ブラジル地理統計院(IBGE)が2023年4月のPIMを前月比-0.6%と発表(2023年6月2日付けバロール紙)

5月25日に連邦政府が自動車工業の振興策を発表し、経済活動の原動力として業界を再び位置付けるというものだが、2023年の工業生産に対して予想されている方向を切り替えることにはならないと見られる。4月に工業の物理生産量は市場の予想を上回る落ち込みとなり、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが発生する以前の水準を2%下回る2023年の工業生産は、年末まで横ばいで推移していくと見られる。

 

ブラジル地理統計院(IBGE)がこの日発表した4月の月例工業物理生産量調査(PIM-PF)は、前月比-0.6%。3月は、前月比+1.0%だった(今回の発表に合わせて当初の+1.1%から訂正)。4月を期末とする浮動四半期(2―4月期)で見ると、その前の期と比較して+0.1%となり、事実上の横ばいとなった。2022年4月と比較した場合、工業生産は2.7%減少した。

 

それほど大きな落ち込みではなかったものの、4月の生産量の減少についてゼツリオ・バルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)の研究員、ステファノ・パシーニ氏は、「重要な落ち込み」と位置付けた。同氏は、2022年第4四半期(10―12月期)に生産を拡大させた食品業界が4カ月連続で生産を縮小していることに言及した。

 

さらに同氏は、4月の自動車業界の数字についても、全国自動車工業会(Anfavea)がこれ以前に4月の自動車製造台数を-3.9%と発表していたことを考えれば驚くようなものではなかったと指摘した。PIM-PFでは、4月の自動車セグメントの生産量は、前月比-4.6%(季調済)だった。

 

同氏によると「この落ち込みは、割賦による購入と、非耐久財の消費を難しくする高金利と、この高金利が同様に投資への資金調達で経営者に二の足を踏ませるために機械設備の生産にブレーキが掛かるという、マクロ経済の状況を反映している」という。

 

パシーニ氏は、4月までに利用可能なIBGEのPIMのデータから、統計上の潜在成長率について2023年は横ばい、あるいは軽いマイナスで推移すると分析、直近の失われた生産を回復するのは難しいと指摘した。

 

連邦政府が発表した自動車業界振興策についてもパシーニ氏は、COVID-19のパンデミックが発生した時期には投入財の調達に関連して発生したボトルネックで消費にブレーキがかかり、現在では自動車の消費と所有の習慣が偶発的に変化していることへの理解という課題の発生している状況で消費が落ち込んでいる中、こうした問題に直面しているある業界で連邦政府は消費を過熱させようとしているという認識を示した。

 

パシーニ氏によると連邦政府の大衆車計画の効果のほどは不透明であり、工業部門に予想されている方向を変えるだけのものになるかは分からないという。その上で影響は、未だ発表されていない大衆車計画の詳細に左右されるのではなく、その他の条件、例えば通貨政策の進捗といったものからも受けるのだと付け加えた。

 

日本企業の後押しで2022年にMUFGが8,070万レアルの過去最高益(2023年6月5日付けバロール紙)

ブラジルに対する日本企業の投資の再開を受け、三菱UFJ銀行(MUFG)が2022年にブラジルで過去最高益を計上した。ブラジルに進出して100年以上の歴史を持つMUFGの2022年の利益は、過去最高益となる8,076万2,000レアルだった。

 

競合する欧米の銀行と比較するとMUFGのシェアは小さいが、それでも、着実に成長を達成している。

 

ブラジル部門の営業は、その売上の70%から80%を占める日本企業に直接的に関係している。2022年5月に就任して以降初めてとなるインタビューで同行の木阪明彦頭取は、「2022年は困難な1年だったが、同時に、多くの日本企業がブラジルで投資を行った。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下でこれらの投資は凍結されていたが、ようやく、新たな勢いを取り戻し、投資は大きな可能性を取り戻した」と話す。

 

2022年のMUFGが2022年に確保した8,076万2,000レアルの利益は、前年比で+58.6%に達する。同銀行の国内における信用ポートフォリオは24億0,100万レアルであるが、この数字は国内のエクスポージャーをすべて示しているわけではないという。というのも同行の信用ポートフォリオの大部分は米国および日本で貸借対照表に表示されているからだという。なお、総資産は2022年12月末時点で308億6,700万レアルである。

