2003年上期業種別部会長懇談会-電気電子部会(資料)

1.2002年下期の回顧

1-1)市況について

① 家電主要製品メーカー出荷動向(台数ベース、対前年同期比)

  2001年 2002年
  上期 下期 年間 上期 下期 年間
カラーテレビ 111% 73% 89% 108% 97% 103%
オーディオ(ミニコンポ) 99% 88% 93% 95% 86% 90%
ビデオ 92% 71% 80% 78% 73% 76%
DVD 467% 254% 304% 215% 165% 183%
電子レンジ 99% 43% 70% 73% 163% 101%

 

―下期はDVDと電子レンジを除いて電力問題で需要が縮小して2001年に
比べてさらに落ち込む結果となった。
―食料品公共料金などが値上りし生活必需品に金がまわり、耐久消費財などは
買控えされている模様。

② 電子部品は家電、自動車関連、移動体通信メーカー向けが主な取引先であるが、輸出を主とした携帯電話メーカー向けが比較的好調であった。
③ 通信関連はキャリアー向けインフレビジネスが2001年上期に完了済みであり極めて低調。
④ 粗蜜・事務機器では複写機関連が前年同期比マイナス16%。

1-2)政治経済動向で大きく影響があったもの

① 大統領選挙戦動向が影響した為替切下げの進行と高金利政策。
② 景気の低迷と為替切下げに伴いコスト上昇の下で、価格への転嫁ができず収支を大きく圧迫。
③ 通信キャリアーには資金調達難に苦しむところもあった。

1-3)会員企業の対応と業績

① 市況低迷、コストアップ(特に輸入品主体の業種並びに輸入比率の高い部材の生産業種)の中で、デフレ傾向もあり、苦しい対応でしのいだ半年といえる。人員削減を含む固定費の圧縮に取組み、前年同期マイナス3%~マイナス27%を実現。
② さらに高金利下で資金圧縮、CFフロー良比に収支管理強化推進をほとんどの企業が実施。
③ 一方厳しい市況下ではあったが販売確保の取組みとして、新製品・モデルの投入や新規販路・顧客の開拓努力により活路をみいだした企業もあった。
④ 前年同期比(ドルベース)の販売については、家電83%-105%、電子部品105%-118%、通信電力産業30%-70%、精蜜事務機器、57%-125%と業種間並びに企業間でバラツキの多い結果であった。
⑤ アンケート回答会社の2002年下期の業績自己評価は、良かった 10%、計画通り30%、悪かった・大変悪かった60%でした。

 

2.2003年下期の展望

2-1)ルーラ新政権とその影響について

① 年金制度の改革、税制の見直しなどに茶九手してくれると期待。一方で国際政治上や国際金融上でボロをださぬか、心配という声。
② 前政権を受け継いでインフレ抑制一高金利政策を維持されると思われることとイラク・ベネズエラ情勢もあり、上期の景気回復は望めず、悪かった2002年下期よりさらに低迷するという不安大。市況回復は下期後半からか?
③ 雇用機会創出の面と貿易バランスの不均衡是正(得にマナウス経済特区)の目的から、ローカルコンテンツ規制や輸出促進策などが具体的に検討されており、業界としては要注視である。

2-2)会員企業の対応と見通し

① 引き続き厳しい市況が予想されるのでさらなる合理化(リストラ、コストダウン活動)の推進さらに輸出拡大と新製品の投入で販売増を目論むという取組みが大半の企業の対応。
② 環境は厳しいが、アンケート回答各社は2003年上期売上見通し(前年同期比 ドルベース)について積極的取組む計画をもっている。
③ 家電105%-162%、電子部品100%―150%、通信電力産業40%―120%精密・事務機器104%―112%

 

3.その他

① FTAAの動きや日伯FTAについて懇談会の中で討議したが、ブラジル政府が推進している二国間協定の中で事業に活かせるものは大いに活用していくという姿勢。業界の動きの中で積極的に参画している会員企業もある。
② 伯中FTAなどが実際に進展すると現在のマナウス生産事業に影響があると危惧される業種もあるが、グローバルな事業展開の中では、一番メリットのある生産拠点からの供給というルーツ変更で対応できるのではないかとの見方が多かった。
③ 一方でやはり欧米諸国や中国・韓国・インドと二国間協定・多国間協定が締結されていくと日伯間で協定がないことが将来競争上大いに不利になるとが予想されるので日伯FTAの動きも急がれるとの声もあり。

以上、ご報告とさせて頂きます。

2003年上期業種別部会長懇談会-繊維部会


木口部会長

司 会 ありがとうございました。続きまして繊維部会の木口部会長よろしくお願いいたします。

原綿相場2倍に跳ね上がった、激動の02年

木 口  繊維部会長のユニチカ・ブラジルの木口でございます。繊維部会は綿紡績が主体ですので、これを中心に業界の回顧と展望をして参ります。
02年度の繊維業界の状況は、前半は暖冬で消費減退、在庫増、半ばから大統領選絡みで急激なドル高で、10月には瞬間4レアルを突破し、年間では50%以 上のドル高となりました。ブラジル原綿は25%もの減産とニューヨーク定期相場高とドル高で、年間で相場が2倍にも跳ね上がり、一部糸値に転嫁できました が、波乱含みの激動の年でした。

次に順を追って回顧と展望をして参ります。
まず 原綿について02年の回顧。01年度の国内外の相場安とわた摘み取り時の降雨による品質低下で綿作者は採算悪化になったことと、綿花の競合作物である大豆 の国際相場高により、02年は綿作の一部を大豆に転換した農家が多く、植え付け面積で14%の減反となり、作柄については全体的に生育期において長期間の 降雨など天候不良と病虫害発生があり、悪要因が重なって生産は25%近く落ち込んだ、とわれわれの業界では見ております。

相場ですが、02年の年初、上級品を中心とした品不足気味で2月末にはポンド当たり、100センターボを付けましたが、新綿シーズンに入り相場は若干下向 きになったが、前シーズン国内原綿の50%以上を生産したマット・グロッソ州の大幅減収により、相場は6月末より上昇し、また5月末よりニューヨーク定期 が上昇し、海外からブラジル綿に対する引き合いが増えると共に、国内の急激なドル高により5月から6月にかけて、輸出成約が相当量できました。10万トン 近くあったと見られています。国内原綿の大幅な減収と海外相場の上昇、輸出増大ということで原綿相場の上昇により、紡績も安値低迷していた糸値を値上げ し、8月以降この値上げが順調に吸収されました。また、紡績各社の原綿の引き合いが急に増えまして、相場は急上昇し、9月中にはポンド146(注:セント といいます)、146セントまで急騰しました。

政府は手持ちの在庫を放出しましたが、相場 沈静にはならず、輸入綿は国際相場高とドル高で高い値段になり、パラグアイからの輸入綿も少しはあったが、在庫綿が少なく品質的にも問題がありました。ま た、国内の生産者と一部トレーダーの手持ちの在庫も意外と少ない上、更に高値期待で売りしぶりがありまして、11月から更に高値更新を続け12月には 180セントになり、― この時点で2倍の値段に跳ね上がったと言うことですね― 原綿在庫の少ない紡績会社は非常に高い値で買ったところもあります。

今年も原綿減産見通し - その背景

03 年の展望ですが、02、03年度の植え付け面積についてブラジル全土で4%の減反と予想されております。02年度の相場が上昇、2倍にもなった訳ですが、 植え付け面積が去年に比べて減少しております。これは02年度の綿作者は資金手当のため、相場の安い時期に前売り契約したものもかなりあり、殆どの綿作者 は収穫後、換金のため在庫せずに売っており、また気候不順による生産の低下で綿作者の多くが採算割れとなり、綿作意欲を失ったと言えます。

一方、競合作物である大豆の相場高から大豆に切り替える生産者が多く出ました。大豆の耕作費用が綿花に比べて三分の一といわれており、植え付けから収穫ま での期間が短く、天候不順による問題も少ないので、先物契約による前渡金を受けての大豆への転換が促されると言うことです。

輸出についてはブラジルと同じく、南半球の大手の綿花生産国でその大半を輸出しておりますオーストラリアが潅漑用水不足のために、大幅減産になって輸出既 契約の量がショートしました。そのため、その代替としてブラジル綿の買いに入っていることもあります。かなりの数量が行くものと思われます。03年度のブ ラジル綿は、すでに02年度末までに7万トンほど輸出されております。ですから03年度の輸出は10万トンを超えるんじゃないかと思われます。

従いまして、03年度の綿花の需給ポジションはかなり窮屈になることが予想されます。今年に入って1月、ドルの傾向が沈静化しつつありましたが、またここ にきて3・5、3・6レアルとなっておりますので、まだ今の時期は現物が非常に少なくなっておりますので、現物相場がさらに高くなっております。さらに新 綿の植え付けはマット・グロッソ州を中心にあちこちで降雨、雨が遅れておりまして植え付けが全体に遅れました。植え付けたが雨不足で芽が出ずに蒔き直しが あったところも多く、さらに今年の生産の不安材料が大きくなって来ております。

綿糸、ドル高影響で値上がり - EU、中南米に輸出増

綿 糸の02年の回顧。02年度国内綿糸は年初から一般衣料消費の不振を受け、上期は低調に推移。6月末から国内綿花減産が鮮明になるにつれてドル高の影響も 受け、綿糸価格は上昇を始めました。これにより綿紡各社の採算は大きく圧迫されるものの、春夏物の生産を控えるアパレル、ニッターで急速に綿糸に対する先 高感が強まりました。さらに8月から綿花の価格が上昇を続け、年末の国内綿糸の価格は6月水準から比べて40%以上上昇しました。価格が年末までに大きく 改善できましたが、原料コスト・アップを売値に転嫁できた程度で、採算面まで満足できる物ではなかったようです。

綿糸の輸出ですが、8月まで国内市況の悪化でその後のレアル安により、輸出採算が改善し、各社、輸出商談を積極的に進め堅調に推移しました。仕向け地は北 米向けが、アメリカの景気後退等によって一時的には落ち込んでおります。また9月以降、ヨーロッパ、中南米などにも出ております。9月以降、アルゼンチン 向けの輸出が1年ぶりに再開されております。数量では01年度に比べて50%になっていると言うデータでございます。03年度の綿糸販売の展望ですが、昨 年後半に持ち直した綿糸市況も今上期には懸念材料が多く、早々に悪化して行くものと思われます。

