今年上半期のM&Aは804件で過去10年間で最高(2021年8月30日付エスタード紙)

COVID-19対応ワクチン接種拡大に伴って、ブラジル経済の緩やかな回復、またCOVID-19パンデミックはイノベーションやデジタルトランスフォーメーション化加速で、企業の合併・買収が加速しているとKPMG社の統計に表れている。

COVID-19パンデミック期間中のブラジル国内でのM&A案件数が増加、また今後も継続して増加が見込まれている。今年上半期のM&A件数は、前年同期の514件を56.0%上回る804件に達している。大手小売販売網のCarrefour社は、同業のBIG Brasil社を75億レアルで買収している。

今年上半期の804件のM&A件数は、2019年下半期に記録した688件を130件近く上回って、統計を取り始めた2011年以降では最高記録を更新している。

COVID-19パンデミックが収束していないにも拘らず、デジタルトランスフォーメーション加速化に伴って、マーケットシェア争いが激化で、ブラジル国内の企業の買収・合併は、急増しているとKPMG社調査担当のLuís Mottaコーディネーターは指摘している。

調査対象の43部門のうち36部門でM&A案件が成立、特にインターネット関連企業のM&A案件は268件で断トツ、続いて情報テクノロジー企業の131件、ファイナンス関連企業のM&A案件は92件を数えている。

ファイナンス関連企業のM&A案件に続いて、小売業界のM&A案件は29件、サービス業界25件、不動産業界22件、情報通信22件、病院・医療診断ラボは22件、電力エネルギー業界21件、教育関連企業のM&A案件は20件となっている。

COVID-19パンデミック以前のM&A案件との相違点は、COVID-19パンデミック以降は、デジタルトランスフォーメーションの加速化によるインターネットや情報技術を介した事業や営業形態の変化の取込みを余儀なくされている。

今年上半期のM&A案件のうち524件は、ブラジル企業間によるM&A案件、その他の256件のM&A案件は、外資系企業によるブラジル企業のM&A案件とLuís Mottaコーディネーターは説明している。

アブダビのMubadala Capitalファンドは、ペトロブラス石油公社のLandulpho Alves (Rlam) 石油製油所を90億レアルで買収している。今年7月にはマガジン・ルイザ社は、ゲーム関連EコマースのKaBuM!社の100%株式を10億レアルで買収している。また今年8月には、Americanas社はHortifruti e Natural da Terra網を21億レアルで買収している。

2019年のM&A成立案件は1231件で過去最高、昨年は1117件、今年は上半期だけで既に804件に達しており、2019年の1231件を大幅に上回るとKPMGでは予想している。

7月のクレジットカードの支払期限超過金利は331.5%に急増(2021年8月27日付エスタード紙)

中銀の発表によると、今年7月の支払期限を過ぎたクレジットカードの年利は、6月の327.5%から更に4.0%増加の331.5%と天文学的な数字を記録している。

クレジットカード金利は、特別小切手(シェッキ・エスペシアル)と呼ばれる金融機関の個人向け融資の一種で、日本の口座借越に類似した一時融資型の高金利と同様に、煩雑な手続きが不必要で利用しやすい。

クレジットカード及びシェッキ・エスペシアルも借り手を破産に追い込む破壊力のある高利貸しに変わりなく、他の融資手段が活用できない緊急事態のみの利用に限定し、尚且つすぐに返済する超短期の資金調達手段に限定と金融関係者は消費者に警告している。

今年7月のクレジットカードの分割払いの年利は、6月の164.5%から163.6%と若干0.9%減少、毎月の支払額を一定の金額に固定して、金利とともに返済していくリボルビング払い並びに分割払いのクレジットカードの平均年利は、前月の61.4%から62.0%に上昇している。

2017年4月に発効したクレジットカードに関する新規制によると、クレジットカード利用者は、最初の支払期限到来から30日以内に支払い代金を一括払い若しくは分割払いの決定、また分割払いの場合は分割回数も決定してカードカード発行会社に通知。クレジットカード会社は、利用者の分割払い申告に基づき、元本固定融資の分割返済と同様の、より金利の低い融資の分割返済に切り替える。

7月の個人向け特別小切手の年利は、123.5%と6月の125.6%よりも2.1%減少、中銀は2018年以降、個人の破産を防ぐ予防策として、特別小切手の上限年利制度を導入している。200レアル以上の負債に対して、2020年1月に特別小切手の上限月利を8.0%、年利換算では151.82%の最高金利として定めている。

