分析:外遊せずとも自ら外交で墓穴を掘ることが可能だと示したルーラ大統領(2023年5月30日付けバロール紙)

 

南米諸国会議の結果は、ウクライナ侵略戦争の調停役を買って出た時のようにわざわざ地球上をはるばる移動しなくても、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(PT:労働者党)が自ら外交問題で墓穴を掘れるのだということを示した。ブラジルにとっては歴史的な因縁があり口出しするだけの理由もあるベネズエラ問題のようなものですら、「自宅」に居ながらにして、それが可能なのだ。

 

ブラジリアで開催される南米12か国の会議の基調を整え地ならしする、大統領好みの言葉で言い換えるならば「譚(はなし)」を作ろうとするルーラ大統領の試みに異を唱えたのが、若き2人の指導者、ウルグアイのラカレ・ポウ大統領とチリのガブリエル・ボリッチ大統領だ。

 

ラカレ・ポウ大統領は、ルーラ大統領が就任直後に同国を訪問した際、公の場でメルコスールに対するブラジルの頑固なまでの防衛姿勢を公に批判していた。ボリッチ大統領は、極右がベネズエラ移民の増加が原因だと主張する暴力事件の急増による支持の落ち込身に直面している。

 

南米諸国会議の主催者として、ベネズエラとの二か国首脳会談を進めたことにリスクがあったことは明らかだ。そしてルーラ大統領は、その声を無視することに決めた。経験豊富なブラジルの外交官らに言わせれば、実に不要な会談だった。

 

これは二か国首脳会談で見せたベネズエラの体制に対するブラジル大統領の論調を南米諸国会議の基調にしようと画策したブラジルの罠なのではないかと示唆して最初の足並みの崩れをもたらしたのは、ラカレ・ポウ大統領だった。ブラジルとベネズエラの二国間首脳会談に驚いたとコメントしただけにとどまらず、「反民主主義で権威主義」のベネズエラの経緯をルーラ大統領が「譚」と呼んだことにも、同様に驚きを表明した。

 

ウルグアイ大統領派さらに踏み込んで、民主主義と人権、制度秩序の保護というビジョンを盛り込んだ最終宣言に全員が署名することでベネズエラの政権を保護しようという、出席した全員が必ずしも同意しない試みにも公の場で反対の意を表明した。

 

2019年の選挙でラカレ・ポウ大統領は、ペペ・ムヒカ候補とタバレ・ヴァスケス候補に圧倒的な差をつけて選出された。従って、彼はルーラ大統領の右側に軸足を置く。では、ボリッチ大統領はどのような発言をしたのだろうか? チリの元学生運動のリーダである同大統領は、原則に対して「物事を絨毯の下に隠してみて見ぬふりをする」ことには同意できないと、同様に立場を明確にしている。「これは譚の一節ではない。現実であり、かつ、深刻な問題であり、私は、わが国で暮らす何千人ものベネズエラ人の瞳と痛みの中にそれを見出す機会を得た」。

 

ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が会議に出席したことが、生産的な会合を阻んだわけではない。出席したすべての国が、ベネズエラとの外交関係を維持しているのだ。それでも、同国に対する禁輸措置への非難もなかった。ベネズエラ国民を主な被害者とする過剰な力の行使に対する批判は、かなり共有されている。

 

問題は、ベネズエラを舞台に呼び戻そうとするブラジルの善意が、頑迷な反米主義に汚染されていることだ。ルーラ大統領は自身の発言を通じて、民主主義と人権、共和制の護持を普遍的な価値とするのではなく、帝国主義の「譚」に変換できることを示した。

 

このような姿勢に、国益を見出すのは難しい。外務省は、大統領がその場で発言したことが重要ではないと言うがごとく、読み上げられた発言、公式の文書、翻訳に固執する態度を示した。その様は、近隣諸国を困惑させたほどだ。

 

まだ1週間と経っていないのであるが、米国南方軍のラウラ・リチャードソン将軍がブラジルを訪問した。同将軍はBBCに対して、南米におけるロシアと中国の「邪悪な活動」を懸念していると発言した。豊かな自然を持つこの地域が、中国の「シルクロード・インフラ計画(一帯一路)」に則られるようなことになれば、同国に国家安全保障上のリスクを生じさせると強調した。

 

