2003年上期業種別部会長懇談会-金融部会(資料)

「ブラジル経済、並びに各業界の2002年度下期回顧と2003年度上期展望」

I. 銀行業界

1.2002年度下期の回顧

2002年度下期のブラジル経済は大統領選挙による様々な思惑が市場を駆け巡り、ブラジル通貨レアル・カントリーリスクの乱高下、インフレ再発の懸念な ど、動きの大きい期であった。大統領選に焦点を当てると、市場関係者からは市場安定には与党ブラジル民主社会党(PSDB)でカルドーゾ前大統領の後継者 であるセーハ候補の勝利が必要と見られていた。然しながら、左派労働者党(PT)のルーラ候補の優位が確かなものになるに従って、カントリーリスクの上 昇、レアルの下落に拍車がかかった。選挙は10月6日の投票では決まらず、10月27日の決選投票にまでもつれ込んだ。その間、ルーラ候補の有利は変わら ず、10月10日にはレアル対ドルで4.0レアルを付けた。

しかし、その後、労働者党 (PT)の経済を担当するパロッシ氏が資本政策や債務モラトリアムは行わないこと、債務のGDPに対する比率を安定させるために必要なだけプライマリー収 支黒字を保つこと、金融市場を安定化させるために必要なあらゆる努力を行うことを強調した。 一連の金融市場沈静化へ向けた発言を好感して、通貨は小幅な がら回復した。10月27日の決選投票では大方の予想通り、ルーラ候補(投票率 61.3%)が与党のセーハ候補(同38.7%)を大きく引き離して当選を果し、ブラジル史上初の労働党政権が誕生した。

ルーラ氏の勝利後も労働者党(PT)は堅実な経済政策を継続すると繰り返し発言したこともあり、市場は沈静化の方向に向かった。然しながら、ルーラ氏優位 の選挙戦により、金融市場不安を反映してドルに対して通貨レアルが大幅に切り下がり、その結果ガソリン・電気・ガス等の値上げが実施され、インフレ懸念が 再発した。 中銀はインフレ対策として高金利政策をとり、SELIC政策金利を段階的に25%まで引き上げた。然しながら、2002年上期のインフレ率は 2.94%(IBGE)であるのに対し、下半期は9.32%(IBGE)となった。政治的には労働者党(PT)と与党ブラジル民主運動党(PMDB)との 連立交渉が最後まで縺れたが、新政権の歓迎ムードの中で下期は幕を閉じた。

2.2003年度上期の展望

2003年上期はルーラ政権の議会運営に大きく左右されるだろう。約20万人の人出となった、大統領就任式に見られるように、共和国第39代大統領の船出 は歓迎ムードで始まった。主要大臣は労働者党員(PT)となり、加えて国策会社であるペトロブラス、連邦貯蓄金庫といった企業の総裁も労働者党員となり、 労働者党色の極めて強い布陣となった。然しながら、与党となった労働者党(PT)は、ブラジル民主運動党(PMDB)との連立政権を断念した結果、両議会 で過半数議席を持たないため、ルーラ政権は今後厳しい議会運営を強いられることになる。

ルーラ大統領は100日の準備期間を要求しており、この期間は国民・政界・経済界も政府を見守るだろう。しかし、 2月末から始まる国会で、公務員の社会保障制度改革、税制改革をいかに迅速に実行して行くかが今後の課題となるだろう。議会運営の他に今後問題になるの は、インフレ動向であろう。ブラジル国家地理統計院(IBGE)は2002年のインフレ率が政府当初目標の2倍以上となる12.53%(IPCA)とな り、過去7年間で最高となったと発表している。大方の予想は、上期は借入金利は高く、物価の上昇、国民の実質所得は低下、失業率は高いまま推移すると見て いる。外部的にはべネズエラのゼネストの長期化に伴う影響とイラク情勢等不安材料が上げられる。国連貿易開発会議(UNCTAD)と国連経済局の共同調査 によると、ラテンアメリカ地域の今年の経済は、アルゼンチンの緩やかな経済安定とメキシコ経済の回復が継続されれば2.25%の成長が見込めると予想して いる。

3.2002年下期の銀行業界のトピックス

(1)決済リスクの軽減と資金の移動を円滑に行うことを目的に4月22日からSPB(ブラジル決済システム)が導入されたが、その中の新しい決済システム TED 方式(リザーブ勘定振替)については、不測の混乱を回避するため適用最低金額を当初5百万レアルに設定しながら段階的にこれを引き下げ、最終的には7月 29日に現状の5千レアル以上とした。TED方式と従来方式(小切手交換システム経由で行われる資金移動)の主要な違いは、資金化する期間である。従来方 式では受取人は送金実施日の翌営業日に銀行の入金通知を受取ることになるが、一方でTED方式は送金日当日に決済が行われ、送金手続を行った当日に受取人 の口座に資金が振り込まれる。

(2) 2002年下期の債券市場は大統領選の行方に対する不安感から、相場の急落する局面があった。加えて、5月31日に中央銀行が導入した投資信託に対する時 価会計制度の影響で、多くの投資家は資金を投資信託からポウパンサ預金や銀行保険預金(CDB)に逃避させる結果となった。投資信託からの資金の逃避は7 月が最も大きく、232億レアルに達し、8月にも182億レアルが逃避した。年間を通しては、凡そ700億レアルが投資信託から逃避したことになる。

2003年度上期の相場見通し
(1) 為替相場

2002年下期の為替相場は、下期スタートとなる7月1日の2,8台から、ブラジルリスクの上昇と共に、7月下旬に3台に乗せた後も上昇を続け、大統領一次投票直後の10月10日には史上最高値の4,0を示現した。
しかし、ルーラ氏の勝利決定後は、徐々に沈静化し、2003年に入ってからは、概ね3,2-3,4のレンジで推移している。
2003年上期の相場展開については、以下の4つの要因から一旦3レアル近くまでレアルが上昇した後、最終的に6月には3,2-3,5のレンジ内に落ち着く展開を予想する。

①当局はインフレを抑えるために、ある程度レアル安を解消する政策を採るものと思われる。
②しかしルーラ政権は、国内外に依然問題を抱えており、一方的なレアル高は難しい。
③また、3レアルを割るような、レアル高は、輸出に影響を与えることから、当局としてもそこまでの誘導はしないであろう
④一方、上期は農作物の輸出により、恒常的に輸出超となりやすく、当局も特にレアル安誘導する必要はない。

(2) SELIC政策金利

中銀は昨年7月に4ヵ月ぶりに0,5%の利下げを行い、SELIC政策金利は18,00%となった。しかし、為替上昇に伴うインフレ上昇により、10月に緊急利上げを行い21,00%に引き上げた。その後も11月、12月に連続して利上げを行い25,00%とした。
ルーラ政権は大統領選挙の公約において、利下げによる経済成長を謳ったが、メイレレス新中銀総裁はインフレ抑制政策の継続を表明しており、当面現状の金利水準を維持することにより、インフレ抑制に軸足をおいた政策が行なわれるものと思われる。
ただ、新政権のパフォーマンスのためにも、インフレが低下局面に入れば、利下げを行なうものと思われ、6月までに2~3度の利下げが行なわれるものと予想する。

2003年6月末予想レンジ】 1月29日時点の各行予測

  A行 B行 C行 D行
為替(レアル=1ドル) 3.20-3.50 3.35-3.45 3.40-3.60 3.30
SELIC政策金利 21.5-24.0 22.5-23.5 24.0-26.0 24.0

 

 

II. 保険業界

1.ブラジル保険業界の2002年度の回顧

SUSEP(保険監督庁)が発表した2002年10月末現在の公式データに基づき2002年度のブラジル保険業界の動向(除健康保険)をお伝えする。

(1) 収入保険料

2002年度(1月-10月)の全種目収入保険料は196億レアル(約6,700億円)を計上し、対前年同期で約 30%の増加となった。種目別にみると自動車保険が3%増、海上・運送保険が8%増、火災保険が43%増(再保険料率高騰による)、生命保険が54%増と いう結果だった。
自動車保険の伸び悩みは自動車新車販売台数の5%落ち込みが最大の原因といえる。
近年、主要州の集中化が進んでおり、サンパウロ州は全国の55%を占め、次にリオ州13%、ミナス州6%、パラナ州5%が続き主要4州で79%を占めている。
2002年度は外資の新規参入は目立った動きはなかったものの、収入保険料に外資系保険会社が占める割合は33%を超えた。

(2) 事業収益

保険会社の事業収益を決定する最も重要な指標である損害率は61%と昨年同期より5%と改善したものの、主要種目である自動車保険の損害率は69%から71%へ2%悪化しており、自動車盗難件数が依然高い水準が続いていることによる。
資産運用益が予想以上に好調だった。

