堀村隆彦在ブラジル日本国大使の講演会が、3月16日午後5時からCIESPで開催され、140人が参加した
◆ フォトギャラリー
堀村隆彦大使は「ブラジル日本人移住100周年に向けた日伯EPA(Economic Partnership Agreement)協定締結への取組」と題して、3月16日午後5時からパウリスタ大通りのサンパウロ州工業センター(CIESP)で講演した。
今後の日本とブラジル両国のEPA協定の見通し及び締結による経済関係拡大で両国に利益をもたらすウイン‐ウインの構築が最も重要であると強調して講演を開始した。
1960年代及び70年代は両国の経済関係が蜜月時代で、日本は高度経済成長期で産業の米である鉄鋼生産のための鉄鉱石をブラジルから輸入するために、カラジャス鉱山の開発やウジミナス製鉄の建設、また大豆の安定供給のために1973年から官民合同プロジェクトとしてセラード開発など両国関係は大変良好でウイン‐ウインの関係にあった。
しかし1980年代のブラジルは金融危機のトンネルに突入しており、また天然資源の豊富なオーストラリアに注目が集まり、多くの日本進出企業はブラジルから撤退、日本からの投資が減少してブラジルブームが去り、1990年代は日本が経済不況に陥り、両国の経済関係は大幅に低下した。
しかし2005年には日本向け輸出が鶏肉や鉄鉱石を中心に前年比22%と増加、また日本からの製造業への投資が拡大してきている。また日本の政府開発援助(ODA)も千エテ川の浄水化、ジャイバ灌漑プロジェクト、ゴイアス州電力網拡大プロジェクトへのファイナンス、衛生・保健や農業関係への検査官派遣、貧困地域の病院や学校への人材派遣など日本はブラジルに対して2004年度に40億ドルを支援した。
ブラジルの工業成長を高めるためには製造業への投資及び先端技術の開発が重要であり、ブラジル政府は既に半導体、ソフトウエア、資本財、医療機器製造、バイオやナノテクノロジーなどの先端技術開発に焦点を絞り、ルーラ訪日時に日本からの技術支援を取り付けている。
しかしブラジル政府は日本からの更なる投資を誘致するためには、投資環境整備や基礎工業発展を整える必要がある。日本は既にシンガポールとメキシコでEPA協定を締結しており、マレーシア、タイ及びフィリピンと締結のための詰めを行なっており、ASEANとは交渉中、チリとインドとの締結を検討中である。
しかし日本はASEAN、インド、オーストラリア及び中国とEPA締結すると、ブラジルにとっては貿易や投資にとって不利となる。日本とメルコスールとのEPA締結が日伯経済関係改善への道筋である。
日本とメルコスールのEPA締結で、日本側にはラテンアメリカ市場の確保、ブラジルでのハイテク産業への投資、ブラジル側には日本を通してアジア市場への参入、ブラジル工業界のレベルアップが図れる。
ブラジルとのEPA締結で、輸入関税の撤廃、投資環境の改善や投資の拡大、ブラジル製ソフトウエアの日本への輸出、アウトーソーシングサービスの拡大、日本で働く日系労働者の雇用条件の改善、人的、技術及び文化交流の改善、鉱物資源の安定供給、エタノール及びCDM関係の共同開発などが促進する。
ブラジルとのEPA締結で検討を要する要素として、日本の農業界にダメージを与えない、天然資源の安定的供給の確約、EPA以外の要因によるダメージの排除、日本との社会構造や経済改善対策の適応の促進、日本企業への投資及び輸出のプロモーションなどを指摘した。
ブラジルとのEPA締結は中期締結が予定されている要素として、先の5アイテムを詳細かつ掘下げて検討する必要があり、また日本政府のプライオリティーリストに入っていない。初めに経団連とブラジル全国工業連合(CNI)が共同で研究、投資環境の改善、エタノール関係などでの共同開発、両国の科学技術協力分野の明確化などを挙げた。
最後に2008年にブラジル日本人移民100周年を迎えるが、2005年5月のルーラ大統領の訪日時に「日伯21世紀評議会」が設置され、将来の両国関係を考える良い機会になると結んで講演を終え、大きな拍手が掘村大使に送られた。