 

木阪頭取によると、ブラジルでは法律で定められた最低限の配当を行い、利益の大部分を国内事業に再投資した。これは、ブラジルに対する同グループの信頼の証だという。

 

また日本企業に加えて同銀行はその他の国々の多国籍企業、さらに最近では、同行の顧客のサプライヤー向けにサプライチェーンへの融資にも進出している。セグメント別では、MUFGは、エネルギー業界と自動車業界、化学業界、コモディティー関連商社に軸足を置く。

 

「日本企業は多くの場合で信用をそれほど必要としていないが、サプライヤーは別だ。従って、日本企業の支払いを担保として融資している。これは日本には存在しない、ブラジル市場の興味深い構造です」と同頭取は言う。

 

また2023年の年明けに発生したアメリカーナス(Americanas)の経営危機は、取り付けリスクなど経営には影響していない。国内の銀行が大企業による債務の履行遅滞の増加に直面し始めているものの、MUFGでは同様の状況を確認していない。「日本企業の子会社に融資しており、本社との関係は極めて良好のため、問題は全く発生していない」と同頭取はコメントした。

 

アジア市場と米国市場で強みを持つMUFGだが、木阪頭取はブラジルを、成長の可能性が最も大きい市場のひとつだと位置づけている。「日本では市場が縮小して公民の高齢化も進んでいる。アジアのその他の国々では、台湾をめぐる緊張や北朝鮮のリスク、ロシアとウクライナの戦争など地政学的に大きな問題を抱えている。ブラジルは国土も広く、人口も大きく天然資源が豊富だ。そして日本企業のシェアは小さいものの、これから拡大していくだろう」という。

 

さらに同頭取は、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する基準達成に向けた取り組みは、同銀行にとって大きな関係のある問題だと指摘した。2023年5月には、ネオエネルジア(Neoenergia)と国際協力機構(JICA)、MUFGが、ネオエネルジアがコンセッションを受けている事業エリアで電力供給を拡大するため、およそ7億0,340万レアルの融資契約を締結した。「この種の取引を強化していきたい」と木阪頭取は話す。

 

MUFGは現在、ブラジル国内で220人の従業員を抱えるが、この内、日本人は頭取自信を含めてわずか9人である。同頭取によると日本企業は世界の他の国々の企業と比較すると経営判断に時間をかけ、長期投資に重点を置く社風があると話す。欠点とも言われることがあるが、この企業文化がポジティブな結果をもたらすこともあるという。

 

2008年に国際金融危機が発生した際、MUFGはサブプライム・ローン(米国の住宅ローンに関連した証券)とその関連市場などの、より複雑なデリバティブ市場で事業を展開していなかった。結果として、リーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)の破綻後、MUFGはチャンスを生かしてモルガン・スタンレー(Morgan Stanley)銀行の株式の20%を購入、現在もこの株式を保有している。その後の回復を受けて、その持分は現在、280億ドル以上の価値を有する。米国のパートナーらと仕事をした経験のある木阪頭取は、日本との違いを次のように指摘した。「日本企業は農家のようなもので、毎年少しずつ種を蒔く。米国企業はハンターだと言える。彼らは常にチャンスを伺い、素早くものにしようとする」。

 

なおブラジルでMUFGは、1973年に当時の三和銀行の戦略的パートナーシップの締結によって確保したブラデスコ(Bradesco)銀行の株式の1.25%を保有する。「投稿はブラデスコ銀行と非常に良好な関係を構築しており、彼らに顧客を紹介し、知識の交換も行っている。2022年末には、共同で20億レアルのスカラ・データ・センターズ(Scala Data Centers)のグリーンボンドを発行した」という。

 

MUFGはおよそ360年の歴史を持つ世界第4位の金融コングロマリットであり、幾度もの合併と買収を通じ3兆3,000億ドル以上の資産を持つ。1996年に東京銀行と三菱銀行が合併、その10年後にUFJ銀行と経営統合した。東京銀行の前身である横浜正金銀行は、日本人のブラジル移民を受けて1919年にブラジルに進出。現在の日本では、MUFGと三井住友銀行、みずほ銀行の3大金融コングロマリットが存在する。いずれもブラジルに進出しているが、その中でMUFGは最大手である。

2023年5月の貿易収支が113.78億ドルの黒字(2023年6月1日付けバロール紙)

