順調に推移してきている。

インフレ、金利安定を背景に国内の消費マインドが上向いたことが、回復の大きな要因だが、本部門において特筆すべきは輸出の直接、間接的貢献である。

ブラジルの上期輸出総額261.5億㌦は上期としては、1948年以来の過去最高で前年同期比16.5%増となった。その原動力と言われているのが加工品とくにセルラー、飛行機、自動車等の伸びである。直接的な輸出金額だけを捉えれば、まだ機械金属部門として大したレベルにはないが、確実に輸出ドライブが進行しており、各企業が輸出のための設備投資を開始していることが間接的な貢献となって各業種に波及している。

昨年の経済危機がある意味では現在のブラジルの姿を急激に変えたと言えるかもしれない。

つまり、デバリにより輸出競争力向上とともに国内のリスクを分散すべく、多くの企業が輸出のための備えを始めた。

輸出を睨んだ投資は単に能増するための設備投資に留まらず、国際競争力の向上という大命題のもと将来の品質改善、コスト削減のための投資に及んでおり、関連の業種も巻き込んだ形で進められている。

上半期はそのような動きがはっきりと形となって見え始めたと言える。

下半期については、上半期の流れが基本的には続くと見られる。

このまま低金利傾向が続けば、国内需要も安定してくるため益々売上増が期待できるだろう。

10月に予定されている市長選挙も公共投資を通じてプラスに働くと思われる。

但し、売上を伸ばせても利益を確保できるかは別の問題である。競争激化のなかどう生き残るか、がどの業種にも共通して言える課題であり、商品力アップとコスト低減を両立させることがこれからのブラジル企業にとっての最大テーマと言えるだろう。

以下、業種別動向を簡単にとりまとめた。

 

業種別動向

<自動車>

本年上半期は年初から良いスタートがきれた。

国内経済の落ち着きとともに、国内の自動車市場は回復基調となり、各社とも昨年に比べ、売上を伸ばしている。全体では1-6月卸売684.9千台を記録。前年同期比9.4%増となった。

輸入車販売は為替安の影響で依然低迷し、74.7千台、前年同期比▲27%となったが、国産車はそれに対し、16.6%増となっており、市場は国産車を中心に伸長している。

但し、国産メーク11社が相変わらず激しい競争を繰り広げており、収益的には厳しい。

昨年の為替切下げによるコストアップを売値に転嫁すべく各社とも年初より値上げを実行してきたが、市場がそれを受入れず、結果的には販促費を相当かけている。また、鉄鋼等素材メーカーの値上げ圧力も加わり、収益的にはなかなか改善までには至らないところが多い。

上半期で特筆すべきは、輸出ドライブへとかなりのスピードで転換してきていることである。グローバル化の中で、ブラジルを輸出基地として位置付けるメーカーが多く、今年になって急激にその動きが具体化してきている。

傾向としては、従来のメルコスールを含む南米中心の輸出から北米・欧州・アジアへ向けての本格的な輸出の開始である。

フィアットは従来より全輸出の85%をヨーロッパに向けていたが、今年になってVWもメキシコに年間40千台、北米向けにも輸出を再開、業界全体では、上半期171.5千台の輸出となり、前年同期比50.4%増に達した。

ブラジルメーカーが徐々に力をつけてきて品質面でも国際水準に近づいてきた証拠であろう。

輸出の伸長は全体の生産台数増にも貢献し、1-6月で累計801.1千台、前年同期比124.5%となり、国内生産は回復基調となった。

下期については、低金利安定化を前提に、上期の調子が継続されると思われる。

割賦販売比率が昨今70%程度と回復しており、先月はメーカー系銀行がさらに割賦金利を下げる動きを見せており、国内需要の増加が期待される。

輸出については、アルゼンチンとの2国間協定で8月よりメーカー毎の輸出入バランスが求められるようになるため、同国向け輸出は縮小。代わってメキシコ・北米向け輸出が増加し、台数規模は従来以上となろう。

ANFAVEA(自動車工業会)では、通年で生産1.6百万台(前年比119.0%)、国内販売1.37百万台(同109.6%)、輸出35万台(同130.6%)と強気の予想を立てている。

