「金融危機下の南米4カ国の政治・経済・マーケット勉強会」に会場一杯の58人が参加

企画戦略委員会(田中一男委員長)、コンサルタント部会(都築慎一部会長)並びにジェトロサンパウロセンター(佐々木光所長)共催の「金融危機下の南米4カ国の政治・経済・マーケットに関する勉強会」が2009年3月18日午後2時から4時30分まで商工会議所の大会場一杯の58人が参加して開催、都築部会長が南米の他国の様子聞いて、今後のビジネスの参考にして下さいと開催挨拶した。

進行役の佐々木所長はブラジルの名目及び実質GDPの推移では自動車出荷額に相当する約10兆円の損失、JPモルガンの3月の南米各国の経済成長率予測は大幅な下方修正で、ペルー以外はマイナス成長となるが、ブラジル経済成長は2010年と回復は早く、日本からのブラジルへの進出を検討している企業は20社以上で、不況故に南米の新規市場開拓に積極的になっており、資源供給国、消費市場として日本企業が南米を再認識しだしていると述べた。

初めにジェトロ・サンチアゴ事務所の竹下幸治郎所長はチリの特徴として銅、競争力の高い食品産業を背景に豊かさを享受して貧富の差が小さく、経常収支黒字のための構造的政策を2001年から採用、1970年代からの民営化の促進、競争力を付ける改革の積重ねが継続して行なわれ、教育熱心で法律を重んじる国民、固定された階級と保守的で30近い財閥の力が強く、南米では特異な国である。

チリ政府は競争力強化のためのイノベーション委員会を設立して中長期的に産業別に分析、鉱業、養殖業や果樹栽培部門は競争力があるが、重要セクターに重点的にテコ入れ、チリのジニ係数は0.397と大半の中南米国が0.5以上の中では最も低く、また今後10年間は可処分所得層の増加で、理想的な「つぼ型」ピラミッドの人口構成に移行する。

チリはFTA先進国で盛んに貿易協定網の拡大を行なっており、アジアとのFTA推進による物流コスト低減、アジア市場での輸出開拓、アジア・中南米間貿易・投資のハブ機能の強化を推進、また女性の社会進出が盛んで就業率が高いし、女性の買物のイニシアチブは49%に達している。

2007年に締結された日本チリ経済補完協定(EPA)の1年後の評価として、日本企業による対チリ貿易・投資環境の改善、銅をはじめとする鉱物資源の安定供給確保、日本から南米地域への経済進出拠点確保について説明した。

最後に世界金融危機の影響として国際銅価格の急落による為替のペソ安、海外需要減による銅産業と木材産業への打撃、ドル流動性の低下による信用収縮は発生したが、チリ政府の迅速な対応が1ヵ月後にはドル流動性が回復、近年の銅国際価格高騰で蓄積した豊富な外貨準備金、身の丈にあった健全な財政運営でカントリーリスクへの影響は軽微であったが、今年のGDPは0.2%のプラス、インフレは昨年の8.2%から2.3%、貿易収支は83億ドルから18億ドルの赤字となるが、2010年のGDPはペルーの4.0%に次ぐ3.2%が見込まれ、投資環境が整っている魅力ある国であることを強調した。

続いてヴェネズエラのジェトロ・カラカス事務所の森下卓哉所長は初めにヴェネズエラ政府発表の公式統計はあくまで参考と前置きして、2008年前半までは原油価格の上昇で石油収入の増加で公共支出拡大をして消費並びにGDP共に伸びたが、為替管理の導入で並行市場が拡大した。

また価格統制導入で品不足が発生して高インフレ、また石油が輸出に占める割合が10年間で25%アップして、昨年は93.5%と石油に依存、労働者過保護政策で頻繁に発生する労働争議、度重なる外国企業の国営化、治安の悪化や高い失業率など多くの問題を抱えており、2007年の自動車販売は49万台と記録を更新したが、国内自動車生産保護として輸入車の関税を引上げたために、昨年は自動車販売が大幅に減少した。

リーマンブラザーズ破綻後の昨年最終四半期から経常収支は赤字に転落、原油価格の下げ止まりのシナリオでは外貨割当削減で高い並行レートで輸入増加するが、インフレ亢進、増税・新税導入で景気・消費にブレーキがかかる。