商工サービス省貿易局(Secex)は6月1日、2023年5月の貿易収支が、月間113億7,800万ドルの黒字を計上したと発表した。営業日1日当たりの黒字額で前年同月と比較した場合、129.5%の増加。月間の輸出額は、同様の比較で前年同月比11.6%増の330億6,700万ドル。輸入は同12.1%減の216億8,900万ドル。

 

この結果、2023年1―5月で見るとブラジルの貿易収支は、前年同期を39.1%上回る352億8,400万ドルの黒字となった。この期間の輸出は前年同期比3.9%増の1,363億9,300万ドル、輸入は同4.6%減の1,011億0,800万ドルである。輸出入を合わせた貿易高は、前年同期比0.1%増加して2,375億0,100万ドルに達した。

 

5月の農畜産品の輸出は、営業日1日当たりの比較で前値同月比15.72%増加した。鉱物産品の輸出は同様の比較で12.84%増、工業製品の輸出は同8.47%増を記録した。

 

輸入に目を向けると、農畜産品は5月に前年同月比36.35%減。鉱物産品は前年同月比19.09%減、工業製品は同10.98%減を記録した。

 

ブラジルの最大の貿易相手国である中国への輸出は、大陸中国及び香港、マカオを含め、5月に営業日1日当たりの比較で前年同月から26.4%増加した。一方、アジア地域全体への輸出は、同じ比較で26.34%増加した。さらに北米への輸出は前年同月比14.78%増、南米への輸出は同23.23%増、欧州への輸出は15.07%増を記録した。

税制改革:WGが二重VATと複数の税率、4区分の特別制度を提案へ(2023年6月2日付けバロール紙)

下院の税制改革ワーキンググループ(WG)が、6月6日、付加価値税(VAT)と、連邦政府が資金の少なくともその一部を負担する地域開発ファンド(FDR)を盛り込んだ報告書を提出する。少なくとも4人の国会議員が、バロール紙にコメントした。またこの報告書では、具体的な数字は不明ながら少なくとも複数の税率を設けることと、4区分の特別制度の導入も盛り込まれる。

 

フェルナンド・アダジ財務大臣によると、連邦VATの一部を州と共有することに懸念を抱いていたものの、税制改革の重要性と改革推進の必要性を考慮して妥協した。税率とFDRの規模については今のところ明確になっていないが、5月5日にWGが会合を予定しておりこの場で提案について何らかの勧告のようなものが出される可能性はあるが、判断は6日の提案後に持ち越されると見られる。

 

6日に発表される文書は、WGの現時点での報告書であり、憲法改正案(PEC)に盛り込むべき骨子の部分になる模様だ。法案としての詳細と細目を含めた法律文の形になったものは、各党との協議を経て20日後に国会に提出され、さらに7月に表決が行われる見込み。

 

担当者であるアギナルド・リベイロ下院議員(PP:進歩党)はこれまでに、連邦管轄と州及び市役所管轄のすべてをまとめた単一のVATが好ましいという見解を何度も示してきた。だがWGを構成する12人のメンバーらは、5月31日の協議で二重VAT(連邦VATと州/市役所VAT)の方がより政治的に理解を得られやすいという判断を下した。しかしながらVATに関する法律は全国で効力を持つ単一の法律として施行され、連邦と州、市役所の3層をひとつにまとめて国家機関を通じて徴税する。

 

アダジ財務大臣との協議では、納税者に対する移行期間についても6年から10年をかけることが提案されたが、この問題は最終判断が下されておらず、代替案が提出されてそちらを推進する可能性もある。この移行期間については2つの可能性が残されている。より短期、6年で移行する場合には政府が企業に対して税制優遇策の終了に伴って補償を行うというものと、これらの恩典をPECによって検証しつつより長い期間をかけて移行するというものである。

 

報告書では、VATは単一の税率にはならないとする一方、その税率やどのように業界を区分するのかなどについて言及しない。関係者によるとこの問題は、別の法律、場合によっては補足法により定める可能性がある。さらに「キャッシュバック(税額還付)」についても提案する予定だが、どのように行うか、またいずれを対象にするかについても言及しない。

 