原綿価格は昨年1年間で2倍以上に跳ね上がり、本年はスタートから高い原綿コストで売値にいかに転嫁していくか、これが一番の問題であります。昨年の冬物 商戦は暖冬などで不調に終わっており、製品在庫もかなりあり、仮需も期待できません。この原綿コストでは輸出競争力も低下し、国内の供給量も過剰になると 思われます。現在の高金利政策では消費の大幅な好転は期待しにくく、一部のアパレル、ニッターの信用不安の増大も懸念されます。需給バランスの失調、原料 高の製品安、決済期間の長期化に見舞われる可能性もあります。

まあ、こう言うことでかなり難しい厳しい状況と思われます。あと、新政権のもとで新しい経済政策に期待できるか、それにかかっておるようですが、いま言いましたように、厳しいシーズンになるものと思われます。

あと、繊維部会には、織物の薄地織物を扱っておるところとか、厚地織物の輸入販売を手がけておるところとか、化合繊糸の製造販売等、それとウールのニット 及び織り糸の生産販売、それから絹の業界等がございます。これらの業界についてもまとめておりますが、時間の関係で、書面(機関誌「ブラジル経済情報」) で報告させて頂く事にして、以上原綿と綿紡績中心の報告にさせていただきます。以上です。(以下本号末尾の繊維部会資料)

2003年上期業種別部会長懇談会-繊維部会(資料)

繊維部会は綿紡績が主体ですので、これを中心に業界の回顧と展望をしていきます。
02年度の繊維業界の状況は前半は暖冬での消費減退・在庫増、半ばから大統領選がらみで急激なドル高で、10月には瞬間R$4.00を突破し年間では 50%以上のドル高となりました。ブラジル原綿は25%もの減産とNY定期相場高とドル高で、年間で相場が二倍にも跳ね上がり、一部糸値に転嫁できました が、波乱含みの激動の年でした。次に順を追って回顧と展望をしていきます。

 

(1) 原綿について

①02年回顧

01年度の国内外の相場安と摘取り時の降雨による品質低下により、綿作者は採算悪化になったことと綿花の競合作物である大豆の国際相場高により、02年は 綿作の一部を大豆に転嫁した農家が多く14%の減反となり、作柄については全体的に生育期において長期間の降雨など天候不良と病虫害の発生など悪要因が重 なり、生産は25%近く落ち込んだと業界では見られている。

相場については年初、上級品を 中心とした品不足気味で2月末にはR$1.00/Lbを付けた後、新綿シーズンに入り相場は若干下向きとなったが、前シーズン国内原綿の50%以上を生産 したMato Grosso州の大幅減収により相場は6月末より上昇し、また5月末よりNY定期上昇により、海外からブラジル綿に対する引き合いが増えると同時に、国内 の急激なドル高により5~6月にかけ輸出成約が相当量できた。100千t近くになったとみられる。

国内原綿の大幅減収、海外相場の上昇と輸出増大に伴う原綿相場の上昇により、紡績も安値低迷していた糸値を値上げ調整し8月以降順調に吸収され、紡績各社 の原綿引き合いが急に増え、相場は急上昇し9月中にはR$1.46にまで急騰した。政府は手持在庫を放出したが相場沈静の材料にならず、輸入綿は国際相場 高とドル高レアル安で高い値段となり、パラグアイからの輸入も在庫綿が少なく品質的にも問題があった。
また、国内生産者と一部Traderの手持在庫が意外と少ない上、更に高値期待で売りしぶりを続けたため、11月から再び高値更新を続け12月末でR$1.83となった。原綿在庫の少ない紡績はそれ以上の高値買いした所もある。

② 03年の展望

02/03年度の植付面積については、ブラジル全土で4%減と予想されている。02年度相場が上昇したにもかかわらず植付け面積が減少したのは、02年度 綿作者が資金手当てのため相場の安い時期に前売り契約したものもかなりあり、殆どの綿作者は収穫後換金のため在庫せず売った者が多く、また気候不順による 生産低下のため、綿作者の多くが採算割れとなり綿作意欲を失った。一方、競合作物である大豆の相場高から大豆に切り替える生産者が多く、大豆の耕作費用が 綿花の三分の一であり、植付から収穫までの期間が短く、天候不順による品質問題が発生しない、先物契約による前渡金を受け易い等が大豆への転換を促がし た。

輸出についてはブラジルと同じ南半球の大手生産国でその生産の大半を輸出するオース トラリアが灌漑用水不足のため大幅減産となり、輸出既契約量のショート分の代替としてブラジル綿買いに入っていることもあり、03年のブラジル綿輸出は 02年末までに70千tほど契約されている。
03年の綿花需要ポジションはかなり窮屈となることが予想されているため、今年1月に入りドル高の傾向が沈静しつつあるにも拘らず現物相場は高くなっている。

新綿植付はMato Grosso州の一部を初め、あちこちで降雨遅れのため全体的に遅れた。また植付け後の降雨不足で蒔き直しを余儀なくされたところも多い。生産に不安材料が見られる。


(2) 綿糸について

①02年回顧

02年国内綿糸は年初から一般衣料消費の不振を受け上期は低調に推移、6月末から国内綿花減産が鮮明になるにつれドル高の影響も受け、綿糸価格は上昇を始 めた。これにより綿紡各社の採算は大きく圧迫されるものの、春夏物の生産を控えるアパレル、ニッター間で急速に綿糸に対する先高観が強まった。更に8月以 降も綿花価格が上昇を続け、年末の国内綿糸価格は6月水準に比べ40%以上上昇した。価格は年末まで大きく改善できたが、原料コストアップを売値に転嫁で きただけに過ぎず、採算面で満足できるものではなかった。
綿糸輸出は8月までの国内市況悪化とその後のレアル安による輸出採算改善により、各社 輸出商談を積極的に進め堅調に推移した。仕向け地は北米向けが一時ほどの勢いはないが、欧州・中南米などで9月以降亜国向けの輸出が1年ぶりに再開され た。数量は01年に対し50%増となっている。

② 03年の展望

昨年後半にやや持ち直した綿糸市況も今上期には懸念材料が多く、早々に悪化していくものと思われる。原綿価格は昨年一年間で2倍以上に跳ね上がり、本年は スタートから高い原料コストを売値にいかに転嫁していくかが一番の課題である。昨年の冬物商戦は暖冬などで不調に終わっており、製品在庫もかなりあり仮需 も期待できない。この原綿コストでは輸出競争力も低下し、国内への供給量は過剰になるものと思われる。現在の高金利政策では消費の大幅な好転は期待しにく く、一部のアパレル、ニッターの信用不安の増大も懸念される。需給バランスの失調、原料高の製品安、決済期間の長期化などに見舞われる可能性もある。
新政権のもと新しい経済政策に期待するものの、03年上期の国内綿紡績業界は近年にない厳しいシーズンとなるものと思われる。

 

(3) 薄地織物について

①02年回顧

年初からのアルゼンチン・ショックの影響が繊維業界に大きくのしかかり、生地輸出、製品輸出とも全くストップしてしまい、ニット業界に大きな影響を及ぼ し、織物業界もジーンズ、ツイル等の生地・製品、薄地ではシャツ・ブラウス等の生地・製品、また寝装品のアルゼンチン向け輸出が全て止まってしまった。国 内販売も暖冬で冬物の引取りが遅れアルゼンチン向けの落込み分を吸収できず、生産調整を余儀なくされた企業が多かった。  しかし後半になりドル高によ り、国内への製品輸入が大幅に落ち込み、急遽国内品への需要が高まったこともあり、急速に市場は回復し年末販売への期待感の増幅となった。量的には年間を 通しては前年並みに戻した。
輸入原料と国内原綿の高騰によるコストアップが大きくのしかかり、売値アップを試みたが受入れられたのは年末であった。

② 03年の展望

昨年末の小売販売は好調に推移し、縫製業者の在庫は低水準であり、年初より店頭在庫補充の生産が順調に始まるものと予想される。夏物の補充生産が2月まで推移すれば冬物への転換が遅くなり、冬物先走りの傾向が是正されよい方向に向かうことが期待される。
基本的に薄地織物の需給バランスは取れていると思われるので、このまま製品輸入が増加せずに推移すれば、今年の商況は一般市況の推移とともに動くものと予想される。
一方アルゼンチンの市場が少しずつ上向いてきており、引き合いも多く、徐々に輸出量も回復してきているので今年の繊維業界にとってプラス要素である。

 

(4) 厚地織物および輸入織物販売の動向

02年の回顧と03年上期の展望

① 小売業界
1~4月は前年比10~15%アップ、5~6月は暖冬により冬物大不振、前年比30~35%ダウン、
7~12月は10%アップでトータルでは前年とほぼ同じとなる。

② 縫製業界
背広ズボンはまずまずであったがウールは暖冬で惨敗、ドル高により製品輸入は大幅に減少しシャツ・ジーンズはすこぶる好調であった。

③ 織物業界
ウール100%、ウール混共冬物不振、原料高騰から後半特に不振、ポリエステル織物も原糸と加工費アップから今一つの状態、品質・価格とも輸入品に押され気味であった。

④ 輸入業界
レアル暴落から織物・製品とも大幅なダウン、輸入業者も大きく淘汰された。価格の調整が難しく後半苦戦を強いられたが、まずまずの結果となった。

03年は心配されたルーラ政権も無難な滑り出しをしたが、不透明感が強く現段階での展望は何とも言い難い。


(5) 化合繊(短)について

①02年下期の回顧

下期のスタート時点では暖冬による冬物衣料不振と、大統領選での労働党党首の当選可能性拡大で中産階級の買い控えなどにより消費が低下しつつあって悲観的 な要素が強かった。夏物シーズン当初も同じような現象であったが、一般国民のル-ラ政権への見方も変化し、市場も回復し、下期は化合繊分野もまずまずの業 績で終了したものと思われる。ただ主原料のポリエステル綿は国産・輸入ともドル建てであり、レアル安で原料コストは著しく上昇した。
ビスコース綿もコットンリンターなどの原料値上げを理由にポリエステルほどでないが、値上がりした。
コストの売値への転嫁は顧客も納得する面もあって各社糸の値上げに注力した下期といえる。
需給面では極端なレアル安が繊維全般の輸入を抑えたことも背景にある。