住宅ローン、農村並びに社会経済開発銀行BNDESを除く今年7月の個人並びに法人の平均銀行年利は、6月の28.4%から0.5%増加の28.9%と微増している。

中銀の通貨政策委員会(Copom)は、今年3月に政策導入金利(Selic)を7ヶ月連続で過去最低の2.00%を維持していたにも関わらず、食料品並びに燃料価格が牽引しているインフレ圧力を抑制するために、一挙に0.75%引上げて2.75%の決定。5月は3.50%、6月には4.25%、8月には5.25%まで継続して引上げている。

今年7月の個人向け銀行の平均年利は、前月の39.8%から39.9%に微増、法人向け銀行の平均年利は、前月14.5%から15.4%に引き上げている。中銀の発表によると7月の融資先が自由に選択できるクレジットの平均スプレッドは、6月の21.7%から21.5%と若干減少している。

今年初め7か月間の農畜産部門のM&Aは33件(2021年8月23日付ヴァロール紙)

2021年初め7か月間の農畜産部門の企業の買収・合併は、33件で総額17億レアルを記録している。また8月16日に精米・フェジョン豆の販売で業界トップのCamil社は、ミナス州で製粉派生品販売を牽引するSanta Amália社を4億1,000万レアルで買収している。

またLavoro e Nutrien社は、ミナス州で農業消費財の卸売販売業者Agrozap社、南マット・グロッソ州の農業生産ネットワーク事業を手掛けるBio Rural社を買収している。

2020年初め7か月間の農畜産部門のM&A件数は、36件で総額19億レアルを記録、昨年1年間の農畜産部門のM&A件数は、67件で43億レアルが記録されている。

2016年の農畜産部門のM&A件数は36件、平均M&A取引額は1億4,220万レアル、前期同様2017年44件、3億9,960万レアル、2018年54件、9,820万レアル、2019年は62件、1億4,630万レアル、2020年は67件、1億6,560万レアルと5年連続でM&A件数は前年を上回っている。

今年初め7か月間の農畜産部門のM&Aのうち農業消費財関連卸売りは、11件にM&A総額の12.0%を占めている。昨年の農業消費財関連卸売りのM&Aは、19件を記録している。

今年の農業消費財関連卸売り網の企業買収及び合併は、過去10年間に薬局チェーンのM&Aで業界の寡占化が進んだ状況に類似しているとデロイト社のLuís Otávio da Fonsecaパートナーは指摘している。

連邦政府の無責任な財政支出政策並びにデモクラシーを揺さぶる言論でIPO詣で終焉か(2021年8月19日付けエスタード紙)

米軍撤収に伴うアフガニスタンで進攻を続ける反政府組織タリバンの脅威やブラジル国内の政治混乱でブラジルのリスクに反比例するように、新規株式(IP0)を予定していた非上場企業はIPO先送りの検討を余儀なくされている。

ブラジル国内の政治混乱リスク上昇に伴って、ドル高の為替への回帰、サンパウロ平均株価Ibovespaの低迷などの要因で、新規株式公開を予定していた企業は影響を受け始めている。

ブラジリア銀行(BRB)が主幹事会社として、今年9月に農畜産部門の非上場企業Vittia社の新規株式公開を準備していたが、IPOの先送りを余儀なくされている。

有価証券取引委員会(CVM)には、サンパウロ証券取引所(B3)での新規株式公開(IP0)の申請件数は、20件以上に達しているが、政治・金融ボラティリティが収まるシナリオになるのを待機、また追加公募増資(フォローオン)による資金調達を予定している企業も待機を余儀なくされている。

新規株式公開候補として、食品メーカーDori Alimentos社、フィットネスクラブ網を展開するBluefit社、MMartan社並びにレストラン網Madero社を傘下に持つAmmo Varejo社、昨日靴下メーカーのLupo社も有価証券取引委員会(CVM)に新規株式公開(IP0)を申請している。

今年8月中旬までに新規株式公開(IP0)で調達した資金総額は、Covid-19パンデミックの影響や金利上昇サイクルにも拘らず、1200億レアルに達しており、既に昨年1年間の資金調達金額を上回っている。

ガン疾患専門のOncoclínica社は1週間前にサンパウロ証券取引所(B3)で新規株式公開を行ったが、既に株価は18.0下落、昨年末にIPOしていたオンラインニッチ市場を狙ったEnjoei社の株価は40%下落している。

検索サイトBuscapé社を傘下に持つMosaico社の株価は株式上場以来既に44.0%下落しており、IPO企業の株価下落は今後のIPO予定企業の公募価格に悪影響を及ぼすとEleven Financial社チーフアナリストのRaphael Figueiredo氏は指摘している。