昨年と比べると、売上増加は期待できる。

さて、問題は損益的に回復できるかである。

競争の激化により、今後とも値上げによる利益確保が困難であることは明白であり、いかにコストを下げるかが最大の課題である。

ブラジルでコストアップ要因として顕著なのは、物流費、労務費、金利コストと言われている。

GM等欧米メーカーはこれらのコスト削減に向け積極的に取組み始めた。

例えばGMが先月発表したGravatai工場は、モジュール形式と言われる工場内部品外注化を採用し、物流費及び労務費の削減を志向している。

また、販売面でも同工場で造る小型車をインターネットで販売する計画もあり、在庫金利の低減を目指している。

製造・販売両面で本格的なコスト削減のための動きが顕著となってきており、日本勢はうかうかしていられない。日本メークも今後ブラジルに投資を進めて行く上で、しっかりとした調査・分析のもと、従来のやり方にとらわれず、他社の良い例は吸収しながら成長していくことが必要となる。

 

<重工業・プラント>

昨年下期からの輸出の伸張、国内消費の拡大傾向に支えられ製鉄・食品・自動車等各業界とも増産のための設備投資を開始。本年上期になって、機械設備・プラントの受注が伸びている。

今のところ、欧州勢が落札するケースが多く、日本勢は次の商機に備えている。

また、輸出振興に伴い、港湾施設の投資も増加傾向でマテハン関連設備の案件が急増。但し、小型シップローダーでは安い中国製が強く日本勢は大型に集中。

BNDES融資を受けるための条件、国産化率60%も日本勢には厳しい。

電力の分散化から発電プラント等の大口案件は急増しているが、まだ具体的に建設を開始した案件は少なく、各社とも入札の準備を進めている。

ユーティリティの外注化が進んでおり、産業冷凍業界などでも技術・工事・メンテナンスを一括管理したサービスを提供する傾向となってきた。

下期は引き続き輸出関連企業、発電プラント等を中心に大型設備投資があり、受注増が期待できる。

日本勢にとってはブラジルへの大型投資に対し、いかに本社を説得していくかが鍵。

また、価格競争ではなく、いかに新技術を織り込むかも日本勢への課題。

産業冷凍業界では、日本勢が生ジュースの凍結輸送の開発、食肉・食品会社の配送センターへの一括サービス体制構築など積極的な事業展開を計画、売上増が期待できる。

 

<自動車部品>

年初からの自動車業界の回復に伴い、本年上期は各社順調に売上を伸ばした。

特にベアリングは国内のみならず、世界的な需要回復により、アジア・欧州等からの注文も伸び、売上が昨年比50%以上伸長しているケースもあり、逆に在庫不足の状況。メーカーによっては、工場も3直フル操業が続いている。

損益的には、原材料・鉄鋼メーカーのモノポリーにより、値上げを飲まざるを得ず、各社とも苦しい状況。

輸出は先進国向けが増えており、仕様への要求度が高くなっており、安くて良いものを作るよう各社しのぎを削っている。

アルゼンチン向け輸出は購買力の問題で徐々に減少傾向。下期も基本的には上期の調子が続き、国内・輸出とも順調に推移する見込み。

部品工業会では本年通年で114億㌦の売上、前年比約10%増を見込んでいる。

技術力・品質の向上により、輸出先は増加、これまでのアンコム製は既にブラジル製が取って代わる傾向だが、グローバルソーシングの基地としてアジア・欧州・北米向けも増加が見込まれる。生産キャバを上げるべく各社能増投資を計画している。

 

<自動二輪車>

上期の国内市場は景気の回復、金利低下による需要増を背景に主要メークのモデルチェンジ・新機種導入が重なり、前年同期比124%の276千台を記録した。

加えて、為替切下げによる国際競争力アップにより輸出が大幅に伸長(前年同期比237%の31千台)、結果として生産台数は前年同期比130%の 307千台を記録。下期は、さらなる金利の低下により割賦販売の増加が予想され、市場はゆるやかに拡大する見込みである。

各社投資に意欲的であり、自動車メーカーのブジョーもパラナ州にて地場企業との提携で50~125ccの小型バイクの生産に乗り出すことを発表しており、業界全体として工場進出、能増、販売網拡充等成長路線を歩むことを期待している。

輸出は、販路拡大により引き続き上昇傾向で、北米輸出、ブラジル・メキシコ2国間協定の行方が注目される。

 