(3) 保険引き受け動向

1)治安の悪化

ブラジルの治安は依然として悪化傾向に歯止めがかからず、自動車保険及び国内運送保険、運送業者賠償責任保険で損害率が悪影響を受けている。
特に国内運送保険と運送業者賠償責任ではトラック輸送中のみならず、ターミナル停車・保管中の強盗が後を絶たない状況にある。各運送会社は事故防止のため サテライト、エスコート、運転手教育等々の防災努力中で効果が出るのを期待したい。過去2年で約200社の運送会社が盗難に伴う運送料金引き上げを吸収で きず、倒産に追い込まれているとの報道もある。

2)再保険条件の高騰

2001年9月の米国多発テロ以降、海外の再保険市場が極端にハード化し、その後も各地で発生している数々の天災事故により、再保険市場の料率アップの傾 向が続いている。このため、IRB(ブラジル再保険株式会社)の再保険料の高騰や引き受け条件の縮小が見られ、元受条件に大きく影響している。

2.2003年度の展望

(1)収入保険料
SUSEPの予測では、全種目合計で11%程度と緩やかな伸びと見ている。種目別には自動車保険が2002年度並の2~3%、生命保険は2002年度実績とほぼ同レベルと見ている。
FENASEG(保険会社協会)は、数年後には現在の自動車保険が生命保険に最大種目の座を取って代わられると見ている。

(2)収益性
最大種目の自動車保険の損害率の動向が大きく左右する。また、資産運用の鍵である基準金利の動向が気になる。

(3)ルーラ大統領指導下の保険業界影響と2003年度のトピック

いまのところ、大きな保険政策面の変化はないと見ている。懸案だったIRBの民営化は、労働党政権が発足した事に伴い遠ざかった感が強い。しかし、再保険の自由化では世界の流れから判断し、何らかの手を打つのではないかと思われる。
巨額物件は現在ほとんどが海外に再保険手配されており、それだけに海外再保険料率の高騰に大きく影響されている。そのため、国内再保険引き受けプールを創設し海外への再保険流出を防ぎ料率を緩和することも検討されている。
治安改善に向けたルーラ政権の具体策はまだ見えて来ないので、治安改善は当分見込めない。

以上

2003年上期業種別部会長懇談会-自動車部会(資料)

自動車

2002年度、自動車の生産/販売実績は以下のような結果となりました。

生産台数は年初の業界予測190万台に対して177.5万台と大幅に落ち込み、国内販売台数も年初の150万台予測に対し138.3万台と落ち込んだ。
前年に引き続いた為替の大幅切下げ、インフレ圧力、高金利、株安などブラジル経済のマイナス要因が重なって、販売が落ち込み減産対応、余剰人員の削減、雇用不安が広がった。

昨年の8月にそれまで懸案になっていたIPI(工業製品税)が販売の促進、雇用維持を目的として引き下げられ、
≪1L 以上:25%⇒16%(11月1日からは15%)/1L以下:10%⇒9%≫一時的には前年を上廻ったものの、為替の切下げとインフレによるコスト UPで値上げが繰り返され、加えて金利がUPした事もあって再び失速した。余剰生産キャパシティーを抱えながらの生産ダウンで販売競争も今迄以上に激し く、収益悪化にも歯止めがかからず、99年の為替切下げ以降ほとんどのメーカーで収益改善の見通しが立っていない状況である。この数年で約$200億の投資をしたが、メーカーの大半は4~5年連続赤字の状況で遊休率も40%と言われている。

一 方、為替が切下がった事で輸出競争力が大幅にUPし、輸出戦略をどのように強化させるかが、大事になってきた。例えば、フォードはアメリカ、ヨーロッパへ の輸出モデル(Eco-Sports)を今年(2003年)3月から生産を開始する予定であり、フォルクスワーゲン、ルノー、ダイムラークライスラーも 2004年~2005年にかけて輸出を考えたワールドカーをブラジルで生産すると発表している。これは、今迄のメルコスールを中心としたブラジル生産拠点 をアメリカ、ヨーロッパを含めたグローバル展開の出来る輸出拠点として位置付け始めたと言える。

ブ ラジル政府による経常収支改善の柱とした”輸出促進”のニーズとも一致し、官民一体となった貿易協定 及びF.T.A.の締結に向けた動き(メキシコ、南 ア、EU、中国、インド等)を加速させている。昨年8月にメキシコとの間で2国間貿易協定が締結され輸出が開始された。その他にもロシア、インド、中国、エジプトと言った国々にも新たに輸出販路を広げている。

四 輪関連部品メーカーも状況は同じで為替切下げによる原材料UP、輸入部品コストUPを価格に反映出来ず、収益悪化を招いている。やはり、輸出ドライブがか かっており、輸出の販路を持ったメーカーと国内のみのメーカーとでは業績に大きな差が出ており、メーカー間格差が広がった年であった。

今 年(2003年)は懸案されたルーラー政権の出足は無難な滑り出しではあるが、イラク問題、USAリセッションといった国際問題は先行きに予断を許さない 状況であり、国内四輪市場の今年の見通しは悲観的なものにならざるを得ない。予測困難な金利、為替、インフレ動向が仮に現状レベル (1US$=R$3.5,基本金利:25.5%、インフレ:10%)が続いたとしても、良くて前年並と考えられ、拡大は期待できないというのが関係者の一 般的な意見である。昨年にも増してドル高による輸入部品コストUP、原材料(鉄、アルミ、プラスティック等)のコストUP、インフレによるコストUPの圧 力が強くなり、四輪の価格は昨年以上のUPを余儀なくされる事から厳しい年になると予測される。

尚、四輪車の輸出については、今年は昨年の貿易協定の締結でメキシコへの本格的輸出の開始、加えてアルゼンチン四輪市場が回復の兆しを見せている事、中国向け等の大型商談の締結によって輸出拡大の期待が持てる。ブラジル
国内は引き続き厳しいものの、輸出は拡大が見込める事で生産台数としては前年を多少上回ると予測されている。
四輪業界は今年も引き続き為替タフネスUPの為に、部品の更なる国産化の推進と輸出拡大の為のラインナップ強化
及び海外販路の開拓が課題となる。

一 方輸出拡大の為に、官民協力して交渉を進めている2国間貿易協定やF.T.A.、F.T.A.A.締結に向けた動きが加速する年になるが、メーカー間競争 といった観点で見ると、これらの締結の動きによってはメーカー間での優劣が付き易くなっている。 特にヨーロッパ、アメリカ系メーカーにとってはプラスとなり、日系及びアジア系メーカーにとってはマイナス(※)となる事が考えられ、デリケートな問題に なってきている。
※ (日伯によるF.T.A.及び貿易協定についての交渉は今のところ始まっていない。)

 

■ 二輪車

2002年度、二輪車の生産/販売実績は以下のような結果となりました。

 

2001年

2002年

前年比%

生産台数

753,159

861,392

114.4

販売台数

692,266

792,945

114.5

輸出台数

60,190

68,447

113.7

 

二輪市場は生産/販売供に、前年比14%以上増加し、堅調に推移している。輸出についてもアルゼンチン向けは大幅ダウンしたものの、他仕向けが伸びて前年比13.7%とUPした。
二 輪車は生活の足として、特に北部(田舎)を中心に販売が伸びており、販売方法もコンソルシオが50%以上を占める事で金利UP等の影響を受けにくい事も強 みとなっている。今年は各種不安要素も多々あるものの、前年比+10%以上の販売は確保できると考えており、輸出についても為替切下げによるコスト競争力 UPで前年比+10%以上の拡大はできると見ている。
二輪業界の課題も四輪車同様、部品の国産化促進と輸出戦略強化である。

 

 

ルーラ大統領指導下のブラジル政治、経済が各部会、各業界に与える影響について

2003年2月6日

ルーラ政権は、新政権として初めて下記の7つの目標からなる『自動車産業活性化プラン』を作成し、活性化に向けた意欲を示している。

 

  1. 自動車産業の発展とモニタリングを目的とした委員会の設立。
  2. 国内需要と生産の拡大。
  3. 輸出促進
  4. 車両更新プログラム(10年~15年使用車に対する代替促進)
  5. 車両及びコンポーネント開発の国産化(国民車構想)
  6. アルコール車生産販売の促進
  7. 労働関連統一契約書の導入。

 

まだ、具体的な動きはないが、ANFAVEA(自動車工業会)と各々の項目について話合いが持たれている。

新政権の今までにない積極姿勢に対し、業界は好意的に受けとめている。

 

