平成29年度官民合同会議は2017年12月14日午前10時30分から午後2時過ぎまでジャパン・ハウスで開催、初めに山田 彰大使は冒頭あいさつで、今年8月に着任、グローバル戦略的パートナシップを打ち出した安倍首相は積極的な日伯経済関係強化をうたっている。 ブラジルは2015年並びに2016年はマイナス成長を記録したが、来年は3.0%前後の成長予想で明るくなってきており、積極的な両国の政策対話を行っていく。特に日本産の食料品輸出促進を強化して裾野を広げたい。私もブラジルに日本製食料品を大いに売り込みたいと述べた。
また山田 彰大使は、8月28日および29日、全国工業連合(CNI)並びに経団連、パラナ州工業連盟共催で第20回日本ブラジル経済合同委員会開催、続いてブラジリアで第11回日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会(貿投委)開催、ブラジル外務省イタマラチ宮で第1回日伯インフラ協力会合開催にそれぞれ参加、政府レベルの会合に民間企業のビジネスマンが多数参加して、今後明るい見通しを感じた一方で、ブラジルコストの改善が非常に重要であると感じた。11月11日から新労働法が施行されたが、年金・恩給改革や税制改革などの構造改革を早急に着手しなければならない。商工会議所が打ち出しているAGIR活動とテーメル政権は同一方向に向いている。2018年は4月の第8回日伯賢人会議、7月には東京で日伯経済合同委員会、日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会(貿投委)、9月には国連総会、11月にはG-20首脳会議が予定されており、両国にとってWin-Winの関係になるように進めたい。大統領選挙の年は政治不安定となり、選挙のシナリオが読みにくい。メルコスールとヨーロッパ連合とのEPAも進展、韓国とのFTAなどの動きもあり、テーメル政権の自由経済の流れに沿って、官民一体となってブラジルの構造改革を推し進めるようになれば良いと結んだ。
外務省本省からの報告として中前隆博 中南米局長は、テーメル政権では歴史的な構造改革、インフラ整備プロジェクト構想、外資導入、ブラジルのOECDへ加盟申請などに積極的に取り組んでいる。過去2年間はマイナス成長であったが、今年はプラスに転じてビジネスが活性化してきている。9月にニューヨークで開催された国連総会に参加したが、日伯外相会談で良好な関係を確認。最近の日伯関係では、7月のブライロ・マッジ農務大臣並びに細田健一農林水産大臣政務官を迎えて「第3回日伯農業・食料対話」、8月のクリチーバでの第20回日本ブラジル経済合同委員会、知的インフラ・情報のアップデートの重要性、AGIR活動の支援を行っている。世界貿易では保護主義が台頭してきているが、日本では自由貿易推進で日本とヨーロッパ連合のEPA、TPP、日・メルコスールEPA推進でそれぞれのブロックでの経済強化を目指している。8月の第20回日本ブラジル経済合同委員会で、日本メルコスールEPAという新たな枠組みでの早期交渉開始を両国政府に働きかけるため、2年前に経団連とCNIがとりまとめた「日伯EPAに関する共同研究報告書」を次回経済合同委員会までにアップデートすることで合意したと聞いており、日本からメルコスールへの投資推進を進めたい。日系社会関係ではブラジル日本青年会議所(JCI Brasil-Japão)主催のリベルダージ活性化プロジェクト「RevitaLiba」の一環として、大掃除イベントが開催されて、日本進出企業と日系社会との絆が強まり、優秀な日系人を活用してほしいと結んだ。
池田 英貴 参事官並びに光廣 政男 書記官は、在ブラジル大使館からの報告として、2016年10月のテーメル大統領訪日で署名された「インフラ協力覚書」で今年8月末に日伯インフラ協力会合開催、89件のPPI案件の入札予定。AGIR活動の支援として大使館では、商工会議所と連邦政府との対話機会をいろいろな場を通してサポート。在外公館施設を活用したイベント・展示会開催を通じてジャパンブランドのPR。2013年から日本製食料品輸出は4年連続で増加、2020年の1兆円の輸出額を1年前倒しで達成するための日本の農林水産物・食品の輸出促進。中小企業を含めた日本企業の海外展開戦略バックアップで日本企業の支援。最後に在ブラジル大使館経済班の部門別担当者を紹介した。
レシーフェ領事事務所からの報告として丸橋 次郎所長は、今年8月から同署長に着任、2018年1月から総領事館に格上げされることを報告。2018年8月24日から26日までバイア州サルバドール市で第17回盆踊り大会を開催、入場者は3万人から4万人を見込んでおり、日本文化を紹介するが、日本の最先端テクノロジーを紹介するための協力を依頼した。
