2003年上期業種別部会長懇談会-運輸サービス部会


横山部会長

 

司 会  続きまして運輸サービス部会の横山部会長、よろしくお願いします。

  1. 米同時多発テロの影響まだ消えず、米航空業界赤字95億ドル
  2. バリグ、TAMの持ち株会社設立の情報流れる
  3. 成田空港のB滑走路オープンで能力4割アップ ― 航空業界

横 山  皆様お疲れだと思いますが、もう少々我慢して下さい。

運輸サービス部会は、部会のなかでも数多くメンバーを抱えておりまして現在57社ございます。1月の21日に部会を開催して、いろいろご意見を承りまし た。通常ですと昼の真面目な時間にやっているので集まりが悪く、盛り上がりに欠けるのですが、今回は夕方部会を、その後懇親会をやりましたので久々に盛り 上がりました。(笑い)
冗談はさておき、私どもの業界は多岐にわたってはいるんですが、基本的には皆さんの報告をお聞きして、お金があるとき何 に使うかを考えた時、まあ、やっぱり食品だろうな。いろいろあるが、旅行とか、物流とか、ホテルとかっていうのは、多分、調子良くなかったんだろう、そう 思われると思いますが、その通りでございます。(笑い)

報告がありました運輸サービス部会のなかでの9つ、それぞれ内容があるんですが時間の関係もありますので雑駁ですが、要点だけご報告させていただきます。
航空、旅行エイジェント業界、海運業界、貨物業界、フォアーダー業界、通信業界、クーリエ、広告、ホテル。そういう順番でご報告いたします。

まず航空業界ですが、今までのご報告で全くなかった要素、セプテンバーイレブン、あの「同時多発テロ事件」があったわけですが、この影響がまだ一番航空業 界、旅行業界を含めて残っているところです。具体的に言いますと、セキュリティー検査に今まで想像できなかった「自爆」というような概念が出てきて、そう いうセキュリティーは従来していなかったので、それにかかるコストの増加が大きく圧迫しております。

それから、お客様が少ないので運賃を下げざるを得ない、そうなるとイールド(単価)が低下するのでお金も入って来ないと言うこともあり、結果は目に見えて いると。顕著な例がアメリカですが、アメリカは実はトラフィック、航空旅客市場の40%を占めると言われておりますが、2001年度は77億ドル赤字、 2002年度が95億ドル赤字と赤字続きです。黒字基調に戻るには2、3年は掛かるだろうと言われております。その影響が顕著に出ているのが天下のユナイ テッドエアーさん、これがチャプターイレブン申請ということになっております。

ブラジル におきましては、大統領選挙の影響ももちろんあったのですが、レアル暴落ということが最大の原因になっており、VARIGさん、TAMさんをはじめ、あま り良くないようです。先ほどのニュースによりますと、VARIGさんは苦戦をしていろいろなニュースが流れておりますが、TAMさんと組んでホールデイン グ・カンパニー、アメリカ資本が2、3社くらい入ってやるのではないかというふうな、未確認ですがそういうニュースも先ほどは流れておりました。それほど ひどいです。
日本ですが、日本は4月に成田のBランウェイ、1本滑走路が増えまして能力的には4割増加しましたが、その増えた分は殆ど中国を始 めとするアジアの方に吸収されたとなっております。これは私どもの話で恐縮ですが、10月からJASさんと経営統合ということでJALシステムというふう にスタートしております。

2003年の展望ですが、これはまさに今世間を騒がせているイラ ク、北朝鮮等々の情勢で、戦争でも始まると大きな影響を受けるだろうと。それから中期的な問題ですと、今インターネットの普及、それからE-ticket というのが普及しております。代理店さんとか行かなくても勝手に自分のコンピューターで取れて、しかも切符なし、切符もなしで、飛行機に乗るということが 実現しますと相当いろんな影響が出て来るのではないかと思われます。

旅行エイジエント業界は徐々に回復の兆し

続きまして旅行エイジェント業界です。2002年下期ですが、これはテロ事件の影響も多少は薄れてきて動向は前年に比べると盛んにはなってきたものの、そ れ以前の所まで帰っていない。それから宗教関係の大型イベントもあったので、だいぶ回復の兆しはあるというご報告です。
上期ですが、これから大型イベントとしてカーニバルがあります。これに非常に期待をしているというご報告になっております。

コンテナ不足が悩み ― 海運業界

次 に海運業界です。2002年下期は、これは関連あるところということでアジア、南米東岸コンテナ航路とですが、再三ご報告があります通り、輸出はいいけど 輸入が少ないと言うことも理由ですが、旺盛な輸出需要はあるのですが、残念ながらコンテナ不足というテクニカルな問題が出まして、荷物はあるけど船積みが 出来ないということで採算ベースでは良くなかったとのご報告になっております。
上期ですが1~3月というのは輸出が減少する、例年そういう時期 だそうです。通年で1000本コンテナくらいあるのが4、500本になる、半分くらいになるということだと思いますが、まあ、そういう時期ではあるもの の、営業努力でその船積み数量を維持したいというご報告となっております。

好調な輸出に期待 - 貨物業界

貨 物業界の回顧ですが、2002年は、レアル安が輸入消費財の販売を直撃して輸入業者が非常に苦戦している。反面、クリスマスに向けての商品、家電、オー ディオ、自動車を生産するための部品・部材の輸入は、輸入生産にとって中枢である電子部品・部材が急増した。また、上期後半から輸出貨物も増加して、生鮮 食品、自動車部品、衣料品を中心にレアル安が輸出を持ち上げたということになっております。
上期ですが、上期は新大統領の就任も終え、為替相場 も前年に比較してレアル高安定で始まっており、新施策の様子見から安定した時期を迎えようとしている。これからは台頭してきているアジア諸国に対抗できる 輸出商品の価格競争力、それから品質向上、世界のグローバル化等々に対応できるような新しい政策を出していく必要があるだろうと。今好調の輸出に期待をし て行きたいというようなご報告です。

トライキがないよう祈りたい - フオアーダー業界

次にフォアーダー業界です。フォアーダー業界さんはストライキに悩まされたようです。ご承知の通り前回もご報告したブラジルの税関のストライキがかなりあ りましたが、それが終了したと思ったとたんに、北米港湾ストライキが発生した。従って、当地に向かうSEA・AIR貨物を中心としてマナウス向けのコンテ ナ貨物に影響が発生した。ということで、本来業務以外の仕事で多忙ではあったけど儲からなかったというご報告です。上期はそう言うことで為替の安定とかい い方向に行くことを期待しているのに加えて、それよりもまずストライキが発生しないことを祈るという報告になっています。

合従連衡の動き ― 電気通信業界

通 信業界です。これは専門用語が多くて、私もよく分からないところがあったんですが簡単にまとめますと、下期は大きな2点。1点目が通信各社さんの合従連衡 の動きとインカンベントキャリアー、電話のことらしいですが、地域・サービスの相互参入があったと。もう一つはTIMの携帯電話サービスの開始とそれに対 抗するポルトガル系の会社だそうですが、TELESP CELULARとスペイン系のTELEFONICA CELULARが連合してジョイントベン チャーをさせる動きがある。この二つが大きな流れです。

上期については、ルーラさんの政策 に影響されるだろうが、低所得者層への利益還元という方向は通信業界にどういう影響を表すかですが、低所得者層への料金の低廉化による固定電話普及率の向 上という形になるであろうと予想されます。それから各電話会社さんは昨年までの相互参入による競争対応のため体力的に疲弊しており、すでに各社とも利益率 の低い低所得者層向けの低廉な料金実現には税制優遇、サービス認可基準の緩和、政府支援資金の導入など何らかの支援策が必要だろうと電気通信監督庁さんは 見ていると。

いずれにしても、電気通信監督庁というのは、政府とは独立した形で人事がな されるということなので、人事次第で大統領の政策が反映されるかどうかは決まるであろうと言うことです。それから2002年までは世界的なIT不況の影響 で、ブラジルの電気通信業界への投資も冷え込んでいたが携帯電話、インターネットのブロードバンド化などで成長は継続していくだろうという見通しとなって おります。

外資は5月の最低賃金の挙げ率まち - クーリエ

クー リエ業界。これはヤコンさんの実績ですがクーリエの輸出部門は21・4%減、輸入も7・4%減、ただエアカーゴの輸出に関しては6・8%増となっておりま して、やはりテロの影響からは立ち直っていない。上期の展望ですが、外資は5月の最低賃金の上げ率、為替の動向等に注目しておりまして、国会審議で最初の 重要法案がパスして政府が行政力があるということを証明するまでは積極的な投資は控えて静観するであろうと見られております。

新政府で好転期待 - 広告業界

広告業界です。大統領選挙による不安感から各企業とも先行き不透明な状態で、消極的な経営が目立ちました。このため宣伝関係はまず様子を見てからというこ とで、先送り傾向となっていて、前年同期比で20%減少ということになったようです。それからTVドラマ等のパトロシナドール(スポンサー)、商品の販促 関係など直接消費者に向けての店頭の仕事が増えてきた。
上期ですが、新大統領ルーラ新大統領が思ったほど過激的でなく、前大統領の政治を継承していきそうな気配がするので、企業活動にも明るい日差しが射して宣伝活動も活気が出てくるのではないか、という予想です。

建設ラッシュで供給過剰へ - ホテル業界

最 後にホテルです。2002年の下期はホテル建設ラッシュが、これはプランニングされるのは相当前になるので、実際に建てられるのが遅くなるということのタ イムラグの話だとは思いますが、建設ラッシュが続いたのにお客様が集まらなかった。ということでホテル数がお客様の需要数より100%以上上回っており、 ということですから半分にも満たないと言うことですかね。

いくつかのアパート・ホテルなど は通常の住居用マンションとしてビルごと売りに出しているくらいです。デラックス・ホテル業界は、下半期には千室弱がサンパウロ市内に新しくできた。グラ ンドハイアットさん、ヒルトン、モルンビー、それからブルーツリーホテルズのホテルさんは600室のホテルが入った複合コンプレックスをオープン。また日 系二世のルイ・オオタケ氏設計の奇抜なコンセプトのウニコもオープンしたということです。

上 期はテロの影響のあった去年上半期よりはよい見通しでしたが、やはり戦争がからみ、アメリカ・イラクのテンションが発生し、今後どのような傾向が現われる か分からず、国内旅行中心となるでしよう。明るい話題としましては、ルーラ新大統領、観光セクターに70万から 100万の雇用創出計画を出されております。観光大臣、それからEmbraturあたりもいろいろ新しい雇用創出の計画を出されているようなので、それに 期待したいとのご報告です。ちょっと長くなって恐縮ですが、以上です。(詳細は末尾の部会資料)

2003年上期業種別部会長懇談会-運輸サービス部会(資料)

1. 航空業界

2002年の回顧

1昨年の同時テロ事件は航空業界に発想の転換(航空機利用による自爆テロという想像もしなかった行動)を迫ることとなった。セキュリティの検査強化はコス トの増加となり、伸び悩む単価による収入の減少とともに経営を圧迫した。航空業界は現在苦難の時期の真っ只中におかれている。米国ではUAの連邦破産法 11条申請を始め、暗い話題ばかりが目立っている。世界の40%を占める航空市場である米国では2,001年度が77億ドルの赤字、2002年度が95億 ドルの赤字と大幅に赤字が続き、黒字基調にもどるには後2-3年掛かると言われている。

ブラジル発の旅行においては、10月の大統領選挙を前にした数ヵ月間レアルが暴落し、旅行業界は大きなダメ-ジを受けた。ブラジル国内旅行も、航空運賃は 乱高下を繰り返して安定せず、最大手のバリグ航空の苦戦を始め各社ともあまり良い決算にはなってない。日伯間は、 KEの撤退以来、特に供給の変化がなかったが、輸送量はテロ事件以前の水準にはもどっていない。出稼ぎも日本の不況の長期化であまり大きな動きは見られな かった。

日本では4月に成田のB滑走路がオープンし、発着能力は4割増加したが、増加分は 中国線を中心とする東南アジア線に吸収された。JALとJASは経営統合し株式会社日本航空システムとして新たなスタートを切った。これにより、日本の航 空界は大手2社の競争を中心に安売り合戦の泥沼化している。