 

日伯間のFTA締結の必要性あるいは与える影響

2003年2月6日

経常収支改善の為の輸出促進は、政府の大方針となっており、メーカー(民間)のニーズとも合致している。現在検討されているEUとのF.T.A.、USA とのF.T.A.A.の動きは自動車業界全体にとっては輸出拡大のチャンスにもなり、部品・完成車の輸入コスト削減にも繋がる事から官民協力体制を強化し て締結に向けた動きは加速されると予測している。

課題は国内部品メーカーにとって、この動きは死活問題になることと、ヨーロッパ系、アメリカ系メーカーにとっては有利になるが、日系・アジア系メーカーにとっては不利になるといったデリケートな問題を含んでいる。
しかしながら、中長期的な全体の流れはF.T.A.、F.T.A.A.締結の方向で進んでおり、特にEUとのF.T.A.への動きは加速している様子である。

現在のところ、日伯のF.T.A.に関する動きはなく、日本の孤立化が心配される。

まずは、日伯が交渉のテーブルに着く事が求められ、官民の協力体制が不可欠になってきている。

2003年上期業種別部会長懇談会-自動車部会


近藤部会長

司 会 ありがとうございました。それでは第一部の最後の発表となりますけれど、自動車部会の近藤部会長、よろしくお願いします。

1. 国内ダウン、輸出アップの昨年

近 藤 自 動車業界も大体ほかの業界とよく似ておりまして、国内がダウン、輸出が拡大という構造になっております。去年の実績を報告しますと、生産台数ベースでは前 年比98%、国内の販売ベースでは、輸入車も入れますと、前年比93%、輸出が105%ということで、国内ダウン、輸出アップという状況になっておりま す。

さかんに言われていますように、去年は為替、金利等々ありまして、なかなか販売が伸び ないということで、ご記憶にあるかどうか分かりませんが、去年の9月に自動車のIPI(工業製品税)が下がりました。それで1リッターが10%から9%、 それから1リッターから2 リッターの中級排気量で25%から15%に大幅に下がった。そういうこともあって、一時的にはちょっと回復しましたが、この値上げ圧力が強くて度重なる値 上げがあったものですから、結果としてはこれも1、2ヵ月で失速したという事で、当然のことながら、収益の方も非常に悪化して、99年の一回目為替切り下 げ以降、ほとんどのメーカーがまだ収益改善の見通しが立っていない状況であります。

キャパオーバーで遊休率40%

ちなみにこの4、5年で約200億ドルの投資をしております。しかしながら、メーカーの大半は4年から5年、ずっと赤字です。それでこのキャパシティーの方もキャパオーバーだと、遊休率が約40%というような状況であります。

輸出の方は為替が切り下がったことでかなり競争力がつき、さかんに他の業界でも言われていますけれど、輸出ドライブがかかった。貿易部会の柳田さんからも 報告ありましたけども、とくに今まではラテンアメリカ中心に輸出されていたけども、ロシア、それから中国、インド、エジプト、そういった国々にも輸出販路 が広がりつつある。為替が切り下がって輸出競争力がついたわけですけども、基本的に昨年あたりから、特にここに「強いインフラ」を持っておられるメーカー さんはどうも戦略を変えて来られている。どういうことかと言うと、世界的に見ると、ここ(ブラジル)は結構、輸出競争力があるんですね。

全体的に言うと、ここのビッグ4、これにベンツなんかを加えたメーカーは、今まではラテンアメリカ中心の輸出を考えていたが、これをもっとグローバルに展 開できるような輸出拠点としての役割をどうもブラジルに求めつつあり、そういう投資をしつつあると。その一つの表れとして、フォードが今年の3月、もうす ぐですけれども、アメリカ、ヨーロッパ向けに輸出、まあ生産の半分以上を輸出すると、そういうモデルを新工場でつくると発表した。それからフォルクスワー ゲンもツピというベーシックなモデルを全世界に向けてつくるんだと。それからダイムラ・クライスラーもスマートを 2005年にここでつくり、輸出しますと言うことで、2004年から2005年にかけて輸出強化の戦略を打ち出して来ていると、去年かなり今までとは違っ た方向が見えて来ているという状況であります。

2. 原材料値上げ圧力強い年初

4輪の部品メーカーさんもまったく一緒でして、国内が冷えて、ダウンで輸出を増やした。しかしながら、輸出販路を持たれているメーカーさんはいいけれども、 輸出販路を持っていないメーカーさんは業績面で大変苦戦されて、メーカー間格差がかなり出てきたと言うのが去年の実態であったように思います。

今 年は、イラク問題、ルーラ政府の将来だとか、いろいろあるわけですけども、まあよく分かりませんと。しかしながら、為替だとか金利、インフレがまあ、いま の状態が維持されると言うふうに見ても、恐らく昨年並みに行くのが大変難しいだろう、国内は期待できないと言うのが一般的な見方であります。

一 つ大きな要因としては外部要因。為替、金利、インフレという要因以外にやっぱり今年は、去年の為替の切り下げの積み残しが随分ありまして、とくに原材料の 鉄、アルミ、プラスチック。これは去年相当上がりましたが、まだ上げ足りないで、これからどんどんまだ上げる可能性があります。それからメーカーも為替の 切り下げ、インフレ分は上げておりませんから、これからどんどん上がって行きます。ということでまあ、アップ率で行きますと去年以上になるんじゃないか、 ということでお早めに・・・(一同爆笑)―ありがとうございます―。いや、これはねぇ、これから価格上昇圧力が強まって行きますから、これからどんどん表 面化してくると思います。

フオルクス、GMは中国市場進出

それから輸出については、引き続き輸出ドライブがかかるわけで、今年はアルゼンチンが多少回復傾向、アルゼンチンに加えて、去年メキシコとの間で、先ほど 貿易部会の方からもありました二国間協定が出来ましたことで、本格的な輸出が開始されます。ということでメキシコ、アルゼンチン、それから今日の新聞に出 ていましたGMさん。フォルクスワーゲンが中国との大型商談と言うことでかなりの量を出すけども、GMもセルタという安い商品の中国商談がまとまったと今 日報道されていました。

ということで、益々輸出ドライブはかかっていく。それに加えて政府 の方もルーラ政権に限らず、前政権からですけども、やっぱり輸出をやらにゃいかん、経済収支改善の柱としての輸出をやろうと。ということで特に自動車をで すね、ブラジルサイドのニーズと政府サイドのニーズが非常にうまく合致してまして、官民一体でですね、この輸出拡大のための二国間協定、それからFTA、 FTAA、この辺を積極的にかなりの勢いで進めつつあります。メーカーも自工会、アンフアーベア(Anfavea)と言いますが、Anfaveaベースで も特にヨーロッパあたりとはかなり進んで来ております。

全体的にはそういう流れで、この流 れは業界全体としてはいいけども、メーカー間競争となりますと、これは優劣がついてくる。ということで、今の動きを見るとFTA、まぁ、メキシコとは決ま りましたね。それからFTAAの動きはもっと加速していくでしょう。農業問題なんか難しい面、問題ありそうですけども、トレンドとしてはそういうふうに行 く。そういうふうになった時に、特にヨーロッパ及びアメリカ・メーカーにはプラス。日系、アジア系は相当マイナスになると言うことになりまして、その全体 のトレンドはいいんですけども、メーカー間競争という軸でみると大変デリケートな問題になって来ていると言うのがいまの状況であります。

そういう動きでありまして、全体的に言いますと、収益が非常に苦しい、輸出ドライブはかかる。国内競争力をあげる、輸出競争力をあげるためにやっぱりさら に国産化ですね、国産化。国産化、国産化とずいぶん言われているけども今年あたりはさらに加速されるでしょう。それから、もう一つ顕著な動きが出てくるの は輸出をにらんだニューモデルの投入。今年あたりから2004年、5年にかけてかなり顕著に出て来るのではないかと見ております。

4輪、2輪共に国産化率高める必要あり

FTA がらみについては、この後ほどまた議論があるようで、そのときに議論するとしまして、2輪もありますのでその方を言いますと、2輪は4輪と違いまして輸出 も国内も伸びております。最大の理由は商品が、田舎の”生活の足”として定着してきている関係で、生活必需品になっていて、田舎を中心にどんどん伸びてい ること、お客様が低所得者層であることです。