また4業種についてはVATの特別税制を適用する。すなわち、燃料業界については脱税を避けるために生産チェーンを通じて課徴するのではなく製油所における1段階のみで課税される。さらに金融システムと保険業界の2業種に関しても、経済全体にコストの上昇を招かないため、個別の商品ではなく全体の収入に対して課税される。そして土木建築業界にも独自の課税モデルを提案する。

 

この文書には、豪華船や航空機への車両税(IPVA)を提案する憲法改正案第110号(PEC 110)の提案も取り込む予定だが、この税金を連合税と州税、市税のいずれに設定するのか、すなわち徴税の責任をいずれが負うのかは決まっていない。

 

WGは今後、6日の発表前に最後の詰めの協議を進める。2日には、全国市長活動戦線(FNP)と協議を予定するほか、週明け5日にはアダジ財務大臣との会合を予定する。さらに同日夜には、レポートに盛り込む最終ガイドラインの策定とこれまでWG内で合意に達していない問題について協議する。報告書の発表は、6日午後4時を予定する。(2023年6月2日付けバロール紙)

IBGEが2023年第1四半期のGDP成長率が前期比+1.9%と発表(2023年6月1日付けバロール紙)

ブラジル地理統計院(IBGE)は6月1日、2023年第1四半期(1―3月期)の国内総生産(GDP)の成長率が、前期と比較して+1.9%を記録したとする国民経済統計を発表した。

 

今回の結果は、バロール紙が72社の金融機関とコンサルティング会社から集めた事前予想の平均(+1.3%)を上回る水準。予想は、下は-0.1%、上は+2.2%だった。前年第1四半期との比較では、+4.0%の成長だった。こちらは、事前予想の平均は+3.0%、予想の下は+0.9%、上は+4.3%だった。

 

さらに今回の発表に合わせてIBGEは、2022年第4四半期のGDP成長率について、前期比-0.1%に訂正した。当初発表していた成長率は、前期比-0.2%だった。

 

生産面から見て、IBGEのレベッカ・パリス国民経済統計主任は第1四半期のGDP成長率について、農業の力強い成長と、サービス業が強い成長を維持したことが影響したと指摘した。中でも農業が+21.6%を記録したことが大きく貢献した。この業界は、ブラジル経済の8%を占める。

 

農業に対する市場の事前予想の平均は+10.3%。また前年同期との比較でも、農業のGDPは+18.8%の成長を達成、市場の予想の平均(+12.3%)を上回った。

 

パリス主任は、「2022年は気候問題が農業に悪影響を与えたが2023年は、今四半期に70%の大豆耕作地で生産量を24%以上拡大する記録的な豊作を記録した」という。さらに「大豆の収穫は、年の上半期(1―6月期)に集中する。作柄の悪かった前年第4四半期と豊作の第1四半期比較すると、農業が大きく成長したことが確認される」と付け加えた。

 

またサービス業は、第1四半期に前期比+0.6%の成長。サービス業はブラジル経済のほぼ70%を占めており、従って、この産業が成長を維持することはブラジル経済の継続的な成長に貢献する。市場の予想の平均は+0.3%。また前年同期比では+2.9%で、こちらも市場の事前予想の平均は+2.7%だった。

 

IBGEによると、サービス業の成長は主に、輸送セクターと金融活動セクターの成長によるもので、いずれも前期比+1.2%を記録した。

 

同様に生産面からは、工業が第1四半期に前期比-0.1%を記録した。こちらも、-0.3%のマイナス成長を予想していた市場の予想の平均よりも良好な結果となった。前年同期との比較では、+1.9%。こちらも平均で+1.4%だった市場の予想を上回った。

 

支出から第1四半期のGDPを見ると、民間最終消費支出が前期比+0.2%で、市場の事前予想の平均(+0.7%)を下回った。前年同期との比較では+3.5%で、こちらも同様に、市場の予想の減金である+4.0%を下回った。

 

政府最終消費支出は、第1四半期に前期比+0.3%、総固定資本形成(GFCF)は同じk比較で-3.4%だった。市場はそれぞれ、+0.2%と-1.5%と予想していた。前年同期との比較では、政府最終消費支出が+1.2%、GFCFは+0.8%を記録した。市場の予想はそれぞれ、+1.0%と+1.8%だった。

 

また第1四半期の投資は、GDP比17.7%を記録した。

 

対外面から見ると、第1四半期に輸出は前期比-0.4%、輸入は同-7.1%。市場の事前予想の平均は、それぞれ、-0.2%と-6.2%だった。(2023年6月1日付けバロール紙)