今回の南米諸国会議は、いずれの首脳も置き去りにすることなく、一致団結してこのような対立から利益を導き出す南米の指導者たちの会議の先駆けにできた可能性があった。地域経済のペースを左右する大国間の不均衡によって脅かされているのは、実は各国の安全保障なのだとこの大陸に示す機会にできた可能性もあった。だが、そうならなかった。そして、ホスト国の責任を隠すのも難しい。

レンタカー会社がルーラ政権の打ち出した大衆車計画への支持を表明(2023年5月30日付けバロール紙)

 

ブラジル・レンタカー協会(Abla)のマルコ・アウレリオ・ナザレ会長が、工業製品税(IPI)と社会統合計画負担金(PIS)及び社会保障負担金(Cofins)の減税を通じて低価格車の価格を削減する連邦政府の大衆車計画について、業界は「歓迎している」と表明した。

 

ただし同協会は、この景気支援策が業界にポジティブな効果を発揮するには、減税と同時にレンタカー会社に対する融資枠を設定する必要があるという考えも示した。同時に、この計画が導入される期間についても懸念があると指摘した。

 

「5月31日と6月1日にブラジリアに赴き、この問題に関係する様々な省局と意見を交換する」とナザレ会長は言う。

 

連邦政府が発表した大衆車計画は、価格が12万レアル未満のエントリー・モデルと小型のハッチバック及びセダンを対象にしている。この対象車種は、202年12月時点で業界が保有していた車両143万台の58%に該当するという。

 

業界が求める対策のひとつが、ブラジル国内に昨年およそ2万2,000社を数えたレンタカー会社向けの補助を伴う融資枠の設定である。高金利によってモヴィーダのような業界大手でさえ、保有車両の買い替えプロセスにブレーキをかけている。業界は、2022年に実施されたように連邦政府が融資を部分的に補償することで金融機関にとってはリスクの低減に繋がり金利を引き下げられると主張している。

 

「個人が車を購入してもレンタカー会社が購入しなかったとすれば、政府は、自動車産業向けの振興策を完成させることはできないだろう」と同会長はコメント。また現在の高金利によって2022年に国内で販売された乗用車と小型商用車の30%が業界によるものだったと指摘。その数年前は業界が国内で生産された車両のおよそ20%を購入していたことにも言及した。

 

またナザレ会長は、「業界(自動車メーカー)は、設備稼働率がおよそ50%に低下している。今が、生産を回復させる時だ。設備稼働率を高め、生産性を高め、固定費を削減し、より手ごろな価格を実現する」とし、「個人の購買力にレンタカー会社が加われば、生産能力を引き上げ、雇用と所得を創出できる」と強調した。

 

しかし一部のアナリストは、分野別補助制度を再開した場合の効果について、疑問を呈している。これらのアナリストは、様々な業界が競争力を改善するには、構造的なソルーションの導入こそ望ましいと主張する。しかも大衆車の購入にインセンティブを与えることは、連邦政府が取り組んでいる環境アジェンダやエネルギー転換アジェンダと逆行するものだと指摘している。

 

大衆車計画によってレンタカー業界が確保するアドバンテージのひとつが、車両の買い替えプロセスの支援だ。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより自動車メーカー各社は生産台数を縮小しており、これに伴ってレンタカー会社も車両の保有期間を長期化させざるを得ず、維持コストが上昇してきた。この結果、業界の平均的な車齢は2019年の15カ月から2022年には24カ月に伸びた。

 

短期的に見れば今回の大衆車計画は、レンタカー会社が車両の売却で得られる利益を減らして業績にまいなすの影響をもたらす可能性がある。だが長期的な計画になるならば、およそ18カ月の中期的に、当初の悪影響は相殺されると見られている。ただし、連邦政府が示唆した大衆車計画の導入期間はわずか4カ月である。

 

またレンタカー会社のウニダスは書面で、同社が協議を見守るとコメント。その上で、「消費行動が変化していると当社は受け止めており、次第に、所有する商品から使用する商品へと移行している」という見解を示した。一方、ロカリザとモヴィーダは大衆車政策に関してコメントしていない。

FGVが2023年5月のICIが前月比1.6ポイント減の92.9ポイントと発表 (2023年5月30日付けバロール紙)

 