<農業機械>

本年上期は、政府融資PRONAFが再開し、久々に耕運機市場が好調。

トラクターも国内需要の回復、政府農業融資FINAMEの導入により、中・大型(前年同期比108.6%)小型(同129.3)と増加。

但し、小規模農家を対象としたFINAMEは銀行が慎重な姿勢をくずさず、あまり機能しなかった。

期待されていた汎用ディーゼル・エンジンは、主要市場の北東部が予想外の多雨となり灌漑用ポンプ需要が低調、前年同期比97.4%となった。

農業機械の輸出はまだ少量だが1-6月で2451台と前年同期比131.5%で増加傾向。

下期も全体としては、上期同様の傾向。トラクター業界では本年通年で2.6~2.7万台、前年比6~10%の販売を見込んでいる。 

汎用ディーゼル・エンジンは、北東部が乾季にはいるため市長選にともなう特需が期待できる。

 

<鉄鋼>

本年上期の国内鋼材需要は、国内経済の回復基調に伴い増加、1-4月期の国内鋼材消費量は前年同期比111.5%(鋼板119.2%、条鋼102.2%)を記録。特に自動車、自動車部品、大径管、建設機械、農業機械用鋼板需要は拡大した。

また、メッキ鋼板については自動車、家電分野を中心に冷延鋼板からの切替えの動きが見られ、需要が好調。

鋼材全体の輸出は、1-4月期で3.4 百万㌧と前年同期比106.8%となった。 

但し、鋼板の輸出は国内需要も逼迫し、一時期輸出困難で前年比微減となった。半製品、条鋼の輸出は前年同期比でそれぞれ104.3%、148.2%と順調だった。結果、1-5月生産実績では、鋼材全体では10.3百万㌧(前年比107.3%)。その内鋼板が7.3百万㌧で前年比108.0%、条鋼類は 3.0百万㌧、前年比105.8%といずれも増加となった。

粗鋼生産は11.3百万㌧で前年同期比109.3%となった。   

輸入鋼材は全体としては為替切下げにより微減だが、メッキ鋼板については建材向け需要増を受け、前年同期比159.4%と大きく伸長。 

下期は全国市長選挙対応としての公共投資が期待され、国内の鋼材消費量は過去最高の1997年レベル、15.3百万㌧にのぼると予想している。

特記事項としては、自動車用を主体とした溶融亜鉛メッキ鋼板の製造が9月よりUSIMINASで開始される予定。新日鉄の出資による合弁事業となり、高付加価値製品の需要増が期待されている。

 

<電動工具>

本年上期は、国内市場の回復を楽観視し、各社とも昨年の通貨切下げによるコストをカバーすべく、値上げを実施。しかしながら、期待されるほど売上が伸びず、結局プロモーション等により価格を抑えざるをえず、損益的には依然苦しい。

その中で現地生産メークは比較的有利でさらなる現調化により競争力を向上している。輸出はメルコスール向けからアメリカ向けにシフトしているが、輸出額自体は全売上の5%程度に過ぎずまだ少量にとどまる。

下期は基本金利の低下による国内市場伸長を予想。通年で昨年比20%増。1昨年並みの市場レベルまでの回復を期待している。

景気の戻りにより、中国製、日本製輸入品も徐々に増える傾向になるが、新製品を導入することが今後の鍵を握る。

引き続き各社高国産化を図っており、そのための設備投資増加が予想される。

 

<切削工具>

本年は年初より国内・輸出とも出足好調。特に日本向けを中心に輸出需要が急増、生産能力が逼迫し始めている。

為替の影響で輸入品は低迷していたが、今年になってから国産にないハイテク仕様の商品が堅調に伸び始めた。

下期も自動車業界の回復に支えられ、楽観視できるが、素材の値上がりを販価に転嫁できず、引き続き収益を苦しめることになろう。

2000年下期業種別部会長懇談会-化学部会

● 3センターのエチレン生産合計128.3万㌧
● 原油値上げでナフサ価格15%アップ
● 農薬メーカーは外資系17社上期売上げ合計5.7億㌦
● 大競合時代に備える業界

 