2003年の展望

航空需要はかなり回復してきており、更なる回復が期待できるが、イラク,北朝鮮情勢が予断を許さず、戦争にでもなれば悪影響が必至である。また保安検査の 強化も懸念材料である。E-ticket(電子航空券)の出現とインターネットの普及は利用客にとって便利性が益す事になり、旅行の流通業界を大きく変え る要素ともなろう。

ルーラ政権の影響

経済の安定、中でも特に為替の安定が望まれる。

FTAの必要性と影響

2国間の航空協定で決められるので特に影響はないが、FTAの導入で物流の動きが活発になれば特に貨物の輸送量に影響する。

 

2.旅行エイジェント業界

2002年下期の回顧

2001年下期に比較しテロ事件の影響も多少薄れ、旅客の動向が盛んになった。
また宗教関係の大型イベントなども有り、全体的に回復の兆し有り。

2003年上期の展望

年度上期の大型イベントとしてカーニバルが取り上げられるが、2002年はテロ事件の影響が大きく国外からの旅客の動きは停滞気味であった。
その反動もあり、2003年3月上旬に行われるカーニバルは、国外よりの旅客の動きに期待が持てる。

ルーラ政権の影響

まったく不明。ただし、現在既に厳しくなっている外国人に対する永住権取得等のドキュメント関係が、労働党のルーラ氏が大統領としてどのような政策を打ち出すかにより、更に厳しい状況が起こる事が予想される。

FTAの必要性と影響

不明。

 

3.海運業界

2002年下期の回顧

アジア/南米東岸コンテナ航路において、アジアからの輸入が減少し、旺盛な輸出需要はあるもののコンテナ不足が原因で船積みができないという悪循環が生じた結果、採算が大幅に悪化した。

2003年上期の展望

例年、1月-3月は輸出が減少する時期ではあるが、営業努力で船積み数量を維持して行きたい。

ルーラ政権の影響

選挙公約に掲げた貧困撲滅や雇用拡大よりも為替の安定やインフレ抑制が最も影響が大きくまた一番注目する所でもある。
また前政権時代に前進の見られた「港湾ターミナル・海運業の効率化」にブレーキが掛からないか懸念される。

FTAの必要性と影響

貿易・市場拡大効果に繋がる政策はすべて歓迎したい。日本外務省の発表によると、貿易の8割を占めている北米、欧州、東南アジア(特に韓国,ASEAN諸国)との締結を優先すべきであるとしており、ブラジルとの締結には積極性が見られないのは残念である。
但し、ブラジルからの輸出では農産物が期待できるが,日本からの輸入の増加はあまり期待
できないのではないか。

 

4.貨物業界

2002年下期の回顧

2002年上期後半より引続く大統領選挙戦に呼応した思惑為替相場によるレアル安が、輸入
消費財の販売を直撃して、輸入業者は低迷。反面、クリスマスに向けての商品(家電、オーディオ、自動車)を生産するための部品・部材の輸入は、輸入生産にとって中枢である電子部品・部材が急増した。
また、上期後半より輸出貨物も増加し、生鮮食品・自動車部品・衣料品を中心にレアル安が輸出に貢献してきた。特にクリスマス時期を前後して客貨共に動きが活発であった。
帰国・赴任者の動向は、上期での異動が一段落した様子で、目立った動きはなかった。

2003年上期の展望

新大統領の就任も終え、為替相場も前年に比較してレアル高安定で始まっており、新施策の様子見から安定した時期を迎えようとしているように見える。
失業者対策を中心として消費力の向上、金融行政の改善、法整備の改善・簡素化、及び、アジア諸国に対抗できる輸出商品の価格競争力と品質向上等、世界のグローバル化に対応した新しい政策を打出すことに期待する。
特に至近の経済施策としては、やはり輸出競争力の強化・向上であり、鉱物・農産物、生鮮品、健康食品、各種原料・資材、工業用品の部品・部材を中心として価格競争力がつけられる時期に来ていると思うので、輸出に期待する。

 

5.フォアーダー業界

2002年下期の回顧

長引いたブラジル税関のストライキが終了した時期に北米港湾ストライキが発生し、当地へ向かうSEA/AIR貨物やマナウス向けコンテナ貨物に影響が発生。
その後、長引くストライキに北米向け航空貨物への転化が進み、スペース不足が発生。両ストライキの情報収集や提供に追われ、多忙となるも、貨物量は低下する結果となった。
また、一時期R$4.0/US$となった為替レートの変動も荷主の輸入離れを引き起こす要因となったものと思慮。

2003年上期の展望

依然REAL安ではあるが、かなり為替も安定してきたことが今後良い方向に転じることを期待している。
また、上記の他責となりうるストライキ等が発生せずに、順調なる物流が可能となることを期待している。

ルーラ大統領指導下のブラジル政治、経済が各部会や各業界に与える影響

今後どのような政策が出されるかが焦点。
現段階では推測の域を出ないが、ルーラ政権が発足して株や為替が安定に向かっていることが一時的なものか安定的なものかを暫く観る必要があり、影響については推測困難。

日伯間のFTA締結の必要性、あるいは与える影響

日本が孤立してしまわないためにも、日伯間だけに留まらずに必要性があるものと考える。
影響としては、日本からの商品がこれまで以上に売り難い環境となることが考えられる。

 

6.通信業界

2002年下期の回顧

大きなトピックは
① 通信各社の合従連衡の動きとインカンベントキャリアー(電話)の地域・サービスの相互参入

② TIMの携帯電話サービスの開始とそれに対抗するTeleSP Celular & Telefonica Celular 連合のJV化の動き
の2つである。

新聞に載った具体的事例を簡単に照会すると
・ Telefonicaによる国際電話サービス(5月)および国内長距離電話サービスの開始(7月:2日目に50%割引)

・ Telemarの国内長距離電話サービスの開始(8月:3分毎に1分無料)

・ AT&T固定電話サービス許可の取得(7月:企業向け)

・ Embratel企業向け固定電話サービス開始(10月)

・ Brasil TelecomによるIntelig(国際電話ミラー会社)MetroRed、Glovenet、などの買収の動き(8月~9月:未確認)

・ TIMの携帯電話サービス開始(10月:特定端末(2台)間の通話1年間無料)

・ TeleSP Celular(Portugal Telecom)とTelefonica Celular(Telefonica Moviles:スペイン)のJV化発表(10月:市場占有率6~7割へ)

・ TelemarによるPegasus(企業向けデータ通信会社)の買収の動き(3年1月)
などである。

2003年上期の展望

・労働者党出身のルーラ新大統領就任の電気通信産業に与える影響は他の産業と同様未だ未知数である。労働者党の基本的路線である低所得者層への利益還元と いう方向は電気通信においては低所得者層への料金の低廉化による固定電話普及率の向上という形で表されるものと予想されている。

・各電話会社は昨年までの相互参入による競争対応のため、体力的に疲弊しており、既に各社とも利益率の低い低所得者層向けの低廉な料金実現には税制優遇、 サービス認可基準の緩和、政府支援資金の導入など何らかの支援策が必要であるとANATEL(電気通信監督庁)では見ている。

・ ANATEL総裁以下の人事は本来政府とは独立した形が保証されており、これまでの政策が継承されるかどうかは新大統領が強硬な人事異動を実施するかどうかで判断される。ANATEL総裁は今の所、そういう動きはないものと見ている。

・2002年までは世界的IT不況の影響でブラジルの電気通信業界への投資も2001年に引き続き冷え込んでいたが、携帯電話、インターネットのブロード バンド化などでは成長は継続しており、政府の外資受け入れ施策の変更に対する不安が払拭されれば、ある程度の投資増額(特にヨーロッパ、米国)は期待でき る。

 

7.クーリエ業界

2002年下期の回顧
YAKON社の実績によると2,001/2002年対比で

COURiER輸出部門  21.4%減
COURiER輸入部門   7.4%減
AIRCARGO輸出部門  6.8%増

となり、9月11日のテロの影響から立ち直っていない。
但し REAL安で輸出は少し増えてきた。

2003年上期の展望
外資は5月最低賃金の上げ率、為替の動向に注目し、国会審議で最初の重要法案がパスして政府の行政力を証明するまで、積極的な投資を控えて静観すると思われる。従って貿易取引も停滞するだろう。

ルーラ政権の影響
12月28日の官報で通関の違反罰金を強化した法令(FHCの置き土産)DECRETO-LEI4543が発令された。

アンダーインヴォイスの罰金 100%
関税番号の間違い        1%
書類不備,間違い       50%
今後は税関の取締り強化、脱税の摘発が予想される。

FTAの必要性と影響
日本の農産物の輸入条件緩和が必要と思われる。

 

8.広告業界

2002年下期の回顧

大統領選挙による不安感から各企業とも先行き不透明な状態で、消極的な経営が目立った。このため、宣伝関係はまず様子を見てからということで、先送り傾向 となり、前年同期比で20%の減少となった。TV・ドラマ等のパトロシナドール(スポンサー),商品の販促関係など、直接消費者に向けて店頭の仕事が増え てきた。

2003年上期の展望

新大統領ルーラが思ったより過激的でなく、前大統領の政治を継続して行きそうなので,企業活動にも明るい日差しがさし,宣伝関係にも活気が出てくることが予測される。

 

9.ホテル業界

2002年下期の回顧

大統領選挙をめぐる政治的・経済的な不安定から異常なドル高となり,そのため出張旅行が減り、ホテルの占有率も低下した。国内のビジネス旅行の70%を占めると言われるサンパウロにおいては特に影響が大きかった。

2003年上期の展望

ホテルやフラッチでは全く需要回復の見込みがたっていない。同時に供給の方は相変わらず増えている。2003年,2004年も国中で新たに開業するホテルが多く事態をより深刻にしている。
ドル高でブラジル向けの旅行に割安感が出たにも拘らず、海外からの旅行は減少し、変わって国内旅行が増えている。
ブラジルは現在歴史的な危機にある。それは治安問題である。政府,州,市,警察が一致団結して安全な旅行ができる状況を実現して旅行客を迎える体制を緊急に作る必要がある。

一方、新大統領ルーラは観光セクターに70万-100万の雇用創出を計画していると言われる。観光大臣のMares Guiaは8000万ドルをブラジル 向け旅行マーケティングへの投資を計画しており、これはホテルと観光業界に新たな成長をもたらすものと期待される。新大臣は国内旅行の回復も強化する。彼 はインフラ整備,制度改革、財政整備にも力を入れており期待が持てる。
アニエンビ・ツーリズモの前社長で、今度EMBRATURの社長となったEduardo Sanoviczは観光セクターの雇用創出を進め、会議やエグジビション、リゾート地の文化や市場、エコツーリズモにも積極的である。

 

2003年上期業種別部会長懇談会-開会挨拶

田中会頭開会あいさつ

本 日はお忙しいところを多数お集まりいただきまして有難うございました。当会議所のビッグイベントの一つであります、「業種別部会長懇談会―ブラジル経済の 回顧と展望」はブラジル経済の動向を把握し、経営に役立てる有力な手段の一つであるということで、ブラジルサイドはもとより、日本サイドでも本社を始め、 研究機関や政府機関を含め大きな関心を持たれて参りました。

しかし、従来は関係者だけが出 席し、後日その記録を編集して配布しておりましたため、希望する人たちの手に入るには1ヵ月程度を要するのが通常でした。今回、一般公開という新しい試み によりまして、リアルタイムに内容を知ることが出来るばかりでなく、一般公開としましたので会員以外でも参加できることになりました。
また、会 議は日本語で行われますが、ポルトガル語への同時通訳をつけましたので、ブラジル人や日本語の分からない日系人にも理解できるようにしました。ただ、会場 の収容能力に限度があり、先着順にしたため、希望者の一部をお断りしなければならない事態になったことは誠に残念でありました。

ルーラ政権が誕生して一カ月経過しました。その経済政策は政府の約束を守り、債務は返済する、財政規律は遵守し、プライマリー黒字は維持する、インフレは コントロールする等々、極めてオーソドックスかつ筋の通った政策を打ち出しております。「初心忘るべからず」といいますが、この調子が継続できれば、今後 の成果に期待を持つことが出来ると思います。