ゼツリオ・バルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)は5月29日、2023年5月の工業信頼感指数(ICI)が前月比1.6ポイント減となる92.9ポイントにとどまったと発表した。5月を期末とする浮動四半期(3―5月期)は、2―4月期と比較して0.3ポイント上昇して93.9ポイントを記録した。この比較で上昇するのは3か月連続。

 

Ibre/FGVのエコノミスト、ステファノ・パシーニ(Stéfano Pacini)氏は、「工業部門の信頼感は、現況だけでなく今後数か月の期待感でも悪化しており、減速した。セグメント別に見た落ち込みは、耐久消費財と非耐久消費財を使用するセグメントで、需要の悪化と在庫水準の上昇が確認された。需要の冷え込みと高金利、インフレという現在の厳しい状況は、経営者らに生産の削減に向かわせ、2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック期間に確認されたのと同様、今後6か月のビジネスに対するネガティブな見通しを生じさせている」という。

 

5月の場合、調査対象となっている19のセグメントのうち13のセグメントでICIが低下した。さらにこの結果は、現況指数(ISA)だけでなく期待感指数(IE)も悪化した。5月のISAは、前月比1.7ポイント低下して91.8ポイント、IEも同様に前月比1.7ポイント低下し94.0ポイントにとどまった。

 

またISAを構成する項目の内、需要水準に対する認識が前月比2.5ポイント下落して92.4ポイントとなり、全体を押し下げた。

 

在庫水準に関する項目は、前月から1.6ポイント上昇して106.6ポイントに悪化した。これに伴い、2022年9月からニュートラルの100ポイントを上回った格好。在庫指標は、100ポイントを上回ると在庫に余剰が発生していることを意味する。

 

また全体に与える比重は小さいものの、現在のビジネス状況に関する経営者の認識を計測する項目では、前月比-0.5ポイントの90.6ポイントまで低下した。これは、2022年9月以来の低い水準となる。

 

今後の展望については、3月に大きく改善した後、2か月連続で悪化した。中でも、今後3か月の生産の見通しに関する項目が大きく悪化、前月比-4.1ポイントの96.6ポイントに下落、全体を押し下げた。

 

なお、5月の製造工業稼働率指数(NUCI)は、前月比-0.6ポイントの80.1%だった。

ブンゲがブラジル国内で農業融資事業を展開するフィンテックを設立 (2023年5月30付けバロール紙)

 

ブンゲ(Bunge)は5月29日、ブラジル国内で農業融資を行うフィンテック、「フィンクロップ」を設立した。生産者とリセラーに5億ドルの原資を確保し、同社にとっては検証済みの社会環境基準に基づいた大豆とトウモロコシ向けオリジネーション(融資創出)に対するビジネスチャンスを拡大するものになる。

 

穀物と油糧種子の取引とか項において、このフィンテックがリスク評価の中心的存在として社会環境基準に焦点を合わせ、提携する農産物のリセラーが商品を分割販売する際に安全性を高めると同社は強調する。

 

ブンゲ自身は生産者への融資は行っていないものの、生産者が肥料などの農業用の投入財をリセラーから調達する際に生産物を前倒しで販売することで生産者らが自身の生産活動で資金を調達する、いわゆる「バーター」オペレーションに参入している。

 

ブラジル国内金融分野を担当するフローレンス・ショシャニー財務部長は、「バリューチェーン全体を通じて、コントロールされたリスクと検証可能なESG(環境・社会・ガバナンス)の要素を調和させた金融商品への強い要望があると受け止めている。フィンクロップを通じて、ブラジルのアグリビジネスに革新的かつ効率的なソルーションを提供するという当社のコミットメントを改めて表明する。持続可能性への当社のコミットメントに従って、オリジネーションを拡大するための戦略の一歩だ」と強調した。

 

当面は、ブンゲのパートナーであるエコシステム・リセラーに限定してサービスを提供する。どす屋によるとフィンクロップは、AIのアルゴリズムの支援を受けて信用評価を行う。

航空運賃の高騰を受けて2023年4月に陸上移動の出張が増加(2023年5月29日付けバロール紙)

航空運賃の値上がりを受けて、常に割高なチケットを受け入れてきた法人旅客業界においても、利用するモーダルを変更する動きが強まっている。

 

ブラジル法人観光旅行代理店協会(Abracorp)によると、4月の場合、航空チケットの販売額は、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが発生する前の2019年4月の水準を2.85%下回った。営業日数の減少も影響したとAbracorpは指摘している。