配車アプリ運転手向けレンタカーKovi社は5億レアルを調達(2021年8月18日付けエスタード紙)

2018年創業の配車アプリ運転手向けレンタカー業務のスタートアップ企業Kovi社は、5億レアルの資金調達に成功、今年末までに現在勤務している700人の従業員数を900人に増員して、業務拡大を予定している。

Kovi社の5億レアルの資金調達を牽引したのは、Valor Capital Groupファンド並びに元Naspers社のProsus Ventures社以外にも、Quona社, GFC社, Monashees社, Ultra Venture Capital社, Globo Ventures社, Maya Capital社並びにONEVC社が資本参加している。

Kovi社は従来のレンタル会社とは異なり、配車アプリ運転手向けにレンタカー用の車を購入しない。スタートアップ企業Kovi社は、レンタカー用の車は、償却年数に伴う減価償却を計算して直接自動車メーカー返却される契約を交わしている。

従来のレンタカー会社向け事業では、自動車メーカーはレンタル会社を主要顧客としていますが、この場合、レンタカー会社はレンタカーを割引価格で購入し、使用済みの中古車を販売して利益を得ているが、Kovi社のモデルでは、自動車メーカーは中古車を回収して再版している。

Kovi社は自動車メーカーのRenault社, Volkswagen社, Toyota社並びにGM社と1万1000台の配車アプリ向けのレンタル契約を結んでいるが、年末までに2万台まで拡大する予定であるとAdhemar Milani社長は強調している。

配車アプリ運転手向けの1週間の走行距離が100キロメートル迄のレンタカー料金は299レアル、走行距離が無制限のレンタカー料金は469レアルに留まっており、伝統的なレンタカー料金の半額となっている。

現在Kovi社は、ブラジルの主要州都及びメキシコで事業を展開しているが、5億レアルの資金調達で世界的な事業展開をターゲットに、チリ、ペルー、アルゼンチンやコロンビアのラテンアメリカでの事業を拡大、トルコやギリシア、最終的には東南アジアでの事業拡大を視野に入れている。

税制改革及び大統領選を前にM&A駆け込み需要が旺盛 (2021年8月17日付けヴァロール紙)

年内の可能性を残している税制改革の実施並びに2022年の大統領選挙を控えて、ブラジル国内の多岐に亘る産業部門の企業の買収・合併案件の駆け込み需要が加速してきている。

昨日16日、南米、メキシコ並びに米国で石油化学部門の事業を展開しているUltraグループ傘下Oxiteno社は、アジア資本Indorama Ventures社に68億レアル相当の13億ドルへの売却が発表されている。

また病院経営グループのRede D’Or は、画像診断センターを経営するAlliar社に21.8%のプレミアム上乗せした1株11.50レアルによる全株式の13億5,000万レアルでの公開買収提案を行っている。

精米など食品部門のCamil社は、ミナス州で製粉派生品販売を牽引するSanta Amália社の買収を発表している。 また今月初めに新規株式公開(IPO)で2億レアルの資金調達に成功していた医薬品や医療関連資材の卸売販売会社のViveo社は、Profarma Specialty e Cirúrgica Mafra社を9億レアルでの買収を発表している。

ゲームアプリケーションやデジタルサービス業を手掛けるBemobi社は、チリ資本Tiaxa社を2億レアル相当の3,800万ドルで買収。Tiaxa社は自社の投資ファンドTerras FII社を通して、カナダ資本Brookfield社が所有する農業用不動産の購入を発表していた。

COVID-19対応ワクチン接種率の増加及びブラジル国内の経済活動活性化に伴って、外資系企業のみならずブラジル企業による企業の吸収・買収案件が増加傾向を示している上に、不透明感が増加してきている来年の大統領選挙や税制改革を前にした企業の買収・合併案件が増加傾向にあるとBank of America (BofA)企業買収担当のAragDiogoão氏は指摘している。

今年1月~8月16日迄の買収・吸収案件は、昨年同期の304件から355件に増加、また買収・吸収金額は、前年同期比250%増加の3,564億レアルに相当する617億ドルを記録している。

また今年末までには、Actisファンド傘下の風力発電事業を手掛けるEchoenergia社の50億レアルでの売却、元Odebrecht社で現在の社名Novonor社は、石油化学工業大手のBraskem社の株式の売却、もう一つは、ペトロブラス石油公社のDeten社への資本参加が見込まれている。

