2002年下期業種別部会長懇談会-食品部会


渡辺部会長

司会   やはり、臨場感に富んだお話、ありがとうございました。続きまして食品部会の渡辺部会長にお願い致します。

渡 辺 食品部会の渡辺でございます。 食品部会はメインのメンバーが 17社ありまして、レストラン、それから加工食品。加工食品は具体的に言いますと飲料、麺類、調味料、そのほかに農産物、特にコーヒーのメンバーが所属し ております。 それぞれ業種別の動向につきましてはレポートで報告をしますので、後でお読み頂くことにして、きょうは、「上半期の回顧と下半期の展望」と いうことで、ちょっと目立ったポイントを6つに絞ってご報告させて頂きたいと思います。

メーカー間競争激化

まず最初のポイント、1つ目ですが、これは業界全体の動向で、業界全体としては引き続き堅調であると、いうことでございます。 経済全体は決して良くな いけども、こういう言い方をすると、伊藤さんの業界に怒られるかもしれないですが、こういう時期はやはり、消費者は耐久材から買い控えを始めるということ で、デイリーの食品に回す金はどうも減っていないようです。
レアルベースの売上高は前年比にしますと、各社概ね前年プラス。 3割弱の伸びが 2社ありました。ただし、こういう状況の中ですが、同業他社との競争は非常に激化しております。 今まで日系食品メーカーの共通のライバルといいますか、 世界最大の食品メーカーと言われるネッスル社が、ブラジルにおいても我々の前に立ちはだかっていたわけですけれども、こうした大手のほかにですね、ブラジ ルの中堅メーカーもかなり激しく追い上げているという状況でございます。

スーパーのバイイングパワー強大化

2つ目のポイントですが、スーパーマーケットとの取り引きが依然、非常に厳しい条件にあるということです。 食品業界の主戦場は相変わらずスーパーマー ケットでございます。 しかし、このスーパーの大手の集約化が今年も進みまして、例えば上期には「ポン・デ・アスーカル」が「セー」を買収するとか、大手 スーパーマーケットのバイイングパワーがいよいよ強くなってきている。 ということで、取引条件もそれにつられて厳しくなっている状況であります。
あるメーカーが既存の商品拡売のためにテレビコマーシャルを入れたところ、その分売り上げは伸びたけれども、どこで伸びたか分析するとスーパーで伸びて いる。 高いお金を掛けてTVコマーシャルを入れて、一番儲からない市場で売り上げが伸びる。 しばらくは新商品以外、TVコマーシャルを入れないという 話をしておりました。

超金持ち層の輸入品指向にかげり
一流レストランでも売上減

3つ目のポイントとしまして、輸入品指向が崩れ始めている。別の言い方をしますと、超金持ち層の消費動向に変化が見られているという事です。 ブラジル における超金持ち層というのは、要するにいくら高くてもいいものを、という。 去年辺りまでこういった輸入品崇拝信仰があったような感じがいたしました が、今年に入って5月ぐらいからドルがどんどん上がってきて高止まりをしている状況に置いて、この傾向に陰りが出始めました。
具体的に言いま すと、サンパウロの超高級スーパーと言われる「サンタマリア」、「サンタルチア」ですとか、ほとんど輸入品を主力で扱っているスーパーマーケットの売り上 げが伸び悩むというような記事も新聞に出ておりましたし、実際店頭を見ますと、かなり国産品も並んでいるという状況になっております。 また、有名一流レ ストランといわれる所ですが、昨年までいくら景気が悪くてもいつ行っても満員という状況が続いていたわけですが、本年に入りこうした一流有名レストランで もやはり2割程度の来客減という報告があります。  こうしたところでも、超金持ち層の消費動向に変化が見られるということであります。

要冷蔵商品の苦戦続く

4つ目のポイントですが、冷蔵庫の使用が節約されたまま、従って要冷蔵商品の苦戦が続いているということであります。 これは、昨年の節電の時に節約す れば何とかやっていけるということが、みんな分かってしまった。 さらに今年になって電気代がドンドン上がってきている。 これが追い打ちをかけて、要す るに節電前の状況に完全に戻ってこないのです。 ということは、冷蔵庫は使わないでいいものは使わないでいい。 ということは常時冷蔵を必要とする商品は 苦戦が続いているという状況であります。

農産物は全面的に豊作
しかし品物別には明暗

5つ目の農産物は非常に豊作で好調ですが、品目別には明暗が出ているという事です。
一番の元気印は大豆です。 上期の輸出量は昨年を下回っていますが、世界相場が非常に高騰しています。 また、米国の干ばつによる減産、下期には中国に かなり輸出が見込まれるとあって、大豆業者は非常に強気になっています。 これは裏腹に大豆を原料とした加工食品をつくっている業者は、困っているという 事で、例えば味噌。 これは代表例ですが、大豆の仕入れ値がドンドン跳ね上がっている。レアルベースで去年の倍ぐらいの仕入れ高になって来ています。
逆に元気がないのがコーヒー、これは取れすぎです。 今年の豆の収穫量は世界全体で10%増、ブラジルは40%増と、ブラジルで増えた分が世界でも増え たということになって、世界的供給過剰による歴史的な相場下落が見られています。 輸出にしても世界相場の価格が低いため金額が伸びない。 また、レアル 安の恩恵も輸出業者の大半が輸出前借り金融を受けているため、業績向上に至らないという状況です。

業界懸念は大統領選の行方よりもインフレ対策
値上げ ―むずかしい経営判断迫られる各社―

最後6つ目に下期の課題ですが、これは値上げをいつするかという事です。 大統領選がございますが、例年、”大統領選の年はよくなる”と言われてきまし たけれど、今年に関しては、大統領選による恩恵は食品業界については全くなし。 また、大統領選で誰が勝つか分かりませんけれども、もし野党が勝つことに なっても、もちろん変化は出るでしょうが、食品業界に決定的なダメージを与える要因にはならない、という見方をしています。
むしろ最大のポイ ントはインフレ対策ということだと思います。 現在のドル高止まりの影響で、納入業者が堰を切ったように値上げの通告を始めています。 この為替で原材料 が輸入品である場合はある程度、やむを得ないということですけれども、仕入れコストが上がった分、売価に転嫁していく必要があるが、しかし、いたずらにそ のまま転嫁していけば消費者は離れていく。 従って競合他社の動向をうかがいながら、いつどの品種をどれだけ値上げするのかという難しい経営判断を迫られ ていると言えます。

以上、食品業界でした。

食品部会資料 

≪業界全体≫

● 2002年度上半期は、隣国アルゼンチンの経済危機が叫ばれる中、対米ドル為替R$2.3前後、株価も13,000ポイント前後、Selic金利も下げ観測が強まるなど、比較的良好な経済予測のもとでスタート。
● 5月末日に投資信託の債券評価基準の変更をきっかけに、さらには大統領選におけるLula、Ciroといった左派陣営の人気高による不安感が重なり、レア ル安、株安、債券安が急激に進行し、金融危機の様相を呈し始めた。 中銀はSelic金利を18%まで下げたが、景気回復にはあまり効果がなかった。 こ のような状況の下ではあったが、食品業界はおそらく他業界に比べ概ね堅調に推移したものと思われる。
● 2002年下期は金融危機に加え、大統領選による経済不安から強いネガティブムードに支配されるであろう。 既にR$3,00を突破したままで推移してい る為替も今後の予想が困難であるが輸出品には追い風となろう。 誰が大統領になっても、食品業界は他業界ほどの影響を受けないと予想されるが、新大統領の 景気政策からも目が離せない。

≪業界別動向≫

【外食業界】
●2002年上期  アルゼンチン経済不況長期化等の 影響により、レストラン業界は苦しいスタート。 特にカーニバル期に一部の話題店を除いては軒並み前年比2~3割の来客数減。 接待需要低迷。また、次期 大統領選の影響から、来客数確保が一段と難しい状況に。 各レストランは、客単価UPのために、販売価格の値上、高単価品目の多売、といった施策をとらざ るを得なかった。 6月のワールドカップは時間帯が明け方に集中した事から、1998年のような厳しいレストラン不況とはならなかった。

●2002 年下期は、少なくとも大統領選まではレアル安基調が続く見通しであるが、今回の経済不安があまりにも深刻化しているためか、米ドルをインデックスとしてい る高所得者層がその差益を贅沢品や外食、レジャーといった方面に転嫁せず、様子見といった感がある。   有名一流レストランでも軒並み2割程度の集客 減。 また、レアル安は公共費や輸入飲食材のコストアップにつながり販売価格の調整を余儀なくされるが、来客数を維持できない限り健全な経営は難しい。

【加工食品業界】

1) 飲料
●2002 年上期の醗酵乳分野では、昨年末より投入した大人向け乳酸菌飲料新商品の漸増、豆乳および果汁飲料のパッケージ変更による効果、デザート分野での新商品投 入等があったものの、各社の相次ぐ新製品の発売などで、競合は更に激化。 特に乳酸菌飲料の販売が予想以上に苦戦。 競合他社の伸長もさることながら、大 手スーパーのヨーグルト・デザート分野が著しく成長したため。 また、乳酸菌飲料の売上の約60%を占める大サンパウロ圏が不振にもよる。 必需品の購入 を優先せざるを得ない低所得者層にいかに売りこむかが当面の課題である。

● 飲食材の販売は、レストラン等の前年末在庫薄で比較的好調なスタートを切った。さらに6月頃から加速したレアル安は、一部、高所得者階層に見られた、『高くともいい物を』という輸入品崇拝信仰を打ち崩し、国産品にとって追い風となった。

● カナダのモルソン社がカイゼル社を買収、AmBev社がアルゼンチン最大手キルメス社の株式を取得(36%)するなど、ビール業界の再編も進んだ。

●2002年下期は、大統領選の不安要素はあるものの、食品工業界上期のパフォーマンスからも成長が期待できる見込み。 急激な為替切下げに伴う原材料の輸入コスト上昇をいかに吸収するかが今後の課題。 コスト高の一部を小売価格に転嫁することは避けられない。

●国産飲食材には引続き追い風が吹くと思われるが、輸入品は販売ダウンを覚悟せざるを得ない厳しい状況となろう。 また、国産品原材料には、ブラジル農産物の輸出が好調、ペット容器等原材料そのものに一部輸入品使用もあり、ある程度のコストアップは避けられない見通し。

2) 即席麺
● 2002年上期の総市場は昨年に引続き堅調に推移。 各大手企業による派手なキャンペーンの継続、店頭での積極的な廉価販売と競合環境も一段と厳しさを増 した。 昨年発売の新製品の市場定着、輸入から念願の現地生産に切り替えたカップヌードル等、順調なスタートであったが、各社の安売り攻勢は続いた。 コ スト面においても隣国アルゼンチンの影響で原料価格のみならず、供給面でも不安定な状態が続いた。