 

しかし航空会社は、価格にかかわらず航空便を利用したいという市場の需要が上限に達しつつあることを示している可能性もあるとしつつも、航空会社らは四半期決算において、法人需要は引き続き堅調で第1四半期の売上はパンデミック発生前の状況を上回っているとコメントしている。

 

Abracorpのデータによると、2023年4月の1日当たりの法人向け配車パッケージの販売はパンデミック発生前の2019年4月と比較して31%増加した。売上で見ると108.13%増加して3,070万レアルに達した。この結果、法人の出張旅行に占めるレンタカーのシェアは、2.8%に上昇した。2019年4月のシェアは、1.39%だった。

 

道路旅客輸送も成長しており、4月の売上は303.46%増加して360万レアルとなった。シェアも、同様に0.08%から0.34%に拡大した。

 

反対に航空モーダルは一部の顧客を失い、売上も同様に減少している。4月の場合、法人向けに販売されたパッケージは6億6,570万レアルで、同じ期間の比較で2.85%減少した。シェアは、2019年4月の65.84%から63.41%に低下したという。ただし、2023年4月の営業日は2019年4月よりも3日少なかったことには注意が必要である。

 

Abracorpのグスタボ・タナベ氏によると一連の結果は、出張業務において、急激に値上がりした空の便の利用がレンタカーに置き換わっていることを示すもので、とりわけ、近距離の出張でその傾向が強いという。

 

なお、業界の11セグメント全体では出張ビジネスの売上は10億7,000万レアルで、パンデミックが発生する前の水準を0.87%上回ったという。「ただ、2023年4月の営業日は18日で、2019年は21日だった。この差は、最終的な数字に影響する大きなものだ」と同会長は指摘した。

 

なお、Abracorpは2023年の業界の売上について、2019年を20%上回ると予想している。

連邦政府内が環境問題で対立する中でSTFが穀物輸送鉄道の可否を判断へ(2023年5月29日付けバロール紙)

アマゾン熱帯雨林における様々な事業の認可に関して政府内が派閥に分かれて対立する中、連邦最高裁判所(STF)の大法廷は今週(5月第5週/6月第1週)、マット・グロッソ州シノップ市からパラー州ミリチトゥーバ市を結ぶ新しい鉄道線、穀物輸送鉄道(Ferrogrão:フェログラン)の建設の可否に関する判決を下す。本件の審理は、5月31日に予定されている。

 

アマゾン川河口に近いアマパ州沿岸部を対象にしたペトロブラス(Petrobras)による試掘井の掘削に反対する意見書を2週間前にブラジル環境・再生資源院(Ibama)が提出して以降、政府内では賛否の2派に分かれて対立していることが表面化している。

 

200億レアル以上の工費を見込む巨大鉄道プロジェクトを巡ってSTFでは、鉄道線の施設に向けてパラ州のジャマンシン国立公園の境界線変更を巡って争われている。この鉄道線は、現在のところ港湾と河川舟運が利用されるマット・グロッソ州内で生産された穀物のブラジル北部への集積ルートを、大きく変えるものになると期待されている。

 

社会主義及び自由党(PSOL)による訴訟を受けて、アレシャンドレ・デ・モラエス判事は、暫定令(MP)を通じた保護区域の境界線の変更は認められないという主張を受け入れた。2021年に同判事は、関連するすべての契約及び研究について凍結した。

 

穀物輸送鉄道に関するMPは2021年、ミシェル・テメル大統領(MDB:ブラジル民主運動)の時代に署名された。MPでは、連邦高速道路163号線(BR-163)の沿道に鉄道線を施設するため、ジャマンシン国立公園を通過する高速道路幅員を拡張することを規定している。鉄道線は総延長933kmで、この内、同国立公園を通過する部分は53kmである。

 

モラエス判事による差し止め命令が下された際、ジャイル・ボルソナロ大統領(PL:自由党)が率いる当時の連邦政府は、既に事業入札の実施に向けて準備を進めていた。当時、事業入札に不足していたのは連邦会計検査院(TCU)の承認だけだった。

 

