今週はインフレ、財政枠組みやコモディティ価格が焦点となるか(2023年5月8日付けヴァロール紙)

ブラジル中央銀行の最終フォーカスレポートによると、今年のブラジルの正式なインフレ指数の広範囲消費者物価指数(IPCA)は、 前回予想の6.06%から6.02%、2024年は4.18%から4.16%それぞれ若干下方修正している。

週末に下院で行われた財政枠組み法案の報告者であるクラウディオ・カジャド下院議員は、Folha de S.Paulo紙との インタビューで、法案の本文で支出が増加する可能性のあるペースを修正することを提案する予定であると説明.このように、現在の支出制限を変更することはより困難になり、現在、この制限は 2024 年から 2027 年の間しか続かないと説明している。

今週はサンパウロ証券取引所にとっては、企業関連ニュースに焦点を当てる必要があり、イタウー銀行の第 1 四半期に 84 億 3,500 万レアルの経常利益を記録、この結果は、銀行関連株の株価に影響を及ぼすと予想されている。

またここ数週間連続で下落していた鉄鉱石の国際コモディティ価格は、大連証券取引所で 5.02% 上昇し、トン当たり 721.50 元 (約 104.29 米ドル) を記録。この動きは、サンパウロ平均株価指数(Ibovespa)にも大きな影響を与えているブラジルの鉱業関連セクターの企業の株価の上昇に繋がる。

資源大手のVale 社のADR(米国預託証券)は、まだ流動性が低下している今朝、ニューヨークのプレマーケットで 1.4% 上昇している。ブレント原油先物も、ロンドン証券取引所で約 2% の堅調な上昇を見せている。

また金融市場は、連邦政府による、中央銀行の金融政策および監督の新しいディレクターの任命を待っているが、まもなく発表されると予想されている。

通貨政策委員会は財政政策の進展を理解するもSelic金利の13.75%維持を決定(2023年5月3日付けヴァロール紙)

3日開催のブラジル中央銀行の通貨政策委員会 (Copom) は、高止まりするインフレの財政リスクへの影響緩和を維持するため、また与党の13.75%を継続しているSelic金利の引下要請の圧力に屈することなく、現行のSelic金利の13.75%の継続を検定している。

通貨政策委員会 (Copom) は、インフレを抑制するためのSelic金利の高止まりの維持において「忍耐と平穏」が必要であると繰り返し説明しており、Selic金利を長期間にわたり高水準に維持する戦略を維持している。

通貨政策委員会 (Copom) は、今年4月までの過去12カ月間のインフレ指数が4.65%を維持しており、2024年の目標インフレ指数の3.00%に誘導するために、昨年8月からSelic金利を13.75%の水準での維持を余儀なくされている。

今年9 月にSelic金利の利下げサイクルが始まることを考慮したいわゆるリファレンスシナリオでは、2023 年のインフレ予測は 5.8% であり、目標上限を上回っている。今年のインフレ指数の中央目標値は 3.25% 、許容範囲は 1.5% 、最大許容値 4.75%が設定されている。

通貨政策委員会 (Copom) は、Selic金利が翌年を通じて維持されるという別のシナリオを再び提示しており、このシミュレーションでは、今年のインフレ予測5.7%と最大許容値を上回るが、2024 年には 2.9%と目標中央値をわずかに下回っている。

通貨政策委員会 (Copom) は、インフレ下降プロセスが期待通りに進まない場合、Selic金利の調整サイクルを再開することを躊躇しないと繰り返したのに対して、フェルナンド・アダジ財務相は、このコメントは金利引き上げの脅威と解釈して批判していた経緯があった。

しかし実際、この通貨政策委員会 (Copom)の議事録のフレーズは、低金利に対する市場の一方的な賭けを冷やす方法として、2022 年 8 月から繰り返されていた経緯があった。誤解を避けるため、通貨政策委員会 (Copom)は現在、新たな金融引き締めを「可能性が低いシナリオ」と見なしていることを強調している。

3月22日開催のブラジル中央銀行の通貨政策委員会 (Copom) は、ルーラ大統領初め与党のブラジル中銀の金利政策批判にも関わらず、高止まりするインフレの財政リスクへの影響緩和を維持するために、政策誘導金利Selicを全会一致で13.75%の据置を決定していた経緯があった。

米連邦準備制度理事会(FRB)は5月3日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.25%の利上げ(政策金利引き上げ)を決めた。政策金利であるFF金利の誘導目標は5.00%~5.25%となった。

2016年8月31日以降のSelic金利の推移

HSBC銀行の今年第1四半期の純益は3倍増(2023年5月2日付けヴァロール紙)

HSBC銀行の今年第1四半期の純益は、世界的な金融引き締め政策による高金利が牽引して、昨年第1四半期の純益27億6,000万ドルを3倍以上上回る103億3,000万ドルに達している。