2023年4月に機械・設備業界の売上が前年同月比10.5%減の221億レアルにとどまる(2023年6月1日付けバロール紙)

 

ブラジル機械装置工業会(Abimaq)は、ブラジル国内の機械・設備販売にブレーキが掛かっている状況が2023年4月の実績から確認されたと発表した。同協会が5月31日に発表したデータによると、4月の業界の純収入は、前年同月比10.5%減の221億レアルにとどまった。3月との比較でも、19.2%の減少。ただしAbimaqによると4月は例年売上が落ち込む月であり、5月には回復に向かい、年間を通じてその傾向を維持する見込みだとしている。

 

ただ、業界の売上の80%を占める国内販売だけを見ると、業界はさらに厳しい状況に直面していたことが分かる。国内市場で計上した純収入は、4月に172億レアルで、前年同月比14.7%減、前月比では17.7%の落ち込みだった。国内生産から輸出を差し引き輸入を加えた国内見掛け消費は277億レアルで、前年同月比7.6%減、前月比では18.8%減少した。

 

同協会のクリスチーナ・ザネラ競争力及び経済統計担当理事によると機械・設備業界は、高金利と信用の収縮という経済状況に直面、打撃を受けている。他と全く異なる原理で市場が動く農業関連産業向けに加え、最低賃金の引き上げやボルサ・ファミリア(Bolsa Família:家族手当)のような社会プログラムから一定の経済波及効果の恩恵を受けた家庭消費関連あるいはサービスに関連した部門を除き、機械・設備業界は業績を好転させられずにいる。

 

ザネラ理事は、「高金利かつそれが長期に及ぶ経済政策のただ中にいる。我々は、既に利下げする余地が生じていると受け止めている。それを当局側が示唆するだけで、投資の再開を後押しするのに重要な役割を果たしてくれるだろう」と指摘する。なお、Abimaqは引き続き、2023年に業界が2.4%成長するという見方を維持している。ただ、国内市場に限定すれば、成長はわずか0.6%にとどまりそうだという。

 

Abimaqによると、月間10億ドル以上を記録してきた輸出も、4月は9億8,200万ドルにとどまった。前年同月比では9.5%の増加だが、前月との比較では20.8%もの落ち込みだという。

 

3月との比較で落ち込んだ理由についてザネラ理事は、12億5,000万ドルを記録した3月が輸出のピークだったと受け止めている。このため、「この輸出の下落傾向が今後数か月にわたって続いていくとは受け止めていない。3月に前倒しされた販売の影響が4月に出たと理解している。このため輸出は引き続き、年末まで11億ドル(※原文では110万ドル)規模を維持すると予想している」という。Abimaqは、2023年の輸出額を前年比+8.6%と予想している。

 

4月は、機械・設備の輸入も前月から16.9%落ち込んで20億ドルにとどまった。ただし、前年同月との比較では、12.1%増加した。この結果、4月に業界の貿易収支は、10億ドルの赤字を計上した。

 

機械・設備業界では、4月末時点で39万0,371人を雇用しており、前月から0.7%減少した。前年同月と比較した場合でも、業界の雇用は0.9%縮小した。

2023年第1四半期にラ米の航空輸送市場でブラジルがトップから転落(2023年6月1日付けバロール紙)

 

ブラジルは2023年第1四半期(1―3月期)、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックで受けた痛手から回復途上にある中、ラテンアメリカの航空輸送市場でブラジルがメキシコに抜かれてトップから陥落した。ラテンアメリカおよびカリブ海航空輸送協会(ALTA)が5月31日、トラフィック・レポートとして発表した。

 

1月から3月にかけてブラジルの航空旅客輸送は2,740万人で、パンデミック発生前の2019年同期と比較して10%の減少。一方、メキシコは2,900万人となり同様の比較でむしろ17%増加した。

 

2019年の両国を比較するとブラジルはメキシコを23%上回る3,000万人を輸送した。これは、国内線の航空旅客輸送が非常に大きかったことによる。しかし2023年第1四半期の国内線の航空旅客輸送は、メキシコが23%増加させたのに対してブラジルの伸びはわずか7%にとどまった。

 