今日は、各業界の代表者が揃っていますの で、必ずや皆さんの参考になる話が聞けるのではないかと思います。今日の会合のため、色んな方々から多大な協力を頂きました、特に総領事館からは総領事以 下、関係領事のご出席を頂いたばかりでなく、お帰りにお持ちいただくようにルーラ大統領就任演説及び、ルーラ政権閣僚のそれぞれの日本語訳という貴重な資 料を頂いております。また、安田保険会社からはこの素晴らしい会場を使用させて頂いております。
最後にこのイベント実行に黒子役として尽力してくれました、当会議所総務委員会始め、関係各位および事務局があります。以上、内外の多数のご協力、ご努力に厚くお礼申し上げまして私の開会のご挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

司 会 ありがとうございました。では引き続きまして赤阪総領事にご挨拶いただきたいと思います。

 

赤阪総領事あいさつ

今日は遅れて参りまして大変失礼いたしました、申し訳ございません。

今日のこの商工会議所の業種別部会長懇談会、私も大変楽しみにして参りました。去年、開かれましたこの部会長懇談会に出席させていただいた時に、はじめに ブラジル経済の不透明な要素が多くて、この部会長懇談会でその不透明な所が明らかになることを期待すると申し上げたその通り、部会長懇談会が終わった後、 ブラジル経済情勢および日本企業、日系企業の動向がよりスッキリした感じ、私の頭の中だけですが、スッキリした感じがしたのを覚えています。本年のブラジ ル経済情勢の動向はいま、田中会頭の方からお話がありました通り、ルーラ新政権のもとで穏健な経済政策が採られているということで、ひとまずは穏やかな状 況が続いているという見方が強いようですが、他方これから先を見ますと、不安定な要因もございます。

国内的には新政権が採っている飢餓対策、社会保障政策、あるいは税制改革の動き、こういった動きがどういった展開を見せるか。さらには対外的な要因が懸念 材料としてございます。米軍のイラク攻撃が、今後それほど遠くない時期に予想されるような状況になっております。世界経済の状況も米国、EU、日本を始め として今年の見通しは明るいとは申せません。こうした中でここにおられる日本企業の今年の活動、展望、動向というのはわれわれも注目しているところでござ います。今年は従来に増して、日本とブラジルとの経済関係の緊密化をわれわれは期待しているところであります。

来週になりますが、2月14日に東京でWTOの非公式会合が開かれます。そこにはアモリン外務大臣、フルラン商工開発大臣、ロドリゲス農業大臣と3大臣が 出られると聞いています。また、3月17日の週には「日伯経済合同委員会」が開かれる運びになっていると承知しています。これまでにも増して、日本とブラ ジルとの交流、経済関係が活発になることを期待しています。回りの状況はいろいろ不安定な要素を抱えていますが、こうしたなかにあって、各業種における日 系企業、日本企業の活躍を期待しておりまして、今日の部会長懇談会でそういう各業種での詳しい事情を聞かせて頂けるものと期待しております。どうもありが とうございました。

司 会  ありがとうございました。それでは本日のメインテーマであります、「ブラジル経済2002年下期の回顧と2003年上期の展望」に ついて、各部会長より発表して頂きます。まあ、2002年下期というのはドルの対レアル・レートの高騰、それからブラジル・カントリーリスクの急上昇、イ ンフレの高進、金利の引き上げなど、経済活動全般が大きな影響を受けて、特に外貨建て債務の増大、資金繰りの悪化、原材料の高騰、こういったアゲインスト の風が吹きまくっていた感がありますが、一方で輸出産業、金融機関等にはフォローの風ともなったようで、そういう意味では各業種により非常に明暗を分けた のではないかと思っています。各業種の実態についてご披露いただければと思います。それでは最初にコンサルタント部会の西川さん、お願いいたします。

西 川   コンサルタント部会の西川でございます。われわれの部会は、回顧とか展望とかを大変まとめにくい部会でございますのと、私が非力でありますので、先ほど お話ありました時間の節約に協力させて頂くということで遠慮致しまして、金融部会の山田副会長に一つよろしくお願いします。

司 会  副部会長の山田さん、コンサルタント部会も代表してよろしくお願いします。

2003年上期業種別部会長懇談会-質疑応答、コメント

司 会  あ りがとうございました。以上であの11部会長の発表を終わりますけども、総じてみなさん共通しているのは、2003年度上期も為替、金利、インフレ、この 動向次第なのかなと思います。ここで一般のみなさまのご質問なり、ご意見なりお伺いしたいと思います。総領事館から参加されている橋口領事さま、何かご感 想でも頂ければと思います。

不安あるが期待も大きい新政権

橋口領事   わたしは経済班とはぜんぜん別の仕事をしていまして、今回、外の動きが分かればと思って勉強をさせて頂きに来たんですけども、新聞等で見ているような一 般的な去年の後半の経済、それから政治の不安定さ、それがやっぱり企業の方々にも影響を与えているんだなぁ、ということをここで実感しました。今年、ルー ラ政権で、新聞等で見ていて、不安定要素もあるけども期待も大きいというような感じも受けているのですが、そういった情勢が、日本企業の方々にもいい影響 を与えていればと期待をしております。

司 会  商工会議所の監事会から参加されている山田議長さん、なにかございましたら。

国民は経済沈静化の永続性に期待と懸念

山 田  当商工会議所監事会の議長を仰せつかっている山田唯資でございます。

ブラジルで経済実戦に明け暮れている、各分野の日系多国籍企業代表の方々が、それぞれの分野の「回顧と展望」について、公開の席で、その生の声を発表する 意義は非常に大であり、このことの実現を前から願っていた、当会議所幹部の一員として、私は限りない満足感を覚えるものです。

ブラジルは、昨年後半期に労働者出身のルーラ氏が、国民の圧倒的な支持票を得て大統領に当選し、その施政が1月1 日から始まっており、現在のところでは、契約の尊重、財政の健全化、経済の安定、インフレのコントロールなど、施政者となった以上は、当然そうあるべきで すが、反対党であった頃に提唱していた事とは異なるやり方をはじめているため、選挙前に波乱気味であった経済も沈静化しており、「要は、今後それが長く継 続されるかどうか」に国民の期待と懸念があるところであります。

そういったことから、また 6ヵ月後に、本商工会議所の同じ形式での「2003年度上期の回顧と下期の展望」の発表が待たれる事になり、したがって、これを機会に、こういった公開 の、年2回の「業種別部会長懇談会」が定着し、傍聴者の数も益々増加し、単に会議所会員のためのみでなく、広く多くの方々のために貢献できることを期待す る次第であります。

司 会  ありがとうございました。みなさんのご意見をもっと聞きたいんですけども、時間がだいぶ超過していますので、この辺でコーヒーブレイクにしたいと思います。10分ほど休憩して、5時40分から始めたいと思いますので、よろしくお願いします。

2003年上期業種別部会長懇談会-ルーラ大統領指導下のブラジル政治経済

「ルーラ大統領指導下のブラジル政治経済が各部会や各業界に与える影響」

司 会  本日の副題の一つであります「ルーラ大統領指導下のブラジル政治経済が各部会や各業界に与える影響」に ついてご意見を頂戴したいと思います。ルーラ政権は初めての労働党政権ということで、今後の政治運営等についての見方は、いろいろあるのではないかと思い ます。一つの見方として、総務副委員長の赤嶺さんに、ルーラ政権発足の意義ということで頭出しをお願いしたいと思います。赤嶺さん、よろしくお願いしま す。

ルーラ新大統領の壮大な「ムダンサ」に期待

赤 嶺  当 部会長懇談会を主催する総務委員会の副委員長をおおせつかっている赤嶺でございます。革新政権発足の意義についてわたくしのごく個人的な意見、つまり私見 を少し申し述べたいと思います。昨年10 月の選挙で、約5,300万票の驚異的な得票数で、見事当選を果たしたPT所属のルーラ第39代大統領が去る1月1日に就任して、きょう2月6日でちょう ど37日目になります。皆様方もよくご存知の通り、ルーラ新大統領が選挙公約として鮮明に掲げた旗印が「ムダンサ」(変革)ということでした。 注目の就 任演説の中でも、ムダンサという言葉を14回も使っています。

ルーラ新大統領が目指すムダ ンサとは、要するに今までのこの国のあり方とか、ありさまといったものを大胆につくりかえ、より社会格差を少なくし、もっと公正、公平感があって住み心地 のいい国に再建して行こうではないか、と言うことだと私は解釈しております。そのためにまず必要になるのが、税制改革、社会保障制度改革、労働制度改革な どを手始めとする、諸構造改革の実施と貧困対策などの社会政策の推進だと判断されます。

PTの系列下にいる有名な社会学者で、USPなどの教壇に立ったこともあるフランシスコ・デ・オリヴェイラ教授も、この国では最近の150年間の間に、奴 隷解放、共和制宣言、30年革命といったようなそれこそ国の「レフンダソン」、再建、再興と呼んでもいい政治の地殻変動に似た画期的な出来事が発生してい るが、ルーラ新政権の誕生はそれらに匹敵しうると指摘し、またブラジルの被支配者階層が歴史上初めて、選挙という最高の民主主義的な手段を使って、自分た ちの手でこの国の歴史をつくりかえようとしている分だけ、今までより注目に値するのではないか、といった評価の仕方をしています。

確かにルーラ新政権は、政治経済社会面にさまざまな多くの困難な問題を抱えており、その反面、行政面での経験がさほど豊富ではなく、政権そのものの前途は 決して並み大抵ではないかもしれません。また、これまでの37日間の行政スタイルを見ておりましても、野党時代に考えていた事と政権党の座についた現在、 考え言っている事との間には当然のことながら、さまざまな矛盾点、つじつまが合わないことなども見受けられ、さらに試行錯誤とか朝令暮改とかの荒っぽさも 多少目立っております。

しかし、その一方では、当選後の最初の記者会見で、これまで選挙の 翌日からすぐ、「為政者の公約違反に裏切られ続けてきた国民を絶えず視野に入れた政治をして行きたい」と抱負を述べており、出てくる日常の問題にもできる だけ素早く取り組んで、国民のイライラを解消してやり、懸案のムダンサを何とか実現していこうとする真剣な姿勢もはっきり見て取れるような感じがします。 例えばCNT、Sensusの最近の世論調査の結果では、ルーラ新政権の滑り出し具合を見て、実に78.4%の国民が「良い政府になるだろう」と期待を寄 せています。多少、運とツキに恵まれた側面も見逃せませんが、まぁ、順調な新政権の船出と言えそうです。ルーラ第39代大統領の今後に大いに注意を払いつ つ、どうしてもムダンサを成し遂げようとするその旺盛かつ壮大なる意欲に大いに期待したいと考えている者の一人であります。以上、仕付役として少し申し述 べました。ありがとうございます。

司 会  ありがとうございました。この問題について意見はもう際限がないと思いますけども、各部会で出されたその代表的な意見を簡単に、時間で言うと2、3分程度でご披露いただけるかと思いますけども(笑)、コンサルタント部会の西川さんいかがですか。

2003年上期業種別部会長懇談会-日伯間FTA締結の必要性

日伯間FTA締結の必要性、あるいは与える影響

柳 田  もうすでにFTA研究会は2回やっておりますので、かなりみなさんご存知の方が多いと思いますが、おさらいの意味で、簡単にFTA締結の現状についてご説明申し上げます。

まず世界のFTA締結の現状ですが、FTAとはそもそも、2つ以上の複数国、地域間で関税やサービス貿易の障壁等を撤回してモノ、サービス貿易の自由化を 進めた協定をさしておるわけです。2003年1月20日現在で、GATT、WTOに通報を発効しておりますFTA は世界に147ございます。でその約6割が90年代に発効したものです。その代表例がNAFTAであり、メルコス-ルであり、AFTA、これアジア、 ASEANですがAFTA。それからFTA締結活発化はこの90年代に出てきたが、その背景は、やはりWTOの場合は他国間交渉が非常に難しいことがあり ます。

これはシアトルの失敗例もあるが、そういったことが背景になっている。FTA締結の意義としては、WTO交渉の補完、あるいは企業の競争力強化、それから貿易投資の確実性の確保、こういったことがあるわけです。
中南米のFTAの現状はどうなっているのかですが、中南米はみなさまご存知と思いますが、歴史的に、ブラジルを除いてFTAに非常に熱心な地域です。 ALADI、中米共同市場、アンデス共同体、カリブ共同体、メルコス―ルがあるわけです。ただ、大半は、関税同盟です。中南米でこういうFTAが非常に活 発に締結されてきたのは、構造改革、自由化を進展させて交易経済圏の形成を図って、貿易量を飛躍的に拡大することで、実際そうなって来たわけです。