したがってファイナンスだとか がもちろん出来ないお客さんがメインなんです。その販売手法の大半、まぁ50%以上がコンソルシオという、コンソーシアムですけど、それがベースになって いますから、わりとお客さんがマクロ経済の動向に影響されにくいと言う特性がありまして、去年14、5%伸びたわけで今年もそれくらいは伸びるであろう と、輸出と共にですね。ということで、かなりポジティブな読みをしています。しかしながら、2輪業界も4輪業界と同様に為替の影響をかなり受けていますか ら、やはり何んとかして国産化しなければいかん。むしろ100%に向けてやりたいと言うことでいま進めている状況です。簡単ですけど以上でございま す。(詳細は末尾の部会資料)

2003年上期業種別部会長懇談会-機械金属部会

 


杉村部会長

機械金属部会

昨年はPTショックに振り回され、今年はPT政権に期待

司 会  ありがとうございました、続きまして機械金属部界の杉村部会長お願いします。

杉 村  機械金属部界から報告いたします。まとめといたしまして、「2002年の下期はPTショックの影響に振り回され、逆に2003年はそのPT政権の手腕に期 待する」と。これが単純明快な部会メンバーからの報告の共通点でありまして、従いまして2002年下期は為替ヘッジ、在庫、コストダウンあるいは値上げ、 資金繰りなど従来以上にリスク・マネージメントが重要な年だったと言うことです。
2003年の上期見通しですが、今のところルーラ内閣が順調な滑り出しを見せていることから、ブラジル経済はより安定するというのが部会の期待と見方ですけれども、一方で不安定要素もたくさんあり、引き続き慎重な経営を継続して行くということです。
それでは個別に業界ごとの報告をさせていただきます。

プラント - 紙パ、石化、アルミ向け好調、輸入税引き上げが心配

まずプラント業界ですけれども2002年の下期、投資を含めた好調な業種としては紙パルプ、石油化学、アルミなどがありました。紙パルプやアルミは輸出が引き続き好調で、増産傾向にあったこと、石油化学はペトロブラスからの投資案件が大変好調であったということです。
一方、停滞気味であったのは電力プラント、港湾荷役設備、製鉄プラントなどです。それでも電力プラントはご存じの通り、国内産業がもう少し活発になって消 費が拡大すれば当然、案件が復活するだろう。それから港湾設備並びに鉄鋼関係は輸出が拡大しておりますから、ルーラ政権の信頼性が確認できれば、2003 年再び活発になって来るという見通しを持っています。
ただ日系メーカーのルーラ政権に対する若干の心配点は、国内の失業対策をとったときに国内メーカー優先ということで、国産化率アップや輸入機器の輸入税引き上げなどが打ち出されるのではないかと言うことです。

鉄鋼 - 輸出増で生産伸びる

次 に鉄鋼業界です。2002年のブラジルの鉄鋼生産は約3000万トンで、2001年に対して11%の増加でした。一方、輸出は24%伸びて、結局、輸出が 生産増加の最大の理由でした。現時点での2003年の鉄鋼の生産予測は約5%増の3100万トン。他方、輸出は11%増を見込んでいますので、2003年 も生産増は輸出に引っ張られるという見通しです。現在、ブラジルの鉄鋼は為替メリットやセーフガードなどの制限が少ないことから、強力な輸出ドライブがか かっています。メーカーによっては国内市場よりも輸出を重視しているという傾向にあります。
もう一つ鉄鋼関係のポイントは、国際的に鉄鋼市場は 中国が牽引する形で需要が伸びているが、競争力のない欧米で鉄源設備を休止する傾向が出ています。それを補う目的で、ブラジルの鉄鋼産業は注目を浴びてい るが、欧米企業進出や企業統合、再編など2003年以降ブラジルの鉄鋼業界は大きく揺れ動く可能性があるということです。

建設機械 - 先進諸国並みにパワーショベルにシフト

次 に建設機械。通年ですね、大統領選挙の年は上期に対して下期は20%以上販売が落ち込む。昨年は落ち込みが、10%強に留まりました。特にパワーシヨベル に関しては逆に3%の販売増加を記録しました。これはブラジルの市場が先進国並みにブルドーザーやホイールドーザーなどからパワーシヨベルにシフトしてい ると言うことだと思います。
輸出につき中近東から南ア向けで検討しましたが、米国の回復の遅れ、それから欧州最大のドイツ市場の冷え込みなどが あって結果は15%減でした。2003年の予測は、ルーラ政権の建設需要に関する方針が必ずしも明確でなく、また、道路工事入札の一時停止命令などもあり まして前年比で15%減の予想をしています。

電動工具 - コストの売価転嫁できず、今年も期待うす

次に電動工具です。2002年は下期大幅なドル高になり、なかなかそれを、コストを売価に転嫁できず採算が悪化しました。同時に個人消費向けは売価が上 がったことから販売量が落ち込むという格好になりました。2003年につきましてもまだ、ルーラ政権についての不安定要素が多いことから大きな伸びは期待 できないと言うことであります。

汎用エンジン - 中国製急増の脅威

汎用エンジン、主力の汎用ディーゼルは大統領選挙の特需を期待したが2002年は前年比5%減。ところがその中で中国製のものは43%増と極めて大きく台頭してきて、大変な脅威になっております。2003年上期も需要の拡大要素は小さいと見ています。

ポンプ - 輸出にらみブラジル生産拡大を検討

ポ ンプですが、昨年の下期、一時的にPTショックを懸念した時期がありましたが、選挙後から需要が一気に拡大いたしました。理由としては農業、牧畜業が拡大 し続けたことや干ばつによる潅漑、水道需要が伸びたのに加え、年末の期末予算消化と見られる水道ポンプの入札が例年以上に大きかった事が挙げられます。さ らにレアル安による輸出競争力アップで輸出も大きく伸びました。2003年上期もほぼ同様の傾向が続くと思われ、輸出をにらんだブラジルでの生産の拡大を 検討していると言うことです。

工業用ネジ - 今年は回復期待

工 業用のネジ。ここは主要な需要業界である自動車、自動車部品、あるいは電子電気業界が低迷しまして、下期は上期に比べ数量ベースで約10%の減となりまし た。2003年はとりあえずPT政権が内外からの信任を得つつあるので、経済は安定するという見方で10%の回復を見込んでいます。

精密測定機器 - 市場趨勢から今年は全体で5%の伸び期待

精密測定機器は、急激なドル高から販売減を覚悟していたのですが、ここ数年のブラジル国内での精密機器需要の高まり傾向が継続して、2002年下期も販売 増となりました。2003年上期も同様に、その傾向は変わらないと言うことですが、輸出が特にアメリカ向けを中心にして回復が期待できないと言うことで、 全体では約5%程度の増加という見通しです。

超硬工具 - 一応好調

超硬工具は、自動車業界向けは伸び悩みがありましたが、鉄鋼製品向けの超硬ロール、鉱山向け工具などが好調で、全体では昨年上期に比べ下期はドルベースで14%の販売増。2003年も一応好調と。

切削工具 - 米同時多発テロ以前の状況へ

切削工具。大統領選前の一時的な混乱はあったが、10月以降は比較的順調に推移しました。自動車向けも予想したよりは好調であった。ほぼ2001年の同時多発テロ以前の状況に戻りつつあるという報告がありました。

金属加工油 - 昨年は横ばい

金属加工油、これは油ですが機械産業全般的に納入していますので、機械金属業界の流れを多少代表している業種だと思いますけど、ここの統計で行きますと、昨年度下期の潤滑油の需要は一昨年同期に比べて全く横ばいであったと言うことです。

軸受け - 今年も引き続き好調予想

最 後に軸受けですが、昨年下期は二輪やそれからブラジルのモーターメーカーの輸出拡大など、需要の拡大で、上期に対して約20%の拡大がありました。輸入品 の軸受けが主体です。補修需要に関しては、昨年はほぼ一年間を通して在庫調整という形です。2003年に関しては、自動車が若干不安はありますが、引き続 き好調。さらに補修部品に関しても在庫調整が終了で、拡大するだろうとの見方をしています。以上です。  (詳細は末尾の部会資料)

 

2003年上期業種別部会長懇談会-機械金属部会(資料)

ま と め

2002年の下期は正にPTショックの影響に振り回され、2003年の上期はそのPT政府の手腕に期待するというのが部会メンバーからの報告で共通した点であった。

2001年の電力不足問題、アルゼンチン危機、米国同時テロの影響などブラジル経済の足を引っ張った諸問題が解決方向に進み、2002年の景気は確実に回復すると期待されていた。更に選挙特需というプラス効果もある事から2002年の下期は絶好調であるはずであった。
しかしながら、大統領選においてルーラ候補の優勢が明らかになるにつれ事態は急変した。レアルは予想以上に暴落し、金利は一旦下げたものの再び上昇していった。景気バロメーターの一つである自動車の生産も2001年を下回る結果となった。