またチャベス大統領の“21世紀社会主義”では新しい所有権様式、社会主義の基本的要素は生産手段の社会的所有、土地は国家の所有、経済発展のために戦略的価値のある生産活動のコントロールとして国営化、接収、中央集権化に傾く。

しかしヴェネズエラは独自路線採用で常に変化して動向を見る必要があるが、金融危機後も消費の冷え込みや失業率の上昇はなく、ヴェネズエラでは実質金利よりもインフレが大きいために、ヴェネズエラ人は資産保護の目的で新車や中古車を購入するが、市場価値が下がり難い高級品を買う傾向にある。

世界金融危機後も日本の進出企業は増える傾向にあり、ヴェネズエラへの輸出を検討している企業が増加しており、石油以外にあまり知られていないが鉄鉱石、金など豊富な資源を擁しており、オリノコ川流域のオイルサンドの埋蔵量はサウジアラビアの埋蔵量を追越すと見込まれており、長期的視点で見れば、先行投資で大いにビジネスチャンスがあると強調した。

続いてアルゼンチンのジェトロ・ブエノスアイレス事務所の設楽隆裕所長はアルゼンチン気質として自己中心的でサービス精神が足らず、豊富な食料生産でハングリー精神にかけるが,3万人の在亜日系社会の功績で非常に対日感情はよい。

キルチネル政権の経済政策では高い輸出税、輸出促進のための為替切下げ、労働者優遇で労賃高騰や価格統制政策などの採用で新規投資の足枷になっていたが、退任時には経済活動指数が50%、工業生産指数は44%それぞれ増加したが、貧困層の低下、カントリーリスクの低下、外貨準備高の上昇が挙げられる。

後任のフェルナンデス政権ではカントリーリスクが再び上昇、工業生産指数は6.7%減少、失業率と貧困率は僅かに低下したが、メルバル株式市場の平均株価は半減、為替レートも16%下落している。

金融危機の影響では農産物コモディティ価格の下落で輸出減少、外貨準備高の減少、内需の低迷、投資計画の凍結や延期で失業率の上昇や雇用不安で支持率を下げており、国内では農業セクターとの対立問題、隣国ウルグアイに進出した製紙会社ボツニア社の排水抗議で国境封鎖など抱える問題も多い。

しかしそれでもアルゼンチン市場の魅力は穀物、農産物の資源大国、中南米1の高い購買力、ダントツの高等教育就学数の教育水準、世界10位の生活の質、バイオジーゼルの生産事業の投資が相次いでおり、リチウム、亜鉛、金や銀などアンデス山脈沿いに既存プロジェクトが集中、鉄道、首都圏地下鉄網、寡占流通浚渫工事などの大型国内インフラ整備など多岐に亘る分野でビジネスチャンスが大いにあると説明した。

最後にペルーのジェトロ・リマ・センターの石田達也所長は冒頭からクイズ形式でペルー、中国、カタール、インドに共通するもの? 正解は金融危機にも関わらずIMFが5.0%以上の経済成長率を予想、3年連続で現役大統領が日本訪問? 正解はペルーのアラン・ガルシア大統領、ペルー23社、4日間、2425人? 正解は2月24日から27日までジェトロ主催のペルー展で非常にペルーは関心を集めている。

ペルーが注目を浴びる3つの理由として、リーマン・ショックへの耐性、政治的な安定性、100年に一度の日本企業にとってビジネス環境の大幅改善を挙げた。

昨年のペルーの経済成長率は9.84%と大幅に伸びたが、金融危機後の今年の世界の平均経済成長率はゼロ成長に近いが、ペルーは5.0%、来年は6.0%が見込まれており、産業別の心配度では鉱業が57%と高いが、その他の産業部門では低くて、企業の財務担当役員への金融危機の影響調査では66%は自社への影響はないと回答している。

また企業の社長に対する今年の給与傾向調査では現状維持以上が70%以上と回答、また家計の前年との比較調査ではリーマン・ショック後によくなったと回答した人が増えており、一般的には考えられない結果となっている。