●2002年下期も市場は堅調に推移す るものと思われる。 反面、今後の為替動向が最大の関心事。 主用原料の大半を輸入に依存しているパスタ、パン業界では、即値上げを実施したいものの、今 後の為替動向が全く読めない状況に各社苦慮している。 企業施策を確実に実行し、諸現象に対応していく必要がある。

3) 調味料
● 国内調味料市場は、2002年上期40,900tと対前年比116%の成長。 金融危機および景気先行き不安からの耐久消費財の買い控えによる可処分所得の上昇、外食離れ等が追い風となったもの。

● 非調味料分野では粉末ジュースが大きく売上を伸ばしている。 国内加工用途調味料市場は、対前年比105%と堅調に推移した。 輸出市場はレアル安が好影 響、アジア通貨およびEU通貨圏を中心に伸長。 飼料用アミノ酸(リジン)市場は、年率1割を超える順調な伸長を維持推定。 市況は6月以降、世界的に各 生産者が値上を発表し、緩やかな上昇傾向にある。

●2002年下期は、国内調味料市場は引き続き好調な展開予想。 粉末ジュースでは夏の需要期に向けた販売増および新品種の発売予定もあり、更なる売上増期待。 輸出市場は今後の為替動向が読みにくいが、国際的な需給バランス・タイト予想から好調な販売期待。

【農産・畜産】

1)大豆・大豆粕
●2001~2002 年クロップの収穫量は42百万トンと過去最高、10年前の2倍の数量となった。 EU・アジア諸国向けには狂牛病の影響で肉骨粉の代替飼料として大豆粕の 需要が引続き増加。 2002年上期(1~6月)輸出数量は、大豆5.1百万トン(前年比△40%)、大豆粕3.9百万トン(前年比△26%)。 中国の 遺伝子組替大豆輸入政策の改定・決定に時間を要し買付が遅れたことが主要因。日本向け輸出は、大豆182千トン、大豆粕ゼロ。

●2002 年下期は、中国に対する輸出がさらに増えることが見込まれる。更に米国では早魃により本年9月の収穫が減産見込みであり、為替下落による更なる輸出ドライ ブが掛り、輸出量は前年を上回ることは必至である。 本年度輸出トータルでは、大豆16百万トン、大豆粕 7.6百万トンが見込まれる(前年比1~2%増)。
また、2002~2003年クロップの大豆生産量は48百万トン見込みで、これにアルゼンチン、パラグアイを加えた総生産量は80百万トンを越え、米国の生産量(72百万トン)を上回る予想。 大豆生産における南米の重要度が益々高まることは間違いない。

2) ブロイラー
●2002年上期の生産量は3,607千トン。 輸出613千トン(前年比4%増)。 内、日本向け輸出65千トン。 ロシア・キューバ向けが伸長、11月以降、輸入関税変更予定の欧州向け駆込み輸出も出てきている。

●2002年下期輸出も好調で、本年通期では昨年の125万トンを上回る130~133万トンレベル予想。 但し、日本向けは食肉産地偽装事件以来、需要が落ち込み、ABEF(ブラジル鶏肉輸出協会)では、2002年の対日輸出を9万トン(前年比△30%)と推定。

3)砂糖
●2002 年上期の中南部砂糖黍処理量は64百万トン(前年比57%増)。 昨年の生産開始が5月末までずれ込んだミルがあったのに対し、今年は4月初旬から生産が 始まった事が主要因。 産地の乾燥した天候により、砂糖の歩留まりが高く6月末までの平均は砂糖黍1トン当り132kg(前年は124kg)。

●2002~2003年クロップ(5月~4月)の砂糖黍生産量は321百万トン(前年は325百万トン)、砂糖生産量は17.5百万トン(内、国内消費9百万トン、輸出8.5百万トン)、アルコール生産量は11百万キロリットル予想。

4)オレンジジュース
●2002~2003 年産クロップは予定より早く7月初旬に開始。冷凍濃縮オレンジジュースの生産予定数量は約120万トン。 前年度からの繰越は9万トン。 昨年は冬期の低 温と降雨が多かった事により糖度が上がらず、低糖度製品の輸出を余儀なくされた。 今年は高温と少降雨のため、糖度は例年になく上がっている。 また、昨 年末より国際価格の上昇が始まり(前年6月のFOB SANTOS平均価格はUS$800/t、現在はUS$1,200/t)、それに伴い原料オレンジ価 格もUS$3/箱(40.8kg)程度に上昇し、農家も収益を上げる事が可能となった。 今後、フロリダの収穫状況も相場を左右する大きな要因となろう。

5)コーヒー
●2002 年上期の輸出は11百万袋(60kg/ 袋)、前年比13%増。 世界的な供給過剰、2002 /2003年ブラジル産クロップの記録的収穫予想(47百万袋、前年比39%増、全世界ベースでは122百万袋、前年比10%増)が背景となり、国際相場 は歴史的な低迷状態。輸出量が急伸しても価格が安いため金額が伸びない状況を招いている。 ブラジルはレアル安で輸出競争力が出たが、輸出業者の大半は輸 出前借金融(ACC)を受けており、業績を大きく好転させるには至らない。

●2002年下期は、レアル安を背景としてブラジルの競争力は 引続き維持見込み。 2002年通期の輸出は29百万袋(前年比15%)程度見込み(全世界ベースでは92百万袋、前年比4%増)。 一方、消費量は対前 年横這いの105百万袋と予想(ブラジルは13百万袋で世界第2位の消費国)、生産国(特にブラジル)の在庫急増が懸念される。 輸入についてはロシアが 急増(原油価格が今のレベルを維持し、ロシア経済に安定感が出てくると)、世界のインスタントコーヒーメーカーを中心に投資ブームが起きてくることも予想 される。 いづれにしても国際相場の低迷は、コーヒー新興国ベトナム、およびブラジルを除く中南米諸国の生産量減をもたらし、資金力に乏しい生産者の体力 低下(世界的な問題)につながるであろう。

以上

2002年下期業種別部会長懇談会-コンサルタント部会


田中コンサルタント部会長

 

工業不振だが、危機知らずのアグロビジネス

田 中  前回、すなわち本年初めのこの席で、年初の見通しが明るい年は、終わってみると厳しい年であったことが多く、逆に年初の見通しが暗かった年は、終 わってみると良い年であったことが多いという話を申し上げました。今年も前半を顧みて後半を予測しますと、このジンクスは破られないのではないか、という 気が致します。

ブラジル経済は、昨年9月11日の同時多発テロの影響から予想以上に早く回復し、早くも11月から上昇軌道に乗りました ので、比較的、いま総領事もおっしゃったように、楽観ムードで本年に入りました。 本年上半期の成長率は、前年同期比0.14%増加しましたが、工業はマ イナスで1.78%。サービス業と農牧業はプラスで、サービスが1.55%、農牧業が4.15%のプラスで、工業の落ち込みを主に農牧業がカバーしたとい う形になっております。

なかでもアグロビジネス。 広い意味の農牧、農業機械、食品、化学品、バイオを含めたアグロビジネスは危機知ら ずで、前年同期比8.3%成長して、最近10年間で最良の年となりました。 成長を支えたもう一つは、石油、天然ガスなどの鉱産物で、前年比14.3%の プラスということで、関連する機械設備業界も好調でした。

為替危機からIMF援助取り付けまで

ご承知のように本年10月6日に大統領選挙が行われますが、実質的なキャンペーンはすでに昨年後半から始まっており、有権者の投票意図調査で政府与党候 補のジョゼ・セーラ前保健大臣は低調で、4回目の出馬となる左翼野党PTのルーラ候補が絶えずリードしてきました。 このため海外投資家の懸念が増大し て、ブラジル向け投資を押さえるように顧客に薦める欧米銀行も現れ、4月半ばに、ドルレートはR$2.264と、昨年末の2.314よりも低くかったのが 上昇を始めたわけですが、まだその段階では緩やかな動きに留まっていた。 それからブラジルのカントリーリスクも746まで下がっておりました。

ところが5月末の飛び石連休を利用し、政府は突然、金融投資ファンド組入れの国債の評価方式を変更し、市場は混乱し、ドルレートは上昇テンポを加速しま した。 金融投資ファンドは、企業および個人の簡便有利、最もポピュラーな投資手段でありまして、今年4月末の残高がR$3,597億の投資ファンド残高 に対して、そのうちの75%が国債に投資されておりました。 この結果、8月までにファンドからR$577億が流出して、政府は、組み入れてある中長期の 国債を来年の初めとか、あるいは本年の選挙日前後を期日という風な短期なものに交換せざるを得なかった。 ドルレートは上昇を続け、7月末には R$3.47、ブラジルリスクも2390まで上昇しました。

それではこの混乱収拾のために、政府はどういう施策を取ったかと申します と、まずIMFの援助を取り付けた。 本年末までの契約を来年末まで1年間延長して、新たに300億ドルの融資の合意を得た。 そのうち60億ドル、 20%は本年引き出して、残りの80%の240億ドルは来年引き出すという。 2番目としては、カルドーゾ大統領の呼びかけに応じ、4人の主要大統領候補 者がすべて、IMFとの合意条件の遵守を約束しました。 次は、先ほど申しました投資ファンドの国債会計方式を、わずか70日間で元へ戻した。 次は、外 国銀行への協力要請ということで、マラン大蔵大臣とフラガ中銀総裁がニューヨークで米欧日の16行に輸出金融枠の維持を要請しました。 さらに、いま現在 やってますけれども、BIS(国際決済銀行)とか各国金融当局へ市場沈静化のため、マラン、フラガ、それから局長クラスが手分けして、米、欧、日本の諸国 を訪問して、ブラジルの現状を説明するということをやっております。

以上の措置により市場の混乱、ドルやブラジルリスクの激しい動揺は 押さえられたが、不安定感は依然続いております。 それはなぜかというと、今回の危機は大統領選における野党候補躍進というブラジル側の問題だけではなく て、アルゼンチン危機を含む南米全体の危機、米国を始めとする世界経済の冷却、それから米大企業の粉飾会計から発生する不信感とか、テロ再発懸念、金融シ ステムへの不安など、内外要因がからまるいわゆる複合危機ということで、このようなときには、資金はブラジルのような新興国には流れにくくなり、しかも民 間企業の株式とか社債も敬遠されて、主に先進国の国債に向かって流れる傾向があります。