2002年下期は為替ヘッジ、在庫、コスト、値上げ、資金繰りなど従来以上にリスクマネージメントが重要であった。

2003年はルーラ内閣が順調な滑り出しを見せている事からブラジル経済はより安定するものとの期待が部会メンバーには大きくあるが、一方で不安定要素も沢山あり引き続き慎重な経営を継続していく事になると思われる。
特に2003年上期中に金利が下がるかが大きなポイントとなる。現状の金利では自動車の販売は多くを期待できず、現実に自動車業界が2月以降の生産見通しを下方修正した事などからも2003年の上期は引き続き難しい経営環境が予想される。

以下業種、業界別の報告です。

 

プラント業界

2002年下期は業種別に見ると上期に続き好調であった業種と案件はあるが凍結されたままで進展しなかった業種があった。
好調な業種としては紙パルプ、石油化学、アルミなどがある。紙パルプやアルミは輸出が引き続き好調で増産傾向にあり、石油化学はペトロブラスを中心に好調であった。
一方、停滞気味であったのは電力、港湾荷役設備、製鉄などであるがブラジルの政治経済の先行き不透明が案件の進捗にブレーキをかけた結果であった。
電力プラント案件はルーラ政権が安定し国内産業が発展を再開すれば、再び急速に進展する可能性があるが現状は案件の凍結、中断などが継続している。又、港湾設備の投資は輸出の拡大が見えている事からルーラ政権への信頼性さえ確認できれば再び活発化するものと期待している。
鉄鋼の設備関係は大型案件が一巡したところで一服感があるが、輸出が好調のため今後設備投資の案件が活発になる事が予想される。
日系プラントメーカーとしてはルーラ政権の失業対策で国産化率upや輸入機器の輸入税増加などが打ち出される事を懸念している。

鉄鋼業界

2002年のブラジル鉄鋼生産は約3千万トンで2001年に対し11%の増となった。
一方輸出は24%と伸び、輸出が生産増加の最大の理由であった。
現 時点での2003年の鉄鋼生産予測は5%増の31百万トンで増加の大半は輸出(+11%)によるものである。為替メリットやセーフガードなどの制限が少な いことからブラジル産鉄鋼製品は強力な輸出ドライブがかかっている。メーカーによっては国内市場軽視の傾向があり需給はタイトになっている。
国際的な鉄鋼市場は中国が牽引する形で需要が伸びているが、一方で競争力のない欧米では鉄源設備を休止する傾向が出ている.それを補う目的でブラジルの鉄鋼産業は注目をあびており欧米企業の進出や企業の統合、再編など今後大きく揺れ動く可能性がある。

建設機械

大 統領選挙の年は通常上期に対し下期は20%以上の販売の落ち込みがあるが今年は10%強の落ち込みにとどまった。パワーショベルに関しては3%の販売増加 を記録した。ブラジル市場が先進諸国なみにブルドーザーやホイールドーザーなどからパワーショベルにシフトしている傾向がはっきりしてきた。
輸出は南アや中近東向けが健闘したが米国の回復遅れや欧州最大のドイツ市場の冷え込みなどがあり上期横ばいを予想していたが結果は15%減であった。
2003年についてはルーラ政権の建設需要に関する方針が必ずしも明確でなく、又道路工事の入札の一時停止命令などもあり対前年比では15%減を予想している。今後ルーラ政権の動きを慎重に見極める必要がある。
輸出は米国のイラク攻撃が始めれば当然中近東向けだけでなく世界的にも景気が停滞することのなるため2003年の上期に関しては益々悲観的である。

電動工具

2002年下期はドル高で大幅なコストupとなった。コストを売価に転嫁したが競争の関係でフルには転嫁出来ず、利益率のダウンとなった。又売価が上がったことから業界全体では個人向けの販売量も落ち込む結果となった。
上期に好調であったプロフェッショナル向けやインダストリアル向けも下期は伸び悩んだ。
2003年上期については、ルーラ政権はまだ不安定要素が多い事、金利の急激な下落も期待できないことなどから需要は低迷すると見ている。為替ヘッジや在庫の削減などを徹底していく必要があると考えている。

汎用エンジン

主力の汎用デイ―ゼルは大統領選挙の特需を期待したが2002年は前年比5%の減であった。その中で中国製のもが43%増と台頭してきており脅威となっている。
ヨット用やパワーボート用デイ―ゼルは需要は小さいながらも横ばいであった。
2003年の上期も需要の拡大要素は小さく、一方で中国製の進出が激しくなって来ており環境は残念ながら好転しないと見ている。アプリケーションの追加や他社との補完関係の構築などの努力を一層推し進める必要に迫られている。

ポンプ

2002 年の下期は一時PTショックの影響を懸念したが選挙後から需要は一気に拡大した。理由としては農牧畜業が拡大しつづけたことや旱魃による灌漑、水道需要の 伸びに加え、期末予算消化と見られる水道ポンプの入札が例年以上に大きかった事があげられる。又レアル安による輸出競争力upで輸出が伸び売上増に貢献し た。
2003年上期はルーラ政権が上下水道の整備に力を入れる可能性が大きい事や農業分野の成長が継続する事、恒常的旱魃の傾向などプラス要素が大きく前年比で15%程度の需要の伸びを期待している。
輸出についてもこの為替が続けば更に拡大することが出来ると考えている。
輸入品代替や輸出力upの為国産品の生産を拡大していく計画である。

工業用ネジ

2002年の下期は主要需要業界である自動車、自動車部品、電子電気業界が低迷し上期に比べ数量ベースで約10%の減となった。
2003年の上期はPT政権の経済政策が取り敢えず内外から認められていることからブラジル産業、経済が安定すると期待している。上期の販売は前年同期比横ばい、下期に対しては10%の回復を見込んでいる。
為替や現地材料費のupをカバーできるだけの外売り値上げが出来ない状況にあり採算は2003年も厳しいと見ている.

精密測定機器

急激なドル高で販売減を覚悟していたが精密測定器の需要の拡大傾向は継続し、2002年下期も販売増となった。国産品はコストが上がったものの他社の輸入品より価格競争力が増したこともありPTショックや為替の悪影響は最小限にとどめる事ができた。
しかしながら輸出は米国向けが昨年比40%減、ベネズエラ向けのstopなどがあり98年以来初めてマイナスとなった。輸出関係ではアルゼンチン向けの回復が唯一のプラス要素であった。
2003年の上期も精密測定機器の国内需要の増加傾向は変わらないと見ているが米国向け輸出の回復は期待できず全体で5%程度の伸びにとどまると予想している。

超硬工具

ドル高や自動車業界の伸び悩みなどネガテイブ要因はあったが鉄鋼製品向け超硬ロール、鉱山向け工具などが好調で全体では2002年下期は上期に比べドルベースで14%の販売増となった。
2003年の上期は自動車向けが引き続き期待できないが超硬ロールや鉱山、建設関係向け工具には期待している。

切削工具

大統領選挙前の一時的混乱はあったが大勢が決まった10月以降は比較的順調に推移した。自動車向けも予想したよりは好調であった。2001年の同時多発テロ前の状況に戻りつつあると言う感じである。結果として2001年が悪かっただけに昨年は明らかに需要が拡大した。
為替の関係からブラジルでの生産を拡大して輸出に向ける対策を取っている。
2003年はルーラ政権が予想以上に安定する気配であり景気は徐々に拡大していくと見ている。

金属加工油

2002 年下期の潤滑油の需要は前年同期比で増減は無かったと考えられる。問題は潤滑油材のコストに関係する石油価格が上昇しコストupとなったものの価格転嫁が 十分出来なかった事です。コストダウンではカバー出来ないレベルの材料費upは2003年になっても続きますので経営が益々圧迫される心配がある。
2003年上期に市場が成長する可能性は少ないというのが業界全体での見方となっている。

軸受

2002年下期は大統領選挙の影響で為替や金利が大きく変動し客先への影響が心配されたが結果は比較的安定したものであった。
昨年下期の自動車の生産は対前年同期比9%増、対前期4%増と軸受工業会の予想よりは堅調であった。二輪車は前年同期比25%増を記録し相変わらず絶好調であった。
ブラジルのモーターメーカーも輸出の拡大に成功し軸受需要拡大につながった。
家電など低迷している業種もあるが日系メーカーが現地生産している標準玉軸受の需要は20%程度増加しフル操業に近い状況であった。
しかしながらドル高による輸入部品のコスト高や強引な値上げの続く鋼材などによるコストupにたいする売価への転嫁が難しく採算は悪化した。