またペルー企業の破産件数調査では金融危機前後でも変わらず、ペルーは鉱業や魚粉輸出のイメージが強いが、内需がGDP比72%と高くて金融危機の影響が少なく、消費傾向として地方都市での中間層が増加してきている。

リマの企業家は今、貧困層が多いからビジネスチャンスと見ており、2007年の貧困層は39%で70%がリマ市以外の地方都市に住んでおり、ガルシア大統領は2011年までに貧困層の比率を30%まで減らす計画を立てており、280万人が貧困層から脱出するので、地方では大いにビジネスチャンスが広がってくる。

アンデス域内で唯一米国とFTAを発行済みで、域内では調停役として国際社会からの信用を勝ち得ており、政治的な安定性では保護主義と対局するFTAを加速させており、中国、韓国とはFTA交渉が終了して発効を待っている状態、ペルーはFTAを果敢に進めて外資投資の促進、輸出増加で雇用を促進して、ペルーの夢である貧困層の削減に邁進している。

今年は日本・ペルーと投資協定(BIT)の発効見込み、日本初の投資環境整備章委員会の立上の見込み、日本・ペルーEPA研究会実施、日本・ペルー友好議員連盟の再発足などビジネス環境のお膳立てが用意されており、100年に一度のビジネスチャンス到来と強調した。

最後に質疑応答では色々な質問がでたが、100年に一度の危機は裏を返せば100年に一度のビジネスチャンスであり、日本企業にとっては食料や資源供給国である南米でのビジネスには計り知れないチャンスがあると予感させるセミナーであった。

下記の発表プレゼンテーションはこちらをクリックするとご覧になれます

※セミナー開催にあたって(ジェトロ・サンパウロセンター 佐々木光所長)

※日本・チリEPAの効果と今後のチリ経済の見通し(ジェトロ・サンチアゴ事務所 竹下幸治郎所長)

 チャベス大統領の動向と今後のヴェネズエラ経済の見通し(ジェトロ・カラカス事務所 森下卓哉所長)

※アルゼンチン経済〜その現状と課題〜(設楽隆裕所長)

※2009年、ペルーが注目を浴びる3つの理由(ジェトロ・リマ 石田達也所長)

 

左から都築慎一コンサルタント部会長/講師のジェトロの石田達也リマ所長/森下卓哉カラカス所長/竹下幸治郎サンチャゴ所長/設楽隆裕ブエノスアイレス所長/佐々木光サンパウロ所長

3月の懇親昼食会に125人が参加して盛大に開催された

3月の定例懇親昼食会が2009年3月13日正午過ぎからマクソウド・ホテルに125人が参加して盛大に開催され,司会は平田藤義事務局長が務め、初めに特別参加の丸橋次郎首席領事、サンパウロ日伯援護協会の森口忠義イナシオ会長が紹介された。

会社代表/対会議所代表交代挨拶ではヤンマー・ブラジルの古宮康司前社長の後任北原健二社長がヤンマー・ブラジルは1957年創立で50年以上の歴史があり、ジーゼルエンジン輸入販売などでブラジルの農業部門で長年に亘り発展の礎になってきたが、今回の就任では期待とプレッシャーを感じていると就任挨拶を行なった。

ユニチカ・ブラジルの今西輝夫社長は2003年5月に赴任、約6年弱のブラジル勤務、会議所活動では1年間繊維部会長を務め、色々な研修旅行やセミナーに参加、また第6回カマラゴルフ大会での優勝もよい思い出になっていると述べた。

ユニチカの後任岡田幸平社長は1946年生まれの九州男児、技術部門畑で女子バレーボールで有名な貝塚工場,岡山の総社市にそれぞれ長年勤務、海外勤務は1980年から3年間はコート・ジボアールで技術指導、スポーツではテニスやゴルフもやっているが、15年前から備前焼をやっていると述べた。

NYKラインの今井達也氏は前任の片山社長の後任で1月15日に赴任、海外勤務は3回目で一生懸命ポルトガル語習得に勉強していると述べ、新入会員紹会ではカシオ・ブラジルの島田信彦社長が更なる拡販のために営業活動の活性化を強調、個人会員の高橋祐幸氏が田中会頭から誘われて個人会員として復帰したが、15年前からリタイアして有名なサッカー大会の実行委員を務めてきたが、また商工会議所会員として新しい視界を開きたいと挨拶した。