最高裁の審理は、モラエス判事自身が担当判事となっている。5月31日に予定されている審理だが、翌週に延期される可能性もある。この訴訟は、この日に審理される最後のものであり、その前に、フェルナンド・コロル(Fernando Collor)元大統領/元上院議員に対する審理と、個人外使用する目的で麻薬を所持することの非犯罪化に対する審理が行われる。

 

歴史的に見てSTFは、「グリーン・ルール(pauta verde)」と呼ばれる対応に取り組んできた。STFに持ち込まれるこの種の問題に、環境保護を最大限に考慮して判決を下してきたのである。このため、穀物輸送鉄道に関連した訴訟が延期されたとしても、傾向としては、再開にそれほど時間がかからないと見られている。

 

この訴訟の当事者の複数の関係者が、担当判事が穀物輸送鉄道のケースで調停を選択する可能性もあると受け止めている。

 

5月26日に連邦総弁護庁(AGU)は、ジャマンシン国立公園の境界線を変更するMPの違憲性を支持する意見書をSTFに提出した。前ボルソナロ政権時代にAGUは、いかなる犠牲を払おうとも同鉄道線の建設計画を承認することに賛成すると意見を表明していた。

 

検察側は現在、国会が可決したMPの最終文書には、道路幅員の拡大でジャマンシン国立公園が縮小されることへの補償として、タパジョス(Tapajós)の環境保護区域(APA)の5万1,000ヘクタール以上を同国立公園に組み入れるという対応が欠けていたと主張している。

 

これに対して連邦政府の弁護団は、ジャマンシン国立公園へのAPAの編入は、想定されていたものの手続きの過程で削除されたと主張している。AGUは、当該の判断を下すには「それ以前に生態学的観点からこの編入が適切であると結論した研究が先に存在する必要がある」としている。

 

結論としてAGUは、「社会環境面を含む法的条件をすべて満たすよう研究結果がアップデートされることを含めて、穀物輸送鉄道に関連した行政手続きを定期的に適正化するのを再開すべく、STFの予防措置の部分的な撤回を求む」としている。

 

運輸省は、研究を承認するという判決が得られれば敗北には当たらないという立場をとる。というのも運輸省によると問題となっているデータは2013年の古いもので、「このような古いデータをもとに現在の影響を計測することは、例え鉄道線の施設を支持するデータであったとしても根拠とするには無理がある」という認識である。

 

他方、鉄道線の建設に反対してきた環境省は、引き続きその立場を維持する。先週の権限縮小を受けてマリーナ・シルバ環境大臣と先住民らは、これ以上の敗北を断固阻止すると、これまで以上に強硬な姿勢に転じている。また第3期ルーラ政権のAGUの顔ぶれは、環境保護主義者及び先住民保護主義者に同情的な立場を採用していると理解されている。

 

レナン・フィーリョ(Renan Filho)運輸大臣は、穀物輸送鉄道は環境問題を気に掛けないイメージがもたれていたボルソナロ政権との関連性の希薄化に努めている。同大臣はその上で、穀物輸送鉄道の研究はそのはるか昔、10年以上も前に当時のジウマ・ロウセフ大統領(PT)によって承認されたのだと指摘している。

 

同大臣は、「穀物輸送鉄道は、はるか昔の政権でスタートしたものであり、現在、重要なことはそれをいかに実現させるかという可能性を模索することだ。というのもブラジルでは年を追って農産物の生産量が拡大する中、日に日に、インフラへの投資の必要性が増しているのだ」と強調した。

オピニオン:工業に新たな道が開けるか?(2023年5月25日付けエスタード紙)

 

 

オピニオン:工業に新たな道が開けるか?

セルソ・ミンギ氏

 

工業の日だった5月25日、ルーラ政権は、グラフで示されたように長年の悪化に伴い弱体化したブラジル工業を再活性化する意向を新たに示した。

この国の経済は、成長がわずかかほとんどなく、インフレは年率6%前後で推移し、政策金利も年利13.75%、公的債務は肥大し続けており、税制は混乱の極み、消費者と企業は多額の負債を抱えている状況であり、そこで救世的な工業政策を用意するのは容易なことではない。だが、経済を最初に立て直して後から工業を修繕することなど、できないのだ。つまり、車を走らせながらタイヤを交換するということだ。

 