国際線の航空旅客輸送を見ると、メキシコが1,430万人を輸送して他を大きく引き離して1位だった。メキシコの国際線の航空旅客輸送は、同じ期間のブラジルのほぼ3倍に達する規模である。

 

ALTAのジョゼー・リカルド・ボテーリョ会長によると、トップの交代劇にはいくつかの理由があるという。「メキシコに目を向ければ、適切な時期に国境を開放し、地理的に恵まれている上に地域色のある観光に強みを持ち、査証の申請でも比較的効率的な規定を導入、それに活気のある市場だ。一方のブラジルは、航空便の接続を強化しているところだ」という。

 

さらにボテーリョ会長は、ブラジルはこの地域の周辺国同様、よりインテリジェントな査証規定の導入と国際観光振興機関の強化が必要だという見解を示した。

 

「ラテンアメリカを訪問する国際旅客の22%がメキシコを選んでいる一方、ブラジルへはわずか9%しか来ない。この状況は、営業コストの削減と法的安定性の確保、国内観光と何よりも国際観光により良い環境を整備することで、ブラジル国内の航空業界の成長を促すような戦略と政策が必要なことを示している」と同会長は付け加えた。

具体性のない大衆車計画の発表により2023年5月に最大1.5万台の新車の買い控え(2023年6月1日付けバロール紙)

 

連邦政府が新車の販売価格引き下げを伴う大衆車計画を発表したことを受けて、2023年5月は、1万3,000台から1万5,000台規模の買い控えにつながっている模様。業界を専門とするコンサルティング会社のブライト・コンサルティングが試算、発表した。

 

5月30日の新車登録台数は9,299台。同社のムリロ・ブリガンティ生産分析担当部長は、「通常、月末最後の営業日3日は、月間平均の1.3倍に販売が伸びる。この時期は販売がテコ入れされるタイミングなのだが、そうした状況になっていない」と話す。

 

30日の販売実績について同社は「全てが悪かったわけではない」とするが、連邦政府が大衆車計画を導入すると発表する前に予想されていた水準を下回っているという。連邦政府は、12万レアル以下のモデルに対する社会統合計画負担金(PIS)及び社会保障負担金(Cofins)の税率を引き下げることで、この価格帯の販売価格が1.5%から最大10.96%値下がりするとしている。

 

この買い控えがより大きくならなかったのは、現在国内で販売されている自動車の価格のほとんどが12万レアルを上回るためである。全体として見ると、この水準を上回る価格帯の新車販売は連邦政府の発表後も通常の傾向を維持して推移している。

 

とは言え、複数のディーラーの話では、消費者の側の混乱は続いており、一部のケースでは12万レアル未満に限定されるという情報を「販売員による売りたいがための説得術」と考えている消費者もいるようだという。

 

また詳細を明らかにせず減税とそれに伴う値下がりの見通しだけを発表した今回の対応で、新車販売だけでなく中古車販売にも混乱が及んでいる。一部の中古車販売店は、新車価格の値下がりを見越して既に新古車(型落ちの少ない中古車)を値下げしたところも出ている。自動車部品業界のある経営者は、「政府が早急にこの問題に対処するよう期待している。さもなければ、1カ月の販売が丸々失われるだろう」とコメントした。

 

この大衆車計画は、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(PT:労働者党)が5月25日に減税策とこれに伴う新車価格の値下がりを発表した。しかし財務省はこの発表に関連した減税策の検討に15日かかるとし、この計画が最終的にいつ、どの程度の期間にわたって実施されるかも決まっていない。

 

ブライト・コンサルティングはもともと、5月の乗用車と小型商用車の新車登録台数を18万1,500台と予想していた。「その方向で推移していた」とブリガンティ氏は強調する一方で、今回の発表を受けて7.16%から8.26%の間で下方修正し、1万3,000台から1万5,000台ほど下振れすると予想している。

 

5月の販売に対してこのようにブレーキがかからなければ、前年同月を3.8%上回っていた形だ。だが現在、いつ開始されるかもわからない値下がりの見通しだけを連邦政府が発表した影響で、5月は前年同月を3.5%から4%下回ることになる可能性が出てきたという。

基礎的財政黒字が2023年1―4月に縮小するも赤字額の予想は変更なし (2023年5月31付けバロール紙)

 