輸入軸受が主体の補修市場(代理店)は昨年上期からの在庫調整とドル高での買い控えが下期も続いた。但し11月頃からは回復傾向が出始め2003年には補修需要は本格的に回復すると期待している。
現地生産品の2003年の見通しは引き続き好調との見方であるが、自動車の2月以降の生産調整の動きに見られるように不安要素は残っている。
ルーラ政権が安定し、その結果為替の安定、金利下落という流れになるまでは安心出来ないと考えている。

 



日伯間FTAに関するアンケ-ト結果

下記項目で〔良し〕とするものはどれですか?(複数回答可) ブラジルで生産している企業
9社回答
していない企業
2社回答
出来るだけ早期にFTA締結交渉にはいる。 4点 2点
ALCAの進捗状況を見て判断する。 2点  
EUとのFTA進捗を見て判断する。 2点  
韓国、インドなどアジア諸国との進捗を見て判断する。    
当面ブラジルとのFTA締結を望まない。    
日伯FTAは当社には影響が無い。 2点  

2003年上期業種別部会長懇談会-化学部会


新井部会長

 

司 会  ありがとうございました。時間の関係上、どんどん行きます。化学部会の新井部会長さん。

新 井   山田さんと柳田さんのほうからマクロの方のお話があり、これから具体的な、と言うことで化学品業界ですが、下期については、大統領選挙のクリスマス商戦へ の影響、並びに輸入原料を主体としているために、ドル高の昂進によってはかなり苦戦を強いられると予想した会社が多かったわけですが、結果として厳しい決 算を強いられた会社が殆どとなりました。

樹脂加工 - 自動車メーカー、化粧品包材向け好調

業 界別に行きますと、樹脂加工業界は、第三・四半期の急激なレアル安で輸入資材比率が高いこともあり大幅なコスト増、販売価格に転嫁できず大幅に採算悪化。 選挙後レアル安・政情不安は落ち着いたこともあり、このドル高をベースに値上げを行ったという状態ですが、販売先業界では、輸出が増大した自動車メーカー 向け、それから化粧品中心の包装資材、日用雑貨向けが好調。その他は家電、工業部品、建築資材等が後半に入り上昇傾向だったということです。

写真フイルム - 流通チャネル・モデルに変化

それから、写真フィルム・ペーパーですが、2001年並みの総需が維持出来ればと期待した通りで、ほぼ数量面では前年並み。ただ、このドル高、インフレの 昂進などで販売は第三・第四半期とも前年同期比低迷。年末にかけて前年を上回る小売りの伸びにより通年では前年並みを確保。
ただし、価格面では 為替安にコスト増を完全には市場に転嫁できず、更に新規参入により安値傾向も重なり総じて軟化。それから、流通チャネルのモデルが変わってきて、非写真店 ですね、”非写真店チャネル”へのシフトがより明確になってきており、全体の30%を超えてきたのが2002年の傾向でした。

筆記具 - 売上げ15%増

筆記具、ボールペン等の筆記具業界は、総じて8月から11月の4カ月間に売り上げの65~70%が集中。このためにレアル安に直撃された形で輸入資材仕入 コストも大幅増、資金を圧迫。さらに国内購入資材もレアル安・インフレの昂進で仕入れ価格が上昇。国内向けは、ボールペンみたいな安いものでR$1~2と いうことで、低価格品が中心でこれらの材料費の占有率が高いこともあって、コストアップで採算が圧迫された。11月に値上げしたこともあり、売り上げは前 年比15%増ながら出荷量は3%増に留まった。

水処理剤 -値上げで利益確保なるも為替損が経常利益を圧迫

水 処理業界、水処理剤ですね、2000年から2001年にかけて15%程度の伸長を示したが、これはインフレ・為替安要因によるもので、02年実績もポテン シャルは大きな変動はないものの、数値的にはR$2億4000万ぐらいの市場規模となっている。ドル高要因については上期3%、下期8%、通期平均5%強 の値上げを実施し吸収に努めた結果、営業利益は前年比大幅増なるも外貨借入などに伴う為替損が経常利益を圧迫したということでした。

接着剤・シール材 - 自動車、スピーカー関連好調

そ れから、接着剤・シール材は、コンシュマー向け瞬間接着剤は値上げを見込んだ大手流通代理店の前倒し発注、在庫の積み増しを行った事などで、数量面では大 幅増。工業材料は、海外輸出向けを中心にした自動車エンジン・シール材、オートペッサ、スピーカー製造業界向けのシール材と接着剤需要好調。これに伴う、 塗布用の塗布ロボットなど塗布機の売り上げも大幅に伸びた。ただし、レアル安の昂進で付加価値率がかなり下がったということでした。

化粧品 - 5,300億円市場

化 粧品業界ですが、2002年の化粧品市場は、大体化粧品市場の規模が5300億円とすれば、前年比10%くらいの伸長だった。スーパー、薬局での化粧品売 り場が拡大。米国の人気メーキャップ・ブランドがイグアテミ・ショッピング・センターで1号店。それから03年に更にあと2店くらい開店予定。ただし、ド ル高による原材料コストの上昇で国産品も含め大幅値上げとなり、輸入品は更に高価なイメージが増幅され、消費者は避ける傾向が強まった。レアルベースでは 売り上げ増なるも、売上原価の高騰に値上げが追いつかず、営業採算は大きく圧迫された。

農薬・飼料添加物 - 16億ドル市場

7 番目は農薬・飼料添加剤です。農薬業界はここ3年くらい大型合併が続いたわけですけが、これの後遺症で流通に溜まった過剰在庫の一掃・整理を2002年に なって各社が目指した事。それから、エルニーニョによる異常気象、市場価格が上がらない国内消費型の作物(トマトとか野菜類)での農家の防除意欲の後退、 販売のピークである下期を襲った為替安に伴い随時値上げを繰り返したけれども、為替実勢に追いつかず採算を悪化。大豆など輸出作物の好調はあったものの、 下期の新規出荷は全体として不調であり、業界のドル売上ベースでですね、2002年通期でも3年連続前年比割れで、前年の2001年比20%ダウンの16 億ドルくらいの売上に留まっています。

家庭用防疫薬は、需要家向け販売がドル建てとなっ ているため、下期の急激なレアル安で引き取り量は大幅減。更に支払遅延が目立ってきました。この家庭用防疫薬というのは蚊取り線香の中身とかエアスプレー ですが、それと、消費者の不快害虫への投資姿勢、要するに余分な出費を避けるという傾向もあって、下期の家庭用防疫薬は不調でした。

飼料添加物は、鶏肉・鶏卵の安値推移と主飼料のトウモロコシの生産減、まあ、栽培面積も減ったわけですが、それに伴う価格高騰で、コストを下げようと言うことで飼料添加物の使用が圧迫されました。
これが飼料添加材での状況で、いまマクロでは豚肉それからニワトリなんかの輸出増だといいながらも、周辺資材供給業界では、農薬・飼料添加剤は苦調。苦しかったということです。

2003年上期展望
新政府に期待するが閣内不一致を懸念 - 原油価格、インフレの行方も

2003 年の上期の展望ですが、為替の安定、ルーラ新政権の行政手腕などに期待しつつ、昨年の積み残し分の値上げ実施で採算の改善を目指す会社が殆どながら、新政 権発足後の6カ月を過ぎた当たりからの閣内不一致も含めた政策が振れる恐れ、それによる対外的影響、それと当業界が石油関連でもあることよりイラク問題の 進行状況、などをにらみながら、慎重な営業拡大政策、投資姿勢を採る会社が殆どでした。特にインフレの進行については各社の関心が高かったです。

この中にあって、今後さらに市場が拡大を見込める化粧品業界のように米国大手の新規参入、輸入品メーカーの投資拡大、およびスペイン、ポルトガルなどへの マスプロダクトの輸出ドライブなど経済変動に左右されない業界もあると。またちょっと特殊なのですがデング熱媒介蚊の防除など特需が期待される分野もあ り、まあ特需で増えちゃいけないんですけど、特需が期待される分野もあり、2003年上期は経済とくに為替、インフレが安定する前提で業績拡大を期待する 会社が大半でした。

以上のようなことです。一応、時間内だったと思います。(詳細は末尾の部会資料)

2003年上期業種別部会長懇談会-化学部会


新井部会長

 

司 会  ありがとうございました。時間の関係上、どんどん行きます。化学部会の新井部会長さん。

新 井   山田さんと柳田さんのほうからマクロの方のお話があり、これから具体的な、と言うことで化学品業界ですが、下期については、大統領選挙のクリスマス商戦へ の影響、並びに輸入原料を主体としているために、ドル高の昂進によってはかなり苦戦を強いられると予想した会社が多かったわけですが、結果として厳しい決 算を強いられた会社が殆どとなりました。