国際原油価格上昇たたるがナイロン、ポリエステルは好調

矢島:そ れでは2000年の化学業界「上期の回顧」、いつものように上流部門から順に報告します。石油化学と合成樹脂をまとめてお話しますが、業界の動向を示すエ チレンの生産量を見ますと、ブラジルの三つのセンター会社のエチレン生産量は合計で128万3000トン、この期間の能力対比で90.5%の稼働率を示し まして、これは高くもないけれども、低くもないレベルを示しております。注目すべきはこの間の国際原油価格の値上がりでして、石化向けの出発原料、原料ナ フサが年初200ドル/トンであったものが、6月末には230ドルラインへと約15%アップしました。これを受けてエチレン価格も期間中、3センター平均 で8%値上がりしました。

次に誘導品の動向を見て参りますと、合成樹脂はこのナフサ価格の上昇をうけて、今年に入り値上げが続いてお ります。約10から15%の値上げですが、電力料金の値上げもあり、昨年来蓄積しておりましたコストアップ要因を製品価格へ思うように転嫁できていないの が現状です。さらに韓国、台湾からの安値輸入品に押されまして、これに対抗するために必然的に手取りマージンが圧縮されてきているのが悩みの種です。

合成樹脂以外の誘導品ではナイロン、ポリエステルなどに代表される合繊繊維が末端衣料品の旺盛な需要に支えられ繊維用中間原料でありますカプロラクタ ム、エチレングリコールがともに好調でありました。ただエチレングリコールは年央海外に新増設能力の立ち上げもありまして、後半弱含みへ転化してきており ます。もう一つの誘導品で合成ゴムは自動車用タイヤ、サンダル用等が好調で、自動車タイヤには、タイヤコード用に上記のナイロンも出荷旺盛で、これは自動 車産業が今年になって着実に回復していることの証であると見られます。

で、同じ事は塗料、接着剤、さらにこれらの溶剤製品も好調に推移したことにも現れております。原油価格とナフサの値上げがあったにも関らず、上期の化学上流部門はまずは堅調に推移したと言えます。


農業不振で農薬業界厳しい局面に

次に各化学業界を順に見て参ります。農薬ですが、異常気象と前年度末からの流通在庫の過剰で、上期の農薬業界は苦しい展開を強いられました。農薬市場を 作物別に見て参りますと、ラニーニャ現象の影響で開花期のコーヒーが落花し収穫減。大豆は種まきの大幅遅延で収穫時期が大幅にずれ、上期の収量は通常の半 分以下。コーンは2月からの秋作に干ばつが重なり、この影響で全く不振。ジュース用オレンジは昨年来の価格暴落で、収穫さえされない状況が続きました。総 じて農家経済は厳しい状況に置かれ、この結果、外資系農薬工業界17社の上期の売上合計は5.7億ドルと昨年同期比8.7%増でありましたが、そのうちの 7社が前期対比でマイナス、加えて過剰在庫中心の在庫販売が重なりました。秋作の不振とあいまって、在庫の調整が出来ないまま上期を終えたというのが実状 です。客先の農家からは支払い延期の要請があり、代金回収の長期化を招いておりまして、レアルプラン以降順調に来た農薬業界は厳しい局面に立っておりま す。


金属工作油は販売2割アップ
役務提供増す水処理業界

次に金属工作油業界ですが、本年上期の販売は前年同期に対して2割アップ。しかしながら前期比は4%増に過ぎず、ほぼ同水準でありました。これは主力の 自動車分野が順調に回復してはいるものの、鉄鋼・繊維分野が微増ないし横ばいであったのに加えまして、欧米系競合メーカーの攻勢が活発化で販売環境が厳し さを増してきていることによります。

その次に水処理業界ですが、客先を大別しますと、石油、石油化学、鉄鋼、紙パに代表されます大手 需要家中心のA市場、それ以外の中小需要家からなるB市場で、ボイラー、冷却設備向け使用量は変わりませんでしたが、鉄鋼、紙パは需要も上々で要望も厳し くなく、商売がやりやすくなりました。新しい傾向としては、製品納入売り切りの従来タイプの商売から漸次、サービス、役務提供の度合いが高まってきていま す。ただ、この分野は人手がかかり、会員企業にあっては、これへのフォローは非常に難しいとしております。

 

毎月前年割れのフィルム  文具、ロジンは価格調整

次に写真フィルム業界ですが、この業界は99年以降不振が続いておりまして、数量、価格とも思わしくありません。本年上期4月までは、小売りベースでほ ぼ毎月前年割れが続きまして、メーカー出荷も同じ状況でした。価格も数パーセント下落を示しました。5月に入り、若干持ち直したものの上期累計では対前年 比マイナス。不振の原因を見ますと、消費者の所得増がないためと分析していますが、全般的にブラジル経済回復という見方が一般的ですけれど、この業界にそ の実感はないとしておりまして、農薬業界とならんで苦戦を強いられております。