JICAブラジリアの斉藤 顕生所長は、対ブラジル支援方針、円借款の積極的活用、海外投融資の活用としてフィリピンのマニラ首都圏西地区上水道対策事業の紹介、民間提携事業としてPPPインフラ事業及び民間技術促進事業、日系を含む人材育成事業、日系社会との民間連携、ボランティア派遣事業、帰国研修員同窓会事業などについて説明した。
JBICの櫛引智雄 首席駐在員は、「ブラジルにおけるJBICの活動」 について、 JBICのミッション及びブラジルの主な活動、JBICの主な金融メニューとして輸出金融、投資金融、ベンチャーやハイテク分野での活用、ブラジルにおけるJBICとして長い協力関係、ブラジル連邦政府等との連携、50年以上に亘るBNDES銀行とのタイアップ、インフラ事業支援、ペトロブラス並びにヴァーレ社との強固な関係、第7回賢人会議、ブラジルの海外直接投資国順位の推移、有望理由と課題などについて説明した。
JETROサンパウロ事務所の岡本正紀 知的財産権部長は、「20017年度 JETROサンパウロ事務所の主な取り組み」として、日本企業の販路開拓・ビジネス展開支援として、今年5月に「Feira APAS 2017」にジャパンパビリオンを出展、7月に食品バイヤー招聘、10月の和牛イベント開催、4月のパラグアイのレイテ商工大臣及び駐パラグアイ日本国大使を招いたセミナー及び意見交換会開催、6月にパラグアイミッション実施。ビジネス環境整備に向けた活動として、AGIR活動支援、日本食輸入、メディカル分科会との連携した提言活動支援。ブラジル企業の対日投資促進では、個別企業訪問による対日投資誘致活動の実施。日本企業向け調査・情報提供では、日本企業/進出日系企業へのブリーフィング実施。知的ニュースレター発行や進出企業に向けたセミナーの随時開催などを説明した。
意見交換会では、レシーフェ領事事務所が2018年1月から総領事館への格上げ。また総領事館から邦人保護や安全対策に対するブラジル在住の日本人への逐次情報提供。オリンピック後の顕著なリオ市での犯罪増加傾向。ヨーロッパ連合とメルコスールのEPA締結の日本進出企業への影響、日本とメルコスールのEPA締結のコンセンサス、提言書やアンケートなどについて大いに意見交換された。
各商工会議所からの報告として、アマゾナス日系商工会議所の後藤善之副会頭は、10月27日のアマゾナス日系商工会議所の30周年記念式典開催、マナウスフリーゾーンの日本企業進出状況、アマゾナス日系商工会議所の会員推移、日系企業の貢献度、マナウスフリーゾーンにおける日本の投資、マナウスフリーゾーンの年間売上推移などを説明。またマナウス工業拠点で稼働する日系企業ビジネス環境状況として、ホワイトカラーストライキと呼ばれる税関官史ストによるビジネス障害除去の必要性、従業員送迎バスや停車拠点での強襲事件の多発、工業団地内の道路補修などを州政府に要請していると説明した。
南伯日本商工会議所の重年生雄会頭は、今年の行事として1月19日~Multilab Takeda社訪問及び新年会開催、3月18日~19日のEBR造船会社訪問と現地日系人との懇談会開催、7月25日~26日のJICA 中小企業調査団のポルト・アレグレ市訪問、8月17日~18日の金沢市ミッション訪伯並びにことじ灯篭除幕式、8月19日~20日の日本祭り開催などについて説明した。パラナ日伯商工会議所の大城会頭は、会議所の主な活動として、「諏訪圏工業メッセ2017」見本市への参加、クリチーバ市カトリック大学のWaldemiro Gremski学長は信州大学と国際学術交流の協定調印及び国際学術セミナー開催などについて説明した。
リオデジャネイロ日本商工会議所の旭俊哉会頭は、同会議所の会員企業24社、個人会員20人、商工会議所の渉外企画委員会では、昼食会、スポーツ大会や産業視察、安全対策委員会は毎月開催、教育委員会では日本人学校の運営資金調達。また日本企業の活動状況、進出日本企業支援の主な取組、ブラジル政府に対する働きかけ、同州における治安状況推移や犯罪発生率の比較、リオ経済を左右するペトロブラス石油公社について説明した。
ブラジル日本商工会議所の松永会頭は、会員数が最も多かったのは、2015年末の363社(進出企業数233社)、その後のブラジル経済のリセッションが大きく影響し、現在はこれが350社まで減少、この3年間で最少の会員数。漸くブラジル経済が回復基調に転じたので会員数を2015年の水準に戻し、更なる会員数増加に繋がるよう会議所の活動を強化していくと説明。
また 「会議所主催事業」では、まず部会長シンポジュームを年2回開催し、いずれも200人以上の参加があり大盛況。今年も各委員会や部会等の主催で、労働法、税法を含む数多くのセミナーや講演会を実施。この他、食品部会主催のMNグループのプロポリス工場見学会やグアルーリョス空港視察会などのイベントも開催。