HSBC銀行の今年第1四半期の売上は、前年同期比64%増加の201億7,000万ドル、今年3月の英国Silicon Valley銀行の買収で15億ドルの利益を上げている。

HSBC銀行は、今年から最低でも12% の平均有形株主資本利益率を達成するという目標を維持しています。

HSBC銀行は、1株あたり10セントの配当を発表。これは、2019年以来初めての四半期配当で、また、最大20億ドル相当の自社株買いを開始すると説明している。

 

3月のブラジルの財政プライマリー収支は141億8,200万レアルの赤字計上(2023年4月28日付けヴァロール紙)

28日のブラジル中央銀行の発表によると、2023年3月の中銀、国庫庁並びに社会保障院(INSS)で構成される中央政府及び州政府と市町村で構成される地方政府を合わせたブラジル政府の財政プライマリー収支は、141億8,200万レアルの赤字計上したが、2022年3月の財政プライマリー収支は、43億1,200万レアルの黒字を計上していた。

ブラジル政府の財政プライマリー収支には、ペトロブラス石油公社(Petrobras)、ブラジル中央電力公社(Eletrobras)、ブラジル銀行(BB)及び連邦貯蓄金庫(Caixa)などの公立銀行の決算は含まれていない。

今年3月の中央政府の財政プライマリー収支は97億1200万レアルの赤字、地方政府の財政プライマリー収支は、46億2,500万レアルの赤字を計上していたが、公社は1億5,400万レアルの黒字を計上していた。

今年3月の過去12カ月間の累計財政プライマリー収支は、GDP比0.74%に相当する747億5,500万レアルの黒字を計上、今年2月の過去12カ月間の累計財政プライマリー収支は、GDP比0.93%の黒字を計上していた。

今年第1四半期の累積財政プライマリー収支は、583億7700万レアルの黒字を計上、昨年同期の財政プライマリー収支は、1096億1,600万レアルの黒字を計上していた。

今年第1四半期の653億1,700万レアルの利払いを含む名目累積財政プライマリー収支は、794億9,900万レアルの赤字を記録したが、昨年同期の財政プライマリー収支は、264億7,200万レアルの赤字に留まっていた。

今年3月の過去12か月間の名目財政プライマリー収支は、GDP比6.11%に相当する6188億9,000万レアルの赤字を記録したが、今年2月の過去12か月間の名目財政プライマリー収支は、GDP比6.54%であった。

3月のクレジットカードのリボ払い平均年利は430.5%と天井知らず(2023年4月26日付けヴァロール紙)

ブラジル中央銀行の発表によると、20233月のクレジットカードのリボルビング利払いは、前月比13.1%上昇の430.5%に達し、天文学的な数字を記録している。

リボルビング クレジット ラインは、カードの事前承認されたクレジット ラインであり、支払い手段のクレジット機能を使用して行われた引き出しも含まれる。 クレジットカード名義の顧客の債務不履行の場合、銀行は 30 日以内に未払いの残高を分割払いするか、より有利な条件で債務を解決する別の方法を提供する必要がある。

クレジットカードの分割払い率は既に 2.4 ポイント上昇の 192% に達しており、クレジット カードの合計金利は 3 月に 0.1 ポイント上昇して 101.7% に達している。

また3月の銀行が与信審査なしで自動的に貸してくれる特別小切手税と呼ばれる口座借越残の金利は、5.1%減少の129.1%となっている。

今年3月末のブラジル国内の銀行のクレジット残高は、前月比0.7%増加の53,610億レアル、過去12か月間では12.0%増加、クレジットのうち融資が自由に選択できる自由クレジット残高は0.8%増加の3兆1,690億レアル、融資先が限定されている限定クレジットは、0.6%増加の2兆1,910億レアルとなっている。

また今年3月末の個人向けクレジット残高は、0.8%増加の3兆2,660億レアル、法人向けクレジット残高は、0.6%増加の2兆960億レアルとなっている。

今年3月の経常収支は2億8,600万ドルの黒字計上(2023年4月25日付けヴァロール紙)

25日のブラジル中央銀行の発表によると、2023年3月のブラジルの経常収支は、昨年3月の30億1,600万ドルの大幅な赤字から一転して、2億8,600万ドルの黒字を計上している。

今年3月の過去12ヶ月間の累積経常収支は、GDP比2.66%に相当する522億5,100万ドルの大幅な赤字を計上している。

ブラジル中央銀行の四半期インフレレポート (RTI)では、2023年のブラジルの経常収支は320億ドルの赤字を見込んでいる。

今年3月の海外投資家による対内直接投資額は、76億⒎300万ドルと昨年3月の68億⒎500万ドルを約8億ドル上回っている。

今年3月の過去12か月間の累積対内直接投資残高はGDP比4.57%に相当する897億3,000万ドルとCOVID-19パンデミックの悪影響を受けていた前年同期のGDP比2.8%を大幅に上回っている。