② 03年の展望

まず経済情勢として、今年はル-ラ政権がやってくれるだろうとの楽観ムードで為替も3.2~3.3台で推移したが、ル-ラ政権が各種改革案を提示している が、PT単独ではなしえない改革も多く、またPT急進派の動静も注意しなければならず、米国経済不安、イラク・北朝鮮問題などが為替などに悪影響する懸念 が大である。化合繊業界は原料がドルの変化に大きく影響を受けるわけで、現段階の展望としては不透明としかいえない。

 

(6) ウール織糸および横編ニット原糸について

02年下期の回顧と03年上期の展望

02年上期ブラジル横編みセーター業界は一時の加熱状態が去り市場の伸びが鈍化し始めた。
ニッ ターの多くは操業短縮に追い込まれ一部大手には操業50%を割る所も現われた。したがって原糸業界もレアル安による原料コストの上昇を売値に転嫁できず採 算悪化に見舞われた。しかし、7月にレアル3.0をつけ、約2年間に渡り価格が膠着状態であった原糸業界にようやく値上げの動きが現われ、7月末のレアル 大暴落を機に紡績各社の足並みが揃い採算の一部が改善された。
しかし、最終製品のセーターの需要自体は改善されず、ニッターが原料高製品安の矛盾を抱えたまま年末の長期休暇に入っており、03年の市況も不透明となっている。
また各横編み産地は組合を組んで欧米の輸出に注力しているが、フアッション的に成熟した諸国への輸出は難易度が高く成果が現われていない。
ウール梳毛糸はブラジルでの衣料用需要は減少して久しく、椅子張等の家具室内装飾用途が主流となっている。原毛は02年豪州の大幅減産の結果、価格が高騰 し、これにつられ南米羊毛も急騰した。これに為替変動が加わり、梳毛糸の価格は年初の二倍前後まで値上がりしている。同時に原糸段階では採算も好転してい るが、製織業界は横編みと同じ悩みを抱える状態となっている。
家具メーカーは安価な他繊維へ乗り換える動きも出始めている。

 

(7) 絹業界について

02年下期の回顧と03年上期の展望

① 養蚕動向

8月から養蚕を開始した02/03農年期は主産地のパラナ州で8月の旱魃、9月初旬の降霜により出鼻をくじかれた格好となり、8~10月は計画を下回る掃 きたて数量であった。10月以降、気象条件が順調に推移しているものの、全般に桑不足気味で回復が遅れ、02年度内の飼育数量は概ね前年対比10%強の減 産になっている。12月以降はほぼ計画通りの繭収納が見込まれ、製糸三社の操業に必要な原料繭は確保できると思われる。
価格的には農産年期開始以来現在まで約10%上昇している。

② 製糸業界

販売数量の80%以上を輸出に依存し、更にその多くを日本市場に依存している製糸経営は、02年度を通して長引く日本経済不振による絹消費減退の影響を受 けて数量が大きく落ち込んだのに加え、世界の絹業界をリードし価格決定権を握っている最大の競争相手である中国品との価格競争から値下げ要請を飲まねばな らず、10%強、品種によっては20%近い輸出単価の下落もあり、苦しい経営を余儀なくされた。02年はレアル安が販売単価下落をある程度カバーしてくれ た。
03年は昨年秋以降繭・生糸とも減産傾向にある中国の減量ならびに製品の需給バランス改善による輸出価格の上昇が切に望まれているが、日本の絹需要の回復と合わせ先行き不透明で、ブラジル製糸にとっては引き続き苦しい経営を余儀なくされそうな年である。

2003年上期業種別部会長懇談会-食品部会


渡辺部会長

司 会  続きまして、食品部会の渡辺部会長よろしくお願いいたします。

回顧と展望における6つの重要ポイント

渡 辺  東山農産加工の渡辺でございます。食品部会からの報告をさせて頂きます。
2002 年下期の回顧と2003年上期の展望ということで、ポイントを6つに絞って報告させて頂きたいと思います。その6つのポイントは何かといいますと、まず1 つ目が売上げは拡大基調が続いておりますが、ただしコスト・アップとの闘いが顕著になってきた。2つ目、農産物を中心に価格が高騰、インフレ指数を押し上 げている。3つ目、大手流通業者が納入業者の値上げに真っ向勝負を挑んできた。4つ目、各社新製品が売上げ増に大きく寄与している。5つ目が日系食品メー カーのライバル社の動きが引き続き活発であるということ。6つ目、最後になりますけど、食品業界にとってルーラ新政権の影響がすぐ直接出る可能性が少ない けれど、2003年については為替安定がまず望まれること。以上の6つの点についてこれからご説明させて頂きたいと思います。

 

1-売上げ拡大基調続くが、コスト・アップとの闘い顕著

まず1つ目、テーマとしては、「売上げ拡大基調でありながらコスト・アップとの戦いが顕著になってきた」ということですが、元々食品業界は不況に強いとい われていますが、その通りスーパーマーケットを中心とする食品の売上げは依然として拡大基調にあります。殆どの企業が売上げは前年比増で推移しておりま す。各メーカーは9月からこの1月までの間に殆ど値上げを実施いたしました。原料・資材高騰によるコスト・アップの解消に動いております。ただし、外食産 業だけは苦戦しておりまして、競争が厳しい上に料理のメニュー値がなかなか上げられない。食材のコスト・アップに加えて光熱費のアップが激しく、他店との 差別化を図って来店客数の確保に精いっぱいだったとの報告がありました。

 

2-農産物中心に価格高騰―インフレ指数を押し上げ

2番目は「農産物を中心に価格が高騰してインフレ指数を大きく押し上げている」ですが、ドル高、国際相場のアップ、それから輸出の最優先政策。この3つが 相まってレアル価での極端な高騰が出てきております。大豆、コーヒー豆、砂糖、米など半端でない値上げ状態でして、逆に言いますと、過去2年の超低価格か らの修正とも言えるかと思いますが、”ここぞ”とばかりに値上げしております。

特にコー ヒーは1昨年来の歴史的相場低迷の反動から、国内原料相場はこの4カ月で3倍くらいの値上がりになり、現在コーヒー農場は好景気となり。去年の今ごろとは 全く様変わりという状況です。参考までにコーヒーの昨年の輸出量は2800万袋、1昨年比19%増。これは過去最大の輸出量でして、世界の貿易における シェアを27%から30%に引き上げております。大豆についても先ほど、柳田さんからお話ありましたが、輸出ドライブが止まらないために、国内の中小食品 加工業者には品物が回らないというケースも発生しております。

 

3-値上げにおける大手スーパーと納入業者間綱引き

3つ目、「大手流通業者が納入業者の値上げに真っ向勝負を挑んできた」と言うことですが、まず大手スーパーと食品・飲料メーカーとの力関係を見ますと、2 大スーパーといわれるポンデアスーカルとカヘフール、この2つは2001年の売上げが約38億ドル。それぞれ約38億ドル。これに太刀打ちできるメーカー はアンベビ社(AmBev)の39億ドルのみでして、ネスレ社が25億ドル、サジア社16億ドル、ペルジゴン社が12億ドル程度となっており、こういう意 味でも2大スーパーはかなり力があると見ていいかと思います。

昨年10、11月に新聞紙上 を賑わわせておりましたが、ポンデアスーカル・チェーンが、消費者に理由を説明できない値上げには応じない「ジガ・ノン運動」(ノンと言おう)を展開しま した。こうした大手スーパーの動きに対して、サジア社は「損をしてまで売る気はない。大手スーパーだけが顧客ではない」と反論しております。
先 ほども話しましたが、”ここぞとばかり”の値上げの砂糖ですけど、メーカーの値上げ幅は77%。この理由は国際相場が5月から20%強アップ、ドルが 51%アップしたと理由を言っていますが、そうした値上げ通知に対して、ポンデアスーカルの店頭からアスーカル(砂糖)が消え、リオのセンダスの店頭から 大豆油が消えるという状態になりました。

しかしながら、決着はスーパー側が、「この異常な値上がりはメーカーの納入価格の上昇によるものです」と店頭に張り紙をして最終的には納品をいたしました。
過去のハイパーインフレになれたブラジル人は値上げをすぐに「仕方ない」と受け入れてしまう傾向がありますが、こうした極端な値上げに抵抗する姿勢はこれから大事なのではと、個人的には思っていますが、メーカー側から見ると「ちょっと困った問題」ではあります。

 

4-新製品で勝負の各社

4 つ目の「新製品の売り上げ増に寄与」というテーマでは、具体的には乳酸飲料でヤクルト40、同じく乳酸飲料ヨーデルにグレープ味とピーチ味が追加された。 それから味の素さんの粉末ジュース、ヘフレスコ、”MID”、それから日清味の素さんのカップヌードルこれはもともとアメリカから輸入販売していた物を、 ブラジル産に切り替えて非常に販売が好調であると。これらの新製品は非常に売上げに寄与していると言うことです。

 

5-ライバル社の動き活発

5 つ目の「日系食品社のライバル社の動きが引き続き活発だ」というテーマですが、ここでは具体的には世界最大の食品メーカーと言われるネスレ社を取り上げま す。情報は二つあります。第1の情報は。乳製品の輸出で世界最大量を誇るニュージーランドのフォンテラ組合グループがネスレ社と提携を結んで、デイリー・ パートネス・アメリカス・ブラジル社というのを設立しました。同社は米州全体で乳製品の販売を展開するという方針だと言うことです。第2は、インスタント コーヒー市場も非常に厳しい戦いが続いておりますが、ネスレ社については最近、シェアを伸ばしている日系メーカーの10%安い値段で店頭価格を設定すると いうキャンペーンでシェア取り返しに来ているというような動きもございます。

 