樹脂加工 - 自動車メーカー、化粧品包材向け好調

業 界別に行きますと、樹脂加工業界は、第三・四半期の急激なレアル安で輸入資材比率が高いこともあり大幅なコスト増、販売価格に転嫁できず大幅に採算悪化。 選挙後レアル安・政情不安は落ち着いたこともあり、このドル高をベースに値上げを行ったという状態ですが、販売先業界では、輸出が増大した自動車メーカー 向け、それから化粧品中心の包装資材、日用雑貨向けが好調。その他は家電、工業部品、建築資材等が後半に入り上昇傾向だったということです。

写真フイルム - 流通チャネル・モデルに変化

それから、写真フィルム・ペーパーですが、2001年並みの総需が維持出来ればと期待した通りで、ほぼ数量面では前年並み。ただ、このドル高、インフレの 昂進などで販売は第三・第四半期とも前年同期比低迷。年末にかけて前年を上回る小売りの伸びにより通年では前年並みを確保。
ただし、価格面では 為替安にコスト増を完全には市場に転嫁できず、更に新規参入により安値傾向も重なり総じて軟化。それから、流通チャネルのモデルが変わってきて、非写真店 ですね、”非写真店チャネル”へのシフトがより明確になってきており、全体の30%を超えてきたのが2002年の傾向でした。

筆記具 - 売上げ15%増

筆記具、ボールペン等の筆記具業界は、総じて8月から11月の4カ月間に売り上げの65~70%が集中。このためにレアル安に直撃された形で輸入資材仕入 コストも大幅増、資金を圧迫。さらに国内購入資材もレアル安・インフレの昂進で仕入れ価格が上昇。国内向けは、ボールペンみたいな安いものでR$1~2と いうことで、低価格品が中心でこれらの材料費の占有率が高いこともあって、コストアップで採算が圧迫された。11月に値上げしたこともあり、売り上げは前 年比15%増ながら出荷量は3%増に留まった。

水処理剤 -値上げで利益確保なるも為替損が経常利益を圧迫

水 処理業界、水処理剤ですね、2000年から2001年にかけて15%程度の伸長を示したが、これはインフレ・為替安要因によるもので、02年実績もポテン シャルは大きな変動はないものの、数値的にはR$2億4000万ぐらいの市場規模となっている。ドル高要因については上期3%、下期8%、通期平均5%強 の値上げを実施し吸収に努めた結果、営業利益は前年比大幅増なるも外貨借入などに伴う為替損が経常利益を圧迫したということでした。

接着剤・シール材 - 自動車、スピーカー関連好調

そ れから、接着剤・シール材は、コンシュマー向け瞬間接着剤は値上げを見込んだ大手流通代理店の前倒し発注、在庫の積み増しを行った事などで、数量面では大 幅増。工業材料は、海外輸出向けを中心にした自動車エンジン・シール材、オートペッサ、スピーカー製造業界向けのシール材と接着剤需要好調。これに伴う、 塗布用の塗布ロボットなど塗布機の売り上げも大幅に伸びた。ただし、レアル安の昂進で付加価値率がかなり下がったということでした。

化粧品 - 5,300億円市場

化 粧品業界ですが、2002年の化粧品市場は、大体化粧品市場の規模が5300億円とすれば、前年比10%くらいの伸長だった。スーパー、薬局での化粧品売 り場が拡大。米国の人気メーキャップ・ブランドがイグアテミ・ショッピング・センターで1号店。それから03年に更にあと2店くらい開店予定。ただし、ド ル高による原材料コストの上昇で国産品も含め大幅値上げとなり、輸入品は更に高価なイメージが増幅され、消費者は避ける傾向が強まった。レアルベースでは 売り上げ増なるも、売上原価の高騰に値上げが追いつかず、営業採算は大きく圧迫された。

農薬・飼料添加物 - 16億ドル市場

7 番目は農薬・飼料添加剤です。農薬業界はここ3年くらい大型合併が続いたわけですけが、これの後遺症で流通に溜まった過剰在庫の一掃・整理を2002年に なって各社が目指した事。それから、エルニーニョによる異常気象、市場価格が上がらない国内消費型の作物(トマトとか野菜類)での農家の防除意欲の後退、 販売のピークである下期を襲った為替安に伴い随時値上げを繰り返したけれども、為替実勢に追いつかず採算を悪化。大豆など輸出作物の好調はあったものの、 下期の新規出荷は全体として不調であり、業界のドル売上ベースでですね、2002年通期でも3年連続前年比割れで、前年の2001年比20%ダウンの16 億ドルくらいの売上に留まっています。

家庭用防疫薬は、需要家向け販売がドル建てとなっ ているため、下期の急激なレアル安で引き取り量は大幅減。更に支払遅延が目立ってきました。この家庭用防疫薬というのは蚊取り線香の中身とかエアスプレー ですが、それと、消費者の不快害虫への投資姿勢、要するに余分な出費を避けるという傾向もあって、下期の家庭用防疫薬は不調でした。

飼料添加物は、鶏肉・鶏卵の安値推移と主飼料のトウモロコシの生産減、まあ、栽培面積も減ったわけですが、それに伴う価格高騰で、コストを下げようと言うことで飼料添加物の使用が圧迫されました。
これが飼料添加材での状況で、いまマクロでは豚肉それからニワトリなんかの輸出増だといいながらも、周辺資材供給業界では、農薬・飼料添加剤は苦調。苦しかったということです。

2003年上期展望
新政府に期待するが閣内不一致を懸念 - 原油価格、インフレの行方も

2003 年の上期の展望ですが、為替の安定、ルーラ新政権の行政手腕などに期待しつつ、昨年の積み残し分の値上げ実施で採算の改善を目指す会社が殆どながら、新政 権発足後の6カ月を過ぎた当たりからの閣内不一致も含めた政策が振れる恐れ、それによる対外的影響、それと当業界が石油関連でもあることよりイラク問題の 進行状況、などをにらみながら、慎重な営業拡大政策、投資姿勢を採る会社が殆どでした。特にインフレの進行については各社の関心が高かったです。

この中にあって、今後さらに市場が拡大を見込める化粧品業界のように米国大手の新規参入、輸入品メーカーの投資拡大、およびスペイン、ポルトガルなどへの マスプロダクトの輸出ドライブなど経済変動に左右されない業界もあると。またちょっと特殊なのですがデング熱媒介蚊の防除など特需が期待される分野もあ り、まあ特需で増えちゃいけないんですけど、特需が期待される分野もあり、2003年上期は経済とくに為替、インフレが安定する前提で業績拡大を期待する 会社が大半でした。

以上のようなことです。一応、時間内だったと思います。(詳細は末尾の部会資料)

2003年上期業種別部会長懇談会-化学部会(資料)

昨年9月の下期展望において、10月の大統領選挙のクリマス商戦への影響並びに輸入原料を主体としているためドル高の昂進によっては、かなり苦戦を強いられる、と予想した会社が多かったわけですが、結果として厳しい決算を強いられた会社が殆どとなった。

(1) 2002年下期回顧

1) 樹脂加工業界:第 三四半期の急激なレアル安により輸入資材比率が高く大幅なコスト増となったが、販売価格に転嫁できず大幅に採算悪化。選挙後レアル安・政情不安は落ち着い て来た事もあり、ドル高によるコスト増を要因に値上げを行った。販売先業界では、輸出が増加した自動車メーカー向け、化粧品中心の包装資材、日用雑貨向け が好調、その他家電、工業部品。建築資材等が後半に入り上昇傾向だった。

2) 写真フィルム・ペーパー:下 期の展望で01年並の総需が維持できれば、と期待したが、数量面では前年並みを維持した模様。第三・第四四半期のドル高・インフレの昂進などで、この間販 売は01年同時期比低迷したものの、年末に掛けて01年を上回る小売の伸びにより、通年で前年並みを確保。 ただし価格面では為替安によるコスト増を完全 には市場に転嫁できず、更に新規参入による安値傾向も重なり、総じて軟化した。また、流通チャネルでは”非写真店チャネル”へのシフトがより明確になって おり、全体の30%を超えてきたのが02年の流れだった。

3) 筆記具業界:業 界団体はないものの、総じて8月~11月の4ヵ月間に売り上げの65~70%が集中しているため、レアル安に直撃された形で、輸入資材仕入コストが大幅に 上昇し、資金を圧迫。 さらに国内購入資材もレアル安・インフレの昂進で、仕入れ価格が上昇、国内向けはR$1~2の低価格品が中心であり、これら材料費 の占有率が高く採算を圧迫。11月に値上げを実施したこともあり、売り上げは前年比15%増となったが、出荷量は3%増に留まった。