塗料・接着剤分野には当部会会員に2社いますが、原料 の一つでありますロジンのメーカーから見た動向についてお話しします。この業界がようやく3月以降になって、塗料・接着剤関連企業も購買を再開し、荷動き も増加してきました。この理由は昨年末にいわゆるY2K、コンピュータ誤作動問題に絡みまして、年末に在庫を積み増ししたお客さん、需要家企業が多く、年 明けの製品出荷が低迷してきたためです。

製紙業界では稼働率が90%以上で操業したことで、製紙用製品の販売も増加し、このため低価格であった製紙用製品も5、6%の調整、いわゆる値上げができました。

その次は文具業界ですが、当部会では最川下分野に位置する会員企業からの報告です。主力のボールペン、サインペンは昨年が市場最高の業績でしたが、今年 に入りさらに伸びております。どちらかといえばサインペンの伸びが大きく、昨年かなり値上げしたため数量面ではマイナスでしたけれども、金額面ではプラス にふれました。その結果、上期は売上高で7%、利益率で3%の上昇を見ました。

 

川下分野はエチレン値上がりを懸念

化学品の輸出入について若干触れておきます。今回から商社の化学品担当部長さんが新たに参加されまして、その方の報告です。毎月の取り扱い品目が70に も及ぶ中で、上期は有機化学品の輸出が好調、逆に輸入は国内メーカーのプラント・トラブルで供給ネックとなった中間原料等が活発に行われました。

同じく自動車、製紙関連製品も活発化してきており、この分野の回復基調が本格化してきていることが伺えます。変わった輸入品目としまして、ブラジルは環 境対策後進国と言ってよく、先進世界ですでに使用禁止されている化学物質でもブラジルで禁止されていなければ平気で使用される。そのため、食品添加物の サッカリンは日本で禁止されて久しいけれども、ブラジルでは未だに使用が認められており、あのコカコーラにもブラジル品には含まれているそうです。で、こ のサッカリンの輸入がこの間行われているとの報告がございました。

以上が上期の動向でございます。つぎに下期の展望に触れます。

化学業界のみならず、経済活動全般への大きな影響因子であります原油価格は、6月末で30ドルを超すレベルで展開してきました。下期の原油価格はこの基 調から27~32ドルのレンジで振れるであろうと思われます。ちなみにこの8月1日のWTIは27ドル台後半をつけました。

経済一般 は上期の景気が継続する可能性が高く、例年下期が需要シーズンであります合成樹脂業界を中心にその基調を期待しております。ただし、石化原料ナフサが7月 から更に値上げされまして、6月末の230ドル/トンから一挙に295ドルと28%も上昇したことからエチレン以下の価格上昇が川下分野に与える影響が懸 念されています。

業界の対策としましては、こうした川上からの原材料の順次値上げ、電力代、輸送賃等公共料金の値上げを受けて、製品 価格への転嫁、少なくとも昨年の原価率を維持しながら、他方で高品位製品の開発投入で、販売シェアを図り、世界レベルの大競合時代の生き残りをかけていき たいとしております。
以上が上期の回顧と下期の展望です。終わります。

なお、対伯投資等うんぬんは、ちょっと長くなるかと思いますので後の部に譲りたいと思います。

司会:ど うもありがとうございました。コンサルタント部会と金融部会は、いろいろ不安要素はあるものの、概ね通期で好調ということのようだと思うんですけれども、 後の貿易部会、化学部会、若干縞模様ながら、まあまあトータルとしてはプラスかなということじゃないかと思います。では次に機械金属部会の宇治さんにお願 いします。これが終りましたらコーヒーブレイクを取りたいと思いますので宜しくお願いします。

2000年下期業種別部会長懇談会-化学部会(レポート)

〔2000年上期の展望〕

(1)石油化学・合成樹脂

業界の動向を示すエチレンの生産量をみると、3つのセンター会社の内COPENEが556.8千トン、PQUが226千トン、COPESULが速報で約500千トン、能力対比でCOPENEが稼働率93%に達したものの、他2社は90%以下。