6-新政権では2003年にまず為替安定がのぞまれる

最 後、6番目に、「食品業界にはルーラ新政権の影響がすぐ直接出る可能性は少なくて、まず為替安定が望まれる」ですけど、ルーラ政権になったから、すぐに 「どうこう」と言うことではないのですが、むしろ為替、インフレ、金利と言ったファンダメンタルズの動きが非常に懸念されるところです。特に為替につきま しては、現在の日系食品加工メーカーでは米、小麦粉、脱脂乳とかが輸入原料でして、かなりそういったもののコスト高が心配される。
また、いくつ かの企業は南米を中心に輸出を展開しております。従いまして、輸入のコスト高を輸出でなんとかカバー出来るという状況ではあったんですが、アルゼンチン、 ウルグアイに続いてベネズエラまでおかしくなって来たということで、輸出全体はまだ好調ですが、個別に見るとちょっと心配要素が出てきた。特に数量的なも のよりも債権回収面で心配要素がだいぶ出ているということです。
また為替はインフレと連動しておりまして、乱高下を続けるならば、また今年も去年と同様、非常に経営としては難しいものとなるだろうということが懸念される食品業界でございます。以上です。(詳細は末尾の部会資料)

2003年上期業種別部会長懇談会-食品部会(資料)

≪業界全体≫

2002 年度下期は、大統領選挙の影響から金融市場が大きく動揺した。米ドル為替はR$4.0付近まで高騰し、株価も8,500ポイントまで下落、カントリーリス クは2,400ポイントまで上昇し、一時は経済不況に喘ぐアルゼンチンに次いで世界第2位のリスク国となった。労働党のLula新政権発足後、動揺はよう やく沈静の兆しを見せ始めたものの、米ドル高に誘発される形で物価上昇は継続し、IMFとのインフレ目標(IPCA)6.5%(上限9.0%)を大きく上 回る12.5%となった。このインフレ抑制のため、12月に中銀は Selic金利を25%まで引き上げた。このような状況の下、各社原材料等の高騰になやまされはしたが、食品業界は概ね堅調に推移したものと思われる。

2003年上期はLula新政権が為替制度、IMFとのインフレ目標等旧政権の主要経済政策を引き継ぐことを明確にしたこと、更に、大蔵大臣、中央銀行総 裁等、閣僚の人選が国内および海外からも妥当な評価を受けたこと等により、年初より対米ドル為替はR$3.3前後で推移し、株価も12,000ポイントま で回復、カントリーリスクも1,200ポイントまで下降した。米国の対イラク攻撃といった不安要素は拭い切れないが、食品業界においてはさほど大きな変化 はなく今後は徐々に安定基調に入るものと予想される。

 

≪業界別動向≫

【外食業界】

2002 年下期は、米ドル高騰による食材・飲料原価及び諸経費の上昇が経営を圧迫する形となった。原価においては主要輸入食材であるカリフォルニア米とチリ産サー モンが著しく上昇、特にサーモンは下期のみで64%もの値上りをみせた。輸入ウィスキー、ワインは米ドルの動きに合わせる形で、毎月価格が変動(上昇)し ていった。また、諸経費の中で特に影響したのは光熱費であった。この大幅なコストアップを補うためには販売努力だけでは追いつけず、価格調整(値上)を行 わざるを得なかったが、”競争激化”と”外食離れ”が進む中、容易に価格に転嫁することができなかった。

輸入品という認識の高いウィスキーやワインといった商品は問題なく価格転嫁が計れたが、料理に関してはかなり難しい結果となった。繁盛店と言われていたところでさえ影響が出てきており、差別化の図れていないレストランは経営を危ぶまれ、中には閉店した店も何軒かあった。

2003年上期は、2002年と同じレベルで景気が推移する(良くはならない)と見られている。このような状況下では、料理等、質の向上・サービスのグ レードアップ・雰囲気の向上といった、他店との差別化を図り、来客数・客単価アップによる経営体質の向上を目指すことが必要と思われる。それができないと ころは、いずれ淘汰されることになろう。

 

【加工食品業界】

1) 飲料

2002年下期の醗酵乳分野では、昨年末より投入した大人向け乳酸菌飲料新商品が徐々に売上を伸ばしてきている。また、豆乳部門が比較的好調に推移したこ と、醗酵乳飲料の新製品投入などの効果はあったものの、依然続く各社の安売り攻勢で厳しい状況が続いた 一方、栄養補助食飲料、ヨーグルト・デザート分野 などは概ね堅調に推移した。
飲食材の販売においては、急激な米ドル高により国内産に益々値頃感が出、売上は順調に推移したものの、10月頃よ り、ダンボール等資材の値上り、農産物を主とする輸出最優先の動きに伴う大豆、砂糖といった原料の値上りが国内中小食品加工メーカーに大きな影響を与え始 めた。レストラン等の得意先は昨年在庫を切らしたところもあり、またメーカー側の値上を懸念して年末は厚めの在庫を持つこととなった。

2003年上期は、ルーラー新政権誕生後もさほど大きな変化はないものと思われるが、急激な対米ドル為替下落に伴う原材料の輸入コスト上昇、その他国内調 達の原材料などのコストアップをいかに吸収するかが今後の課題であろう。乳製品市場では、世界最大の輸出量を誇るニュージーランドのFONTERRA組合 グループが、ネスレ社の乳製品部門と技術・販売提携を結び、DAIRY PARTNESS AMERICAS BRASIL社を設立。同社は、米州、カナダからブラジル・アルゼンチン・ベネズエラ市場でのオペレーションを開始しており、本年後半にはチリ・コロンビ アからカリブ諸国まで乳製品の活動範囲を広げる計画といわれており、同市場においては今後競争がさらに激化するのは避けられない見通しである。
飲食材の販売においては、原材料(輸入、国産を問わず)価格の上昇に伴い、ある程度の値上はやむをえない状況ではあるが、国産品には引続き追い風が吹くも のと思われる。但し、極端な値上を行った業者は消費者離れを招き、いずれ値戻しの傾向が見られるのではないかと推察される。

2) 即席麺

2002年下期も市場そのものは引続き拡大基調で推移した。年央からの急激な米ドル高は小麦粉の大半を輸入に頼らなければならない各メーカーの急激なコス トアップを誘発し、値上や値締めを余儀なくさせ、スーパー等の実勢価格もアップした。小麦以外の原材料でも、明らかに便乗値上的な動きも散見され、為替に 翻弄された半期であったと言える。但し、基礎食品に近い即席麺は、耐久消費財に比べれば、景気の影響も少なく順調に拡大したものと思われる。

2003年上期も市場の拡大基調は継続するものと思われるが、主要変動費である小麦粉の大半が輸入または米ドル相場に翻弄されるコスト構造の業界であり、 まず為替の安定が望まれる。2003年に入り小麦粉の国際相場がやや下落基調になってきたものの、中東、極東情勢および米国経済そのものの不透明さが議論 される中、昨年以上に予断を許さぬ厳しい(我慢の)1年となろう。

3)調味料

国内調味料市場は、2002年下期43,000t、対前年比114%と成長を見せた。これは上期からのトレンドである家庭回帰(外食離れ)による調理機会 の増大が市場拡大に寄与したと考えられる。非調味料分野では粉末ジュースが非常に大きく売上を伸ばしている。国内加工用途調味料市場は、対前年比約 110%と順調に推移した。また、輸出市場は対アルゼンチン前年比70%、対ベネズエラ前年比90%と南米市場で苦戦したものの、全体では好調に推移し た。飼料用アミノ酸(リジン)市場は、2桁を超える順調な伸長を維持している。

2003 年上期においては、ルーラ新政権の「飢餓撲滅運動」(Fome zero)が食品産業界の最大の関心事の一つである。この計画で最初に恩恵を受けるのは、基礎食品(牛乳・フェジョン・食用油・砂糖等)であるが、同計画 が一過性のものでなく更に発展し、所得の再配分による低所得者層の水平的な購買力の向上というところまで達成できれば食品産業の裾野が広がり、国内調味料 および加工用途調味料事業共に恩恵を受けることになるであろう。

 

【農産・畜産】

1)大豆・大豆粕

2002年の大豆輸出数量は15.5百万トンとなり、前年の11.7百万トンを大きく上回った(32.5%増)。これは、生産量が前年よりも5百万トン強増えたことが主因。国内における搾油用大豆の使用数量は約22百万トンで、過去4年間ほぼ横這いの数字となっている。
2003年3~4月収穫のブラジル産大豆生産予定数量は48.4百万トン(前年対比約15%増)、大豆粕生産予定数量は19.9百万トン(前年対比 12.4%増)となっている。 同様に輸出量も増加が見込まれており、2003年1年間の輸出予定数量は大豆16.0百万トン(前年対比3.2%増)、大 豆粕12.6百万トン(前年対比16.7%増)を見込んでいる。

2) ブロイラー

2002年下期の生産量は3.7百万トンに達したと推定される。上期の3.6百万トンを加えて2002年の生産量は7.3百万トンと推定される(前年対比 12%増)。輸出も1.6百万トン(前年対比33%増)に達している。これは、ロシア・キューバ・東欧等の新興マーケットへの輸出が定着してきていること が主な要因といえる。また最近では、カナダ・中国・韓国等の新規マーケットへの取組も模索されている。対日輸出も170千トン(前年対比56%増)と増加 しているが、これは中国・米国からの対日輸出が品質問題により減少し、ブラジル・タイが増加した形となっている。一方、国内消費においては牛肉の価格上昇 に対して、鶏肉価格が安定的であったことから、国内消費の増加につながっている。
2003年上期も、引続き増産が見込まれ、7.9百万トンの予 想となっている。また、国産のトウモロコシ生産量も10%増が予想されており、鶏肉増産をバックアップすると考えられている。対日輸出においては、日本国 内の在庫が10万トン程度と言われており、2003年は2002年の輸入増の反動があるとも考えられている。

3)砂糖

2002~2003年(5月~4月)の砂糖黍生産量は309百万トン(前年対比10%増)となった。砂糖生産量は 19百万トン(前年対比3.3%増)、アルコール生産量は12百万キロリットル(前年対比7.1%増)となった。輸出も砂糖13.2百万トン、アルコール 0.5百万リットルと順調に推移した。
2003~2004年クロップの砂糖黍生産量は311百万トンと増産が予想されている。新政権によるアルコール消費拡大政策の導入、また米国・インド等への輸出拡大が期待されている。

4)オレンジジュース

2002年はオレンジ生産者にとっては極めて良好な年であった。1月にR$8.71/箱(40.8kg)であった生果価格は11月にはR$11.21まで 上昇し、通年では対前年比20%程度のアップとなった。輸出価格も上昇し、結果として輸出量は1.28百万トンと前年対比6%減に留まった。
2003年6月で終了する2002~2003年クロップのオレンジ生果生産量は350百万箱の見込み。2003~2004年クロップは昨年10月までの旱 魃により大減産が懸念されたが、11月の降雨で回復が期待されており、予想では320~340百万箱と減産予想が主流である。