これまでのところ、脱工業化の歩みを連邦政府がどのように逆転させようとしているのかは明確になっていない。そしてこの取り組みは、工業部門の経営者の信頼感と投資意欲に直接的に影響するのであるが、全国工業連合会(CNI)によると、これらはいずれも大多数のセグメントで低迷を続けている。だが我々は、病人をさらに追い詰めるような危険を冒してまで繰り返してはならない手法については理解している。例えばそれは、業界の活力と競争力を奪ってきた過去の保護主義的な制度の維持といったことだ。

 

つい最近まで工業部門は、より多くの補助金と減税、関税による保護、さらに大きな特定市場の保護、有利な金利、滞納税回収計画(Refis)のような恩赦、恒常的な通貨安の推進といったことを要求し、その望みを実現させてきた。その要求はサンパウロ州工業連盟(Fiesp)の紳士面をした人たちの政治プロジェクトに有利なクレーム以上のものであったが、これが満たされたにもかかわらず、産業の空洞化を食い止めることができなかった。

 

以前の労働者党(PT)政権は、社会経済開発銀行(BNDES)から有利な融資を受ける内資系企業の未来の王者を選定することで、テコ入れを図ろうとした。だが、それは期待した成果をもたらさない間違った対応だった。

 

もうひとつの誤りは、国内市場を確保するだけで十分だと考えたことだ。外国市場にアクセスするための貿易協定は無視された。ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(PT)は現在でさえ、工業には生産規模というものが必要なのであり最貧層や残り滓のような市場に向けて車を製造できないのだということを無視し、低所得の消費者に対するエントリー・モデルとすべく「牛車」を製造するようメーカーに圧力を掛けている。

 

幸いなことに、この業界の新しいリーダーたちは、製造業の救済はビジネス環境の改善を基礎とすべきだと確信しているようだ。それが意味するのは、より近代的かつ安価なインフラの構築と、より公正でバランスの取れた税制、最先端技術へのアクセス、安定した労働法規、法的安定性、官公庁の煩雑な手続きの撤廃などである。

 

この25日の大衆車計画の発表を通じて我々は、連邦政府がどこまで新しく効果的な道を切り開いていくつもりなのか、知ることになるだろう。

IBGEの計測するIPCA-15が2023年5月に+0.51%へ減速(2023年5月26付けバロール紙)

ブラジル地理統計院(IBGE)が計測するIPCA-15(前月16日から当月15日までの30日の拡大消費者物価指数)が、+0.51%を記録、バロール・ダッタが市場から集めた事前予想の平均値(+0.64%)を下回った。しかも5月としては、+0.44%を記録した2021年以来の低水準で、前月の+0.57%からインフレが減速傾向にあることも示された。

 

IPCA-15を構成する9品目の内、6品目でインフレが減速。また12カ月の累積インフレ率は+4.07%で、こちらも2020年10月に+3.52%を記録して以来の低水準となった。

 

5月のIPCA-15を市場はインフレ圧力の低下の兆候と受け止めている。こうしたムードを受けて先物金利が低下した他、ドル為替相場でもレアル安となった。ドル高レアル安について複数のアナリストが、米国で利上げされる一方でブラジル国内の政策金利が低下するという見通しに、外国人投資家にとっての魅力も低下させたためだと受け止めている。ただし、すべてのアナリストが、中銀通貨政策委員会(Copom)が政策を転換するだけの状況が整い始めたと受け止めているわけではない。

 

中央銀行のロベルト・カンポス・ネット(Roberto Campos Neto)総裁はマスコミに対して、「ディスインフレは我々が期待していたよりも緩やかであるが、それでも今後にポジティブな展望をもたらす様々な兆候を確認している」とコメントした。

2023年4月に世帯収支が前年同月比で2.09%増加したとAbrasが発表(2023年5月25日付けエスタード紙)

ブラジル・スーパーマーケット協会(Abras)は5月25日、2023年4月の世帯支出が、前年同月と比較して2.09%増加したと発表した。前月比でも、1.47%の増加。

 

同協会のマルシオ・ミラン副会長は、これらの数字はボルサ・ファミリア(家族手当)の給付金の拡大など連邦政府の政策のポジティブな影響が反映されたものだという見方を示した。

 

4月のボルサ・ファミリアの給付金は総額140億レアルで、給付対象は2,120世帯である。この期間で注目されるもうひとつの政策は、プリメイラ・インファンシア(幼児手当)である。こちらは世帯の子供に対して月額150レアルを給付する。アウシリオ・ガス(ガス支援)は逆に、世帯当たり月額112レアルから100レアルに引き下げられた。