注目すべきは、この間の国際原油価格値上がりで石化向け原料ナフサが年初200㌦/㌧であったものが、6月には230㌦ラインへと約15%アップ、これを受けてエチレン価格も同期間中3センター平均で8%値上がりした。

エチレンの値上げにもかかわらず誘導品の代表PE(ポリエチレン)は、例えばカマサリ所在POLIALDEN社では年産150千㌧ブラントがフル稼動、そもそも同コンビナートのエチレン系誘導品メーカーの生産能力を合わせるとCOPENEの1,200千㌧では不足し、このため、このところ恒常的に原料エチレンの取り合いが見られる。

PEをはじめとする合成樹脂全体では、上期の生産量は昨年同期比20%近く増加している。これに伴い単体樹脂での着色、補強材・添加剤を入れた複合樹脂の生産量も着実に増え、各需要業界の回復が順調に進んでいることをうかがわせる。

用途別には、自動車向けPP、家電向けPSを中心とした工業部品、トイレタリー・洗剤用中空ボトル向けPE、更には電気・通信ケーブル被覆用PE、食品・飲料ボトル向けPETなどが好調の代表選手。

特に、ミネラルウォーター用ボトルは従来のPVCから近年PETへの置き換えが盛ん、スーパーに並ぶ水ボトルは完全にPET製に切り替わった。逆にオフィスなどで使用する20Lの飲料水用ボトルは従来PCであったものが、PVCやPPなど価格の安い素材へ代替されて来ており、安全や環境へ未だ無配慮の国柄であることもしのばれる。

合成樹脂はナフサ価格の上昇を受けて今年に入ってから値上げが続いており、加えて電力料金などの値上げもあって、昨年来蓄積しているコストアップ要因を製品価格へ思うように転嫁できていないのが問題。

更に、韓国・台湾からの安値輸入品に押され、これに対抗するため必然的に手取りマージンは圧縮されてきているのが悩み。

合成樹脂以外の誘導品では、ナイロン、ポリエステルなど合成繊維が末端衣料品の旺盛な需要に支えられ繊維用中間原料であるカプロラクタム、エチレングリコールらとともに好調であった。ただ、EGは年央海外新増設能力の立ち上げもあって、後半弱含みへ転化。

合成ゴムは、自動車用タイヤ、サンダル用が好調、自動車タイヤにはタイヤコード用に上記のナイロンも出荷が旺盛、これは自動車産業が今年になって着実に回復していることの証しで、このことは塗料・接着剤、更にこれらの溶剤製品も好調に推移したことにも現れている。

原油価格とのナフサの値上がりがあったにもかかわらず、上期の化学上流部門はまずは堅調に推移したと言える。

(2)農薬

異常気象と前年度末からの流通在庫の過剰で、上期農薬業界は苦しい展開を強いられた。

作物別に見ると、ラニーニャの影響で開花期のコーヒーが落花し収穫減、大豆は種まきの大幅遅延で収穫時期がずれ上期の収量は通常の半分以下、コーンは2月からの秋作が旱魃の影響で全く不振、ジュース用オレンジは昨年来の価格暴落で収穫さえされない状況で、農家経済は総じて厳しい状態にある。

この結果、外資系農薬工業界17社の上期の売上合計は5.7億㌦と、前年同期比8.7%増であったものの、内7社がマイナスかつ在庫販売が中心、秋作の不振とあいまって在庫の調整を出来ないまま上期を終えた。客先の農家からは支払いの延期要請により代金回収の長期化を招いており、レアルプラン以降順調に来た農薬業界は厳しい局面に立っている。

(3)金属工作油

本年上期の販売は前年同期に比し20%増ながら前期比では4%増に過ぎず、ほぼ同水準。

これは主力の自動車分野が順調に回復(上期生産台数約800千台で、前年同期比24%の増)しているものの、鉄鋼・繊維分野が微増ないし横ばいであったのに加え、欧米系競合メーカーの攻勢活発化で販売環境が厳しさを増してきていることによる。

採算面では、ペトロブラスのベースオイルの30%強の値上げにより、純売上げ対比原料比率が5ポイントアップしたが、経費を4%ダウンに抑え、営業利益は横ばいであった。

(4)水処理剤

客先を大別するに、石油・石油化学、鉄鋼、紙パに代表される大手需要家からなるA市場、それ以外の中・小需要家からなるB市場で、ボイラー・冷却設備向け使用量は変わらないが、鉄鋼・紙パは需要も上々で、要望も厳しくなく商売はやり易くなった。