5)コーヒー

2002年のブラジルの輸出量は27.99百万袋(60kg/袋)、前年比19.3%増、世界輸出のシェア30% に達した。これはブラジルのコーヒー輸出275年の歴史における最高値である。これは、記録的な生産量(約50百万袋)、レアル安による輸出ドライブの加 速によってもたらされた。逆に金額ベースでは、14.3億ドル(前年対比5.4%減)に留まった。一方、国内においてはレアル安が国際相場商品に連動する 国内生豆原料相場の上昇を招いた。さらにこのレアル安はエネルギー、包装資材等の価格急騰を引き起こし、国内焙煎業者は値上げせざるを得ない状況となっ た。

2003~2004年クロップは、2002年の反動で30~40%の減産(約37百 万袋前後)と見込まれている。 2002年度産の繰越在庫は輸出国、輸入国とも高水準と予想され、輸出も減少が見込まれる。2003年度もブラジルの輸出競争力は為替に左右されることと なろう。国内においては、ルーラ新政権の「飢餓撲滅運動」(Fome Zero)における新需要の掘り起こしができるかも大きな鍵になろう。ブラジル国内需要の増大を予想して、既に動き出している生産者(東北伯)もあるようだ。

2003年上期業種別部会長懇談会-コンサルタント部会


西川部会長

 

カルドーゾ政権の評価、ルーラ政権への期待

西 川  コ ンサルタント部会の方では、業界に及ぼす影響はちょっと分かりませんので、「最初にカルドーゾ政権の評価」を簡単に述べて、それをもとに比較しながら、 「ルーラ政権の評価というよりむしろ期待」を申し上げ、最後に、「今年のブラジルの政治・経済全体の簡単な展望」で締めくくらせて頂きたいと思います。政 治と経済に分け、それぞれのプラス評価とマイナス面を説明申し上げます。

カルドーゾ政 権、政治面のプラス評価と申しますと、さる10月の選挙にはっきりと出ているように、ブラジル流の民主政治が定着したことです。第2番目は、積極的な大統 領外交を通じて、ブラジルが中南米第1の大国であるという評価が国際的に認められるようになった事だと思います。
第3番目は、8年の長期間にわ たり、ブラジルの小党分立の政界にあって大過なく連立政権を維持してきた政治手腕。。こういった積み重ねが、後で述べます「レアルプランの成功」もあるん ですが、それまでブラジルの一般の政治に対する不信感を信頼感に変える、それを育む大きな原動力になったと思います。

その次は民営化。政府系企業の民営化は通信、道路、運輸、金融、そういった経済の動脈的な部門を計画的に、それも非常に有利な条件で行った。これは1年早 くても1年遅くてもかなり難しい民営化になったと思うのですが、その結果、それぞれの分野で投資も行われ、国民生活の向上、生産の増大といろんな点に貢献 したと思います。プラス評価の最後として、行政組織全般にわたる情報化。その結果、行政の効率化もかなり図られ、市民が受けるサービスもかなり満足すべき ものになって来つつあります。これは特筆すべきプラス効果ではないかと思っております。

逆 に政治面でのマイナス評価は、「1988年憲法」の中で、いろいろ問題点が出ていて、それを国会で一つ一つ改正を図ったが、大変な努力を重ねたにもかかわ らず、効果があまり出なかった。特に社会保障制度、金融制度、税制は、いろんな面で衝突したことがあまりにも大きく、マイナス面と見ていいと思います。

 

経済面プラスのトップはレアルプラン

経済の面で、これはもう文句なしにプラス評価出来るのは「レアルプランの成功」。これはもう論をまたない。第2番目には、この8年間にいろんな国際的な経済危機の影響があったが、いずれも経済成長を大幅に犠牲にすることなく克服した。これも高く評価できると思います。

ブラジルでは、貯蓄が少ない。あっても殆どの部分が公的な財政赤字の補填等に使われていて、経済成長を図るための投資はかなりの部分が外国からの直接投資 に依存してる。この8年間を平均しますと、かなり高率の外貨の直接投資を維持してきて、これによって、世界的にも難しい経済状況の中で、ある程度の経済成 長を維持する事が出来たと思います。
特に私が高く評価すべきだろうと思うのは、一つは、連邦政府がなかなかコントロールできなかった州の財政 を、各州の債務全部を連邦政府が引き受けて、リスケ計画を結んだこと。もう一つは「財政責任法」を粘り強く国会で交渉し、承認を得た。この2つは、ブラジ ルの公的、政府関係の財政の債権コントロールという意味で、大変大きな出来事であります。

そのほかに、企業マインドを転換させるために、いろんな形で応援をし、働きかけその結果、かつては見られなかったような考え方を持つ新しい企業家、あるいは投資家各方面で輩出している。これは将来、かなり大きなポテンシャルになって行くと私は見ています。

経済面のマイナス評価は、いろいろ努力したけども、効果があまり出なかった貧富格差是正策、失業率を減らす、あるいは雇用の確保策の十分さ及び公的債務の膨張を抑え切れなかった事ではないかと思います。

 

ルーラ政権の評価、期待

ルー ラ政権への評価は、まだできる段階じゃないと思います。大統領自身、あるいは閣僚、補佐官といった人々のいままでの発言を中心に見てまいりますと、政治の プラス面は、第一に「社会的弱者への配慮」。これはルーラの生い立ち、信念、そういうものに根差したものだろうと期待しているわけです。 これを貧富格差 の縮小のための第一歩とした積極的、総合的な施策を期待したいと思います。特にそういう階層の教育面への投資を大いに期待したいと思っております。
先ほど赤嶺さんもおっしゃいました「変革」への期待。これは対話をもとにしてあらゆる社会層と合意を確立する形での変革であり、大いに期待されるところで す。そのほか、当選が確定してすぐに「国際協定とか契約を守ります」と、はっきりと言い、非常に現実を見つめ実際的な政治家であることを強く印象づけた。 ですから、初心を忘れずに、いろんな困難はあるでしょうが、やはりそれを貫いて頂きたいと期待しております。

先ほど申し上げました、カルドーゾ政権が実現できなかった改革、憲法改正をぜひ、粘り強くがんばって国会承認をとってもらいたい。政治におけるマイナス面 は、何回もいわれている事ですが、ルーラ人気、必ずしもPTの政策が承認された選挙結果ではなかったわけで、ルーラ人気が何らかの形で落ちて来ますと、や はり政治的にいろんな問題が出てくる可能性があると思います。
それから、連立政権、そのベースの脆弱性が大きいし、PTの中で30%とか40% と言われている急進派を本当にこの4年間、押さえ切れるのかという不安。それから、地方政治はどうしても州知事の力が非常に強い。こんどの選挙では比較的 小さな3つの州に知事を送り出すことが出来ただけで、サンパウロはじめ拠点州はみんな野党に握られており、これも政治的に問題を起こす可能性が大きいと思 います。こういったところが、マイナス面であると見ておく必要があるのではないかと思います。

経済は、これは先ほど申し上げましたように、カルドーゾ政権の基本的な線を継承してやって行こうと言うことですから、これをうまく実現し、経済の安定を図ってもらいたい。
マイナスの面はいろいろやってその実績を見ないと何ともいえませんので、一応経済面はあまり申し上げることはないと思います。

 

今年の政治経済展望

まず政治動向。国際情勢が緊迫しているイラク、北朝鮮との問題がブラジルの政治に大きな影響を与えることはないだろうと見ております。中南米でベネズエラ はかなり落ち着いて来そうで、中南米のいろんな問題もブラジルの政治にはあまり大きな影響はなかろう。 ルーラ政権の政治面での脆弱さ、そういう問題も今 年中は大きな影響はなく、来年以降に起こってくる可能性があると見ています。

経済動向 は、国際経済は恐らく、好転はあまり望めないであろう。特にイラク問題は場合により、石油価格の高騰が起こらないとも限りませんし、そのあとインフレ再燃 の心配もありますので、これは楽観できない。それが結局、国際金融マーケットにも大きな影響を出して、また為替危機が起こらないとも限りません。

国内金利はしたがって高めに推移するのでしょうし、為替相場は主として国際的な情勢によってボラチリになると。経済成長の面は恐らく、輸出が伸びればそれ だけ成長が期待できるのではないか。こういう風にみております。もう何度も言われていることですが、ブラジルの” アキレス腱”っていいますか、これは国際収支の面ですから、この点はやはり今後の推移をよく注目する必要がある。特に外貨による直接投資の推移、それから 外債の発行、あるいは貿易金融も込めた外貨の借入れの推移に特に注意を払う必要があるだろうと思います。その他の国内政策面では、公的財政の動向、それか ら社会保障年金制度改革のこれからの推移、税制改革あるいは労働改革というのはどう動くかと、この辺を注意する必要があるかと思います。以上です。(詳細 は末尾の部会資料)

 

司 会:ありがとうございました。あの非常に時間が押しておりますので、この議題については、要するに各部会に具体的に与える影響ということで2、3にしぼってご発表頂けたらと思います。

木 口 あのちょっと意見言わせて頂きます。

司会:はい。

木口   まだルーラ政権が発足して1ヵ月ですね。それで、選挙公約はいろいろありますけども、それの具体策が殆ど出ておらない。だからこの時点で、その業界に与 える影響と言われても いま言われたような一般的なことしかできない。で、それに対して我々はどういう、こういう懸念をしているとか、期待しているとか、 そういうことしか言えないんじゃないかと思うんですよ。
ですから、時間の関係もありますし、特に発表されたいという人がいれば、そういう方にやって頂いたほうがよいと思うんですが・・・

司 会  分かりました。それじゃあ、特にこの議題について意見のある部会がございましたら・・・ はい、食品部会の渡辺さん。

 

