第14回日本ブラジル経済合同委員会が2011年8月9日、10日の2日間に亘ってバイア州工業連盟講堂に250人が参加して開催、日本から経団連の飯島彰巳日本ブラジル経済委員長、同委員会の大前孝雄企画部会長、三輪駐ブラジル大使、讃井暢子常任理事など120人以上が参加、ブラジルからはブラジル全国工業連盟(CNI)副会長のマスカレーニャス・ブラジル日本経済委員長、ピメンテル商工開発大臣、ワグネル・バイア州知事、ガウヴォン駐日大使、ロブソンCNI会長など120人以上が参加した。
9日に開会式は午前9時から開始、初めにマスカレーニャスCNIブラジル日本経済委員長が開会挨拶、飯島彰巳日本ブラジル経済委員長、ガウヴォン駐日ブラジル大使、三輪駐ブラジル大使、ホブソンCNI会長、ワグネル・バイア州知事、ピメンテル商工開発大臣がそれぞれ挨拶を行った。
初めの全体会合では「日伯関係の展望」 をテーマに、ジョゼ・アウグスト・コエリョCNI エグゼクティブ・ディレクターがモデレーターを担当、経済産業省の岡田秀一経済産業審議官は昨日の第5回日伯貿易投資合同委員会ではテイシェイラ次官のお陰で成功裏に終了、また東日本大震災の復興状況について説明、ルシアーノ・コウチーニョBNDES総裁 は国際協力銀行(JBIC)とBNDES銀行の50年間に亘る提携、欧米の経済成長の減速、日本並びにブラジルの金融危機の克服、石油、電力エネルギー、ロジステック、住宅建設並びに農業部門への投資、日本のブラジルへの都市衛生、都市交通や環境部門への投資、日本はブラジルのアジア進出拠点などについて説明した。
カルロス・マリアーニ・ビテンコート CNI ディレクターは日系移民の農業部門への貢献、1950年代からの国家プロジェクト、70年代から80年代のセラード開発、日伯地上デジタル放送方式の中南米への普及、今後有望やバイオ燃料プロジェクト、日本のファイナンス並びに技術導入によるインフラ整備、アフリカへの技術移転などについて説明、ブラジル三菱東京UFJ銀行の村田俊典頭取は 「東日本大震災と日本経済」をテーマに、マグニチュード9.0で津波による東北地方の寛大な被害、福島原発事故、今後の日本経済への影響では企業マインドの悪化並びに被災地以外への感染、電力エネルギーの節電対策やサプライチェーンへの影響、阪神・淡路大震災の2倍を超える直接被害、設備投資の中止、特に原発並びに電力エネルギーの供給が問題であるが、予想を上回るサプライチェーンの回復、リスク分散のための生産拠点の海外移転でブラジルの重要性の上昇、日伯は相互補完関係でWin-Win関係などと説明、ブラジル日本商工会議所の近藤正樹会頭は商工会議所のこれまでの歴史・活動、現在の会員企業数は327社で過去最高の333社の突破予想、日伯の貿易動向、日本のブラジルの貿易ランキング、投資動向、ブラジル大企業500社の外国企業並びに主要業種、技術移転、移転価格税制、ヴィザ並びに再保険のビジネス環境整備による日伯関係の強化などを説明した。
専門セッション1の「天然資源・エネルギー」ではマスカレーニャス・CNIブラジル日本経済委員長 がモデレーターを務め、Vale社のムリロ・フェヘイラ社長はブラジルが天然資源や農産物生産で世界をリード、2015年までの鉱業部門の雇用はカラジャス鉱山開発を筆頭に130万人、アジア向け鉄鉱石輸出用船舶として40万トン級タンカーの発注、マレーシアやオーマンでの新拠点、レアアース市場参入、松阪のニッケル精錬所などについて説明、ジョゼ・セルジオ・ガブリエリ Petrobras社 社長は過去数年間の原油埋蔵量の1/3はブラジルの岩塩層下原油、三井物産とのパートナーシップ、ブラジルの2015年の石油生産は500万バレル、投資総額は2247億ドル、2020年には734万バレル、国内消費は330万バレル、日本からの石油関連部門の投資に期待していると説明した。