3分間スピーチでは鈴木孝憲氏が2008年12月に出版された日本経済新聞の和田昌親常務著の「逆さまの地球儀−複眼思考の旅」の紹介で、著者はブラジルのモラトリアムが表面化した時のサンパウロの特派員で、昨年1月には同新聞社とブラジル日本商工会議所などの共催で経済シンポジウム開催の立役者であり、南米を知り尽くした興味ある本であり、是非、皆さんに読んで頂きたいと薦めた。

サンパウロ日伯援護協会福祉センター建設の5分間のビデオを流した後、森口忠義イナシオ会長が流暢な日本語で福祉センター建設の意義、目的や募金協力について説明、アイセック東京大学委員会の高橋俊氏は特定非営利団体アイセック・ジャパンと海外インターシップに関して、アイセックの歴史、組織や目的、海外での企業での労働活動を通しての国際交流や文化交流の重要さ、受け入れ企業の要請などについて説明した。

懇親昼食会に先立ち定例理事会が開催され、田中信会頭から2008年事業報告並びに2009年度事業方針、米倉立二郎財務委員長から2008年度収支決算報告並びに2009年度収支予算計画、最後に田中信会頭から委員会の統廃合について説明が行なわれた。

その後に第59回定例総会が開催され田中信会頭から2008年度の事業報告並びに2009年度事業方針、米倉立二郎財務委員長から2008年度収支決算報告並びに2009年度収支予算計画、山田唯資監事会議長から監事会意見、最後に田中信会頭が以上の報告についての承認を拍手で求め、圧倒的多数で承認された。

 

 
左から田中信会頭/援協の森口忠義イナシオ会長/貞方賢彦顧問


左から山田唯資監事会議長/米倉立二郎財務委員長/田中信会頭

日伯法律委員会に41人が参加して開催

日伯法律委員会(松田雅信委員長)が2009年3月12日午後4時から41人が参加して開催、初めにチアゴ・ヴィエイラ・ロッシャ弁護士が暫定令449号のインパクトと題して軽減のプロセス、プロセスの変更、金融取引税(IOF)徴収などについて説明した。

エヅソン・ジョゼ・ダ・コスタ弁護士は移転価格税制のCPLとPRL60%の計算方法で再販価格比準法と原価基準法の算定方法、不合理な利益率などについて説明、マルセロ・ロドリゲス弁護士は過渡期の税収と題してREFIS並びにPAESの再分割払い、工業製品税(IPI)のクレジット活用方法などについて説明した。

 

第2回異業種交流委員会議事録

日時:3月12日(木)19:00~21:00
場所:ブラジル日本語センター
参加者 22人

テーマ

  1. 航空貨物業界の現状と最新ロジスチックについて − ブラジル日通 百澤さん
  2. 「ブラジルの金利は何故高いのか?」 − ブラデスコ銀行 山崎さん 
  3. MERRY こと 具志恵・沖縄三線歌手によるショートライブ

第1回70周年記念委員会に8人が参加して開催

第1回70周年記念委員会(佐々木光委員長)が2009年3月10日正午から午後1時30分まで商工会議所会議室に8人が参加して開催、来年創立70周年にあたり、会議所70周年史編纂のために今後のスケジュールや編纂方法、編纂作業、経費、見積、資料や写真の整理などについて意見の交換が活発に行なわれた。

出席者は佐々木光委員長(ジェトロ)、田中信会頭、和田亮副委員長(日通)、鈴木徹副委員長(電通)、壇上誠副委員長(日本経済新聞)、原宏氏(ジェトロ)、平田藤義事務局長、柴田千鶴子事業班主任

会議所70周年史編纂で意見交換

第12回カマラゴルフ大会に50人が参加して開催

2月28日(土)に今年初めてとなる第12回カマラゴルフ会がPLゴルフ場で開催されました。当日は好天に恵まれ、第一組が7時15分にスタート、総勢50名の参加者で競技が行われました。