フオメ・ゼロ計画、食品部会にプラスか

渡 辺  時 間の関係で簡単に一つだけ申し上げます。「フォーメ・ゼロ計画」ですが、これは、まだ試行錯誤の段階という感じですけれども、この公約が実施されれば牛 乳、フェイジョン、砂糖といった基礎食品の需要増大が見込まれると言うことで、これがさらに発展していい方向に向かって、新需要が掘り起こされると、加工 食品等の需要増大にも、ひょっとしたらつながるかもしれない。ということで、食品業界全体にとっても、ひょっとするといい影響が出てくる可能性がある、と いう期待はしております。ただし、どちらかというと、これはナショナル・ブランドよりも地方ブランドに影響が大きいんじゃないかと。実際ノルデステ(東北 伯)のコーヒー生産者の中には、この辺の需要増大を見越してすでに動き始めているところもあると言う情報もありました。以上です。

司 会  ありがとうございました。そのほかの部会で、はい、貿易部会の柳田さん。

 

米のイラク攻撃のほうに関心 - 貿易部会

柳 田  貿易部会での議論で、いくつかありましたが、一つは、開発商工大臣に就任をしましたサジア社長フルランさんですが、彼は先進諸国に対する非常に強い農業保 護政策批判者ということで有名で、”強硬派”ということですが、これがさらに対日姿勢に対してもアグレッシブに出てくる可能性があるというのが一つござい ます。このフルラン大臣だけではなくて、ロドリゲス農相、あるいはアモリン外相もそうですけども明らかにこの3閣僚、今回WTO会議で日本に行くと先ほど 総領事からお話ありましたが、明らかにWTO、FTA、FTAAシフトを組んでいるな、というのが一つありました。

それから先ほどご指摘の通り、少なくとも今年上半期、新政権の行政能力っていうことが不明で、判断できないと言うのが大半の方のご意見でした。ただ飢餓対 策をプライオリティーにおいて、その次に輸出促進を政権の柱にあげておりますので、具体的に今後どう取り組んでいくのか、前政権とどういった違いで輸出促 進をしようとするのか、ということが徐々に明らかになってきた段階で、評価っていうか、業界への影響っていうか、そういうところに出てくるのかなと言うこ とでした。

最後に、むしろ今は新政権がどうなるかよりも、貿易業界としては、米国によるイ ラク攻撃の結果がブラジル経済全体にどう影響するのか、それに関連して、通貨がどうなるのかと、先ほどからの議論ですけども、そういった問題の方にはるか に関心がある。それからもう一つは、これも先ほどふれましたが、ブラジル製品が本当に国際競争力を付けているのかどうか。その工業製品は、世界的なトップ クラスのものは、少なくとも多国籍企業によるその一部の製品を除いてほとんどない。つまり安くないと売れない。これは、比較優位と一般的に言われています 農業製品についても、昨年、非常に伸びた。輸出も伸びたが、他地域の不作、あるいは国内の耕地面積の拡大、こういったことの結果として輸出が伸びているの であって、本当に農産物を含めて競争力を持っているのか。こう言ったことの方にむしろ関心があるという意見がたくさんありました。これについては今後検証 していく必要があろうかと思います。以上です。

司 会  ほかにございますか。はい、電気電子部会の瀬山さん、どうぞ。

 

密輸取締り強化策歓迎、デジタルTVに関心 ― 電々部会

瀬 山  電 気電子部会の方では、これは、前大統領のカルドーゾさん、それから前開発大臣のアマラルさんから引き継がれたものですが、要はマナウスでの家電事業等に対 して、「マナウス事業の貿易アンバランスの是正」という意味から、現調化ならびに輸出促進ということが、引き続きいわれてます。実は現調化については、あ る一定の現在出している基準を変更したいという具体的な提案がなされていまして、業界として対応している。

サポーティング・インダストリーが非常に少ない中で、その辺のところを、どのようにプロモートするような案が具体的に出てくるのかと言うところが今後、業 界と政府商工省との間の話し合いになると思います。輸出促進についても、具体的なインセンティブについてまだ話はありません。それからPT、新政権という ところですと、アングラ経済、われわれの商品の中でも、密輸というものが一部まだ残っております。それに対して雇用機会を失わせておるものという観点か ら、密輸を少なくして行こうというのが業界としては歓迎です。それから、デジタル・テレビの放送方式、これが前政権から持ち越しになりましたので、これを 大使館、総領事館さんはじめですね、あの、官の方でも注目をして、動向など情報等ございましたら頂きたいというお願いであります。

司 会  ありがとうございました。ほかにございますか。はい。

 

気になる内閣不一致

新 井  さっ きコメントの中にも入れましたけども閣内不一致という問題。例えば、環境相だとマリナ・シルバ。それから農業、農村開発相ですか、ミゲル・ロセット。この 2人は遺伝子組換の反対派。その一方で、ロベルト・ロドリゲス、これが農務大臣で、先ほども出ていましたけども、トウモロコシを去年だいぶ輸入した。輸入 する先がアメリカ、アルゼンチン。90%が遺伝子組換トウモロコシ。これなくして食肉加工工業はやっていけない、牧畜業はやっていけないよ、と言って推進 しようとする。

一方で、かなり過激な強硬派が2人閣内にいる。そういう部分がけっこう閣内 にあって、儀式が終わっていざ具体的になったときに、特に遺伝子組換については、アメリカ政府の後押しを受けたモンサントはかなりやっているわけですが、 対外的な圧力、対米国との関係でカルドーゾとどういう風に違いが出てくるのか。それから、いまの閣内の不一致。 これがかなり行政面で影響が出てくるので はないかな-と。われわれ、例えば農薬とか飼料業界にとって、遺伝子組換っていうのは完全にマイナス要素ですので、具体的にいってその辺がどう出るかな と。あとは、化粧品業界に対してIPI 税を引き上げる、と公約で挙げていた「シーロ・ゴーメスが大統領にならなくてよかった」っていう化粧品業界ありましたけども。まぁ、そういうところが気に なるかなと言うところでした。

司 会  ありがとうござ いました。それでは「ルーラ政権の影響」についてはこの辺で打ち切りまして、次の2つ目のサブテーマであります「日伯間のFTA締結の必要性、あるいは与 える影響」についての意見を頂戴したいと思います。 現状でのFTAについての受け止め方は、業種によって濃淡があるようですけども、直接間接問わず、将 来的には大きな問題になるという認識をすべきだと思います。ここでFTA 締結の現状について、ジェトロ柳田所長(貿易部会長)から簡単にご説明頂きます。

2003年上期業種別部会長懇談会-コンサルタント部会(資料)

1-カルドーゾ政権実績の評価(蔵相としてレアルプラン導入を実施した1994年7月~2002年12月まで)

(1) 政 治

A) プラス評価
民主政治の定着化
中南米第一の大国としての高い国際的評価の定着
長期間にわたる与党連立の維持
政治にたいする国民の信頼性の回復
政府系企業の民営化の遂行
行政の情報化

B) マイナス評価
憲法改正の重要事項の未達成

文字どおり国民の総意を反映した90%を上回る高い投票率の総選挙が平穏裡に実施され、さらに過去に見られた大統領の政権放棄  やクーデーターも起こら ず、ブラジル流の民主政治の定着化が顕著ですが、これはカルドーゾ大頭領の安定した政治運営に負うところ  大であると考えます。
グローバル化した国際政治の舞台で積極的に展開された大統領外交のおかげで、中南米第一の大国としての国際的評価が定着して います。
8年にわたる長期の在任期間、小党分立のブラジル政界において、連立政権を大過なく維持してきた政治手腕は高く評価されるべきで しょう。

後述のレアルプランの成功と相まって、これらの政治上の実績がそれまで失われていた国民の政治に対する信頼感を回復した事実は 特筆に価すると考えます。
政府系企業の民営化はカルドーゾ政権のまえに開始されていましたが、通信、道路、運輸、金融等の経済の動脈部門の民営化が同政 権において計画的に進めら れ、有利な条件で遂行されました。その結果各分野で投資が進み、国民生活の向上、経済の発展に多大の こうけんをしています。

最後に高い評価を与えられるべきと考えますのは、行政組織全般にわたる情報化の実施です。この結果、行政の大幅な効率化と市  民が政府機関よりうける サービスが大きく好転しました。マイナス評価としては、1988年制定の現行憲法にみられる多くの欠陥・不備の改正問題がはやくより論議されましたが、重 要な社会保障制度、税制、金融制度等の改正は未だに実現せず、ブラジル社会の大きな歪は残されています。

 

(2) 経 済

A) プラス評価
レアルプランの遂行
経済成長を犠牲にせず経済危機を克服
外貨による直接投資の高水準維持
州財政再建のための州債務の連邦政府集中化とリスケ契約
財政責任法法制化の実施
企業家マインドの変換

B) マイナス評価
貧富格差の是正、雇用の確保、公的債務の膨張抑制等ブラジルの抱えるクルーシャルな問題解決の効果微小
インフラ投資の不足

カ ルドーゾ政権最大の功績は、以前数度にわたって実施されたショック療法の失敗を分析、慎重にそして大胆にレアルプランを導入、成功させたことでしょう。こ のプランにより、ハイパーインフレの沈静化と経済の安定をもたらし、長年のインフレ経済に苦しんでいた国民すべてに、インフレのない生活がどのように素晴 らしいものかを実感させました。特に低所得層の生活水準の向上におおきな貢献をしました。
また、1994年のメキシコ危機、97年のアジア危機、 98年のロシヤ危機、2001年のアルゼンチン危機とブラジルの電力危機、そして昨年のブラジル為替危機を、すべて経済成長を大きく犠牲にすることなく克 服しました。 これは先進諸国の政府や国際金融機関の支持のお陰でしょうが何といっても、カルドーゾ政権の適切な対処措置があったからこそ実現できたとい えましょう。

ブラジルの国内貯蓄の大半が、長年にわたり公的財政赤字の補填や公的債務のファ イナンスに使われているために、経済成長に不可欠な投資は外資に大きく依存しています。政府系企業の民営化に多くの外国企業が参加したという特殊事情もあ りますが、カルドーゾ政権は8年にわたる長期間、外貨による直接投資を高水準に維持することに成功し、米国を初めとする先進国の経済が低迷する中でも、ブ ラジル経済の成長を、低い率にせよ、確保してきました。

長年にわたり、州政府の独立性が強い ために、夫々の州が抱える公的債務のコントロールが、連邦政府にとって頭痛の種でした。カルドーゾ政権は辛抱強い政治折衝をかさねて、97年にはすべての 州債務を連邦政府に集中、6%という低金利と30年の長期リスケ契約を結び、各州の財政コントロールと再建のベースを作りました。
また、2001年には財政責任法の国会承認をかちとり、公的債務と財政の全般的なコントロールとその健全化が可能になりました。この功績は特筆に価すると考えます。