住友金属鉱山の阿部 一郎副社長は日本の非鉄企業は8社で精錬事業部門が強固、自社の紹介、ブラジルの魅力、ブラジルでの活動 、日本の非鉄企業は川上の鉱山生産参入、リサイクル事業、電子材料生産、地熱発電事業の参入、ブラジルの鉱山法の改正、環境ライセンスの一本化への要望などを説明、最後にトーヨー・ド・ブラジル社の鴨島元佳社長はエネルギー分野プロジェクトでは大半がペトロブラス向け、参加プロジェクトではREVAP製油所近代化プロジェクト、GuaraパイロットFPSOプロジェクトなどを紹介した。
<専門セッション2>「インフラ」では大前経団連日本ブラジル経済委員会企画部会長 がモデレーターを務め、初めにABDIB社のラルフ・リマ・テッハ副会長が自社の事業内容、売上推移、投資として石油・天然ガス、電力エネルギー、衛生部門やロジスティック、今年の石油開発向け入札、石油、道路、鉄道、港湾インフラ投資、リオ市を中心としたオリンピック向け投資、ワールドカップ向け空港インフラ投資などを説明、Odebrecht社のベネジクト・バルボーザ・ダ・シウヴァ・ ジュニオール社長は「ブラジルとインフラ」について、昨年のブラジルのGDP伸び率は7.5%と1970年代以来の高率、300大企業 トップの調査では道路・鉄道インフラがネック、道路は米国、中国、インドに次いで4位、ベロ・モンテ水力発電所、原子力発電所建設はリスクの再検討、世界10位の鉄道、地下鉄の総延長局255キロで世界12位、経済成長加速プログラム(PAC)の環境ライセンスの認可などについて説明、三菱重工業の堀口 幸範執行役員グローバル戦略本部副本部長は会社紹介、交通プロジェクトの実績、ブラジルでの課題としてホスト国のフレイムワーク、為替リスク、ブラジルコスト、公立銀行のファイナンス、日本連合による台湾新幹線、ドバイの無人自動化の地下鉄、石油価格高騰による低レベルCO2排出の都市交通プロジェクトへの注目などについて説明、国際協力銀行(JBIC)の星 文雄副経営責任者はJBICのブラジルの78億ドルのクレジット残高、ブラジルコストとなるインフラ整備の急務、サンパウロ大都市圏環状線やメトロ4号線クレジット、官民パートナーシップ、リスクシェアリング、オペレーションリスクとしてライダーシップリスク、為替リスク、インフレリスクを挙げた。
最終日の8月10日の<専門セッション3(分科会)>「環境技術と再生可能エネルギー」 ではサンパウロ工業連盟のロベルト・ジアネッチ 国際問題・貿易部ディレクター がモデレーターを務め、初めにETH社のジョゼ・カルロス・グルビッシュ社長 がエネルギー効率ではサトウキビがビートやトウモロコシを凌駕、2016年のブラジルのエタノール需要は600億リットル、今後2016年までのサトウキビ栽培面積は450万ヘクタールで4000万トンを増産、投資総額は500億ドル、ブラジル以外ではコロンビア、メキシコ、モザンビークやアンゴラで生産可能と説明、双日の大野 滋執行役員は2010年の代替えエネルギーの世界投資は 2100億ドルと2006年の6倍、中国が500億ドルでトップ、ドイツ410億ドル、米国300億ドル、イタリア140億ドル、ブラジルは70億ドル、風力発電、太陽光発電、バイオマスや地熱発電と多岐に亘ると説明、マエカワ・ド・ブラジル社の大井直樹社長は自社の海外での事業展開、ブラジルは今年43年目で主に冷凍機、ガスコンプレッサー、食品加工機械を販売、日本で官民一体で省エネに取り組んでいるJASE-Wは傘下企業80社で150種類の省エネ技術を保有、エネルギーソル-ション事業や工場の排熱利用などブラジルの省エネに役立つと説明した。
同じ時間帯の(分科会)>「イノベーションと先端技術」では讃井経団連常務理事がモデレーターを務め、Embraer社のジョゼ・セハドール 国際商務政策計画部ディレクター 、Braskem社のエジムンド・ジョゼ・カヘイラ・アイレス 技術イノベーション担当副社長、東レの小泉 愼一代表取締役副社長 、日立ブラジルの岩山 明郎社長がイノベーションや先端技術に関する講演を行った。