4) 水処理剤:水 処理薬品市場は00年から01年に掛けて10~15%伸長を示したが、これはインフレ・為替安要因によるもので、02年実績もポテンシャルは大きな変動な いものの、数値的にはR$240 百万へ膨れたと思われる。 ドル高要因については上期3%、下期8%、通期平均5%強の値上げを実施し吸収に努めた結果、営業利益は前年比大幅増となった が、外貨借入に対する為替損が経常利益を圧迫した。

5) 接着剤・シール剤:コ ンシュマー向け瞬間接着剤は、値上げを見込んだ大手代理店が前倒し発注、在庫の積み増しを行った事などで、数量面では22%増となった。工業材料は、海外 輸出用向けを中心にした自動車エンジンシール材、オートペッサ、スピーカー製造業界向けシール材、接着剤需要は好調だった。これに伴う塗布用の塗布ロボッ トなど塗布機の売り上げも前年比30%の伸びとなった。 但しレアル安の昂進で付加価値率がかなり下がった。

6) 化粧品業界:02 年化粧品市場(規模5300億円)は前年比10%の伸長、スーパー・薬局での化粧品売り場が拡大。 米国の人気メーキャップブランドがイグアテミSCに一 号店を開店、03年に更に2店新規開店予定。 但しドル高による原材料コストの上昇で国産品も含め大幅値上げとなり、輸入品は更に高価なイメージが増幅さ れ消費者は避ける傾向が強まった。レアルベースでは売り上げ増なるも、売上原価の高騰に値上げが追いつかず、営業採算は大きく圧迫された。

7) 農薬・飼料添加剤 :連 続した大型合併の後遺症で流通に溜まった過剰在庫の一掃・整理を各社が目指した事、エルニーニョによる異常気象、市場価格が上がらない国内消費型の作物で の農家の防除意欲の後退、販売のピークである下期を襲った為替安に伴い随時値上げを繰り返したが、為替実勢に追いつかず採算の悪化、と大豆など輸出作物の 好調はあったものの、下期の新規出荷は全体として不調であり、業界ドル売り上げは02年通期でも3年連続前年比割れとなり、01年比20%ダウンの 15.8億ドルに留まった。
家庭用防疫薬は、需要化向け販売がドル建となっているため、下期の急激なレアル安で引き取り量の減少と支払い遅延が目立った。また消費者の家計防衛姿勢もあり不快害虫への投資は渋りがちだった。
飼料添加物は、鶏肉・鶏卵の安値での推移と主飼料のトウモロコシの生産減に伴う価格高騰で、添加物使用が圧迫された。

(2)2003年上期展望:

為 替の安定、ルーラ新政権の行政手腕などに期待しつつ、昨年の積み残し分の値上げ実施で採算の改善を目指す会社が殆どながら、新政権発足後6ヵ月を過ぎた辺 りからの閣内不一致も含めた政策が振れる恐れ、それによる対外的影響、当業界が石油関連でもある事もあり対イラク問題の進行状況 などを睨みながら、慎重 な営業拡大政策、投資姿勢をとる会社が殆ど。 特にインフレの進行に就いては各社の関心が高い。この中にあって今後更に拡大が見込める化粧品業界のように 米国大手の新規参入、輸入品メーカーの投資拡大、およびスペイン、ポルトガルなどへの輸出ドライブなど経済変動に左右されない業界もある。 またデング熱 媒介蚊の防除など特需が期待される分野もあり、03年上期は経済、特に為替・インフレが安定する前提で、業績拡大を期待する会社が大半。

2003年上期業種別部会長懇談会

 

 

恒例の当所総務委員会主催「業種別部会長懇談会」は、2月6 日午後3時から3時間余にわたり10部会長、1副部会長出席の下、安田保険(株)講堂で行われた。主題は「ブラジル経済2002年下期回顧と2003年上 期展望」。副題に「ルーラ大統領指導下のブラジル政治、経済が各部会や業界に与える影響」と「日伯間のFTA締結の必要性、その与える影響」。
従来、会議所会議室で行われていたが、今回は一般公開として初の試み。聴講者は工藤名誉会頭(前会頭)、能澤企画戦略委員長、他約80名。遠藤総務委員長司会で進められた。

副題の日伯FTAについては、貿易部会の柳田部会長がFTAについて簡潔に解説。日本がメキシコで”バスに乗りおくれ”、日系企業が多大の打撃を受けてい る現実をふまえ、その”二の舞”を繰り返さないように、いまから準備を進めることが必要、との意見が出た。準備に取り掛かってからまとまるまで時間がかか るのが一番の心配。とくに今回、自動車業界から、「全米34ヵ国を含む米州自由貿易地域(FTAA)が2005年に設立され、それに合わせるように欧州連 合(EU)がメルコスールとFTAを形成すれば、ブラジルへは欧米の製品が無税輸入になるが、日本製品には輸入税がかかるため著しく不利になる。日伯 FTA交渉を急がなければ」と危機感を訴える発言があった。 -本号は、部会長報告と部会資料編に分かれています(編集部)-。

 

出席者:

会頭

総務委員会  司会

コンサルタント部会

金融部会

化学部会

機械金属部会

電気電子部会

繊維部会

食品部会

建設不動産部会

運輸サービス部会

自動車部会

総務委員会

在サンパウロ総領事館

 

田中 信(リベルコン・ビジネス)

遠藤雅清委員長(安田保険)

西川悦治部会長(個人)

山田浩司副部会長(ウニバンコ銀行)

新井章夫部会長(ブラジル北興化学)

杉村秀一郎部会長(NSK・ド・ブラジル)

瀬山雅博部会長(パナソニック・ド・ブラジル)

木口晃男部会長(ユニチカ・ド・ブラジル)

渡辺英明部会長(東山農産加工)

清水邦保部会長(ブラジル竹中工務店)

横山幹雄部会長(日本航空サンパウロ支店)

近藤広一(モトホンダ・ダ・アマゾニア)

赤嶺尚由副委員長(人材銀行ソールナッセンテ)

赤阪総領事

 

全部会長参加の場面。中央の左から赤阪総領事、赤嶺副委員長、遠藤司会(委員長)、田中会頭。

 

熱心に聞き入る聴衆。前列左から上田、花田副領事、能澤企画戦略委員長、藤下総務委員

 

司会の言葉

開会挨拶

金融部会

貿易部会

化学部会

機械金属部会

繊維部会

食品部会

電気電子部会

建設不動産部会

運輸サービス部会

自動車部会

質疑応答、コメント

ルーラ大統領指導下のブラジル政治経済

コンサルタント部会報告

日伯間FTA締結の必要性

赤阪総領事の講評

金融部会資料

貿易部会資料

化学部会資料

機械金属部会資料

繊維部会資料

食品部会資料

電気電子部会資料

建設不動産部会資料

運輸サービス部会資料

自動車部会資料

コンサルタント部会資料

2003年上期業種別部会長懇談会-司会の言葉

懇談会では、遠藤委員長司会の下、各部会代表が各々約10分間にわたって、それぞれの業界の現状・見通しについて述べた。

司会の言葉

司 会  お忙しい中、多数ご参加いただきまして誠にありがとうございます。ただいまより、「ブラジル日本商工会議所2003年上期業種別部会長懇談会」を始めさせていただきます。私は本日司会を務めさせていただく総務委員長の遠藤でございます。よろしくお願いいたします。

まず本日の議事進行について若干説明したいと思います。最初に田中商工会議所会頭ならびにご来賓の赤阪清隆総領事にご挨拶頂きます。引き続いて、第一部と して本日のメインテーマでございますブラジル経済2002年下期の回顧と2003年上期の展望について、各部会長から発表してもらいます。時間的にはお一 人10分程度を予定していますけれども、部会長の皆様のお顔を拝見すると皆さん、雄弁な方たちばかりなので7,8分を目処にしていただいて、ちょうどいい んじゃないかと思います。各部会長の発表後、メインテーマに関する自由討議を行います。

会場の皆さんもぜひご参加頂きたいと思います。大体5時ごろを目処としてコーヒーブレイク、その後第二部として二つの副題ですね。これはルーラ政権の与え る影響、それとFTA問題、これについても意見交換を行います。討議終了後に赤阪清隆総領事からご講評を頂きまして、その後田中会頭の閉会あいさつとなり ます。

それからお手元に、配布していますアンケート用紙のご記入にご協力いただいて、閉会時に回収させていただきたいと思います。
それでは田中会頭、開会あいさつからよろしくお願いいたします。