ルーラ候補当選の可能性強まる

次は大統領選挙の最近の動向。 各候補の全国キャンペーンに加え、ご承知のように8月20日からテレビ・ラジオの無料宣伝も始まり、その効果も現れ始め ております。 ブラジルでは新聞を読まない人口は多いが、テレビはほとんど全国民が観るので、全国同時に放送される宣伝の効果が非常に大きいわけです。  いくつかの世論調査機関が有権者投票意図調査をやっておりますが、傾向は大体似ておりますので、ここではIbopeという調査機関の9月6日から9日の調 査により最近の状況を見ることに致します。

まずルーラは、前回調査(8月31日から9月2日調査)の35%から39%に上昇して、依然 トップを維持しております。それからシ-ロ・ゴメスは、8月前半までは27%まで上昇して1位のルーラを脅かしたけれども下降して、前回は17%でジョ ゼ・セーラと並び、今回はさらに下がって15%で3位になりました。ジョゼ・セーラは、17%から19%に上昇して2位になりました。それからガロチー ニョは4位だけれども、11%から12%に1ポイント上昇した。 まだこれから1ヵ月半ぐらい残っており、確言はできませんが、ルーラと他の3人のうちの 一人が決選投票にいく可能性と、最終的にルーラが選ばれる可能性も強まっております。

次期政権は干渉的、国内産業保護的、成長指向型、民営化に消極的

それでは、野党が政権を取ったらどうなるかですが、対外契約の尊重とか、財政均衡、プライマリー収支黒字目標の達成、輸出振興による対外収支の改善な ど、IMFとの合意条件を守ることは、すでに3人の野党候補も約束しております。 従って、基本路線は同じで、これを大きくはずれたら国の運営がうまく行 かないことになります。 ブラジルの問題点は明らかで、誰がやっても選択の範囲は限られているということが出来るわけです。 しかも国会で憲法に基づいて 運営される限り、PSDB、PFL、PMDBの現カルドーゾ政権を支えている3大政党の確保は不可欠であります。 基本路線はこのように共通でも、運営上 の具体的施策などになりますと、それぞれの特色が出てくるのは避けられませんが、セーラを含めて4人の候補の誰が政権を取っても、現政権よりは干渉的、国 内産業保護、民営化に消極的、より成長指向になることが予想されます。

最後に新大統領の直面する問題は、まず国内問題の一つ、緊縮財政 下での新政権のスタートであります。 IMF合意の条件下で財政秩序を維持しなければならないので、さる8月末、国会に提出された来年度予算は緊縮財政 で、しかも投資予算は本年の半分以下になっており、来年4月の最低給料改定時期が新政権の一つの試金石となると思われます。

2番目は対 外的な問題で、対外的には対米関係、特にFTAA(Alca)の関係であります。 セーラは若干ニュアンスが違うけれども、4人の候補者がメルコス-ル強 化を主張しております。 危機によるメルコス-ルの弱体化と、米国政府の直接的およびIMFなど国際機関を通じた援助による影響力の行使、それから長年か かって米国政府が国会の承認を取り付けようとしていたファーストトラックをやっとこの間取得したので、FTAA交渉推進に反対してきたブラジルの口実がな くなった感じです。米国政府はブラジルに巨額のIMF融資を与えさせ、さらに貿易障壁の緩和とか、貧困対策への協力などの飴を用意しております。 次期政 権は、そういう意味でこの地域統合問題について大きな戦略的な対応を迫られると考えられます。  FTAAの交渉は来年から本格化して、2005年の1月までに決定して、2006年の1月からスタートになりますので、さっそく当面しなければならない問 題であります。 以上で終わらせて頂きます。

 

コンサルタント部会資料

マクロ経済関係

1.工業生産

・上半期ブラジル全体で前年同期比-0.1%。

・IBGE調査12地域中、前年比増加は4地域(リオ、エスピリト・サント、リオグランデ・ド・スル、南部地域)のみ。

・全体の約50%を占めるサンパウロは-2.8%。 サンパウロ工業で最大のウェイトを占める「機械金属」(金属、機械、輸送資材、電気通信資材)分 野の落ち込み、中でも電気通信資材は-18.1%で「化学」(+ 6.1%)、「食品」(+6.6%)のプラス効果を殺いだ。電気通信への投資減、自動車(「輸送資材」-7.5%)がサンパウロ工業落ち込みの主因。

・前年同期比プラスであった4地域は「鉱業」(石油、天然ガスだけで前年同期比+14.3%)及び「食品」の好調が主因。

・「アグロインダストリー」は上半期8.3%成長したが、10年間で最大であった(昨年は+2.4%)。その原因は①農産物収穫の好調②ドル高による農産物輸出の好調③農産物価格上昇(平均上昇率本年10%、昨年は1%)などである。

・設備、資材購入はドル高のため輸入が押さえられ、国産への需要が増加、農業機械販売は(12ヶ月累計)昨年比23%増加。
米国穀倉地帯旱魃が伝えられるので本年も農業関連業界は好調が予想される。

2.GDP成長率見込み
・政府の本年度経済成長率見込みは、年初段階の+2.5%を第2四半期以降、市場混乱が続いているため、最近+1.5%に修正。昨年の成長率と同水準。

3.対外収支

・貿易収支
1-7月輸出は313億ドル(前年同期比7.7%減少)。輸入275億ドル(18.9%の大幅減)、貿易収支は昨年の36百万ドル黒字に対し、本年は 38億ドルと大きく改善。輸出減少はアルゼンチン向けを除けば-1.6%にとどまる。輸入大幅減はドル高と景気後退による輸入抑制が主因。
1-8月実績は、輸出370億ドル(前年同期比-6.5%)、輸入316億ドル(前年同期比 -18.8%)、貿易収支黒字は昨年の663百万ドルから本 年は54億ドルに拡大。本年は7月まで前年同月比毎月マイナスの輸出が、8月に僅かながら+0.4%のプラスとなった。
政府は本年貿易収支黒字目標を当初の50億ドルから70億ドルに修正したが、12ヶ月累計では、8月ですでに74億ドル。

・経常収支
貿易収支改善、貿易外収支改善で経常収支赤字も昨年7月(12ヶ月累計)の274億ドル(GDP比5.02%)から167億ドル(GDP比3.19%)に減少。
当初、政府は本年の経常収支赤字を205億ドルと見込んだが、これを170億ドルに変更。

・外貨収支
本年の外貨流入予定は当初、直接投資180億ドル、借入230億ドル、証券投資45億ドル計455億ドルが見込み。 7月まで政府は   所要額 463億ドル(経常収支170億ドル、借入返済293億ドル)をこれでカバーできると考えていた。 然し国際金融市場危機の激化  のため、流入額は夫々 165億ドル、200億ドル、15億ドル計380億ドルへと差し引き75億ドル減少見込みとなった。先般、IMFから300億ドルの融資合意が成立。 80%は来年だが、本年引出し可能な20%の60億ドルと、貿易収支20億ドル増加でこれをカバーすることになった。
2003年は所要額434億ドル(経常収支154億ドル、借入返済280億ドル)を直接投資170億ドル及び借入265億ドルの流入で賄う計画となっている。

4.財政

・財政収支
財政プライマリ収支はIMFとの合意の中で最も厳しい条件となっているが、現行契約がスタートした1998年9月以来、GDP比3.5%黒字の目標は常 に達成されて来た。昨年8月の合意により本年末まで延長され、そのさい目標が3.75%に引上げられたが、達成可能の見込みである。更に本年8月の合意に より来年末まで延長されたが、3.75%の目標は据え置かれた。来年は新政権初年度となるが、主要大統領候補は四人とも当選した場合の契約遵守を約束して いる。

・財政債務
FHC政権発足時の1994年末は1,530億レアル(GDP比30.4%)であった財政債務残高は、本年5月末には7,080億レアル(GDP比55.9%)に増加した。
金融危機によるドル・レート上昇は、財政債務の約33%が為替スライドとなっているため、大きな増加要因となる。6月のレアル切り下げ率は 12.79%であったため、6月の債務残高は7,503億レアル(GDP比58.6%)に増加したが、増加額418億レアルのうち413億レアルが為替要 因である。
金利が年初来19%から18%に引下げられたことは債務残高減少要因である。
7月の財政債務残高は8,194億レアル(GDP比61.9%)になったが、前月比増加額691億レアルのうち680億レアルが為替要因である。7月中のドル上昇率は20.54%で、債務の46%がドル・スライドであった。

5.金利
Selic(基礎金利)昨年末19%から、本年に入り2月18.75%、3月18.5%、7月18%と引下げた。ブラジルの実質金利は、7月10.3% で、調査した40ヶ国中最高となっている(Global Invest.調査)。然し8月は「経済の不安定性が増加したため」(中銀ノート)据え置きとされた。然し「最近の事実は、2003年インフレは目標以下 となる見通しを確認」したとして、引下げヴァイアス(次回会議まで中銀総裁に引下げ権を与える)を付けた。

6.インフレ
本年の インフレ率目標はIPCA(政府機関IBGE発表拡大消費者物価指数)3.5%(上下2%ポイント許容)であるが、7月実績は1.19%、年率で 7.51%と、本年目標突破はほぼ確実となった。原因はドル高の影響による食料及び管理価格(公共料金)の上昇である。
2003年について は、当初目標は3.25%であったが、6月変更して4%とし、許容範囲を上下2.5%ポイントに拡大した。インフレ・ターゲティング・システムで、金融政 策がインフレを決めた目標内に収めるため優先され、経済成長や雇用水準のような重要な要因がブラジルでは二次的に考えられてきたとの認識が出て来たものと 理解される。
更に8月末国会に提出される来年度予算案で政府は、インフレ率を6%に設定している。

7.為替
昨年末のドル・レートはR$2.314であったが、本年4月10日にはこれを下回るR$2.264まで低下した。JP Morganのカントリー・リスクも746とボトムに落ちた。
然しその後、国内では大統領選キャンペーンにおける野党候補の躍進や、これに対する政府施策などによる不安定感の増大。海外では米国大企業の相次ぐ粉飾 会計の発覚による市場への信頼感の喪失などにより、新興国向け資金流入が減少したため、ドル  相場は上昇を続け、7月31日にはR$3.470に達し、 カントリー・リスクも7月30日には2,390まで上昇した。
その後IMFとの合意成立による300億ドルの融資決定、4人の主要大統領候補者による国際契約遵守の約束、国際銀行団の協力取り付けなどにより、市場混乱は改善しつつあるものの、未だに根強い不安定感がただよっている。

(2002年9月4日記)

2002年下期業種別部会長懇談会-建設不動産部会


鈴木部会長 

鈴木  前任の鳥羽さんから途中引継ぎまして、まったく新米の「建設不動産部会長」を務めさせて頂きますので、皆様よろしくお願いいたします。

I-建設業

上期受注は目標通り

私ども建設不動産部会に通常参加している会社は、建設業の仕事をしているのが3社、不動産業が3社です。この間話し合ったところでは、去年の末に立てた 2002年度事業計画につきましては、企画にあたり選挙の影響を考えました。 20年、30年と建築関係の仕事をしている私たちですが、選挙の年は普通 20%から30%ぐらい悪化しているので、今年もそうだろうと、それを織り込んだ低目の計画を立てていました。
ただし、上期では各社が努力したことで予想以上に受注もうまくいって、2社は非日系企業の仕事の受注を伸ばした。新規得意先の工事が受注できたということで、上期の受注は目標通りでした。