今年3月の過去12か月間の累積対内直接投資残高897億3,000万ドルは、GDP比2.66%に相当する経常収支赤字を十二分にカバーする投資残高を記録している。

ブラジル中央銀行の四半期インフレレポート (RTI)では、2023年のブラジルへの対内直接投資総額は750億ドルを見込んでいる。

今年3月の海外投資家によるブラジル国内の金融投資残高は、24億1,500万ドルを記録したが、昨年3月は、マイナス64億5,400万ドルの売り越しを記録していた。、、

また今年3月のブラジル国債などの確定金利付き投資は、政策誘導金利Selicが13.75%を維持している影響で12億5,600万ドルの買い越しを記録している。

一方今年3月の海外投資家によるサンパウロ証券取引所B3やニューヨーク証券取引所を経由した株式投資は、マイナス33億2,200万ドルの売り越しを記録している。

今年初め2か月間のM&As は前年同期比35%減少(2023年4月18日付けヴァロール紙)

PwC Brasil社の調査によると、2023年初め2か月間のブラジル国内の企業買収・合併(M&A) 件数は、国内外のマクロ経済の停滞を反映して、179件と昨年同期の274件よりも35%と大幅に減少を記録して2020年以降では最低のM&A件数に留まっている。

PwC Brasil 社のLeonardo Dell’Osoパートナーは、今年下半期のM&A件数は回復すると予想しているが、2022年のM&A件数を下回ると予想、2022年のは1,556件と2021年の1659件を100件以上下回っていた。今年のは1,100件から1,500件をLeonardo Dell’Osoパートナーは予想している。

2022年8月頃までのM&A件数は上昇傾向にあったが、8月以降は降下サイクルに転じており、世界経済の減速傾向、不透明なルーラ新政権の政治・経済の舵取り、 新規財政政策の枠組みに対する金融市場側の不信感がM&A案件を先送りしている要因となっている。

リスクの高いM&A投資を思いとどまらせる高水準の金利の高止まりで、2022 年には新規株式公開 (IPO) がまったく行われず、投資に利用できる企業のリソースが減少している。

ポートフォーリオ向け戦略投資分野は増加傾向を示しているが、金融機関のM&A投資比率は減少傾向にあり、今年の戦略的M&A投資比率は昨年の77.3%から86%に増加、一方プライベート・エクイティの年比率は昨年の22.7%から14%に減少している。

今年初め2か月間のM&A投資では、テクノロジー分野特にメディア・通信分野は46.4を占め、消費分野は16.2%、製造業・自動車分野は14.0%を占めている。

今年初め2か月間のM&A投資では、 BTG Pactual銀行は5億レアルを投資しての少数株式を取得、米国資本 Augment Infrastructure社は Órigo Energia社に2億5,000万レアルを投資、 またGGVファンド、 TriplePoint Capital社, G-Squared社 及びTiger Global社も5,000万ドルを投資している。

低調なマクロ経済環境にもかかわらず、金融sector、アグリビジネス、エネルギーセクターなどは投資レベルを維持すると予想されており、バロール社の3月の調査では、不安定な経済シナリオにも関わらず、エネルギー部門の合併と買収は依然として堅調であり、今後数か月で 250 億レアル~300 億レアルの投資が見込まれている。

社会経済開発銀行(BNDES)はドル返済可能な農畜産生産者向け20億レアルのクレジット枠設定(2023年4月18日付けヴァロール紙)

社会経済開発銀行(BNDES)は、輸出向けのドルでの返済可能な農畜産生産者向け20億レアルのクレジット枠設定したが、特別クレジット枠は「BNDES Crédito Rural」と命名、社会経済開発銀行(BNDES)のアロイジオ・メルカダンテ総裁が17日にブラジリアで発表している。

農村部門の輸出業者に対する与信枠は、年率 7.59% に加えて為替変動分が含まれる。米国通貨の変動は、ドルで支払いを受け取る借り手に影響を与えない。またSelic金利を大幅に下回る利払いに設定しているとメルカダンテ総裁は説明している。

「国庫に負担をかけることなく、クレジットを増やし、より金利の低い資金調達出来ることを目指している」とメルカダンテ総裁は保証、国庫にインパクトを与えることなく、国外でドル調達されることを強調している。

今回の 農村部門の輸出業者に対する特別枠20 億レアルは、 BNDES によって認定された 77行 の銀行から資金調達が可能となる。クレジット申請者は、支払いを開始するための 24 か月の猶予期間と、最大 120 か月の分割払いが可能となる。