Nubankは米国でのIPOで400億ドル調達で主幹会社と契約(2021年8月10日付けヴァロール紙)

世界最大のデジタル銀行であるブラジルの「Nubank」は、米国のナスダック株式市場での新規株式公開IPO準備のために、北米の大手銀行のMorgan Stanley, Goldman Sachs並びにCiti、米国以外のHSBC銀行, Allen & Co社並びにUBSとも契約を締結した。

デジタル銀行のNubankは6月上旬に、ウォーレン・バフェットの投資ファンド「バークシャー・ハサウェイ」から5億ドルの出資を受けたことを発表していた。

Nubankのナスダックでの新規株式公開は、今年第3四半期若しくは第4四半期が予定されており、400億ドルに達する資金調達を目論んでいる。子の400億ドルの資金調達はブラデスコ銀行が米国で調達した399億ドル、XP銀行が調達した277億ドルを上回る可能性が見込まれている。

Nubankは既にテスト・ザ・ウオーターtesting the watersと呼ばれる新規株式公開への募集に関する機関投資家への事前打診をウオールストリート街で行っており、機関投資家から打診結果として非常にポディティブな感触を受けている。

コロンビア人のデビッド・ヴェレス氏が経営で陣頭指揮を執っているNubankのIPOに対する期待は、マイクロソフト社が切望するようになったボイスオーバーIPアプリケーション(voip)である米国資本のスタートアップDiscord社と、米国で最も価値の高いユニコーン企業のストライプ社と同様の期待を背負っている。

ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイを魅了した7億5,000万ドルの追加資金で、Nubankの時価総額はすでに300億ドルとに達しており、同社のIPOで時価総額は大幅に上昇すると見込まれている。

在日ブラジル人は本国への送金停止、永住への生活スタイルに変化(2021年8月9日付けヴァロール紙)

日本在住の在日ブラジル人は、日本での永住を基本に住宅購入や生活向上などの生活スタイルを切り替えており、ブラジル帰国を見据えた本国への送金停止する在日ブラジル人が増加の一途を辿っている。

2005年の在日ブラジル人は30万5,000人に達していたが、2008年の金融危機で解雇されて帰国を余儀なくされたために、今では32.0%減少の20万8,500人まで減少している。

8月末まで東京の非常事態の延長を余儀なくされたcovid-19の感染増加に伴い、日本政府は、ブラジル人を含むすべての人の経済活動の維持を保証すると日本の外国コミュニティにサービスを提供する企業の代表者は説明している。

日本政府は、新型コロナウイルス対策で、首都圏では東京都に出されている緊急事態宣言に次いで、8月2日から31日迄埼玉、千葉、神奈川の3県を追加する方針を決定、この首都圏にはブラジル人を雇用している多くの製造業が存在している。

リクルート企業S&T社のMárcio Shiguemi Nakashima主任は、首都圏100キロ圏内の製造メーカーに80人のブラジル人を派遣しており、コロナ禍当初は解雇が増加したが、今では正常化レベルに回復したものの、給与レベルは概ね減少している。

90年初めの製造業部門の給与水準は、3,300ドルに相当する40万円が相場であったが、労働者の賃金が安いアジアへの製造拠点への移転の影響で、今では日本国内の製造業の現場では30万円稼げれば御の字とNakashima主任は説明している。

2005年の在日ブラジル人の本国送金は、20億ドル~25億ドルに達していたが、昨年9月の送金額は、僅か760万ドルと90年初期の月間2億ドルの送金額とは比較にならない程減少している。

静岡県浜松市でミナス料理を提供しているレストランTrem Bomのオーナーのラウル・ヒラタ氏は、コロナ禍で営業活動の制限を受けたが、顧客の多くは、永住を決めて住宅を購入しており、レストランでの消費は継続すると説明している。またコロナ禍が収まれば今後数か月間後には、在日ブラジル人が増加すると予想している。

Raízen社のIPOの60%は海外投資家が取得(2021年8月4日付けエスタード紙)

脱炭素の環境関連を事業の柱としているRaízen社は、新規株式公開(IPO)のためのロードショー“roadshow”を行っているが、ロードショー期間中の同社の時価総額は、150億レアル以上の上昇を記録している。

Cosan社並びにShell社のジョイントベンチャ-企業Raízen社は、長期的視野に立った再生可能エネルギー活用や二酸化​炭素(CO2)排出削減のESG(環境・社会・企業統治)向け投資の持続的成長のエネルギー分野を事業の柱にしているために、海外投資家の注目を集めており、新規株発行の需要の60%以上は海外投資家が占めている。

