2000年回顧と2001年の展望
ブラジル経済の2000年は、とくに下期になり、やっと満遍なく広がった“青空”を連想させるに十分なほどの回復を示してくれたと言えよう。 もちろん、そ の大きな原動力となったのは、一般消費の回復であり、なんと言っても、国の経済運営に対しての国民の安心感の現れであり、再三の原油価格の上昇にも負けな い、インフレに打ち勝ったという強い信頼感の証でもあると言える。
インフレ、為替の安定、金利の低下により、今まで伸び悩んでいた高額の耐久消費財の急激な回復が、何よりもそれを物語っている。 確実に市場というパイが大きくなっているのが感じられるようになった。
それに伴い、生産能力Upのための設備投資意欲も高まっており、長い間苦労を強いられた生産財、重工、重電、重機、農機メーカーに活気が戻っている。
一方、自動車、自動車部品工業を中心としたブラジルを輸出基地にしようとする巨大企業グループにとっては、現状では過剰投資としか思えない生産能力をベースとして、国内市場の伸びを横目で見ながら、輸出に活路を見出すべくドライブをかけている段階にある。
過去4年間に稼動を始めた自動車9社の新工場の中には、すでに脱落を発表しているChryslerを含めて、その生産能力は年産60万台あり、その中で 100%近い稼動ができているのはHonda,Toyota,Renaultの3社のみで、平均でも半分の能力分しか売れてはいない。
今後、まさにグローバル時代の恩恵を受けられる所と、その非情さに泣く所と、まさに熾烈な戦いが始まっている。
2001年の展望としては、前半は引き続き好調を維持した拡大路線が続く見込みながら、後半からは、米国の降下具合とそれに関連した世界景気の動向、投 機マネーの動き、アルゼンチンが果たして立ち直れるかなどが焦点となるが、今のところ減速要因が多いことから、大いに懸念されるところである。
自動車
(千台) 表のように、生産、国内販売、輸出ともに昨年ベースをそれぞれ24%、18%、34%上回り、輸入車販売のみが-2%と減少した。 国内販売の好調要因は1)に金利低下による支払い環境の好転が挙げられ、とくにオートローンの伸長が背景にあり、融資総額は前年比58%増しになった。 2)にインフレ、為替の安定化による経済不安の払拭という消費者心理の回復、 3)に新規参入各社を含めて新型投入および積極的な販売政策が挙げられ る。 この傾向は2001年の展望にもそのまま当てはまることが確実視され、さらなる金利の低下が進み、状況によってはブラジルでは前代未聞の1ケタ金利も可能なところまで来ており、国内市場のパイが急ピッチで拡大することが期待されている。 今では、世界でも類を見ない最先端の自動車先進国となったブラジルには既に11社の国産メーカーが存在し、2月にはプジョー-シトロエンが生産を開始す るが、すでに投資を終えている分だけで、生産能力は300万台/年を超えると言われている。品質的にもグローバルスタンダードで論じられており、現状の国 内市場の大きさだけでは、必然的にも輸出を増やさなくてはならない宿命にある。ブラジル工場の位置付けがこのグローバリゼイションの波の中で非常に重要に なってきており、各社ともあらゆる手を尽くしてコストダウンに取り組んでいる。 まず第一に品質を満足して、国産化率を高めることであり、部品メーカーと 組んだモジュール化が、さらに進むことになりそうである。 各社とも輸出拠点化を図っており、仕向地も従来のイタリア、アルゼンチンの他南米諸国、メキシコ、米国などに拡大している。 |
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自動車部品 自動車生産の増大に伴い、15-60%の伸びを記録した。 量的には昨年の最悪期を脱したと言えるが、採算面では資材、コストUp分の値上げが出来ず、苦しい展開が続いている。各社とも国産化率Upを進めざるを得ず、自動車業界との合従連衝で技術面は当然のこととして、価格、サービス面での要求が一段と強まっていく。 欧米系の大手メーカーでは、ここ数年の大型投資で相当な力をつけており、グローバルソーシング基地としてすでに動き出しており、仕向国も多様化してきている。 補修市場の動きとしては、保有台数のうち経過年数が10年未満の車が60%近くなり、その市場の部品構成が変わってきている。 2001年度は業界として、10%Upは堅いとしており、更なる輸出ドライブが掛かることが予想され、日本勢では引き続き、量的な拡大とリストラを通じて、採算性の向上、国産化率Upが課題となる。 自動二輪車