FTAに関する日本の現状-メキシコと交渉開始、中南米との次はまだない

もう一つ政治的な意味合いとして対立の回避。これはメルコス-ルでのブラジルとアルゼンチンが一つの例ですが、そういった政治的な意味合い、あるいは対外 交渉力を持つために団結すると言ったことがあります。中南米の中で特にメキシコが非常に熱心であるといえます。これはNAFTA、それからEUと現在31 カ国のFTAに準ずるようなものを締結しております。貿易額が締結後急拡大をしている。投資、雇用などの、経済発展をこのFTA等を締結したことによって 支えている。あと、貿易依存度が非常に高いチリも、最近では積極的でカナダ、メキシコ、EU、米国、韓国と、締結ないしは締結合意をしております。

先ほど出ました北米、南米、カリブ34カ国によって構成されるFTAAが現在交渉中です。これが出来ますと、人口 8億人、GDP13兆ドル。世界のGDPの4割を占める、巨大な経済圏が生まれます。ただ、FTAはこの34カ国で一括合意方法式、つまり全加盟国、全参 加国が合意をしないと成立しないという非常に厳しい条件があります。もう一つは、ご存知の通り地域格差。アメリカからカリブの小さい国まで入っているわけ で、非常に地域格差、経済格差が大きいことから、交渉が難航するであろうという予想があります。

さて最後に日本の現状ですが、日本の通商政策基本はWTOを中心とした多角的貿易体制の維持・強化を基本線にしております。各地域でのFTA締結、進展を 受けて世界各地で、いま非常にFTAが流行っていると言えば流行っているわけです。日本も貿易自由化、経済活性化を図る上で、多角的貿易体制を補完する一 つとして、-地域貿易協定といった方がいいと思いますが- このようにFTAを位置づけています。

今後、わが国の産業界からのニーズ、あるいは相手国市場の規模などを要素として、勘案して交渉相手国を決めて行こうと言われております。昨年締結されまし たシンガポールとの経済連携協定。これを皮切りにしまして、今年中の合意を目指してメキシコと現在交渉を進めているところです。このあとはASEAN等ア ジア諸国との交渉を予定しており、いまのところ、中南米で次を取り上げるという話は残念ながらありません。以上でございます。

司 会  ありがとうございました。このテーマにつきましても意見のある部会がありましたら。機会をお待ちの自動車部会さん、いかがですか(笑)。

EU、メルコスールのFTAで日系メーカーは大変不利になる

近 藤  実 は大変困った事態になりつつある。先ほど言いましたように、EUとブラジル政府とのFTAの中身がかなりもう煮詰まってきたのがつい最近分かって来まし て。中身をいろいろ調べているけども、政府間の基本合意はできた。唯一、いま反対しているのは、みなさん方のビジネスにも関係あるかも知れませんが、部品 メーカーさんなんですね。FTAが締結になったときに国内の部品メーカーさんが大打撃を受けるわけですよね。関税が取られるわけですから。

唯一、政府間で一応コンセンサスが出来て、中身はいまEUとメルコス-ルの関係では、完成車は35%の関税がかかる。部品は15%。中身によって違います けども大体15%です。ヨーロッパ側が提案しているのが、完成車は7年間かけて10%から始めて0%にする。だから35が10に下がるわけですね。部品は こちらのSindipecasが大反対をしてもめています。つまり受け入れられない、「これをやると、われわれはもう食って行けない」と言うことで、暗礁 に乗り上げているのが実態です。

もうかなり話が詰まっていて、過去少なくとも2回、政府間 では一応、この間ドイツに行って、ドイツの代表も来て EUとのFTAについてはかなり積極的にやりましょうと。政府間のスタンスは非常に明快に出ている。ルーラ政権もやろうということです。したがって、いま 農業問題が、わたしその中身はよく分からないけど農業問題が全体としてはネックになっているが、自動車について言うと、いま言ったそういう状況になってい て、かなり早めに行くんじゃないか。この2月の末にもブラッセルで実は会議をやる。この会議も政府間じゃなくて、ブラジルの自工会とヨーロッパの自工会 で、すでにもう話が始まっているんです。つまり、もうメーカー間同士で話が始まっていると言うところが大きな特徴になっています。

考えてみますと、メキシコが同じような状況でした。わたしは、メキシコと同じようになるのを非常に心配しています。EUは、NAFTAが決まったときに、 早くも危機感を感じ強引にメキシコとFTA交渉を始めて、「EU、メキシコのFTA」が決まりましたよね。ところが、日本はおくれ馳せながら、いまメキシ コとようやく交渉のテーブルについた状況ですね。したがって、これから2年、3年かかるのではないか。メキシコの場合、自動車産業よりも家電が一番影響を 受けたと思うんです。ブラジルとヨーロッパとの間でFTA合意ができれば、少なくとも日系自動車メーカー、私共とトヨタさんは大打撃を受ける、完全にハン デイになるわけです。向こうからは例えば部品もゼロで入ってくる、完成車も10%で入ってくる、将来は0%と。われわれは完成車を関税35%で入れ、部品 を15%の関税を払って入れるわけですから全くハンデイになる。

ブラジルでも出遅れている日本、早急に手を打たねば

したがって、日本政府を批判するってのもメーカーサイドとしてはあるけど、残念ながら。そのブラジルにおける日本メーカーのプレゼンスはまだ非常に低いで すね。したがって、自動車ベースではなかなか話が進まないだろうが、しかしながら、我々もここに出て来て、これから投資をやり始めるわけですから、「これは何とかしなければ。出遅れてはいるが、早急に交渉のテーブルにつかなければ」と言う事を強く感じていて、、政府ベースと民間ベース、まぁ、自工会ベースではやれると思うんです。これはトヨタさんも一緒でしょうし、われわれも同じ機関持っているわけですから。

日本で自工会ベースで動かすのは、これはやれると思うけども、政府ベースでの、テーブルにつくコンセプトが本当にうまく行くのかどうか心配ですね。
この話が出たちょうど去年の11月ごろ、いろいろ調べてみると、EUとの間では、こと子細に決まりつつあるので、非常に危機感持ちはじめた。幸いにしてカ マラ(会議所)でも、そういうFTA研究会なるものが出来て、動きはじめたので、ぜひこれをテコして、日本政府、総領事もいらっしゃいますし、ご協力頂い て、何とかフックをどっかでつけたいなぁと。

これ具体的にどうやってつけるんだと言うこ とで、自動車業界だけの議論ですけども、関連の日系の部品メーカーさんもいらっしゃいますし、本当に今いわれているゼロベースが決まると、メーカーだけ じゃなくて、部品メーカー側も相当な打撃を受ける感じがしています。ですから、なんとか早急に動く必要があることを痛切に感じているわけです。そこに NGKの伊藤さんいらっしゃいますけど、メキシコで同じ経験されているので、もしコメントがありましたら。

司 会  伊藤さん、いかがですか。

当地日系企業に危機感がない、現実がわかっていない

伊藤   NGKの伊藤です。90年から98年までメキシコにおりまして、94年の1月からNAFTAが始まって、日本からは15、20とか30%とかの関税で 入ってきたものが、NAFTA域内では、域内のローカルコンテツ62.5%があったけど、一応、フリーになった。いろんなスキームもありますけど、そのう ちにヨーロッパとも先ほどの近藤部会長の話ですが。それで、メキシコの日本商工会議所もだんだん危機感を持ちはじめた。最初のころは今のここのような状態 でした。この前、当会議所のFTA研究会に出してもらいましたが、自動車部会と柳田さんとこの貿易部会以外はあまり危機感持ってない。現実がよくお分かり になって見えないと思います。

わたしがいたときの96年か97年に商工会議所が一体になって、政府に働きかけたが、まだまとまってない。今年末ぐらいからいろいろ始まるようですけど、そういう状況です。6、7年かかってやっとテーブルにつく。
この前のFTA研究会で政府の方おっしゃいましたが、「東南アジアが先、ブラジルは後だ、そんな余裕はない」という事なのですけども、2005年には、 EU、アメリカ、これ全部まとまります。ヨーロッパやアメリカから新規の企業もどんどん出てきます。いろんな機械とかがフリーで入って来ます。

日本からは、税金を払わなくてはいけないわけですね、今の話のように。これは、ブラジルにおける日本商工会議所にとって非常に大きな問題、自動車だけの問題じゃない、とわたしは思っとるんです。非常に大きな問題ですから、「商工会議所の総意」として政府に働きかけて、政府に動いて頂くという方向に持って行かないと。この前の話じゃないけど、政府の方、忙しいからなかなか動けない(笑)、ということですから。以上です。

司 会  あ りがとうございました。ほかの部会はご意見ございますか。それではFTA問題については、商工会議所としても日伯経済交流促進委員会ですか、これを中心に して、いまの伊藤さんの話じゃないですけども、「民間の声も反映させながら、行動していくつもり」でおります。最終的にはそのFTAは政府間交渉で、この 辺は領事館はじめ、政府の絶大なご支援が必要ではないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

近 藤  ブラジルでやっているのを見ると、メーカー間交渉なのです。メキシコの場合もそうですね、最終的には。ですから、詳細はやはりメーカー間で行かなきゃいかんのでしょう。ただ、そのテーブルにつくセレモニーは政府にやって頂くという事ですね。

司会  大変時間が超過して申し訳ございません。最後になりますけども、赤阪総領事に講評をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

2003年上期業種別部会長懇談会-赤阪総領事の講評

赤阪総領事 今 回の部会長懇談会、こういった形でたくさんの聴衆を前に部会長懇談会が開かれたというのは、非常にわたしにとって印象的であります。「開かれた商工会議 所」をまさに印象づける会合であったと思います。日系社会の有識者の方、文協、県人会関係者、さらには邦人プレス関係者の方もたくさん来られたとお聞きし ております。

みなさま方の関心と熱意に敬意を表したいと思います。遠藤総務 委員長ほか、赤嶺総務副委員長、大変ありがとうございました。わたし詳しいとこ繰り返しませんが、テーマが3つ、「ブラジル経済の回顧と展望」、「ルーラ 大統領の今後の政治経済政策の行方」、それに「FTA」と。ちょっと欲張り(笑)、すぎられたんじゃないかという感じがしまして、一つ一つそれぞれ大変重 要な問題です。

ブラジル経済については、今日のキーワードは「期待と不安」ということで しょうか。いろいろ意見が出ましたけど、期待と不安が錯綜していると。それはルーラ大統領の今後の政策見通しについても言えるのかもしれません。最後にあ のFTAについてお話ししておきたいのですが、「政府としての対応が遅れてる、特に中南米に対して熱意がない」というのは、その通りであります。わたし自 身もここにおりまして心配しております。なぜそれじゃ熱意がないかというと、これまで、ここの、ビジネスのリーダーの方から熱意のある声が聞こえてない事 も一因であります。メキシコに遅れると同様、ビジネスの方が、FTAは重要だから日本とブラジルとの間にも結ばなくてはいけないと言うことで、総意がエネルギーとなって日本政府に届くならば、これは状況が変わってきます。

それから、そう言っていてもかなり時間がかかるというのは、メキシコの例でもそうですが、一つ3月に大きなチャンスが参ります。日伯経済合同委員会でござ います。ぜひともこの日伯経済合同委員会を利用されて、日本とブラジルとの間でビジネス界での「日伯FTA研究会」を発足させて頂きたい。それが日本の中 だけではなくて、日本とブラジルのビジネス界との間で研究会ができた。それに日本政府の関係者を引っ張ってくる。いうことで、先ほど近藤部会長のおっ しゃったフックができると思いますね。そういう意味では、3月17日から予定されております日伯経済合同委員会は、このFTA締結に向けての動きを始める という意味でも重要だと思います。長くなりそうなので、ここで失礼します。大変ありがとうございました。勉強になりました。

 

司 会 ありがとうございました。それでは最後に田中会頭、閉会のご挨拶をお願いします。

 

会頭の閉会あいさつ

田中会頭 い ろいろ活発な意見が出まして、非常に有意義な会合であったという風に考えております。いまご指摘があったような問題点もいろいろあるわけですが、今後ます ます「こう言うものを出来るだけ改善して行こう、それで更にいいものにして行こう」と考えておりますので、お帰りのさいにはぜひ、そのアンケート調査用紙 にご記入の上、係員にお渡し頂くようお願いいたします。