 

同副会長は、「これらの数字は、インフレ対策と失業対策として実施された所得移転政策が寄与していることを示している」と指摘した。

 

行政府の公務員の給与の引き上げと社会保障サービス(INSS)の13カ月給付の前倒しなどを考慮すると、スーパーマーケットの売上は、上半期(※原文は第1四半期)にさらに大きくなると期待されるという。

 

なお、2023年の成長率について、上半期末に見直しが加えられる見通しだが、現時点では、+2.5%と予想している。

 

また連邦政府に関連してミラン副会長は、新しい財政の枠組みである新財政基本規定の可決について楽観的に見ていると言及、「政府の支出が削減される一方で増税はない」と指摘した。

 

世帯支出に関連して、消費の80%を構成するブランド数は、増加を続けているとAbrasは発表。例えばフェイジョン豆(インゲン豆)のブランド数の場合、2023年は71ブランドに達しており、前年3月の67ブランドを上回った。

 

ミラン副会長によると、このブランド数の増加は、商品の値上がりを受けて消費者が購入するブランドを変更していることが理由だという。フェイジョン豆の価格は4月に4.41%値上がりしており、年初からの値上がりは12.02%に達した。

 

「消費者は選択的になり、消費するブランドを変更し続けている」とミラン副会長は言う。同様に消費者が購入するブランドのバリエーションが多いのが米で、同じ期間に65ブランドから68ブランドに増加した。

 

なお、主要35品目で構成するAbras製品バスケット価格(Abrasmercado)は4月に751.29レアルを記録して前月から0.53%値上がりした。食品価格のお値上がりは0.71%で、この期間にブラジル地理統計院(IBGE)が計測した政府の公式インフレ率である拡大消費者物価指数(IPCA)の+0.61%を上回った。

連邦政府が5月25日に新車の減税と輸出会社への新たな信用導入を発表(2023年5月26日付けエスタード紙)

製造業の活性化に向けた努力の一環として、ルーラ政権は工業の日の5月25日、今後予定する新たな2つの対策を発表した。ジェラルド・アルキミン副大統領兼商工サービス大臣が発表した対策は、減税を通じて新車価格を引き下げる自動車の大衆化計画。さらに、輸出会社向けに特化した社会経済開発銀行(BNDES)による低利の信用である。こちらは、同銀行のアロイージオ・メルカダンテ総裁が発表した。いずれも、実施されるかどうかは財務省次第であり、現時点で政府はこれらを公約と位置付けていない。

 

自動車業界向けの対策は、アルキミン副大統領によると、12万レアル未満の自動車に対して社会統合計画負担金(PIS)及び社会保障負担金(Cofins)、工業製品税(IPI)の税率を引き下げる。ただしこの減税の適用を受けるには、いくつかの社会的要件や国内のサプライヤーの利用をより重視している産業集約度の高いメーカーの優遇、二酸化炭素排出量が小さいといったサステナビリティに対する要件が考慮される。このため、副大統領によると値下がり率は、1.5%から10.96%まで変動する。

 

共同記者会見でアルキミン副大統領は、減税の上限を10.79%とコメントしていた。しかしその後、商工サービス省(MDIC)が10.96%に訂正した。

 

副大統領によると、車体価格が安いほどPIS及びCofinsの減税率は高くなる。さらに、エネルギー効率の高い車、すなわち「汚染物質の排出量の少ない車」ほど高い評価を受ける。またこの減税は一時的なものだとしているが、実施期間については現時点では未定である。

 

これらの規定を適用することで、現時点で販売されている最も安価な車両として6万8,990レアルで販売されているフィアットのMobiとルノーKwidの新車価格は、6万レアルを下回るとしている。また財務省側はこれらの政策に関して、まとめるまでに15日の猶予を要求してきたと副大統領はコメントした。ただし、この減税が実際にいつから施行されるか、さらにこの減税が財政に与える影響についても現時点では不明である。

 

また全国自動車工業会(Anfavea)のマルシオ・デ・リマ・レイテ(Márcio de Lima Leite)会長は、「6万レアルを下回る販売価格の新車が出てくるのはほぼ確実」とコメントした。(