20億レアルの特別枠クレジットは、農村部門の輸出業者に対する最新鋭の農業機械購入を促すためで、次回のアグルビジネスショーでの農業機械買替が可能となるとメルカダンテ総裁は説明している。

メルカダンテ総裁は、環境保護を尊重する人だけが新しい信用枠にアクセスできると説明。過去に森林伐採などの違法行為を行った人は対象外となる。さらに、特別枠クレジットを利用してこの違法行為に関与した人は、罰金を科され、事前に資金を返還する必要があると説明している。

今年に入って会社更生や破産申請が急増(2023年4月13日付けヴァロール紙)

企業や一般消費者の延滞率の増加、高止まりしている銀行金利やインフレ指数、クレジット部門の与信強化、低迷しているブラジルの国内経済などの要因で、今年に入って会社更生法や破産申請が急増しており、今後ますます悪化すると金融関係者は憂慮している。

銀行業務集中サービス会社(Serasa Experian)の調査によると、2023年第1四半期の会社更生法申請件数は、前年同期比37.6%と急増、破産申請件数は44.1%と大幅増加している。

今年3月の会社更生法申請件数は年率換算で6.8%増加、破産申請件数は40.6%増加しているが、2月の会社更生法申請件数は、前年同月比87.3%増加、破産申請件数は38.7%増加していた。

また今年第 1 四半期で特に注目に値するのは、債権者と債務者間の合意が司法環境の外で行われる超法規的回収の要求が大幅に拡大しており、会社更生では前年同期比で900% 増加。破産申請では750% 増加している。

今年第1四半期の会社更生法申請では、零細・小企業の申請は前年同期比1.7%の微増に留まったが、中企業の申請は4.5%増加、特に3月の大企業の会社更生法申請は、前年同月比57.14%と大幅に増加している。

今年第1四半期の零細・小企業の会社更生法申請件数は、181件で前年同期比44.8%増加、平均インデックスは9.0%、大企業は35件で94.44%増加している。今年第1四半期には小売販売大手のアメリカーナス社、ペトロポリスグループ、Tokstok社及びOi社が2日目の債権者からの保護を訴えている。

今年第1四半期の会社更生法申請件数は、過去3年間にないほどの申請件数に達しており、今後は更に破産件数が増加するとSerasaチーフエコノミストLuiz Rabi氏は指摘している。

2021年1月~2023年3月までの企業再生法や倒産申請件数の推移

今年の自由クレジットは6.8%、限定クレジットは8.4%それぞれ下方修正(2023年4月11日付けヴァロール紙)

ジャイール・ボルソナロ政権下の2022年下半期から融資先が自由に選択できない限定クレジットの伸び率は、金利引締めによるクレジット金利上昇及び連邦政府による限定クレジット拡大で、融資先が自由に選択できる自由クレジットの伸び率を上回っている。

ブラジル銀行協会連盟(Febraban )では、2月には今年の自由クレジット伸び率を前年比8.3%増加と予想していたが、今では7.9%に下方修正した一方で、限定クレジット伸び率を2月同様8.4%に据え置いている。

ジャイール・ボルソナロ政権下の2022年下半期から融資先が自由に選択できない限定クレジットの伸び率は、ブラジルの発展に貢献する長期融資を行うことができる唯一の連邦政府系金融機関である社会経済開発銀行(BNDES)のクレジット拡大以外にも、金利引締めによるクレジット金利上昇及び連邦政府による限定クレジットが拡大してきている。

今年の個人向け自由クレジット伸び率は前回予想の8.7%から8.3%に下方修正、法人向け自由クレジット伸び率は7.3%から5.1%と大幅に下方修正、個人向け自由クレジットは9.2%から8.9%に下方修正、法人向け自由クレジットも7.1%から5.4%と大幅に下方修正している。

法人向け自由クレジットは小売大手「ロージャス・アメリカーナス」は大手サプライヤーや信用保険会社に対して、200億レアルに達する一貫性にかけた不可解な不正会計発覚で与信強化されており、個人向け自由クレジットはブラジル経済の減速、延滞率の増加などの影響で下方修正を余儀なくされている。

2月の調査結果と同様に法人向け自由クレジットはアメリカーナス社のエピソード及びブラジル国内の経済活動の後退で与信強化を余儀なくされているとブラジル銀行協会連盟(Febraban )監査部の Rubens Sardenberg理事は説明、今年の債務不履行は2月の4.4%から4.7%に上方修正している。

今年3 29 日~4 4 日にかけて19行 の銀行を対象に実施した調査では、中央銀行の金融政策委員会 (Copom) の議事録に関する金融機関の認識と、信用ポートフォリオのパフォーマンスの予測を纏めた結果となっている。