但し、製品納入・売りっきりの従来タイプの商売から、漸次サービス(役務)提供の度合いが高まってきている。新たなトレンドとしては設備貸与+ファイナンスを打ち出す競合メーカーも出てきており、既に鉄鋼分野で実績が見られる。こうしたオペレーションサービスは営業経費が掛かり(対売上比率35%)、これへのフォローは難しい。

原材料は輸入品ないしドル建て購入で、従来よりも30%~40%も上がってきている。

(5)写真フィルム

99年以降不振が続いており、数量、価格とも思わしくない。

本年上期4月までは小売ベースでほぼ毎月前年割れが続き、メーカー出荷も同じ状況、価格も数%下落を示した。5月に入り若干持ちなおしたが、上期累計では対前年マイナス。不振の原因は消費者の所得増がないためと分析しており、全般的にブラジル経済回復との見方が一般的だが、当業界にその実感は感じられない。

一般消費を含むブラジル経済の本年後半の回復に期待したい。


(6)塗料・接着剤

いわゆる「Y2K」、ミレニアム問題でコンピューターが誤作動を起こす可能性があると懸念したユーザーでは昨年末に在庫積み増しをしたため、年明けの製品出荷が低迷した。

ようやく3月以降になって塗料・接着剤関連企業も購買を再開、荷動きも増加してきた。

製紙業界では稼働率が90%以上で操業したことで製紙用製品の販売も増加し、このため価格も5~6%の調整(値上げ)ができた。

原料ロジン(松脂)は中国の生産が好調で世界への輸出も活発なことから、欧米では市況が低下、同じ輸出国であるブラジルも中国品との競合で価格は下がりつつある。

(7)文具

主力のボールペン、サインペンは、昨年が史上最高の業績であったが、今年に入り更に伸びている。とちらかといえばサインペンの伸びが大きい。昨年かなり値上げしたため、数量面ではマイナスだったが、金額面ではプラスにふれた。結果、上期は売上高で7%、利益率で3%の上昇をみた。

会議室などで使われるホワイトボード用のマーカーの売れ行き伸長が著しい。現在輸入で対応しているが、今後の伸びを期待し現地生産を考えている。いずれにしてもブラジル経済が回復期にあり、企業もこうした事務用品を積極的に使い出していることを示す。

ボールペン市場は仏系の汎用低価格品と、日系の中高級品に二別されるが、競合他社の動きを視野に入れた市場展開を続けていく。


(8)化学品輸出入

毎月の取り扱い品目が70にも及ぶ中で、上期は有機化学品の輸出が好調、逆に輸入は国内メーカーのプラントトラブルで供給ネックとなった原料(VCM など)が活発に行われた。同じく自動車、製紙関連も活発化しており、この分野の回復基調が本格化していることがうかがえる。

変わった輸入品目としては、ブラジルは環境対策後進国と言ってよく、先進世界で既に使用禁止されている化学物質でもブラジルで禁止されていなければ平気で使用される。食品添加物のサッカリンは日本では禁止されて久しいが、ブラジルでは未だ使用が認められており、あのコカ・コーラにもブラジル品には含まれている。

自動車をはじめとする多国籍企業は、その使用原料を本社/本部の指示で使用決定するのが通常、要するにワールド・プロキュアメントだが、この面で世界に支店網のある商社の輸出入機能が活きてくる。

〔下期の展望〕

経済活動全般への影響因子の一つである原油価格は、本年は25㌦台からスタート、3月OPEC総会前に34㌦を付けた後、OPEC増枠(計708千 BD)の流れを受け反落、4月上旬には一時24㌦台に下落した。その後米国ガソリン価格の高騰を受け急騰、6月下旬には再び33㌦台まで上昇し、その後 30㌦を超すレベルで展開した。

下期の原油価格はこの基調から27㌦を超える高値が継続するものと見こむ(平均価格が27~32㌦のレンジ)。

経済一般は上期の景気は継続する可能性が高く、例年下期が需要シーズンである合成樹脂業界を中心にその基調を期待している。但し、石化原料ナフサが7月から更に値上げされ、6月末の230㌦/㌧から一挙に295㌦と、28%も上昇したことから、エチレン以下の価格上昇が川下分野に与える影響が懸念される。