結果は、MITSUYUKI NISHIMURA(SUN CHLORELLA)さんが、前半44 後半40グロス84 ハンディ 20 ネットスコア64で優勝。 2位には2打差でKIMIO SHIMAZU(NACHI)さんが入り、3位はAKIRA MOTOOKA(MARUBENI BRASIL)さんが入りました。ベストグロス賞は SHUICHI KOSHI(AOKI TECHNICAL)さんが37・43のトータル80で獲得されました。

その他の成績は次の通りです。
NP AKIRA KIMPARA(NISSHINBO)さん、KATSUKI NISHIOKA(HITACHI BR. REPRES.)さん、SHUICHI KOSHI(AOKI TECHNICAL)さん、AKIRA TAKEUCHI(BCO DE TOKYO MITSUBISHI)さん

LD KENTO NISHIMURA(SUN CHLORELLA)さん、TOMOAKI FUJIWARA(NEC)さん 大波賞 NARUSA KAWAMURA(CIA. IGUAÇÚ)さん、小波賞 MASARU HORIUCHI(MUZUHO CORPOTRATE)さん、水平賞 JOÃO UEDA(CBD)さん

第1回日伯貿易投資促進委員会が2月19日から20日までブラジリアで開催

第1回日伯貿易投資促進委員会が2009年2月19日から20日までブラジリアで両国から多数が参加して開催、両国の問題点を政府ベースでも明らかに出来たことは前進であり、今後の進展が期待できる素晴しい会合となリ、立派な共同議長声明文がリリースされた。

ブラジル側からは通商産業開発省(MDIC)のイヴァン・ハマーリョ副大臣他外務省、農務省、社会経済開発銀行(BNDES),労働省などから関係者多数 が出席、日本側からは石毛博行経済産業審議官、赤星康経済産業省通商政策局米州課長、本間英一経済産業省通商政策局中南米室長、日本経団連の讃井暢子常務 理事、ジェトロ、JICAや国際協力銀行関係者、島内憲大使、宮下匡之総務参事官、吉村一元一等書記官、仲谷秀孝二等書記官、商工会議所からは田中信会 頭、中山立夫日伯経済交流促進委員長、浅野英樹日伯経済交流促進委員会福委員長、平田藤義事務局長が出席した。

平田事務局長談話

2009年2月20日、ブラジリアで開催された第1回日伯貿易投資促進合同委員会(以下貿易投資委員会と略す)の会合に参加した。日本側から石毛博行経済 産業審議官を筆頭に31名、ブラジル側はイヴァン・ハマーリョ開発商工省(MDIC)事務次官を含む41名が同省の622号会議室に集結、会合は両氏が交 互に主導、発表者を指名する形で行われ活発な議論が展開された。

20日の会合に先立ち18日には当会議所の業種別部会長シンポジュー ムに参加頂いた経済産業省の一行が開発商工省において事前打ち合わせを行った後、19日には他のメンバーと合流、伯側と伴に4つのワーキング・グループ (WG)、WGⅠ貿易投資促進、WGⅡビジネス円滑化、WGⅢ度量衡、WGⅣ知的財産権に別れ個別討議を行ったようだ。

この貿易投資委員会は昨年、日伯交流年(ブラジル日本移民100周年)に甘利経済産業大臣が訪伯、ミゲル・ジョルジ開発商工大臣と7月2日に会談、設立に 係るメモランダムに署名、設立された。産業界からのビジネス環境上の問題に関し、伯政府に対して問題提起し、率直に議論するための対話の場である。開催方 法も、両省庁の次官級(経済産業省は経済産業審議官、開発商工省は事務次官)をヘッドとするメンバーで構成、年一回程度、日伯間で交互に開催することに なっている。 

今回、日本側から石毛審議官をはじめ赤星康米州課長、本間英一中南米室長等、経済産業省の関係者7名に加え大熊靖夫特許庁 国際課補佐、田中充産業技術総合研究所コーディネーターの他、外務省、JETRO、JBIC、JICA等といった政府関係者や、日本経団連、CNI(全国 工業連名)、経団連とは長年カウンターパートの関係にあるブラジル日本商工会議所メンバーを含む、官民の関係者が参加した。