外資系ファンドとして、アバディーン・アセット・マネジメントとアブダビ投資庁(ADIA)がこのIPOオペレーションに参加、RaízenのIPOは69億レアルに達し、今年のラテンアメリカ地域の最大の新規株式公開になると予想されている。

新規株式公開直前のRaízen社の時価総額は約600億レアルであったが、IPO後は760億レアルまで上昇、Raízen社をコントロールする親会社Cosan社の時価総額480億レアルよりも約60%上回っている。

Raízen社のIPO時の同社株の投資家による需要総額は300億レアルに達し、そのうち140億レアルは個人投資家の需要であった。サンパウロ証券取引所(B3)に上場している企業でも最も時価総額が大きな企業に数えられる。

第2四半期の3大民間銀行の純益総額は、クレジットが牽引して170億レアルに達す(2021年8月4日付けエスタード紙)

今年第2四半期のブラジル民間銀行の大手3行であるブラデスコ銀行、イタウーウニバンコ銀行並びにサンタンデール銀行を合わせたの純益総額は、前年第2四半期の純益100億レアルを67.3%上回る170億レアルに達している。

今年第2四半期のブラジル民間銀行の大手3行の純益の大幅な増加要因として、クレジット部門の拡大、コントロールされている延滞率並びに国内経済の緩やかな回復が挙げられる。

一方マクロ経済シナリオの観点からみると、予想を上回るインフレ指数並びに突発的な経済活動の鈍化リスクを銀行経営陣は憂慮しているにも拘らず、COVID-19パンデミックの影響で、鈍化していたクレジット需要が依然として堅調に伸びている。

COVID-19パンデミックの影響で、地方自治体による外出自粛や必需品以外の営業活動自粛要請からパンデミック以前の通常の日常生活への緩やかな復帰並びにCOVID-19対応のワクチン接種の拡大が、第2四半期の純益増加の追い風となっている。

しかし今年第2四半期のブラジル民間銀行の大手3行の純益の大幅な増加要因としては、比較対象の昨年同四半期が、COVID-19パンデミックの影響で大手3行の純益の大幅減少していたことに加えて、クレジットの延滞率増加に備えるための貸倒引当金の大幅増加が指摘されている。

今では、COVID-19パンデミック時のクレジットの不渡りに備えるための貸倒引当金の削減が可能となる。ブラデスコ銀行並びにイタウー銀行の第2四半期のクレジット部門の90日以上の延滞率は、今年第1四半期並みに推移したが、サンタール銀行の延滞率は若干増加傾向となっている。

今年第2四半期のクレジット部門の延滞率は増加を見込んでいたが、COVID-19パンデミック以前の水準を下回っており、2022年は現在の水準で推移するとイタウー銀行のMilton Maluhy頭取は共同記者会見で説明している。

イタウー銀行の今年第2四半期のクレジット残高は、前年同期比12.0%増加の9,091億レアルを記録、今年の当行の純益増加を牽引すると予想、個人向けクレジット部門は22.3%増加、法人向けクレジット部門は9.3%増加を記録している。

前期同様にサンタンデール銀行のクレジット残高は、個人向けクレジット並びに中小企業向け法人クレジット部門が牽引して、前年同期比14.4%増加の5,103億1,400万レアルを記録している。

一方ブラデスコ銀行の第2四半期のクレジット残高は、前年同期比9.9%増加の7,265億レアルを記録したにも拘らず、他行の二桁台の伸び率を下回る一桁台の伸び率に留まっている。

個人向けクレジット部門の伸び率は、住宅ローン、クレジットカード部門並びに公務員並びに年金・恩給受給者向けの給与・年金口座連動型クレジット部門が牽引して、21.0%増加を記録している。

大手民間銀行は揃って銀行業務のエフィシエンシー向上や銀行業務のデジタルトランスフォーメーション化を進めており、イタウー銀行では銀行業務のデジタル化で1,200人の従業員を削減、サンタール銀行も1,620人の従業員削減を実施している。

銀行業界の取引のデジタル化やリモート業務の増加がインパクトを与え始めていると2022年に副頭取のMario Leão氏にバトンタッチするサンタンデール銀行のSergio Rial頭取は説明している。

大手民間銀行では、業務内容のデジタル化に反比例するように、銀行支店の閉鎖が加速化してきており、今年第2四半期のブラデスコ銀行及びサンタンデール銀行では、200支店を閉鎖したが、イタウー銀行では、先行して支店閉鎖を進めていた経緯があった。