- フォローの風となったチェックプライスと為替切り下げ
- 中国が輸出国に転じて綿花市況軟化
- 合繊原料は 一 挙に国際相場反転
- インフレ文化と決別で価格転嫁困難
- ようやく長期低落に歯止めがかかった 一 輸出
- 縫製品輸入減る
- 楽観的見方へ、2000年の展望
悲観去り漸次安堵感取り戻す
室:室 でございます。繊維部会長の木村さんが日本へご出張中ですので、私がピンチヒッターとして出席させていただきました。繊維部会のなかでも、使用する原料、 販売する商品によりまして、昨年の回顧と今年の展望につきまして、それぞれ各社の見解が微妙に異なりますので、総括するのは非常に難しいのですが、99年 につきましては、全体として、概ね好調だったということが出来るかと思います。昨年、年初の為替の調整で繊維業界も先行き非常に不透明な状態でのスタート でしたが、切り下げ直後のブラジル経済に対する、そういう悲観的な予測が時を経るに連れて好転し、業界全体としては、非常に安堵感がただよって参りまし た。
もともと繊維産業は、レアルプランによる市場開放政策と、強めの為替政策の最大の犠牲者ともなっていたわけですが、97年からの チェック・プライスによる、非関税障壁、とでもいうべき輸入規制と、今回の為替調整がフォローの風となったのは事実でございます。ただ、業種を問わず、各 社が使用する原材料の多くは、米ドル建て、あるいは米ドルにリンクしておりまして、為替の切り下げによる原材料のコスト・アップをいかに売値に転嫁するか が、最大の課題でございました。
綿花につきましては、基本的にニューヨークの綿花定期相場に連動しておりますので、2月には為替の切 り下げ分がレアル建てで、そのまま調整されました。しかしながら、国内の綿作が、前年比、26パーセント増となったこともあり、新綿の出回りとともに、4 月には軟化に転じ、10月末まで、安定的に推移しました。
一方、国際綿花価格の指標となりますニューヨーク綿花相場も、過去からの持 ち越し在庫が多かったこと、米国を始めとする綿作が順調だったこと、もともと輸入国である中国が綿花の輸出国に転じたことで、昨年半ばから下落に転じ、為 替調整による大幅な価格アップ分のいくらかは市況軟調で相殺された格好となりました。
しかしながら、11月に入り、順調な綿糸の販売状況から国内綿花相場は上げ基調に転じ、10月末に比べて10パーセント上昇しており、切り下げ前の水準に比べ、約24パーセントアップとなっております。
一方、合繊原料につきましては、原油相場の高騰、それから慢性的生産過剰から一転して、世界的に生産調整が進んだこと、東南アジアの景気回復などで、国 際相場は一挙に反転しました。もともと、国際水準に比べ割り高感があった国産原料も、ポリエステルで20パーセント、ビスコースで30パーセント、アクリ ルでは40パーセント強の値上がりとなり、引き続き、原油相場の堅調を理由として、もう一段の値上げが予想されます。
織布業界でも、使用する原資が値上がりしておりますので、事情は全く同じでございます。
たたった可処分所得減少
販売面をとりまく環境としましては、98年、99年、2年連続の景気の低迷、過去数年に渡り、一般大衆の可処分所得はむしろ減少している状況ですし、失 業者の増加傾向などということで、決して末端消費者が衣料品の値上げを受け入れてくれるような状況ではありませんでした。インフレ指数をご覧になっても分 かりますように、常に、物価の上昇を押さえているのに大きく貢献しておりますのが衣料品であります。他の業種においても同様に言えるとは思いますが、イン フレ文化から決別した現在、末端消費者までの各段階で、値上げに対する抵抗が非常に強く、先に述べました原材料アップを売値に転嫁することが非常に困難な 環境にありました。
われわれが販売している商品にも、価格抵抗力に非常に強いもの、あるいは弱いものもあり、一概にはいえませんが、 小売店頭での価格は基本的に上がっていないのが実情で、結局、生産から小売までの各段階での合理化努力、それと、マージンの圧縮で、なんとかうまくコス ト・アップを吸収した形になりました。量的に見ますと、従来からのチェック・プライスによる実質的な輸入規制、さらに今回の為替の切り下げによる国産品へ の回帰現象が起こりました。
為替切り下げメリットあるもマーケット再構築に大変な苦労
輸出につきましては、為替のメリットが生じたにも関わらず、いったん失ったマーケットを再構築するには時間が必要で、ようやく輸出の長期低落傾向に歯止めがかかったという程度で、量的に大幅に伸びたということはありません。
また、海外の顧客からは、為替切り下げ分を見込んだ厳しいビッドがくるといった状況で、決してうまみのある商売というわけでもありませんでした。しかし ながら、国産品への回帰による国内マーケットの活況、若干ながらも、輸出ビジネスの拡大で、操業面では、各社とも多忙を極め、そのことが、生産コストの低 減ともなり、採算面にも大きく貢献致しました。各社とも、大なり小なりの為替差損をこうむり、また売値へのコスト・アップ分の転嫁はまだ不十分な状況であ りましたが、チェック・プライス制による、実質的な輸入規制、為替切り下げによる国産品の優位性で、需給バランスが大幅に好転し、さらにそこへ昨年の寒波 による冬物衣料の売れ行きの好調が輪をかけ、総じて全体としては99年はよい年であったといえます。
織物、縫製品輸入減