伯側からは 開発商工省(MDIC)のイヴァン・ハマーリョ事務次官以下、ヴェウベール・オリヴェイラ局長、マウロ・コウト特別補佐官やMDIC所轄の各省代表で構成 される貿易協議所(CAMEX)、通商局(SECEX&DECEX)、社会経済開発銀行(BNDES)、国立工業度量衡・品質企画院(INMETRO)、 国立工業所有権院(INPI)、マナウス・フリーゾーン監督庁(SUFRAMA)、国家輸出振興庁(APEX)、中小企業支援・サービス機関 (SEBRAE)、外務省(MRE)、大蔵省所轄の国際問題担当局(SAIN)、厚生省所轄の国家衛生検査監督庁(ANVISA)、農務省(MAPA)、 法務省所轄の国家模倣品対策審議会(CNCP)、全国工業連名(CNI)の関係者など関係省庁から大勢参加。

冒頭、イヴァン・ハマーリョ事務次官が歓迎の挨拶、第1回会合から関係省庁以外に銀行関係や民間団体も加わるなど、これを機会に今後も継続的な関係を維持したいと宣言、日本に於けるブラジル人出稼ぎ者に対する日本政府の配慮に謝意を表明。

引き続き石毛審議官からは「日本に無いものはブラジルにある」、「ブラジルに無いものは日本にある」と相互補完関係を強調、「世界同時不況脱出の第一番目の国はブラジルだ!」と称え、日本もブラジルに次いで2番目に回復したいと希望を繋いだ。

ワーキンググループ(WG)から先ず伯側の全体報告があったのに続き、貿易投資促進WG-Ⅰのパートでは赤星米州課長、JBICの矢島浩一米州地域外事審議役、NEXIの南亮ニューヨーク事務所長からファイナンスや貿易保険の提供についてコメントした。

ビジネス円滑化WG-Ⅱのパートで赤星米州課長がブラジル日本進出企業の抱えている諸問題に対する要望として税制体系の情報提供、移転価格税制の改善要望 (マージン比率の固定、部品一点ごとの税率、為替相場の変動に対する柔軟性の欠如、事前承認制度の不備、輸入許可・通関手続きの迅速化、海外送金や企業登 録の諸問題について具体的に言及した。

当会議所の田中信会頭から「1970年代以来30有余年に亘り、日伯経済合同委員会と いう民間の枠組みを通じて、日本経団連及びCNI(ブラジル全国工業連盟)と共に、ビジネス投資環境の整備を両国政府宛要望して参りましたが、今般、斯様 な官民合同の対話のメカニズムが出来たことは大変喜ばしい限り」の発言に見られるように、初めて民間も加わり政府間レベルによる公式な議論の俎上に載った ことの意義は大きく歴史的な第一歩と言える。

また日本経団連の槍田松瑩日本ブラジル経済委員長(三井物産社長)との関係から当会議所 の中山立夫日伯経済交流促進委員長(ブラジル三井物産社長)も、「当地日本企業を代表して、ビジネス円滑化のパートを担当させて頂き、今後、在ブラジル日 本国大使館とも密に連携の上、我々日本企業の生の声をお伝えしていく所存です」と貿易投資委員会の運営に関し、積極的に支援・協力を約束した。

本会合に先立ち19日のワーキング・グループにも精力的に参加された日本経団連の讃井暢子常務理事は日伯関係の重要性に言及、保護主義の撤廃、自由貿易の 堅持を世界に示し世界経済の発展を促す一方、とりわけ日伯の貿易投資促進を官民連携で進めると力説、一昨年の第12回日伯経済合同会議における経団連 ―CNIステートメントのビジネス改善項目にも具体的に触れ、説得力のある発言は極めて印象的であった。  ビジネス円滑化の一環として伯側のマウリシオ・ルセナから在日出稼 ぎ者の社会保険加入問題やブラジル人学校の認定制度などについての要請に対し在ブラジル日本大使館の宮下匡之参事官から在日ブラジル人の教育(公立校への 転入)、雇用斡旋、住宅確保について当面の対策状況を説明。

この後、伯側のヴェウベール局長から税制、ブロクラシー、輸入関税など所謂ブラジルコストを意識しながら近年の日伯間の往復貿易高が飛躍的に拡大、 2008年にはブラジルから日本への輸出が60億ドル強、日本からの輸入は68億ドルに来ている状況を説明、保護主義は伝染病的かつ危険であるとした上、 2国間協定や日本に於けるブラジル情報不足を憂慮。

