堀村隆彦大使歓送会並びに商工会議所の6月懇親昼食会が6月21日正午から、140人が参加、ヨシアキ中野FGV大学院長などをスピーカーに迎えて開催された
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1995年から2001年までサンパウロ州政府財務局長官を務めたヨシアキ中野FGV学院長は「持続的成長の為の新為替政策」と題して、ルーラ政権のマクロ経済の3本柱はプライマリー収支黒字、為替変動相場制及びインフレ対策であるが、政策自体が脆い面を持っており、その結果として国際金融危機に対する脆弱性、低い経済成長率及び高い失業率を指摘した。
脆弱なブラジルの為替制度でレアル通貨変動によるGDP値が毎年変動しており、国際社会からの信頼が欠乏している。プライマリー収支黒字政策はインフレを抑えるが、経済成長率が低率となり、レアル高に傾いている為替は経常収支面で有利に作用するが、海外からの投資が停滞している。またインフレ優先政策を優先し過ぎて経済成長率や雇用促進がなおざりにされている。
また1995年のメキシコ危機、1997年のアジア危機及びロシア危機、2000年から2001年にかけてのエンロン問題、トルコやアルゼンチン危機や国内エネルギー危機、2004年末から続く石油及びコモデティ高騰による海外からの投資の冷え込みなどブラジルの為替政策の脆弱性を指摘した。
為替とインフレの関係を詳細に説明し、また国際金融危機と基本金利は連動しており、1995年のメキシコ危機や1997年のアジア危機ではSelic金利が高騰、またルーラ政権誕生時にも上昇した。最近は落着いてきたが海外からの直接投資は前政権の1994年にはGDP比21.5%まで達したが、ルーラ政権初期には18%を下回ったが、2004年下半期から20%近くまで回復してきた。
しかし一般消費のGDP比では、前政権時はGDP比60%以上を確保していたが、最近2年間は56%まで低下しており、実質サラリーの減少に反比例して連邦政府の税収が増加してきている。また前政権誕生時の2003年年頭にはレアル安で公的負債がピークに達したが最近はレアル高の影響で為替連動国債の負債が減少しているが、税収は増加の一途を辿っている。
最近の傾向として、輸出増加による貿易収支黒字増加で国際収支が好転しており、国際金融危機に対する免疫が付いてきたが、脆弱な為替政策でまだまだブラジルのマクロ経済は海外の金融危機に弱い。
国内面ではプライマリー収支黒字の好転でGDP比の公的負債は安定しているが、税負担増大やインフレ整備の公的投資の減少もプライマリー収支好転に寄与しており、政策面では疑問が残る。基本金利の高止まりや公的負債の内容、中銀の長期高金利の金融政策の早急な改善が必要性を強調したが、国内預金の増加、一般消費の低下、製造業の投資回復が見込まれてきたが、経済成長率を上げるまでには達していない。
対外的には競争力のある新為替政策の採用で、経常収支黒字の増加及び減税による国内預金の増加を促し、海外直接投資の増加で海外金融危機に対する免疫力の増加を促す。国内的には減税及び基本金利の低下で輸出、国内投資及び民間消費増加、連邦政府の支出削減及び公共投資増加で、雇用創出を拡大して持続的経済成長率の達成を行なう。
新マクロ経済政策の目的は雇用増加を伴う経済成長率の確立、安定的で競争力を伴う為替政策、国際レベル並みの金利政策、3%以内のインフレ政策、国際金融危機に対処できる強固なマクロ経済の確立及び外債及び公的負債の低減である。
また公的赤字低減策として、公共支出の低減、公的負債の低減、税負担の軽減、インフラ整備への投資増加などを早急に進める必要があると述べた。
公的負債低減策として連邦政府の歳入及び歳出を、2年間でGDP比30%まで低下すると赤字がなくなり、海外からの投資増加による雇用創出が可能になるが、現状の為替政策はインフラ整備への公的資金に余裕がなく、年間4.5ヶ月間の労働時間が税金支払いにあてがわれており、慢性的閣僚主義による公共サービスの改善が行なわれていなくて、無駄な連邦政府の支出で有益な公共投資がなおざりにされており、早急に改善しなければならない。
また新マクロ経済政策の金利政策改善として、短期的に国際金利並みの低率を維持しながら、持続的経済成長率を維持する為替相場の維持が重要であり、国内外の価格差、サラリー及びマージン比率を低減、雇用創出を伴う輸出産業の拡大、生産性の高い最先端技術の育成、また経常収支黒字を維持する競争力のある為替や国庫局に為替安定基金の創出などダイナミックな為替政策の改善が必要であると強調して講演を終了し、田中信会頭から「現代ブラジル事典」が贈呈された。
堀村隆彦大使は歓送会の帰国挨拶で、私の最大の任務は小泉純一郎首相及びルーラ大統領の両国相互訪問であったが、9ヶ月間で実現できた。また各地での経済セミナー開催、投資環境の改善やEPAセミナーなど数多く開催できた。今後はフォローアップが重要であり、エタノールや科学技術分野のフォローアップ作業を進める必要がある。
サンパウロ総領事及びブラジリアでの大使赴任期間を合計すると4年半、ブラジルに滞在しているが、ブラジル政府側の日本に対する信頼感及び期待感が大きいと実感している。これはひとえに日本移民の努力や正義感によるブラジル国民の信頼を得たことが大きく影響していると再確認できた。また2年後に迫った日本移民100周年は両国関係にとって信頼関係を強める機会であり、日伯経済関係の主役は民間セクターであり、進出企業や商工会議所の役割は大きいので多い力を発揮していただきたいと結んだ。
パラナ州マリンガ市のシルヴィオ・マガリャンエス市長は「移民100周年記念の日本庭園」と題して、ヴィデオで日本庭園の概略や構想を披露し、このプロジェクトはマリンガ市が一体となって推進しており、10万平方メートルを超える広大な公園であり、海外では最大規模の日本庭園であると説明した。このプロジェクトでは観光事業開発や日本在住のブラジル人労働者に、帰国後マリンガ市に住居してもらい、大いに投資や人的資源の開発を促したいと強調した。
昼食会は正午過ぎから始まり、平田藤義事務局長の司会で講演者の中野ヨシアキ氏、堀村隆彦ブラジル日本全権大使、マリンガ市のシルヴィオ・マガリャンエス市長、また特別参加者のルイス西森パラナ州議員、西林万寿人サンパウロ総領事も紹介された。
その後の3分間スピーチではマクソウドホテルのペールラ・ミズノ部長がワールドカップのブラジル戦は、商工会議所の会員に対して、ホテルの講堂でのハイビジョン観戦を楽しんでいただきたいと述べた
日清紡の今井達男社長が帰国挨拶、金原章新社長が赴任挨拶、日通の平野候一社長が帰国挨拶、トヨタの長谷部省三社長が赴任挨拶を行なった。新入会員紹会ではノヴァ・エラ・シリコン社のジョゼ・フレイレ代表が入会挨拶を行い、田中信会頭から会員証が授与された。