グ ローバル化した世界経済のなかでブラジルの企業が生き残るためには、企業家マインドの変換が不可欠と考え、法制、行政、外交の面で積極的なサポート、指導 をしてきました。各分野で多くの新しいタイプの企業家、投資家が輩出しています。彼らの多くは国際的なヴィジョンをもち、社内留保を増やし、新しいテクノ ロジーの導入に挑戦する等の共通項を持っています。
これらの業績を得るためには、カルドーゾ大統領が全幅の信頼をおき、8年間経済のすべての舵取りをまかせた、ペドロ・マラン蔵相の存在を無視することは出来ません。

こ れらの素晴らしい業績の反面、かなりの努力を払ったにもかかわらず、十分な効果をあげることが出来なかった、貧富格差の是正、雇用確保、公的債務の膨張抑 制、インフラ投資の不足などを、残念ながらマイナス面として指摘しなければなりません。これらは一政権で解決できるような性質のものではなく、同じような 政治理念を持って、その実現に不屈の強い意志をもった後続政権との連携が必要と思われます。

 

2-ルーラ政権への期待と評価

ルーラが大統領になって一ヵ月しか経っておらず、実績を見て評価することが出来ませんので、彼やその閣僚、補佐官の発言、談話、声明より判断して期待、評価を述べたいと思います。

(1) 政 治

A) プラス期待
社会的弱者への配慮 - 貧富格差縮小への第一歩
対話をもとに変革のための社会的合意を求める姿勢
国際協定、契約の遵守表明
カルドーゾ政権が果たせなかった憲法改正の重要法案の国会承認を求めるという強い意志の表明

B) マイナス評価
ルーラ人気に支えられた政権
PT急進派に対するコントロールの永続性に対する不安
連立政権のベースの脆弱性
拠点州におけるPTの政治力の弱さ

ルー ラ本人の出身からみても、彼の社会的弱者への配慮は想像以上に強いものと思われます。安易な人気取り政策におわらず、本格的な貧富格差縮少への第一歩とし て、総合的な合目的的な施策をとって貰いたいと強く希望しています。特に社会的弱者を対象にした教育投資に特別の注意をはらって欲しいと願っています。

ルー ラ大統領は ’変革、これがキーワードであり、10月選挙でブラジル社会が示した大きなメッセージである’、とその就任演説を始めていますが、その変革を 実現するために、対話をベースとして社会的合意を求めるとの姿勢を明確にしています。 非常に困難な事業でしょうが、その基本線を明確に示し、粘り強くあ らゆる層との対話を進め、必要な変革を実現し、ブラジル国民すべてにとって願わしい経済発展と国民生活の向上を図ってほしいと願っています。ルーラ大統領 はこのような対話を進められる人物と思われます。
10月の選挙で当選が確定して後、国際協定、契約の遵守を表明し、国益を第一にする現実的な政治 家としてのイメージを定着させました。今後とも判断の基準を失うことなく、勇気を持って決断を下し、ブラジルの国益を守ると同時にその国際的な地位の向上 に努力して貰いたいと期待します。

カルドーゾ政権が国会承認を取ることの出来なかった重要法 案の成立に最大の努力をするとの意思表明は、ブラジルの近代化と大多数の国民の利益にとって何が必要か、を十分承知した上での発言と思われます。この初志 を忘れず、自己の政治生命をかけて取り組んでもらいたいと考えます。
然しながら、安易な期待は禁物です。10月選挙でのルーラ人気は未曾有の大量 票をもたらしましたが、同時に国民はPTの政策を承認していないという厳然たる事実も示しました。一党一派の利益にとらわれず、常に国民、国の求めるもの は何かを念頭に舵取りをしてほしいものです。

ルーラ政権のベースである連立政権は非常に脆弱です。最近、PMDBを連立政権に取り込むことに失敗しましたので、ルーラの政治運営は更に困難になるでしょう。
さらにPTの穏健派がルーラ政権の中核ですが、同党の40%を占めると言われている急進過激派をいつまで抑えておくことができるか、同党が二分するような事にならないかと心配です。
地方政治を決定する州知事には、PTは今回三人しか送り込めませんでした。しかもサンパウロ等の拠点州は野党の勢力下にあります。ルーラ政権の気配りは大変でしょう。

(2) 経 済

A) プラス評価
IMFとの協定合意を含む対外借款契約の遵守表明
財政責任法の厳守表明
中央銀行のオペレーショナルの自主性への理解とそのインフレコントロールの第一義性の確認
公的社会保障年金制度の抜本的改正への積極的取り組み

B) マイナス評価

経 済の面では、やはりより具体的な政策、実績をみてみないと評価できません。ただ、中央銀行総裁にはBankBostonの元頭取のメーレイレス氏が選ば れ、マーケットも安堵したようですが、各省の局長級、政府系企業の役員人事がこれから政治的に決められる可能性が高く、注目する必要があります。

 

3 - 2003年の政治経済動向の展望

(1) 政治動向

イラク、北朝鮮等の緊迫した国際情勢が、ブラジルの政治に大きな影響を与える事はなかろうと見られます。中南米のいくつかの国   で起こっている問題も同様に影響はないと考えます。
ルーラ政権の政治面でのマイナス評価で指摘したような原因で、心配すべき事態が起こる可能性も、今年中は極めて小さいでしょう。  その後は情勢の進展如何によっては、可能性が増大するやもしれません。

(2) 経済動向

国際経済は、全般的には好転を望めないでしょう。 イラクを中心とした中東情勢は、大きな不確定要素として、単に石油問題のみなら  ず、広範囲の影響を与える可能性があり、注意する必要がありましょう。
国内経済においては、財政面では非常に厳しい年になりましょう。石油価格の高騰のような不測の事態が起こると、収まりかけたインフ レが再燃する可能性もあり、国際金融マーケットも緊迫し、油断をゆるしません。
国内金利は、したがって高めに推移するのではないでしょうか。
経済成長は、基本的には輸出に依存すると思われます。
為替相場は、主として国際情勢によって安定せず、変動しやすいのではないでしょうか。

中長期的には、国際収支面がブラジルのアキレス腱であることには変わりなく、貿易収支はいうに及ばず、外貨による直接投資、外貨  債の発行や貿易金融をふくむ外貨借り入れの推移、難易等にたえず注意を払うようにすべきでしょう。
国内政策面では、次の点に注視することが必要でしょう。
公的財政の動向
社会保障年金制度改革
税制改革
労働改革

―完―

2003年上期業種別部会長懇談会-建設不動産部会


清水部会長

 

資材値上がりが収益圧迫

司 会  ありがとうございました。ガンバリズムに期待したいと思います。続きまして、建設不動産部会の清水部会長よろしくお願いします。

清 水  建設不動産部会の清水でございます。私ども建設不動産部会は、建設業を主体とする建設業者と、アパート、住宅販売を含む不動産業者の集まりです。2002年下期の回顧、それから2003年上期の展望については各部門に分けて報告させて頂きたいと思います。

2002年下期の回顧。建設部門は大統領選挙の影響から低調に推移して、大型物件にその傾向が著しく顕著で、そのため、各社とも目標を下回っております。 日系企業からの案件は非常に少なく、非日系の分野で工事量の確保をせざるを得ない状況になっております。非日系分野での活況な業種の特定はなく、過去の実 績延長での受注等に限られております。また、レアル安に伴う建設資材の値上がりが収益面に悪影響を及ぼしております。とくに、建設の使用資材、セメント、 鉄、電線等の値上がりが20~30%ということで収益に大きく影響しております。

不動産投資は一時的現象、いま供給過剰状態

不動産部門ですが、好調であったところと低調であったところの2局に分かれました。入居率が維持出来、保有不動産が順調に売却できたところは好調でした が、入居率が維持出来なかったところは厳しい状況となっております。全般的に政権交代の不透明さから、投資家が銀行貯金の投資を不動産投資に切り替えたた めに、現在、供給過剰ともいえるビルの工事が増加しております。そのため商業ビルについて過剰感が出て来ております。また、市条例の変更により建築規制、 とくに建坪率等の削減が厳しく制限されることを見越して駆け込み建築申請、工事着工もあり、サンパウロ市内では多くの建設現場が目立つ状況になっておりま す。

ターゲットは中小物件 - 建設部門予測
調整率の指数変更を予想 - 不動産部門

2003 年上期の展望ですが、建設部門は、新政権の政策の様子見から大きな動きはなく、低調に推移するのではないかと予測しております。引き続き中小の比較的工期 の短い物件がターゲットになって行くものと思われます。為替の変動、労務賃金の調整、インフレ等の影響による収益面の圧迫が懸念され、3社中2社が前年よ り業績が落込むと予想しております。また、日系企業からの工事については、引き続き非常に低調と予想されております。また、建設資材の値上がりを予想しま すと、大型物件はかなりリスクが高くて、積極的に取りに行くような状況にはありません。

不動産部門ですが、需給の悪化が懸念され、楽観はできないが現状の入居率は維持できるのではないかと予想されております。また、契約更新時の賃貸料の調整 については、従来使用していた指数ではアップ率が大きすぎるため、別の指数で調整するようになると予想されております。以上が、建設不動産部会からの報告 でございます。(詳細は末尾の部会資料)

2003年上期業種別部会長懇談会-建設不動産部会(資料)

1月29日に開催された建設不動産部会での討議、発表内容を下記のように纏めましたので報告致します。

1、 2002年下期の回顧

* 建設部門

各社とも、大統領選挙の影響から低調に推移し、大型物件についてはその傾向が顕著であった。
日系企業からの案件は非常に少なく、非日系の分野で工事量の確保せざるを得なくなっている。
非日系の分野での活況な業種の特定はなく、過去の実績の延長での受注等に限られている。
レアル安に伴う建設資材の値上がりが、収益面に悪影響を及ぼした。

* 不動産部門

好調であったところと、低調であったところの2極に別れた。
入居率が維持でき、保有不動産が順調に売却出来たところは、好調であったが、入居率が維持できなかったところは、厳しい状況となっている。