ここ数年の間、輸入圧迫で、徹底的に痛めつけられていた繊維業界ですが、為替切り下げ以降、繊維の輸入の状況にどのような変化があったか、特に、顕著な 変化があった点を述べてみたいと思います。特に、切り下げの影響で著しく減少したと思われますのが織物と縫製品でした。トータルの、貿易収支バランスで は、98年には約7億8000万ドルの赤字が、去年は4億ドル程度になったんではないかと思われます。
織物につきまして、95年には、10万5000トンが、99年の11月までの数字ですが、4万トンに減っております。そのなかでも綿布が2万2000トンから3000トンに激減しているのが目をひきます。
一方、織物全体が減るなかで、合繊の織物につきましては、一定量輸入されておりまして、98年に比べ、99年はむしろ増加し、切り下げの影響を全く受けておりません。
次に目をひきますのは縫製品です。96年のピーク時には、6万トン輸入されておりましたが、99年11月までの数字では2万4000トンに減っておりま す。特に、繊維縫製品の輸入の減少というのは、私どもの業界にとっては非常にありがたい話であります。繊維全体のバランスがチェック・プライス制と為替切 り下げで好転しているなかで、全く逆の現象が起きているというアイテムがあります。
その一つは、合繊のフィラメント、長繊維でござい まして、98年と99年の11月までの同じ期間を見てみますと、98年の7万5000トンが、99年度では10万5000トンと、大幅に増加しておりま す。もう一つは、合繊の紡績糸、主にビスコースがらみの糸なんですが、同時期に1万1000トンが1万 7000トンに増加し、全く為替の切り下げの影響を受けておりません。いずれも、99年11月までの統計でありながら、史上最高の輸入額となっておりま す。
消費者ニーズに変化高感度 マスター努力
こういうことが、何を意味するのか、いろんな見方があるものと思いますが、あくまでも私の個人的な見解ですが、ブラジルの衣料分野におきまして、消費者のニーズが多様化し、需要の構造的な変革が起きつつあるのではないかという気がしております。
90年代初頭からの市場開放により、ブラジル国民の目の前には安くて非常に魅力的な服が一挙にあらわれ、それを手にすることが可能になりました。一度そ のような味をしめますと、なかなかその水準を落とすことは出来ないものです。その様な、消費者の志向の変化に対応すべく、ブラジルの繊維業界でも、なかで は淘汰されるところもあり、多くの犠牲を伴いましたが、織機、編み機など最新鋭の設備が導入され、合理化が図られると共に、より高感度のファッション情報 の収集に努力致しました。その結果、フィラメントのように、国産品では消費者のニーズに適応するものが少なく、輸入せざるを得ない状況となっているのだと 思います。当社も、合繊のフィラメントをかなり使用しますが、顧客のニーズに応じるためには、海外のメーカーの特殊なフィラメントに頼らざるを得ません。 最近のブラジルでは、衣料に対する感覚も高度化し、所得水準の高まりとともに、ますますその傾向は高まるものと思っております。われわれ業界としても、そ のような傾向に対応する努力を怠ると、たちまちにして淘汰されてしまう状況に追い込まれる危険性を感じざるを得ません。
外的要因なければ 今年も良好な年期待
次に、2000年の展望について、簡単に触れます。アメリカ経済の動向が唯一、気がかりですが、低迷していたアジア経済をはじめとして、世界的な景気回復傾向のもとで、ブラジル経済につきましても、非常に楽観的な見方が支配的となっております。
従いまして、内外での偶発的な異常事態が発生しない限り、繊維業界は昨年と同様に良好な年になるものと期待しております。
原料に関しましては、綿花相場は世界的に持ち越し在庫が依然高水準であり、需要の回復が見込まれたとしても、波乱場面は予測されず、安定した相場つきに なるものと予想されます。合繊原料につきましては、引き続き堅調維持の見通しで、一段高も予想されます。今年は、昨年積み残したコスト・アップが売値に転 嫁できるか、あるいは合理化努力で吸収出来るかどうかも課題として残っております。さらに、今年もチェック・プライスの運用が厳格に行われるかどうかも、 当業界にとりましては非常に重要な点となっております。
いずれにしましても、ブラジル経済の景気低迷からの脱出が予想される本年度 は、繊維製品の需要増加も期待でき、なんとか昨年以上の良い年となるように祈りたいと思っております。同時に、消費者ニーズに応じた商品開発、品質向上と コスト競争力のための経営努力が、いっそう求められる時でもあると思っております。以上です。
司会:あ りがとうございました。昨年の年初の座談会は、大幅為替切り下げ直後にやったわけですけれども、各部会長さんが下を向いているなかで、ただひとり、上を向 いて大笑いをされていたというのが繊維部会でありまして、たしか木嶋部会長で、そのあといろいろな所でその話が伝わりまして、大分修正されてましたけれど も、結果的には木嶋前部会長の予測通りに99年は繊維部会にとって非常にいい、好況の風が吹いたと。あの大幅切り下げのなかで、まず中国の安物が入って来 なくなっただけで、これで大勝利だといわれて、今日も室副部会長から報告があったように、99年は本当に繊維部会に良い風が吹いたと。で、引き続いて 2000年も吹きそうだと。さきほど化学部会の矢島さんから、話がありましたけれども、化学部会は農薬を除いてはいい、繊維の方は化繊・合繊がいいという ので、ちょうど両部会が合致しているのかなと思います。それでは引き続いて、去年、繊維部会ほどじゃないけれども、かなりニコニコされていた、食品部会の 上原部会長お願い致します。