赤星米州課長はFTAまでの行程には緊密な情報交換をした上で共同研究会を設け、双方にどんなメリットがあるのか? ブラジルを含めたメルコスルとの関係はどうなるのか? 貿易投資委員会を通じてこれ等をクリアしてからFTAに進む事を明言した。 

度量衡に関して田中充産業技術総合研究所コーディネーターの話に続き伯国度量衡のウンベルト・シケイラが発言、知的財産権についてイヴァン・ハマーリョ事 務次官と赤星米州課長が各々コメント。以下全体の議事内容を含め議長声明に網羅されているので省略する。(後日、在ブラジル日本大使館からの大使館レポー トに割愛したい) 

JBICは過日会議所の昼食会で講演した「わが国製造企業の海外事業展開に関する調査報告 ~2008年度JBIC海 外直接投資アンケート結果」を参加者に披露、2008年、日本の投資先のランキングがアメリカを抜き6位(中国をトップにインド、ベトナム、ロシア、タ イ、ブラジルの順)に浮上した事に関心が集まった。

総括として石毛審議官は日本においてはブラジル情報が不足している現状を伝えなが ら今回の議論は高く評価できるとし、課題が明確になったのでフォローアップ体制の構築が急務と訴えた上、アプローチの過程において必要に応じ重点項目を絞 り、イヴァン・ハマーリョ事務次官同様、産業界に参加を一層促しながら、具体的な成果に繋げたいと力強いメッセージで結んだ。

午後の部 においてイヴァン・ハマーリョ、石毛両氏伴に共同記者会見に臨み、議長声明書を説明、またBNDES/NEXI、BNDES/JBICが各々覚書に調印 (議長声明書参照)後、代表的な有力紙やTV局との質疑応答およびインタービューを最後に20日の日程は無事終了した。

本間中南米室長とも、これを機会にブラジルの最新情報を出来るだけ多く提供し次回以降の会合に役立てる事を約束した。「名実供に官民連携の歴史的な第1 歩!足元の課題を官民一体となって一つ一つ固めれば、やがてEPA締結もそんなに遠い夢では無い!」ことを実感した会合であった。

しかし、この会合を単なる議論・対話の場に終わらせてはいけない。会議所の既存の組織に継続的なフォローアップ体制を構築し諸問題を会合ごとに一つ一つクリアして行く必要がある。

最後にこの会合を無事成功裏に終わらせ企画の段階から、調整、日伯議長声明の形に纏め、記者会見に至る全ての業務に携わった在ブラジル日本国大使館の島内  憲特命全権大使をはじめ新井辰夫公使、宮下匡之参事官、吉村一元一等書記官ほか関係者に心から感謝の意を表したい。大使館から送付された共同議長声明書 (Co-Chair’s Joint Statement)は取敢えず英文で当所サイトに掲載させていだきます。

第1回日伯貿易投資促進委員会の共同議長声明(英文)

 

左から石毛博行経済産業審議官/開発商工省のイヴァン・ラマーリョ副大臣/ヴェウベール・バラル貿易担当長官

第1回日伯貿易投資促進委員会で両国関係者が熱心に意見交換

3枚目から5枚目の写真は浅野英樹日伯経済交流促進委員会福委員長の提供

労働問題研究会に27人が参加して外国人労働者雇用に関する講演を熱心に聞いていた

企業経営委員会(松田雅信委員長)の労働問題研究会が2009年2月19日午後4時から5時30分まで27人が参加、エリカ・青木弁護士が「外国人労働者雇用−技術援助契約書Xサービス提供契約書、主な違いと法律面での影響」と題して講演した。

外国人労働者雇用では管理職の取締役、部長並びに技術職、アウトソーシング部門での雇用形態の違い、契約期間、税制、関係書類の保管に必要性など注意すべき点について講演、質疑応答では企業が抱える問題などについて大いに意見の交換が行なわれた。

 


外国人労働者雇用について講演するエリカ青木弁護士


熱心に講演を聞く参加者