最後になりますが、これからも、わが会議所は重要な問題を次々に積極的に取り上げて、会員のみなさんのお役に立つ会議所ということを心がけて行きたいと思いますので、なにとぞご協力をよろしくお願いいたします。どうも有難うございました。

 

司 会 長時間ありがとうございました。それでは、これを持ちまして、本日の部会長懇談会を終わります。有難うございました。

2002年下期業種別部会長懇談会-貿易部会

柳田貿易部会長

 

司会  非常に臨場感に富んだ、綿密なるご報告ありがとうございました。続きまして、貿易部会の柳田部会長にお願いします。

大幅な黒字記録するも貿易全体は縮小 ― 輸入減が主因

柳 田  ジエトロの柳田でございま す。 お手元の資料に沿ってご報告します。 昨年までは地域別、商品別に報告いたしましたが、今回はスタイルを変えて、貿易の増減の背景を中心に記述をし ております。 それは何故かと申しますと、今年の場合は、輸出入とも非常に大きく減少しているという事ででございます。 年間の報告を行います時に地域 別、商品別の分析を入れたいと思っております。

今年の1ー6月の貿易は、輸出が250億5200万ドル、輸入が224億4600万ド ルで、貿易収支は26億 600万ドルの黒字となりました。 これは95年以降、上半期の貿易収支としては最大の貿易黒字です。 ただ重要な点は、貿易額自体が縮小しているという ことです。 輸出額で見ますと、前年同期比で13.4%減、輸入額は同じく22.6%の減、貿易全体では前年同期比で18%の減となっています。 貿易黒 字そのものはリスク評価をする場合には好材料にもなりますが、輸出増加による貿易黒字ではないと言うことが非常に重要なポイントであろうかと思います。

すでにコンサルタント部会からも報告ありましたが、今年初め時点の景気見通しは、需要の回復と生産の拡大というの が一般的でした。 貿易収支も開発商工省の予測では50億ドルの黒字でした。 一方、景気の好転によって中間財の輸入が増えて、貿易収支は赤字基調になる という見方もありました。

こういった2つの見方があった訳ですが、今年度上半期の状況を見ますと、これらの予想とは若干異なった様相 を呈 しています。貿易収支黒字は、年初予想された水準に達する勢い、あるいはそれ以上の勢いを見せている訳ですが、貿易自体が大幅に縮小しています。 輸入の 大幅減少が貿易収支の黒字を創り出していると言うことです。

輸入減少の要因3点 - レアル安、税関スト、IT不況とアルゼンチン危機

輸出は、世界的な景気の後退により数量自体が減少しています。 さらに、コモ ディティー価格の低迷が大きく影響しています。  一方、輸入ですが、これは先ほどもご指摘がありましたとおり、大統領選挙の見通しが非常に不透明という ことで、リスク感の上昇が経済全体を萎縮させた点です。 2番目には税関のストライキです。 3番目は、外的要因として特に世界的なIT不況、それからア ルゼンチン経済の極度の不振による貿易の縮小ということかと思います。

輸入が大幅に減少した3点について、もう少し詳しく説明しま す。 コンサルタント部会の田中部会長からも報告あ りましたとおり、年初から3月ぐらいまではブラジルのカントリーリスクが低下をして、大統領選挙の投票意向調査でも当時、サルネイの人気が上昇しておりま したので、先行き安定感ということで為替も落ち着いていた訳ですが、その後、労働党のルーラの人気が上昇してきまして、やはり大統領選挙がブラジルのリス ク判断の重要なポイントとしてクローズアップされ始めました。 それ以降、レアルの切り下げ基調が定着をして、為替動向が産業界が熱望している金利の引下 げを実施することを困難にさせ、その結果、実体経済に影を落としているという状態です。

こうしたリスク上昇、レアル下落、金利高止ま りという流れが、少なくとも選挙が終わるまでは続くということで、 積極的な事業の拡張、展開を控える動きが広がっています。 CNIの景況感調査によりますと第1表のとおり、昨年の第2四半期と比較して今年の第2四半期 はかなり悪くなっています。

こうした景況感の悪化が、在庫状況あるいは直接投資の動きにも反映しています。 今年の第1四半期は比較的経済が安定していたので、在庫は若干の改善を見ましたが第2四半期には再び増加しています。

直接投資は、1ー6月で前年同期比3%減の96億ドルを記録しています。 しかし、これは内容的に見ますと、債 務の資本へのコンバージョンの割合が前年比で今年は非常に高くなっています。 こうしたコンバージョン、あるいは現物投資を除いた外国からのブラジルへの 投資は、実体的には58億ドル強に止まっており、前年同期比31%の減になっています。 ちなみに日本からの投資は今年上期、前年同期比24%減の16億 ドル弱となっています。

第2表の自社業績に関する評価ですが、これはおしなべてネガティブな評価となっています。 特に製薬業界だけ は、稼働率80%ということで比較的好調ですが、輸入部品に依存度の高い電気電子業界は特に悪く、それ以外の業界も、生産活動の低下が輸入増加の抑制に影 響していると言うことです。

輸入が減っている2番目の原因は税関のストライキの影響です。 これは4月に時限ストライキでスタートし て、6 月に無期限になって、それが如実に現れておりまして、6月は前年同期比で輸出が19%減、輸入が29%減。 数量ベースで見ますと、同じく46%減と 28%減となっています。 こういった税関のストライキが、部品の一部を輸入に頼る製造業に非常に大きく影響を与えています。 このストライキは7月に 入ってから緩和されましたが、時限ストライキは依然頻発しています。 従って今後とも、抜本的な解決がない限り、ブラジルの貿易はこのストの影響を受け続 けて行くのではないかという見通しです。

3番目は外的要因です。 これは2001年から続く世界的な商品貿易の減退、特にIT産業の失速に起因したもの、それからアルゼンチンの危機、この2点と言えます。
特に世界的なIT産業の失速を受けて同部門関連製品の貿易量の減少、それから同部品の単価下落で輸入金額が大幅に落ちています。 半導体の輸入は、前年同期比で29%減、通信関連機器を見ますと同じく31%減と非常に大きな落ち込みになっています。

もう一つ大きな外的要因はアルゼンチン危機です。 ブラジル経済全体に深刻な打撃を与ええないかも知れません が、やはりブラジルの貿易に一定の影響を及ぼしています。 特に自動車関連は、ツインプラントをベースにした相殺関税で成り立っていたアルゼンチンとの貿 易が、アルゼンチン市場が極端に収縮したことで、そうしたビジネスモデルが成り立たなくなってしまっています。 その結果、他の市場へ輸出を振り向けてい るというのが現状です。

アルゼンチンのペソがレアル以上に切り下がったことで、当初は対アルゼンチン貿易が、ブラジル側にとって有利 に なるかなという見通しもありましたが、現在のところ、アルゼンチンの金融部門の混乱、あるいはブラジルの輸出ファイナンスの停滞で、そうした動きにつな がっていません。 ということで、結果的にはアルゼンチン向け輸出が前年同期比66%減、輸入は28%の減になっています。

貿易黒字は1―8月に53億ドル超

今後の貿易動向のポイントですが、7、8月は、税関ストが緩和され、6月までの落ち込みの反動ということもあ り、貿易量、貿易金額、とも増加しています。 7月の輸出は前年同月比53%の増、輸入も前年同月比48%増と大幅に増加しています。 1-8月の累計で すと、貿易収支は53億7800万ドルの黒字と、すでに今年の当初見通しの50億ドルをオーバーしています。

7、8月は、もう一つ大 きな問題が発生しました。特に輸出ファイナンス欠乏の問題です。 これはセーラの人気下 降、ブラジルリスク上昇が背景にありますが、それによって為替が8月1日に1ドルが3レアルを超えてしまったことから、海外の金融機関がブラジルに対する 輸出ファイナンスを絞りはじめて、輸出ファイナンスの欠乏が起こって、輸出に悪影響を与えたということです。

8月7日にIMFとの300億ドルの融資協定が締結されて、若干落ち着きが出てその結果、輸出ファイナンスに関しても状況は徐々に緩和され、正常化する方向にはありますが、依然としてまだ今後の見通しには不透明感が残っていると思います。

アマラル大臣は「今年8月に貿易収支黒字は70億ドルになる<現在は90億ドルという見通しまで出ている>。  これは、輸出は世界経済後退の影響とコモディティー価格の低迷によって弱含みに推移するが、今年末までには前年比で4%ぐらいの減にまで回復する。一方、 輸入は回復せず、結局年末時点で前年比で12%減ぐらいになるのではないか」と発表しています。

ただ、こうした外的要因だけではな く、ブラジルの場合、特に消費者、あるいは生産者の景況感、心理というものが かなり影響を与えますので、この辺について簡単に触れさせて頂きますと、消費動向そのものは全体的に底固い。 銀行からの個人へのクレジットの推移もまず 安定的に推移しています。 耐久消費財を除いた一般の消費財、食品等の消費も非常に安定しています。 9月以降は製造業が年末商戦に備えて生産準備に入り ます。 年末に大きく消費が伸びる訳で、今年の年末商戦も比較的、安定的に推移するのではという見通しが出ていますが、こういったものの原材料はほとんど 国内で調達されますので、貿易にはあまり影響を与えないと思います。

景況感から見ますと、いま申し上げましたように、輸出はあまり伸びない。輸入は伸びる見通しがある訳ですが、伸びたとしても例年ほどの伸びは予想できないと思います。

次に為替レートとの関係という点で、競争力の変化あるいはもう一つ重要な点としてFTAを考えなければならない と思います。 簡単に申し上げますと、大統領選挙における野党候補当選の可能性の高まりで、ブラジル企業の海外起債による資金調達が厳しくなってきていま す。 一方、輸出ファイナンスが絞められ、国内金融市場へのドル流入が十分でなく、レアルが名目レートで弱含みに推移しており、この傾向は大統領選挙が終 わるまで続いていくだろうという点です。

ブラジルの輸出製品の収益率がどのように推移しているか、表4に出ているとおりですが、今 年6月の数字を見てお 分かりのとおり、年初の水準と比較すると、輸出収益率はかなり回復していると言えます。 6月時点を過去4年間と比較した場合、輸出メリットが非常に大き くなっていますが、残念ながら輸出ファイナンスの問題、あるいは世界景気低迷等でこうしたメリットをブラジルが十分に生かしきってない、こうしたチャンス が削がれてしまっていると言えるのではないかと思います。

メキシコとの補完協定が今後大きく影響する

主要輸出先 の為替レートの変動ですが、 表5を見て頂ければと思います。 せっ かく高い輸出収益率があるにも関わらず、レートの変動の結果、そのメリットが減じていることが分かるかと思います。 特にこの表にありますレアル対USド ル、レアル対ALADI、それから13カ国のバスケットの数字との比較を見て頂ければ一目瞭然ですが、ALADI諸国の切り下げ、特にアルゼンチンのペソ の切り下げが非常に大きく寄与しています。 米国との関係ですと、レアルは非常に有利になっておりますので、一番最後に付けてあります表で対米輸出は、米 国の事情ももちろん背景にありますが、ほかの国に比べてそんなに落ち込んでいない、ほとんど横ばいとなっています。

最後に、今年後半 の貿易見通しですが、為替メリットが対外要因でかなり相殺されている中、これを貿易政策がどの ように補っていけるかがポイントかと思います。 FTAの話を先ほど申し上げました中で一つ重要な点として、メキシコとの経済補完協定が7月に締結されま したが、これがこれから非常に大きく影響するのではないかと思います。 メキシコにおけるブラジル製品の関税引き下げが792品目に及んでおりまして、特 に自動車分野の貿易の拡大の可能性があります。 これが大きく伸びますと、ブラジルの貿易バランスがかなり変わって来るのではないかと思います。最後に付 けております表につきましては、ご参考頂ければと思います。  以上でございます。

 

貿易部会資料

表1.直前の6ヵ月と比較した評価(ポイント)

 

01年第2四半期

02年第1四半期

02年第2四半期

ブラジル経済

30.0

50.0

29.2

所属する業界

37.7

44.5

34.3

自社の業績

44.7

49.4

43.2

出所:CNI  (注)企業は0~100の範囲内で回答。50ポイント以上がポジテイブ。

 

表2. 第2四半期の活動水準(ポイント)

 

01年第2四半期

02年第1四半期

02年第2四半期

生産

49.2

45.5

48.0

利益

49.6

44.0

47.9

雇用

47.6

47.0

47.6

設備稼働率(%)