下期は10%程度の受注減か

下期はどうなるかですが、選挙の成り行きを見るということで、一寸ゆっくりしていて、確かに受注は予定通りにはいかないだろう、10%ぐらいは減る予測です。
まず選挙の時期はアスファルト舗装とか国の仕事関係で、政府が工事を前倒しに始めてしまう。 宣伝になるから大きい建築、土木関係の仕事はほとんどやってしまう。 そのため、建設機械、アスファルト工事費が全部値上がりの傾向となる。
建設業のところで、1社は非日系関係の工事は選別して受注することで、受注範囲を縮小した。 下期の予測は、楽観的なところもあるが、変化にも機敏に対応する心構えが必要と考えています。

建設業は、大統領選の動向・結果により、建設工事の発注が影響を受けるため、予測がつかない状況です。 また引き続き、ドル高の高進、ブラジルリスクが 高くなることでさらに投資が減少すると懸念されます。 特に工期が長く為替リスクの影響を受ける工事は、出来るだけ避ける慎重な受注を考える必要がありま す。 また、ドル高による建設資材の値上がり、最低賃金の上昇傾向による労務費の値上がりなど経営環境は一段と厳しくなると予想されます。
受注予測は年初計画に対し、2社は下方修正しているが、1社は上期より増と考えており、 従業員数では、2社は同規模を守り、1社は減員を計画しています。全体のコストダウン、原価管理など技術力の向上に一段と努めなければと考えております。

II-不動産業 

上期は家賃低下が収益にひびく

上期の不動産業のほうは、2年前からアパートなどの家賃がどんどん下がってきて収益に苦労しています。 今年になってから契約をやり直そうというところ では、「インフレ等による家賃値上げを認めない」 という要求が結構あると言われています。  特にパウリスタ周辺、それとABC方面ではそういう状況に なっているらしいです。 

下期は好材料なく売上げ下方修正

不動産業の下期展望ですが、住宅販売ではサンパウロ市の都市計画法の改正で地価の上昇が予想され、販売に対して苦戦すると思われます。 また、労務費の賃金上昇の問題もあり、売り上げについて下期は下方修正しています。
アパート賃貸では、所有しているレジデンスを売却するなど経営合理化を進め乗り切ることを考えております。
事務所ビル、商業施設ではほぼ現状を維持できそうです。 ただし、契約更新に当たっては周辺ビルの家賃の影響もあってインフレ率以下で、事実上値下がり を考えて契約を行う必要があります。従って売り上げは減少する傾向で、従業員数は上期とほぼ同数で行うことになる計画です。
下期の予想は以上であります。

 

司会  途中からとなりの席に座っていらっしゃる横山運輸サービス部会長の応援も受け、文字通り二人三脚による報告ありがとうございます。続きまして、運輸サービス部会の横山部会長にお願いいたします。

2002年下期業種別部会長懇談会-金融部会


福岡金融部会長

 

司会  大変ありがとうございました。  続きまして、金融部会の福岡部会長にお願いします。

I-銀行業界

ドル相場高騰を招いた3つの要因

福 岡  それでは簡便にご説明申し上げます。 金融部会は、2つのパーツに分かれておりまして、一つは銀行業界、もう一つが保険業界であります。 まず銀行 業界についてお話申し上げます。銀行業界の上期の回顧につきまして、以下申し上げます3つの要因からブラジル国債の格下げ、カントリーリスクの上昇を招き まして、レアル対ドル相場は大方の予測を上回り、最高で2.888レアルまで上がりました。 これで金融業界は、混乱と不安を残して上期の幕を閉じたこと になります。 申し上げました3つの要因というのは、一つは大統領選挙における野党候補の躍進に対する懸念、2つ目に米国大手銀行によるブラジル・エクス ポージャーの見直し、 3つ目に投資信託に対する時価会計制度の前倒し導入であります。

業界の上期のトピックスを申し上げますと、2つ ございまして、これはただ今コンサルタント部会の田中先生からもお話がございましたので項目だけ申し上げますと、一つは SPB(ブラジル決済システム) 改革の導入、2つ目は投資信託に対する時価会計制度の導入であります。 この2つが上期のトピックスに数えられます。

下期の焦点は大統領選挙

野党勝利なら一時ドルは4レアル予想

下期の展望ですが、新政権が発足する来年(2003年)初めを控えて、下期の金融市場というのは大変ナーバスな状態が続くという風に思われます。  新 政権の経済対策に対する内外の信認、これを継続できるかどうかが大変重要でありまして、焦点は大統領選挙一点に絞られるとこういう風に考えております。

下期の相場の見通しを、為替と政策金利の面からご報告します。 まず為替につきましては、大統領選挙の結果によるところが大きくて、相場予想というのは 大変に難しい局面にあるといえます。 野党候補が勝利した場合には、一時的に4レアルぐらいまで高騰する恐れもあると予測しておりますし、一方、保守が勝 利した場合には、一時的にこれまでの反動から2.5レアルを割る展開も考えられます。しかし徐々に市場は落ち着きを取り戻して、最終的にはR$2.7から R$2.9程度に収まるのではないか、と予想しております。

政策金利につきましては、大統領選挙を控えて金利は引き下げられる傾向にあ ると予測しております。 わたしどもの金融部会のメンバーの主立った銀行の方々にアンケートを取りまして、今回は今までと違い、申し上げましたような状況 で大変予測を一本化するのが難しいものですから、今回のリポートにも今から申し上げます5社それぞれの今年末の為替とSelicの予測を掲げております。

口頭でご報告申し上げますと、まずA社は、為替につきましては「野党が勝利」という予測を立てていらっしゃいましてR$3.4、Selicについては 18%。 B社につきましては、与党が勝利した場合の為替予想はR$2.7からR$2.9、野党が勝利した場合には R$3.2からR$3.6、Selicは16.5%から17.5%。C社は与党が勝っても野党が勝っても一律というアンケート結果になっておりまして、R $2.8、Selicは17%。  D社は与党が勝利した場合にはR$2.7からR$2.9、野党勝利の場合はR$3、Selicは17%から18%で す。 最後、E社は与野党一律でR$2.8からR$2.9、Selicは16.95%から17.50%という結果になっております(下表)。

 

II-保険業界

上期に火災、生命保険伸びる

次に保険業界について報告申し上げます。 保険業界の上期の振返りですが、3つの項目から申し上げます。 一つは収入保険料ですが、収入保険料につきま しては生保、損保、健康保険を含めた収入保険料が上期140億レアルとなりまして、対前年13ポイントの成長を遂げております。 内訳は、火災保険が 43.9ポイント増、生命保険が32ポイント増、主力の自動車保険は0.4ポイントの微増であります。

事業収益でありますが、最も重要な指標であります損害率で、全種目合計で61%強と昨年よりも5.2ポイント改善しておりますけれども、主要種目の自動車保険が2.9ポイント悪化しまして71.2%となり、盗難台数の増加をここに反映しております。

それから保険の引受け動向でありますが、治安の悪化に伴いまして、自動車および商品の盗難事故が急増致しまして、保険業界の支払能力が限界に近づきつつ あると思われます。従いまして契約者にとって、今後は保険盗難カバーを確保するということ自体が極めて困難な状態になっていると言えると思います。

世界の再保険マーケットがハード化

次に昨年のテロ事件以来、世界の再保険マーケットも大変にハード化しておりまして(ハード化というのは保険料が高くなり、条件が厳しくなるという意味で すが)、ブラジルではこれに加えてIRB(ブラジル再保険公社)の民営化を控えて、IRBが財務体質の改善に向け取り組んでいる結果、今後とも急激な保険 料の高騰や引受け条件の縮小といったハード化の現象がさらに進むと思われます。

下期の展望でありますが、収入保険料は、対前年15%から20%程度の伸びが予想されます。 収益面では、事業損益では全体では損害率の改善をしているけれども、全体の収入保険料の35%以上を占めている自動車保険の損害率が大変悪化して収益を圧迫しております。

資産収益の面では、運用益では引き続き一定の利益は確保できると思いますが、業界全体にとりましては、事業損益でのクリスタが会社経営を圧迫するものとこういう風に予想されております。  以上です。

 

金融部会資料

2002年8月19日記


Ⅰ.銀行業界

SPB及び投信の時価会計制度

(1) SPB(ブラジル決済システム改革)は 4月22日から導入された。 この制度により、主に①為替、資金、株式、国債等の主要マーケットにおける同日決済 ②金融機関の中銀リザーブ勘定のリアルタイムでの管理が可能となる。大規模なシステム改革となるため、本格導入に向けて段階的な準備期間を設ける等、当局 側は比較的慎重に対応している。

(2) 5月31日に中央銀行が投資信託に対し時価会計制度の導入を求めたが、折りしも大統領選の行方に対する不安感が相まって、債券相場急落につながった。 多 くの投資家が投資信託の資金をポウパンサ預金や銀行保証預金(CDB)に移行しており、中銀によれば6月のポウパンサ預金の増加額は1966年のポウパン サ預金開設以来最高記録となった。

【2002年12月末予想レンジ】(9月9日時点)

 

 

Ⅱ.保険業界

保険引受動向

ブラジルの治安情勢の悪化に伴って、特に自動車および商品の盗難事故が急増しており、保険業界にとっては大変厳しい状況が続いている。 盗難保険につい ては、武装強盗団などによる被害が多発しており、IRBを初めとして各保険会社の支払能力が限界に達しつつある。 最近では盗難リスクに対する保険料が付 保額の20%以上になることもあり、もはや保険とは呼べないケースも出ているが、契約者にとって盗難保険カバーを確保すること自体が極めて困難になってき ている。

また、2001年にペトロブラス(ブラジル石油公社)の石油開発リグ「P-36」の爆発事故や米国テロ事件によって巨額の損害 が発生し、海外の再保険マーケットが極端にハード化している。 加えて、ブラジルでは民営化を控えたIRB(ブラジル再保険株式会社)が財務体質の改善に 向けた積極的な取組みを行っており、国内元受保険マーケットにおいては急激な保険料の高騰や引受条件の縮小といったハード化の現象が見られる。

2002年下期業種別部会長懇談会-自動車部会


伊藤副部会長

 