「外部イベントへの参加」としては、ジャパン・ハウス開所式には、記念式典はテメ-ル大統領や麻生副総理が出席。としては、これに先立ち、ジャパン・ハウスのお披露目見学会実施。7月の「日伯農業・食料対話」、8月末の「日伯貿投委」など政府間の公式行事に会議所からも参加させて頂くとともに、ジェトロが主催する「パラグアイビジネスセミナー」や「第3回ジェトロ中南米知財セミナー」にも会議所から多数が参加。「日系社会との連携」では、特にブラジル日本青年会議所(JCI)主催の「リベルダージ大掃除」に、会議所からも、多くの会員企業駐在員が家族連れで参加した。
AGIR活動は経産省から補助金を頂いて運営されており、この補助金なくして、これだけ活発な活動を行うことは不可能。今年4年目を迎え、企業による経済活動に、より直接的に影響する「労働」・「課税」を本丸と位置付け、政策提言に取り組んでいる。課税分野ですが、AGIR活動では、「1.税制の簡素化・納税者の保護」、「2.ICMS制度の見直し」、「3.移転価格税制の国際標準化」の3つを課税分野での本丸提言としている。まず課税分野では、「1.税制の簡素化・納税者の保護」、「2.ICMS制度の見直し」、「3.移転価格税制の国際標準化」の3つを課税分野での本丸提言としている。今年7月に労働改正法が国会を通過。改正労働法が定着するまでにはまだ暫く時間がかかり、会議所としても労働法改正法案勉強会を実施する。懸念されるポイントなども含めて会員企業で共有すべく、「日伯労働法ブックレット」の作成も進行中。また来年1月より段階的に施行開始されるE-Socialへの対策として、運用面での改善点があれば、それについても積極的に議論を進める。
11月22日、ブラジリアの日本大使館を訪問し、山田大使、及び大使館経済班担当官とAGIR活動についての進捗報告を行い、今後の活動につき意見交換を行った。12月4日に食品部会・EMBRAPAとの連携体制の構築に関する第1回会合、8日にメディカル分科会・ANVISA担当官との政策対話を実施。12月5日に、開発商工省・財務省の担当者を招いて「Portal UnicoプログラムとOEA制度」に関する講演会を100人以上を集めて開催。また、11日には、サンパウロ州収税局の担当官を招いて「ICMS税務クレジット審査」のセミナーを開催した。現在作成中の「日伯労働法ブックレット」は、進出日系企業が抱えているブラジルでの労務問題に対し日本語による解説を行なうことで、ブラジルで経済活動を行う日系企業のビジネス環境改善を支援することを目指し、来年2月までの製本を目指しているなどについて説明した。
ビジネス環境整備、AGIR活動、日本産農林水産物輸出・食品の輸出促進に関する意見交換会では、商工会議所の懇親昼食会の特別ゲストの人選について、顔の広い平田事務局長が100%近くのゲストを手弁当で招待、現役の政治家は直前のキャンセルなどしかたがない場合は多いが、州知事のゲストスピーチで各州の企業誘致に繋がっている。またマナウスフリーゾーンの税関ストの影響、メディカル分科会や食品部会のビジネス障害対策や問題点、EMBRAPAとの提携、ANVISAとのタイアップなど官民一体となってのビジネス障害除去などについて意見交換された。日本商工会議所国際部の高田哲大福主査は、ブラジル以外にアルゼンチン、チリ、ペルーを担当、補助金事業の進捗状況チェックで来伯、日伯経済委員会とEPAを推進、また日本とラテンアメリカの経済協力をサポートしたいと述べた。
最後にサンパウロ総領事館の野口泰総領事は、安倍晋三総理は日系人に対する支援、日系人との関係強化、特に中小企業の海外進出強化を進めており、重責ではあるが大いにサポートする。今回の会議では治安問題が取り上げられ、正確な情報提供の重要性を改めて認識した。日本の交番制度協力ではすでに122カ所のポリス・ボックスや移動式交番で効果を上げている。また最近ベラjillへの中国や韓国企業進出が目立って日本企業の影が薄いと言われているが、日本企業をサポートしたい。またブラジルはOECD加盟やFTAやEPA締結を積極的に進めており、ブラジル政府にも自由貿易奨励を促したいと説明した。
平成29年度官民合同会議 議題
官民合同会議の出席者リスト
官民合同会議後に、全伯日系商工会議所連携強化に関する意見交換会が開催され、安田篤副会頭は開催経緯を説明、各地で直面している問題や今後の意見交換会継続などについて意見交換を行った。参加者はアマゾナス日系商工会議所の後藤善之副会頭、南伯日本商工会議所の重年生雄会頭及び和田好司専務理事、パラナ日伯商工会議所の大城会頭、リオデジャネイロ日本商工会議所の旭俊哉会頭、ブラジル日本商工会議所から安田篤副会頭、平田藤義事務局長、日下野成次総務補佐。