(千台) 自 動車よりも早く回復が進み、市場も拡大したことにより、生産、販売、輸出とも新記録を達成し、それぞれ33.7%、29.7%、85.3%という伸び率を 示した。 金利の低下によるクレジット販売が大きく伸び、従来のコンソルシオを逆転、この国の所得水準にマッチしている事と、総需要の60%を占める 125 CCクラスに限っては業務使用が大きく寄与していると言える。 各社とも輸出にも力を入れており、価格競争力もあることから、中南米、北米を中心にまだま だ伸びる。 2001年は15%Upとさらに記録を更新することが確実視され、快調にマナウスへの投資は進む。 |
重工業、プラント 年間を通じて好調なパルプ業界、製鉄、電力、港湾、石化業界に案件は多く、久々に活況を呈した年と言える。しかしながら、日本勢にとって価格競争力、国 産化率60%と言う壁は高く、ヨーロッパ勢、アジア勢になかなか勝てない。したがって、差別化する意味でも、日本の得意な省エネ分野、熱エネルギーおよび 原料、副産物回収プラントに的を絞って受注活動を進めている。 2001年も好調に推移するとみられ、特に電力関連で火力発電プロジェクトが動き出すものと見られており、関連分野での案件に注力したい。 農業機械 PRONAF, FINAMEといった政府の農業融資資金の動向に市場が左右されてしまうのだが、昨年度は比較的順調に推移し、より資金が潤沢に出た大型トラクターの分野 では31%Upを記録し、小型分野でも17%Up,前半にPRONAFが出た耕運機では、7月に融資がストップしたために、通年では5%Upにとどまっ た。 汎用ジーゼルエンジンでは東北伯の多雨で、需要そのものが落ちたことと政府資金も出ずじまいで、20%ダウンとなった。 2001年はトウモロコシ以外の作物の増産計画と政府資金の順調な出具合により、更なる拡大が期待されるが、それでもトラクターでは大昔のピーク時の半分にも満たないのが現状である。 鉄鋼 国内経済の回復に伴い、自動車、部品、大径管向け〈厚板、熱延鋼板〉、建機、農機向けは好調に推移、鋼材見かけ消費量は1,582万トンとなり 12.4%Up、フラット鋼材の見かけ消費は17%Upとなった。表面処理鋼板〈めっき鋼板〉については自動車向けおよび家電分野において、冷圧鋼板から の変更の動きが出ている一方、建材向け需要が活発。粗鋼生産量は2,774万トンで11%Upとなり、97年に達成された記録を塗り替えた。 一方、国内需要が予想以上に旺盛だったこと、年央からの世界レベルの在庫調整などもあって、輸出はトータルで971万トンと3.2%減少した。逆に、輸入は93万トンと43%Upした。 2001年も好調な国内経済に引っ張られ、フラット鋼材については5.9%Upの見込みで輸出は減、輸入は増と去年と同じ傾向をたどる見込みである。 |
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軸受 世界的にも品不足で終始した昨年度はブラジルでも全ての分野で2ケタ伸長が果たされ、とくに家電、自動車が牽引車となり、40%の伸びを記録した。輸入 も市場の拡大とユーロ安の影響でとくに欧州からが増えた。各社とも生産拡大の余地は少なく、そのため輸出はどんどん減る傾向にある。業界のフル生産もすで に4年目を迎える。 2001年は米国の減速により、世界的な品不足は一段落する見込みだが、国内需要はさらに各分野での国産化が進むことにより、軸受け需要はさらにタイトな状態が続くものと見られる。 電動工具、切削工具 電動工具では期待したほどの景気の回復は見られず,全般的な市場規模も1昨年並みまたはせいぜい1ケタ%Upに推移した模様で、とくに電動工具の主な顧 客先である住宅,土木建築、家具業界では出遅れているようだ。価格競争も激しく、値上げが難しいことから、現調化を進めることと、組み立て部品の輸入先を 中国工場からに変更するなどにより、より一層のコストダウンを計る必要に迫られている。 2001年は安定した伸びが期待できそうであり、市場規模も10%くらいは伸びると思われる。 販路拡大政策の一環として、販売拠点増,取り扱いモデル増を計り、一気にシェアUpを計りたい。輸出は北米向けからメルコスール向けにシフトしていく。 切削工具では一般向けは10%程度とあまり大きな伸びはなかったが、自動車,および部品向けに20-40%と大きく伸び、ここでも工具材質が高速度鋼か ら超硬合金製に変わってきており、それだけ高速切削が一般化してきていると言える。とくに新規に投資された工作機械で使用されるハイテク工具の需要は、こ れからもどんどん増える見込みであり、工具メーカーとしても、輸入品での対応も限界があり、材質の変化に合わせた設備投資に迫られている。ここでもやはり 国産化の必要と、取り扱い製品の拡大が生き残りの条件となっている。2001年は自動車部品の現調率Upが進み、さらに20%の伸長は期待できると考えて いる。 輸出比率がもともと高い業界であり、ドリルなどではずっと昔から輸出基地化しており、常に50%前後を全世界に輸出している。 以上 |