*全 般

政権交代の不透明さから、投資家が銀行預貯金投資から不動産投資に切り替えたため、現在供給過剰ともいえる、ビルの工事が増加している。そのため、商業ビルについては過剰感が出てきている。
また、市条例の変更により建築規制(建ぺい率の削減等)が厳しくなることを見越した駆け込み建築申請、工事着工もあり、サンパウロ市内では多くの建設現場が目立っている。

 

2、 2003年上期の展望

* 建設部門

新政権の政策の様子見から、大きな動きはなく、低調に推移するのではないか。
引き続き、中小の比較的工期の短い物件がターゲットになっていくであろう。
為替変動、労務賃金の調整、インフレ等の影響による、収益の圧迫が懸念される。
3社中2社が前年より業績が落ち込むと予想。
日系企業からの工事については引き続き非常に低調と予想される。

* 不動産部門

需給状態の悪化が懸念され、楽観はできないが、現状の入居率は維持できるのではないか。
更新契約時の賃貸料の調整については、従来使用していた指数では、アップ率が大きすぎるため、別の指数で調整をするようになると予想される。

 

3、「ルーラ大統領指導下のブラジル政治、経済が建設、不動産業界に与える影響」

新政権が誕生してまがないので、不透明であるが、ここ半年くらいは大きな影響は
ないのではないか。建設労務者を含む低所得者層の賃金調整がどのくらいの水準で
落ち着くか、収益面から大きな関心がある。

低所得者層に対しての貧困対策の一環として、新たな住宅供給政策が出る可能があり、注目している。
国際情勢の急展開(イラク戦争等)により、新政権の経済に不安感が広がりはじめると、投資の減退、テナント需要の減少等、建設不動産業界にとっては厳しい経営環境になることが予想される。

「日伯間のFTA締結の必要性あるいは与える影響」

建設、不動産業界にとっては直接的な必要性、影響も現在のところ考えられない。

以上

 

2003年上期業種別部会長懇談会-金融部会


山田副部会長 

銀行業界

レアル乱高下、インフレ再燃、高金利の02年下期

山 田   非常に大任でございまして、果たしてうまく出来るか自信がございませんが、それでは金融部会よりブラジル経済2002年下期の回顧と今年2003年上期 の展望について、銀行業界と保険業界に分けてご報告させていただきます。本日、部会長の村田が日本出張中で、私、みずほコーポレート銀行の山田が代理を務 めさせていただいております。

それでは、まず銀行業界のほうからご説明いたします。最初に2002年の下期の回顧につきまして。
概観といたしまして、2002年の下期のブラジル経済は大統領選挙による様々な思惑が市場を駆けめぐり、ブラジル通貨レアル、およびカントリーリスクとも 乱高下。インフレ再発の懸念など極めて動きの大きい期でありました。労働者党ルーラ候補の優位が確かな物になるに従い、カントリーリスクの上昇、レアルの 下落に拍車がかかり、10月10日には対ドルで4レアルをつけました。これは皆さんのご記憶にも新しいと思います。しかし、その後、労働者党金融担当のパ ロッシ氏による一連の金融市場沈静化に向けた発言が好感されまして、通貨は小幅ながら回復。また、ルーラ氏勝利後も労働者党は堅実な経済政策を継続すると 繰り返し発言したこともあり、市場は沈静化の方向に向かいました。
しかしながら、ルーラ氏優位の選挙戦は金融市場の不安を残念ながら募らせまし て、通貨レアルは対ドル比大幅に切り下がりました。その結果、ガソリン、電気、ガス等の値上げが実施され、インフレ再燃が再発。インフレ率、これは IPCAが対前年同月比では2002年6月には7・66%だったのが12月には12・53%まで高騰いたしました。
中銀はインフレ対策としてSELIC政策金利を段階的に25%まで引き上げ、高金利政策を採りました。これが昨年下期の回顧でございます。

業界トピックス

1-銀行のSPB導入 2-投信の時価会計制度導入

銀行業界のトピックスといたしましては二つございまして、一つはSPBの導入、もう一つは投資信託からの資金の移動。これについてご説明いたします。

まず一つはSPB、これはブラジルの決裁システムでございますが、これが新たに導入されました。決裁リスクの軽減と資金移動の円滑化を目的に、昨年の4月22日から導入され、この新しい決裁システムが採用したTED方式,これはあのリザーブ勘定の決裁方式です。
リザーブ勘定振替により資金化が早まりまして、送金日、当日決裁と受取人口座、当日入金が可能となっております。これが一つのトピックスでして、二つ目は 投資信託からの資金移動。債券相場の急落局面、また投資信託に対する時価会計制度導入の影響等がありまして、多くの投資家は資金を投資信託からポウパンサ 預金や銀行預金(CDB)等に移動いたしました。年間を通しておよそ700億レアルが投資信託から資金移動したと思われます。

議会運営に左右されよう新政権 

次に、今年上期の展望についてご説明させていただきます。全体の概観とそれに続きまして相場見通しと、という形でご説明をさせていただきます。

まずは概観。2003年の上期はルーラ政権の議会運営に大きく左右されるものと考えております。ルーラ大統領の船出は歓迎ムードで始まったものの、与党労 働者党はご存じのように両議会で過半数議席を持たないため、ルーラ政権は今後厳しい議会運営を強いられることと考えます。今月末から始まる国会で公務員の 社会保障制度改革、税制改革をいかに迅速に実行していくかが今後の課題になるものと考えます。 この議会運営の他に今後問題となるであろう点は、インフレ の動向であると思います。
昨年12月のインフレ率、これは先ほどご説明申し上げましたがIPCAで12・53、これは政府の当初目標の2倍以上 でございます。 かつ、過去7年間で最高でございました。大方のアナリストの今年上期の予想ではインフレ、実所得低下、これの継続、それから失業率の高止 まりというふうに見ております。

6月末の為替相場予測に大きなばらつき

相 場見通しにつきましては、後で別途ふれさせていただきます。外部要因としてベネズエラやイラク情勢等にも十分な注意が必要であると考えられます。ちなみ に、国連貿易開発会議(UNCTAD)と国連経済局の共同調査によりますと、ラテンアメリカ地域の今年の経済はアルゼンチンの穏やかな経済安定と、メキシ コ経済の回復が継続されるとすれば2・25%の成長が見込めると予想されております。
それではみなさんご関心の高い相場見通しについてふれさせていただきます。

まず最初、為替相場です。昨年下期の為替相場は下期スタートとなる7月1日、これは2・8レアル台でした。そこからブラジルリスクの上昇とともに7月下旬 に3レアル台に乗せた後も上昇を続け、大統領選一次投票直後の10月10日には、先ほどご説明申し上げましたように、史上最高値の4レアルをつけました。 その後、ルーラ氏の勝利決定後は、徐々に沈静化し今年初は概ね3・2から3・4レアルのレンジで推移しておりました。
しかし、ご高承のように最 近時、公務員の社会保障制度改革の難航、イラク情勢等の不安材料から再び軟化の兆しを見せ始めまして、現在は3・6レアル前後で推移しております。昨日の アメリカの動向でですね、それまで3・5で推移していたものが今日現在3・6レアルにまたさらに軟化しております。
こういったなかでボラティリティーが高いせいか、主要4行の2003年6月末の為替相場予測、これは3・2から3・6レアルと大きくばらついております。
次に、SELIC政策金利につきまして。中銀はSELIC政策金利を昨年7月に4カ月ぶりに0・5%の利上げを行って18%といたしました。それ以降、10月より反転いたしまして、インフレ抑制のため段階に利上げを行い現在は25・5%としております。
ルーラ政権は大統領選挙の公約におきまして、利下げによる経済成長を謳ったものの、メイレレス中銀総裁はインフレ抑制政策の継続を表明しております。当面現状の金利水準を維持することによりまして、インフレ抑制に軸足をおいた政策が行われるものと考えております。

Selic金利は年末に20.5% - 中銀予測

主 要4行の今年6月のSELIC政策金利予測につきましても、為替相場同様、ボラティリティーが高いせいか、年21・5%から26%とやはり、これもばらつ いております。ちなみについ先日、新聞に載っておりました記事によりますと、中銀が金融機関100社を対象に行っております毎週の調査によりますと、 2003年今年末のSELIC予想値は20・5%。これは年末です。それからIPCAによる年間インフレ率予想は11・44%というふうに中銀が2月3日 に発表しております。

保険業界

全種目収保料30%伸びと好調

そ れでは保険業界につきまして2002年の回顧と03年の展望についてご説明させていただきます。2002年の回顧、保険監督庁(SUSEP)が発表しまし た2002年10月末現在の公式データに基づき、健康保険を除くベースで、収入保険料、損害率、引き受け動向について2002年を振り返ってみたいと思い ます。
まず収入保険料。新車販売台数の5%落ち込みが主因で自動車保険が伸び悩んだものの、全種目収入保険料は対前年同期で約30%の増加と極 めて好調でした。 また、近年主要州への集中化が更に進んでおりまして、サンパウロ州は全国の55%を占めリオ、ミナス、パラナがこれに続き、主要4州で 79%を占めるという状態になっております。

次に損害率につきまして。損害率は61%と昨年同期より5%改善。しかし、主要種目である自動車保険の損害率は逆に2%悪化しておりまして、自動車盗難件数が依然高い水準で続いていることによります。
次に引き受け動向。2001年9月の米国多発テロ事件以降、海外の再保険市場は極端にハード化いたしまして、その後も世界各地で発生している数々の天災事故により再保険市場の料率アップ、および引き受け条件縮小、この傾向が依然として続いております。

今年はゆるやかな伸び予測 - 保険監督庁 

そ れでは今年の展望。今のところ大きな保険政策面の変化はないと見ております。懸案だったIRB(ブラジル再保険株式会社)、ここの民営化は労働者党政権が 発足したことに伴い遠ざかった感が強いものの、再保険自由化は世界の潮流であり何らかの手を打つのではないかと思われます。また、国内再保険引き受けプー ルを創設し再保険の海外流出を防ぎ、料率高騰を緩和することも検討されております。
収入保険料については、SUSEP(保険監督庁)は全種目合計で11%程度の穏やかな伸びと予測しております。損害率につきましては、依然として治安悪化傾向に歯止めがかからず、最大種目の自動車保険の損害率悪化が懸念されております。

以上、金融部会より発表を終わらせていただきます。(詳細は末尾の部会資料)