業界の対策としては、こうした川上からの原材料の順次値上げ、電力代・輸送賃等公共料金の値上げを受けて製品価格への転嫁、少なくとも昨年並みの原価率を維持しながら、他方で高品質製品の開発・投入で販売シェア拡大を図り、世界レベルの大競合時代の生き残りを掛けていく。

なお、カマサリコンビナートのCOPENEと誘導品メーカーの資本再編成の動きが進捗しており、下期のある時期に株式のレイロン(競売)が行われる可能性が強い。

以上

2000年下期業種別部会長懇談会

ブラジル日本商工会議所  2000年下期業種別部会長懇談会

(於 当所会議室、8月3日正午~3時)

総務委員会主催
出席者
会頭 貞方賢彦 (ヤクルト商工)
司会:総務委員会 委員長 後藤芳信 (ブラジル住友商事)
コンサルタント部会 部会長 田中 信 (リベルコンビジネスM&A)
金融部会 部会長 山浦秀雄 (日本興業銀行サンパウロ事務所)
貿易部会 部会長 能澤信一 (丸紅ブラジル)
化学部会 部会長 矢島 章 (ブラジル出光ケミカルズ)
機械金属部会 部会長 宇治嘉造 (ブラジルトヨタ自動車)
運輸サービス部会 副部会長 萩野敏久 (大阪商船三井船舶)
建設不動産部会 部会長 林 恒清 (ブラジル戸田建設)
電気電子部会 部会長 江口信彦 (NEC・ド・ブラジル)
食品部会 部会長 上原清助 (日清味の素食品)
繊維部会 部会長 名取 力 (ブラジル東洋紡)
総務委員会 副委員長 赤嶺尚由  (ソール・ナッセンテ人材銀行)
委員 出石峯敏 (インドゥストリアス日立)
藤下温雄 (ブラジル三井物産)
高橋直之  (丸紅ブラジル不動産)
在サンパウロ総領事館 小島総領事、玉川領事、花田副領事


主題 『2000年上期回顧と下期展望』

副題 『今、対伯投資を伸張させるために何が必要か』

 

司会の言葉

コンサルタント部会

金融部会

貿易部会

化学部会

機械金属部会

繊維部会

食品部会

電気電子部会

建設不動産部会

運輸サービス部会

フリーディスカッション

会頭総括

レポート-コンサルタント部会

レポート-金融部会

レポート-貿易部会

レポート-化学部会

レポート-機械金属部会

レポート-繊維部会

レポート-食品部会

レポート-電気電子部会

レポート-建設不動産部会

レポート-運輸サービス部会

2000年下期業種別部会長懇談会-司会の言葉

司会:本 日はお忙しいところお集まり頂きましてありがとうございます。ただいまから業種別部会長懇談会を始めたいと思います。恒例によりまして、コンサルタント部 会からご発表頂きますけれども、その中で副題の「いま対伯投資を伸張させるために何が必要か」ということにも触れて頂ければと思います。随時、途中で皆さ んのご意見がございましたら、ぜひ発表して頂きたく、また、随時、私の方から皆さんのご意見をお聞きしたいと思いますので、お集まり頂いております10部 会の部会長さんに、一巡したところで、特にその副題について皆さんでぜひディスカッションをして頂きたいと思っています。すべてを3時に終了したいと思っ ておりますので、 皆さんのご協力を宜しくお願いします。

司会:では、始めるにあたりまして、今日特別にご参加頂きました小島総領事に「開会のご挨拶」をお願いします。

小島総領事:前回は年初にこの懇談会に参加させて頂きました。その時の各部会長からのご発言では、ブラジル経済の実状は予想よりいいが、部会によってよいところ、かならずしもよくないところがありました。
半 年過ぎた現在の時点における各部会のご報告を、関心をもって聞かせて頂きます。また副題のお話しについては、私も非常に関心を持っており、「これは単なる 傍観ではなくて政府としてもやるべきもの」という観点からフォローしたいと思います。その点につきましては後ほど、適当な時点で発言させて頂くことがあろ うと思います。宜しくお願いいたします。

司会:どうもありがとうございました。コンサルタント部会の田中部会長から発表をお願いします。