72

70

71

出所:CNI  (注)企業は0~100の範囲内で回答。50ポイント以上がポジテイブ。

 

表3.今後6ヵ月の各項目に対する評価(ポイント)

 

01年第2四半期

02年第1四半期

02年第2四半期

ブラジル経済

42.1

61.3

44.6

所属する業界

49.2

61.8

51.1

自社業績

57.3

67.4

58.7

利益

50.0

59.6

54.7

輸出

56.2

54.3

54.2

原材料購入

49.0

56.3

53.0

出所:CNI  ポイント評価については前掲表と同様

 

表4. 輸出収益指数(1994年=100)

 

輸出収益指数

1998年

99.8

1999年

116.4

2000年

107.2

2001年

118.1

2002年

 

1月

107.3

2月

108.8

3月

105.3

4月

105.2

5月

110.8

6月

120.9

出所:FUNCEX

 

表5.実質為替指数 (1994年=100)

 

レアル/US$

レアル/ALADI

レアル/13カ国通貨

1998年

99.4

102.1

95.5

1999年

134.5

132.5

126.8

2000年

121.4

118.5

109.6

2001年

139.5

132.3

123.1

2002年6月

142.9

87.5

115.7

出所:FUNCEX

l 往復貿易額の平均の全体比を基準にした配分(現在のウエイトは、米国35.6、日本7.0、ドイツ9.6、フランス4.9、イタリア      5.6、 オランダ4.6、英国3.8、ベルギー3.1、アルゼンチン16.3、ウルグアイ1.6、パラグアイ1.5、チリ3.0、メキシコ3.4)。

1994年のウエイトは1992年、93年の貿易動向をベースに、1999年のウエイトは1995年~1998年をベースに、2000年以降の

ウエイトは2000年をベースとしている。

 

貿易動向

① 品目別貿易動向(2002年1-6月)

<輸出>

分類

2002年

2001年

増減(%)

一次産品

6,251

7,427

-15.8

鉄鉱石及び精鉱
大豆豆
大豆粕
鶏肉
原油
タバコ葉
コーヒー豆
牛肉
豚肉
トウモロコシ

1,173
875
687
566
511
479
433
349
209
143

1,502
1,428
986
626
404
420
588
298
160
200

-21.9
-38.7
ー30.3
-9.6
26.5
14.0
-26.4
17.1
30.6
-28.5

半加工品

3,426

3,931

-12.8

銑・鋼半製品
皮革
セルローズ
アルミ地金
粗糖
木材
鉄鋼
銑鉄

494
436
412
384
311
270
188
178

453
437
718
414
477
256
210
179

9.1
-0.2
-42.6
-7.2
-34.8
5.5
-10.5
-1.7

加工製品

14,514

16,602

-12.6

航空機
通信機器
乗用車

車用エンジン
自動車部品
オレンジ果汁
精機
コンプレッサー
ガソリン
家具
燃料油
タイヤ
積層板

1,019
844
815
742
574
553
392
359
337
260
240
235
232
223
222

1,550
740
980
844
544
596
412
257
334
262
234
548
240
327
284

-34.3
14.1
-16.8
-12.1
5.5
-7.2
-4.9
39.7
0.9
-0.8
2.6
-57.1
-3.3
-31.8
-21.8

その他

861

967

-11

合計

25,052

28,927

ー13.4

出所:開発商工省

 

<輸入>       (FOB 100万ドル)

分類

2002年

2001年

増減(%)

資本財

5,712

7,714

-26

工業機械
精密機械及び部品
工業用資本部材
工業用アクセサリー
運搬用装置・機械
その他

2,058
1,142
592
474
337
1,109

2,287
1,411
949
514
498
2,055

-1.0
-19.1
-37.6
-7.8
-32.3
-46

原料及び中間財

11,163

14,530

-23.2

化学物質・薬品
輸送機器装置・アクセサリー
各種パーツ・部品
鉱物
うちナフサ
食品原料
畜産品(食品除く)
その他

3,584
1,752
1,791
1,506
316
808
799
923

4,044
2,361
2,645
2,597
887
818
1,051
1,014

-11.4
-25.8
-32.3
-42
-64.4
-1.2
-24
-9

消費財

2,853

3,736

-23.6

非耐久消費財
食品
薬品
美容関連製品
洋服及びその他繊維製品
飲料・タバコ
その他
耐久消費財
乗用車
個人用服飾品
家庭用製品・装置
耐久消費財オプション財
家具及びインテリア
その他

1,664
575
579
90
74
70
276
1,189
382
311
179
145
78
94

1,816
638
534
108
125
82
329
1,920
817
360
265
255
99
124

-8.4
-9.9
8.4
-16.7
-40.8
-14.6
-16.1
-38.1
-53.2
-13.6
-32.5
-43.1
-21.2
-24.2

燃料・潤滑油

2,718

3,018

-9.9

原油
その他

1,432
1,286

1,443
1,575

-0.8
-18.3

合計

22,446

28,998

-22.6

出所:商工開発省

 

② 国別貿易動向(1-6月)

<輸出>      2002年           2001年

国名

輸出額
FOB100万ドル

構成率
(%)

輸出額
FOB100万ドル

構成率
(%)

増減
(%)

米国
オランダ
ドイツ
メキシコ
アルゼンチン
日本
ベルギー・ルクセンブルグ
イタリア
英国
中国
その他

6,864
1,254
1,006
1,000
969
944
836

785
757
662
15.077

27.4
5.00
4.01
3.99
3.87
3.77
3.34

3.13
3.02
2.64
60.17

6,964
1,385
1,326
854
2,871
1,015
956

1,022
810
859
18,062

24.07
4.79
4.58
2.95
9.92
3.51
3.3

3.53
2.80
2.97
62.42

-1.43
-9.5
-24.15
17.09
-66.24
-6.91
-12.58

-23.15
-6.61
-22.85
-7.57

合計

25,052

100.00

28,927

100.00

-13.39

出所:開発商工省

 

<輸入>       2002年          2001年

国名

輸入額
FOB100万ドル

構成率(%)

輸入額
FOB100万ドル

構成率(%)

増減(%)

米国
アルゼンチン
ドイツ
日本
フランス
イタリア
中国
ナイジエリア
英国
韓国
スペイン
その他

5,002
2,450
2,089
1,158
882
873
639
632
604
544
492
7,713

22.28
10.92
9.31
5.16
3.93
3.89
2.85
2.82
2.69
2.42
2.19
34.36

6,645
3,388
2.434
1,685
1,056
1,233
626
579
615
916
673
9.729

22.91
11.69
8.4
5.81
3.64
4.25
2.16
2
2.12
3.16
2.32
33.54

-24.73
-27.69
-14.20
-31.32
-16.45
-29.21
2.03
9.14
-1.76
-40.63
-26.8
-20.72

合計

22,446

102.82

28,998

102.00

-22.59

 

対日貿易(2002年1-6月)   輸出FOB US$

 

2002年

2001年

増減(%)

鉄鉱石
アルミ地金
鶏肉
鉄鋼
オレンジ果汁
コーヒー豆
木材パルプ
大豆
タバコ葉
トウモロコシ
その他

169,955,407
126,797,815
107,561,414
54,069,693
39,647,947
38,332,333
37,974,755
31,901,254
31,634,096
28,717,453
278,121,688

224,806,658
145,170,562
59,308,725
55,841,612
36,768,305
57,943,778
85,486,632
67,315,040
31,221,610
9,446,765
241,543,041

-24.4
-12.66
81.36
-3.17
7.83
-33,85
-55.58
-52.61
1.32
203.99
15.14

合計

944,713,855

1,014,852,728

-6.91

出所:開発商工省

 

対日貿易(2002年1-6月)  輸入(FOB US$)

 

2002年

2001年

増減 (%)

自動車部品
半導体
乗用車
ベアリング
自動車用エンジン
コンピューター
コンプレッサー
同部品
通信機器パーツ
検査機器
その他

61,359,710
53,455,597
47,281,792
47,179,214
44,365,813
42,511,123
37,331,236
30,159,602
29,444,059
26,861,190
737,680,805

81,770,416
99,949,151
80,915,869
64,657,175
52,595,679
20,980,311
35,387,851
37,360,001
59,326,063
42,491,274
1,110,018,370

-24.96
-46.52
-41.57
-27.03
-15.65
102,62
5.49
-19.27
-50.37
-36.78
-33.54

合計

1,157,630,141

1,685,452,160

-31.32

 

対中貿易(2002年1-6月) 輸出   FOB US$

 

2002年

2001年

増減(%)

鉄鉱石
大豆
皮革
木材チップ
木材板
自動車部品
鉄鋼半製品
乗用車
自動車用エンジン
発電機・変圧器
その他

211,592,438
101,659,471
38,758,668
37,566,003
27,286,469
24,290,452
19,989,895
18,112,940
14,710,570
12,043,018
156,413,372

222,019,193
284,912,745
21,907,179
46,919,876
15,073,904
11,996,417
8,541,289
34,611,892
10,171,410
4,147,066
198,281,332

-4.7
-64.32
76.92
-19.94
81,02
102.48
134.04
-47.67
44.63
190.4
-21,12

合計

662,423,296

858,582,303

-22.85

 

対中貿易(2002年1-6月)  輸入  FOB  US$

 

2002年

2001年

増減(%)

通信機器部品
石炭
コークス
複素環化合物
コンピューター
LCD
ラジカセ部品
変圧器
コンピューター部品
燃料油
その他

48,065,893
32,297,866
30,845,549
28,952,031
25,904,809
18,305,597
17,584,849
17,090,459
16,818,715
16,077,668
387,165,970

39,028,345
9,057,805
40,925,425
27,598,144
25,906,536
9,037,248
10,816,135
16,731,106
22,680,542
0
424,637,715

23.16
256.57
-24.63
4.91
-0.01
102.56
62.58
2.15
-25.85

-8.82

合計

639,109,406

626,419,001

2.03

出所:開発商工省

 

対米貿易(2002年1-6月) 輸出  FOB US$

 

2002年

2001年

増減 (%)

航空機
携帯端末

乗用車
自動車用エンジン
自動車部品
鉄鋼半製品
コンプレッサー
ガソリン
銑鉄
その他

792,202,068
611,984,307
507,867,244
253,917,570
209,444,246
193,890,840
174,596,005
163,576,181
145,497,350
141,529,482
3,669,458,795

932,839,885
459,836,667
565,858,875
283,837,884
116,374,656
163,829,038
128,822,197
127,366,194
225,511,538
143,173,755
3,816,273,378

-15.08
33.09
-10.25
-10.54
79.97
18.35
35.53
28.43
-35,48
-1.15
-3,85

合計

6,863,964,088

6,963,724,067

-1.43

 

対米貿易(2002年1-6月)  輸入  FOB US$

 

2002年

2001年

増減 %

発電・変圧器
航空機用エンジン・タービン
集積回路
分析検査機器
コンピューター
医薬品
コンプレッサー
自動車部品
軸受けギア
携帯端末部品
その他

424,670,777
335,781,274
176,156,233
153,820,671
146,893,468
124,754,471 101,009,089
87,084,601
83,931,566
83,033,291 3,284,527,963

256,742,063
528,032,182
311,702,497
192,183,501
268,064,398
102,559,404
99,685,959
116,352,837
94,965,717
185,499,635
4,488,830,744

65.41
-36.41
-43.49
-19.96
-45.2
21.64
1.33
-25.15
-11.62
-55.24
-26.83

合計

5,001,663,404

6,644,618,937

-24.73

出所:開発商工省

2002年下期業種別部会長懇談会-電気電子部会


北野部会長代理の平田事務局長 

平田  代読させていただきます。

電気電子部会は、業界別に家電および耐久消費材、部品、通信電力産業、精密事務機器輸入販売の4分会に分けて報告します。

第一分会「家電および耐久消費財」

上期の回顧 - 販売伸び悩むが利益計画達成

昨年上期は電力不足の問題で、途中から急速に落ち込んだが、今年上期の家電業界はおおむね計画通りを達成し、堅調だった。   製品別にはDVDとフ ラット画面テレビが伸び、他製品は節電の影響で悪かった昨年を下回っている。 プロ用音響市場は年初から冷え込みが続きマイナス成長となり、カーオーディ オも自動車販売の不調で不振だった。 有利子負債の圧縮や不良在庫の処分など、財務健全化とリストラを進め、販売は伸びなかったが、利益計画は達成されて いる。
各社平均の上期実績は、レアルベースでは昨年を上回っているが、USドルベースの対前年同期比は91%となった。