自動車生産、今年は170万台前後予想

伊藤  近藤部会長が日本出張中ですので、代わりに報告させていただきます。 自動車部会は発足間もないのですが、カテゴリーを、4輪、2輪、自動車部品の3つに分けて報告させていただきます。

まず4輪ですが、昨年上期の生産台数92万9千台に対して、今年上期は83万9千台、9.7%減のマイナス約9万台と大幅に落ち込みまして、年初業界の 生産予測190万台の達成見込みはなく、170万台前後に落ち着くものと見られています。 国内販売で見るとさらに落ち込みは厳しく、昨年の上期87万 4000台が今年は71万台、17.7%減のマイナス約15万5千台となり、特に5月以降の落ち込みが厳しいため、月間12万台割れが続く現状を踏まえる と年初業界販売予測160万台は140万台辺りに落ち着くものと見られます。 在庫ですが、6月末には業界全体で16万9千台、約46日分を抱えており、 下期に入っても一層の生産調整と余剰人員の削減を強いられています。

競争は益々激化

大統領選挙を控えた政治的不安定要因が為替悪化、株安、カントリーリスク増大の三重苦を生じさせ、自動車業界では消費者の買い控えと高金利による購買力低下が起きています。年間320万台の生産能力を持つ国内四輪生産設備の約半分は遊休状態にあります。
各社とも生産量維持を最優先させるため、大衆車これは1リッターカーを中心にディスカウントを行い、体力の消耗合戦が続いた結果、大衆車の市場シェアは 73%まで拡大しました。 引き続き在庫調整が続く中、値引き販売を余儀なくされて、市場環境はますます厳しくなっており、メーカー間の競争も激化が続い ています。

また、収益悪化に歯止めが掛からず、今年は全メーカーが赤字になると予測され、大量解雇への懸念も広がっています。今まで はクライスラーとGMのトラック部門が撤退していますが、フォルクスワーゲンのダメル社長は、「今後2年以内にアッセンブラー2社が撤退するだろう」と国 内生産能力の過剰とメーカー数過多を指摘しています。
アメリカの自動車アナリストも、「ブラジルでは健全で効率的かつ柔軟性のある生産拠点を持つメーカーのみが生き残る」と発言しています。

政府、新市場開拓のため中印露、ポーランドへミッション派遣

下期は8月1日に工業製品税(IPI)の変更があったものの、ファイナンス販売主体の新車販売は高金利が続く以上、大幅な販売増は見込めません。 ただ し、工業製品税の変更は中長期的には大きな意味を持ち、販売市場におけるカテゴリーミックスの変更が年々加速すると見られています。 大衆車のアドバン テージは失われて、今後は各社とも1リッター以上の新型車両投入に力を注ぐことも予測できます。 ただし、政府は税収入減も懸念しており、工業製品税の一 律化などの議論も引き続き行われています。
為替が選挙後も1ドル当たり3レアルレベルが続くと、各社は相当の値上げを行うでしょうが、国内販売 のマイナスをリカバーさせるためにもメキシコを中心とした輸出強化を一層進めると思われます。 市場変動に耐えうるグローバルネットワーク体制の構築が生 き残りに不可欠で、新たな輸出国検討も進められています。

政府も自動車産業の雇用維持の手段として、新規市場開発のためにロシア、 ポーランド、中国、インドなどへミッションを派遣しています。 小型車の技術と価格競争力を持つブラジル自動車産業が輸出基地に変貌する可能性が大きいと みたフォルクスワーゲン、GM、フォードは輸出戦略の見直しを急いでいます。 例えば、フォルクスワーゲンは欧州向け車両開発への投資、GMは新型コルサ を製造するロサリオ工場の生産量の80%を輸出目的として3000万ドルの投資をしています。 また、フォード本社も世界的な小型車需要の増加を見越し、 ブラジルを全世界に供給する小型車輸出基地と位置付けする方針を明らかにしています。 当面は、拡大が見込めない状況にあって、どう生き残っていくか、そ のための商品開発の強化と生産効率のアップ、そして輸出競争力をどのようにつけていくかが、この業界の大きな課題となっております。

二輪車、生活の足として販売伸びる

続きまして二輪車です。 二輪車市場は昨年上期の生産台数38万8千台に対しまして、今年上期は40万6千台、と4.7%増。国内販売も35万6千台から38万7千台と8.8%増加しており、堅調に推移しております。
二輪車は生活の足として、特に北部で販売が増加していること。 コンソルシオでの販売が50%近くを占めているために、比較的環境変化の影響を受けにく いことも強みとなっています。 インフレ、金利が現状で推移すれば、下期も前年並みプラスアルファの販売は確保できると考えられています。 ただし、二輪 メーカーの収益は為替の切り下げで大幅に悪化しており、四輪同様、輸出強化を図り、企業体質の維持強化を進めている状況です。

自動車部品、販売は年初予想の20%減見込み

自動車部品業界です。 サンパウロ州の自動車部品メーカーの70%以上が自動車減産で打撃を受けています。 自動車部品製造工業会の予想では、本年度の 自動車生産の下方見直しで、1月時点の売り上げ予想に対し、20%減少するものとさらに厳しい見解を出しています。 新車生産増加を見込んで輸入した原料 が在庫増加を招くなど、収益面でのダメージを強いられております。 部品業界総売り上げの33%を占める上位部品製造会社を対象に比較した売り上げは1月 から7月までの累計で対前年同期比売り上げが-7.9%と減少しており、遊休率が生産能力の37%までに達しております。

現在の従業 員数は17万500人ですが、年末までには16万9千人に減少する予想です。 その他、為替の変動で輸入原料を使用するメーカーでは大幅なコストアップに つながっており、日ごとの為替レートで購入し、それらのコストをカーメーカーに対しすべて転嫁できない状況にあるため、収益面で悪化しています。 新車の 工業製品税の減税でも短期的に生産増加は期待出来ないものの、部品メーカー各社が1リッターから2リッターの減税対象車への部品納入率が20%から35% 程度に上がるものと予想され、車種のミックスが変更することで部品サプライヤーの中には、年末までの生産体制を見直すところも出てきています。
カーメーカー納入のほかに、補修市場向けにビジネスを展開している部品メーカーは収益面ではある程度、カーメーカーでの減収をカバー出来ておりますが、予想に対してほど遠い結果を示しています。
以上です。

2002年下期業種別部会長懇談会-機械金属部会


杉村部会長

 

強気の事業予算は期待はずれに終わった上期

杉村  機械金属部会の杉村です。部会の名前は機会金属部会と変わっていませんが、今年の7月から正式に自動車が独立した部会になりましたので、今回からは自動車、あるいは自動車部品を除いた報告という形にさせていただきます。
ここまでの発表があまりにも格調が高く、また専門的でありましたが、我々の業界はどちらかというとトンあたりいくらとか、ポルキロ( por  quilo)の世界であり、業種も広いので残念ながら私の報告は大雑把なものになります。 その点ご了承お願いしたいと思います。

我 々の部会は月に1回昼食会という形で意見交換会をもっています。 その中で出た話ですが、今年上期の予算は昨年の10月か11月に皆さん準備します。 そ の時点での今年の見込みは、まず去年あったネガテイブな要因である電力問題、テロの影響、あるいはアルゼンチン問題などが減るかなくなる、それに加えて今 年は選挙特需が期待できるということで大変強気な予算を組んだと言う事です。 これは何も我々の業界だけではなく皆さんの業界でもかなり同じだったのでは と思います。 結果は残念ながら期待はずれに終わり予算を達成できなかったという事です。

電力問題、高金利、為替変動、輸出がポイント

そういう中でいくつかの要因がありました。 1番目は電力問題。特にプラント関係ですが、発電設備プロジェクトに関連した要因。2番目は高金利による自 動車産業の不振による影響、それから自動車産業の現地調達化による要因。 3番目は為替変動、内需の減退、それに対応して輸出努力をして成果を上げたかど うかという点。 4つ目は選挙特需の恩恵があったか、あるいは期待通りであったか。強いて5つ目を入れれば、先ほどからの報告にあります農産物、石油、パ ルプといった生産が相変わらず強い業界に設備ないし機械を納める事ができたかと言う点です。

大雑把に言って4つか5つの要因をうまくやったか、あるいはできたかという事で業績も左右したという感じがしました。
簡単に業界ごとに報告させていただきます。

プラント業界―日系が発電所プラント受注

プラント業界の場合はご存知のように、火力発電プラントが沢山でまして、今年はその受注を期待したのですが、景気の低迷とか雨が沢山降ったとかでそのプ ロジェクト自身が急激に絞られてしまいました。 期待通りではなかったのですが日系企業の中には火力発電所のプラントを受注したとか、そこに納める廃熱回 収ボイラーを受注したとか、基本的には期待どおりではなかったものの、そこそこ恩恵はうけたようです。

それから紙パルプ。 ここは生産が極めて強く、ここ数年来プラント案件は好調でしたが大型プロジェクトはほとんど終わっています。

製鉄関係は鉄そのものが自動車産業の不振で内需が冷え込み、輸出で頑張って生産を維持している状況ですが、やはり景気の低迷とか、選挙で先が見えないとか新規のプラント案件が出てくる状況ではないという報告がありました。

それから港湾設備ですが、これも好調な農産物とか鉄鉱石などにからみますが今期は規模は小さいが、数ではいろいろ案件がでてきているようです。 新井さ んの部会に関係する石油化学プラントについては、石油の生産も極めて好調ですし、石化プロジェクトも順調に継続しているようです。

従って発電関係のプラントが若干期待はずれではあったもののプラント関係全体では環境は悪くないという報告であったと思います。

建設機械―選挙特需の恩恵受ける

次は建設機械ですがここは選挙特需を受けたようです。 一般機械は対前年比23%増。 道路建設補修用のモーターグレーダーは1,5倍。 それから河川改修中心に油圧ショベルが1,3倍と今年上期は大変好調でした。 選挙特需を最も享受できた業界と言えそうです。
しかしながら下期は対前年比10%程度の減を予想しているということです。 それは内需は持つけれど輸出がかなり落ちるということのようです。

電動工具―中国品に悩まされる

それから電動工具。 プロフェッショナルのコンクリートカッターであるとかドリルなどは、中産階級の住宅融資が再開され活発な建設があったようで対前年 比15%の伸びが示されました。 しかしながらホビー用などいわゆる量販店向けの商売は中国品とかいろいろな競争が激しくなり、量もあまり拡大しないので 損益面で厳しい。 もうひとつは偽物ブランドがかなり入り込んで困っていると言う報告もありました。 対策としては、自社の中国製のものをブラジルへ持っ てきてある程度競争させるという対策を取っている会社もあると言う事です。