<専門セッション5(分科会)>「農林業」 ではペドロ・ジ・カマルゴ・ネット ABIPECS CEOがモデレーターを務め、Fibria社のルシアーノ・ペニード評議会議長が「農業と林業」と題して、ブラジルのユーカリ植林の収益性、環境保護の植林プランテーション、小麦やトウモロコシの間作栽培、植林3年後には放牧可能、ブラジルの植林面積は700万ヘクタールと僅かに国土の0.8%、また植林周辺の環境保全面積が300万ヘクタール、64万人の直接雇用、470万人に達する間接雇用、日本資本の銭ブラは1973年設立、25万6000ヘクタールで植林事業を展開、生産性向上のためのバイオテクノロジーの必要性などを説明した。
マルチグレインの富島 信彦社長兼CEOはブラジルでの事業としてバイア州に8万ヘクタールの耕地で大豆、トウモロコシ、綿花や小麦を生産、またゴイアス州やマラニャン州の耕作面積を編ませると12万ヘクタールで事業展開、灌漑設備投資で生産性向上、連邦政府へのリクエストとして南北鉄道とバイア州の東西鉄道のロジスティック整備、税制(PIS/Cofins),外国人による土地購入緩和を説明、 最後に住友化学ブラジルの松下 敏明 社長 は自社の歴史や事業を紹介、ブラジル進出は1975年で飼料添加物、家庭防疫用品、殺虫剤などを販売、連邦政府へのリクエストとして農薬登録審査期間の短縮、移転価格税制の改善や税制体系の簡素化を挙げた。
同じ時間帯の<専門セッション6(分科会)「新テーマ」 では三菱商事の白木 清司常務執行役員中南米総括 がモデレーターを務め、BNDES銀行のルイス・エドゥアルド・メリン・ジ・カルバリョ・ イ・シウヴァ・ディレクター、Brandesco銀行のルイス・オゾリオ・リオン・フィリョ 最高責任者、全日本空輸の戸矢 博道顧問、 ブラジル三井住友銀行の小西 輝久社長が新しいテーマに関する講演をそれぞれ行った。
・分科会の報告 /意見交換及び総括ではインフラ分科会の大前モデレーターはインフラ整備では日本は官民の協力でインフラ投資として都市インフラ、ロジスティック、通信並びに電力部門 、提言に挙がったPPPスキーム案件、民間企業オペレーションリスクとしてライダーシップリスク、為替リスク、インフレリスク、ホスト国のリスク分散スキーム、ブラジルコスト削減、鉱物や食糧の競争力向上のためのロジスティック整備、輸送インフラ部門では民間企業のリスク低下が不可欠、公立金融機関の参加、官民の分担整備、他国の成功例の整備、ジョイントコミティ-設立の提案をした。
ジアネッテ・モデレーターは食物繊維活用のバイオ燃料、バイオエネルギー部門のイノベーション、パームオイルの利用、日伯協力してアフリカのモザンビークなどサバンナ地帯でのエタノール生産サポート、讃井モデレーターは競争力アップのカギはイノベーション、10年先の技術を考慮、二酸化炭素削減する緑のポリエチレン、大学との技術協定、タンのっ繊維の航空機への利用、電力送電や石油関連部門への炭素繊維の利用、47年間無事故の新幹線のハイテク、高速鉄道の環境保全や安全確保の重要性、製品以外ではプロセス・組織などでのパートナーシップなどを説明した。
ペドロ・カマルゴ・モデレーターは環境保全重視のプロジェクト、インフラ不整備が共通した問題点でブラジルコスト引上げで競争力低下、世界は食糧増産が必要なために日伯のパートナーシップ拡大、白木モデレーターはビジネス環境の整備、金融サービス、人的交流,JBICとのパートナーシップ、レアル建てファイナンス、ビザの問題、日本への直行便の再開要請、邦銀としての規制の緩和など課題が明確になったために次回も同じテーマで実施すると説明した。
閉会式では飯島日本ブラジル経済委員長は多数の企業トップの参加で、各セッションでも活発な議論が展開されて非常に有意義であった。また工業国のブラジルは経済大国となり、ジウマ大統領のPACプロジェクト推進を信じており、両国の経済関係の更なる発展を願い、今後の情報交換の場とでありたいと結び、マスカレーニャス・ブラジル日本経済委員長6つのパネルでは素晴らしい情報交換ができ、会合が成功裏に終了したことに対して、経団連、バイア州工業連盟、CNI並びに関係者に心からお礼を申し上げると結んだ。
(Fotos : Sohei Osumi / CCIJB)