下期の展望 - 下期販売は若干の減予想

大統領選を巡る政治経済の環境変化への懸念は強いが、年初計画の達成を目指していく。 市況低迷が続き苦戦が予想されるが、為替さえ安定すれば、新製品 導入で上向くことが期待でき、販売確保により利益計画を守ることが課題となる。 各社平均の下期販売予想は、前年同期比で97%が見込まれている。

第2分会「部品」

上期の回顧 - ドルベースで販売大幅減 

販売単価の下落が大きく数量ベースでは増えているが、販売金額は大幅に低下した。 市場の伸びが止まっている中で価格低下が激しく、レアルベースの売り 上げ高は伸びているが、USドルベースは大幅減となった。 電子部品のブラジル市場は世界の5%と想定されるが、セルラー電話器メーカーのグローバル調達 など、そのほとんどがノックダウン部品として輸入されていて、電子部品の販売環境が極めて厳しくなっている中で善戦した。 上期実績は、ドルベースの前年 同期比で平均83%となった。

下期の展望 - 課題は潜在需要発掘や為替変動への対応

従来からの傾向として売り上げ は下期に上昇するが、次期大統領に対する不安から経済活動が萎縮していて、予断は許されない状況にあり、マーケット開拓の生産拡大に踏み切れないでいる。  通信系セットメーカーは過剰在庫に苦しんでいる模様で期待できず、セキュリティー関係のカーエレクトロニクスなど潜在需要の発掘や為替変動への対応が課 題となる。 下期の販売予想は前年同期比の各社平均で110%が見込まれている。

第3分会「通信・電力・産業」

上期の回顧 - 料金不払い、資金調達困難たたる

通信民営化後の設備拡大が急速すぎた反動で、ANATEL規程の見直しによる投資抑制の影響を大きく受けた。 オペレーターに回線数の倍増を強いたが、 低所得者層が新設固定電話の客となり、通信量は少なく不払いが増加したことに加え、為替変動が外貨で資金調達をしているオペレーターの資金繰りを悪化させ ている。 業務用空調機器も節電マインドの定着と景気後退から、需要が低迷していて市場規模が20%ダウンした。 市場規模の急速な縮小への対応に苦慮さ せられ、サバイバルのためにリストラ加速の経営に転換せざるをえず、上期販売実績各社平均は前年上期の45%と大きく落ち込んでいる。

下期の展望 - 下期大幅減見込み

通信関係の投資再開の見込みは全く見えていない。 電力の基幹送電網の建設投資は継続するが、配電関係の需要は電力会社の資金難から低迷する。 市場変 化に対応し、余剰設備の処分、人員削減、組織・人材・機能の見直し、借入金圧縮など、引き続き経営基盤の軽量化と改善、ならびにソリューション事業の着実 な立ち上げが課題となる。 下期の販売見込みは前年同期の59%が見込まれている。

第4分会「精密・事務機・輸入販売」

(アンケート回収と部会出欠の関係から、事務機業界のみを対象としている)

上期の回顧 - 税関ストがKD生産に影響

中古品再生ビジネスも加わって事務機器は5月ごろまで順調だったが、工業用ミシンの落ち込みは大きかった。 増資による財務体質の改善やITシステムの 強化にも取り組まれている。 税関スト等による輸入通関の遅れから、一部では現地KD生産に影響を受けた。 昨年同期比の上期実績はドルベースで平均 106%となった。

下期の展望 - 販売投資効率化が課題

事務機器の販売堅調は継続するものと見込まれるが、為替変動のコストへの影響が課題で、採算性の悪化が懸念される。 広告宣伝費など、販売投資の効率化が下期の課題となる。 前年同期比の販売見込みは、ドルベース各社平均で120%が見込まれている。

以上でございます

2002年下期業種別部会長懇談会-繊維部会


名取部会長代理の木口社長

原綿状況と綿糸の販売に関して

木口  繊維部会長の名取に代わって報告させて頂きます。
繊維部会は、15のメインメンバーと、新たに加わった6つのサブメンバーから成っております。 その中身と言いますと、綿糸、綿紡、羊毛紡績、絹紡、化合繊紡それから織物、それと一部製品が入っております。 割合多岐にわたっておるわけで、その中で資料の方は殆どそれらをまとめておりますが、時間の関係で、この繊維部会の中の主要メンバーは8社、綿紡でござい ますので、そういう関係でブラジル原綿の状況と、それから綿糸販売について報告致します。

原綿は今年減で推定70万トン生産

まずブラジル原綿ですが、皆さんご存知だと思うんですけども、ブラジルは世界主要の原綿の生産国であったが、90年に入ってから減少し始め、97年には一 時半減しております。 それが98年から去年2001年まで、平均で毎年30%以上の増産をしてきて、その増産の殆どはマットグロッソ州です。
けれども、今年、2002年の状況は全くの様変わりで、去年の生産量94万トンに対して、今年は80万トンの生産予想を立てておりました。この14%の生 産減は、植え付け面積が14%減ったということです。 と言いますのは、去年の原綿相場は(ニューヨーク定期を中心とした相場ですけれども)、市場最低の 値段をつけまして、それとブラジルの綿作業者は天候によって品質が悪いということで採算が悪化しました。

その反面、大豆は世界的に相場 が上がって、この14%が原綿から大豆へ移行したのだろうと、そういう風に見られております。ここにきてアメリカの干ばつもあり、大豆相場が非常に上がっ ています。 ブラジルの輸出大豆は日本にもかなり出ているが、現在もかなり高い相場で移行しております。
14%の植え付け面積減で始まったわけですが、原綿の収穫期に雨が降りますと、非常に品質不良になり、全く天候に左右されるわけですが、この過去3年間ぐらいはあまり大きな品質不良はなかった。
原綿は植え付けて、花が咲いて、実がなるわけですが、実がなり、それが開いてあの白い綿になるわけで、この時に雨が降ると、虫が発生し、それから腐ったり、品質低下が起こるわけです。

ブラジルの場合は、4月ぐらいから綿花の摘み取りが始まります。 サンパウロ州から始まるわけで、サンパウロ州は今年、それほど悪影響を受けずまずまず の収穫が出来たが、6月後半から一番主要なマットグロッソへ移り、ここで天候異変のため非常に品質不良と生産の落ち込みが起こりました。 ブラジル全体で この生産の落ち込みが大体20%です。 従いまして、当初予想80万トンの生産が、70万トンぐらいまで落ち込んだと見られます。そうしますと、トータル で去年から比べますと、25%も落ち込んだ状況になります。品質不良ですから、上級綿が非常に少なくなっております。

次に原綿の相場 ですが、2月ぐらいが一番品不足になって、3月の後半ぐらいから新綿が出るわけで、この時に1ポンドあたり100センターボの値段がついておりました。  それからサンパウロ州で収穫されて、割合このぐらいの値段で移行してたんですが、先ほど言いましたマットグロッソで思うように収穫されずに生産が落ち込 み、ニューヨークの定期相場も上がりました。 それからご存知のようにドル高、レアル安ということで、綿栽培業者は輸出の方へ走ったわけです。今年は70 万トンのうち、12、3万トンは輸出に持っていかれるだろうと予測しております。

原綿相場50%高騰

大体、元々ブラジルの綿は、レアルベースで商売動いてたんですが、輸出が出始めますとドルの相場になるわけですね。 ここへ来て、ずっとドルが上がっ て、綿の相場も上がってきております。それで7月末時点で119センターボになりまして、20%以上の値上げが起こっております。
一方、原綿 の消費が当初86万トンと見られておったんですが、原綿の不足と、それから値が上がったということで、現在80万トンぐらいの消費と見られております。  原綿の消費について我々紡績筋は、昨年末まで比較的順調な綿糸売りで移行してきましたので、ある程度の水準を予想してきたけれども、年度が変わり、アルゼ ンチンの経済危機の影響を受けて、特にブラジルのニッタ-さん、 アルゼンチンの輸出先から回収不能というような影響も受けて、非常に低調で生産縮小が起 こったり、暖冬の冬物の売れ行きの不振、それと消費者の買い控えが起こって、3月以降各社、糸の在庫が増えて、販売に非常に苦心していたという状況が続い ております。
急激な原綿の値上げで、綿糸の値段も少しずつ上げて行こうとしたが、先ほど言いました需要停滞で7、8%値段の方も逆に下がって きておりました。 そんな状況から綿の消費が80万トン切るんじゃないかと言われております。 それからここに来て、8月の半ばぐらいから現在まで、綿花 相場が140センターボから今ではもう150センターボと言われていますので、50%ぐらい値上げしたというような状況になっています。

綿糸需要落ち込む、価格も

次に糸の販売状況。原綿と同じような動きするけども、本年の上期の初めは、、先ほど言いましたように割合良好だったが、上期はほとんどカーニバルまでは思 うような販売ができなくて、カーニバルの後、寒くなってくると、実需がついてくると、いうのが繊維の状況ですけども、やや弱含みで始まり、冬物の生産が始 まる2月から、綿糸の需要がさらに落ち込んできました。それで各社、持ち越しの在庫とか、先ほどの暖冬の見通しから、大手アパレルが生産調整、フェーリア スを先にとったりで、非常に苦しい状況が続いていました。

その影響も受けて綿糸相場が6から7%下がって、先ほど言いました原綿の相場が上がったので、各ニッタ-さん、機屋さんがこれで綿糸も上がる、と先物手当てをしているのが現状です。
7月までは、紡績メーカーは20日から1ヵ月以上の在庫を持って ― 1ヵ月以上といいますと、我々にとっては非常に異常な在庫で、 大体10日から 2週間、月の半分ぐらいの在庫を持ってうまく回っているのが普通で ― 1ヵ月を超える在庫があったが、先物手当てをし出して現在ほとんど、我々紡績メー カーに在庫はありません。遅れ馳せながら出たわけです。

原綿の在庫薄、輸入綿頼りは採算悪化

この下期どうなるかですけれど、ここへ来て9月、殆どいま紡績は在庫を持っておりません。需給バランスが好転すると思うけれども、 なかなか先の環境 は、非常に予想は難しいと思います。 一つには、ブラジル経済の不安定要因で一般の衣料品市況も大幅な改善は 見込めないだろう。 2番目は原綿価格の急 上昇で、我々の採算を悪化させる、いわゆる“原料高の製品安”と言うことと、糸値の相場の混乱を招くということですね。

それから、天 候がまだ少し寒くなったりということ続いていますが、小売店は一時夏物を出し、それをまた入れ替えたり、というようなことが続いております。 そういうこ とで、スムーズに販売・消費が進んでなく、またドル高の影響を受けて資金繰りの圧迫が起こるんじゃないか、と今後年末までにかなりの懸念が予想されます。  それから順調に消費が進んで、生産が進んだとしても、先ほど申し上げたように原綿の実在庫がないわけですから、これを売り惜しみをして、値段が上がるの を待っていることもあり、また全体量の不足から輸入綿を使用せざるを得ない、ということもあります。 先物を手当てしてないとそう言うことも起こります。  そうすると、いまのレアルベースでは高い綿を使うという事になり、紡績筋の採算悪化が懸念されると言うようなところです。

 

繊維部会資料

国内綿の生産量(1000t)

ESTADOS

01/02

00/01

São Paulo

57.7 60.0

Paraná

31.4 58.2

Minas Gerais

30.4 29.4

Goias

103.5 113.3

Mato Grosso

426.8 533.9

Mato Grosso do Sul

62.9 66.5

小計

712.7 861.3

Bahia

69.4 61.4

Norte/Nordeste

22.5 16.1

合計

804.6 938.8

註:CONAB資料(2002/5)

2002年の原綿需給予測(1000t)  I     II

期初在庫国内生産  
輸入
198.5
770.1
120.0
200.0
700.0
100.0

供給合計

1,088.6 1,000.0

消費
輸出

860.0
100.0
800.0
120.0

期末在庫

128.6 80.0

I) CONAB資料(2002/2/26)II)業界

綿花相場

R$C

01/12

02/01

02/02

02/03

02/04

02/05

02/06

88.29

96.97

100.08

97.21

97.42

97.49

98.56

 2.綿糸(国内)