汎用エンジンーここにも中国製が

汎用エンジンですが、これも中国製が3年くらい前からがんがん入り始め従来の2社による寡占状態が崩れて苦しくなっているようです。為替が急に国内品有利になっていますので下期は少しは挽回できるかなという状況です。
景気がよくないのでレジャー用ヨットのデイ―ゼルだとか、その類のものがなかなか伸びてこない。多分これは自動車と同じでローン金利が影響していると言うことだろうと思います。

ネジ、軸受―下期に期待

それから工業用ネジとか軸受ですが、ここも基本的には自動車や自動車関連で当初予算を極めて高く設定したために実績と計画との乖離が極端にあって生産調整せざるを得なかったと言う事です。
市販にかんしては去年からの在庫調整が結局今年も続いていて上期はダメでした。 但し後半は、さすがに在庫が落ちますので回復を期待しています。

ポンプー選挙特需と豊作の恩恵受ける。

農業用ポンプですが、これは選挙特需や農産物の豊作などいろいろな面で恩恵を受け、上期は極めて好調でした。 
下期は、私は詳しくは知りませんが、今年の税収案の審議が遅れたことによって予算が削減されるなど選挙特需的融資が止まり気味であるようです。 従って下期は若干落ちますが農産物の好調が続いていることで灌漑用ポンプの好調はまだ続くと見ています。

精密測定器は販売好調

精密測定器は大型と小型があります。大型測定器につきましては、冒頭に言いました自動車メーカーの現調化の影響があります。自動車メーカーや大手家電 メーカーがローカルのメーカーからの調達を増やしています。 ところがローカルの部品メーカーはそれに答える為には、品質を上げなければいけないという事 で、いわば高級な精密測定器だとか、精密加工工具を買わざるを得ない環境になっている。これは今年だけでなくここ数年の傾向になっていますので、自動車の 生産そのものは落ちているけれどもそれらの販売は好調であるということです。

工具は苦戦

一方、同じ工具でも一般工具はさすがに自動車の生産が落ちた事で影響を受けたと言う事です。 自動車の下期見通しもよくないので下期の工具販売もあまり期待できないということです。

以上簡単ですが業界別報告です。

2002年下期業種別部会長懇談会-化学部会


新井化学部会長

 

上げはレアルで増だが、ドルでは大幅ダウン

新 井  化学部会の新井です。 うちの部会、同一業者がいない部会ですけども、上期の中で共通したことを簡単にまとめますと、業界全体で工業用の原料を商品としての販売が多いというこ と。 消費者直結型のものが多い。 そういう中で、インフレの中で消費者動向、あるいは原料として納めている先の製品価格の動向に影響される。見ていく中で、レアルベースでは売り上げは大幅 に増、ただしドルで見た実態では大幅のダウン。 これが各社共通点で、とくに主要原料を輸入に頼っていることもあって、為替の転嫁ができないということは採算の悪化に直結と。 こういうのが共通のところだったと思います。

具体的にいいますと、樹脂加工分野ですけども、タイヤ、自動車通信といった大きな市場の大半が不調だった。
一方で化粧品、包装資材関係は増加、その他日用雑貨、文房具関係は例年と比べ大きな変化はなかった。 いま申しましたように、ここも売り上げ減に加えてドル高での原料コストアップが製品価格に転嫁できない。 採算悪化する苦しい状況でリストラが必要ではないかと。

タイヤ業界 - 新車用不調、交換用堅調

タイヤ業界も新車用のタイヤは不調だったが、交換タイヤ市場が堅調だった。 これを米国向けなどの輸出で補ったけども、輸入原料が中心であり、コストは 増、採算悪化というような状況だった。 ちなみにタイヤの方ですけれども、自動車部会の方に移られて当部会ではないですけれども、レポートを頂きました。  伊藤さんの分取っちゃったかもしれません(笑い)。

写真フイルム - 上期は前年並み

写真フィルム・ペーパーは、年初は順調。いま田中先生もおっしゃったように、去年の11月以降、市況は3月にちょっと落ち込み、さらに5月以降のドル高 で憂慮すべき状況。 ただ海外に出なくなった分、国内のレジャーで済ます傾向のためか、小売、数量ベースではほぼ前年並みか若干の増で推移したのではない かと。 ただ中身を見ても、地域差が出ていて、南部の方は観光減による売り上げ不振、東北部の方は増というようなことが起こっている。 ドル高に伴う市場 価格の上昇で、需要見通しが立て難い状況になってきている。

筆記文具 - 採算悪化を懸念

筆記文具業界ですけども、ここ数年順調に伸びてきた。 上期も売り上げは8%ぐらい伸びたが、これは結局為替の変動に合わせた値上げを実施したもので あって、数量ベースでは前年並みではなかったかと思われる。 輸入原料が中心で、64%ぐらいの業界なので、採算の悪化が今後とも懸念される。

水処理剤 - ドル高が直撃

水処理剤は、2000年から2001年にかけて15%ぐらい伸びたということですが、実態はインフレおよび為替変動による値上げが大きな要因であり、市場 規模は横ばい。 70%から90%は輸入原料ということで、ドル高は経営を直撃。 常に値上げにかられ、輸出企業を中心に若干の値上げが通ったものの、ペ トロブラスのように、年に1回しか価格調整を認めないようなところは、“お手上げ”に近いような状況のようです。 あとはこの中でブランド力による差別化 みたいなところが起こっていて、その中でどうやって生きていくかと云うようなお話でした。

接着剤・シール剤 - 販売好調だが値上げ追いつかず

接着剤・シール剤では、コンシュマー市場は、電力危機それから多発テロによる購買意欲の減退、一昨年からの中国からのジェネリック品の猛威による影響な どがあったものの、去年の年末にかけて回復基調に入って上期も販売額、数量とも好調を維持した。 大幅なドル高による原料高に値上げが追いつかず、付加価 値率が大幅にダウンした。

工業材料 - 値上げしにくく採算悪化

工業材料部 門は、自動車業界の不調にもかかわらず、エンジンシール剤の出荷は新しい採用なども増えて好調だった。 ただ輸入品が多いということでドル高の影響を直接 受けており、値上げが通らない、通しにくいというお客さんが多いということで採算は大幅悪化、特殊な接着剤関係が伸びた以外は、あとは面白いところで、ブ ラジル系、中国系のスピーカーメーカーも伸びた。 一方、このドル高の影響で、国産品への転換を図る客先が増えてきているという状況であります。

好調の化粧品業界

化粧品業界は、女性相手の商売ということですが、昨年度(2001年)は、97年度比170%ぐらい伸びたというようなことで、値段の安い商品を中心に 大幅増進。出荷ベースの市場規模5300億円ぐらいで、世界でイタリアに次ぐ5番目の市場となっているそうです。 この中で輸入規制、高関税、薬事登録費 用、品切れ問題というようなことがありまして、ブラジルブランドが益々強くなっている業界だと。 これはあまり為替の影響を受けてないようで、為替の差損 分がそのまま転嫁できる趣向製品のようです。

農薬 - 上期販売はドルベースで17%ダウン

農薬業界は、合従連衡が進んでいまして、いま田中先生の方で「不況、危機を知らず」と言いますけども、確かに生産物はそうですが原料がほとんど輸入とい うことで、それを転嫁させるべく細かく20%ぐらいの値上げは通ってきているけども、それ以上の為替の下落率でレアルベースでは、例えば99年の1月から 見ますと倍になっている。

しかしドルで見た場合は20%のダウンという状況になっていまして、一方では業界の合併等の後遺症である流 通在庫の整理が行われ始めたことがあって、上半期は前年比ドルベースで見た場合17%のダウン。 ということで、たまたま今農牧業の好況というのは収穫期 の数字を表すので収穫期が上期、農薬など我々の販売期は下期と、このズレがありまして、上期は17%以上のダウンで、インフレが管理されている中で値上げ が押し通しにくく、皆さん採算悪化が共通の悩みということで上期が終了しています。

政治経済混乱を乗り切れば、に下期の期待

下期につきましては、引き続きドル高の今後の趨勢、これの一点に尽きまして、これが継続されるようであれば相当厳しい状況におかれるという認識で一致し ます。 一方でブランド力があるグループ、あるいは一方でブランド力でなく価格でくるという、欧州勢などを含めたジェネリック品の動向が新たな不安と。  特に筆記業界や農薬業界など、下期の売り上げが1年間の60から70%占める業界は、選挙戦の状況、政治経済のさらなる混乱というところが最大の不安要因 で、これをうまく乗り切れば、全体としての消費も含めてそんなにひどくはないので、採算も良化し、結果として笑う年になるのかもしれないという淡い期待を 描いている。 化粧品などは例外で、新しい企業が進出してくるとか、まだまだ海外からの投資が進みそうな業界もあります。 以上

化学部会資料

1) 化粧品業界の出荷ベースの市場規模は5300億円で米国、日本、仏、イタリアに次ぐ世界第5位。 内訳は3%がブランドものの高級化粧品、53%が訪問販 売、マス市場38%、フランチャイズ6%となっている。輸入規制、高関税、薬事登録費用、品切れ問題などで現地生産をしているブラジルブランドが益々強く なってきている。因みに01年度は輸入US$1億7000万に対し輸出US$1億4600万と欧州(スペイン、ポルトガルなど)向けを中心に輸出が伸びて きている。また輸入業者が直接店舗展開を図るケースも増加。

2)農薬業界は6月末にBayerがAventisを吸収し新生Bayer Crop Scienceが発足しSyngenta((Novartis+Zeneca),BASF(Cyanamid→BASF), Dow Agro Science (Rohm&Haas→Dow)と続いた業界大型再編成が一段落。 各社とも合併劇の中で積み上がった流通在庫の調整に入った。

2002年下期業種別部会長懇談会

 

当ブラジル日本商工会議所総務委員会主催の業種別部会長懇談会は、9月12日正午から当所会議室において行われた。「ブラジル経済2002年上期回顧と 下期展望」を主題に、「部会の今後の活動方針、戦略」、並びに在サンパウロ総領事館要望の「メルコスールに対する要望・提言・問題点」を副題に、午後4時 まで、出席者による活発な意見発表・コメントが見られた。

出席者:

会頭

総務委員会 司会

コンサルタント部会

金融部会

貿易部会

化学部会

機械金属部会

電気電子部会

繊維部会

食品部会

建設不動産部会

運輸サービス部会

自動車部会

総務委員会

監事会

オブザーバー:

工藤 章(伯国三菱商事)

赤嶺尚由副委員長(人材銀行ソールナッセンテ)

田中 信(まこと)部会長(リベルコン・ビジネス・コンサルテイング)

福岡米三部会長(ブラジル東京海上)

柳田武三部会長(ジエトロ・サンパウロ)

新井章夫部会長(ブラジル北興化学)

杉村秀一郎部会長(NSK・ド・ブラジル)

北野部会長代理=平田藤義氏(当所事務局長)