連邦政府の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、2023年1―4月期だけで前年同期と比較して300億レアル以上も減少した。しかしながら財務省は、2023年の基礎的財政赤字をおよそ1,000億レアルで据え置いたままにしている。

 

1―4月で見た中央政府(国庫管理局と中央銀行、社会保障院)の基礎的財政収支は、前年同期が790億レアルの黒字だったのに対して2023年は471億レアルの黒字にとどまっている。

 

国庫管理局のロジェリオ・セロン局長は共同記者会見の席上、「非常に厳しい状況となる1―4月期を乗り越えた」とコメント。同局長は2023年の結果について「良好」と位置付けるとともに、基礎的財政赤字について、「最悪でも」GDP比で1%、1,000億レアル台でおさまる兆候だと評価した。同時に、2022年下半期に前政権が実施した減税措置を撤回することと2022年末に同様に実施された歳出の拡大を埋め合わせることの難しさについても指摘した。

 

4月の結果を受けてXPインベスチメントスは、2023年の基礎的財政収支についてこれまで通り1,196億レアルの赤字とする予想を維持したものの、「下振れするバイアス」が発生していると同社のエコノミスト、チアゴ・スバルデロット氏はレポートで指摘した。この見通しについて同氏は、州税の商品サービス流通税(ICMS)の税額控除に対する「社会統合計画負担金(PIS)及び社会保障負担金(Cofins)の課税ベースの変更」を考慮した。ただし、「このところ発表されている対策については一切考慮していない」と付け加えた。これらの最近の対策とは「オンラインカジノ及び電子商取引に対する課税」とICMSの免税額を利益と見なして法人所得税(IRPJ)及び純利益に対する社会賦課金(CSLL)の課税ベースに参入することなどである。同氏によると、これらの対策は「2022年に大きな影響を与えない」ものになりつつあるという。

 

ただ、赤字額としては従来の見通しを維持したものの、スバルデロット氏は、4月のデータは「(歳出と歳入の)収支のいずれの方(側)においても、傾向が変化していることを示している」と指摘した。歳入では例えば「原油相場の値下がりによって原油生産に関連したロイヤルティ収入が大きく減少する傾向にある」という。

 

「加えて、経済活動が下半期に減速する可能性があり、労働市場がその活力を失うことで労働者の源泉徴収による所得税収入や社会保障費の納付に大きな影響を与える可能性がある」と付け加えた。

 

歳出面での変化は、最低賃金の引き上げが年金及び社会保障の給付額に与える影響を考慮し始める必要があると同氏は指摘する。

 

BTGパクチュアルのエコノミスト、ファビオ・セラーノ氏も同様に、12カ月間で見た基礎的財政収支について「6月以降により激しい落ち込みが始まるはずだ」という。下半期には、「2022年に納付を受けた特別歳入を考慮する必要がある上、最低賃金の引き上げと公務員給与の引き上げがデータに表れ始める」と指摘。同氏は2023年の基礎的財政赤字を、1,088億レアルと予想している。

FGVが2023年5月のICOMが87.3ポイントへ3.7ポイント上昇したと発表(2023年5月30日付けバロール紙)

 

ゼツリオ・バルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)は、2023年5月の商業信頼感指数(ICOM)が前月比3.7ポイント上昇して87.3ポイントに達したと発表した。98.0ポイントを記録した2022年10月以降で最高という。5月を期末とする浮動四半期(3―5月期)のICOMは、前の期から+0.5ポイントの85.0ポイントを記録した。

 

Ibre/FGVのエコノミスト、ロドルフォ・トブレル氏は、「5月のICOMは、前月の落ち込みを補う上昇を見せた。この上昇は、現況に対する楽観的見方と今後数カ月の悲観的観測の縮小が後押しした。現況判断が改善したものの、商業部門は依然として、2022年末から2023年の年明けにかけて記録した落ち込みを完全に取り戻していない。今後数カ月間の見通しは、少なくとも景気に対する消費者の信頼感とマクロ経済環境がよりポジティブになるまでは、現在の低空飛行状態が続く」と分析している。

 

5月の現況指数(ISA-COM)は前月比2.7ポイント上昇して90.1ポイントで、2022年10月に102.3ポイントを記録して以来の高水準。一方、期待感指数(IE-COM)は4.8ポイント上昇して85.1ポイント。前月比で7.0ポイント減を記録した4月の落ち込みを部分的に取り戻した。