上期の回顧

上期綿糸市況
やや弱含みでスタート。 各機関の楽観的経済予測、節電政策終了などから前年並み、もしくはそれ以上での推移期待だったが、冬物生産開始の2月後半から綿糸の需要は、特に我々の主要販売地区のサンタ・カタリーナを中心にコーマー糸が大幅に落ち込んだ。
4月に入り、昨年の冬物商戦の持越在庫と暖冬の見通しから大手アパレルは生産調整を開始。 例年4-6月に比較的引き合いの多いカード糸も期待を裏切ら れ、コーマー糸と共に需要が落ち込んだ。 低迷を続ける国内綿糸市況打開に紡績各社は輸出の成約に注力したものの、在庫は徐々に増加、綿糸相場は年初より 段階的に6-7%程度下落。
一般衣料品の商況も夏物は年初から低調続き、バーゲンセールも盛り上がりを欠いた。 ただ長びく暖冬のおかげで製品在庫調整は一応の目途はついたと思われるが、冬物の商況は昨年より不調に終わる予想で、今後各段階で資金繰り悪化懸念。

下期の展望
シーズンインの下半期に市況回復を期待。
8月に入り、秋冬商戦不調から春夏物への期待感強まり、備蓄段階での需要マインドい。 上期膨張の紡績在庫の調整徐々に進む。ドル高は輸入品流入を大幅 に制限、当分は需給バランス好転を背景に、上期落ち込み相場の回復と更なる価格アップを図るタイミングでもある。 しかしながら本年下期の紡績経済環境は 近年とは違い、厳しくなる可能性強い。 すなわち、

1) ブラジル経済は不安定要因多く、一般の衣料品市況も現時点では大幅改善は見込めず。
2) 原綿価格急速に上昇、我々の採算悪化以外に、綿糸相場の混乱を招く可能性あり。
3) 秋冬商戦における小売不振と現在のドル高は各流通段階で資金繰りを圧迫、さらにそれぞれの段階で”原料高の製品安”懸念。
本年の繊維業界は近年とは違った動きをしており、綿糸市況も楽観的な予想は難しく極めて不透明。

3.綿糸(輸出)

上期の回顧

輸出実績
2000年(1-12月)17,699t     49,601千ドル
2001年(1-12月)16,993t     39,765千ドル
2001年(1-06月) 7,316t(100)   18,217千ドル(100)
2002年(1-06月)11,095t(152)   23,737千ドル(130) 

上期綿糸輸出は、国内市況低迷から各社共に輸出ドライブを掛け、昨年同期比大幅な伸び(上記表)。 4月まではレアル高で飢餓輸出的色合い濃く、成約状況 も冴えなかったが、レアル安に転じた5月以降はむしろ採算的には国内向けより優位になり商談活発化。 仕向地は従来の北米・中南米(亜国を除く)の他、ス ペイン・ポルトガル・ギリシャ等の欧州向け増加。

下期の展望
国内市況回復兆候だが、シーズン要因によるところ大きく、依然、先行き不透明のため、各社の輸出指向は継続見込み。
不安材料は①米国経済の低迷②インド・パキスタン糸の荷余りに安値売り攻勢。
ここに来て支払いに若干不安のある亜国から引き合い徐々に増え、為替が現状水準維持ならば、下期も輸出は堅調に推移予想。

4.綿糸(太番手)

上期の回顧

(1)ニット関係
ワールドカップや選挙の年の好況予想は期待外れに終わっている。
要因は次の通り。

○前年の冬物販売不調による在庫持ち越し。
経済危機の影響でテキスタイル輸出の25%を占める対アルゼンチン向けなくなり、 
の在庫滞留と支払い遅延による信用不安増加わる。

○電力制限が2月まで続いた。

○公共料金の上昇による消費者の購買意欲の低下。
(レアルプラン8年間のインフレ率は、都市ガス117.7、家賃382、固定電話代381、バス代250.2、電気代227.3、地下鉄225、ガソリン211.2各%等が特に目立っ。)

○平均気温上昇。5,6月の気温は観測史上59年来の高温。

この結果、販売不調、小売在庫増加。 冬物バーゲンを早めたが効果なし。 販売面以外に原価高騰顕著、特に原綿、電力料大幅アップ。

(2)布帛関係
ニットと同要因が挙げられる。 気温の影響はないが、原価上昇重なり、更に悪い結果に。 特に自動車販売の不調が影響した産業用や、シャッ地、ジーンズ、病院用、インテリア用など。
アルゼンチン向け輸出壊滅状態だが、ファッション性の強いものは例外であった。

下期の展望
(1)ニット関係
全般的に改善見られない見通し。その理由:

○暖冬のため、小売不調で冬物在庫積み上がる懸念。

○販売不振による、支払面での信用不安懸念。

〇国内原綿生産低下とレアル安による輸出増加が価格高騰を招き、原価アップを来たす。

○輸出実績なく、太番手は原綿高騰の影響大で価格的に不利。

〇期待された政府によるFGTS還付金は小額で、消費者の購買意欲を刺激するには力不
足。

(2)布帛関係
国内綿の需給バランス崩れから、下期にその影響が顕著。綿糸供給も減って上期同様、
全般的に低調予想。
自動車や他産業の回復期待薄から、産業用も落ち込み予想。
他方、ファッション性の強いものは上期同様順調、レアル安が強まれば、輸出に期待。

5.ウール織糸及び横編ニット原糸の状況

2002年の年明けは、アルゼンチン危機波及回避の安堵、マクロ経済の堅実な先行きが語られる中、ウール織糸・横編原糸共に前年末の低調な市況のまま推 移。 2月カーニバル前後からニット糸が活況を取り戻し、3・4月は前年・前々年のペースに戻るかに見えたものの、小売市況は期待ほど回復せず、5月以降 のレアル安に直面。
1年前過熱気味のブラジル横編業界は成長が鈍化、かつ設備投資過多の傾向だったが、暖冬とレアル安は中小企業の集団産地、 特に新興産地を直撃、生産量低下と信用不安を引き起こした。 昨年大量の編機をブラジルに船積した日本・イタリアの機械メーカーは一部産地において代金未 入の編機を回収にかかっている。

現在ブラジルの、横編み染め糸を主力商品とする日本資本紡績メーカーは1社のみで、競合他社はブラジ ル、またはヨーロッパ資本の企業。 漸増原料コストの売値転嫁が思うに任せず、”原料高製品安”の傾向にあり、巨額の販売高を誇る大手ほどこの点に苦しん でいる。 ウール中心の梳毛織糸は衣料用織物原料としての需要はブラジルにおいて減少久しく、官公庁制服類・シャツ等軽衣料向け・輸出に限定され、その他 は椅子張りなど室内装飾用途に転じている。 いずれも輸入原料が大で値上げ交渉の最中にあり、かつコストに占める原料比率が高い、ウール原料の世界的高騰 もあって輸出が加速されないことが悩み。

下期も2ヵ月を経過しようとしている現在、極端な改善は期待しがたいが横編ニット衣料がブラ ジルの生活環境・気候・体型・ファッション的志向に極めて適合した服種であり、今後もおしゃれの中心である事に変わりはなかろう。 また短いリードタイム で回転する業種であり遠隔地からの輸入品の脅威も少ない。 従い消費市況の回復期待と共に中低価格ヒット商品の創出が鍵となろう。
またウール糸については世界的な原料高騰から比較的安価な南米羊毛に注目する動きはあり、日本においても中国品と比較のテーブルに乗り始めてはいる。

6.絹業界

01/02農年期の養蚕動向

ブラジル全体の生繭生産量は、00/01農年期9,916トンが01/02農年期には10,235トンと3.25%の増加。 中小農家にとって他作物より養蚕が比較的優位なのが増加の理由。 製糸3社の操業に必要な原料繭は概ね確保できた。
産地州別シェアでは、パラナ89.4%を筆頭に、サンパウロ5.4%、マットグロッソ5.0%、サンタ・カタリーナ0.2%、ミナスジェライス 0.0%。パラナの一極集中化は相変わらずだが、マットグロッソが前年比110%と伸びており、この増加傾向はしばらく続くと予測。

2002年の製糸業界見通し

販売数量の80%強が輸出依存のブラジル製糸経営は、海外市場動向や貿易為替の変動はもとより、世界の絹業界をリードし価格決定権を握る競争相手国の中国の動向に多大な影響を受ける。
最大生産国の中国における原料繭並びに生糸・撚糸の供給過多、それに起因する単価下落、ブラジル生糸・撚糸の最大消費国日本の長引く経済不振による絹需要減退がブラジル製糸経営の大きな悪化要因をなす。
特に、世界的な需給バランス失墜に起因する輸出単価下落著しく、2002年上半期は販売数量では 昨年同期比104.7%と増加だが、販売価格は逆に昨 年同期比82.5%と大きく下落。 この傾向は今年一杯継続推測で、今後の為替動向いかんにもよるが、本年度は大変苦しい製糸経営を余儀なくされそうであ る。

7.化合繊(短)

上期の回顧

今年1月の繊維部会の「上期展望」では楽観見通しを述べ、年初の対本社レポートでも、経済情勢について下記報告した。 ( )内は2001年度。

A)中央銀行の2002年予想は全般的に楽観視。

B)貿易黒字50億ドル(20億ドル)、GDPは2.4%、基準金利は17%にまで下がる、インフレ率も4.8%(7.4%)に下がる。

C)為替も、01年12月末は多少レアル高過ぎるので、対ドル2.6レアルか。インフレ率も4.8%に下がる(7.4%)。

D)大統領選挙の年でもあり、経済情勢は一般的に好転する。

E)しかし、終わってみないとなんともいえない国情ゆえ安心できない。

現状は、唯一貿易黒字のみ達成の可能性があり、その他は全て異変が生じているのが現状。
ポリエステル国内原綿建値は依然ドル建て。 上期多少の値下げはあったが、レアル安(上期で12%強切り下げ)で実質的には大幅な値上げとなった。
レーヨン綿は、そう値段は変わっていないが、原料コストは着実に上昇している。
販売面は、大統領選挙での本命与党候補の人気低下による市場全体の不安感、業界でいえば、5、6月に売れるべき冬物が暖冬影響で不振。 全体的には冴えない上期だった。
本来、レアル安で繊維全体の輸入が抑えられ、追い風となるべきが、市況の低迷がそれを上回っている感がある。

下期の展望

7月は1ヵ月で20%強のレアル安が進行。また、IMFからの300億 ドルの与信供与は決定したものの、一向に明るい見通しはない。
ポリエステル原料のPTA価格などが、4月頃からアジア向け中心に値上げ傾向にあり、上昇に一服感。国内ポリ原綿はドル建てとあって大きな値上げは抑えられてきたが、下期からは建値自体が上昇予想。 レーヨン綿についても、下期の価格動向は要注目。

販売は、上期以上に厳しい情勢が続く予想。 原料コストアップ、綿糸価格の値上げなどで化合繊(短)業界も値上げを行うべき情勢ながら、各社事情にもよるが不透明な状態ではなかろうか。
底の浅いブラジル経済を露呈させた年で終わりそうな予感。新大統領が、国内もさることながら、海外に向け政局運営の自信とその裏づけを見せぬ限りブラジルの信用は取り戻せないところまで来ていると言える。

8.「薄地織物」

前半の回顧

昨年末の小売好調を受けて、年初の在庫補充販売を期待したが意外と出足悪く、縫製業者は早々に冬物生産へ切り替え。 年初から”アルゼンチン効果”が繊 維業界に大きくのしかかり、特にニッター、厚地織物メーカーに多大な損害。 薄地分野にも影響少なくなく繊維業界全般に景気悪化をもたらした。
寒気の到来遅く冬物の引き取り遅れ、縫製業者は夏物生産開始前に一時休業の会社も出た。
業界の販売状況は対昨年比-15%と推定。
価格は昨年中のコストアップを吸収するため、一部企業で5%~7%程度の値上げ実施。

後半の予想

前半は不景気感強く苦戦。アルゼンチン影響も是正され、後半に入り業界の雰囲気も徐々に年末販売に期待感を持ち始めた。 ドル高による輸入コスト急上昇 で原料、製品ともに輸入品の激減は必至で、業界の需給関係は更なる改善期待。 業界最大手の SAN-TISTA が薄地織物に参入、今後の競合状況は予 測出来ず。
輸入原料コストアップによる製品コストアップは厳然たる事実であるが、売値への転嫁は後半の荷動き次第。