名取部会長代理=木口晃男氏(ユニチカ・ド・ブラジル)

渡辺英明部会長(東山農産加工)

鈴木ワギネル部会長(ホス建設)

横山幹雄部会長(日本航空サンパウロ支店)

伊藤一廣副部会長(NGK・ド・ブラジル)

藤下温雄委員(三井物産)

山田唯資議長(アイコン・コンサルタント)

赤阪総領事、花田副領事、上田副領事、内田専門調査員

 

 

左から工藤会頭、赤嶺司会、赤阪総領事

 

 

左から内田専門調査員、上田副領事、花田副領事、山田監事会議長、藤下総務委員、平田事務局長

 

司会の言葉

コンサルタント部会

金融部会

貿易部会

化学部会

機械金属部会

繊維部会

食品部会

電気電子部会

建設不動産部会

運輸サービス部会

自動車部会

自由討論

メルコスールに関する要望事項

部会の今後の活動方針・戦略

2002年下期業種別部会長懇談会-運輸サービス部会


横山部会長

横 山  運輸サービス部会ですが、”何かのデパート”といわれるぐらい、会社の数も種類も多く、一律にまとめて報告するには無理があります。 従って、運輸 サービス部会といってもそれぞれの小部会として報告し、それをまとめる形になり、本日は9つの業界について、簡単に報告したいと思います。

航空業界 ― 米同時多発テロの後遺症続く

まず航空業界について、昨日でちょうど1年経ちましたが、警戒していたが無事に終わったテロの影響を脱しきれないのが現状です。 日伯間は統計では、大 体半分以上が出稼ぎの方にお乗りいただいているという現状もあり、もろに影響を受けています。 大韓航空がテロ以降撤退したのが、特筆されます。 それか ら米伯間はほぼ壊滅状態が続いていたが、だいぶ回復したとはいえ、まだ不調です。
特に米系のキャリアについては、新聞報道でもあるように不調 でUSエア-の破綻、ユナイテッドも調子が良くない、これはひとえに大幅なイールドの悪化が大きな影響を与えていると言われています。 今までは考えられ なかった中堅キャリア、デルタ、ノース、コンチ、こうした3社が提携するなど、これからアライアンス関係の再編が行われると思われます。

ブラジル国内は、国際線に比べると比較的堅調、前年対比で若干上回る程度の業績を上げています。 ただしこれは、運賃の安い新興の航空会社、特に最近 ゴールという会社が伸びています。 それから借金経営で非常に厳しいなどと報道されているヴァリグは社長交代がありました。

日本では報道済みのように10月からJALとJASが合体する形で、日本航空システムが10月1日から稼働します。 航空業界においては、下期は為替の安定がひとえに影響が大きいと思われます。

旅行エージエント業界 ― 対日ビザ発給半減

旅行エージェント業界ですが、訪日旅客については10%ダウンと報告されています。 特にINBOUND関係が半減している、ということで壊滅的状況で す。 在日ブラジル人は26万、いや27万人と報道されていますが、年間では不調でも3万5千ぐらいの移動はあるのでは、と報告されています。 ちなみに 総領事館さんのほうで、発表されているビザの発給件数は1月から6月までの累計で、前年対比で約半分減って10,314件の発行数と報告されています。
それから旅行業界という形で今まで私たちの部会でも活躍されていたのですが、残念ながら7月で国際観光振興会さんがオフィスをたたまれたのも特記事項かと思われます。

海運業界 ― 税関ストも不調に追い討ち

続きまして海運業界ですが、2001年は8年ぶりの貿易黒字で、それを引きずる形で上期も好調ということですが、再三報告があったとおり、必ずしも輸入 も輸出も好調で堅調な形での黒字ではない。 輸出に引っ張られて何とか黒字を出しているが、全体的な規模としては縮小しているということです。
さきほどから報告されていますが、4月からの税関ストが長期化も、悪影響を与えています。 ただトータルでは下期、商船三井さんの報告ですと45億ドルの黒字が予想されています。

貨物運送業界 ― 人、貨物共に動きは今一

続きまして貨物運送ですが、これは去年の反動で年度初めには人貨共に活発な動きが戻ってきたが、長続きしない息切れ状態にあるとの報告です。 商業貨物 についてはW杯需要での家電製品の増産などがあったようですが、これも税関ストの影響を大きく受け、ちょっと伸び悩みとの報告です。
下期については為替の問題が大きい。ただ、クリスマスを始めとする年末の需要を期待しているという形で報告されています。

フオワーダー業界 ― これからが勝負

フォワーダー業界。ここは、「再編統合の動きが一段落して、これからが勝負の時だ」というふうなご報告です。 これについても国内経費の増加、これは輸出入の手続きなどの費用、これに加え税関ストの影響が大きいということです。
下期の見通しはよくないが、選挙の結果次第では期待できる展開もあり得るとのことです。

クーリェ業界 ― 気になる郵便法改正

クーリエの方は輸入が約20%減、輸出が11%減という形ですが、各社とも経費削減傾向が強く、その影響も大きいということです。エアカーゴは輸出が5.4%増えたが、単価が下がって収入増にはつながっていないと言うことです。
下期は選挙があるが、これは真偽が確かではありませんが、国家独占的な郵便法改正の動きがあり、趣旨としてはモグリ業者が多いので排除すると言うことですが、運用によってはブラジル以外の業者にはマイナスに働く懸念があると報告されています。

ホテル業界 ― 増設で供給過剰に

ホテルですが、昨年は宿泊者数が全体で20%ダウン。 上期はそれに加え、レジャー部門が非常に落ち込んだと言うことです。 それと大手の SOLETOURさんが倒産したので、観光業界全体に悪い影響を与えている。 ドミノ現象の倒産もあって非常に暗い感じになっています。 海岸地区のリ ゾート開発などが行われているのですが、これは稼働率がもともとよくないところに増えたので悪影響を与えている。  都市部ではフラットホテルの設立が相 次いで、供給過剰状態を招いている。 目下、サンパウロ市で125のフラットホテルが建設中で3万室が増設となります。 供給過剰をより大きくしていると いう悪影響を与えている。 ビジネス需要についても最近の経済情勢、ビジネスが減退しているため、統計ではブラジルに商用で来るお客の70%を占めるサン パウロが、もろに影響を受けており、下期も特段に良い予想は立っていない。

通信業界 ― 勢力地図塗り替えられる動き

通信業界です。簡単にいうとIT不況が蔓延しているお陰で、米大手通信会社破綻の危機につながった。 これも大きく報道されているが、グローバルプロッ シングの破産、ワールドコム、クエストなどこういった問題が現象的には会計処理の不適切さから端を発しているが、今までの過度の設備投資、それから実需要 とのバランスが取れなくて、過当競争の結果、経営が行き詰まったということの表れだと分析されています。
ブラジル内では既存キャリア同士のな わばり争いが本格化し始めた。 テレフォリカ・テレマール、エンブラテ-ル、ブラジルテレコムといった従来は国内のみのところが国外に、あるいはその逆な ど競争が激烈化しています。 投資については先ほどご報告あったとおり、停滞気味です。 最もアグレッシブな企業として、AT&Tというのが特筆されると 報告されています。 全体的にはインターネット。ブロードバンド化しているということです。 下期も、いま報告したようなことが促進され、通信業界の勢力 図が新たに塗り替えられる可能性が高いと言うことです。

リテール業界 ― レアル安利用、外国人は宝石買い

最後にリテール業界ですが、宝石関係からお聞きしたが、こういう報告は全体の業界で報告をすることにためらいがある。 つまり自分のところは好調だと言 うことを競合会社に知られたくないと言うことがあり、正式には報告しづらいというので、大まかにまとめると、外国人の旅行者が減ったのが直撃して不調だっ た。 ただし、4月以降はお客の数も回復、特にレアルが安いのは外国人の方が宝石を買うことにプラスにつながるので、徐々に回復傾向にある。下期について はさらに回復して欲しいとの願望があるとの構図になっています。

 

運輸サービス部会資料

1. 航空業界

  • ブラジル国内線では新規参入の航空会社による格安運賃の影響を受け、各社とも運賃の値下げ合戦に突入した。大手のバリグ、TAMを筆頭に各社とも赤字基調 の経営を迫られている。 輸送実績ではゴール社がバスピを抜き第3位に躍進する(4月実績)等中小規模の会社が大手を脅かしつつあると報道されている。
  • 景気の低迷もあり、期待されたワールドカップはブラジルが優勝した割には思った程の実績があげられなかった。

2. 旅行エイジェント業界

  • 下期には道元禅師750回法要・日蓮大師立教750回忌などの団体訪日他、県人会主催の訪日団当も全般に低調。
    7月以降のレアル貨の大幅切り下げと円高傾向によるダブルパンチが主たる原因と思われる。
  • 国内線は中堅大手6社の運賃構成(複雑な割引運賃など)とめまぐるしい運賃改定で販売は伸び悩んでいる。
  • 下期にはIN BOUNDは8月の東本願寺南米大会,9月の西本願寺世界佛婦大会等の大型イベントもあり対前年同期比若干は伸びるものと予測している。

3. 海運業界

上期回顧

  • 2001年に8年振りの貿易黒字を達成したが,2002年上期も順調な輸出を背景に4月までで既に15億ドルの貿易黒字を計上している。 コンテナの荷動きでは、昨年よりも更に輸出入のインバランスが拡大しており輸出に充当するコンテナの不足が問題化してきている。

1月ー4月 数量ベースでの前年比較(TEU)
輸出        輸入
東南アジア向け    43573(11%増)   33937(25%減)
欧州向け      123604(2%増)    80253(15%減)
北米向け       87932(11%減)   46737(5%減)
*コンテナ個数TEUとはTwenty-Foot Equivalent Unitの略で20フィートコンテナ換算を意味する。
*各地域別の輸出入コンテナ量の増減は2,001年度平均数量との比較(前年同期比ではない)

下期展望

  • 下期は  2002年4月より始まったブラジル全土における税関のストライキが長期化し、輸出入への影響が深刻化している。  最近の為替動向もあり、輸入の伸び悩みと、輸出増加のトレンドは今後も続くと重われる。
    従って貿易黒字も順調に推移し、2002年は44.4億ドルの黒字が見込まれている。
    (註:上記の数値は商船三井ブラジル社の報告です)

4. 貨物運送業界

上期回顧

9.11テロ事件の衝撃後2001年末まで殆ど異動はなかったが、その反動を受けて2002年当初より人貨供に活発な動きを呈し、本年当初は好調なスター トを切ったと期待していた。  通常は毎年11月後半から12月末までに帰任者が増加するため、それに伴う引越貨物の取扱繁忙期ニなっていたが、この時期 がずれ込み1月から3月にかけて急増した。 が反面ブラジルへの赴任者は相変わらず絶対数が減少している。(3人に1人の感触)

下期展望

  • 下期に為替の下落で輸出には期待できるが、農産物・工業製品が主力輸出品である以上は取扱にも制限・規制もあり、且直接的にも収益をもたらすものではないので第3次製品の輸出開発に期待する。

5. フォワーダー業界

上期回顧

  • 経済はアルゼンチン危機に始まり、ウルグアイ経済も落ち込み、ラテンアメリカ内のみならず米国経済にも陰りが見えてきて、中国を除く世界的不況時期に突入 した観がある。 ブラジル国内においても自動車産業の低迷に伴い、その傘下にあるサプライヤーも含めて物量は大幅に激減してきている。
  • これに加えて、10月の大統領選を前に今年4月から開始された税関のストライキの影響もあり、輸出入における国内経費増加に直面している荷主からすればその意欲を失い勝ちである。
  • サービスプロバイダーとしてはこのような状況の中で様々な提案を行い、顧客の獲得に努めている。

下期展望

  • 下期は7月末に発生した当地通貨Realの大幅下落により輸入は更に厳しい状況におかれている。 これまで以上に強行になる税関ストライキもあり、益々輸入には逆風となっている。 選挙結果により今後の動きも大きく変わる可能性があり、楽観視はできない。

6. クーリエ業界

上期回顧

上期は金額実績でクーリエ部門(ドルベースで)

  • 輸入 19.7%減
    輸出 11%減
    レアル安に比例して各社の経費削減の傾向が大きく苦戦を強いられている。
  • AIR CARGO部門(ドルベースで)
    輸出 5.4%増
    量はそれ以上に増えているものの単価が下がる傾向にある。

下期展望

  • 下期は上期よりは増える見込みだが、選挙のドサクサにまぎれて、国際的な動きに反する極めて国家独占的な郵便法が発令されるかもしれない動きがあり、クーリエ各社と運送業者は戦々恐々である。 為替差損が危惧される。

7. ホテル業界

上期回顧

  • 上期はテロ事件以来大幅に落込んだ(Fabeccのによると昨年航空券販売量は30%のダウン)。宿泊者数も20%ダウン。
  • 新規ホテル、及びフラッチ(貸しアパート)の設立が多発した為供給過剰を起こし、サンパウロ、クリチバ、ポルトアレグレ、ベロオリゾンチでは占有率が落込 んだ。 現在サンパウロ市では125のフラッチ、ホテルが新設または建設中であり、全体で3万室の部屋が増設される事になる。(Soteconti  Horwath Consulting調査)

下期展望

  • 下期のホテル業界の予想は現状の固定化、つまり大統領選挙その他の選挙が終わり政治・経済が安定しないと予測は難しい。当分は今のままの状態が続くと思われる。

8. 通信業界

上期回顧

  • 2002年上半期、ブラジルの通信業界の動きは、一言で言うと既存キャリアどうしの縄張り侵食争いがいよいよ始まった年であったと言える。 まず、5月 にはサンパウロ州内固定電話提供業者であるテレフォニカが国際電話を開始し、母の日キャンペーンで50%の値下げを行いサンパウロ州発の国際電話シェアの 35%を獲得した。 一方リオおよび周辺州の固定電話提供業者であるテレマールは6月に開始予定であった国際電話については提供開始を延期したが、Oiは 携帯電話を開始した。
  • 逆に国際および長距離の固定電話の提供にサービスを限られていたエンブラテルは、テレフォニカおよびテレマー ル社の長距離固定電話サービス参入を裁判闘争により阻止する動きにでる一方、8月にサンパウロ、リオをはじめとするブラジル各都市での市内電話サービス提 供許可を取得し、10月から企業向けのサービスを開始する予定である。
  • 一方、ブラジルテレコムは提供地域拡大および国際電話への進出 のためのユニバーサリゼーション(Anatelが定めた既存通信各社が業務内容および提供地域の拡大の許可を得るために達成しなければならないサービス品 質等に関する目標値)の達成はできていないが、エンブラテルのミラー会社であるインテリグ社の株式取得に強い意欲をみせている。 このインテリグ社も8月 には市内電話サービス許可を申請できる目標達成が認められている。 携帯電話の世界ではテレマールがOi携帯電話を開始したほか、テレコムイタリアモバイ ル社が運営開始の許可を待っている状況であるが、 BCPが経営不振のため負債支払い不能になったり、3月にはDとEバンドの競売は参加者なしのため中止されたり、Cバンドの66%値下げの発表があるな ど、新規参入の活気は既にない。
  • 通信市場における投資においてもエンブラテルが15億レアルの計画から4億レアルを削減したり、ブラ ジルテレコムは昨年比47%削減を決めるなど停滞気味である。 これは競争の進展によって財務的余裕が各社ともなくなってきたことと、過去における過剰投 資の反動が主な原因となっている。 このような中で2002年上半期に最もアグレッシブな動きをみせたのはAT&Tである。 AT&Tは 国際・長距離・市内固定電話市場に参入し、企業データ通信、IP接続を含め全サービスプロバイダーとしての地位を築こうとしている。
  • インターネットの世界ではブラジルにおいてもブロードバンド化が確実に進展している。 新聞各紙により数値は大きく異なるものの既に50万人から100万人以上の人がADSL接続を利用しており、当面この成長は続くものと思われる。

下期の展望

  • 2002 年の後半から2003年以降にかけての通信業界の動きは、いつ世界的なIT不況が終わりを告げ、実需に合った投資が着実な成長をもたらすようになるかとい う点に集約されるが、他の経済動向と同様、なかなか予測は困難である。 世界的にだぶついた過剰投資による回線・設備に対しIPのブロードバンド化による サービスの高度化、データの高速化の需要が少しづつとは言え確実に進展していることに注目すれば、大統領選の後で経済が落ち着けば、他の南米諸国に比べ ファンダメンタルがずっとしっかりしているブラジルでは、IT産業がまた経済のけん引役を担う可能性は十分あると言える。
  • 一方では通信各社間の陣取り合戦、競争の進展による財務基盤の弱体化も当面は続き、合従連衡が更に進み、通信業界の勢力図が大きく塗り替えられることも充分考えられ、その後通信業界全体が好転に向かう時期が何時になるかという点については未だ不透明である。
  • 但し、日本が現在けん引役となっているGPS携帯や動画伝送を可能とする第三世代携帯電話の動向に対してもブラジルはしっかり注目しており、ブロードバン ド時代の本格的開始と相俟ってIT化の流れは確実に継続していくことは間違いない。 IT化という流れが、一旦は幻想によりだぶついた贅肉部分を落とし、 停滞したかにみえたとしても、情報技術(IT)をいかに効率的に、有効に使いこなしていくかがこの始まったばかりの21世紀における人・企業・国家の生き 残りを左右することが明らかである以上、ブラジルにおいてもその流れは世界各国と同様確実に進展していくものと確信する。

    (註)この報告をしていただいたKDDネットホール社は2月に社名をKDDI do Brasil社に変更されています。

9.リテール業界

(宝石業界)

上期の回顧

  • 各業界の報告と同様に、アメリカの同時テロ事件以来の業績の落込みは激しいものがあり、今年度に入っても前半は厳しい業績であった。 ブラジルへの外国人旅行者の激減は直接的に影響を与えたと言えそうである。
  • しかし4月以降、販売は徐々に回復傾向にある。特に最近のレアル安は外国人旅行者にとっては、宝石類はお買い得となっている。

下期の展望

  • 決して楽観は出来ないものの、順調に回復して行くものと予想している。

司会  とてもよくまとまっていて分かりやすい報告ありがとうございます。最後に自動車部会の伊藤副部会長にお願いいたします。

2002年下期業種別部会長懇談会-司会の言葉

「ブラジル経済2002年上期の回顧と下期の展望」とその後で、 2つの副題に関する商工会議所の定例部会長懇談会を開催させていただきます。  まず最初に、この部会長懇談会の主役を務められ、今後「開かれた透明度の 高い会議所」づくりを目指して、なおいっそうの汗をかいて頂だかなければならない、各部会の部会長の皆様方、工藤会頭、それにオブザーバーの形でご出席頂 いております赤阪総領事、花田副領事、上田副領事、内田専門調査員、さらに当会議所の山田監事会議長、また、この懇談会を主催しております総務委員会から 藤下委員をはじめとする関係者の皆様方、本日はご多忙中のところご参加くださいまして、大変ありがとうございます。

この懇談会は、本来ならば、村岡真理総務委員長の司会のもとに進められるべきところですが、同委員長がのつぴきならない急用でただいま訪日中であります ので、大変力量不足で不慣れな点をお許しいただいて、副委員長の赤嶺が司会の代行を務めますので、何とぞご協力をお願い申し上げます。

本日の懇談会の第1部は、主題の「ブラジル経済の回顧と展望」ですが、各部会長の発表が終わったところで、できるだけ自由な質疑応答を行い、それには赤 阪総領事をはじめ総領事館側の皆様方、また当会議所の山田監事会議長、総務委員会の方々など全員に参加していただきたいと思います。

いずれも超多忙の方々ばかり、さらにその後に2つの副題も控えておりすので、「回顧と展望」のところでの各部会長の発言は、できるだけ10分間程度に押 さえて下さいますようあらかじめお願い申し上げます。 また本日は、電子電気部会の北野部会長が当会議所を代表してマナウスでSUFRAMA関係の見本市 にご出席中ですので、その発言の要旨を当会議所の平田事務局長に代読して頂きます。

それ から第2部の最初の副題では、これまで開かれた部会などでもすでに出されております「メルコス-ルに関する要望事項」について、総領事館の各担当者からコ メントをお伺いすることになります。 第2部のもう一つの副題につきましては、工藤会頭にその時点で司会役をバトンタッチしまして、会頭中心にやはり全員 参加の形で、今後の当会議所のあり方、なかんずく部会活動に基づいた会議所の活性化といった極めて重要なテーマに関して活発に話し合い、忌憚のないご意見 を交換して頂きたいという風に考えております。

第1部が終了した段階で、5分間程度の コーヒーブレイクを設けさせて頂きます。 終了時間はただいまのところ、午後3時半ごろを目指しておりますが、多少の遅れはご勘弁いただきますようお願い 申し上げます。 なお、オブザーバーの形でご出席を頂いております赤阪総領事には、懇談会の冒頭、工藤会頭に引き続いてごあいさつをお願いし、一連の発 表、討議がすんだ段階でもコメント、ご講評を賜りたいと存じます。 こういう手順、要領で本日の部会長懇談会を進行させていきたいと考えております。 最 初に工藤会頭に、通常は総務委員長がおやりになっていらっしゃる最初のごあいさつをお願いしたいと思います。